JP2007281124A - 電磁ソレノイド - Google Patents

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Abstract

【課題】電磁コアーの外周に設けられた電気絶縁部材の一端部側から他端部側へ配設されるマグネットワイヤーが、このマグネットワイヤーに巻回されるマグネットワイヤーによって生じる断線や電気抵抗値の変化が抑制される電磁ソレノイドを提供すること。
【解決手段】磁気回路の一部をなす中心コアー41の外周に電気絶縁部材70が設けられ、この電気絶縁部材70の外周表面部に、マグネットワイヤー42の径の少なくとも一部が埋没する大きさの溝部711を形成し、電気絶縁部材70の溝部711内にマグネットワイヤー42を電気絶縁部材70の一方の端部側72から他方の端部側73まで配設し、絶縁部材70の他方の端部側73のマグネットワイヤー42を、一方の端部側72と他方の端部側73との間を往復させて電気絶縁部材70の外周に奇数段巻回しコイル部42aを形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は電磁ソレノイドに関するもので、特に自動車用燃料噴射装置のインジェクタに使用される電磁ソレノイドに好適である。
電磁ソレノイド、特に自動車用燃料噴射装置のインジェクタに使用される電磁ソレノイドにおいては、インジェクタの構造上、電磁コイルのマグネットワイヤーの巻き始めと巻き終りの一対の電気リード端部を同じ位置側にくるよう制約を受けている。この電磁ソレノイドは、通常、磁性体の中心コアーの外周に装着されたコイルボビンにマグネットワイヤーを巻回して電磁コイルを形成し、電磁ソレノイドの必要特性に応じて電磁コイルをコイルボビンの外周に複数段形成している。電磁コイルの巻回段が偶数の場合は、マグネットワイヤーの巻き始めと巻き終りの一対の電気リード端部が同じ位置になるが、電磁コイルの巻回段が奇数の場合は、マグネットワイヤーの巻き始めと巻き終りの一対の電気リード端部が互いに反対位置になる。そのため電磁コイルの巻回段が奇数の場合は、巻き終りのマグネットワイヤーを巻き終りの位置から巻き始めの位置へ巻き戻している。従って、本来必要でない巻き戻しワイヤーが存在することとなり、電磁コイルの外径がマグネットワイヤー2本分大きくなる。
また、自動車用燃料噴射装置の燃料噴射弁に使用される電磁ソレノイドにおいては、燃料噴射弁の限られたスペース内に装着される関係上、その体格とりわけ電磁コイルの積層方向の外径(コイルの直径方向)を小さくすることが要求される。そのため、巻回段が奇数の電磁コイルにおいて、上述の巻き戻しワイヤーを無くして電磁コイルの積層方向の外径を小さくした電磁コイルが特許文献1に記載されている。
即ち、特許文献1の図5及び図6に示されるように、「円筒形芯部分31と第1のフランジ32と第2のフランジ33と、この第2のフランジ33に連接される先端部に接続端子39を有するリード導出片40を有するFPCからなるコイルボビン30を設けており、そのFPCからなるコイルボビン30にはプリント配線35を、リード導出片40の先端の接続端子39−第2のフランジ33−円筒形芯部分(内底部分)31−第1のフランジ32へと延設し、その第1のフランジ32の穴32aの周縁部に巻き始めの電極端子36を形成する。もう一方のプリント配線37は、リード導出片40の先端の接続端子39−第2のフランジ33の外周縁部に巻き終りの電極端子38を形成する。そこで、図6における展開された矩形状の平板31´は、図4と同様に組み立てられて円筒形芯部分31が形成され、図5に示すようなコイルボビン30が得られる。ここで、リード導出片40の先端の接続端子39は、コネクタ41へと接続することができる。そして、第1のフランジ32まで延設された巻き始めの電極端子36にワイヤーの一端を接続して、順次コイルボビン30にワイヤーを巻回して奇数層で巻き終る場合には、ワイヤーの終端を巻き終りの電極端子38に接続する。戻すべきワイヤー56をコイルの上層に沿わせる必要がなくなり、その分、コイルボビンの径方向の短縮化を図ることができる。」と記載されている。
特開平10−241931号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁ソレノイドにおいては、リード導出片40の先端の接続端子39から巻き始めの電極端子36までのワイヤーは、コイルボビン30を構成する円筒形芯部分31(平板31´)に設けられたプリント配線35である。このプリント配線35はプリント配線基板構造上、円筒形芯部分31の外周表面よりも上層部に突出して設けられており、このプリント配線35に張力をかけてマグネットワイヤーを巻回する際、プリント配線35が集中荷重を受け断線や、電気抵抗値が変化する。また、巻回したコイルの端子を巻き始めの電極端子36と巻き終りの電極端子38に、はんだ付け等の電気的接続を行わなければならなく、加工に手間がかかり、製造コストが上がるという問題がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、電磁コアーの外周に設けられた電気絶縁部材の一端部側から他端部側へ配設されるマグネットワイヤーが、このマグネットワイヤーに巻回されるマグネットワイヤーによって生じる断線や電気抵抗値の変化が抑制される電磁ソレノイドを提供することにある。
請求項1に係る発明では、磁気回路の一部をなす中心コアーの外周に電気絶縁部材が設けられ、電気絶縁部材の仮想中心軸を中心に周回するように電気絶縁部材の外周表面部にマグネットワイヤーが奇数段に巻回形成されるコイル部を有する共に、仮想中心軸の一方の端部側に、マグネットワイヤーの巻き始めと巻き終りの一対の電気接続リード端部を配置する電磁ソレノイドであって、仮想中心軸方向の、一方の端部側と他方の端部側との間かけてマグネットワイヤーの径の少なくとも一部を外周表面部よりも下層部に埋没させるように形成される溝部と、一方の端部側と他方の端部側との間を往復させて、電気絶縁部材にマグネットワイヤーを巻回する際、往路と復路のいずれかで、溝部にマグネットワイヤーを埋設させて奇数段にコイル巻き形成されるコイル部とを備える。
上記構成によれば、巻回始めまでのマグネットワイヤーの径の少なくとも一部を電気絶縁部材の外周表面部よりも下層部に形成した溝部内に埋没配設させているから、マグネットワイヤー同士が接触する部位におけるマグネットワイヤーの断面変形が抑制されて、断線の発生、および、電気抵抗値の変化を抑制し、マグネットワイヤーでの通電を安定させることができる。また、マグネットワイヤーは1本で巻回されてコイル部を形成しているので、マグネットワイヤーの電気的接続も必要なく製造も簡単でコストを低減でき安価である。
請求項2に係る発明では、溝部にマグネットワイヤーの径の全てを埋没させて、奇数段にコイル巻き形成されるコイル部を備える。
上記構成によれば、マグネットワイヤーの径の全てを埋没させているから、請求項1の発明に相俟って完全にマグネットワイヤーの断線や電気抵抗値の変化を防止できる。
請求項3に係る発明では、電気絶縁部材は、中心コアーの外周に装着された電気絶縁性コイルボビンであり、溝部は電気絶縁性コイルボビンの外周表面部に開口する凹部を有して形成され、マグネットワイヤーを溝部に埋没させて奇数段にコイル巻き形成されるコイル部を備える。
上記構成によれば、電気絶縁部材を電気絶縁性コイルボビンにすることにより、このコイルボビン単体の状態でマグネットワイヤーを巻回してコイル部を形成でき、このコイル部を有するコイルボビンを中心コアーに装着するだけでよいから、製造が簡単である。
請求項4に係る発明では、電気絶縁部材は、中心コアーと当該中心コアーの外周表面部に覆わせて配置形成した電気絶縁薄膜層を含み、中心コアーの外周表面部に開口する凹部を有して形成されるコアー溝部と、このコアー溝部とマグネットワイヤーとの間に電気絶縁薄膜層が介在されて、マグネットワイヤーをコアー溝部に埋没させて、奇数段にコイル巻き形成されるコイル部を備える。
上記構成によれば、マグネットワイヤーを埋没する溝部を、中心コアーに形成したコアー溝部に直接絶縁薄膜層を付着させて構成しているから、コイルボビン等の別部材を必要とせず、コンパクト、軽量、安価にすることができる。
請求項5に係る発明では、電気絶縁部材に形成した溝部は複数設けられ、マグネットワイヤーが複数の溝部の各溝部に配設されて並列巻回で奇数段にコイル巻き形成されるコイル部を備える。
上記構成によれば、コイル部が並列巻きであっても、電気絶縁部材の溝部を複数形成するだけで並列巻きコイル部を得ることができる。
請求項6に係る発明では、マグネットワイヤーが溝部に複数本配設され、奇数段にコイル巻き形成されるコイル部を備える。
上記構成によれば、マグネットワイヤーを電気絶縁部材の溝部に複数本配設することにより、この複数本のマグネットワイヤーは、この上に巻回されるマグネットワイヤーにる張力を複数本で分散して受けるから、マグネットワイヤーが溝部に1本配設される場合により、断線や電気抵抗値の変化がより少ない。
請求項7に係る発明では、電磁ソレノイドは、自動車用燃料噴射装置のインジェクタに適用される。
上記構成によれば、断線や電気抵抗値の変化がなく、安価な電磁ソレノイドをインジェクタに適用しているから、高品位な自動車用噴射装置のインジェクタを提供することができる。
先ず、本発明になる電磁ソレノイドを装着した自動車用燃料噴射装置におけるインジェクタAを説明する。図7は上記インジェクタAの縦断面図、図8は図7の要部拡大図である。
図7、図8において、インジェクタAは、ノズルボディ21、ディスタンスピース22、バルブボディ23、ホルダ24、およびリテーニングナット25により、インジェクタAに略丸棒状の全体形状を与える基体2が構成される。ノズルボディ21、ディスタンスピース22、バルブボディ23、およびホルダ24は対向端面で当接しリテーニングナット25により互いに結合している。
棒状の基体2には内部に種々の凹所や孔が形成されて、これに構成部材が収容されるとともに、燃料の流路が形成される。インジェクタAの下端部(以下、「上」「下」というときは図中の天側を指すものとする)は図示しない内燃機関の各気筒の燃焼室内に突出するノズル部11であり、そのノズルボディ21には基体2の軸方向に縦孔211が形成され、これにノズルニードル31が収容されている。ノズルニードル31はその上端部で縦孔211に圧入した筒状部材21a内に摺動自在に保持されている。縦孔211の図中、下端側の底部はノズルボディ21の先端部に達しており、該先端部がノズル室51となっている。ノズル室51の室壁を貫通して噴孔52が形成してある。縦孔211はノズルニードル31の摺動部よりも下端側で、ディスタンスピース22、バルブボディ23、およびホルダ24に形成された燃料供給通路である高圧通路61と連通しており、ノズルニードル31の離座時には図示せぬコモンレールからの加圧された燃料(以下,適宜、高圧燃料という)が噴孔52から噴射される。
縦孔211には、また、ノズルニードル31の外周にコイルばね32が収容され、常時、ノズルニードル31を下方すなわち着座方向に付勢している。縦孔211のノズルニードル31の摺動部よりも上側部分により、ノズルニードル31の背圧を発生させるノズルニードル背圧室53がディスタンスピース22を上壁とするとともにノズルニードル31の上端部を下壁として形成される。また、ノズルニードル31には高圧通路61からの燃料の圧力が離座方向に付勢されており、ニードル背圧室53の圧力が所定の開弁開始圧力以下になったときにノズルニードル31が離座して燃料が噴射され、ニードル背圧室53の圧力が所定の閉弁開始圧力以上になったときにノズルニードル31が着座して燃料噴射が停止する。
ノズルニードル背圧室53の圧力の高低の切替えは次の構成によりなされる。バルブボディ23には下端部で拡径する縦孔231がインジェクタAの軸方向に形成され、縦孔231の拡径部により制御バルブである第1バルブニードル33が配設される制御弁室である第1制御弁室54が形成される。第1バルブニードル33は棒状で下端寄りにくびれ部を有しており、くびれ部よりも上端部側の軸部33bで縦孔231の小径部に摺動自在に保持されている。第1バルブニードル33のくびれ部よりも下端側は第1制御弁室54内に突出して、弁体部33aとなっている。第1バルブニードル弁体部33aは軸部33bよりもやや大径で、かつ第1制御弁室54の側壁面との間に環状の間隙が形成される大きさとしてある。また、その上端部および下端部はテーパ状に面とりされている。第1バルブニードル33はコイルばね34のスプリング力により常時、下方に付勢されている。
第1制御弁室54が形成されるバルブボディ23とノズルニードル背圧室53が形成されるニードルボディ21との間に挟まれ、第1制御弁室54の下壁部およびノズルニードル背圧室53の上壁部を形成するディスタンスピース22には、インジェクタAの軸方向に貫通する孔が形成されており、第1制御弁室54とニードル背圧室53とを連通する連通路63となっている。連通路63には途中にオリフィス631が形成されている。
第1制御弁室54が形成されるバルブボディ23には、高圧通路61から分岐して第1制御弁室54に通じる高圧分岐通路64が形成されている。高圧分岐通路64の先端は第1バルブニードル33のくびれ部位置で第1制御弁室54の側壁面に開口しており、第1制御弁室54が第1バルブニードル33のくびれ部の外周環状空間と常時、連通している。また、ディスタンスピース22には、低圧通路62から分岐して第1制御弁室54に通じる低圧分岐通路65が形成されている。低圧分岐通路65は、第1バルブニードル弁体部33aの下端面と対向する位置で第1制御弁室54の下壁面に開口しており、この開口端は第1バルブニードル33が下方変位して第1制御弁室54の下壁面と当接すると第1バルブニードル33により閉鎖されるポート65aとなっている。この開口端の外周縁部が第1バルブニードル33が着座するシート(以下、下側シートという)541となる。また、第1バルブニードル33が上方変位すると、第1バルブニードル弁体部33aの上側のテーパ部が第1制御弁室54の段面をシート(以下,上側シートという)542として着座する。
低圧分岐通路65には、ポート65aの直下流に絞りであるオリフィス651が形成してある。
第1バルブニードル33を制御するバルブ駆動手段であるバルブ駆動部12について説明する。第1バルブニードル33はその軸部33bよりも上方に形成されるバルブ背圧室55の圧力の増減により変位する。バルブ背圧室55は、第1バルブニードル33の上面側から穿成し底部がくびれ部位置まで達する縦孔331と、くびれ部位置で第1バルブニードル33の側面から縦孔331の底部に達する横孔332とにより、高圧通路61および高圧分岐通路64から高圧燃料が供給されるようになっている。
バルブ背圧室55は、連通路66を介して別の制御弁室である第2制御弁室56に通じている。連通路66は第1のバルブボディ23の縦孔231の底部から第1のバルブボディ23の上端面に達する小孔により構成され、途中にオリフィス661が設けてある。
第2制御弁室56は、第1のバルブボディ23と、その上方の第2のバルブボディ26の下端面に形成した凹所により形成される。第1のバルブボディ23は第2制御弁室56の下端壁をなしている。第2のバルブボディ26の下端面は凹所の外周縁部26aが環状に突出して、第1のバルブボディ23の上端面の環状溝に圧入され、第1のバルブボディ23と第2のバルブボディ26とが係合している。
第2制御弁室56において、その下壁面に開口する連通路66の開口端は、バルブ背圧室55に通じるポート66aとなる。第2制御弁室56はまた、その周縁部位置で低圧通路62と常時、連通している。
第2のバルブボディ26には、第2制御弁室56の上壁部を貫通する縦孔261が形成されており、縦孔261に第2バルブニードル36が摺動自在に保持されている。第2バルブニードル36の下端部は第2制御弁室56内に突出し、第2バルブニードル36の上端部が第2のバルブボディ26の上方のソレノイド室57内に突出している。
第2バルブニードル36は、下端部に半球状の別の制御バルブである弁体部35を保持し一体に変位するようになっている。弁体部35は、平坦な下端面が第2制御弁室56の下壁面とポート66a位置で対向している。ポート66aの外周縁部は弁体部35が着座するシート面561であり、弁体部35が着座することで、第2制御弁室56とバルブ背圧室55とが遮断される。
ソレノイド室57内に突出する第2バルブニードル36の上端部には円盤状のアーマチャ37が固定されており、ソレノイド室57内に配設した本発明になる電磁ソレノイドBの磁極面と対向している。電磁ソレノイドBは中心コアー41及び外周コアー81によって構成される二重筒状の環状空間部にマグネットワイヤー42を巻回してコイル部42aを配設したもので、コイル部42aにリード線43から通電される。中心コアー41の内周にはコイルばね38が収容されて、アーマチャ37と弾接し、アーマチャ37に対し、常時、中心コアー41から離間する方向に付勢されている。電磁ソレノイドBは第2のバルブボディ23と閉鎖部材24との間に挟持され、これらとともにホルダ24の縦穴241に収容されている。閉鎖部材27とホルダ24との間はシール部材44によりシールされている。なお、上記電磁ソレノイドBの詳細構造については後述する。
電磁ソレノイドBに通電されると、電磁ソレノイドBがアーマチャ37を吸引して、第2バルブニードル36が上方変位する。これにより、高圧通路61〜高圧分岐通路64〜第1バルブニードル33の横孔332〜縦孔331〜バルブ背圧室55〜連通路66〜第2制御弁室56〜低圧通路62という油圧通路において、バルブ背圧室55の燃料が連通路66〜第2制御弁室56〜低圧通路62という経路で低圧源である燃料タンクへと還流し、バルブ背圧室55の圧力が低下する。第1バルブニードル33は下側シート541から離座するとともに上側シート542に着座する。この状態では、上側シート542への着座により第1制御弁室54と高圧通路61との間が遮断されて、第1制御弁室54への高圧燃料の供給が禁止されるとともに、下側シート541からの離座によりノズルニードル背圧室53の燃料が連通路63〜第1制御弁室54〜低圧分岐通路65〜低圧通路62という開放通路が開成することにより燃料タンクに還流するため、ノズルニードル背圧室53の圧力が燃料タンクに開放されて低下する。開弁開始圧力以下になるとノズルニードル31は開弁し、噴孔52から燃料が噴射される。
一方、電磁ソレノイドBがオフし、第2バルブニードル36が下方変位すると、油圧通路において、バルブ背圧室55と低圧通路62とが遮断されて、バルブ背圧室55の圧力が、高圧通路61〜高圧分岐通路64〜第1バルブニードル33の横孔332〜縦孔331という経路でバルブ背圧室55に供給される高圧燃料により上昇する。これにより、第1バルブニードル33が上側シート542から離座するとともに下側シート541に着座する。この状態では、第1制御弁室54と低圧通路62とが遮断されるとともに、高圧通路61〜高圧分岐通路64〜第1の制御弁室54〜連通路63という経路でニードル背圧室53に高圧燃料が供給されるので、ニードル背圧室53の圧力が上昇し、閉弁開始圧力以上になると、ノズルニードル31は閉弁状態となり燃料の噴射が停止される。
次に、本発明になる電磁ソレノイドBについて詳述する。図1は本発明になる電磁ソレノイドBの第1実施形態を示す縦断面図、図2(a)、(b)は上記電磁ソレノイドBにおける電気絶縁部材としてのコイルボビンの上面図、A−A線矢視断面図、図3は上記コイルボビンにマグネットヤイヤーを巻回してコイル部を形成した状態を示す縦断面図である。
図2(a)、(b)において、66ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁樹脂で形成された電気絶縁部材(以下、適宜、絶縁部材という)としての電気絶縁性コイルボビン70(以下、適宜、コイルボビンという)は、円筒部71とその両端に形成されたフランジ状の一方の端部側72、他方の端部側73で構成されている。この一方の端部側72とはリード線43(図8に表示)が配設されている側の端部側であり、他方の端部側73とは一方の端部側72の反対側の端部側である。そして、一方の端部側72には、対向する位置に切欠き部721、722が形成してある。一方の切欠き部721の位置における円筒部71の外周表面部には、その長手方向に沿って溝部711が外周表面部よりも下層部に位置するように、開口する凹部を有して形成してある。この溝部711の一端は、一方の端部側72の切欠き部721に開放しており、他端は他方の端部側73にて閉塞しており、溝部711の断面積の幅、深さはマグネットワイヤー42の径の全体が埋没する大きさになっている。
次に、図3により、マグネットワイヤー42を上記絶縁部材70としてのコイルボビンの長手方向仮想中心線を中心に周回するようにして巻回し、マグネットコイル部42aを形成するプロセスを説明する。先ず、マグネットワイヤー42を、リード線43(図8)と電気的に接続する電気接続リード端部42bが一方の端部側72の外側に位置するようにして、コイルボビン70の切欠き部721を通して一方の端部側72から他方の端部側73まで溝部711内に配設する。この時、溝部711の断面積の幅、深さはマグネットワイヤー42の径(0.1〜0.5mm)より大きいので、マグネットワイヤー42は溝部711内に完全に埋没した状態になり、コイルボビン70の円筒部71の外周表面部より外側に出ないようになっている。
コイルボビン70の他方の端部側73まで配設されたマグネットヤイヤー42は、この位置(図3の巻回始め)からコイルボビン70の円筒部71の外周表面部に、一方の端部側72に向かってコイルボビン70の仮想中心線を中心に周回するように巻回(ワイヤー42の径により15〜45回)され、1段目のコイル部42aが形成される。
1段目のコイル部42aが形成されると、1段目の外側にマグネットヤイヤー42が他方の端部側73に向かってコイルボビン70の仮想中心線を中心に周回するように巻回され、2段目のコイル部42aが形成される。同様に、2段目のコイル部42aが形成されると、2段目の外側にマグネットヤイヤー42が一方の端部側72に向かってコイルボビン70の仮想中心線を中心に周回するように巻回され、3段目のコイル部42aが形成され、マグネットヤイヤー42は、巻回終り位置から切欠き部722を通して一方の端部側72の外側に導かれ電気接続リード端部42bとなる。このようにしてマグネットヤイヤー42を溝部711に埋没配設した後、マグネットヤイヤー42を一方の端部側72と他方の端部側73との間で往復させてコイルボビン70の仮想中心線を中心に周回するように巻回し、奇数段のコイル部42aがコイルボビン70の円筒部71の外周表面部に形成される。コイル部42aの巻回段数(奇数)は必要に応じて設定すればよい。
マグネットヤイヤー42をコイルボビン70の円筒部71の外周表面部に巻回する際、マグネットヤイヤー42には相当な張力がかかるが、溝部711内のマグネットヤイヤー42は、その径が完全に埋没状態(円筒部71の外周表面部より突出していない)にあるため、巻回するマグネットヤイヤー42によって集中荷重を受けず、従って、断線、或いは電気抵抗値が変化することは全くない。また、マグネットヤイヤー42は巻き始めの電気接続リード端部42bから巻き終りの接続電気リード端部42bまで1本で巻回されてコイル部42aを形成しているので、マグネットヤイヤー42の電気的接続も不要で製造も簡単でコストを低減でき安価である。
次に、図1により電磁ソレノイドBの全体構造を説明する。図1において、珪素鋼等の磁性体からなる中心コアー41は円筒部411と一端に設けられたフランジ状の鍔部412で構成され、円筒部411の中心は中空部413となっており、この中空部413内にはコイルばね38(図8に表示)が収容される。中心コアー41の外側には珪素鋼等の磁性体からなる円筒状の外周コアー81が配設されており、この外周コアー81及び中心コアー41のマグネットワイヤー41取出し側には、珪素鋼等の磁性体からなる円盤状の継続コアー82が装着されている。そして、中心コアー41、アーマチャ37、外周コアー81及び継続コアー82で磁力線の磁路を形成している。なお、83は銅、アルミ等の非磁性体からなるリング状の磁路遮断コアーであり、中心コアー41の鍔部412から外周コアー81への磁路を遮断するためのものである。磁路遮断コアー83の代わりに適当なスペースを設けたエアーギャップであってもよい。
継続コアー82には、絶縁部材であるコイルボビン70の切欠き部721、722に対向する部位に窓部821、822が形成してあり、この窓部821、822内をマグネットワイヤー42が通るようになっている。
次に、図3で説明したコイル部42aを有するコイルボビン70を中心コアー41へ装着する手順を説明する。継続コアー82を取外した状態で、コイルボビン70を中心コアー41の円筒部411に嵌め鍔部412に当接させて位置を定める。その後継続コアー82を、その窓部821、822内にマグネットワイヤー42を通して、外周コアー81の内側と中心コアー41の端部に当接させて装着する。以上により本発明になる電磁ソレノイドBが完成する。なお、必要に応じ中心コアー41と外周コアー81との環状空間部にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を充填しコイル部42aを含浸してコイル線間を固着してもよい。
そして、上記構成になる電磁ソレノイドBにおいては、電気絶縁部材はコイルボビン70であるため、コイルボビン単体の状態でマグネットワイヤー42を巻回してコイル部42aを形成でき、このコイル部42aを有するコイルボビン70を中心コアー41に装着するだけでよいから、製造が簡単である。
次に、図4〜図6により本発明になる電磁ソレノイドBの第2実施形態を説明する。図4は電磁ソレノイドBの縦断面図、図5は図4のC部の拡大図、図6(a)、(b)は電磁ソレノイドBにおける中心コアー91の平面図、(a)のB−B線矢視断面図である。珪素鋼等の磁性体からなる中心コアー91は円筒部92と両端に設けられたフランジ状の一方の端部側93、他方の端部側94で構成され、円筒部92の中心は中空部921となっており、この中空部921内にはコイルばね38(図8)が収納される。この一方の端部側93とはリード線43(図8に表示)が配設されている側の端部側であり、他方の端部側94とは一方の端部側93の反対側の端部側である。そして、一方の端部側93には対向する位置に切欠き部931、932が形成してある。一方の切欠き部931の位置における円筒部92の外周表面部には、その長手方向に沿って溝部922が形成してある。この溝部922の一端は、一方の端部側93の切欠き部931に開放しており、他端は他方の端部側94にて閉塞しており、溝部922の断面積の幅、深さはマグネットワイヤー42の径が完全に埋設する大きさになっている。
上記の中心コアー91の円筒部92の外周表面部、溝部922の表面、他方の端部側94の内側などマグネットワイヤー42が接触する表面には、ダイヤモンドライクカーボン等の電気絶縁材による電気絶縁部材95としての薄膜層95が高周波プラズマCVD法によって形成してある。薄膜層95の膜厚(t)は5〜20ミクロンで、必要に応じて膜厚を設定すればよい。そして、本第2実施形態において電気絶縁部材(薄膜)95に形成される溝部は、中心コアー91の円筒部92に形成した溝部922と、この溝部922の表面に覆うように形成される薄膜層の窪んだ形状部を含む。
本第2実施形態においては、電気絶縁部材95をなす薄膜層95が直接中心コアー91に設けた例であり、この中心コアー91へマグネットワイヤー42を巻回し奇数段のコイル42aを形成する手順は、上述のコイルボビン70へコイル部42aを形成する場合と同様である。即ち、マグネットワイヤー42を、その電気接続リード端部42bが一方の端部側93の外側に位置するようにして、一方の端部側93の切欠き部931を通し、この一方の端部側93から他方の端部側94まで溝部922内に配設する。この時、溝部911の断面積の幅、深さはマグネットワイヤー42の径(0.1〜0.5mm)より大きいので、マグネットワイヤー42は溝部922内に完全に埋没した状態になり、中心コアー91の円筒部92の外周表面部より外側に出ないようになっている。
中心コアー91の他方の端部側94まで配設されたマグネットヤイヤー42は、この位置(図4の巻回始め)から中心コアー91の円筒部92の外周表面部に、一方の端部側93に向かって中心コアー92の仮想中心線を中心に周回するように巻回(ワイヤー42の径により15〜45回)され、1段目のコイル部42aが形成される。
1段目のコイル部42aが形成されると、その外側にマグネットヤイヤー42が他方の端部側94に向かって中心コアー91の仮想中心線を中心に周回するように巻回され、2段目のコイル部42aが形成される。同様に、2段目のコイル部42aが形成されると、その外側にマグネットヤイヤー42が一方の端部93に向かって中心コアー91の仮想中心線を中心に周回するように巻回され、3段目のコイル部42aが形成され、マグネットヤイヤー42は、巻回終り位置から切欠き部722を通して一方の端部側93の外側に導かれ電気接続リード端部42bとなる。このようにしてマグネットヤイヤー42を溝部922に埋没配設した後、マグネットヤイヤー42を一方の端部側93と他方の端部側94との間で往復させて中心コアー91の仮想中心線を中心に周回するように巻回し、奇数段のコイル部42aが電気絶縁性薄膜層95の外周表面部に直接形成される。コイル部42aの巻回段数(奇数)は必要に応じて設定すればよい。
図4に示す第2実施形態の電磁ソレノイドBにおいては、電気絶縁部材95を直接中心コアー91の円筒部92に形成した電気絶縁性薄膜層95としているので、別部品であるコイルボビン等が不要となり、軽量となり、また、コイル部42aの外径も小さくすることができ、安価である。
以上、本発明になる電磁ソレノイドBの実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態では、マグネットワイヤー42を電気絶縁部材の溝部711、922に、その径を完全に埋没させた例であったが、必ずしもその径を完全に埋没させる必要はなく、マグネットワイヤー42の径の少なくとも一部を、巻回による断線或いは電気抵抗値の変化が生じない程度に埋没させればよい。また、上述の実施形態では、電気絶縁部材の溝部711、922内に埋没配設したマグネットワイヤー42は1本の例であったが、マグネットワイヤー42を複数本埋没配設して上述のようにコイル部42aを形成してもよく、マグネットワイヤーを電気絶縁部材の溝部に複数本配設することにより、この複数本のマグネットワイヤーが、この上に巻回されるマグネットワイヤーによる張力を複数本で分散して受けるから、マグネットワイヤーが溝部に1本配設される場合により、断線や電気抵抗値の変化がより少ない。更に、マグネットワイヤー42を並列巻きする形式のものでは、溝部711、922を複数形成し上述した同様のプロセスでマグネットワイヤー42を複数個所の溝部から並列巻回すればよい。また、本発明になる電磁ソレノイドBは自動車用燃料噴射装置のインジェクタに適用した例であり、マグネットワイヤーの断線や抵抗値の変化がない高品位なインジェクタを提供できる。しかし、これに適用限定されるものではなく、他の機器に適用してもよい。
本発明になる電磁ソレノイドの第1実施形態を示す縦断面図である。 (a)は、本発明の第1実施形態における絶縁部材としてのコイルボビンの上面図、(b)は、(a)のA−A線矢視断面図である。 本発明の第1実施形態において絶縁部材にマグネットワイヤーを巻回した状態を示す縦断面図である。 本発明になる電磁ソレノイドの第2実施形態を示す縦断面図である。 図4のC部の拡大図である。 (a)は、本発明の第2実施形態における中心コアーの上面図、(b)は、(a)のB−B線矢視断面図である。 本発明になる電磁ソレノイドを適用したインジェクタの縦断面図である。 図7に示すインジェクタの要部拡大図である。
符号の説明
41、91 中心コアー
411、92 中心コアー41、91の円筒部
42 マグネットワイヤー
42a コイル部
42b マグネットワイヤー42の電気接続リード端部
70、95 電気絶縁部材としての電気絶縁性コイルボビン、電気絶縁薄膜層
71 コイルボビン70の円筒部
711、922 溝部
72 電気絶縁部材70の一方の端部側
73 電気絶縁部材70の他方の端部側
A インジェクタ
B 電磁ソレノイド

Claims (7)

  1. 磁気回路の一部をなす中心コアーの外周に電気絶縁部材が設けられ、前記電気絶縁部材の仮想中心軸を中心に周回するように前記電気絶縁部材の外周表面部にマグネットワイヤーが奇数段に巻回形成されるコイル部を有する共に、前記仮想中心軸の一方の端部側に、前記マグネットワイヤーの巻き始めと巻き終りの一対の電気接続リード端部を配置する電磁ソレノイドであって、
    前記仮想中心軸方向の、一方の端部側と他方の端部側との間かけて、前記マグネットワイヤーの径の少なくとも一部を前記外周表面部よりも下層部に埋没させるように形成される溝部と、
    前記一方の端部側と前記他方の端部側との間を往復させて、前記電気絶縁部材に前記マグネットワイヤーを巻回する際、往路と復路のいずれかで、前記溝部に前記マグネットワイヤーを埋設させて奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部と、
    を備えることを特徴とする電磁ソレノイド。
  2. 前記溝部に前記マグネットワイヤーの径の全てを埋没させて、奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部を備えることを特徴とする請求項1記載の電磁ソレノイド。
  3. 前記電気絶縁部材は、前記中心コアーの外周に装着された電気絶縁性コイルボビンであり、前記溝部は前記電気絶縁性コイルボビンの外周表面部に開口する凹部を有して形成され、前記マグネットワイヤーを前記溝部に埋没させて奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁ソレノイド。
  4. 前記電気絶縁部材は、前記中心コアーと当該中心コアーの外周表面部に覆わせて配置形成した電気絶縁薄膜層を含み、
    前記中心コアーの外周表面部に開口する凹部を有して形成されるコアー溝部と、
    前記コアー溝部と前記マグネットワイヤーとの間に前記電気絶縁薄膜層が介在されて、前記マグネットワイヤーを前記コアー溝部に埋没させて、奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁ソレノイド。
  5. 前記電気絶縁部材に形成した溝部は複数設けられ、前記マグネットワイヤーが前記複数の溝部の各溝部に配設されて並列巻回で奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電磁ソレノイド。
  6. 前記マグネットワイヤーが前記溝部に複数本配設され、奇数段にコイル巻き形成される前記コイル部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電磁ソレノイド。
  7. 前記電磁ソレノイドは、自動車用燃料噴射装置のインジェクタに適用されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の電磁ソレノイド。

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