JP2007278789A - マイクロ流体チップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第1の基板と第2の基板とからなり、該第1の基板と第2の基板との間に流体を移送するためのマイクロチャネルを少なくとも1本有するマイクロ流体チップにおいて、
前記マイクロ流体チップは少なくとも1個の加熱冷却構造を有し、該加熱冷却構造は、
前記マイクロチャネルが接続される所定の容積の第1の空間を有し、
前記第1の空間に隣接して、弾性を有する薄膜により隔離された、前記第1の空間の平面面積よりも大きな平面面積と所定の容積を有する第2の空間を、前記第1の基板又は第2の基板の何れかに有し、
前記第1の空間に隣接して、前記第2の空間が配設されていない側の基板を貫通して伝熱部材が配設されており、該伝熱部材には冷熱源を接触させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【選択図】 図2
Description
(1)流路が特殊である。
各温度区画の間で正確な液量を移送できないと、正しい温度サイクルが行われない。そのために、前記非特許文献2では、各温度区画の間に細管118を用いた一種のバルブ構造(Capillary Burst Valve)を設けなければならなかった。マイクロ流体チップのような微細流路では、流路の一端に設けられたチャンバーの容積変化と同量の流体の移送は全く期待できない。それは、主に液体の界面力によるものである。特にこの方式のように、流路の離れた一端に配置したアクチュエータを用い、流体を一定方向だけでなく、逆方向にも移送させる場合、チャンバー容積を同量増加させ、あるいは減少させても、移送方向によって移送される液量が異なる。前記の細管によるバルブ構造は、その部分での流体の移送を故意に妨げ、アクチュエータの駆動方法を工夫することで一定量の流体を移送するように工夫している。しかし、細管の寸法や形状など、適切な流路設計を行うことが非常に難しく、具体的な設計指針が無い。
前記に関連し、アクチュエータは単に一定変位の位置決め制御により、チャンバーの容積を一定量可変にすれば良いという単純なものではなく、その変位速度が重要になる。すなわち、速度も制御し、例えば、流体の移送初期は高速に変化させ(急激に高い圧力を作用させ)、流体のバルブ構造部分の通過を行わせる等の複雑・高度な駆動方法が必要になる。
3つの温度区画の間の流体の移送を一つのアクチュエータにより行うため、アクチュエータは他段階のアナログ的な制御が必要になる。単純なデジタル的なオン・オフ制御では流体の移送は行われない。更に、温度区画が3つ以上に増え、多点間の流体移送を行う必要がある場合、流路が長くなり、流路の一端に配置したチャンバーの容積変化による流体の移送は、技術的に困難である。
流路の一端に大きなチャンバーが配置されているので、加熱冷却を行うPCR以外の他の工程との間の流体移送が行い難い。元々、前記非特許文献2に示されている技術は、マイクロ流体チップで温度サイクルによるPCR工程のみを行うことを前提としたものであり、DNA抽出やPCR溶液の調合といった前工程や、電気泳動によるDNA検出といった後工程等の流体の移送は考慮されていない。
PCRを行う溶液の容量は、温度区画内の流路の大きさによって決定されてしまい、一度マイクロ流体チップを製作してしまった後は、アクチュエータの動作を変更する等で容量の変更をすることができない。
対象とする溶液を或る温度区画で加熱冷却している間にも、他の温度区画で余分な溶液が加熱冷却されることになり、それが無駄になる。溶液の無駄を解消するため、必要量の溶液の前後を気体で区切った液滴のみを流路に導入し、PCRを行うことも考えられるが、流路内に所定量の液滴を形成することは非常に困難な操作である。
また、PCRのように100℃近い高温に加熱する場合、PCR水溶液の液滴は気体との界面から頻繁に蒸発し、溶液の量や濃度の変化が生じてしまう。更に、蒸発した気体により流路内の圧力が変化し、液滴の移送に障害をもたらす。蒸発の観点からは、気体で区切られた液滴ではなく、密閉され気体を含まない液体の方が好ましい。
同一流路を複数、並列に配置して並列処理を行う場合、各流路に一つずつアクチュエータを設ける必要がある。高価なアクチュエータを複数使用することは非経済的であり、また、各アクチュエータに対し前記のような高機能・高精度な駆動操作を行わなければならず、その制御回路も複雑かつ高価となる。更に、マイクロ流体チップの微細構造と異なり、外部に配置するアクチュエータは比較的大きな寸法であり、多数を高密度に配置することは困難である。
特に、本発明の目的はマイクロ流体チップにおける微量流体の移送を伴う、前記のような特徴を有する加熱冷却構造を提供することである。
更に、本発明の目的は光を用いた観察及び解析に適した加熱冷却構造を提供することである。
前記マイクロ流体チップは少なくとも1個の加熱冷却構造を有し、該加熱冷却構造は、
前記マイクロチャネルが接続される所定の容積の第1の空間を有し、
前記第1の空間に隣接して、弾性を有する薄膜により隔離された、前記第1の空間の平面面積とほぼ同等又はそれよりも大きな平面面積と所定の容積を有する第2の空間を、前記第1の基板又は第2の基板の何れかに有し、
前記第1の空間に隣接して、前記第2の空間が配設されていない側の基板を貫通して伝熱部材が配設されており、該伝熱部材には冷熱源を接触させることができることを特徴とするマイクロ流体チップである。
(1)流路設計が容易である。
第1の空間(温度室)や第2の空間(圧力室)の基準容積を求める程度で、難しい設計手法を必要としない。
(2)流体移送を行う駆動源が単純・安価で、駆動方法も簡便である。
蓄圧した空圧容器と電磁弁のオンオフで行える。
(3)多点間の流体移送に適している。
移送の原理上、点数に制限がない。
(4)多工程化に適している。
加熱冷却を行う温度室の上部等に流体移送を行う圧力室を配置しており、前後工程間のマイクロチャネル途中にその移送を妨げる構造物を設ける必要がない。
(5)流体の容量を可変にすることができる。
操作圧力を適宜選択することで移送される流体の容量を可変にできる。従来のマイク口流体チップの微細構造は高価な鋳型によって成型され、寸法の異なるマイクロチャネルはそれぞれ別の鋳型を必要とする。同―のマイク口流体チップで適宜必要量のPCR産物が得られれば、極めて経済的である。
(6)流体の無駄がない。
順圧操作時は温度室の容積をほぼゼロにすることができ、不要な温度室に溶液を溜めることがない。
(7)液体の蒸発を防止することができる。
温度室は伝熱部材と圧力室に挟まれたサンドイッチ構造である。伝熱部材にガスバリア性のある材質を用い、圧力室に液体を満たすことで、温度室内の液体の蒸発を防止することができる。
(8)密閉・予圧操作に適している。
温度室の前後には自由に開閉弁が設けられ、しかも、開閉弁が閉じられた状態でも複数の温度室間の流体移送が問題なく行われ、よって、流体を密閉状態で加熱冷却できる。特に流体に対して予圧を与えた状態で加熱冷却でき、液体の蒸発や気体の拡張を防止することもできる。
(9)並列処理に適している。
液体移送の為の駆動源を共通にすることができ、並列処理の系統数が増えても、マイク口流体チップの製造や周辺機器に掛かるコストに大きく影響せず、駆動も1系統分だけの駆動で全ての系統の処理が行える。
また、マイク口流体チップ内に於ける液体移送の為の駆動部である圧力室の平面的な占有面積が小さく、多系統を高密度で配置できる。
(10)光を用いた観察・解析に適している。
流体移送用のアクチュエータとして圧電素子や電動モーター等の遮光物を温度室近傍に配置する必要がなく、圧力媒体に気体またほ透明流体を用いることで圧力室側からの光を用いた観察・解析が行える。
更に、透明な伝熱部材と冷熱源の配置や形状を工夫することで、透過光による観察,解析も可能である。
伝熱薄膜21はマイクロチャネル9を封止する役目と同時に、伝熱部材と流体あるいは温度室7周辺の部材との間の熱伝導を担う。その為に適度の厚みの薄膜であることが好ましい。温度室7周辺の部材は、マイクロチャネル9や温度室7を構成すると同時に、マイク口流体チップ1の他の部分に伝熱部材17からの熱を伝えない断熱の役目を担う。その為には伝熱部材17より熱伝導の低い材料を用いることが好ましい。冷熱源19と伝熱部材17、伝熱部材17と伝熱薄膜21、伝熱薄膜21と温度室7の周辺部材、伝熱薄膜21及び温度室7の周辺部材と流体との間で熱伝導が行われ、流体は冷熱源と同じ温度に加熱又は冷却される
図3Aに示されるように、圧力室11を温度室7より高圧に操作(順圧操作と呼ぶ)すると、圧力室11と温度室7の問の弾性薄膜15は温度室7側にたわみ、温度室の容積は減少する。逆に、図3Bに示されるように、圧力室11を温度室7より低圧に操作(逆圧操作と呼ぶ)すると、弾性薄膜15は圧力室11側にたわみ、温度室7の容積は増加する。
マイクロチャネル9に流体を導入しておくと、温度室7の容積の増加分に等しい容量の流体が温度室7の中に流入し、温度室7の容積の減少分に等しい容量の流体が温度室7から流出する。圧力室11の順圧及び逆圧操作と、温度室7に接続したマイクロチャネル9の途中に設けた開閉弁23a及び23bの操作を組合せることで、流体を目的の方向に移送することができる。本発明のマイクロ流体チップ1が前掲の非特許文献2に記載されたマイクロ流体チップと最も異なるのは、流体の加熱冷却を行う流路(本発明では温度室7)の容積を可変にすることで、流体の移送が確実に行える点である。
工程2の「変性」では、開閉弁23aを閉じ、初期変性の時間だけ維持する。
工程3の「アニーリング」では、温度室7−1に対して順圧操作を行うと同時に、温度室7−3に対し逆圧操作を行い、PCR溶液を温度室7−3に移送し、アニーリングの時間だけ維持する。
工程4の「伸長」では、温度室7−3に対して順圧操作を行うと同時に、温度室7−2に対して逆圧操作を行い、PCR溶液を温度室7−2に移送し、伸長の時間だけ維持する。
以後は、工程2から工程4を必要回数(例えば、30回)繰り返す。なお、2サイクル目からの変性は初期変性より短い時間でよい。また、最後のサイクルの伸長は、最終伸長として時間を長くする。
工程5の「溶液排出」では、所定のサイクル数終了後に開閉弁23bを開き、同時に全ての温度室に対し順圧操作を行い、PCR産物を後工程へ移送する。
(1)使用したマイクロ流体チップの仕様諸元
上面基板及び下面基板の構造材:PDMS;
伝熱部材:ガラス、厚さ1mm;
マイクロチャネル寸法:幅100μm、深さ150μm;
温度室寸法:直径3mmの円柱、深さ150μm、基準容積約1μL;
圧力室寸法:直径3mmの円柱、深さ150μm、基準容積約1μL、温度室と同心円状に配置;
温度室の配置:15mm間隔で3個直列に配置し、更にそれを10系統並列に配置;
弾性薄膜:厚さ300μmのPDMS膜;
伝熱薄膜:厚さ200μmのPDMS膜;
開閉弁:直列に3個配置した温度室の前後のマイクロチャネル途中に開閉弁を配置;
圧力媒体:圧力室にはミネラルオイルを満たした。
鋼ブロックにカートリッジヒーターと熱電対を組み込み、電子温度調節器とSSR(ソリッドステートリレー)にて鋼ブロックの温度を制御した。3つの銅ブロックの温度設定は、変性、伸長、アニーリングに対応して、それぞれ95℃、72℃、60℃とした。
PCR試薬は米国プロメガ社のPCR Core System IIを用いた。
鋳型DNAとプライマーは、前述の製品に含まれるPCRコントロール用のプラスミドDNAとプライマーを用いた。PCRが正常に行われた場合、323bpのDNA断片が増幅される。
PCR溶液は50μL当り、下記の表2のように調合した。
PCR溶液は予圧70KPaで、まず変性に対応する温度室に導入した。温度室と圧力室の基準容積の合計は約2μLであり、よって1系統当り約2μL、並列処理10系統で合計約20μLのPCR溶液を導入した。系統ごとに異なるPCRが行えるが、今回は全て同一のPCR溶液とした。順圧操作は圧力室に110KPaを加圧することで行った。逆圧操作は、溶液に予圧が掛けてある為、圧力室の圧を大気開放することで行った。
次に示す時間で温度サイクルを行った。
初期変性2分+(変性30秒+アニーリング30秒+伸長30秒)x30サイクル+最終伸長2分で合計49分
尚、サイクル時間は更に短縮できる可能性があるが、上記は余裕を考慮し長いサイクル時間としている。
温度サイクル中の温度室を圧力室側から観察することができた。
PCR溶液中に気体の拡張は見られなかった。
温度サイクル後に並列処理10系統を合計して約20μLのPCR産物がマイク口流体チップより回収できた。
よって、PCRによる溶液の蒸発はほとんど無視できる程度のものであったと推察される。
本発明のマイクロ流体チップは、加熱冷却操作を必要とする様々な分野で使用できる。例えば、本発明のマイクロ流体チップは、医学、獣医学、歯科学、薬学、生命科学、食品、農業、水産、警察鑑識など様々な分野で好適に有効利用することができる。特に、本発明のマイクロ流体チップは、蛍光抗体法、in situ Hibridization等に最適なマイクロ流体チップとして、免疫疾患検査、細胞培養、ウィルス固定、病理検査、細胞診、生検組織診、血液検査、細菌検査、タンパク質分析、DNA分析、RNA分析などの広範な領域で安価に使用できる。
3 上面基板
4 中間基板
5 下面基板
7 温度室
9 マイクロチャネル
11 圧力室
13 圧力管路
15 弾性薄膜
17 伝熱部材
19 冷熱源
21 伝熱薄膜
23a,23b 開閉弁
25 貫通孔
27 受光素子
100 従来のマイクロ流体チップ
102 上面基板
104 マイクロチャネル
105 ポート
106 ポート
108 下面基板
110 非特許文献2に記載された往復(シャトル)PCR法を実施するためのマイクロ
流体チップ
112 加熱ブロック
114 マイクロチャネル
116 チャンバー
118 細管
120 ゴム弾性体
122 アクチュエータ
Claims (9)
- 第1の基板と第2の基板とからなり、該第1の基板と第2の基板との間に流体を移送するためのマイクロチャネルを少なくとも1本有するマイクロ流体チップにおいて、
前記マイクロ流体チップは少なくとも1個の加熱冷却構造を有し、該加熱冷却構造は、
前記マイクロチャネルが接続される所定の容積の第1の空間を有し、
前記第1の空間に隣接して、弾性を有する薄膜により隔離された、前記第1の空間の平面面積とほぼ同等又はそれよりも大きな平面面積と所定の容積を有する第2の空間を、前記第1の基板又は第2の基板の何れかに有し、
前記第1の空間に隣接して、前記第2の空間が配設されていない側の基板を貫通して伝熱部材が配設されており、該伝熱部材には冷熱源を接触させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。 - 前記加熱冷却構造において、前記第1の空間は流体試料を加熱・冷却するための空間であり、前記第2の空間は前記弾性薄膜を介して前記第1の空間の容積を変化させるための圧力空間であり、前記第2の空間内には気体又は液体が圧力媒体として充填されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造において、前記伝熱部材と第1の空間との間に伝熱薄膜が更に配設されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造において、前記第1の空間に接続されるマイクロチャネルの途中に開閉弁を更に有することを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造において、前記第1の基板、第2の基板及び伝熱部材が全て光透過性材料から形成されており、前記冷熱源は前記第1の空間から伝熱部材を透過する光の進路を塞がないように配置されるか又は構成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造を複数個並列的に有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造を複数個直列的に有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造を複数個直列的に有し、かつ、該直列的に配列された加熱冷却構造を複数個並列的に有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のマイクロ流体チップ。
- 前記加熱冷却構造はPCRを行うために使用されることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のマイクロ流体チップ。
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