JP6202713B2 - 生化学用カートリッジおよび生化学用送液システム - Google Patents

生化学用カートリッジおよび生化学用送液システム Download PDF

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Description

本発明は、生化学用カートリッジに関する。具体的一例は、デバイス内に形成された流路にて試薬・サンプル・検体等を送液させ、化学反応・精製・分析を行うためのデバイス・送液システムの構成、構造、方式に関するものである。
核酸分析を用いたアプリケーションが法医科学、入出国管理、テロ対策などの分野で実用化されている。
例えば法医科学分野では、STR解析が実用化されている。STR解析はゲノム中のある領域の繰返し塩基配列(Short Tandem Repeat: STR)を分析する。STR塩基配列の長さが個人固有であることを用い、個人識別や親子鑑定などDNA鑑定を行う。
特許文献1に米FBIが指定する13種類の領域を一度に解析する方法が開示されている。STR解析は、一般的にDNAサンプル採取、DNA増幅、DNA熱変性、DNAフラグメントの分離、DNAフラグメントの検出の順で行われる。
STR解析の前処理プロセスとして、まず生体サンプルまたは生体由来物質のサンプルからテンプレートとなる核酸(多くはDNAである)を抽出し、抽出したテンプレートDNAをPCR反応にて増幅し、ホルムアミド処理または加熱と急速冷却によってDNA2本鎖を一本鎖に変性させる。
DNA増幅プロセスでは、一つの測定DNAサンプルに対して、13種類のプライマセットを用いて多重PCR増幅を行う。DNA増幅中に増幅産物であるDNAフラグメントをラベル化する。このPCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応 Polymerase Chain Reaction)と呼ばれ、一般的には少量しか抽出できない核酸サンプル(テンプレートDNA)を検出器が検出できる程度まで増幅させる工程に有効な方法として用いられている。
DNAフラグメント分離プロセスでは、ラベル化DNAフラグメントを電気泳動で分離する。DNAフラグメントの検出プロセスでは、得られた分離DNAフラグメントの電気泳動パターンを検出、分析する。
これまでDNAフラグメントの分離、DNAフラグメントの検出は、ヒトゲノム解析によって広く知られるDNAシーケンサなどによって自動化が積極的に行われてきた。一方で、その前処理プロセスにおいては、これまで熟練者による手作業によって行われる事が一般的であったが、近年この前処理プロセスを自動化することで、STR解析を含む多くの遺伝子解析が限られた施設と熟練者だけでなく、より多くのケースにおいて使われるような試みが為されている。
例えば、前処理プロセスにおいて欠かせない、試薬を混合させる方法として、特許文献2に挙げられる自動分析装置等では、分注ロボットによるピペット方式が採用されている。分注ロボットとは、装置の一定範囲内を2次元、もしくは3次元に駆動させ、先端に付いたノズルやチップ等で液体の吸引・吐出を自動で行うユニットであり、医用分析や生化学分析の装置では好んで仕様される技術のひとつである。
但し、遺伝子解析分野においては、DNAやRNAをサンプルとして扱う事が多いため、サンプル以外のDNAやRNAの混入(以下コンタミと称する)を防ぐ必要がある。特にPCR反応においては、微量のテンプレートDNAを鋳型として増幅するため、解析対象外のDNAがPCR反応前にコンタミすると、解析結果に対して致命的な誤解析結果を生み出す可能性が高い。そのため手作業に於いては、前述したSTR解析プロセスにおけるDNAサンプル採取、抽出などのDNAを取り扱う部屋と、その後のPCR反応を行う実験室を別々にし、さらにサンプルチューブ開閉で空気中に浮遊したDNAが入らないように、クリーンベンチ下で作業を行う事が一般的であった。
このコンタミ防止に対し、特許文献2による分注ロボットを用いたピペット方式の場合、ノズルの洗浄やチップの使い捨て等を行ってコンタミを防止する。しかしながら、ノズルやチップは空気中を移動する。DNAは乾燥状態では空気中に浮遊するため、これら外気に起因するコンタミを防止することは非常に困難であり、これを防止するには、テンプレートDNAを抽出・送液・混合をする部屋とPCR反応を行う部屋を分け、さらにクリーンベンチ内で解析を行うなどをしなければならない。
これに対し、近年マイクロフルイディクスデバイスを用いた微小空間内での試薬等の物質の化学反応、合成、精製、抽出、生成及び分析に関する研究が進められている。これらマイクロフルイディクスデバイスは、遺伝子解析等の幅広い用途に応用でき、これらは通常の装置と比べてサンプル及び試薬の消費量が少ない、様々な試薬をセットする場合と比べて持ち運びが簡単、デバイスそのものを使い捨てが出来る等の利点がある。また、密閉されたデバイス内に全ての試薬が収められ、反応を進めるため、先にあげた外気による浮遊DNAを始めとするコンタミの問題に対処しやすいと考えられており、遺伝子解析分野にも医用分析や生化学分析分野にも対応する方法である。
米国特許第6531282 特開昭63-315956 特開2007-278789
安田武夫,:プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果,プラスチックス : 日本プラスチック工業連盟誌 / 「プラスチックス」編集委員会 編
しかし、様々なマイクロフルイディクスデバイスが考案されているにも関わらず、これらが遺伝子解析分野において主流となっていないのは、このデバイスに求められる要求仕様が高く技術的に難しいこと、さらにこれらを解決するために形状が複雑になり、製造コスト高くなることが挙げられる。求められる要求項目を列挙すると、以下の通りである。
1)試薬を送液するタイミングが制御しやすいこと。
2)試薬の送液量が定量的であること。
3)送液圧力が制御しやすいこと。
4)送液の際に気泡を含みにくいこと。
5)試薬を長期間保存できること。
6)PCR反応やDNA熱変性を始めとする温調の際に熱伝達率が高いこと。
7)温調の際に試薬の蒸発量が少ないこと。
8)外気からのコンタミが限りなく低いこと。
9)低コストで供給可能なこと。
特許文献3は、これらの問題を解決するために弾性薄膜を圧力で駆動する方式をとっている。
その特徴である弾性薄膜の材質として、例としてPDMS(ポリジメチルシロキサン)が挙げられているが、PDMSはポリマーの化学名であるため、実際に弾性薄膜として利用するには、色々な添加剤を加え、架橋させ、弾性体の性質を持たせたものであろう。一般的には、これはシリコンゴムやシリコンエラストマーと呼ばれている。
しかしながら、これらシリコンゴムやシリコンエラストマーを利用すると、PCR反応における温調時に試薬の多くを蒸発で失ってしまう。これはシリコンゴムやシリコンエラストマーが、他の弾性薄膜と比べても高い水蒸気透過性を持つ事が原因であり、圧力媒体として気体を使用する場合は特に顕著である。これを低減する為の方法としてミネラルオイルなど液体圧力媒体を充填する事が挙げられているが、デバイス内にこれらを入れ込み封止して供給することは、製造コストを引き上げる事になる。
また、その他にも弾性薄膜として様々な材質を検証したが、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)は技術的に厚さ200μm以下の薄膜を成型できない事が知られており、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)はPCR反応における増幅効率を阻害する。また、FKM(フッ素ゴム)は特に高価であるため、これも製造コストを引き上げる事となる。
マイクロフルイディクスデバイスがその特性上、消耗品として扱われる事を考えると、購入価格が高い事は、利用者にとって大きなデメリットである。
従って、本発明の目的は、生化学用カートリッジにおける、1)試薬を送液するタイミングが制御しやすい、2)試薬の送液量が定量的であり、3)送液圧力が制御しやすい、4)送液の際に気泡を含みにくい、5)試薬を長期間保存できる、6)PCR反応やDNA熱変性を始めとする温調の際に熱伝達率が高い、7)温調の際に試薬の蒸発量が少ない、8)外気からのコンタミが限りなく低い、9)低コストで供給可能な、という要求項目を、より多く、および/または、より高く満たすことができるマイクロフルイディクスデバイスを提供することである。
本発明では、特許請求の範囲に記載の構成を採用した。その1つの側面は、以下のとおり説明される。
まず、外気と遮断され、密閉されたマイクロフルイディクスデバイスデバイス(以下カートリッジと称する)を用いて、カートリッジ内の流体と非接触の状態で送液を行う。これにより、空気中を浮遊するDNAとのコンタミを防止しつつ、試薬の混合、攪拌、精製、反応等を行えるようにする。さらにカートリッジの送液膜および伝熱材質として、3次元立体構造をもつ薄膜フィルムを使用することにより、試薬の長期保存、熱伝達率の向上、蒸発量の低減、カートリッジの低コスト化を図り、低ランニングコスト、高安定性の分析装置を広く提供するものである。
カートリッジ本体には、試薬封入の部屋(以下ウェルと称する)、サンプル封入のウェル、反応・精製など行うウェルが形成されている。ウェルの内部では、複数種類の液体試薬またはサンプルがよく混ざるよう撹拌を行う場合もある。
カートリッジ本体の上面は、カバーフィルムが接着または溶着する。カバーフィルムで蓋をされたウェルの内部に試薬が保存される形である。
カートリッジ下面にはウェル同士を繋ぐ溝が形成されている。その溝の上から薄膜フィルムを貼り付ける。貼り付ける薄膜フィルムは、カートリッジ下面の平面部に沿うような平面部と、カートリッジ下面に形成された溝に沿うような、溝と同形状の3次元立体構造を採っている。カートリッジ下面の平面部と薄膜フィルムの平面部は、送液の際に試薬が漏れないよう、強力に接着または溶着されている。
カートリッジを乗せて固定し、送液を行うための機構を有するカートリッジホルダには、カートリッジ本体に形成されている溝と同形状の溝が形成されている。カートリッジ本体とカートリッジホルダの溝は、薄膜フィルムを挟んで上下対称か、またはそれに近いとなる。このカートリッジ本体とホルダに挟まれて形成される溝が流路となり、初期状態ではカートリッジ本体の溝に沿っている薄膜フィルムが、ホルダ側の溝に沿う時、試薬が送液される構成である。
カートリッジとは、このカートリッジ本体に、カバーフィルム、薄膜フィルムを接着または溶着したものを指す。
各ウェルへの入口、出口には、空気圧で直動するピン(エアシリンダ)を内蔵させる。また、カートリッジの溝に沿う薄膜フィルムにも空気圧を加圧および減圧できるようしておく。また、カートリッジホルダにカートリッジをセットした時に、薄膜フィルムを潰して流路周りを塞ぐことができるような突起を設けておく。
本発明によれば、上記構成により、生化学用カートリッジにおける上述した要求項目を、以下のとおり、より多く、および/または、より高く満たすことができる効果が得られる。
1)試薬を送液するタイミングが制御しやすいこと。
カートリッジホルダにカートリッジをセットした時に、空気圧の制御でピンを駆動させることで、各ウェルの入口および出口の封止、開放を行えるようになる。
また、流路内の空気圧を減圧した際には薄膜フィルムがカートリッジホルダ側にたわみ、加圧した際にはカートリッジ本体側にたわむ事で、流路にメンブレンを押しつけられるようになり、空気圧にて流路の形状を可変させることが出来る。これにより、内部の流体を動かすことが可能となる。この動きを組み合わせることで、密閉されたカートリッジ内の流体と非接触の送液を行うことが可能となる。
このように試薬の入口と出口の封止と解放をピンの上下によって制御し、また送液を流路の減圧と加圧によって制御することで、全ての送液順序は機構的に制御される。機構をプログラムで動かすため、送液のタイミングを制御する事は極めて容易である。
2) 試薬の送液量が定量的である。
送液量は上下対称なカートリッジ本体の溝とカートリッジホルダの溝で形成される容量から、3次元立体構造を採る薄膜フィルムの体積分を引いた値となる。
これらの精度は、カートリッジ本体およびカートリッジホルダを金属で作る場合には金属加工によって、また樹脂で作る場合には成型によって、溝の精度は求められる。さらに薄膜フィルムも3次元立体成型である。これらはすでに確立された技術であるため、その加工精度は高く、よって送液量に関しては定量が可能である。
3)送液圧力が制御しやすいこと。
送液圧力は薄膜フィルムをカートリッジ本体側に押し出す圧力で求められる。この圧力も手作業が介在せず機構的に生み出されるため、制御は容易である。
4)送液の際に気泡を含みにくいこと。
送液の際に気泡を含む理由としては、ひとつは外部から巻き込まれる気泡と、もうひとつは内部で発生する気泡が挙げられる。
本発明のカートリッジは、ユーザーによるサンプルの注入を除いては、外部からのコンタミを防ぐために、外部から遮断された密閉空間内にて全ての送液工程が行われるため、外部から巻き込まれる気泡は存在しない。
内部で発生する気泡に関しては、試薬に界面活性剤などの気泡が発生しやすい試薬を使う場合、ゆっくりと送液する事が、気泡を発生させない唯一の対策である。これに対して、本発明における流路に薄膜フィルムを使用することが、自己復元性を持つ弾性薄膜を使用する場合に比べて、空気圧の加圧または減圧に追随し駆動させる事が可能である事は容易に理解されよう。
5)試薬を長期間保存できること。
試薬はカートリッジ本体のウェルに保存する。一部は薄膜フィルムに触れることもある。
一般的に試薬を封入して保存する容器としては、ガラスの他は耐薬品性の高いPPまたはPCなどの容器が選ばれている。カートリッジ本体の材質および薄膜フィルムの材質として、後述の通りPPやPCは有用な材料のひとつであり、試薬の長期保存には適している。
6)PCR反応やDNA熱変性を始めとする温調の際に熱伝達率が高いこと。
空気圧によって変形可能な薄膜フィルムの厚さとしては0.05mm〜0.2mmが望ましいため、PCR反応に使われる96wellプレートやエッペンドルフチューブが厚さ0.5mm程度であることを踏まえると、これら遺伝子解析分野で使われるおよそ一般的な温調については十分に適していると考えられる。
7)温調の際に試薬の蒸発量が少ないこと。
試薬の蒸発が懸念されるのはPCR反応を行う際のウェルとその付近の流路である。非特許文献1によれば、前述の弾性薄膜として挙げられるシリコンゴムやシリコンエラストマーの水蒸気透過度(JIS K 7129)が820(g/m2・24h)に対し、薄膜フィルムとして考えられるPCは44(g/m2・24h)、またPPは1.6(g/m2・24h)と、薄膜フィルムの水蒸気透過性は極めて低い。この事からも、薄膜フィルムを使用することで試薬の蒸発量を大幅に低減できる。
8)外気からのコンタミが限りなく低いこと。
本発明のカートリッジは密閉空間内で閉じられた送液系を有するため、サンプルをカートリッジに挿入する時を除いて、前処理プロセスにおける外気からのコンタミの可能性は極めて低い。また、PCR反応後においては、増幅する工程が終えているため、外気からの浮遊DNAが少量コンタミしたとしてもノイズ程度の信号強度にしかなり得ず、分析結果には影響がない。
9)低コストで供給可能なこと。
本方式を採用することで、密閉された空間内での非接触送液が出来るため、コンタミの防止が可能となる。これはユーザーにとってはクリーンベンチなど特殊な設備を必要とせず、導入コストの低減を示す。また、各ウェルの入口の封止、開放を行う弁構造をカートリッジホルダ側に持たせることで、カートリッジの原価を抑えることができ、ランニングコストの低減を可能とする。
本発明を適用する核酸分析装置のユニット全体構成図 送液システムのユニット構成図 空気圧制御システム3の構成 3方弁の方向制御を示した図 STR試薬を配置した時のカートリッジの概略図 カートリッジおよびカートリッジホルダの構成断面図 本発明によって送液する為の一連の動き 本発明によって送液する為の一連の動き 本発明によって送液する為の一連の動き 本発明によって送液する為の一連の動き 本発明によって送液する為の一連の動き 本発明によって送液する為の一連の動き
本発明のカートリッジを用いる核酸分析装置の全体像並びに各流路における送液機構について、STR解析を例に取り、図を用いて説明を行う。
図1は、本発明の送液システムを用いて、STR解析を始めとする核酸分析を行うための、核酸分析装置のユニット全体構成図である。
核酸分析装置は、カートリッジ1、空気圧制御システム3、駆動ユニット70、ポリマー容器71、ポンプユニット72、キャピラリ73、恒温槽74、レーザユニット75、レーザコントローラ76、検出器77、電源78、高電圧電源79、メイン基板80、温調ユニット81からなる。
空気圧制御システム3はカートリッジ1と接し、カートリッジ1内の送液を制御する。
温調ユニット81はカートリッジ1に接し、カートリッジ1内の試薬またはサンプルの温度制御を行う。
駆動ユニット70は少なくともカートリッジ1もしくはキャピラリ73を駆動させ、カートリッジ1内に収められた試薬にキャピラリ73を接液させる。
キャピラリ73にはポリマー容器71内に収められたポリマーがポンプユニット72によって注入され、カートリッジ1に接液し、カートリッジ1内で増幅、蛍光ラベル化されたDNAフラグメントを吸引した後、高電圧電源79によって発生した高電圧電源でDNAフラグメントを塩基長毎に分離する。その際、熱量が発生するキャピラリ73内のポリマー温度を一定に保つのが恒温槽74である。
レーザユニット75は、キャピラリ73にレーザを照射してキャピラリ73内の蛍光分子を励起する。検出ユニット77は励起された蛍光分子を検出する。
これらのユニットは電源78によって電力を得て、メイン基板80によって制御される。
図2は本発明の送液システムを示すユニット構成図である。
送液システムは試薬を密閉して送液するカートリッジ1、駆動するピンが内蔵されたカートリッジホルダ2、カートリッジホルダ2に内蔵されたピンを駆動させるための空気圧制御システム3によって構成され、さらにエアーポンプ30によって制御される。
カートリッジ1には試薬をあらかじめ封入しておくウェル、ユーザーがサンプルを封入するウェル、精製を行うウェル、反応を行うウェル、攪拌を行うウェル等があり、それぞれが溝で繋がっている。
上記カートリッジ1はカートリッジホルダ2にセットされ、カートリッジホルダ2と空気圧制御システム3は、空気圧配管で繋がれる。
以下、図3により空気圧制御システム3の構成を示す。空気圧の駆動源となるエアーポンプ30が空気の吸引・吐出を行う。吐出された空気は配管を通りフィルタ31、圧力調整弁32を通り分岐管35に接続される。分岐管35から片方は大気解放2方弁33に接続され、その先のサイレンサ34-bにて大気解放となる。もう片方は加圧配管2方弁36を通り、加圧用3方弁マニホールド38-aへと接続される。
大気解放2方弁33と加圧配管2方弁36はノーマルクローズとなっており、通常時は流路が閉じており、通電時のみ開放される。加圧用3方弁マニホールド38-aには加圧用3方弁39-aが搭載されており、そこから加圧用スピードコントローラ40-aを介してカートリッジホルダ2へと接続される。加圧用3方弁マニホールド38-aの大気解放部にはサイレンサ34-aが取り付けられる。エアーポンプ30の吸引側は、配管を通り負圧配管3方弁37へと接続される。
負圧配管3方弁37の片方は大気解放部41となっており、もう片方は負圧用3方弁マニホールド38-bへと接続される。負圧用3方弁マニホールド38-bには負圧用3方弁39-bが搭載されており、そこから負圧用スピードコントローラ40-bを介してカートリッジホルダ2へ接続される。負圧用3方弁マニホールド38-bの大気解放部には負圧大気解放用スピードコントローラ40-c、サイレンサ34-cが取り付けられる。
エアーポンプ30から吐出された空気がフィルタ31を通ることで、空気に含まれるゴミや埃を取り除く。これにより、配管内への異物混入を防ぐ。また、圧力調整弁32にて、カートリッジホルダ2へ与えられる空気圧を適切な圧力に調整することが可能となる。
加圧用3方弁39-a、負圧用3方弁39-bは、それぞれマニホールドに搭載することで、配管の接続を1箇所に纏めることが出来る。仮に3方弁の数が増えても配管の接続は1つで済むため、よりコンパクトに収めることができる。
カートリッジホルダ2に接続される配管にはそれぞれスピードコントローラを接続することで、空気の流量を制御することが出来る。本発明は空気圧にて送液を行うため、空気圧の流量と送液の流量には密接な関係がある。
さらに、負圧用3方弁マニホールド38-bの大気解放部にもスピードコントローラを設けておくことで、薄膜フィルム21に与えている負圧をゆっくり大気圧に戻すことが可能となる。これによっても送液の流速(単位時間あたりの流量)をコントロールすることが可能となる。
また、大気解放部にはサイレンサを設けておくことで、排気の際の音を小さくする。
図4は、空気圧制御システム3に構成される3方弁の方向制御を示した図である。
本発明の配管系では、マニホールドに搭載した3方弁と、マニホールドに搭載していない3方弁で方向制御が異なる。
まず、マニホールドに搭載された3方弁の方向制御について説明する。3方弁マニホールド38に搭載された3方弁39はそれぞれ、IN側からカートリッジホルダ2側へ繋がる空気圧流路45、カートリッジホルダ2側からOUT側へ繋がる空気圧流路46に切り替えられるようになっている。
3方弁39はノーマルクローズとし、通常状態では空気圧流路45が閉じた状態になり、空気圧流路46が繋がるようになる。この時、IN側から来た空気は3方弁マニホールド38に接続されるが、空気圧流路45が閉じているため、カートリッジホルダ2側には空気圧はかからない。だが、空気圧流路46が開放しているため、カートリッジホルダ2側とOUT側の流路は大気解放となる。3方弁39を通電状態にすると、空気圧流路45が開放となり、空気圧流路46が閉じる。この時、IN側から来た空気圧は3方弁マニホールド38に接続され、空気圧流路45が開放しているためカートリッジホルダ2側に空気圧を与えることが可能となる。それぞれ、3方弁39を介してカートリッジホルダ2側へ配管を接続しているので、通電させた3方弁の部分のみに空気圧が与えられる。これにより、任意の流路のみに空気圧を与えることが可能となる。この方向制御は加圧用3方弁マニホールド38-a、負圧用3方弁マニホールド38-b共に同じである。
次に、負圧配管3方弁37の方向制御について説明する。負圧配管3方弁37は負圧用3方弁マニホールド38-b側とエアーポンプ30を繋ぐ空気圧流路47と、大気解放部41からエアーポンプ30に繋ぐ空気圧流路48を切り替えることができるようになっている。負圧配管用3方弁も同様にノーマルクローズとし、通常状態では空気圧流路47が閉じた状態となり、空気圧流路48は解放となるため、エアーポンプ30は大気解放部41から空気を吸引することとなる。負圧配管用3方弁37を通電すると、空気圧流路47が解放となり、空気圧流路48が閉じることとなるため、エアーポンプ30は負圧用3方弁マニホールド38-bから空気を吸引することとなる。
図5は、カートリッジ1の全体概要の実施例のひとつとして、カートリッジ1の概略を平面図により示している。
カートリッジ1は、カートリッジ1内での処理が正しく為されたか否かを判断するためのコントロールとして、ポジティブコントロールレーン24と、ネガティブコントロールレーン25を持つ。また、採取した生体物質を含む試料(以下、サンプルと称す)を解析するサンプル解析レーン26と、解析する範囲の基準を設定するための基準レーン27の4レーンからなる。
カートリッジ1は、サンプルを採取するサンプル採取ユニット5を直接封入するサンプル採取ユニット封入ウェル6と、各試薬を封入する試薬封入ウェル(例えば核酸抽出用の溶解液を封入する溶解液封入ウェル7、PCR増幅用試薬を封入する増幅用試薬封入ウェル8-a・8-b、増幅後に変性させるための試薬を封入しておく変性試薬封入ウェル9)と、2種類の増幅用試薬を混合して分岐させて送液するための分岐中継ウェル10と、変性試薬と混合させるための変性試薬混合ウェル11と、PCR・変性のために温調を行うための温調ウェル12、処理が終わってキャピラリと接続させて電気泳動を行うためのキャピラリ接続ウェル13を有し、それらを繋ぐ一送液流路14、分岐送液流路15、さらに微量試薬を流路内に封入しておき、送液と同時に微量試薬を混合させるための微量試薬封入部16と、を備える。それぞれの流路14・15は、対応するウェルに設けた送液口が弁機能(後述する)により開き、且つ空気圧制御システム3により吸引が行われたときに液体が流通することが可能となり、この流通に、ポンプ機能が使用される。以下説明において、それぞれの流路14・15が関連工程において流体を通すが、液体を通しているときは、該当の流路が弁機構により開かれた状態であり、それ以外の流路は弁機能により閉ざされている。
本実施例では、スワブ封入ウェル6は、溶解液封入ウェル7から一送液流路14を介して溶解液を導入して攪拌・抽出を行うウェルを兼ねる。また、増幅試薬封入ウェル8-a・8-bは、一送液流路14を介して増幅試薬を導入し、2液の攪拌するウェルを兼ねる。さらに、分岐中継ウェル10は、PCR後の試薬を定量するため、不要分の試薬を廃棄するための試薬排気ウェルも兼ねる。これらのウェルはそれぞれ別々に設けてもよい。
以下、本カートリッジ1上における処理の流れの一例を説明する。まず、サンプルを採取したスワブ5をスワブ封入ウェル6に封入し、密閉する。スワブ封入ウェル6に溶解液封入ウェル7より溶解液が送液され、攪拌を行い、サンプルから核酸抽出を行う。攪拌は、スワブ封入ウェル6と一送液流路14とを溶解液を行ったり来たりさせることで行う。溶解液送液の後に空気を送液し、バブリングさせてもよい。その後、抽出液を溶解液封入ウェル7に全量送液し、そこから変性試薬封入ウェル9に一定量送液する。その間、増幅試薬封入ウェル8-aの試薬を増幅試薬封入ウェル8-bに送液し、同じく攪拌する。そこから分岐送液流路15にて分岐中継ウェル10に送液し、そこからさらに変性試薬混合ウェル11に送液する。その際、コントロールレーン24・25に送液する際には、微量試薬封入部16より微量試薬も合わせて送液する。コントロールレーン24・25、サンプル解析レーン11の変性試薬混合ウェルでそれぞれ攪拌を行い、温調ウェル12に全量送液し、温調ウェル12にてPCRを行う。PCR後、変性試薬混合ウェル11にPCR溶液全量を戻し、さらに一定量を分岐中継ウェル10に廃棄する。これにより、PCR溶液の一部のみを変性試薬混合ウェル11に残す。そこに変性試薬封入ウェル9から変性試薬を送液し、変性試薬混合ウェル11にてPCR溶液と混合させる。その後、再度温調ウェル12に送液し変性を行い、最後に変性後の溶液をキャピラリ接続ウェル13に送液する。キャピラリ接続ウェル13にはキャピラリが接続され(図示省略)、キャピラリ電気泳動によりDNA解析が行われる。
本発明において、カートリッジ1内で処理を行う際、増幅試薬の混合液を分岐させて送液している。こうすることにより、レーン毎で解析結果が異なった場合、一つの混合液から送液しているため、カートリッジ1内に封入された試薬の劣化や組成の違いが分析結果に影響しているものではないことを保証することができる。これにより解析結果の信頼性が向上する。
また、PCR後に一度送液している変性試薬混合ウェル11に戻り、さらに分岐中継ウェル10に余分な溶液を廃棄し、残った溶液と変性試薬を混合するといった手法を用いることとしている。今回の送液方法は、任意のウェルを試薬が行ったり来たりすることができるため、一度送液したウェル、流路を再度使用することが可能となっている。こうすることで、カートリッジ1の小型化を図ることが可能となり、それによりカートリッジ1の取り扱いやすさの向上、原価低減を図ることができる。
図6は、カートリッジ1およびカートリッジホルダ2のA-A断面図(図5に記載)であり、増幅試薬封入部屋8-a・8-b、分岐中継部屋10の概略を示している。なお、その他の各部屋も類似の態様を示すため、図示を省略する。
図6に示すように、カートリッジ1において、カートリッジ本体20には増幅試薬封入ウェル8-a・8-b、分岐中継ウェル10が形成されており、カートリッジ本体20の底面に薄膜フィルム21が接着または接合されている。
この薄膜フィルム21は、カートリッジ本体20の底面すべてには接着しない。具体的には、薄膜フィルムの3次元立体構造部分18は、カートリッジ側の溝17に接着せず、密着という形態をとる。
つまり、消耗品であるカートリッジ1がユーザーの手元に届く時、各ウェルを繋ぐ流路17・18となる空間は形成されておらず、非接合状態の薄膜フィルム21の3次元立体構造部分18がカートリッジ側の溝17にぴったりと重なった状態となっている。
一送液流路14、分岐送液流路15は、カートリッジホルダ側の溝19に備えられた流路負圧ポート69から、薄膜フィルムの3次元立体構造部分18が空気圧で吸引され、逆側に膨らませ、カートリッジホルダ側の溝19にぴったりと重なる事で、初めて流路14・15が形成される。
また、カートリッジホルダ側の溝19は流路加圧ポート68も備えるため、加圧の際にはまたカートリッジ側の溝17にぴったりと重なる。この薄膜フィルムの3次元立体構造部分18の往復動作によって、送液流路の容積を変化させるポンプ機能として構成されている。
本発明においては、最初は流路が存在しないカートリッジ構造とすることによって、カートリッジ1の流路に入り込む空気の量を限りなく少なくすることができる。カートリッジ1に最初から流路が形成されてある場合、流路内の空気の影響により送液精度を悪化させてしまう。例えば、カートリッジ1をカートリッジホルダ2にセットするとき、流路に少しでも力がかかると内部の空気が動き、封入してある試薬が空気を巻き込んでしまう。また、カートリッジ1の取り扱いにも注意が必要となる。しかし、最初は流路が存在しないカートリッジ構造とすることでこれらの問題を解決することが可能となる。
各ウェルには弁機構により封止することができる開口部が有してある。さらに、カートリッジ内にはあらかじめ試薬を封入しておき、封入後に上面からフィルム52を貼り付け、カートリッジ1内を密閉する。
図6はウェル8-a、8-b、10の断面図であるため微量試薬封入部16は無いが、他のウェル間においては、微量液封入部16はこのカートリッジ側の溝19と薄膜フィルムの3次元立体構造19の間に存在する。
遺伝子解析において必要となる試薬は高価なものが多い。そのため、ランニングコストを抑えるためには使用する試薬の量を減らすことが必要となる。試薬の使用量を抑えようとすると、微量の試薬を保存し、それを精度よく送液する必要が出てくる。これに対し、あらかじめ流路に微量試薬を封入しておくことで、送液量の多い試薬を送液すると同時に微量試薬も混合させることが可能となる。これより、微量試薬をハンドリングする必要がなくなる。また、微量試薬を封入している空間の空気量を減らすことが出来るので、結露等による試薬の濃度変化を小さくすることもできる。
カートリッジホルダ2は、ホルダベース60、ホルダトップ61、ホルダ中板62の3層構造となっており、それらの間にそれぞれガスケット63-a・63-bを介して固定されている。
内部には空気圧の変化により駆動するエアシリンダ機構となるピン状のプランジャ64-a〜64-dが内蔵されており、それぞれパッキン65-a・65-bが組み込まれている。また、空気圧を導入しプランジャ64-a〜64-dを上昇させるための上昇空気圧ポート66-a〜66-d、プランジャ64-a〜64-dを降下させるための降下空気圧ポート67-a〜67-dが設けられている。このプランジャ64-a〜64-dを上昇・降下させたときに薄膜フィルム21の一部をたわませて試薬を流路に流す。したがって、このエアシリンダ機構により弁機能を持たせることができる。
カートリッジ1は使い捨てとなるため、量産性に優れた材料にする必要がある。カートリッジ1ではPCR反応を行うため耐熱性があること、試薬を封入して長期間保存するため耐薬品性があること、生化学に対して安定的であること等が求められる。そのため、カートリッジ本体20は、樹脂成型による大量生産も考慮しポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂が望ましい。
薄膜フィルム21は、プラスチック材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリ酢酸ビニル及びこれらの共重合体が挙げられる。これらの材料からなるシートを複数種類重ねて一つのフィルムとしても良い。また、複数種類シートを重ね合わせたフィルムについて、水蒸気透過性を低減するために、アルミニウムなどの金属やシリカの様な無機材料からなる層を内部に導入しても良い。試薬保存時、および温調時などの水蒸気透過による試薬濃度の変化が起こらないようにする事が、本発明における薄膜フィルムを使用することの第一のメリットであり、次に薄膜フィルムとすることで、温調時に熱伝導性が高い事が第二のメリットである。上面に貼りつけるフィルム52は、試薬保存の観点から、水蒸気透過の低いフィルムである必要があることから、薄膜フィルム21に望まれる材料と同様である。
図6は、カートリッジホルダ2のA-A断面図(図2に記載)であり、図5のカートリッジ1のA-A断面図に対応するものである。一例として、図5に示した増幅試薬封入部屋8-a・8-b、分岐中継部屋10の開口部54-a〜54-dを開閉する弁機構を行うためのエアシリンダ機構と、薄膜フィルム21の往復動作によりポンプ機能を持たせるための空気圧給排機構を有している。図5では図示されていないが、その他の部屋に対応したエアシリンダ機構、空気圧給排機構をそれぞれ有している。以下、これらのエアシリンダ機構、空気圧給排機構及びカートリッジホルダ2の構成についてについて説明する。
ホルダベース60、ホルダトップ61、ホルダ中板62はアクリル樹脂が望ましい。送液箇所が増えれば増えるほど、空気圧を与える流路が複雑になる。アクリル樹脂であれば接合が可能なので、複雑な流路にも対応でき、システムをコンパクトにすることができる。送液箇所が増えれば増えるほど、プランジャの数もどんどん増えていく。そのため、プランジャもPPS樹脂などの剛性のある樹脂で成形することで安くすることができる。ただし、成型で作った場合はパーティングラインができるため、そこからの空気のリークには気をつける必要がある。パッキンは空気圧往復運動用のパッキンとし、摺動部分にはグリスも塗布する。グリスも空気圧駆動用のものを選定する。これによりプランジャの摺動抵抗を減らすことができる。
以下、図7〜図12を用いてこれらの構成によるカートリッジ1内での送液の流れを示す。
送液を行う前準備として、まずは、カートリッジホルダ2と空気圧制御システム3を接続させる前にエアーポンプ30を駆動させる。負圧配管3方弁37は大気解放部41と繋がっており、大気解放2方弁33、加圧配管2方弁36はノーマルクローズなので、エアーポンプ30から各2方弁の間で圧力が高まる。その状態で圧力調整弁32にて適切な圧力に調整する。その後、加圧配管2方弁36を通電し、加圧用3方弁39-aを通電する。すると、カートリッジホルダ2に接続される配管に空気が送られるため、その状態で加圧配管スピードコントローラ40-aにてカートリッジホルダ2へ接続される各配管の流量を調整する。同様に、負圧配管側も流量の調整を行う。空気の圧力、流量の調整が終了してから、エアーポンプ30を停止し、配管内の残圧を排気し、カートリッジホルダ2に空気圧制御システム3を接続する。カートリッジホルダ2の流路負圧ポート69-a・69-bのみに負圧用3方弁39-bからの配管を接続し、それ以外の空気圧ポートには加圧用3方弁39-aからの配管を接続する。配管接続終了後、カートリッジホルダ2にカートリッジ1をセットする。
ここからの説明は、増幅試薬封入部屋8-aから増幅試薬封入部屋8-bへ送液する流れとなる。その後は分岐中継部屋10へ送液するが、手順は変わらないため省略する。また、各種弁の動きに伴う空気圧制御のための配管経路については、本発明をいたずらに解りにくくする為、これも省略し、送液の際の各部の動きに限定して説明を行う。
まず、図7にあるように、プランジャ64-a、64-b、64-c、64-dは上昇している。また、全ての流路に備えた14・15も流路加圧ポート68を解放して加圧しておき、薄膜フィルムの3次元立体構造部分18はカートリッジ側の溝17に貼り付けておく。これは、適切なタイミングで送液するまで液を逃さないために、全ての流路を封止した状態である。
次に、図8に示す通り、プランジャ64-aを降下させ、ウェル8-a封止を解除する。
次に、図9に示す通り、薄膜フィルムの3次元立体構造部分18はカートリッジホルダ側の溝19に貼り付ける。これは流路加圧ポート68に繋がる配管を解除し、流路負圧ポート69の負圧配管を繋げる事で為される。これにより、ウェル8-aより試薬が流路14に流れる。
次に、図10に示す通り、プランジャ64-aを再び上昇させる。これにより、流路14はウェル8-aより断絶する。
次に、図11に示す通り、プランジャ64-bを降下させる。これにより、ウェル8-aより断絶した流路14は、ウェル8-bと繋がる事になる。
次に、図12に示す通り、負圧の配管経路封止し、加圧の配管経路を繋ぐ事により、流路加圧ポート68から加圧を行う。すると、薄膜フィルムの3次元立体構造部分18はカートリッジ側の溝17に再び貼りつく。この時、流路14はウェル8-aとは断絶し、ウェル8-bと繋がっているため、流路14内の試薬はウェル8-bへと送液される。
次に、流路加圧ポート68からの加圧を行ったまま、プランジャ64-bを上昇させる。すると、流路14はウェル8-aからもウェル8-bからも断絶され、試薬は全てウェル8-bに留まる事になる。
これにより、流路14の容積分の試薬が、ウェル8-aからウェル8-bへと送液された。
この動作をカートリッジ1におけるすべての部屋の関連する各部屋間で行うことで、任意の部屋の試薬を任意の場所に任意のタイミングで送液していくことができる。その送液量は薄膜フィルム21の変形回数で定めることができる。また、抽出や反応、攪拌を行う際、各部屋間を任意に封止しておくことができるため、流体の制御を安定させることができる。これにより、密閉されたカートリッジ1内部で流体と非接触のまま安定して送液を行い、さまざまな処理を行うことが可能となる。
図5に記載した通り、STR解析の例をとってみても、遺伝子解析における前処理に必要な試薬の種類は多数ある。それに対し、本送液システムを取ることで、駆動源は空気圧制御システム3に繋がるエアーポンプ30のみのまま、多数の試薬に対応できる。また、装置上でのカートリッジ1の増設などがあった場合も、本システムに3方弁と配管の接続を増設することで、駆動源を増やすことなく対応できる汎用性に優れたシステムである。さらに、装置原価の低減や装置小型化も可能となる。
空気圧を使って送液する方法はいくつかあるが、本システムを応用させることで、いずれも流体の制御を容易に行いながら送液することが可能となる。流路を空気圧で変形させるのではなく、各部屋自体を空気圧で変形させて送液してもよい。それか、空気圧ではなく、ローラー等、別の物で変形させてもよい。また、流路に直接空気圧を与える方式でも、流体の制御を行いながら送液することが可能となる。ただし、流路に直接空気圧を与える場合は、空気中に浮遊するDNAのコンタミネーションを防止する必要があり、フィルタを設ける必要があるため、カートリッジ1の原価が上がってしまう。
以上、本発明の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にてさまざまな変更が可能であることは当業者に理解される。各実施例を適宜組み合わせることも、本発明の範囲である。なお、上記実施例では、適用対象の生体物質として、核酸、とくにDNAを例示したが、これに限定されるものではなく、RNA、たんぱく質、多糖、微生物など整体物質全般にわたって適用可能である。
1・・・カートリッジ
2・・・カートリッジホルダ
3・・・空気圧制御システム
5・・・サンプル採取ユニット
6・・・サンプル採取ユニット封入ウェル
7・・・溶解液封入ウェル
8・・・増幅試薬封入ウェル
9・・・変性試薬封入ウェル
10・・・分岐中継ウェル
11・・・変性試薬混合ウェル
12・・・温調ウェル
13・・・キャピラリ接続ウェル
14・・・一送液流路
15・・・分岐送液流路
16・・・微量試薬封入部
16a・・・ポジティブコントロール
16b・・・ネガティブコントロール
16c・・・基準試薬
16d・・・サイズスタンダード試薬
17・・・カートリッジ側の溝
18・・・薄膜フィルムの3次元立体構造部分
19・・・カートリッジホルダ側の溝
20・・・カートリッジ本体
21・・・薄膜フィルム
24・・・ポジティブコントロールレーン
25・・・ネガティブコントロールレーン
26・・・サンプル解析レーン
27・・・基準レーン
30・・・エアーポンプ
31・・・フィルタ
32・・・圧力調整弁
33・・・大気解放2方弁
34・・・サイレンサ
35・・・分岐管
36・・・加圧配管2方弁
37・・・負圧配管3方弁
38・・・3方弁マニホールド
39・・・3方弁
40・・・スピードコントローラ
41・・・大気解放部
45、46、47、48・・・空気圧流路
52・・・フィルム
60・・・ホルダベース
61・・・ホルダトップ
62・・・ホルダ中板
63・・・ガスケット
64・・・プランジャ
65・・・パッキン
66・・・上昇空気圧ポート
67・・・降下空気圧ポート
68・・・流路加圧ポート
69・・・流路負圧ポート
70・・・オートサンプラ
71・・・ポリマシリンジ
72・・・ポンプユニット
73・・・キャピラリ
74・・・恒温槽
75・・・レーザユニット
76・・・レーザコントローラ
77・・・検出ユニット
78・・・電源
79・・・高電圧電源
80・・・メイン基板

Claims (7)

  1. 液体が入る複数の部屋が形成された本体と、該本体の下面に形成され、該複数の部屋を繋ぐ第1の溝と、該本体の下面に貼り付けられ、該溝に対して密着する立体構造を有する薄膜フィルムと、を備え、前記立体構造の部分を変形させ、該溝に対する密着が開放されることによって、前記複数の部屋の間で前記第1の溝を介して送液されるよう構成されている生化学用カートリッジ
    前記カートリッジが取り付けられるカートリッジホルダであって該カートリッジが取り付けられたときに、前記第1の溝の第1の位置に対向するように位置付けられるプランジャを有し、該プランジャが前記薄膜フィルムを押圧している状態又は押圧していない状態とすることができるエアシリンダ機構と、該カートリッジが取り付けられたときに、前記第1の溝の第2の位置に対向するよう位置付けられる、前記第1の溝に負圧又は加圧を供給可能な圧力ポートを有する第2の溝と、備えるカートリッジホルダと、
    前記カートリッジホルダに流体連通された負圧又は加圧を供給する圧力源と、
    前記カートリッジホルダと前記圧力源とを接続する複数のチューブに設けられ、前記負圧又は加圧の供給を制御するための複数の三方弁と、
    前記複数の三方弁の開閉を制御する制御手段と、を備え
    前記制御手段によって前記複数の三方弁の開閉を制御して前記カートリッジホルダに供給する負圧又は加圧を制御することにより、前記プランジャによる前記第1の位置における前記薄膜フィルムの押圧と、前記圧力ポートからの負圧又は加圧による前記第2の位置における前記薄膜フィルムの変形を制御することによって、前記カートリッジ内で試薬又はサンプルを送液することを特徴とした生化学用送液システム。
  2. 請求項1において、前記シリンジは前記部屋の入口および出口の封止および開放を行うことを特徴とする生化学用送液システム。
  3. 請求項1において、前記本体は、樹脂材の成形体であることを特徴とする生化学用送液システム。
  4. 請求項1において、前記カートリッジ本体の上面は、カバーフィルムが接着または溶着されていることを特徴とする生化学用送液システム。
  5. 請求項1において、前記薄膜フィルムの厚さは0.05mm〜0.2mmであることを特徴とする生化学用送液システム。
  6. 請求項1において、前記薄膜フィルムの水蒸気透過性は、1.6〜44 g/m2・24hであることを特徴とする生化学用送液システム。
  7. 請求項1において、前記複数の部屋および溝は密閉されていることを特徴とする生化学用送液システム。
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