図1は、本発明の実施形態による車両の概略構成図である。図1に示すように、車両は、エンジン2と、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ(以下、トルクコンバータと略す)4と、自動変速機6と、油圧制御装置8と、ディファレンシャル装置10と、駆動輪12FL,12FR,12RL,12RRと、エンジンECU14と、AT−ECU16と、ブレーキECU18と、車体系ECU20と、各種センサ22と、エンジン回転数センサ24と、自動変速機入力軸(メインシャフト)回転数センサ26と、自動変速機出力軸(カウンタシャフト)回転数センサ28と、ABS車速センサ30FL,30FR,30RL,30RRと、タイヤ空気圧センサ32FL,32FR,32RL,32RR等を主に含む。
エンジン2は、駆動輪12FL,12FR,12RL,12RRを駆動するためのトルクを発生する駆動源であり、例えば、4サイクルDOHC型の火花点火式ガソリン内燃機関であり、その出力軸(クランク軸)2aはロックアップクラッチ付きトルクコンバータ4に接続される。尚、エンジン2の代わりに、電気自動車等ではモータ・ジェネレータであっても良い。
エンジン2の図示しない吸気管には、エアクリーナの下流に吸入空気量を計測するエアーフローセンサが設けられている。エアーフローセンサの下流にDBW(ドライブバイワイヤ)方式のスロットル弁が配置されている。スロットル弁にはスロットル弁開度センサが連結されており、スロットル弁の開度に応じて電気信号を出力する。
スロットル弁の直ぐ下流には図示しない吸気管内絶対圧センサが設けられており、吸気管の絶対圧に応じて電気信号を出力する。燃料噴射弁はエンジン2とスロットル弁との間且つ吸気管の図示しない吸気弁の少し上流側に気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にエンジンECU14に電気的に接続されてエンジンECU14からの信号により燃料噴射時間が制御される。エンジン2の本体に装着されたエンジン水温センサは、サーミスタ等からなり、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力する。
図2はロックアップクラッチ付きトルクコンバータ4及び自動変速機6の構成図である。ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ4は、流体を介してトルクの伝達、又はクランク軸2aとメインシャフト6aとを直結してトルクの伝達を行うものであり、クランク軸2aに連結されたフロントカバー4aと一体のポンプインペラ4bと、フロントカバー4aとポンプインペラ4bとの間でポンプインペラ4bに対向配置されたタービンランナ4cと、ステータ4dと、ロックアップクラッチ(L/C)4eを有する。
タービンランナ4cとフロントカバー4aとの間には、AT−ECU16の制御に基づく油圧制御装置8から供給される油圧により、フロントカバー4aの内面に向かって押圧されることによりフロントカバー4aに係合し、押圧が解除されることにより係合が解除されるL/C4eが設けられている。フロントカバー4a及びポンプインペラ4bにより形成される容器内に作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)が封入されている。
AT−ECU16の制御に基づきL/C4eの係合が解除された状態では、ポンプインペラ4b及びタービンランナ4cの相対回転を許容する。この状態でクランク軸2aのトルクがフロントカバー4aを介してポンプインペラ4bに伝達されると、容器を満たしている作動油は、ポンプインペラ4bの回転により、ポンプインペラ4b→タービンランナ4c→ステータ4dと循環しながらポンプインペラ4bの回転トルクをタービンランナ4cに伝達し、メインシャフト6aを駆動する。また、AT−ECU16の制御に基づきL/C4eが係合された状態では、フロントカバー4aからタービンランナ4cへと作動油を介さずに直接回転駆動力がメインシャフト6aに伝達される。
自動変速機6は、AT−ECU16による油圧制御装置8が有するソレノイドバルブやリニアソレノイドバルブのソレノイドへの通電の制御により、複数のシンクロクラッチが駆動されることにより変速動作が制御されるものであり、メインシャフト6a、メインシャフト6aに平行に配設されたカウンタシャフト6b及び互いに異なるギア比に設定されている複数のメインシャフト6a側とカウンタシャフト6b側に設けられたギア対、例えば、前進1〜5速ギア対及び後進ギア対を有する。
複数のギア対はメインシャフト6aに取り付けられた各入力側ギアとカウンタシャフト6bに取り付けられた各出力側ギアとから成り、対をなす各ギア同士は常に噛み合っている。各入力側ギア又は各出力側ギアの何れか一方は、メインシャフト6a又はカウンタシャフト6bに対して相対回転自在とされ、各シンクロクラッチによって、メインシャフト6a又はカウンタシャフト6bに接続又は分離される。
例えば、図2では、複数のギア対のうち、前進ギア対の高速段(例えば、4速)と低速段(例えば、1速)の2個のギア対を一例として記載している。高速側ギア対の高速出力側ギア50b及び低速側ギア対の低速出力側ギア対52bはカウンタシャフト6bに対して一体に設けられている。高速側ギア対の高速入力側ギア50a及び低速側ギア対の低速入力側ギア対52aはメインシャフト6aに対して回転可能のアイドルギアとされ、各シンクロクラッチ54,56によってメインシャフト6aに対して接続または分離される。
各シンクロクラッチ54,56は、例えば、湿式多板クラッチ等により構成される摩擦係合要素であり、メインシャフト6aと一体に回転可能に配置された各アウタクラッチ板54a,56aと、アウタクラッチ板54a,56aと交互に重ね合わすように配置されてアウタクラッチ板54b,56bに当接可能とされ、メインシャフト6aに対してアイドルギアとされる入力側ギア50a,52aと一体的に回転可能に配置されたインナークラッチ板54b,56bとを有する。
AT−ECU16により制御される図示しない各油圧アクチュエータは、摺動可能に配置されてピストン室を形成するピストンを有し、ピストン室に供給される作動油の油圧に応じてスラスト力を発生させ、各アウタクラッチ板54a,56aと各インナークラッチ板54b,56bとを相互に係合させることによって、自動変速機6のカウンタシャフト6bと各入力側ギア50a,52aの何れかと一体に締結する。
ピストン室内に供給される作動油の油圧は、AT−ECU16により制御され、各シンクロクラッチ54,56の係合状態が調整可能とされる。カウンタシャフト6bの出力トルクは、ファイナルドライブギア、ファイナルドリブンギア、ディファレンシャル装置10に設けられた図示しない複数のギア及びドライブシャフトを介して、FF車の場合は、左右前輪12FL,12FRに伝達され、FR車の場合は、左右後輪12RL,12RRに伝達されるようになっている。
油圧制御装置8は、メインレギュレータバルブ、シフトバルブ群、カットバルブ群、マニュアルバルブ、オン・オフソレノイドバルブ群及びリニアソレノイドバルブ群等の各種バルブを有し、AT−ECU16の制御により、オン・オフソレノイドバルブ群及びリニアソレノイドバルブ群に入力される制御信号に基づいて、L/C4eの係合や係合解除、並びにシンクロクラッチ54,56の係合や係合解除が制御される。ディファレンシャル装置10は、カウンタシャフト6bからのトルクを複数のギア及びドライブシャフトを介して、左右前輪12FL,12FR又は左右後輪12RL,12RRに伝達する。
エンジンECU14は、次のようにしてエンジン2を制御する。(1)目標エンジントルクを算出する。目標エンジントルクは、例えば、アクセルペダル開度センサより検出されたアクセルペダル開度及びABS車速信号VFL,VFR,VRL,VRRから、アクセルペダル開度及び車速VFL,VFR,VRL,VRRに応じたアクセルペダル開度に補正する。エンジン回転数Ne及び補正されたアクセルペダル開度より、マップを検索して、目標エンジン出力トルクを算出する。(2)算出した目標出力トルクに応じて目標スロットル開度を決定し、目標スロットル開度となるようスロットル弁の開度を調節する。(3)エンジン2の下流側に設けられる図示しない触媒コンバータの浄化率の向上するように空燃比(A/F)を算出する。(4)スロットル弁の直ぐ下流に設けられる図示しない吸入空気圧センサからの吸入空気圧及び算出された空燃比に基づいて、目標燃料噴射量及び点火時期を算出して、目標燃料噴射量及び点火時期に応じて、燃料噴射弁を制御する。(5)減速時のエンジントルクを必要としない所定の場合には、燃料噴射弁を制御して、燃料供給をカット(フューエルカット)する。(6)F/C(フューエルカット)されていない場合には、エアーフローセンサから出力されるシリンダ吸入空気量及びエンジン回転数Neからエンジン出力トルクを推定し、F/Cされている場合には、エンジン回転数Ne及びスロットル開度から減速トルクをエンジン出力トルクとして推定し、推定したエンジン出力トルクに対してエンジンコントロール、エンジン状態、フリクションによりエンジン出力トルクのロス分を補正して、エンジントルクTeを算出する。
図3はAT−ECU16の自動変速機6の制御に係る信号を示す図である。AT−ECU16は、プログラムを実行することにより、クラッチ圧制御手段80とクラッチ圧学習制御手段82とを有する変速制御手段16a並びにロックアップクラッチ制御手段16bを実現する。(1)クラッチ圧制御手段80は、車両運転席付近に設けられた図示しないシフトレバーの車両の運転者の操作によって、例えば、8種のレンジ、P,R,N,D5,D4,D3,2,1のいずれかが選択され、シフトレバーポジションセンサよりシフトレバーにより選択されたポジションを示すポジション信号、並びにABS車速信号VFL,VFR,VRL,VRR及びスロット開度から、行先段(ON側)を選択し、準備、トルク相、イナーシャ相及びエンゲージ相において、ON側及び現在段(OFF側)クラッチの油圧指令値を算出し、油圧指令値に基づいて、油圧制御装置8を通して、クラッチアクチュエータに油圧を供給する。(2)後で詳述するように、クラッチ圧学習制御手段82は、エンジン回転数Ne、エンジントルクTe、メインシャフト回転数Nm、ABS車速信号VFL,VFR,VRL,VRR、カウンタシャフト回転数Nc、タイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRに基づいて、バックラッシュがた詰め、チップイン・アウト、悪路判定、LCジャダ、エンジン2のノッキング等を判定し、その判定結果に基づいて、イナーシャ相の開始時点のON側クラッチの油圧値及びイナーシャ相でのエンジン要求トルクを学習する。(3)ロックアップクラッチ制御手段16bは、ABS車速信号VFL,VFR,VRL,VRR及びスロット開度から、マップを検索して、L/C4eの係合又は係合解放を制御する。
ブレーキECU18は、ABS速度センサ30FL,30FR,30RL,30RRから出力される車速VFL,VFR,VRL,VRR及び前後加速度センサ34から出力される前後加速度GRATなどに基づいて、ブレーキ力を制御する。車体系ECU20は、タイヤ空気圧センサ32FL,32FR,32RL,30RRから出力されるタイヤ空気圧センサ信号PFL,PFR,PRL,PRL等に基づいて、タイヤの空気圧が低い時に警告表示し、ドライバに注意を促す。
各種センサ22は、スロットル開度センサ、エアーフローセンサ、エンジン水温センサなどエンジンECU14がエンジン2を制御するためのセンサである。エンジン回転数センサ24は、エンジン2の出力軸(クランク軸)の回転数(エンジン回転数)Neを検出するセンサである。メインシャフト回転数センサ26はメインシャフト6aの回転数(メインシャフト回転数)Nmを検出するセンサである。
カウンタシャフト回転数センサ28はカウンタシャフト6bの回転数(カウンタシャフト回転数)Ncを検出するセンサである。ABS車速センサ30FL,30FR,30RL,30RRは、車輪12FL,12FR,12RL,12の車輪速度VFL,VFR,VRL,VRR(km/h)を検出するセンサである。タイヤ空気圧センサ32FL,32FR,32RL,32RRは、車輪12FL,12FR,12RL,12RRのタイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRを検出するセンサである。
各種センサ22及びエンジン回転数センサ24のセンサ出力値は、エンジンECU16に入力される。入力軸回転数センサ26及び出力軸回転数センサ28のセンサ出力値Nm,Ncは、AT−ECU18に入力される。ABS車速センサ30FL,30FR,30RL,30RRのセンサ出力値VFL,VFR,VRL,VRRはブレーキECU18に入力される。タイヤ空気圧センサ32FL,32FR,32RL,32RRのセンサ出力値PFL,PFR,PRL,PRRは車体系ECU20に入力される。
エンジントルクTe及びエンジン回転数Neは、エンジンECU14からAT−ECU16に入力される。車輪速度VFL,VFR,VRL,VRRと前後加速度GRATは、ブレーキECU18よりAT−ECU16に入力される。タイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRは、車体系ECU20よりAT−ECU16に入力される。エンジンECU14、AT−ECU18、ブレーキECU18及び車体系ECU20は、互いに必要な情報をやり取りするための通信機能を有する。
図4は図3中のクラッチ圧学習制御手段80の機能ブロック図である。クラッチ圧学習制御手段80は、バックラッシュ詰め判定手段100と、チップイン・アウト判定手段102と、第1の悪路判定手段104と、第2の悪路判定手段106と、第3の悪路判定手段108と、第4の悪路判定手段110と、動力源異常判定手段112と、LCジャダ判定手段114と、LC非係合維持手段115と、クラッチ圧学習手段116とを有する。
バックラッシュがた詰め判定手段100は、バックラッシュがた詰めによりカウンタシャフト6bの回転数Ncの変動が発生するか否かを判定する。バックラッシュ詰めとは、図5に示すように、L/C4eがOFF状態であるとき、エンジン2が、FF車の場合、左右前輪12FL,12FR、又はFR車の場合、左右後輪12RL,12RRによって駆動されている被駆動状態から車輪12FL,12FR,12RL,12RRを駆動している駆動状態へと変化する場合、ディファレンシャル装置10のディファレンシャルギア等に存在するバックラッシュによって、力の伝達が一時的に途切れ、その後、バックラッシュ部での運動で蓄えられたエネルギーが駆動状態の終了時に衝撃的に伝達され、車両前後振動(ショック)が発生するとともに、バックラッシュがた詰めによるショックにより、図5中のAに示すように、カウンタシャフト回転加速度Acc(dNc/dt)が大きく変動することをいう。
同様に、エンジン2が車輪12FL,12FR,12RL,12RRを駆動している駆動状態から、左右前輪12FL,12FR又は左右後輪12RL,12RRによって駆動される被駆動状態へと変化する場合にも、バックラッシュがた詰めによるショックにより、カウンタシャフト回転加速度Accが図5のAとは反対方向に変動する。
バックラッシュがた詰めは、例えば、図5に示すように、L/C4eがOFF状態であり、且つエンジン回転数Neとメインシャフト回転数Neとの差分(Ne−Nm)が負から正に変わった時刻t1、又は正から負に変わった時刻でバックラッシュがた詰めであると判定する。
チップイン・アウト判定手段102は、チップイン・チップアウトを判定する。チップインとは、L/C4eがON状態であるとき、アクセルペダルが急速に踏み込まれた場合に、アクセルペダル開度の急激な上昇によりスロットル開度が急激に開き、その結果、図6に示すように、時刻t11でエンジントルクTeが急激に増加し、L/C4eがON状態であることから、エンジントルクTeがメインシャフト6aに伝達され、カウンタシャフト回転数Ncが変動することをいう。一方、チップアウトとは、アクセルペダルが急速に戻された場合は、アクセルペダル開度の急激な減少によりスロットル開度が急激に閉じ、その結果、エンジントルクTeが急激に減少し、カウンタシャフト回転数Ncが変動することをいう。
チップイン・アウトは、例えば、図6に示すように、エンジントルクTeの時間に対する変化量(傾き)α(dTe/dt)(N・m/sec)の絶対値が所定値を越え、かつ所定時間におけるエンジントルクTeの変化量ΔTeが所定値を越えたか否かにより判定する。
図7(a)に示すように、悪路走行によって車輪12FL,12FR,12RL,12RRが回転変動し、それが、ドライブシャフト、ディファレンシャル装置を通して、カウンタシャフト6bやメインシャフト6aに伝達される。このとき、ディファレンシャルギアのバックラッシュ、エンジン2や自動変速機6のマウント、ドライブシャフトの捩れなどによって、ダンピングされた後にカウンタシャフト6bやメインシャフト6aに伝達される。
そのため、ABS車速センサ30FL,30FR,30RL,30RRの出力である車速VFL,VFR,VRL,VRRの変化開始タイミングt20がカウンタシャフト回転数Ncやメインシャフト回転Nmの回転変化タイミングt21より早く、車速VFL,VFR,VRL,VRRのピークP1がカウンタシャフト6bやメインシャフト6aの回転数を車輪速度(Km/h)に換算した回転速度Vc,VmのピークP2よりも大きい。かかる場合に、車両が走行している路面が悪路であると判定できる。
尚、Vc=(Nc×2π×タイヤ動半径)×60÷1000÷カウンタシャフトギア比、Vm=(Nm×2π×タイヤ動半径)×60÷1000÷メインシャフトギア比である。カウンタシャフトギア比は、カウンタシャフト6bの回転がディファレンシャル10を通してドライブシャフトの回転に変換されるまでのギア比(デフ比)である。メインシャフトギア比は、メインシャフト6aの回転がカウンタシャフト6b及びディファレンシャル10を通してドライブシャフトの回転に変換されるまでのギア比である。
一方、図7(b)に示すように、カウンタシャフト回転数Ncやメインシャフト回転Nmの回転変化タイミングt30が車速VFL,VFR,VRL,VRRの変化開始タイミングt31より早く、且つカウンタシャフト回転速度Vcやメインシャフト回転速度VmのピークP11が車速VFL,VFR,VRL,VRRのピークP12よりも大きい場合には、カウンタシャフト回転数Ncの変化により車速VFL,VFR,VRL,VRRが変動していると考えられ、車両が平坦路を走行しており、自動変速機6の油圧値の不適合による変速ショックが原因であると判定する。
以上に基づき、第1の悪路判定手段104は、車速VFL,VFR,VRL,VRRのいずれか一つの車速の変化開始タイミングt20がカウンタシャフト回転数Ncやメインシャフト回転Nmの回転変化タイミングt21より早く、且つその車速VFL,VFR,VRL,VRRのピークP1がカウンタシャフト回転速度Vcやメインシャフト回転速度VmのピークP2よりも大きい場合は、悪路であると判定する。
車速VFL,VFR,VRL,VRR、カウンタシャフト回転速度Vc及びメインシャフト回転速度Vmが変化するタイミングは、例えば、加速度VFL/dt,dVFR/dt,dVRL/dt,dVRR/dt,dVc/dt,dVm/dtの絶対値が所定値を越えたタイミングとする。悪路の判断は、変速制御中に悪路によるカウンタシャフト回転数Ncの変動と油圧不適合によるカウンタシャフト回転数Ncの変動とを区別すること、前輪12FL,12FR又は後輪12RL,RRが悪路を通過するには一定の時間を要することから、カウンタシャフト回転加速度dNc/dtの絶対値が、所定時間、所定値を越えたこと、例えば、絶対値が所定値を越える回数が所定時間内に閾値を越えたと判断した後に、上記第1の悪路の判定をしても良い。
図8(a)に示すように、左前輪12FL又は右前輪12RLが悪路(凹凸)152を通過後に、左後輪12RL又は右後輪12RRが悪路152を通過する場合、FF車・FR車に関わらず、図8(b)に示すように、悪路152をアップ・ダウンすることにより左右前輪12FL又は2FR、並びに左右後輪12RL又は12RRが回転変動する。左後輪12RL又は右後輪12RRの回転変動は、左前輪12FL又は右前輪12FRの回転変動と変化率及び周波数が同じであり、且つその発生時刻t41は、左前輪12FL又は右前輪12FRの回転変動の発生時刻t40から遅れる。その遅れ時間Δt(t41−t40)は、車両150のホイールベースL、車速V(V=VFL又はVFR)とすると、Δt=L/Vの関係が成り立つ。
この場合、悪路152は局所的にあるものであることから、回転変動は左右輪12FL,12FR及び12RL,12RRが同時に現れるとは限らない。そのため、左右輪の片輪のみに回転変動が現れた場合は、悪路走行であると判定できる。車輪12FL,12FR,12RL,12RRが悪路152を通過すると、タイヤが変形し、タイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRが変動することから、車速VFL,VFR,VRL,VRRの代わりにタイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRの変動により悪路を判定することができる。また、タイヤ空気圧FL,12FR,12RL,12RRが変動する場合は、車両が走行している路面が悪路であると判定する。
一方、図9(a)に示すように、車両150が平坦路154を走行している場合、自動変速機6の油圧値不適合によるカウンタシャフト6bの回転変動は、FF車の場合、図9(b)に示すように、ディファレンシャル装置10を通して、前左右輪12FL,12FRに伝達されることから、前左右輪12FL,12FRの回転変動が同時に発生し、後左右輪12RL,12RRには回転変動が発生しない。FR車の場合、図9(c)に示すように、ディファレンシャル装置10を通して、後左右輪12RL,12RRに伝達されることから、後左右輪12RL,12RRの回転変動が同時に発生し、前左右輪12FL,12FRには回転変動が発生しない。
以上に基づき、第2の悪路判定手段106は、次の場合に悪路であると判断する。左前後輪12FL,12RLの車速VFL,VFR、又は右前後輪12FR,12RRの車速VFR,VRRが変動し、且つ前輪12FL又は12FRと後輪12RL又は12RRの回転変動は変化率及び周波数が同じで、且つ後輪の車速VRL又はVRRが時間Δt=L/Vだけ遅れて変動する。または、左右の車輪の片輪のみに回転変動が現れた場合は、悪路走行であると判断する。タイヤ空気圧PRL/PRRの変動とPFL/PFRの変動が変化率及び周波数が同じで、後輪の変動が前輪の変動にΔt=L/V遅れて変動する場合や、前後加速度GRATの変動の変化率及び周波数が同じであり、Δt=L/V遅れて変動する場合にも悪路であると判定できる。
回転変動検出のタイミングは、例えば、図8(a)に示すように、車速VFL,VFR,VRL,VRR又はタイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRがピークとなる時刻t40,t41とする。また、タイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRのいずれかが変動した場合は、悪路152であると判定する。悪路の判断は、第1の悪路判定手段104と同様に、カウンタシャフト回転加速度dNc/dtの絶対値が、所定時間、所定値を越えたと判断した後に、上記第2の悪路の判定をしても良い。
また、第2の悪路判定手段106は、次の場合に平坦路であると判断する。FF車の場合、左右前輪12FL,12FRの車速VFL,VFRが同時に変動し、左右後輪12RL,12RRの車速VRL,VRRは回転変動が発生しない場合は、平坦路走行であると判断する。車速VFL,VFRの代わりに、メインシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Nc、前後加速度GRATの変動により平坦路を判断することができる。メインシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Nc及び前後加速度GRATの変動は、例えば、それぞれの時間微分dNm/dt,dNc/dt,dGRAT/dtの絶対値が所定値を越えたこと、または、所定値を所定時間以上越えたことにより判定する。
FR車の場合、左右後輪12RL,12RRの車速VRL,車速VRRが同時に変動し、左右前輪12FL,12FRの車速VFL,VFRは回転変動が発生しない場合は、平坦路走行であると判断する。車速VRL,VRRの代わりに、メインシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Nc、前後加速度GRATの変動により平坦路を判断できる。
油圧値が不適合による変速ショックが回転変動を引き起こす場合、その回転変動がディファレンシャル装置10を通して、車輪12FL,12FR又は車輪12RL,12RRに伝達されるため、左右前輪12FL,12FR又は左右後輪12RL,12RRのいずれかに同じタイミングで回転変動が発生する。よって、図10(a)に示すように、右前輪12FR又は右後輪12RRに回転変動が起こり、左前後輪12FL,12RLに回転変動が起こらない場合、または、図10(b)に示すように、右前後輪12FR,12RRに回転変動が起こらず、左前輪12FL又は左後輪12RLに回転変動が起こる場合には、悪路であると判断できる。
以上に基づき、第3の悪路判定手段108は、右前輪車速VFR又は右後輪車速VRRに回転変動が起こり、左前後輪車速VFL,VRLに回転変動が起こらない場合、又は(b)右前後輪車速VFR,VRRに回転変動が起こらず、左前輪車速VFL又は左後輪車速VRLに回転変動が起こる場合、悪路走行であると判断する。悪路の判断は、第1の悪路判定手段104と同様に、カウンタシャフト回転加速度dNc/dtの絶対値が、所定時間、所定値を越えたと判断した後に、上記第3の悪路の判定をしても良い。
図11(a)に示すように、L/C4eがONであるときに、エンジントルクTe、エンジン回転数Ne、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncが一定時間以上変動しているとする。このとき、L/C4eをOFFすると、エンジントルクTeがトルクコンバータ4の作動油を介してメインシャフト6aに伝達されることから、エンジントルクTeの変動が直接にはメインシャフト6a及びカウンタシャフト6bに伝達されることはなくなる。
図11(b)に示すように、L/C4eをOFFしたとき、エンジントルクTe、エンジン回転数Neの変動が停止し、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncが継続して変動するときは、変速制御は継続してされることがなく、油圧不適合によりカウンタシャフト回転数Ncの変動が継続するものでないことから、L/C4eがON状態でのエンジントルクTe、エンジン回転数Neの変動は、悪路走行により、車速VFL,VFR,VRL,VRRが変動して、ディファレンシャル装置10を通してカウンタシャフト6b、メインシャフト6a及びクランク軸2aに伝達されたためであると考えられる。
以上に基づき、第4の悪路判定手段110は、図11(a)に示すように、L/C4eがONであるとき、エンジントルク信号Te、エンジン回転数Ne、メインシシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Ncが所定の時間以上に変動しているとき、L/C4eをOFFし、そのとき、図11(b)に示すように、エンジントルクTe、エンジン回転数Neの変動が停止し、カウンタシャフト回転数Nc及びメインシャフト回転数Nmの変動が継続するときは、悪路であると判断する。
エンジントルク信号Te、エンジン回転数Ne、メインシシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Ncの所定の時間以上変動していることは、例えば、所定の時間内にそれぞれの時間微分の絶対値がそれぞれの閾値を越えた回数が所定値よりも多いかにより判断する。また、エンジントルクTe、エンジン回転数Neの変動が停止したことは、例えば、その時間微分の絶対値が閾値を越えなくなったことにより判断する。
図11(c)に示すように、L/C4eをOFFすると、エンジントルクTe及びエンジン回転数Neの変動が継続し、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncの変動が停止したときは、L/C4eをONすることにより、エンジントルクTe及びエンジン回転数Neの変動がメインシャフト6a及びカウンタシャフト6bに伝達されて、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncが変動したものと判断できる。これは、エンジン2のトルク変動(ノッキング等)が原因であると判断される。
以上に基づき、動力源異常判定手段112は、図11(a)に示すように、L/C4eがONであるとき、エンジントルク信号Te、エンジン回転数Ne、メインシシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Ncが所定の時間以上変動しているとき、L/C4eをOFFし、そのとき、図11(c)に示すように、エンジントルクTe及びエンジン回転数Neの変動が継続し、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncの変動が停止したときは、ノッキング等によりエンジントルク変動が原因であると判断する。
図11(d)に示すように、L/C4eをOFFすると、エンジントルクTe、エンジン回転数Ne、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncの変動が停止したときは、車両がエンジントルクTeやエンジン回転数Neが変動していない状態であるにも関わらずL/C4eをONすることにより、エンジントルクTe、エンジン回転数Ne、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncが変動したものと判断できる。これは、L/C4eのスリップに起因する駆動系のトルク変動及び車両振動を引き起こし、一旦開始されると持続的に発生するL/Cジャダが原因であると考えられる。
以上に基づき、LCジャダ判定手段114は、図11(a)に示すように、L/C4eがONであるとき、エンジントルク信号Te、エンジン回転数Ne、メインシシャフト回転数Nm、カウンタシャフト回転数Ncが所定の時間以上変動しているとき、L/C4eをOFFし、そのとき、図11(d)に示すように、エンジントルクTe、エンジン回転数Ne、メインシャフト回転数Nm及びカウンタシャフト回転数Ncの変動が停止したときはL/Cジャダであると判断する。
LC非係合維持手段115は、ノッキング等に起因したエンジン2の異常状態であることや、L/Cジャダであると一度判定された場合は、何らかの故障状態であると判断し、L/C4eのOFFを継続する。
クラッチ圧学習手段116は、バックラッシュがた詰め判定手段100によりバックラッシュがた詰めが判定されたとき、それが判定されたときから、バックラッシュがた詰めによるカウンタシャフト6bの回転変動がなくなるまでのバックラッシュがた詰め固有の時間、油圧の学習を禁止する。チップイン・アウト判定手段102によりチップイン・アウトが判定されたとき、それが判定されたときから、チップイン・アウトによるカウンタシャフト6bの回転変動がなくなるまでのチップイン・アウトに固有の時間、油圧の学習を禁止する。第1の悪路判定手段104、第2の悪路判定手段106、第3の悪路判定手段108及び第4の悪路判定手段110により悪路が判定されたとき、それが判定されたときから、悪路に固有の時間、油圧の学習を禁止する。
油圧値の学習とは、図12に示すように、イナーシャ相の開始t1からイナーシャ相終了(エンゲージ相の開始)t3までの変速時間T2、イナーシャ相前半T1(t1〜t2)のカウンタシャフト回転数Ncの時間微分Acc(=dNt/dt)の絶対値の積分値に基づいて、イナーシャ相でのカウンタシャフト6bの回転変動による変速ショックが少なくなること、変速時間T2が所望の時間内となるように、即ち、油圧値が適合となるように、イナーシャ相開始圧Pi_base及びイナーシャ相のエンジントルク低減要求量Te_baseを学習することをいう。イナーシャ相の終了t3は、スリップ率(Nc/Nm)に基づき、目標段のギア比が成立したと判断される時点である。
また、L/Cジャダや、ノッキングなどであると一度判定された場合は、何らかの故障状態であると判断し、このような故障状態では無理に油圧を学習すると誤学習してしまう可能性が高いため、学習を禁止する。LCジャダであること及びノッキングなどであることをクリアするタイミングは走行した後にイグニッション・オフするタイミングである。2回目の走行でL/Cジャダやノッキングなどによるエンジン2の異常状態を判定した場合は、「故障確定」し、故障警告表示装置60にL/Cジャダやノッキングなどによるエンジン2の故障状態であると表示する。
図13〜図21は油圧学習制御方法の一例を示すフローチャートであり、AT−ECU18により、例えば、10ms毎に実行される。ステップS2でスロットル開度及び車速VFL,VFR,VRL,VRRに基づいてシフトマップを検索し、変速段を決定する。ステップS4で図14〜20の油圧学習禁止判定を行う。図14中のステップS20で以下の処理を行う。カウンタシャフト回転数Nc(rpm)を入力する。カウンタシャフト速度Vc=(Nc×2π×タイヤ動半径)×60÷1000÷デフ比(km/h)を算出する。カウンタシャフト速度Vcはカウンタシャフト回転数Ncを車速に換算したものである。Acc=dVc/dtを算出する。車速VFL,VFR,VRL,VRRを入力する。Vcc_FL=dVFL/dt,Vcc_FR=dVFR/dt,Vcc_RL=dVRL/dt,Vcc_RR=dVRR/dtを算出する。タイヤ空気圧PFL,PFR,PRL,PRRを入力する。Pcc_FL=dPFL/dt,Pcc_FR=dPFR/dt,Pcc_RL=dPRL/dt,Pcc_RR=dPRR/dtを算出する。前後加速度GRATを入力する。
ステップS22で悪路継続タイマTM_AKR2≧0(悪路判定継続中)であるか否かを判定する。悪路継続タイマTM_AKR2は、車両が悪路走行中であると判断されたとき、悪路継続タイマTM_AKR2の時間だけ油圧学習を禁止するためのものである。肯定判定ならば、ステップS36に進む。否定判定ならば、ステップS24に進む。ステップS24でバックラッシュがた詰め条件が成立したか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS38に進む。否定判定ならば、ステップS26に進む。
図15中のステップS50でL/C4eがONであるか否かを判定する。肯定判定ならば、バックラッシュがた詰めでないと判定し、処理を終了して、図14中のステップS26に進む。否定判定ならば、ステップS52に進む。ステップS52で(エンジン回転数Ne−メインシャフト回転数Nm)が負である被駆動状態から(エンジン回転数Ne−メインシャフト回転数Nm)が正である駆動状態、又は駆動状態から被駆動状態に変化したか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS54に進む。否定判定ならば、バックラッシュがた詰めでないと判定し、処理を終了して、図14中のステップS26に進む。ステップS54でバックラッシュがた詰めによるカウンタシャフト6bの変動が終了する一定時間、チップイン・アウト判定フラグ(F_TIPINOUT=1)=ONとし、図14中のステップS26に進む。
図14中のステップS26でチップイン・アウトが成立したか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS38に進む。否定判定ならば、ステップS28に進む。図16中のステップS60でL/C4eがONであるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS62に進む。否定判定ならば、チップイン・アウトでないと判定して、処理を終了して、図14中のステップS28に進む。ステップS62でエンジントルクTeが急激に変動、且つ、変化量が大きい、例えば、dTe/dtの絶対値が閾値よりも大きいか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS64に進む。否定判定ならば、チップイン・アウトではないと判定して、処理を終了して、図14中のステップS28に進む。ステップS64でチップイン・アウトによるカウンタシャフト6bの変動が終了する一定時間、チップイン・アウト判定フラグ(F_TIPINOUT=1)=ONとし、図14中のステップS28に進む。
図14中のステップS28で│Acc│(Accの絶対値)が閾値Acc_JDGであるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS30に進む。否定判定ならば、ステップS40に進む。ステップS30で悪路判定カウンタCN_AKRを加算し、検知1回目(CN_AKR=1)であるときのみ、タイマTM_AKR1をスタートする。ステップS32でタイマTM_AKR1以内に悪路判定カウンタCN_AKRが閾値CN_AKR_JDG以上であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS34に進む。否定判定ならば、終了する。ステップS34で図17〜20に示す処理をする。
図17中のステップS70で変速制御中であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS72に進む。否定判定ならば、ステップS96に進む。ステップS72で第1の悪路判定で悪路である(悪路判定=1)と判定されたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS96に進む。否定判定ならば、ステップS74に進む。
図18中のステップS100で、車速VFL,VFR,VRL,VRRの変化開始タイミング、例えば、加速度Vcc_FL,Vcc_FR、Vcc_RL,Vcc_RRの絶対値が所定値を越えるタイミングがカウンタシャフト回転数Ncの変化開始タイミング、例えば、加速度Accが所定値を越えるタイミングよりも早く、且つ車速VFL,VFR,VRL,VRRのピークもカウンタシャフト速度Vcのピークよりも高いか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS102に進む。否定判定ならば、ステップS104に進む。
ステップS102で悪路であると判定し、悪路判定フラグF_AKR=1に設定して、図17中のステップS74に進む。ステップS104で車速VFL,VFR,VRL,VRRの変化のタイミングがカウンタシャフト速度Vcの変化開始タイミングよりも遅く、且つ車速VFL,VFR,VRL,VRRのピークもカウンタシャフト速度Vcのピークよりも低いか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS106に進む。否定判定ならば、悪路及び平坦路との判定ができなので、処理を終了して、図17中のステップS74に進む。ステップS106で悪路でないと判定し、悪路判定フラグF_AKR=0に設定して、図17中のステップS74に進む。
図17中のステップS74で第1の悪路判定で平坦路と判定(悪路判定フラグF_AKR=0)されたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS94に進む。否定判定ならば、ステップS76に進む。ステップS76で第2の悪路判定で悪路である(悪路判定=1)と判定されたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS96に進む。否定判定ならば、ステップS78に進む。
図19中のステップS120でタイヤ空気圧PFL,PFR,FRL,PRRの変動、例えば、Pcc_FL,Pcc_FR,Pcc_RL,Pcc_RRの絶対値の少なくともいずれか1つが所定値を越えたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS132に進む。否定判定ならば、ステップS122に進む。ステップS122でFF車であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS124に進む。否定判定ならば、ステップS126に進む。
ステップS124で前輪12FL,12FRのみに変動検知、例えば、Vcc_FL,Vcc_FRの絶対値が所定値を越えたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS128に進む。否定判定ならば、ステップS130に進む。ステップS128で平坦路であると判定し、F_AKR=0を設定して、図17中のステップS78に進む。
ステップS126で後輪12RL,12RRのみに変動検知、例えば、Vcc_RL,Vcc_RRの絶対値が所定値を越えたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS128に進む。否定判定ならば、ステップS130に進む。ステップS128で平坦路であると判定して、F_AKR=0を設定し、図17中のステップS78に進む。
ステップS130で前輪車速VFL又はVRLの変動開始(Vcc_FL又はVcc_FRの絶対値が所定値を越えた)と後輪車速VRL又はVRRの変動開始(Vcc_RL又はVcc_RRの絶対値が所定値を越えた)の変動開始のずれ、または前後加速度GRATの最初の変動開始から次の変動開始までのタイミングずれがΔt=L/Vであるか否かを判定する。
肯定判定ならば、ステップS132に進む。否定判定ならば、平坦路及び悪路の判定はできなので、処理を終了し、図17中のステップS78に進む。肯定判定ならば、ステップS132に進む。ステップS132で悪路であると判定し、F_AKR=1を設定して、図17中のステップS78に進む。
図17中のステップS78で第2の悪路判定で悪路判定である(悪路判定=0)と判定されたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS96に進む。否定判定ならば、ステップS80に進む。ステップS80で第3の悪路判定で片輪のみ変動したと判定されたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS96に進む。否定判定ならば、ステップS82に進む。
図20中のステップS150で左車輪12FL,12RL又は右車輪12FR,12RRのみに回転変動があり、例えば、Vcc_FL,Vcc_RL又はVcc_FR,Vcc_RRのみがその絶対値が所定値を越えたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS152に進む。否定判定ならば、悪路であるとは判定できないので、処理を終了し、図17中のステップS82に進む。ステップS152で悪路であると判定して、F_AKR=1を設定し、図17中のステップS82に進む。
ステップS82で悪路判定を連続検知、又はF_ENG_FAIL=1、又はF_LC_FAIL=1であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS84に進む。否定判定ならば、終了する。悪路判定を連続検知は、例えば、F_AKR=1の状態(TM_AKR2がゼロでない場合)で新たにF_AKR=1の条件が成立した場合に、悪路判定フラグをカウントアップし、それがある閾値を越えた場合にされる。悪路判定フラグカウンタはF_AKR=0の時にリセットされる。
ステップS84でL/C4eをOFFする。ステップS86でカウンタシャフト回転数Neが変動したか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS88に進む。肯定判定ならば、ステップS96に進む。否定判定ならば、ステップS88に進む。ステップS88でエンジン回転数Ne又はエンジントルクTeが変動したか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS90に進む。否定判定ならば、ステップS92に進む。ステップS90でエンジンフェールF_ENG_FAIL=1を設定する。ステップS92でLCジャダF_LC_FAIL=1を設定する。ステップS94で平坦路であると判定し、F_AKR=0を設定して、処理を終了する。ステップS96で悪路である判定し、F_AKR=1、CN_AKR=0、TM_AKR1=0、TM_AKR2をセットして、図13中のステップS6に進む。
図14中のステップS36で悪路判定が継続していると判断し、F_AKR=1を継続して、図13中のステップS6に進む。ステップS38でF_TIPINOUT=1を設定して、図13中のステップS6に進む。ステップS40でF_AKR=0を設定して、図13中のステップS6に進む。
図13中のステップS6で変速があるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS8に進む。否定判定ならば、処理を終了する。ステップS8で変速クラッチ圧制御をする。変速クラッチ圧の制御は、ON側クラッチについて、準備では準備圧を準備時間供給して無効ストローク詰めを実行し、トルク相でトルク相圧を所定時間供給し、イナーシャ相で学習されたエンジン要求トルクTe_baseをエンジンECU16に要求するとともに、学習されたイナーシャ相開始圧Pi_baseに従って、イナーシャ相圧を供給し、エンゲージ相で完全係合する。OFFクラッチについて、準備、トルク相を経て、イナーシャ相開始時点でOFFクラッチのトルクは0となる。
ステップS10で図21に示すクラッチ圧学習制御を行う。図21中のステップS180で(F_AKR=1)又は(F_ENG_FAIL=1)又は(F_LC_FAIL=1)又は(F_TIPINOUT=1)であるか否かを判定する。肯定判定ならば、イナーシャ相開始圧を学習せずに処理を終了する。ステップS182でAcc=dNc/dtを算出する。S_Acc=変速時間開始〜変速前半T1までのAccの積分値を算出する。ステップS186で変速時間T2が第1のベース時間T_base1以上であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS188に進む。否定判定ならば、ステップS196に進む。
ステップS188でS_AccがS_base1以上であるか(イナーシャ相前半のショックが悪い)否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS192に進む。否定判定ならば、ステップS190に進む。ステップS190でPi_baseにdPiを加算(Pi_base=Pi_base+dPi)して、イナーシャ相開始圧Pi_baseを上げる。ステップS192でTe_baseにdTe加算(Te_base=Te_base+dTe)して、イナーシャ相のエンジントルク低減量を増やす。ステップS194でPi_baseにdPiを加算(Pi_base=Pi_base+dPi)して、イナーシャ相開始圧Pi_baseを上げる。
ステップS196で変速時間T2が第2のベース時間T_base2よりも短いか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS198に進む。否定判定ならば、ステップS204に進む。ステップS198でS_AccがS_base2より小さいか(イナーシャ相前半のGが低い)否かを判定する。否定判定ならば、ステップS200に進む。肯定判定ならば、ステップS202に進む。ステップS200でPi_baseにdPiを減算(Pi_base=Pi_base−dPi)して、イナーシャ相開始圧Pi_baseを下げる。ステップS202でTe_baseにdTe減算(Te_base=Te_base−dTe)して、イナーシャ相のエンジントルク低減量を少なくする。
ステップS204でS_AccがS_base1以上であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS206に進む。否定判定ならば、処理を終了する。ステップS206でPi_baseにdPiを減算(Pi_base=Pi_base−dPi)して、イナーシャ相開始圧Pi_baseを下げる。
以上説明したように、エンジントルク、エンジン回転数、自動変速機の入力軸回転数、自動変速機の出力軸回転数、車輪の速度及びタイヤ空気圧を複合的に組み合わせ、自動変速機の出力軸の回転数の変動タイミングと車輪速度の変動タイミング及びピークを比較して、バックラッシュがた詰め、チップイン・アウト、悪路、エンジン故障及びL/Cジャダであるか否かを判断するので、油圧学習を禁止する場合を高精度に判断できる。その結果、不適当な油圧の学習をすることがなくなり、油圧学習値の発散やハンチングを防止することができるとともに、適切な油圧の学習を妨げることがなくなり、油圧学習値の収束を早めることができる。