本発明は、駆動力源により発生させられる駆動力を左右の駆動輪に配分する車両用駆動力配分装置の改良に関するものである。
駆動源により発生させられる駆動力を左右の駆動輪に配分する車両用駆動力配分装置が知られている。例えば特許文献1の車両用駆動力配分装置がそれである。この技術によれば、駆動源から伝達された駆動力を遊星歯車装置から成る差動装置によって左右の駆動輪に配分する一方、一対の遊星歯車装置を組み合わせた変速機構を差動装置に隣接して同軸に配設し、変速機構の出力を差動装置のキャリヤおよびサンギヤに選択的に伝達するための1対のクラッチを設け、その変速機構を介して出力された駆動力が、旋回時など必要に応じて、1対のクラッチの何れかをスリップ係合させることで、差動装置のサンギヤまたはキャリヤに伝達され、駆動力が配分される。
ところで、特許文献1の技術では、差動制限を行うとすると、差動装置のデフケースの回転が変速機構によって変速されているため、常に1対のクラッチの摩擦係合要素を摺動させねばならず、大型のクラッチが必要となり、しかもクラッチの耐久性の制限を受けるものであるため、実質的に差動制限制御は実現が困難であった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、左右の駆動輪のトルク差制御が可能であると共に、差動制限制御が可能な車両用駆動力配分装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)駆動源により発生させられる駆動力を左右の駆動輪に配分する車両用駆動力配分装置であって、(b)前記駆動源により発生させられる駆動力が伝達される第1回転要素と、前記左右の駆動輪の何れか一方に接続される第2回転要素と、前記左右の駆動輪の他方に接続された第3回転要素とを、有する差動部と、(c)前記第1回転要素の回転を変速して第4回転要素から選択的に出力する変速部と、(d)前記第4回転要素から前記第2回転要素に伝達されるトルク伝達量が可変に伝達できる第1クラッチと、(e)前記第4回転要素から前記第3回転要素に伝達されるトルク伝達量が可変に伝達できる第2クラッチとを、備え、(f)前記変速部は、前記第4回転要素へのトルク伝達量を変更可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用駆動力配分装置において、前記変速部は、前記第4回転要素と、前記第1回転要素に連結された第5回転要素と、第6回転要素とを備えた遊星歯車装置から構成されると共に、その第6回転要素の回転を制動可能なブレーキを備えていることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用駆動力配分装置において、前記変速部の前記第4回転要素はリングギヤであり、前記第5回転要素はサンギヤであり、前記第6回転要素はそのリングギヤおよびサンギヤと噛み合うピニオンギヤを回転可能に支持し、且つ前記ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結されるキャリヤであることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項3に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項2に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部の前記第4回転要素はサンギヤであり、前記第5回転要素はリングギヤであり、前記第6回転要素は、該リングギヤおよびサンギヤと噛み合うピニオンギヤを回転可能に支持し、且つ前記ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結されるキャリヤであることを特徴とする。
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、請求項6に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、請求項6に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項9にかかる発明の要旨とするところは、請求項2に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部の前記第4回転要素はリングギヤおよびサンギヤと噛み合うピニオンギヤを回転可能に支持するキャリヤであり、前記第5回転要素はサンギヤであり、前記第6回転要素は前記ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結されるリングギヤであることを特徴とする。
また、請求項10にかかる発明の要旨とするところは、請求項9に記載の車両用駆動力配分装置において、シングルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項11にかかる発明の要旨とするところは、請求項9に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項12にかかる発明の要旨とするところは、請求項2に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部の前記第4回転要素はサンギヤであり、前記第5回転要素はリングギヤおよびサンギヤと噛み合うピニオンギヤを回転可能に支持するキャリヤであり、前記第6回転要素は前記ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結されるリングギヤであることを特徴とする。
また、請求項13にかかる発明の要旨とするところは、請求項12に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項14にかかる発明の要旨とするところは、請求項12に記載の車両用駆動力配分装置において、前記遊星歯車装置は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であることを特徴とする。
また、請求項15にかかる発明の要旨とするところは、請求項1に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部は、前記第4回転要素と、前記第1回転要素に連結された第5回転要素と、第6回転要素とを備えた2つ以上の遊星歯車装置で構成されると共に、その第6回転要素の回転を制動可能なブレーキを備えていることを特徴とする。
また、請求項16にかかる発明の要旨とするところは、請求項15に記載の車両用駆動力配分装置において、前記2つ以上の遊星歯車装置は、シングルピニオン型の第1の遊星歯車装置とシングルピニオン型の第2の遊星歯車装置とで構成され、前記第4回転要素は前記第1の遊星歯車装置のリングギヤであり、前記第5回転要素は、前記第2の遊星歯車装置のリングギヤであり、前記第6回転要素は互いに連結された前記第1の遊星歯車装置のサンギヤおよび前記第2の遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第1の遊星歯車装置のキャリヤと前記第2の遊星歯車装置のキャリヤとが互いに連結されていることを特徴とする。
また、請求項17にかかる発明の要旨つするところは、請求項15に記載の車両用駆動力配分装置において、前記2つ以上の遊星歯車装置は、シングルピニオン型の第1の遊星歯車装置とシングルピニオン型の第2の遊星歯車装置とで構成され、前記第4回転要素は前記第2の遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第5回転要素は前記第1の遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第6回転要素は互い連結された前記第1の遊星歯車装置のキャリヤおよび前記第2の遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第1の遊星歯車装置のリングギヤと前記第2の遊星歯車装
置のリングギヤとが互いに連結されていることを特徴とする。
また、請求項18にかかる発明の要旨とするところは、請求項7、8、13、14、15、16および17に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部は、増速機構であることを特徴とする。
また、請求項19にかかる発明の要旨とするところは、請求項4、5、10、11、15、16および17に記載の車両用駆動力配分装置において、前記変速部は、減速機構であることを特徴とする。
また、請求項20にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至19に記載の車両用駆動力配分装置において、前記差動部は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であって、前記第1回転要素はリングギヤ、第2回転要素はキャリヤ、第3回転要素はサンギヤであることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、駆動源から伝達される駆動力によって回転駆動される第1回転要素の回転を前記変速部によって変速させ、前記第1クラッチまたは第2クラッチを介して前記差動部の第2回転要素または第3回転要素へ伝達することにより、左右の駆動輪のトルク差制御が可能となる。さらに、前記変速部をフリーにすることで第4回転要素に伝達されるトルク伝達量を無くし、前記第1および第2クラッチを完全に係合させることで完全に差動制限することができる。これにより、差動制限時の摩擦係合要素の摺動の累積量を低減でき、前記第1および第2クラッチを大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、請求項2にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、前記第6回転要素の回転を制動可能なブレーキを備えているため、そのブレーキを係合や半係合させることで変速状態となり、駆動力の配分が可能となる。
また、請求項3にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は前記第1および第2クラッチの配設が容易な構造であるため、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項4にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記遊星歯車装置は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項5にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記遊星歯車装置は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、前記第4回転要素と第2および第3回転要素の回転方向が同じであるため、回転ロスが少なくなり、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項6にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部と
前記第1回転要素との連結が構造上容易な配置となるため、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項7にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項8にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、前記第4回転要素と第2および第3回転要素の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項9にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、ブレーキの配設が容易な構造となり、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項10にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、前記第4回転要素と第2および第3回転要素の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項11にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項12にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、ブレーキの配設が容易な構造となり、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項13にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、前記第4回転要素と第2および第3回転要素の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項14にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項15にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は2つ以上の遊星歯車装置で構成されるため、比較的小さな変速比を得ることができ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項16にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は2つの遊星歯車装置で構成されるため、比較的小さな変速機を得ることができ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項17にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は2つの遊星歯車装置で構成されるため、比較的小さな変速機を得ることができ、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、請求項18にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、増速機構となることから、伝達されるトルクが小さくなるため、そのトルクを伝達する摩擦係合要素の大きさを小さくすることができる。
また、請求項19にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記変速部は、減速機構であることから、より大きなトルクを伝達することができる。
また、請求項20にかかる発明の車両用駆動力配分装置によれば、前記差動部はダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1回転要素はリングギヤ、第2回転要素はキャリヤ、第3回転要素はサンギヤであることから、第1回転要素の回転に対して第2および第3回転要素は同回転方向となるため、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される駆動力伝達装置10を有する前置エンジン前輪駆動(FF)を基本とする前後輪駆動車両の構成を説明する骨子図である。この図1において、駆動力源であるエンジン12により発生させられた駆動力(トルク)は、自動変速機14、前輪用差動歯車装置16、及び左右1対の前輪車軸18l、18r(以下、特に区別しない場合には単に前輪車軸18という)を介して左右1対の前輪20l、20r(以下、特に区別しない場合には単に前輪20という)へ伝達される一方、中央差動歯車装置(センターデフ)22、駆動力伝達軸であるプロペラシャフト24、本発明の一実施例である車両用駆動力配分装置(以下、単に駆動力配分装置という)26、及び左右1対の後輪車軸28l、28r(以下、特に区別しない場合には単に後輪車軸28という)を介して左右1対の後輪30l、30r(以下、特に区別しない場合には単に後輪30という)へ伝達される。ここで、図1に示すように、本実施例の駆動力伝達装置10では、上記駆動力配分装置26による駆動力の配分に係る駆動輪としての後輪30の回転軸と上記プロペラシャフト24の回転軸とが相互に直交するように配設されている。また、上記駆動力伝達装置10には、駆動力配分装置26内に供給される油圧等を制御する油圧回路34と、その油圧回路34に備えられた図示しない電磁制御弁等を介してその油圧回路34から駆動力配分装置26内に供給される油圧等を制御する制御装置36とが、設けられている。なお、図1では、前記油圧回路34から出力される油圧を細線矢印で、前記制御装置36から出力される制御指令を細い破線矢印でそれぞれ示している。
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記自動変速機14は、例えば、上記エンジン12から入力される回転を所定の変速比γで減速或いは増速して出力する有段式の自動変速機(オートマチックトランスミッション)であり、前進変速段、後進変速段、及びニュートラルのうち何れかが選択的に成立させられ、それぞれの変速比γに応じた速度変換が成される。なお、この自動変速機14の入力軸は、図示しないトルクコンバータ等を介して上記エンジン12の出力軸に連結されている。
前記制御装置36は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を含んで構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行する所謂マイクロコンピュータであり、例えば、前記油圧回路34に備えられた電磁制御弁に供給される電流の指令値を制御することにより前記駆動力配分装置26に備えられた後述するクラッチおよびブレーキ装置へ供給されるその油圧を制御することで、後述する左右輪トルク差制御や差動制限制御等を実行する。また、前記動力伝達装置10には、車速に対応する前記後輪30の実際の回転速度を検出する車輪速センサ、前記自動変速機14の変速段を検出するシフト段センサ、前記エンジン12の給排気管内に設けられた図示しないスロットル弁の実際の開度を検出するスロットルセンサ、そのエンジン12の実際の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ、及び前後Gセンサ等が設けられており、それぞれのセンサから車速を表す信号、シフト段を表す信号、スロットル開度を表す信号、エンジン回転速度を表す信号、及び前後加速度を表す信号等が前記電子制御装置36へ供給されるようになっている。
図2は、前記駆動力配分装置26の構成を説明する骨子図である。図2に示されるように、駆動力配分装置26には、エンジン12より中央差動歯車装置22を介して回転駆動されるプロペラシャフト24の端部に接続された傘歯車38、およびその傘歯車38と噛み合う傘歯車40を介して駆動力が伝達される。また、駆動力配分装置26は、駆動力を前記左右の後輪30l、30rに配分するための差動装置42と、その差動装置42に隣接され後輪車軸28l、28rに同軸に配設された変速装置44と、その変速装置44の出力を差動装置42に選択的に伝達する第1クラッチC1および第2クラッチC2とを、備えている。なお、本実施例の差動装置42は本発明の差動部に対応しており、変速装置44は、本発明の変速部に対応している。
差動装置42は、第1回転要素であるリングギヤR1、互いに噛み合う複数対のピニオンギアP1、それらピニオンギヤPを自転および公転可能に支持する第2回転要素RE2であるキャリヤCA1、および上記複数対のピニオンギヤPを介してリングギヤR1と噛み合う第3回転要素であるサンギヤS1を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、そのギヤ比ρは(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)はたとえば0.5に設定されている。上記リングギヤR1は、差動装置42のケース46内にそのケース46と一体的に設けられており、プロペラシャフト24の回転が傘歯車38および40によって減速されて伝達される。キャリヤCA1は、左後輪車軸28lを介して左後輪30lに接続されている。サンギヤS1は、右後輪車軸28rを介して右後輪30rに連結されている。なお、第2回転要素RE2および第3回転要素RE3は置換可能であり、以下の説明についていも同じである。
変速装置44は、第5回転要素RE5であるサンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第6回転要素RE6であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第4回転要素であるリングギヤR2を備えたシングルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、前記第1回転要素RE1に連結されており、変速装置44の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、非回転部材45に選択的に連結される。第4回転要素RE4は、変速装置44の出力部材として機能させられる。この第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。なお、トルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2は、それぞれスリップ係合可能な多板式の摩擦係合装置で、制御装置36によって油圧回路34が切り換えられることにより係合或いは解放されると共に、必要に応じて油圧制御が行われることによりスリップ係合時の伝達トルクが制御される。なお、本実施例のトルク移動切換ブレーキBは、本発明のブレーキに対応している。
以上のように構成された駆動力配分装置26による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。図3乃至図6は、駆動力配分装置26の差動装置42の共線図である。図において、左側の縦軸は、左後輪30lに連結された第2回転要素RE2であるキャリヤCA1の回転数Nlを示しており、右側の縦軸は、右後輪30rに連結された第3回転要素RE3の回転数Nrを示しており、中央の縦軸は、ケース46と一体的に回転させられる第1回転要素RE1であるリングギヤR1の回転数Ni、および第4回転要素RE4の回転数Ncを示している。また、図の右側に示される表は、トルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2の状態を示しており、「○」が係合状態、「×」が解放状態を示している。なお、回転数NlとNcとの間の直線は第1クラッチC1の状態を示しており、実線がスリップ係合状態、破線が解放状態を示している。また、回転数Ncと回転数Nrとの間の直線は第2クラッチC2の状態を示しており、実線がスリップ係合、破線が解放状態を示している。
図3は、駆動力配分装置26の非制御時の共線図である。非制御時においては、トルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2はそれぞれ解放状態となっている。この状態では差動装置42のみが機能し、変速装置44は空転状態となり、左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分される。これにより、駆動力配分装置26は、トルク移動および差動制限は行われず通常のオープンデフとして機能する。また、直進時においては図3に示されるように、差動装置42は一体的に回転され、左右の後輪30l、30rの回転数Nl、Nrは略同回転となる。
図4は、左右輪トルク差制御時の共線図の一例であり、たとえば左旋回中等に右後輪30rの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させている状態の共線図である。図4では、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第1クラッチC1がスリップ係合され、第2クラッチC2が解放されている。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置44のキャリヤCA2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncが逆回転方向に減速されて出力される。また、第1クラッチC1がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第2回転要素RE2に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数Ncは逆回転方向に減速されているため、スリップ係合されると左後輪30lの駆動力が減少させられ、右後輪30rの駆動力が相対的に増大させられる。また、左後輪30lの回転数Nlがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、右後輪30rは増速させられる。
また、たとえば右旋回中等では、図5に示されるように左後輪30lの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させることができる。この場合においては、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第2クラッチC2がスリップ係合され、第1クラッチC1が解放されている。図4と同様にトルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置44のキャリヤCA2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncが逆方向に減速されて出力される。また、第2クラッチC2がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第3回転要素RE3に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数は逆回転方向に減速されているため、スリップ係合されると右後輪30rの駆動力が減少させられ、左後輪30lの駆動力が相対的に増大させられる。また、右後輪30rの回転数Nrがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、左後輪30lは増速させられる。
図6は、差動制限制御時の共線図である。差動制限制御時においては、トルク移動切換ブレーキBが解放され、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合される。この第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。ここで、互いのクラッチC1、C2が完全係合されると、ノンスリップデフとして機能し、左右の後輪30l、30rが同回転となる。なお、差動制限力は、クラッチ制御トルクに比例し任意に設定することができる。
上述のように、前述の実施例の駆動力配分装置26によれば、駆動源から伝達される駆動力によって回転駆動される第1回転要素RE1の回転を変速装置44によって変速させ、第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して差動装置42の第2回転要素RE2または第3回転要素RE3へ伝達することにより、左右の駆動輪30l、30rの左右のトルクを制御することができ、任意方向のヨーモーメント制御が可能となる。さらに、差動を制限する際、変速装置44を空転させることで第4回転要素RE4に伝達されるトルク伝達量を無くし、第1クラッチC1および第2クラッチC2を摺動させることなく完全に係合させると、差動制限時の摩擦係合要素の摺動の累積量を低減でき、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置44は、第6回転要素RE6の回転を制動可能なトルク移動切換ブレーキBを備えているため、そのトルク移動切換ブレーキBを係合或いは半係合させることで変速状態となり、駆動力配分が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置44は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の配設が容易な構造であるため、実用的な駆動力配分装置26となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置44は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な駆動力配分装置26となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置44は減速機構であるため、より大きなトルクを伝達することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図7は本発明の他の実施例である駆動力配分装置50の骨子図である。なお、本実施例では、駆動力配分装置50は対称に構成されているため、下側半分が省略されている。
図7の駆動力配分装置50を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置52の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置52は、本発明の変速部に対応している。
変速装置52は、第4回転要素であるサンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第6回転要素RE6であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第5回転要素RE5であるリングギヤR2を備えたシングルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置52の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28に選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置50による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。
図8は、駆動力配分装置50の左右輪トルク差制御時の共線図の一例であり、たとえば左旋回中等に右後輪30rの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させた場合の共線図である。図8では、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第1クラッチC1がスリップ係合され、第2クラッチC2が解放されている。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置52のキャリヤCA2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncは、逆転方向に増速されて出力される。また、第1クラッチC1がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第2回転要素RE2に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数Ncは、逆回転方向に増速されているため、スリップ係合されると、左後輪30lの駆動力が減少させられ、右後輪30rの駆動力が相対的に増大される。また、左後輪30lの回転数Nlがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、右後輪30rは増速させられる。
また、たとえば右旋回中等では、図9に示されるように左後輪30lの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させることができる。この場合においては、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第2クラッチC2がスリップ係合され、第1クラッチC1が解放されている。図8と同様にトルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置52のキャリヤCA2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncが逆方向に増速されて出力される。また、第2クラッチC2がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第3回転要素RE3に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数は逆回転方向に増速されているため、スリップ係合されると右後輪30rの駆動力が減少させられ、左後輪30lの駆動力が相対的に増大される。また、右後輪30rの回転数Nrがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、左後輪30lは増速させられる。
また、駆動力配分装置50の非制御時においては、図3と同様にトルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2はそれぞれ解放状態となっている。この状態では差動装置42のみが機能し、変速装置52は空転状態となり、左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分される。これにより、駆動力配分装置26は、左右輪トルク差制御および差動制限制御は行われず通常のオープンデフとして機能する。
また、差動制限時においては、図6と同様に、トルク移動切換ブレーキBが解放され、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合される。この第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。互いのクラッチが完全係合されると、ノンスリップデフとして機能し、左右の後輪30l、30rが同回転となる。なお、差動制限力は、クラッチ制御トルクに比例し任意に設定することができる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置50は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置52は、第1回転要素RE1との連結が構造上容易な配置となるため、実用的な駆動力配分装置50となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置52は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な駆動力配分装置50となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置52は増速機構であるため、伝達されるトルクが小さくなり、そのトルクを伝達する摩擦係合要素の大きさを小さくすることができる。
図10は本発明の他の実施例である駆動力配分装置60の骨子図である。なお、本実施例では、駆動力配分装置60は対称に構成されているため、下側半分が省略されている。
図10の駆動力配分装置60を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置62の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置62は、本発明の変速部に対応している。
変速装置62は、第5回転要素RE5であるサンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第4回転要素であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第6回転要素RE6であるリングギヤR2を備えたシングルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置62の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置60による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。
図11は、駆動力配分装置60の左右輪トルク差制御時の共線図の一例であり、たとえば左旋回中等に右後輪30rの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させた場合の共線図である。図11では、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第1クラッチC1がスリップ係合され、第2クラッチC2が解放されている。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置62のリングギヤR2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncは、同回転方向に減速されて出力される。また、第1クラッチC1がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第2回転要素RE2に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数Ncは、同回転方向に減速されているため、スリップ係合されると、左後輪30lの駆動力が減少させられ、右後輪30rの駆動力が相対的に増大される。また、左後輪30lの回転数Nlがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、右後輪30rは増速させられる。
また、たとえば右旋回中等では、図12に示されるように左後輪30lの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させることができる。この場合においては、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第2クラッチC2がスリップ係合され、第1クラッチC1が解放されている。図11と同様にトルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置62のリングギヤR2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncが同回転方向に減速されて出力される。また、第2クラッチC2がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第3回転要素RE3に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数は同回転方向に減速されているため、スリップ係合されると右後輪30rの駆動力が減少させられ、左後輪30lの駆動力が相対的に増大される。また、右後輪30rの回転数Nrがスリップ係合により減速されるため、差動装置42によって、左後輪30lは増速させられる。
また、駆動力配分装置60の非制御時においては、図3と同様にトルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2はそれぞれ解放状態となっている。この状態では差動装置42のみが機能し、変速装置62は空転状態となり、左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分される。これにより、駆動力配分装置50は、左右輪トルク差制御および差動制限制御は行われず通常のオープンデフとして機能する。
また、差動制限時においては、図6と同様に、トルク移動切換ブレーキBが解放され、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合される。この第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。互いのクラッチが完全係合されると、ノンスリップデフとして機能し、左右の後輪30l、30rが同回転となる。なお、差動制限力は、クラッチ制御トルクに比例し任意に設定することができる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置60は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置62は、トルク移動切換ブレーキBの配設が構造上容易となり、実用的な駆動力配分装置60となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置62は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、第4回転要素RE4と第2および第3回転要素RE2、RE3の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置62は減速機構であるため、より大きなトルクを伝達することができる。
図13は本発明の他の実施例である駆動力配分装置70の骨子図である。なお、本実施例では、駆動力配分装置70は対称に構成されているため、下側半分が省略されている。
図13の駆動力配分装置70を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置72の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置72は、本発明の変速部に対応している。
変速装置72は、第4回転要素RE4であるサンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第5回転要素RE5であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第6回転要素RE6であるリングギヤR2を備えたシングルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置72の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置70による左右の後輪30l、30rrへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。
図14は、駆動力配分装置70の左右輪トルク差制御時の共線図の一例であり、たとえば右旋回中等に左後輪30lの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させた場合の共線図である。図14では、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第1クラッチC1がスリップ係合され、第2クラッチC2が解放されている。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置72のリングギヤR2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncは、同回転方向に増速されて出力される。また、第1クラッチC1がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第2回転要素RE2に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数Ncは、同回転方向に増速されているため、スリップ係合されると、左後輪30lの駆動力が増大させられ、右後輪30rの駆動力が相対的に減少させられる。また、左後輪30lの回転数Nlがスリップ係合により増速されるため、差動装置42によって、右後輪30rは減速させられる。
また、たとえば右旋回中等では、図15に示されるように右後輪30rの駆動力を増大させてアンダーステアを抑制させることができる。この場合においては、トルク移動切換ブレーキBが係合されると共に、第2クラッチC2がスリップ係合され、第1クラッチC1が解放されている。図14と同様にトルク移動切換ブレーキBが係合されると、変速装置72のリングギヤR2がロックされ、第4回転要素RE4の回転数Ncが同回転方向に増速されて出力される。また、第2クラッチC2がスリップ係合されることで、第4回転要素RE4の出力が第3回転要素RE3に伝達される。ここで、第4回転要素RE4の回転数は同回転方向に増速されているため、スリップ係合されると右後輪30rの駆動力が増大させられ、左後輪30lの駆動力が相対的に減少させられる。また、右後輪30rの回転数Nrがスリップ係合により増速されるため、差動装置42によって、左後輪30lは減速させられる。
また、駆動力配分装置70の非制御時においては、図3と同様にトルク移動切換ブレーキB、第1クラッチC1、および第2クラッチC2はそれぞれ解放状態となっている。この状態では差動装置42のみが機能し、変速装置72は空転状態となり、左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分される。これにより、駆動力配分装置70は、トルク移動および差動制限は行われず通常のオープンデフとして機能する。
また、差動制限時においては、図6と同様に、トルク移動切換ブレーキBが解放され、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合される。この第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。互いのクラッチが完全係合されると、ノンスリップデフとして機能し、左右の後輪30l、30rが同回転となる。なお、差動制限力は、クラッチ制御トルクに比例し任意に設定することができる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置70は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置72は、トルク移動切換ブレーキBの配設が構造上容易となり、実用的な駆動力配分装置70となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置72は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であるため、第4回転要素RE4と第2および第3回転要素RE2、RE3の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり、実用的な車両用駆動力配分装置となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置72は増速機構であるため、伝達されるトルクが小さくなり、そのトルクを伝達する摩擦係合要素の大きさを小さくすることができる。
図16は本発明の他の実施例である駆動力配分装置80の骨子図である。図16の駆動力配分装置80を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置82の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置82は、本発明の変速部に対応している。
変速装置82は、第5回転要素RE5であるサンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第6回転要素RE6であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第4回転要素RE4であるリングギヤR2を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置82の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置80による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、変速装置82の第4回転要素RE4は、トルク移動切換ブレーキBが係合されキャリヤCA2がロックされると、第4回転要素RE4の回転数は、第1回転要素RE1と同回転方向に減速されて出力される。これにより、左右輪トルク差制御時の共線図は、前述した図11および図12と同様の共線図となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3の共線図と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時においては、前述した図6の共線図と同様に第1および第2クラッチC1、C2が係合されることで差動制限制御が可能となる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置80は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置82は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の配設が容易な構造となるため、実用的な駆動力配分装置80となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置82は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、第4回転要素RE4と第2および第3回転要素RE2、RE3の回転方向が同方向となり、回転ロスが少なくなり実用的な車両用駆動力配分装置80となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置82は減速機構であるため、より大きなトルクを伝達することができる。
図17は本発明の他の実施例である駆動力配分装置90の骨子図である。図17の駆動力配分装置90を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置92の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置92は、本発明の変速部に対応している。
変速装置92は、第4回転要素RE4であるサンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第6回転要素RE6であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第5回転要素RE5であるリングギヤR2を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置92の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的に連結されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的に連結される。
以上のように構成された駆動力配分装置90による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、変速装置92の第4回転要素RE4は、トルク移動切換ブレーキBが係合されキャリヤCA2がロックされると、第4回転要素RE4の回転数は、第1回転要素RE1と同回転方向に増速されて出力される。これにより、左右輪トルク差制御時の共線図は、前述した図14および図15と同様の共線図と同様となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3の共線図と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時においては、前述した図6の共線図と同様に第1および第2クラッチC1、C2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置90は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置92は、第1回転要素RE1との連結が構造上容易な配置であるため、実用的な駆動力配分装置90となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置92は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、第4回転要素RE4と第2および第3回転要素RE2、RE3の回転方向が同じとなり、回転ロスが少なくなるので、実用的な駆動力配分装置90となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置92は増速機構であるため、伝達されるトルクが小さくなり、そのトルクを伝達する摩擦係合要素の大きさを小さくすることができる。
図18は本発明の他の実施例である駆動力配分装置100の骨子図である。図18の駆動力配分装置100を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置102の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置102は、本発明の変速部に対応している。
変速装置102は、第5回転要素RE5であるサンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第4回転要素RE4であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第6回転要素RE6であるリングギヤR2を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置102の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置100による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、変速装置102の第4回転要素RE4は、トルク移動切換ブレーキBが係合され、リングギヤR2がロックされると、第4回転要素RE4の回転数は、第1回転要素RE1と逆回転方向に減速されて出力される。これにより、左右輪トルク差制御時の共線図は、前述した図4および図5と同様の共線図と同様となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3の共線図と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時においては、前述した図6の共線図と同様に第1および第2クラッチC1、C2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置100は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置102は、トルク移動切換ブレーキBの配設が構造上容易となり、実用的な駆動力配分装置100となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置102は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な駆動力配分装置100となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置102は減速機構であるため、より大きなトルクを伝達することができる。
図19は本発明の他の実施例である駆動力配分装置110の骨子図である。図19の駆動力配分装置110を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置112の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置112は、本発明の変速部に対応している。
変速装置112は、第4回転要素RE4であるサンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第5回転要素RE5であるキャリヤCA2、および上記ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合う第6回転要素RE6であるリングギヤR2を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置112の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。
以上のように構成された駆動力配分装置110による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、変速装置112の第4回転要素RE4は、トルク移動切換ブレーキBが係合され、リングギヤR2がロックされると、第4回転要素RE4の回転数は、第1回転要素RE1と逆回転方向に増速されて出力される。これにより、左右輪トルク差制御時の共線図は、前述した図8および図9と同様の共線図と同様となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3の共線図と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時においては、前述した図6の共線図と同様に第1および第2クラッチC1、C2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置110は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置112は、トルク移動切換ブレーキBの配設が構造上容易となり、実用的な駆動力配分装置110となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置112は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であるため、比較的大きな変速比が得られ、実用的な駆動力配分装置110となる。
また、前述の実施例によれば、変速部112は、増速機構となることから、伝達されるトルクが小さくなるため、そのトルクを伝達する摩擦係合要素の大きさを小さくすることができる。
図20は本発明の他の実施例である駆動力配分装置120の骨子図である。図20の駆動力配分装置120を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置122の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置122は、本発明の変速部に対応している。
変速装置122は、ギヤ比が異なる一対のシングルピニオン型の第1遊星歯車装置124および第2遊星歯車装置126を組み合わせたもので、互いに駆動軸に対して同軸に配設されている。それら第1遊星歯車装置124のキャリヤCA2および第2遊星歯車装置126のキャリヤCA3は互いに一体的に連結され、第1遊星歯車装置124のサンギヤS2および第2遊星歯車装置126のサンギヤS3は互いに一体的に連結され第6回転要素RE6として機能させられ、第1遊星歯車装置124のリングギヤR2は第4回転要素RE4として機能させられ、第2遊星歯車装置126のリングギヤR3は、第5回転要素RE5として機能させられる。第5回転要素RE5は第1回転要素RE1に連結されており、変速装置122の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合されると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右後輪車軸28rに選択的にスリップ係合される。なお、本実施例の第1遊星歯車装置124および第2遊星歯車装置126が、本発明の第1の遊星歯車装置および第2の遊星歯車装置に対応している。
以上のように構成された駆動力配分装置120による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合され、第6回転要素RE6がロックされると、第2遊星歯車装置126のリングギヤR3の回転は、第2遊星歯車装置126の変速比に応じて減速されてキャリヤCA3からCA2に伝達され、そのキャリヤCA2の回転は第1遊星歯車装置124の変速比に応じて増速されてリングギヤR3である第4回転要素RE4に伝達される。これより、変速装置122全体の変速比は、第1遊星歯車装置124および第2遊星歯車装置126のそれぞれの変速比の積で決定されるため、それらの変速比に応じて同回転方向に増速或いは減速回転が可能となり、しかも比較的低い変速比を得ることができる。また、左右トルク制御時の共線図は、変速装置122が減速回転の場合は、前述した図11および12と同様の共線図となり、一方、変速装置122が増速回転の場合は、前述した図14および15と同様の共線図となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時においては、前述した図6と同様に第1および第2クラッチC1、C2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置120は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置122は2つ以上の遊星歯車装置124、126で構成されるため、比較的低い変速比を得ることも可能となり、実用的な駆動力配分装置120となる。
図21は本発明の他の実施例である駆動力配分装置130の骨子図である。図21の駆動力配分装置130を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置132の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置132は、本発明の変速部に対応している。
変速装置132は、ギヤ比が異なる一対のシングルピニオン型の第1遊星歯車装置134および第2遊星歯車装置136で構成され、互いに駆動軸に対して同軸に配置されている。第1遊星歯車装置134のリングギヤR2および第2遊星歯車装置136のリングギヤR3は互いに連結され、第1遊星歯車装置134のサンギヤS2は第5回転要素RE5として機能させられ、第1遊星歯車装置134のキャリヤCA2および第2遊星歯車装置136のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されることで第6回転要素RE6として機能させられ、第2遊星歯車装置136のサンギヤS3が第4回転要素RE4として機能させられる。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置132の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合させられると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右側後輪車軸28rに選択的にスリップ係合させられる。なお、本実施例の第1遊星歯車装置134および第2遊星歯車装置136は、本発明の第1の遊星歯車装置および第2の遊星歯車装置に対応している。
以上のように構成された駆動力配分装置130による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合され、第6回転要素RE6がロックされると、第1遊星歯車装置134のサンギヤS2の回転は、その第1遊星歯車装置134の変速比に応じて減速させられて第1遊星歯車装置134のリングギヤR2に出力される。このリングギヤR2の回転は、第2遊星歯車装置136のリングギヤR3に入力され、第2遊星歯車装置136の変速比に応じて増速させられて第2遊星歯車装置136のサンギヤS3に出力される。ここで、本実施例の第1遊星歯車装置134の変速比ρ1(ρ1>1.0)と第2遊星歯車装置136の変速比ρ2(ρ2<1.0)との積は1.0よりも大きくなるように設定されており、第5回転要素RE5(サンギヤS2)の回転は、第4回転要素RE4(サンギヤS3)に同回転方向に減速して伝達される。これにより、左右トルク制御時の共線図は、前述した図11および図12と同様の共線図となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時には前述した図6と同様に第1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置130は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置132は2つ以上の遊星歯車装置134、136で構成されるため、比較的低い変速比を得ることも可能となり、実用的な駆動力配分装置130となる。
図22は本発明の他の実施例である駆動力配分装置140の骨子図である。図22の駆動力配分装置140を、図2の駆動力配分装置26と比較すると、変速装置142の構成が異なるのみであり、他の構成は前述の駆動力配分装置26と同様となっているためその説明を省略する。なお、本実施例の変速装置142は、本発明の変速部に対応している。
変速装置142は、ギヤ比が異なる一対のシングルピニオン型の第1遊星歯車装置144および第2遊星歯車装置146で構成され、互いに駆動軸に対して同軸に配置されている。第1遊星歯車装置144のリングギヤR2および第2遊星歯車装置146のリングギヤR3は互いに連結され、第1遊星歯車装置144のサンギヤS2は第5回転要素RE5として機能させられ、第1遊星歯車装置144のキャリヤCA2および第2遊星歯車装置146のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されることで第6回転要素RE6として機能させられ、第2遊星歯車装置146のサンギヤS3が第4回転要素RE4として機能させられる。第5回転要素RE5は、第1回転要素RE1に連結されており、変速装置142の入力部材として機能する。第6回転要素RE6は、トルク移動切換ブレーキBに連結されており、選択的に非回転部材45に連結される。第4回転要素RE4は、第1クラッチC1を介して第2回転要素RE2である差動装置42のキャリヤCA1および左後輪車軸28lに選択的にスリップ係合させられると共に、第2クラッチC2を介して第3回転要素RE3である差動装置42のサンギヤS1および右側後輪車軸28rに選択的にスリップ係合させられる。なお、本実施例の第1遊星歯車装置144および第2遊星歯車装置146は、本発明の第1の遊星歯車装置および第2の遊星歯車装置に対応している。
以上のように構成された駆動力配分装置140による左右の後輪30l、30rへの駆動力の配分について説明する。エンジン12により発生させられた駆動力は、自動変速機14、中央差動歯車装置22、およびプロペラシャフト24等を介して差動装置42のケース46を回転駆動する駆動力として入力される。差動装置42のリングギヤR1は、ケース46と一体的に設けられているため、プロペラシャフト24からの駆動力はリングギヤR1から差動装置42に入力される。ここで、トルク移動切換ブレーキBが係合され、第6回転要素RE6がロックされると、第1遊星歯車装置144のサンギヤS2の回転は、その第1遊星歯車装置144の変速比に応じて減速させられて第1遊星歯車装置144のリングギヤR2に出力される。このリングギヤR2の回転は、第2遊星歯車装置146のリングギヤR3に入力され、第2遊星歯車装置146の変速比に応じて増速させられて第2遊星歯車装置146のサンギヤS3に出力される。ここで、本実施例の第1遊星歯車装置144の変速比ρ1(ρ1>1.0)と第2遊星歯車装置146の変速比ρ2(ρ2<1.0)の積は1.0よりも小さくなるように設定されており、第5回転要素RE5(サンギヤS2)の回転は、第4回転要素RE4(サンギヤS3)に同回転方向に増速して伝達される。これにより、左右トルク制御時の共線図は、前述した図14および図15と同様の共線図となり、左右の後輪30l、30rに適宜駆動力が配分される。また、非制御時においては、前述した図3と同様に左右の後輪30l、30rに均等に駆動力が配分され、差動制限時には前述した図6と同様に第1および第2クラッチC2が係合されることで差動制限が行われる。
このように、前述の実施例によれば、駆動力配分装置140は、前述の実施例と同様に左右輪トルク差制御が可能となると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2を大型化することなく差動制限制御が可能となる。
また、前述の実施例によれば、変速装置142は2つ以上の遊星歯車装置144、146で構成されるため、比較的低い変速比が得られ、実用的な駆動力配分装置140となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例において、駆動力配分装置26等が前置エンジン前輪駆動を基本とする前後輪駆動車両に適用された例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前置エンジン前輪駆動(FF)車両、前置エンジン後輪駆動(FR)車両、および前置エンジン後輪駆動を基本とする前後輪駆動車両等、様々な型式の車両に適宜適用され得るものである。
また、前述の実施例において、駆動源は、ガソリンエンジン或いは、ディーゼルエンジン等の内燃機関であったが、特にそれらに限定されるものではなく、電動モータ等の他の駆動源から成るものであっても構わない。
また、前述の実施例においては、変速装置26等は、1つの遊星歯車装置或いは2つの遊星歯車装置で構成されているが、変速装置26等の構成は、第5回転要素RE5の回転を変速することができる構成であればよく、3つ以上の遊星歯車装置を用いた構成、ダブルピニオン型とシングルピニオン型の2つ遊星歯車装置での構成等、様々な他の型式の変速装置であっても構わない。また、遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの連結関係も矛盾のない範囲で自由に変更することができ、トルク移動切換ブレーキBの位置も矛盾のない範囲で自由に変更することができる。
また、前述の実施例において、制御装置36は、各種センサから供給される信号すなわち車両の走行状態に応じて左右輪トルク差制御および差動制限制御を選択的に実行するものであったが、スイッチ等により運転者がそれらの制御の何れかを選択できるようにしても構わない。
また、前述の実施例において、差動装置42は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置で構成されているが、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、および第3回転要素RE3から成る遊星歯車装置を備えたものであればよく、シングルピニオン型の遊星歯車装置を備えたものであっても構わない。
また、前述の実施例において、後輪車軸28の左後輪車軸28l、右後輪車軸28r、および後輪30の左後輪30l、右後輪30rの左右関係は特に限定されるものではなく、左右を逆にして実施することもできる。
また、前述の実施例において、トルク移動切換ブレーキBによって、第6回転要素RE6はロックされているが、トルク移動切換ブレーキBは、半係合状態にして実施することもできる。
また、前述の実施例において、第1クラッチC1、第2クラッチC2、およびトルク移動切換ブレーキBは、油圧によって駆動するものであるが、電磁式クラッチ等、他の型式のクラッチ装置およびブレーキ装置を用いて実施することもできる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明が適用される駆動力伝達装置を有する前置エンジン前輪駆動を基本とする前後輪駆動車両の構成を説明する骨子図である。
本発明の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
図2の車両用駆動力配分装置の非制御時の差動装置の共線図である。
図2の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の共線図である。
図2の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の他の共線図である。
図2の車両用駆動力配分装置の差動制限制御時の差動装置の共線図である。
本発明の他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
図7の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の共線図である。
図7の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の他の共線図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
図10の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の共線図である。
図10の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の他の共線図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
図13の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の共線図である。
図13の車両用駆動力配分装置の左右輪トルク制御時の差動装置の他の共線図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
本発明のさらに他の実施例である車両用駆動力配分装置の構成を説明する骨子図である。
符号の説明
26、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140:車両用駆動力配分装置 42:差動装置(差動部) 44、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142:変速装置(変速部) 124、134、144:第1遊星歯車装置(第1の遊星歯車装置) 126、136、146:第2遊星歯車装置(第2の遊星歯車装置) RE1:第1回転要素 RE2:第2回転要素 RE3:第3回転要素 RE4:第4回転要素 RE5:第5回転要素 RE6:第6回転要素 C1:第1クラッチ C2:第2クラッチ B:トルク移動切換ブレーキ(ブレーキ)