JP2007276120A - 漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法。 - Google Patents

漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法。 Download PDF

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Abstract

【課題】漆器及び位牌、仏具類の塗装物にパソコン制御のインクジェット式印刷法によって直接被塗装物に加飾又は印字の下描きを行い、その上に金粉又は金箔を接着させる加飾法を提供する。
【解決手段】混練装置によって漆のエマルジョンの粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆単体、又は当該再加工漆と一液タンプのウレタン系若しくはエポキシ系塗料を混練装置によって混練処理し、漆のエマルジョン粒径が1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を下書き用インクとして、予めレイアウトされた文字や描画をパソコン制御によるインクジェットプリンターにより直接被塗装物に下書き印刷する印刷工程と、当該印刷工程によって下書き印刷された被塗装物を湿度70%〜80%RHの加湿乾燥機中に静置する乾燥工程と、指触乾燥直前に金粉を蒔き付けるか金箔を貼り付ける加飾工程から成る。
【選択図】なし

Description

本発明は、漆器及び位牌、仏具類の塗装物にパソコン制御のインクジェット式印刷法によって直接被塗装物に加飾又は印字の下描きを行い、その上に金粉又は金箔を接着させる加飾法に関するものである。
近年、漆器及び位牌、仏具類の塗装物に蒔絵や文字書きの加飾を施す場合には、筆書きやシルクスクリーン印刷等で下書きをし、その下書きによる塗面が適度な乾燥状態となった時点で金粉を鹿皮に付着させて蒔き付けたり、あるいは金箔を貼り付けて固着させていた。一方、近年のハイテク技術の進歩の影響により、従来伝統工芸の領域として職人の手作業によっていた加飾作業にも、パソコン制御による自動印刷技術が導入されるようになった。
ここで、上記背景技術を具体的に示すと、先ず、特開平8−84656号の「位牌の製造方法及びその位牌」がある。ここで、当該発明は、手彫り又は手書きによる戒名入れ工程を省きつつも、位牌としての品位や厳かさにマッチした戒名を入れることのできる位牌の製造方法及びその位牌に関するものであり、当該発明の要旨は、コンピュータでシルクスクリーン上に戒名その他の文字、図形などを生成し、このシルクスクリーンで位牌表面上に漆を用いて戒名を印刷し、漆の乾燥前に金粉をまぶした後余分の金粉を取り除いて、戒名の形に金粉を定着させるものであった。
更に、本発明者は上記発明等においてシルクスクリーン印刷のように予め所要の印版を準備する必要があり、個別に製作される所謂一点物の製作に対しての課題解決として、上記所要の印版を準備する必要が無く、パソコン制御によるインクジェット印刷方法により被塗装物に直接文字や文様を下書き印刷し得、当該印刷後に加湿乾燥機による乾燥工程を行い、指触乾燥直前に金粉を蒔き付けるか金箔を貼り付けるようにした、漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷による加飾法を特開2004−358766号として開示している。
また、上記特開2004−358766号における、印刷工程において使用されるインクメジウムは、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルローズ等の水溶性糊剤に生漆を添加して得た生漆変性水溶性糊剤であった。これは、当該発明の印刷工程に用いられるインクジェットプリンターのノズルヘッドの直経が5ミクロン程度と微細な口径であるため、通常の生漆又は精製漆を使用した場合にはノズルヘッドが詰まり、使いものにならないために採用された解決手段であった。
ところで、天然の漆液は、通常25〜40%程度の水分を含む不透明な油中水型のエマルジョン溶液である。また、上記天然の漆液は精製処理が施され所謂精製漆にしたあと使用に供されるようになる。ここで、当該精製漆の品質は日本工業規格(K−5950)に規定されており、当該規格に規定する品質を備えた精製漆は、原料漆液又は生漆に所謂なやし処理やくろめ処理が施されることにより製造されている。そこで、上記なやし処理とは、木製又はステンレス製の桶に原料漆液又は生漆を入れ、回転羽根で2〜3時間撹拌する操作を指し、更に、上記くろめ処理とは、なやし処理を行った漆液を加熱しながら4〜5時間撹拌して漆液内の水分を除去する操作を指している。しかしながら、上記漆液の精製にあたっては、職人の長年の経験と勘とによって行われている。即ち、漆液はその成分中の酵素を触媒とする酸化重合反応によって塗膜が形成されることが知られているが、上記の各処理工程において、過剰な温度の付与、酵素が溶解している漆液中の水分の減少等に起因して、酵素の活性化が阻害される結果、乾燥効果が得られないという支障が生じることがある。そのため、上記漆液の精製における判断は、色の変化、撹拌によって生じる泡の大きさ、漆液の透明度等が目安となっている。このようにして精製された精製漆のエマルジョン粒径は、不均等であり10ミクロン以上の超大エマルジョン粒子が多く含まれている。従って、当該精製漆をインクジェットプリンターに使用した場合には、ノズルヘッドの直経が5ミクロン程度であるため当該ノズルヘッドが詰まり使用に供し得ないという課題があった。
特開2004−358766号
上記背景技術の項に記載のように、日本工業規格(K−5950)に規定されている精製漆の品質については、現実的には職人の長年の経験と勘に支えられるところがあって、当該精製漆におけるエマルジョン粒子の直経レベルまでの品質を規定したものではなかったため、電子顕微鏡による観察においては、同一規格品であってもその状況は大きく異なるものであったし、また、エマルジョンの粒径自体が不均一であって、1ミクロン〜数十ミクロン程度のエマルジョン粒子が分散している状態であった。従って、本発明者らのインクジェットプリンターへの適応試験においては、ノズルヘッドが詰まり使用不能であるという欠点があった。
しかしながら、本発明は上記背景技術に記載の従来技術の欠点等に鑑み成されたものであり、本発明者における各種試験の結果、日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆に対して、三本ローラミル等の公知の混練装置によってエマルジョンの粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆単体、又は上記精製漆と一液タンプのウレタン系若しくはエポキシ系塗料を三本ローラミル等の公知の混練装置によって漆のエマルジョン粒径を1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を使用するようにすれば、5ミクロン程度の微細口径からなるインクジェットプリンターのヘッドノズルであっても、目詰まりすることなく、被塗装物に対する文字や文様の下書き印刷が可能となるという知検を得て本発明に到達したものであり、本発明の目的は、再加工漆単体又はウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を使用した、漆器及び位牌、仏具類の塗装物にパソコン制御のインクジェット式印刷法によって直接被塗装物に加飾又は印字の下描きを行い、その上に金粉又は金箔を接着させる加飾法を提供することにある。
しかして、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法は、上記目的を達成するため以下の構成より成るものである。
即ち、上記目的を達成するため、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法は、日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆に対して、混練装置によって混練処理し漆のエマルジョン粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆単体、又は上記精製漆と一液タンプのウレタン系若しくはエポキシ系塗料を混練装置によって混練処理し漆のエマルジョン粒径が1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を下書き用インクとして、予めレイアウトされた文字や描画をパソコン制御によるインクジェットプリンターにより直接被塗装物に下書き印刷する印刷工程と、当該印刷工程によって下書き印刷された被塗装物を湿度70%〜80%RHの加湿乾燥状態で静置する乾燥工程と、指触乾燥直前に金粉を蒔き付けるか金箔を貼り付ける加飾工程から成ることを要旨とする。
本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法では、インクジェットプリンターによってインクジェット方式によるバインダー印刷ができることから、従来のマスキングシートに対するスプレー塗装に比べ、格段に使用塗料の量を低減できるという効果がある。また、このことから従来は必須であった特別の塗装ブースや局排装置も不要であり、生産設備を軽減することができるという効果もある。
次に、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法では、エマルジョンの粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆、漆のエマルジョン粒径が1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆、又はエポキシ変性加工漆を下書き用インクとして使用するようにしたので、インクジェットプリンターのヘッドノズルに詰まりを生ずることがないという効果がある。
続いて、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法では、下書き用インクとして再加工漆、ウレタン変性加工漆、又はエポキシ変性加工漆を使用することができるので、漆塗りを施した被塗装物に対する金粉又は金箔を被塗装物と同じ漆系バインダーによって接着することにより、接着強度を高めることができるという効果もある。
本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法は、インクジェットプリンター用のインクとして日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆に対して、三本ローラミル等の公知の混練装置によってエマルジョンの粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆単体、又は上記精製漆と一液タンプのウレタン系若しくはエポキシ系塗料を三本ローラミル等の公知の混練装置によって漆のエマルジョン粒径を1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を使用するようにすれば、5ミクロン程度の微細口径からなる上記インクジェットプリンターのヘッドノズルであっても、目詰まりすることなく、被塗装物に対する文字や文様の下書き印刷が可能となるという知見を得て、漆器及び位牌、仏具類の塗装物にパソコン制御のインクジェットプレンターによって直接被塗装物に加飾又は印字の下描きを行い、その上に金粉又は金箔を接着することを実現した。
以下、本発明の実施例について説明するものとする。先ず、本発明に係る第一の実施例は、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法によって、漆塗り製の板に家紋を金加飾したものである。この際にインクジェットプリンターに使用されたインクは、日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆を、更に混練装置である市販の三本ローラミルによって10分間混練したものである。上記の再加工漆は、電子顕微鏡により観察したところ10ミクロン以上の超大な漆のエマルジョン粒子が消失し、漆のエマルジョン粒径が1ミクロン程度のものに均一に分散された状態に変化していた。次に、上記再加工漆をインクとして株式会社マスターマインド社製の厚物素材ダイレクトプリンターのインク容器に充填し、予めパソコンによってレイアウトしてあった桔梗の家紋を上記漆塗り製の板に印刷した。続いて、上記印刷した漆塗り製の板を温度20°C〜25°C、湿度70%〜80%RHに維持された漆室に静置し、2時間後に取り出して乾燥状態を調べたところ指触乾燥直前であったため、竹製ピンセットで金箔を貼り付け室温状態で2時間放置した後、加飾部分の周辺に付着した金箔をシンナーで拭き取ったところ、筆書き類似の盛り上がりがあり且つ鮮明な金加飾の桔梗家紋が形成された。また更に、漆塗り製の板と金箔との密着性についてもシンナーを含んだウェスで強く擦り付ける方法によって確認したが、金箔の剥離は極めて微量であり、良好な密着性が得られるとの結果であった。
次に、本発明に係る第二の実施例は、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法によって、戒名文字を漆塗り位牌の札板に印刷したものである。この際にインクジェットプリンターに使用されたインクは、日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆50重量%と1液タイプのウレタン塗料50重量%を混合し、更に混練装置である市販の三本ローラミルによって5分間混練したものである。上記のウレタン変性加工漆を電子顕微鏡により観察したところ10ミクロン以上の超大な漆のエマルジョン粒子が消失し、漆のエマルジョン粒径は1ミクロン程度のものに変化し均一に分散された状態であった。続いて、上記ウレタン変性加工漆をインクとして株式会社マスターマインド社製の厚物素材ダイレクトプリンターのインク容器に充填し、予めパソコンによってレイアウトしてあった戒名文字を上記漆塗り位牌の札板に印刷した。更に続いて、上記印刷した漆塗り位牌の札板を温度20°C〜25°C、湿度70%〜80%RHに維持された漆室に静置し、2時間後に取り出して乾燥状態を調べたところ指触乾燥直前であったため、上記印刷の戒名文字にパフ状の鹿皮についた金粉を蒔きつけ室温で2時間放置した後、上記位牌札板の文字部分の周辺に付着した金粉をシンナーで拭き取ったところ、筆書き類似の盛り上がりがあり且つ鮮明な金加飾の戒名文字が形成された。また更に、位牌札板と金箔との密着性についてもシンナーを含んだウェスで強く擦り付ける方法によって確認したが、金箔の剥離は極めて微量であり、良好な密着性が得られるとの結果であった。
続いてまた、本発明に係る第三の実施例は、本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法によって、戒名文字を別の漆塗り位牌の札板に印刷したものである。この際にインクジェットプリンターに使用されたインクは、日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆50重量%と1液タイプのエポキシ塗料50重量%を混合し、更に混練装置である市販の三本ローラミルによって5分間混練したものである。上記のエポキシ変性加工漆を電子顕微鏡により観察したところ10ミクロン以上の超大な漆のエマルジョン粒子が消失し、漆のエマルジョン粒径は1ミクロン程度のものに変化し均一に分散された状態であった。続いて、上記エポキシ変性加工漆をインクとして株式会社マスターマインド社製の厚物素材ダイレクトプリンターのインク容器に充填し、予めパソコンによってレイアウトしてあった戒名文字を上記漆塗り位牌の札板に印刷した。更に続いて、上記印刷した漆塗り位牌の札板を温度20°C〜25°C、湿度70%〜80%RHに維持された漆室に静置し、2時間後に取り出して乾燥状態を調べたところ指触乾燥直前であったため、上記印刷の戒名文字にパフ状の鹿皮についた金粉を蒔きつけ室温で2時間放置した後、上記位牌札板の文字部分の周辺に付着した金粉をシンナーで拭き取ったところ、筆書き類似の盛り上がりがあり且つ鮮明な金加飾の戒名文字が形成された。また更に、位牌札板と金箔との密着性についてもシンナーを含んだウェスで強く擦り付ける方法によって確認したが、金箔の剥離は極めて微量であり、良好な密着性が得られるとの結果であった。
本発明に係る漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法は、漆器及び位牌、仏具類の塗装物にパソコン制御のインクジェット式印刷法によって直接被塗装物に加飾又は印字の下描きを行い、その上に金粉又は金箔を接着させるものであるが、特に金粉又は金箔に限定されるものではなく、その他の顔料等を適応させることも可能であり、その用途は例えば、建築用の内装材としても有用と考えられ、その利用範囲は広い。

Claims (1)

  1. 日本工業規格(K−5950)に規定される精製漆に対して、混練装置によって漆のエマルジョン粒径を1ミクロン以下になるまで再加工処理を行った再加工漆単体、又は上記精製漆と一液タンプのウレタン系若しくはエポキシ系塗料を混練装置によって混練処理し漆のエマルジョン粒径が1ミクロン以下になるまで加工処理したウレタン変性加工漆又はエポキシ変性加工漆を下書き用インクとして、予めレイアウトされた文字や描画をパソコン制御によるインクジェットプリンターにより直接被塗装物に下書き印刷する印刷工程と、当該印刷工程によって下書き印刷された被塗装物を湿度70%〜80%RHの加湿乾燥状態で静置する乾燥工程と、指触乾燥直前に金粉を蒔き付けるか金箔を貼り付ける加飾工程から成ることを特徴とする、漆器及び位牌、仏具類のインクジェット式印刷加飾法。
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