先ず、本発明の一実施形態によれば、耳珠を血圧測定部位として用いる。このように耳珠を血圧測定用の部位として選んだ理由は、耳珠は耳介の一部でありかなり小さいために血圧検出部を小型化できる利点が挙げられる。また、耳珠は頭部の一部であるので位置変動が少なく血圧測定に適している。さらに耳珠は、集音以外の目的では使用されないので就寝中を含みカフを常時装着していても、指などに比べて日常生活に対する支障が少なく、さらに血圧検出部を小型化できるために血圧測定時において被験者に対して痛みを与える原因となる侵襲度を少なくできる点などが挙げられる。
ここで、耳珠を血圧測定部位にすることで血圧測定時に痛みを低減できる点についてさらに補足すると、上腕や指は体の重要な部位として複雑な作業を行うので、それらの作業ができるようにそれらの血管の周囲には多くの神経が張り巡らされている。
一方で、耳介の一部である耳珠は、頭部に固定され、主に集音目的に使用されるために、耳珠周辺にある神経の量は、複雑な作業に使われる上腕や指に比べて少ない。このため、外耳及びその周辺部を用いて血圧測定をする場合には、耳珠が最も痛みを感じにくい部位であり、かつ耳珠は小さい部位でありカフを小さく構成できることから、上腕や指を用いる血圧測定に比べて血圧測定時の痛みを低減できるという利点がある。
しかし、耳珠は耳介の一部の小さい部位であることから、小さい血圧測定部を耳珠に対して確実かつ安定して固定することができないと、血圧検出部が測定時に動いてしまい精度よく血圧測定ができないこととなる。
例えば、血圧検出部には、耳珠を加圧するためのカフに加圧流体、加圧空気または加圧液体を供給するための配管と、血圧検出部を駆動する電力や血圧検出部から血圧測定装置本体へ送信する出力信号などの信号線である配線とが連結される。この配管と配線は血圧測定装置の本体側に連結される構成が一般的となる。
このために、長期間に渡って血圧測定を行う際に、例えば、血圧測定装置の本体を操作する際に、配管や配線に手が触れて血圧検出部の装着位置がずれてしまうと、正しい血圧測定ができなくなる。
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な各実施形態の血圧測定装置を耳式血圧計1として説明する。なお、以下に示す各実施形態の血圧測定装置の各部の構成と形状および寸法は、一例に過ぎず、これらにより本発明の技術的範囲が限定的に解釈されないことは言うまでもない。
まず、図1は、本発明の血圧測定装置である耳式血圧計1が装填される左側の耳介220の外観斜視図である。本図において、左耳の耳介220は、外耳道230の縁部から連続形成される耳珠221と対珠222と耳甲介223と対輪224と耳輪225と対輪脚226とが、図示のような相互位置関係になっている。また、対輪224の裏面側は頭部側面に連続する耳掛け部分となる軟骨を内蔵した延設部(不図示)が形成されている。これらの各部位の形状とサイズは性別、男女別、年齢別または人種別の個体差が大きいことが知られている。さらに、耳珠221の手前側には図中の破線で図示した浅側頭動脈228が上下方向に内蔵されている。
図2は、一実施形態に係る耳式血圧計1の全体構成を示す外観斜視図である。本図において、耳式血圧計1は、血圧測定演算を実行するための小型の装置本体2と、被測定者の耳珠221に対して内側となる外耳道に挿入される内側カフとなるカフ組立体6と、外側カフとなるカフ組立体7を着脱自在にするための保持部材16を備えている。また、この保持部材16を吊り下げるために耳掛け部材51の上側の端部から配管4、4を介して吊り下げるように構成された耳掛け部材51とを備えている。
すなわちこの耳式血圧計1は、外耳道230に挿入される内側カフとなる内側カフ組立体6と、耳珠221の外側に位置される外側カフとなる外側カフ組立体7とを図示のように保持した保持部材16と、この保持部材16から配管4と配線5を介して接続される装置本体2から構成されている。
耳掛け部材51は、図1に図示した耳輪225の付け根に沿って装着可能な形状となるように形成されており、図示のように配線5と配管4を内蔵した被覆部材9を、耳掛け部材51の縁部に沿うように設けるために略等間隔で一体形成された複数の輪部52を通過させて固定している。一方、耳掛け部材51の端部54は、図示のように手前側に曲がるように形成されておりその先端に球体54を形成している。また、耳掛け部51は、メガネフレームの耳掛け部と略同様な形状をなしており、耳輪225への装着後の安定を図ることができるように構成されている。
この耳掛け部51を図示の形状のように成形するための使用樹脂材料としてはポリカーボネイト系、ABS系、POM系、PPS系などの樹脂材料が使用できる。また、使用材料としては量産性、寸法安定性、コスト面などから樹脂材料が通常用いられるが、これに限定されず、軽金属、木、紙、各種素材を組み合わせたハイブリット構成としても良い。また、各種サイズに対応させて各部品の色を病院向けにはオレンジ、一般用途向けにはブルー、子供向けには白などとして色分けすると良い。
被覆部材9は、装置本体2と配管4及び配線5を結合するための両用コネクタとなる結合部300を他端に備えている。また、図中の最後の輪部52に挿入された後に配管4には分岐管35(破線図示)が接続されており、配管4を2つの流路に分岐させることで内外のカフ組立体6、7に接続可能にするとともに、分岐管35の上を保護カバー55で覆うように構成されている。
結合部300は、被覆部材9で覆われた配管4及び配線5を装置本体2と結合するためのものであり、両用のコネクタ機能を備えることで着脱可能な構成としている。具体的には、結合部300を装置本体2に、結合部300の左右一対の係止部322が装置本体2の係止穴320に係止するまで挿入する。すると、結合部300の雌コネクタ305が装置本体2の雄コネクタ318に、結合部300の配管プラグ304が装置本体2の配管プラグ穴319に嵌合する状態になる。一方、着脱ボタン303を押下して係止部322を係止穴320から外し、結合部300を装置本体2から引き抜けば、結合部300を装置本体2から取り外すことができるように構成されている。
外側カフ組立体7は保持部材16に対して主首振機構19を介して幅調節ネジ部材18を介して設けられている。また、内側カフ組立体6は保持部材16に対して図示のようにカフ同士が対向するように「略⊃」形状の延設部に固定されている。この内側カフ組立体6は保持部材16に直接固定しても良く、あるいは後述するように副首振機構を介して保持部材16の延設部に設けられる。
次に、図3は外側カフ組立体7を挟持幅を調節する幅調節ネジ部材18の端部に設けられた主首振機構を介して保持部材16に設け、さらに内側カフ組立体組6を副首振機構を介して保持部材に設ける様子を示した要部断面図である。
また、図4は主首振機構19と副首振機構49が組立てられる一例を示した図3の立体分解図である。図3と図4において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、「略⊃」形状の保持部材16は第1延設部16a、第2延設部16bを形成するように一体樹脂成形される。この保持部材16の第1延設部16aには細目の雌ネジ孔部16cが形成されており、この雌ネジ孔部16cに上記の幅調節ネジ部材18の雄ネジ部18cが螺合される。
この幅調節ネジ部材18は回転時に把持されるローレット面を外周面に形成し、雄ネジ部18cの直径より大きいダイヤル部18fと、中心を貫通する貫通孔部18aと、この貫通孔部18aの内径よりやや大きな内径を有する段差穴部18bが約半分の深さまで形成されている。この幅調節ネジ部材18の段差穴部18bには発光ダイオード20を固定した台座部品34が圧入または接着される。このため台座部品34は、発光ダイオード20の台座部分34bと、発光ダイオード20のリード線20aを図示のように挿通することで幅調節ネジ部材18の貫通孔部18aまで案内するための貫通孔部34aと、段差穴部18bに対して隙間なく挿入される外周面34cとを形成した樹脂部品として準備される。
以上のように台座部品34が幅調節ネジ部材18に固定される前に、嵌合部品35が図示のようにセットされる。すなわち、嵌合部品35の孔部35aに台座部品34を挿入し、この嵌合部品35の嵌合面35cを外側カフ本体17の内周面17aに対して嵌合を含む方法で固定することで台座部分34bにより抜け止めされて完成する。以上で、外側カフ本体17は嵌合部品35の孔部35aとの間のクリアランスにより台座部品34周りに首振り運動できるようになり、主首振機構19が構成される。
樹脂製の外側カフ本体17は、発光ダイオード20を図示のように収容するために筒状に形成されており、発光ダイオードから発光される光軸を通過させる光透過蓋部材36が段差面17b上に気密を保持して固定される。また、外側カフ本体17は、配管4に連通する流路17kに連通する口部17fを一体成形している。この外側カフ本体17にはOリング33を用いて気密状態で固定されるカフ袋体22を備えており、上記の口部17fを介してカフ袋体22に加圧空気、減圧空気を送るように構成されている。また、このカフ袋体22には光透過層30が一体成形されている。
一方、耳珠の外側に位置される内側カフ組立体6は、配管4から分岐して接続された配管4に連通した内側カフ部材16に対して同じくOリング33を用いて気密状態で固定されるカフ袋体22を備えている。これらの各カフ袋体22は基本的には同じ形状であり、図示の円形以外に楕円形状、長円形状のものが使用可能である。カフ袋体22は例えばシリコンラバー製でありOリング33で固定されるが、接着、圧入などの方法で固定できることは言うまでもない。
内側カフ部材16にはカフ袋22内部を拡張および縮小できるように流路16tに連通する口部16kが一体成形されている。また、カフ袋体22の光透過層30に対向して受光フォトトランジスタ21が設けられており、この受光フォトトランジスタ21のリード線21aを外部に気密状態で出すように構成されている。
この内側カフ部材16は保持部材16と一体成形することもできるが、図示の事例ではこの内側カフ部材16も副首振機構49を介して取り付けられている。この副首振機構49は、保持部材16の第2延設部16に形成された穴部16dに嵌合する外周面41cと孔部41aを形成した嵌合部品41に球体部品40の胴部40aを図示のようにセットしてから組み付けることで完成される。
保持部材16には孔部16gが形成されており、図4において対輪224に当接することで不動状態に維持するための対輪部材45を備え、螺合で対輪部材45の突出量を調節可能とする部品44をさらに設けることができるようにしている。さらに、保持部材16にはチューブ8を保持する横孔部16hが穿設されている。また、図3に図示のようにカフカバー38をさらに設けることでOリング33が外部に露出しないようにしている。
以上の構成により、カフ袋体22中に後述する加圧ポンプ108からコンデンサータンク107を中継して送られる空気圧によってカフ袋22の胴部が膨張する一方で、減圧されると収縮することとなり、これらの動作を繰り返し行うように構成されている。
ここで、耳珠を測定部位とする場合には正確な血圧測定を行うために、カフ袋体22の重要な機能として、上記のように耳珠への加圧と減圧状態にできることに加えて、内外のカフを耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触させること、および内外のカフが互いに対向して保持させることも重要となる。内外のカフが互いに対向して保持させることは、上記のように自在に3次元的に首振り可能な首振機構により実現できたが、内外のカフを耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触させるこは困難であるので、カフ袋体22が耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触できる形状について試行錯誤を重ねた結果、後述のように押圧面25を凸状とすることが最良であることを確認した。
これに加えて、1組の光学素子である発光ダイオード20と受光フォトトランジスタ21を内外のカフに内蔵し、耳珠に対して内外のカフを装填し、耳珠中を透過する光の変化に基づき脈波信号を検出するときに各光学素子の光軸を完全に一致させることが重要となる。
図5(a)は首振機構19により保持された外側カフ組立体7が略水平な形状の耳珠に合致するように位置決めされた図、(b)は傾きを有する形状の耳珠に合致するように位置決めされた図である。先ず(a)において幅調節ネジ18を回動して外側カフ組立体7と内側カフ組立体6は耳珠221に対して押圧面が均等に当接できるようにセットされる。この状態では発光ダイオード20と受光フォトトランジスタ21の光軸Lは実質的に一致するので耳珠221中の血管の脈波を精度良く検出できる。
また、図5(b)において耳珠221が傾斜している場合には外側カフ組立体7は最大角度αが10度で首振り運動できるので耳珠に密着できる。このとき、発光ダイオード20と受光フォトトランジスタ21の光軸Lは光透過層30の範囲内に位置しており一致するようにできるので耳珠221中の血管の脈波を同様に検出可能となる。
さらに、上記の副首振機構49により内側カフ組立体6も自由度をもって保持されているので発光ダイオード20と受光フォトトランジスタ21の光軸Lは光透過層30の範囲内に常に入るようにできる。
尚、上記の各首振機構の構成は組み付け作業を考慮すると最良であるが、これらに限定されないことは言うまでもなく例えば、発光ダイオード20を内側カフ組立体6内に、また受光フォトトランジスタ21を外側カフ組立体7内に設けるなど他にも種々の構成が可能である。
以上のようにして耳珠は外耳道との相対位置関係、形状、大きさなどの点で固体差が大きく、また性別、人種別、年齢別の個人差も大きいが、内外のカフを耳珠に対して確実に接触できる状態を保持できるようにでき、かつ光軸Lを一致させることで、固体差に柔軟に対応できることとなる。
図6(a)は、陥没凸状に形成される押圧面を備えたカフ袋体22の減圧時における断面図、(b)は加圧時における断面図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して寸法、材質などの説明を割愛すると、押圧面25を凸部として形成しても良いが、この場合には装着感に違和感が生じることもある。そこで、減圧時には押圧面25が胴部27の縁部27aと略同一面に位置し、加圧時において縁部27aの上方に突出するように弾性変形するようにカフ袋体22を形成することでより良好な装着感を得ることが可能になる。
また、耳珠221を血圧測定部位として用いる耳式血圧計1により継続的に精度良く血圧測定を行うためには、電池駆動される加圧ポンプにより加圧空気を各カフに送り込むこととなるが、電池駆動される加圧ポンプを用いると電池の消耗が激しいことから、長期間に渡る測定ができなくなるので手動式の加圧ポンプとしても良い。また、加圧される流体媒体としては種々の流体があり、気体の場合には空気があり、液体の場合には水、シリコンオイルを含む油脂類、アルコールなどがあり適宜選択されることとなる。
上記のように光学式に脈波を検出するための発光ダイオード20とフォトトランジスタ21をカフの内部に内蔵するように構成すると、耳珠に対して内外のカフを装着したときにカフの一部が外部に露出される状態になる。このため外乱光の影響を受け、特に、屋内ではさほど問題にならなくとも屋外に出かけて紫外線を含む太陽光に直接的に晒される使用状況下では正確な血圧測定が困難となる。
図7(a)〜(d)は、遮光対策を施したカフ袋体22の正面図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、カフ袋体22は透明または光透過性のシリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。そして、カフ袋体22はカフ部材16、17に対する気密状態で設けられ、押圧面25が略平行移動されることで加圧状態と減圧状態との間で弾性変形される。
このように構成すると、カフ袋体22は透明または半透明または光透過性であるので外乱光が内部に進入する。このため、太陽光に対して高感度のセンサを用いる場合には太陽光の影響を受けてしまい正確な血圧測定ができなくなる。そこで、図示のようにカフ袋体22を光を通過させない材料から形成し光透過層30(図中、ドットで示した)を押圧面25に形成することで、外乱光が内部に進入することを防止して、耳珠中を光が通過しこれを受光することで場所によらず常時正確な血圧測定を行えるようにしている。この光透過層30は押圧面25が円形の場合には相似形の小さな円形として形成され、約3mmの直径に設定される。また、楕円形の場合には長軸が3.4mm、短軸が2.9mmの楕円形状にされる。また、図7(d)に図示のように一方にオフセットさせて耳珠の側頭部に近くなるように設定してもよい。
以上のように押圧面25を凸状または陥没形状としたカフ袋体22の場合には、1mm、2mmの挿入量で同様の50mmHgの拍出点となり、3mmでやや低下する傾向となり安定した。これに対して蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22では1mm、2mmと3mmの挿入量で拍出点が大きく変動することが判明した。以上から押圧面25を凸状としたカフ袋体22を用いることで挿入量に影響されず、特に繰り返し装着を行っても正確な血圧測定が可能となることが確認された。
さらに、押圧面25を凸状としたカフ袋体22の場合には、1mmから3mmの範囲の締め付け量で同様の50mmHgの拍出点となり安定した。これに対して蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22では1mmから3mmの締め付け量にかけて次第に拍出点が低下することが判明した。以上から押圧面25を凸状としたカフ袋体22を用いることで締め付け量にも影響されることなく正確な血圧測定が可能となることが確認された。
また、カフ袋体22は胴部27、この胴部27から延設されるとともに耳珠に当接する凸部となる平らな押圧面25を形成した蓋部23とを有した帽子状として一体成形される。また、開口部28の縁部はフランジ部26として一体成形されている。また、押圧面25の厚さ寸法を、胴部27の厚さ寸法より大きく設定することで、耳珠に対して押圧面25が常に平らな状態で接触できるように構成されている。また、押圧面25は約1.5mm分程度が突出形成されている。さらに、耳介の大きさを考慮し、適切な脈波検出ができるようにするために蓋部23の直径寸法が5〜10mmの範囲、確実な阻血面積を確保するために押圧面25の直径寸法が3〜6mmの範囲であり、押圧面の厚さ寸法が0.4〜1mmの範囲、望ましくは約0.6mmであり、肉厚寸法が0.1〜0.8mm、望ましくは約0.25mmに設定される。また、高さが4〜8mmに設定される。こうして、確実な阻血ができ、適切な脈波検出ができ、精度の良い血圧測定ができる。また、この数値の範囲内で使用者(例えば、大人、小人、男性、女性等)に応じて複数種類のカフ袋体22を備えたカフ組立体6、7を選択できるようにしてもよい。その他の寸法は図面中に数字(mm)として示されている。
この蓋部23は、円形、楕円形状または競技場の走路形状に近い長円形状に形成され、同様に押圧面25も相似形の円形筒体、楕円形状筒体または長円形状筒体に形成され、カフ部材はこれらの筒部に合致する形状に形成されることとなる。以上のカフ袋体22は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。以上のように耳珠221に当接する平らな押圧面25を凸部として形成した蓋部23を有した帽子状のカフ袋体22の蓋部の厚さ寸法を、胴部の厚さ寸法より大きくすることにより、加圧時においては、押圧面25は平面状態を維持したままで加圧位置まで移動できる。また、減圧時にも押圧面25は平面状態を維持したままで減圧位置まで移動できる。さらにカフ袋体の胴部27を不図示の蛇腹ベローズとして形成することで押圧面25を略平行移動できるようにしてもよい。
特に内側カフとなるカフ組立体6については、楕円または長円とすることで長手方向に沿うように、外耳道に自然に挿入可能にできるようになる。また、陥没凸状に形成される押圧面を備えたカフ袋体22として、減圧時には押圧面25が胴部27の縁部と略同一面に位置し、加圧時において縁部の上方に突出するように弾性変形するようにカフ袋体22を形成することでより良好な装着感を得るようにしても良い。
図8は、カフ袋体22の内部に遮光層を形成し光透過層30を設けるフローチャートであって、カフ袋体22の中心断面図とともに示している。本図において、ステップS1ではゴム成形装置によりカーボンブラックを含む顔料を混入したシリコン系材料から図示のように開口部25aを押圧面25に一体成型する。このとき、半加硫状態である。また良品の選別が行なわれる。次に、ステップS2に進み、透明のシリコン系材料から成型された光透過層30を開口部25aに挿入する。そして、ステップS3において再度成型するために、所定金型内にセットし、フル加硫することで一体化する。
そして、必要に応じてステップS4のポスト架橋を行い、最後のステップで外観検査が行われて、異物、開口部のはみ出しなどの検査が行われて良品を選別して終了する。以上の各工程を経て完成されたカフ袋体22を図12に図示のように取り付けて使用する。
なお、カフ袋体の内側に遮光層を形成するか、カフ袋体の外側に遮光層を形成するようにしても良いこととなる。
なお、図2において配管4と配線5は被覆部材9で覆われることで使用上において相互に絡まったりしないように構成されていることを述べた。一方で、配管4は空気を含む流体の流路となる中空部が長手方向に沿って形成されているので、この中空部に配線5を通すことで、配線5が外部に露出しないように構成することができる。しかし、このように構成すると配線5を配管4の外部に引き出す部位において気密性を確保するためのシール部分が必要となるが、配管4は自由に曲げられるのでシール性の確保が困難となり、長期に渡る耐久性に問題を残す。また、組み付け作業上も支障を来たすことになる。そこで、配管4と配線5とを一体化する場合に、シール性の向上と作業効率のアップを同時に図ることのできる構成について種々検討した。
この検討の結果、図9に図示される外観斜視図のように配線5、5を配管4の外周面においてその長手方向に沿うように敷設し、かつ配線5、5と配管4とを、伸縮性を有する被覆部材9で被覆して一体化することが最良であると結論した。
具体的には、上記の発光ダイオードと受光フォトトランジスタに夫々接続される配線5は、撚り線5a、5bであり、配管4は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含む弾性材料を用いて図示のような中空状に成形され、エア配管とし、被覆部材9は、所定番手を有するナイロンなどの繊維体から網目状に形成される。また、この被覆部材9に対して必要に応じて耐ノイズ性向上のための金属塗膜処理を施し、さらにカバーチューブ8を被せて構成される。
以上のように配管4と配線5とを一体化した場合には、例えば図9において一方を把持したときに、一点鎖線で示される円弧H内において自由に曲げることが可能となる。さらに、配線5は配管4の外周面から直接引き出すことが可能になるのでシール部材は一切不要になる。また、被覆部材9に金属処理を施した場合には、さらに耐ノイズ性を向上することができる。また、分岐管35は図示のように小型化することで上記の耳掛け部材51の端部に体裁良く配置できるようになる。
図10は、図2の耳式血圧計1を光電容積脈波血圧計として構成した場合の装置本体2内における動作回路100の構成を示すブロック図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、光学式に脈波を検出するための発光ダイオード20と受光フォトトランジスタ21をカフの内部に内蔵するように構成すると、耳珠221に対して内外のカフを装着したときにカフの一部が外部に露出される状態になる。このため外乱光の影響を受け、特に、屋内ではさほど問題にならなくとも屋外に出かけて紫外線を含む太陽光に直接的に晒される使用状況下では正確な血圧測定が困難となるが上記の光透過層330により効果的に測定可能となる。
また耳珠221に装着される内側カフ組立体6の内部には受光フォトトランジスタ21が、外側カフ組立体7には発光ダイオード20が内蔵されており耳珠221を通過する光の変化から脈波を検出する。
一方配管4は中空樹脂管であり、内側カフ6内への空気の流路を成す。加圧手段である加圧装置15は、電動モータ108を駆動源として加圧流体を発生し、配管4に接続されたコンデンサータンク407中に圧縮空気を送り込み、タンク内で整流した後に内側カフ組立体6、外側カフ組立体7内に加圧空気を夫々送り込むように構成されている。
また、配管4から分岐接続される急排弁104には不図示の電磁弁機構が設けられており、カフ組立体6、7内の圧力を急速に減少させるように構成されている。さらに同様に分岐して接続される微排弁105は、内側カフ組立体6内の圧力を一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少させるように構成されている。また、配管4から分岐接続される圧力センサ106は、カフ6内の圧力に応じて電気的パラメータを変化させる。この圧力センサ106に接続される圧力検出アンプ(AMP)107は、圧力センサ106の電気的パラメータを検出し、これを電気的信号に変換し、かつ増幅してアナログのカフ圧信号Pを出力する。
上記の発光ダイオード20は脈動する血管血流に対して光を照射し、フォトトランジスタ21は血管血流による透過光を検出する。配線5を介して接続されるフィルタAMP109は脈波検出アンプであり、フォトトランジスタ21の出力信号を増幅してアナログの脈波信号Mを出力する。ここで、発光ダイオード20には配線5を介して光量を自動的に変化させる光量制御部118が接続される一方で、脈波検出アンプ109には、ゲインを自動的に変化させるゲイン制御部119aと、脈波検出フィルタ・アンプ109を構成するフィルタアンプ(図示せず)の時定数を変化させる時定数制御部119bとが接続されている。また、図示のように接続されるA/D変換器(A/D)110は、アナログ信号M、PをデジタルデータDに変換する。
制御部(CPU)111は、光電容積脈波血圧計の主制御を行う。このCPU111は調整圧力を記憶する調整圧力レジスタ111aを有している。ROM112は、CPU111が実行する後述の制御プログラムを格納している。RAM113は、データメモリや画像メモリ等を備えている。液晶表示器(LCD)114は、画像メモリの内容を表示する。操作部116は、使用者の操作により測定開始指令や調整圧力値の設定等を行うときに使用される。ブザー115は、使用者に対して装置が操作部116内のキーの押し下げを感知したことや測定終了等を知らせる。尚、本例では、CPU111に調整圧力レジスタ111aを設けたが、RAM113に調整圧力記憶部を設けてもよい。
また、LCDの表示パネル114は、ドットマトリックス方式の表示パネルを使用しており、従って多様な情報(例えば文字、図形、信号波形等)を表示できる。また操作部116は測定開始スイッチ(ST)とカフの圧力値等を入力するためのキーを有している。また、バッテリーを交換自在にした電源部121と不図示の電源スイッチがさらに設けられている。
さらに、装置本体2は不図示のコネクタまたは携帯電話に接続される外部通信部が設けられており、パソコンに対して接続することでパソコンの動作制御パラメータ設定部、データクリア部、データ保存部との間で各種データのやり取り及び血圧測定結果の保存をできるようにしている。この装置本体2は上下寸法が約120mm、幅寸法が約80mm、厚み寸法が27mmであり、全体の重量が180グラムである。このように、極力小型軽量にすることで常時携帯した場合であっても、日常生活に支障がないようにしている。
また、上記の各制御をつかさどる電子部品は内部の空間を占める実装面積を有する基板140上に実装されている。一方、加圧手段15とコンデンサータンク407と微排気弁105、急速排気弁104は一体形成される配管4に対して図示のように接続されるとともに、交換自在に設けられる4本の単4電池の電源部121と併設されて設けられており、限られた内部空間を有効活用できるように構成されている。また、繰り返し使用できる充電式の2次電池や簡単に入手できる市販の単4電池は、不図示の蓋体を開閉することで簡単に交換できる。
次に、本実施形態に係る光電容積脈波血圧計としての耳式血圧計1の動作について以下に説明する。図11は耳式血圧計(光電容積脈波血圧計)1の測定処理を説明するためのフローチャートである。本図において、装置に対して電源スイッチにより電源投入すると、まず不図示の自己初期診断処理を行い装置の初期値化が行われる。その後、測定開始スイッチを押すことによりこの処理が開始される。
ステップS101ではカフのカフ圧Pを読み取り、ステップS102でカフの残圧が規定値以内か否かを判別する。残圧が規定値を超えていれば、ステップS123でLCD114に「残圧エラー」を表示する。残圧が規定値以内であればステップS103でカフの加圧値(例えば120〜210mmHgの最高血圧値より大きい値)を操作部118を使用して設定し、ステップS104で光量及びゲインを所定の値に設定する。
加圧値および光量・ゲインの設定が終わると、ステップS105、S106では急排弁104及び微排弁105を閉じる。ステップS107では加圧装置15により上記のように加圧(昇圧)を開始する。これが加圧時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で増加開始する。この間にステップS108で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最低血圧及び最高血圧の測定が行われる。最高血圧が測定される(S109)とステップS112で加圧装置15の駆動を停止する。
ステップS110ではカフ圧がS103で設定した加圧値Uより高いか否かを判別する。P>Uでなければまだ正常測定範囲にあるので、引き続き測定を行う。一方、P>Uの時はもはやカフ圧が設定値よりも高いのでステップS111でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「加圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。ステップS113では加圧時に得られた脈波信号の信号レベルが精度の高い血圧測定が可能であるための所定のレベルの範囲内に有るか否かを判別する。所定の範囲内であると判別された場合は、ステップS120でLCD114に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。
ステップS113で所定の範囲内で無いと判別された場合は、ステップS114で脈波信号の信号レベルを基に光量及びゲインの調整を行う。ステップS114では、例えば次のような処理が行われる。脈波の搬送波が規格値(A/D変換器110のフルスケールの20〜40%)以下の場合はステップ光量が最大か否かをチェックし、最大でなければ光量制御部118を制御して光量を上げ、光量が最大の場合はゲインを上げる。一方、搬送波レベルが規格値以上の場合は、ゲインが最小か否かがチェックし、最小でないならばゲイン制御部119aによりフィードバック制御してゲインを下げる。最小ならば光量を下げる。
光量・ゲインの調整が終わると、ステップS115では微排弁105を開く。これが減圧(降圧)時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少開始する。この間にステップS116で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最高血圧及び最低血圧の測定が行われる。ステップS117では減圧時の最低血圧値の検出の有無を判別する。検出されていなければ引き続き計測を行う。ステップS118ではカフ圧が所定値L(例えば40mmHg)より低いか否かを判別する。P<Lでなければまだ正常測定範囲にあり、フローはステップS116に戻る。一方、P<Lの時はもはやカフ圧が正常測定範囲よりも低いのでステップS119でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「減圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。
また、ステップS117の判別で測定終了の時は正常測定範囲で計測行程終了したことになり、ステップS120でLCD14に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。好ましくは、正常終了後と異常終了時とでは異るトーン信号を送る。ステップS122ではカフ6の残りの空気を急速排気し、次の測定開始を待つ。
図12は、カフ圧と脈波信号の相関関係を示す図である。本図において、加圧時測定(ステップS108)の開始から減圧時測定(ステップS116)の終了までの時間における波形を夫々示している。このグラフに対し血圧測定は概略以下のように行われる。すなわち、加圧時測定においては、脈波信号の大きさの変化が始まった点(a)のカフ圧を最低血圧、脈波信号の消失時点(b)のカフ圧を最高血圧とする。一方、減圧時の血圧測定は加圧時の血圧測定とは逆となり、脈波信号の出現時点(c)のカフ圧を最高血圧、脈波信号の大きさの変化が無くなった点(d)のカフ圧を最低血圧とする。なお、カフの減圧時のみの脈波から最高血圧、最低血圧を求めてもよい。
なお、本実施形態では血管内の血液による透過光を検出する例を示したが、替わりに反射光を検出するものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルを調整可能とし、精度の高い測定を可能とすると同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にする光電容積脈波血圧計を提供することができる。なお、耳珠およびその周辺部は痛みに対し鈍感な部分であるため、カフ圧による痛みが軽減できるという効果もあり、さらにこの事により、単回または2〜30分間隔での血圧の連続測定に適用が容易となるという効果も生まれる。
なお、上述の血圧測定装置は発光ダイオード20及び受光フォトトランジスタ21を用いて脈波を検出しているが、耳珠へ圧力を圧迫するカフを備え、生体表面の血管による脈動を当該カフで圧力変化として捉えることによっても脈波をオシロメトリック法から検出することもできる。即ち、圧力を印加したカフで生体から得られる脈動をカフ内の圧力の変化に変換し、圧力検知装置でカフ内の圧力変化を検知するものである。このような構成によっても生体の脈波を検出することができる。また、生体に接するカフ部分に小型マイクロフォンを設置し、生体の一部をカフにて圧迫するときに発生するコロトコフ音を検出し、所定レベル以上のコロトコフ音の発生あるいは消滅に基づいて血圧を測定するようにしても良い。
上述の実施形態では、耳珠221を挟む構成を有する一対のカフの一方側(内側カフ組立体6内部)にのみに血管の血流に対して光を照射する照射部(発光ダイオード20)と血流からの反射光を検出する受光部(フォトトランジスタ21)を備えるようにしているが、耳珠221を挟むための内側カフ組立体6及び外側カフ組立体7の双方に光の照射部となる発光ダイオード20と反射光を検出する受光部となるフォトトランジスタ21を内蔵しても良く、このように内外のカフにセンサを設けることで、耳珠の裏側及び表側の血圧を同時に計測可能とするように構成しても良い。
このように構成することにより、一方側のカフは外耳及びその周辺部の裏側にある血管(細動脈)を圧迫し、他方側のカフは外耳及びその周辺部の表側にある浅側頭動脈或いはその分枝血管を圧迫することができる。なお、このように外耳及びその周辺部(より特定的には耳珠及び周辺部)の血圧を測定するのは以下の理由もある。
すなわち、耳珠およびその周辺部の血管(細動脈)は脳内の血管に近接していることが知られており、脳内に由来する血圧変化が測定可能と考えられている。一方、耳珠周辺部には、耳の軟骨部(主に耳珠)に存在する血管(細動脈)の他に、心臓に直結する動脈(浅側頭動脈)も位置する。そのため、耳珠周辺部においては小さな装置で異なる情報(つまり脳内由来の血圧と心臓由来の血圧)をもつ血圧を同時に測定可能であるという利点がある。本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルとすることが可能となり、外耳周辺部の精度の高い血圧測定が可能となる。同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にすることができる。
以上説明したように、本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルを調整可能とし、精度の高い測定を可能とすると同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にする光電容積脈波血圧計を提供することができる。
なお、上述の血圧測定装置は発光素子20及び受光素子21を用いて脈波を検出しているが、被測定部位へ圧力を圧迫するカフを備え、生体表面の血管による脈動を当該カフで圧力変化として捉えることによっても脈波を検出することができる。
即ち、圧力を印加したカフで生体から得られる脈動をカフ内の圧力の変化に変換し、圧力検知装置でカフ内の圧力変化を検知するものである。このような構成によっても生体の脈波を検出することができる。また、生体に接するカフ部分に小型マイクロフォンを設置し、生体の一部をカフにて圧迫するときに発生するコロトコフ音を検出し、所定レベル以上のコロトコフ音の発生あるいは消滅に基づいて血圧を測定するようにしても良い。