先ず、本発明の最大の特徴点は、耳珠を血圧測定部位として用いる点が挙げられる。このように耳珠を血圧測定用の部位として選んだ理由は、耳珠は耳介の一部でありかなり小さいために血圧検出部を小型化できる利点がある。また、耳珠は頭部の一部であるので位置変動が少なく血圧測定に適している。さらに耳珠は、集音以外の目的では使用されないので就寝中を含みカフを常時装着していても、指などに比べて日常生活に対する支障が少なく、さらに血圧検出部を小型化できるために血圧測定時において被験者に対して痛みを与える原因となる侵襲度を少なくできる点などが挙げられる。
ここで、耳珠を血圧測定部位にすることで血圧測定時に痛みを低減できる点についてさらに補足すると、上腕や指は体の重要な部位として複雑な作業を行うので、それらの作業ができるようにそれらの血管の周囲には多くの神経が張り巡らされている。
一方で、耳介の一部である耳珠は、頭部に固定され、主に集音目的に使用されるために、耳珠周辺にある神経の量は、複雑な作業に使われる上腕や指に比べて少ない。このため、外耳及びその周辺部を用いて血圧測定をする場合には、耳珠が最も痛みを感じにくい部位であり、かつ耳珠は小さい部位でありカフを小さく構成できることから、上腕や指を用いる血圧測定に比べて血圧測定時の痛みを低減できるという利点がある。
しかし、耳珠は耳介の一部の小さい部位であることから、小さい血圧測定部を耳珠に対して確実かつ安定して固定することができないと、血圧検出部が測定時に動いてしまい精度よく血圧測定ができないこととなる。
例えば、血圧検出部には、耳珠を加圧するためのカフに加圧流体、加圧空気または加圧液体を供給するための配管と、血圧検出部を駆動する電力や血圧検出部から血圧測定装置本体へ送信する出力信号などの信号線である配線とが連結される。この配管と配線は血圧測定装置の本体側に連結される構成が一般的となる。
このために、長期間に渡って血圧測定を行う際に、例えば、血圧測定装置の本体を操作する際に、配管や配線に手が触れて血圧検出部の装着位置がずれてしまうと、正しい血圧測定ができなくなることとなる。
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な各実施形態の血圧測定装置を耳式血圧計1として説明する。なお、以下に示す各実施形態の血圧測定装置の各部の構成と形状および寸法は、一例に過ぎず、これらにより本発明の技術的範囲が限定的に解釈されないことは言うまでもない。
まず、図1は、本発明の血圧測定装置である耳式血圧計1が装填される左側の耳介220の外観斜視図である。
本図において、いわゆる耳である耳介220は、外耳道230の縁部から連続形成される耳珠221と対珠222と耳甲介223と対輪224と耳輪225と対輪脚226とが、図示のような相互位置関係になっている。また、対輪224の裏面側は頭部側面に連続する耳掛け部分となる軟骨を内蔵した延設部(不図示)が形成されている。これらの各部位の形状とサイズは性別、男女別、年齢別または人種別の個体差が大きいことが知られている。
<耳式血圧計1の構成>
図2は、本実施形態に係る耳式血圧計1の全体構成を示す外観斜視図である。本図において、耳式血圧計1は、血圧測定演算を実行するための装置本体2と、被測定者の耳珠221に内側カフとなるカフ組立体6と、外側カフとなるカフ組立体7を着脱自在にするための保持部材3と、この保持部材3を吊り下げるために耳掛け部材51の上側の端部から配管4、4を介して吊り下げるように構成された耳掛け部材51を備えている。すなわち、耳式血圧計1は、外耳道230に挿入されてセットされる内側カフとなる内側カフ組立体6と、耳珠221の外側に位置される外側カフとなる外側カフ組立体7を図示のように保持した保持部材3と、この保持部材3から配管4と配線5を介して接続される装置本体2から構成されている。
耳掛け部材51は耳輪225の付け根に沿って装着可能な形状に形成されており、図示のように配線と配管を後述するように内蔵した被覆部材9を、耳掛け部材51の縁部に略等間隔で一体形成された複数の輪部52を通過させて固定している。
一方、耳掛け部材51の端部54は、図示のように手前側に曲がるように形成されておりその先端に球体54を形成している。また、耳掛け部51は、メガネフレームの耳掛け部と略同様な形状をなしており、耳輪225への装着後の安定を図ることができるように構成されている。この耳掛け部51を図示の形状のように成形するための使用樹脂材料としてはポリカーボネイト系、ABS系、POM系、PPS系などの樹脂材料が使用できる。また、使用材料としては量産性、寸法安定性、コスト面などから樹脂材料が通常用いられるがこれに限定されず、軽金属、木、紙、各種素材を組み合わせたハイブリット構成としても良い。また、各種サイズに対応させて各部品の色を病院向けにはオレンジ、一般用途向けにはブルー、子供向けには白などとして色分けすると良い。
被覆部材9は、装置本体2と配管4及び配線5を結合するための両用コネクタとなる結合部300を他端に備えている。また、最後の輪部52に挿入された後に配管4には分岐管35(破線図示)が接続されており、2つの流路に分岐させることでカフ組立体6、7に接続するとともに、分岐管35の上を保護カバー55で覆うように構成されている。
結合部300は、被覆部材9で覆われた配管4及び配線5を装置本体2と結合するためのものであり、両用のコネクタ機能を備えることで着脱可能な構成としている。具体的には、結合部300を装置本体2に、結合部300の左右一対の係止部322が装置本体2の係止穴320に係止するまで挿入する。すると、結合部300の雌コネクタ305が装置本体2の雄コネクタ318に、結合部300の配管プラグ304が装置本体2の配管プラグ穴319に嵌合する状態になる。一方、着脱ボタン303を押下して係止部322を係止穴320から外し、結合部300を装置本体2から引き抜けば、結合部300を装置本体2から取り外すことができるように構成されている。
外側のカフ組立体7と内側のカフ組立体6は自在に首振り運動できるように保持部材3に対して取り付けるか、または不動状態で設けることで、耳珠221に対して後述する押圧面が均等に当接できるようにしている。
そして、左耳の耳珠221に保持部材3を把持してセットする一方で、装置本体2は、例えば、被験者の胸ポケットまたは専用ポーチ内に収容される。ここで、右耳にセットする場合には左右勝手違いの形状を有する保持部材3と耳掛け部材51が準備されることになる。また、装置本体2を衣類の胸ポケットに入れた後にクリップなどで挟むことで、日常の動きでは脱落しないようにできる。また、装置本体2の上面において液晶表示部、スタートスイッチなどを配置して、血圧測定時に必要となる必要な操作を行うときに、装置本体2をポケットなどから取り出すことなく行えるようにしても良い。
<カフ組立体6、7の保持部材3の構成>
引き続き、図2を参照して、保持手段である保持部材3は、内側のカフ組立体6を保持するための樹脂製の第1保持部材11と、外側のカフ組立体7を保持した樹脂製の第2保持部材12とから構成されている。各保持部材11、12は内外のカフの耳珠に対する挟持幅寸法を調整するために互いに平行移動可能かつ平行移動後の位置に固定できるように後述するように構成されている。
また、第1保持部材11には対輪224に当接することで不動状態に維持するための対輪部材16が設けられている。この対輪部材16は樹脂製であり頭部を図示のような球体としており、さらに第1保持部材11に形成された雌ネジ部に螺合される雄ネジ部を後述するように形成しており、この対輪部材16の突出量を調節可能にすることで固体差に対応できるようにしている。
<プロテクター10の構成>
耳掛け部材51の側面上には軸支部53が形成されており、この軸支部53に対して着脱可能または回動可能もしくは着脱回動可能に樹脂製のプロテクター10が設けられている。図2におて、このプロテクター10は先端部を側頭部に当接させて耳珠に装着後の保持部材3を覆う形状を有しており、主に寝返り時における保護を行うように構成されている。このためプロテクター10は、軸支部53に穿設された上下穴部に潜入する突起部を対向して形成した先端部10a、10aが矢印方向に弾性変形されて軸支部53に対してセットできるので、就寝前にこのプロテクター10を固定できるようにしている。
図3(a)は、耳掛け部材51の側面上の軸支部53に軸体14を用いてセットされ、使用状態にされたプロテクター10の別実施形態を示した外観斜視図に、(b)は開いた状態にされた外観斜視図である。
本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、プロテクター10の端部にはスポンジ製のクッション15が敷設されており側頭部に対して当接するときに痛みがないようにしている。
また外側が丸みを帯びた本体部10cから略直交するように延設部10bが一体形成されており、延設部10bの端部に軸支部53を上下方向から挟む形状となる先端部10a、10aが形成されており、この先端部に対して軸体14を軸支部53に穿設された貫通孔(不図示)を通過させるようにしてから軸体14をネジ止め固定することでプロテクター10を耳掛け部材51に対して回動可能に設けている。
<保持部材3の構成>
図4は、保持部材3の立体分解図である、本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、内側のカフ組立体6を保持するための樹脂製の第1保持部材11は、図示のように球体の頭部16aを有する対輪部材16の雄ネジ部16bが螺合される雌ネジ部11c(破線図示)を形成している。この第1保持部材11には手前側と右側に側壁を形成した摺動面11aが形成されており、さらにこの摺動面11aには固定ネジ11bがインサート成型または一体成型されている。また、カフ組立体6のカフ部材40を固定する延設部11dが略直交して延設されている。また、カフ間距離の微調整のための目盛り(目安)と把持用にもなる溝部11fが図示のように成型されている。
一方、樹脂製の第2保持部材12は摺動面11aに摺動する摺動面12aと、固定ネジ13を通過させる長孔部12bと、カフ組立体7を固定する延設部12dとが一体成型されており、この第2保持部材12を第1保持部材11に対して図示のようにセットすることで互いに平行移動方向以外には不動状態にできることとなり、固定ネジ13を専用工具Kで締め付けることで平行移動後の位置に固定できるように構成されている。以上の構成によって、耳珠の厚みの固体差に対してカフ組立体6、7の把持幅(押圧幅)調整が柔軟に対応できるようにしている。
<自在軸受けの構成>
耳珠は外耳道との相対位置関係、形状、大きさなどの点で固体差が大きい、また性別、人種別、年齢別の個人差も大きいことから、内外のカフを耳珠に対して確実に接触できる状態を保持できるようにすることは困難となる。
そこで、カフを自在軸受けを介して保持部材3に取り付けることで、固体差に柔軟に対応できるようになる。
図5(a)は自在軸受けの分解図、(b)は完成後の要部断面図である。両図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、外側カフ組立体体7は、配管に連通する管部40aを形成したカフ部材40を備えており、このカフ部材40に嵌合穴部40bを形成している。この嵌合穴部40bにはネジ41を挿入した嵌合部材42が圧入されて固定される。ネジ41は上記の第2保持部材12の延設部12dのネジ穴部に螺合される。嵌合後には、図5(b)に図示のようにネジ41の頭部が嵌合部材42の内部で上下左右前後方向に移動できるのでカフ組立体7を首振り可能にできるようになる。
図6(a)は、図2に図示した耳式血圧計1をセットした後の外観斜視図であり、(b)はプロテクター10を使用する様子を図示した外観斜視図である。
先ず、(a)において耳掛け部材51が耳輪225にセットされることで、先端の球体54が対輪224に当接する状態になる。また、内外のカフを耳珠にセットするために予め挟持幅が固定された保持部材3を把持して耳珠221に挿入すると、対輪部材16が対輪224に当接する状態となり安定することになる。
これに続いて、図6(b)に図示のようにプロテクター10を回動させてクッション材15が側頭部に当接する位置にする。
<カフ袋の構成>
次に、図7(a)は、カフ袋体22の平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(a)のX−X線矢視断面図である。カフ袋体22は、加圧状態と減圧状態との間で弾性変形する胴部27、この胴部27から延設されるとともに耳珠に当接する凸部となる平らな押圧面25を形成した蓋部23とを有した帽子状として一体成形される。
また、開口部28の縁部はフランジ部26として一体成形されている。また、図7(d)において、押圧面25の厚さの第1の寸法T1を、胴部27の厚さの第2の寸法T2より大きく設定することで、耳珠に対して押圧面25が常に平らな状態で接触できるように構成されている。また、押圧面25は1.5mm分程度が突出形成される。
さらに、耳介の大きさを考慮し、適切な脈波検出ができるようにするために蓋部23の直径寸法D1が5〜10mmの範囲、確実な阻血面積を確保するために押圧面25の直径寸法d1が3〜6mmの範囲であり、第1の寸法T1が0.4〜1mmの範囲、望ましくは約0.6mmであり、第2の寸法T2が0.1〜0.8mm、望ましくは約0.25mmに設定される。また、高さH1が4〜8mm、h1が2.5〜6.5mmに設定される。こうして、確実な阻血ができ、適切な脈波検出ができ、精度の良い血圧測定ができる。また、この数値の範囲内で使用者(例えば、大人、小人、男性、女性等)に応じて複数種類のカフ袋体22を備えたカフ組立体6、7を選択できるようにしてもよい。その他の寸法は図面中に数字(mm)として示されている。
この蓋部23は、円形、楕円形状または競技場の走路形状に近い長円形状に形成され、同様に押圧面25も相似形の円形筒体、楕円形状筒体または長円形状筒体に形成され、カフ部材はこれらの筒部に合致する形状に形成されることとなる。
図8(a)は、蓋部が楕円形状または長円形状である場合のカフ袋体22の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図である。また、図9(a)は、図8(a)のX−X線矢視断面図、(b)は図8(a)のY−Y線矢視断面図である。
図8と図9において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、蓋部23の長軸寸法が15〜5mmの範囲、望ましくは約8、10mmであり、短軸寸法D2が4〜10mmの範囲、望ましくは約6、8mmであり、押圧面25は蓋部23に対して面積比で約50〜70%、望ましくは約65%となる相似形状に形成される。また押圧面の厚さ寸法T1が0.4〜1mmの範囲、望ましくは約0.6mmであり、そして胴部の厚さ寸法T2が0.1〜0.8mm、望ましくは約0.25mmに設定される。その他の寸法は図面中に数字(mm)として示されている。
以上のカフ袋体22は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。以上のように耳珠221に当接する平らな押圧面25を凸部として形成した蓋部23を有した帽子状のカフ袋体22の蓋部の厚さ寸法T1を、胴部の厚さ寸法T2より大きくすることにより、加圧時においては、押圧面25は平面状態を維持したままで加圧位置まで移動できる。また、減圧時にも押圧面25は平面状態を維持したままで減圧位置まで移動できる。さらにカフ袋体の胴部27を不図示の蛇腹ベローズとして形成することで押圧面25を略平行移動できるようにしてもよい。
特に内側カフとなるカフ組立体6については、楕円または長円とすることで長手方向に沿うように、外耳道に自然に挿入可能にできるようになる。
<陥没凸状に形成される押圧面の構成>
図10(a)は、陥没凸状に形成される押圧面を備えたカフ袋体22の減圧時における断面図、(b)は加圧時における断面図である。
本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して寸法、材質などの説明を割愛すると、上記のように押圧面25を凸部として形成しても良いが、この場合には装着感に違和感が生じることもある。
そこで、減圧時には押圧面25が胴部27の縁部27aと略同一面に位置し、加圧時において縁部27aの上方に突出するように弾性変形するようにカフ袋体22を形成することでより良好な装着感を得ることが可能になる。
耳珠を血圧測定部位として用いる耳式血圧計1により継続的に精度良く血圧測定を行うためには、電池駆動される加圧ポンプにより加圧空気を各カフに送り込むこととなるが、電池駆動される加圧ポンプを用いると電池の消耗が激しいことから、長期間に渡る測定ができなくなるので手動式の加圧ポンプとしても良い。また、加圧される流体媒体としては種々の流体があり、気体の場合には空気があり、液体の場合には水、シリコンオイルを含む油脂類、アルコールなどがあり適宜選択されることとなる。
<光透過層30の構成>
光学式に脈波を検出するためのLED素子20とフォトトランジスタ21をカフの内部に内蔵するように構成すると、耳珠に対して内外のカフを装着したときにカフの一部が外部に露出される状態になる。このため外乱光の影響を受け、特に、屋内ではさほど問題にならなくとも屋外に出かけて紫外線を含む太陽光に直接的に晒される使用状況下では正確な血圧測定が困難となる。
図11(a)〜(d)は遮光対策を施したカフ袋体22の正面図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、カフ袋体22は透明または光透過性のシリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含むショア硬度が30〜60、望ましくは約50前後の弾性材料から一体成形される。そして、カフ袋体22はカフ部材40に対する気密状態で設けられ、押圧面25が略平行移動されることで加圧状態と減圧状態との間で弾性変形される。
このように構成すると、カフ袋体22は透明または半透明または光透過性であるので外乱光が内部に進入する。このため、太陽光に対して高感度のセンサを用いる場合には太陽光の影響を受けてしまい正確な血圧測定ができなくなる。
そこで、図示のようにカフ袋体22を光を通過させない材料から形成し光透過層30(図中、ドットで示した)を押圧面25に形成することで、外乱光が内部に進入することを防止して、血圧測定部位のみに光が照射され、反射光を受光することで場所によらず常時正確な血圧測定を行えるようにしている。この光透過層30は押圧面25が円形の場合には相似形の小さな円形として形成され、約3mmの直径に設定される。また、楕円形の場合には長軸が3.4mm、短軸が2.9mmの楕円形状にされる。また、図11(d)に図示のように一方にオフセットさせて耳珠の側頭部に近くなるように設定してもよい。
<カフ組立体の構成>
図12は、図10で示したカフ袋体22を用いたカフ組立体の断面図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず耳珠の内側となる外耳道にセットされる内側のカフ組立体6は、LED20とフォトトランジスタ21を内蔵するとともに、配管4に連通する流路40aを備えたカフ部材40においてOリング33を用いて固定されるカフ袋体22を備えている。
また、耳珠の外側に位置される外側のカフ組立体7は、配管4から分岐して接続された配管4に連通したカフ部材に対して同じくOリング33を用いて固定されるカフ袋体22を備えている。これらの各カフ袋体22は基本的には同じ形状であり、上述したように円形以外に楕円形状、長円形状のものが使用可能である。カフ袋体22は例えばシリコンラバー製でありOリング33で気密状態になるように図示のように固定される。
以上の構成により、カフ袋体22中に後述する加圧ポンプ108からコンデンサータンク107を中継して送られる空気圧によって胴部27が膨張する一方で、減圧されると収縮することとなり、これらの動作を繰り返し行うように構成されている。
ここで、耳珠を測定部位とする場合には正確な血圧測定を行うために、カフ袋体22の重要な機能として、上記のように耳珠への加圧と減圧状態にできることに加えて、内外のカフを耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触させること、および内外のカフが互いに対向して保持させることが重要となることに着目した。内外のカフが互いに対向して保持させることは、上記のように自在に3次元的に調節可能な自在軸受けにより実現できたが、内外のカフを耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触させるこは困難であった。そこで、カフ袋体22が耳珠の内外面に対して平らな状態で均等に接触できる形状について試行錯誤を重ねた結果、上記のように押圧面25を凸状とすることが最良であることを確認した。
<凸状の押圧面25の効果>
図13(a)は、比較のために蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22と、上記のように押圧面25を凸状としたカフ袋体22とを用いて、耳珠221に挿入量Hでセットしたときに得られる拍出点との関係を示した比較図、(b)はセットの様子を示した模式図である。
本図から分かるように、押圧面25を凸状としたカフ袋体22の場合には、1mm、2mmの挿入量で同様の50mmHgの拍出点となり、3mmでやや低下する傾向となり安定した。これに対して蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22では1mm、2mmと3mmの挿入量で拍出点が大きく変動することが判明した。以上から押圧面25を凸状としたカフ袋体22を用いることで挿入量に影響されず、特に繰り返し装着を行っても正確な血圧測定が可能となることが確認された。
また、図14(a)は、比較のために蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22と、上記のように押圧面25を凸状としたカフ袋体22とを用いて、耳珠221に締め付け量K(挟持寸法)でセットしたときに得られる拍出点との関係を示した比較図、(b)はセットの様子を示した模式図である。
本図から分かるように、押圧面25を凸状としたカフ袋体22の場合には、1mmから3mmの範囲の締め付け量Kで同様の50mmHgの拍出点となり安定した。これに対して蓋部をフラットにした場合のカフ袋体22では1mmから3mmの締め付け量Kにかけて次第に拍出点が低下することが判明した。以上から押圧面25を凸状としたカフ袋体22を用いることで締め付け量に影響されず、特に繰り返し装着を行っても正確な血圧測定が可能となることが確認された。
<配管4と配線5の一体化構成>
図2において配管4と配線5は被覆部材9で覆われることで使用上において相互に絡まったりしないように構成されている。一方で、配管4は空気を含む流体の流路となる中空部が長手方向に沿って形成されているので、この中空部に配線5を通すことで、配線5が外部に露出しないように構成することができる。しかし、このように構成すると配線5を配管4の外部に引き出す部位において気密性を確保するためのシール部分が必要となるが、配管4は自由に曲げられるのでシール性の確保が困難となり、長期に渡る耐久性に問題を残す。また、組み付け作業上も支障を来たすことになる。そこで、配管4と配線5とを一体化する場合に、シール性の向上と作業効率のアップを同時に図ることのできる構成について種々検討した。
この検討の結果、図15に図示される外観斜視図のように配線5、5を配管4の外周面においてその長手方向に沿うように敷設し、かつ配線5、5と配管4とを、伸縮性を有する被覆部材9で被覆して一体化することが最良であると結論した。
具体的には、上記の発光素子と受光素子に夫々接続される配線5は、発光素子と受光素子の夫々から接続される撚り線5a、5bであり、配管4は、シリコンラバー、天然ゴム、所定の合成樹脂を含む弾性材料を用いて図示のような中空状に成形され、エア配管とし、被覆部材9は、所定番手を有するナイロンなどの繊維体から網目状に形成される。また、この被覆部材9に対して必要に応じて耐ノイズ性向上のための金属塗膜処理を施し、さらに不図示のカバーを被せて構成される。
以上のように配管4と配線5とを一体化した場合には、例えば図15において一方を把持したときに、一点鎖線で示される円弧内において自由に曲げることが可能となる。さらに、配線5は配管4の外周面から直接引き出すことが可能になるのでシール部材は一切不要になる。また、被覆部材9に金属処理を施した場合には、さらに耐ノイズ性を向上することができる。また、分岐管35は図示のように小型化することで上記の耳掛け部材51の端部に体裁良く配置できるようになる。
<遮光層を形成したカフ袋体>
図16は、カフ袋体22の内部に遮光層を形成し光透過層30を設けるフローチャートであって、カフ袋体22の中心断面図とともに示している。
本図において、ステップS1ではゴム成形装置によりカーボンブラックを含む顔料を混入したシリコン系材料から図示のように開口部25aを押圧面25に一体成型する。このとき、半加硫状態である。また良品の選別が行なわれる。次に、ステップS2に進み、透明のシリコン系材料から成型された光透過層30を開口部25aに挿入する。そして、ステップS3において再度成型するために、所定金型内にセットし、フル加硫することで一体化する。
そして、必要に応じてステップS4のポスト架橋を行い、最後のステップで外観検査が行われて、異物、開口部のはみ出しなどの検査が行われて良品を選別して終了する。以上の各工程を経て完成されたカフ袋体22を図12に図示のように取り付けて使用する。
なお、カフ袋体の内側に遮光層を形成するか、カフ袋体の外側に遮光層を形成するようにしても良いこととなる。
<結合部300の構成>
図17は、結合部300の構成を示す図である。図17において、結合部300は、上蓋部材301と収容部材302で構成される。収容部材302には配管4及び配線5が収容される。配管4の端部には配管プラグ304が取り付けられ、配線5の端部には雌コネクタ305が取り付けられる。そして、雌コネクタ305は、コネクタ収容部309に配置される。また、配管プラグ304は、プラグ設置部311に設置され、上からEリング307でその場所に固定される。配管プラグ304が設置されると、その先端の所定の長さがプラグ突出穴308から突出するようになっている。
配管プラグ304及び雌コネクタ305を設置した状態で、上蓋部材301を上から被せる。すると、上蓋係止部313a及びbが収容部係止穴315a及びbにそれぞれ係止する。係止部313と係止穴315とが係止した状態で、ネジ306を用いてしっかりと上蓋部材301と収容部材302とが固定される。
図18は、結合部300を装置本体2に結合するときの様子を示す図である。なお、図18では、結合の様子を理解しやすくするため、結合部300について、結合前は上蓋部材301、結合後は収容部材302の一部のみを表している。
図17に示されるように、押下ボタン303はバネ321(図18を参照)を介して上蓋部材301に取り付けられている。結合部300を装置本体2に結合するときには、押下ボタン303を押下し、係止部322間の幅を少し狭くする。そして、結合部300を装置本体2の結合凹部に挿入すると、雌コネクタ305が装置本体2の雄コネクタ318と嵌合し、また、配管プラグ304が配管プラグ穴319に嵌合する。さらに、係止部322は、装置本体2に設けられた係止穴322に係止する。これにより、結合部300と装置本体2はしっかりと固定される。
また、使用後、押下ボタン303を押下し、係止部322を係止穴320から外して結合部300を結合凹部から引き抜くことにより取り出すことができる。
なお、結合部300を装置本体2に取り付ける場合についてであるが、係止部322は板バネなので、ある程度の弾性があり、押下ボタン303を押して係止部間距離を縮めなくても装置本体2の結合穴に押し込めば結合可能である。しかし、よりスムーズに、かつ安全に結合部300を装置本体2に結合するため、係止部間距離は多少でも縮めたほうがよい。
<光電容積脈波血圧計の回路構成>
図19は、図2の耳式血圧計1を光電容積脈波血圧計として構成した場合の装置本体2内における動作回路100の構成を示すブロック図である。
図19において、耳珠221に装着される装着部3の内側カフ組立体6の内部には、光電センサ(脈波センサ)を構成する発光素子であるLED20と、受光素子であるフォトトランジスタ21が含まれている。配管4は前述の通り、ゴム管(エアチューブ)であり、内側カフ6内への空気の流路を成す。圧力ポンプ108は電動小型モータを駆動源としており、コンデンサータンク107中に圧縮空気を送り、整流後に内側カフ組立体6、外側カフ組立体7内に圧力空気を送り込む。また、配管4から分岐接続される急排弁104は不図示の電磁弁機構が設けられており、カフ組立体6、7内の圧力を急速に減少させる。さらに同様に分岐接続される微排弁105は、内側カフ組立体6内の圧力を一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少させる。また、配管4から分岐接続される圧力センサ106は、カフ6内の圧力に応じて電気的パラメータを変化させる。この圧力センサ106に接続される圧力検出アンプ(AMP)107は、圧力センサ106の電気的パラメータを検出し、これを電気的信号に変換し、かつ増幅してアナログのカフ圧信号Pを出力する。
上記のLED20は脈動する血管血流に対して光を照射し、フォトトランジスタ21は該血管血流による反射光を検出する。配線5を介して接続されるフィルタAMP109は脈波検出アンプであり、フォトトランジスタ21の出力信号を増幅してアナログの脈波信号Mを出力する。ここで、LED20には配線5を介して光量を自動的に変化させる光量制御部118が接続される一方で、脈波検出アンプ109には、ゲインを自動的に変化させるゲイン制御部119aと、脈波検出フィルタ・アンプ109を構成するフィルタアンプ(図示せず)の時定数を変化させる時定数制御部119bとが接続されている。また、図示のように接続されるA/D変換器(A/D)110は、アナログ信号M、PをデジタルデータDに変換する。
制御部(CPU)111は、光電容積脈波血圧計の主制御を行う。このCPU111は調整圧力を記憶する調整圧力レジスタ111aを有している。ROM112は、CPU111が実行する後述の制御プログラムを格納している。RAM113は、データメモリや画像メモリ等を備えている。液晶表示器(LCD)114は、画像メモリの内容を表示する。操作部116は、使用者の操作により測定開始指令や調整圧力値の設定等を行うときに使用される。ブザー115は、使用者に対して装置が操作部116内のキーの押し下げを感知したことや測定終了等を知らせる。尚、本例では、CPU111に調整圧力レジスタ111aを設けたが、RAM113に調整圧力記憶部を設けてもよい。
また、LCDの表示パネル14は、ドットマトリックス方式の表示パネルを使用しており、従って多様な情報(例えば文字、図形、信号波形等)を表示できる。また操作部116は測定開始スイッチ(ST)とカフの圧力値等を入力するためのキーを有している。また、バッテリーを交換自在にした電源部121と不図示の電源スイッチがさらに設けられている。
さらに、装置本体2は不図示のコネクタまたは携帯電話に接続される外部通信部が設けられており、パソコンに対して接続することでパソコンの動作制御パラメータ設定部、データクリア部、データ保存部との間で各種データのやり取り及び血圧測定結果の保存をできるようにしている。
図20は、図2の装置本体2の実体配置図であって、蓋を外して示した図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、この装置本体2は上下寸法が約120mm、幅寸法が約80mm、厚み寸法が27mmであり、全体の重量が180グラムである。このように、極力小型軽量にすることで常時携帯した場合であっても、日常生活に支障がないようにしている。
また、上記の各制御をつかさどる電子部品は内部の空間を占める実装面積を有する基板140上に実装されている。一方、圧力ポンプ108とコンデンサータンク107と微排気弁105、急速排気弁104は一体形成される配管4に対して上記のように接続されるとともに、図示のような相互配置関係とすることで、交換自在に設けられる4本の単4電池の電源部121と併設可能にしている。このように限られた内部空間を有効活用できるように構成されている。また、繰り返し使用できる充電式の2次電池や簡単に入手できる市販の単4電池は、不図示の蓋体を開閉することで簡単に交換できる。
<光電容積脈波血圧計の動作>
次に、本実施形態に係る光電容積脈波血圧計としての耳式血圧計1の動作について以下に説明する。図21は耳式血圧計(光電容積脈波血圧計)1の測定処理を説明するためのフローチャートである。本図において、装置に対して電源スイッチにより電源投入すると、まず不図示の自己初期診断処理を行い装置の初期値化が行われる。その後、測定開始スイッチを押すことにより処理が開始される。
ステップS101ではカフ圧Pを読み取り、ステップS102でカフ1の残圧が規定値以内か否かを判別する。残圧が規定値を超えていれば、ステップS123でLCD114に「残圧エラー」を表示する。残圧が規定値以内であればステップS103でカフの加圧値(例えば120〜210mmHgの最高血圧値より大きい値)を操作部118を使用して設定し、ステップS104で光量及びゲインを所定の値に設定する。
加圧値および光量・ゲインの設定が終わると、ステップS105、S106では急排弁104及び微排弁105を閉じる。ステップS107では圧力ポンプ3を駆動開始し加圧(昇圧)を開始する。これが加圧時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で増加開始する。この間にステップS108で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最低血圧及び最高血圧の測定が行われる。最高血圧が測定される(S109)とステップS112で加圧ポンプ103の駆動を停止する。
ステップS110ではカフ圧がS103で設定した加圧値Uより高いか否かを判別する。P>Uでなければまだ正常測定範囲にあるので、引き続き測定を行う。一方、P>Uの時はもはやカフ圧が設定値よりも高いのでステップS111でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「加圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。ステップS113では加圧時に得られた脈波信号の信号レベルが精度の高い血圧測定が可能であるための所定のレベルの範囲内に有るか否かを判別する。所定の範囲内であると判別された場合は、ステップS120でLCD114に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。
ステップS113で所定の範囲内で無いと判別された場合は、ステップS114で脈波信号の信号レベルを基に光量及びゲインの調整を行う。ステップS114では、例えば次のような処理が行われる。脈波の搬送波が規格値(A/D変換器110のフルスケールの20〜40%)以下の場合はステップ光量が最大か否かをチェックし、最大でなければ光量制御部118を制御して光量を上げ、光量が最大の場合はゲインを上げる。一方、搬送波レベルが規格値以上の場合は、ゲインが最小か否かがチェックし、最小でないならばゲイン制御部119aによりフィードバック制御してゲインを下げる。最小ならば光量を下げる。
光量・ゲインの調整が終わると、ステップS115では微排弁105を開く。これが減圧(降圧)時の計測行程の開始であり、カフ圧は一定速度(例えば2〜3mmHg/sec)で減少開始する。この間にステップS116で各機能ブロックによるデータ処理が行われ、最高血圧及び最低血圧の測定が行われる。ステップS117では減圧時の最低血圧値の検出の有無を判別する。検出されていなければ引き続き計測を行う。ステップS118ではカフ圧が所定値L(例えば40mmHg)より低いか否かを判別する。P<Lでなければまだ正常測定範囲にあり、フローはステップS116に戻る。一方、P<Lの時はもはやカフ圧が正常測定範囲よりも低いのでステップS119でLCD114に「測定エラー」を表示する。必要なら「減圧時信号異常」等の詳細情報を付記表示する。
また、ステップS117の判別で測定終了の時は正常測定範囲で計測行程終了したことになり、ステップS120でLCD14に測定した最高血圧値及び最低血圧値を表示し、ステップS121でブザー115にトーン信号を送る。好ましくは、正常終了後と異常終了時とでは異るトーン信号を送る。ステップS122ではカフ6の残りの空気を急速排気し、次の測定開始を待つ。
<血圧の算出動作>
図22は、カフ圧と脈波信号の相関関係を示す図である。本図において、加圧時測定(ステップS108)の開始から減圧時測定(ステップS116)の終了までの時間における波形を夫々示している。
図22のグラフに対し血圧測定は概略以下のように行われる。すなわち、加圧時測定においては、脈波信号の大きさの変化が始まった点(a)のカフ圧を最低血圧、脈波信号の消失時点(b)のカフ圧を最高血圧とする。一方、減圧時の血圧測定は加圧時の血圧測定とは逆となり、脈波信号の出現時点(c)のカフ圧を最高血圧、脈波信号の大きさの変化が無くなった点(d)のカフ圧を最低血圧とする。なお、カフの減圧時のみの脈波から最高血圧、最低血圧を求めてもよい。
なお、本実施形態では血管内の血液による反射光を検出する例を示したが、替わりに透過光を検出するものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルを調整可能とし、精度の高い測定を可能とすると同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にする光電容積脈波血圧計を提供することができる。なお、耳珠およびその周辺部は痛みに対し鈍感な部分であるため、カフ圧による痛みが軽減できるという効果もあり、さらにこの事により、単回または2〜30分間隔での血圧の連続測定に適用が容易となるという効果も生まれる。
なお、上述の血圧測定装置は発光素子20及び受光素子21を用いて脈波を検出しているが、耳珠へ圧力を圧迫するカフを備え、生体表面の血管による脈動を当該カフで圧力変化として捉えることによっても脈波を検出することができる。即ち、圧力を印加したカフで生体から得られる脈動をカフ内の圧力の変化に変換し、圧力検知装置でカフ内の圧力変化を検知するものである。このような構成によっても生体の脈波を検出することができる。また、生体に接するカフ部分に小型マイクロフォンを設置し、生体の一部をカフにて圧迫するときに発生するコロトコフ音を検出し、所定レベル以上のコロトコフ音の発生あるいは消滅に基づいて血圧を測定するようにしても良い。
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、耳珠221を挟む構成を有する一対のカフの一方側(内側カフ組立体6内部)にのみに血管の血流に対して光を照射する照射部(LED20)と血流からの反射光を検出する受光部(フォトトランジスタ21)を備えるようにしているが、耳珠221を挟むための内側カフ組立体6及び外側カフ組立体7の双方に光の照射部となるLED20と反射光を検出する受光部となるフォトトランジスタ21を内蔵しても良く、このように内外のカフにセンサを設けることで、耳珠の裏側及び表側の血圧を同時に計測可能とするように構成しても良い。
このように構成することにより、一方側のカフは外耳及びその周辺部の裏側にある血管(細動脈)を圧迫し、他方側のカフは外耳及びその周辺部の表側にある浅側頭動脈或いはその分枝血管を圧迫することができる。なお、このように外耳及びその周辺部(より特定的には耳珠及び周辺部)の血圧を測定するのは以下の理由もある。
すなわち、耳珠およびその周辺部の血管(細動脈)は脳内の血管に近接していることが知られており、脳内に由来する血圧変化が測定可能と考えられている。一方、耳珠周辺部には、耳の軟骨部(主に耳珠)に存在する血管(細動脈)の他に、心臓に直結する動脈(浅側頭動脈)も位置する。そのため、耳珠周辺部においては小さな装置で異なる情報(つまり脳内由来の血圧と心臓由来の血圧)をもつ血圧を同時に測定可能であるという利点がある。本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルとすることが可能となり、外耳周辺部の精度の高い血圧測定が可能となる。同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にすることができる。
以上説明したように、本実施形態の光電容積脈波血圧計により、脈波信号の信号レベルが所定の規格範囲内に収まるよう信号レベルを調整可能とし、精度の高い測定を可能とすると同時に、血圧測定時間の短縮を可能とすることにより、カフ圧による利用者への身体的負担を軽減することを可能にする光電容積脈波血圧計を提供することができる。
なお、上述の血圧測定装置は発光素子20及び受光素子21を用いて脈波を検出しているが、被測定部位へ圧力を圧迫するカフを備え、生体表面の血管による脈動を当該カフで圧力変化として捉えることによっても脈波を検出することができる。
即ち、圧力を印加したカフで生体から得られる脈動をカフ内の圧力の変化に変換し、圧力検知装置でカフ内の圧力変化を検知するものである。このような構成によっても生体の脈波を検出することができる。また、生体に接するカフ部分に小型マイクロフォンを設置し、生体の一部をカフにて圧迫するときに発生するコロトコフ音を検出し、所定レベル以上のコロトコフ音の発生あるいは消滅に基づいて血圧を測定するようにしても良い。