JP2007273458A - 燃料電池用セパレータ及び燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃料電池本体をコンパクト化でき、貴金属を使用しなくても十分な耐食性を発揮しつつ、金属製セパレータとガス拡散電極との接触抵抗値を低下させることができ、耐摩耗性、長期耐久性に優れる燃料電池用セパレータの導電樹脂被覆体の提供。
【解決手段】 金属基板の少なくとも片面に少なくとも1層の導電性樹脂層を被覆してなる燃料電池セパレータにおいて、前記導電性樹脂層の導電性セラミックスとバインダー樹脂の質量比を30/70〜70/30とし、導電性樹脂層の厚みを0.5〜10μmの範囲とし、さらにJIS K5400に従って測定される導電性樹脂層の鉛筆硬度を5B以上とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は燃料電池用構造体に関わり、詳しくは単セルを複数積層して構成される燃料電池において、隣接する単セル間に設けられ、燃料ガス流路及び酸化ガス流路を形成すると共に燃料ガスと酸化ガスとを隔てるセパレータを構成する導電樹脂被覆体であって、特にセパレータの耐摩耗性に優れ、耐食性、導電性に優れた燃料電池用セパレータ、及び該セパレータを用いた燃料電池に関する。
近年、電気自動車用燃料電池の開発が、固体高分子材料を用いた固体高分子型燃料電池の開発成功を契機に急速に進展し始めている。固体高分子型燃料電池は、従来のアルカリ型燃料電池、燐酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池などとは異なり、水素イオン選択透過型の有機物膜を電解質として用いることを特徴とする燃料電池である。
固体高分子型燃料電池は、使用する燃料として純水素ガスやアルコール類の改質によって得た水素ガスなどを用い、空気中の酸素との反応を電気化学的に制御することによって、電力を取り出すシステムである。この電池に用いる固体高分子膜は、薄くても電解質が膜中に固定されていることから、電池内の露点を制御すれば電解質として機能するため、水溶液系電解質や溶融塩系電解質など流動性のある媒体を使う必要がなく、電池自体をコンパクトに単純化して設計できることが大きな特徴の一つとされている。
固体高分子型燃料電池の基本的なユニット構成は、電解質となる固体高分子膜の両面に炭素微粒子と貴金属超微粒子からなる触媒電極部、そこで発生する電力を電流として取り出すと同時に触媒電極部へ反応ガスを供給する機能を持ったガス拡散電極(フェルト状炭素繊維集合体(通常「カーボンペーパー」という)、そこからの電流を受けると共に酸素主体及び水素主体の2種の反応ガスや冷却媒体を分離するセパレータなどが積層されることにより構成される。
このような固体高分子型燃料電池では、高温で作動するアルカリ型燃料電池や燐酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池に比較して、作動温度が余り高くないこと(150℃以下で稼動できる)、及びその環境下で耐食性・耐久性を十分発揮させることが可能であること、軽量化やコンパクト化が図り易い等の理由から、電池の部品を構成するセパレータの材料としてカーボン等の炭素系材料が使用されているが、さらに低価格化の要求、強度面から金属基板を用いた金属製セパレータの使用が検討されている。
上記の炭素系材料からなるセパレータは、自動車への搭載を考慮した場合、加工に手間がかかるためコストが高い、電池の容積が大きくなるという問題点があり、この分野でも金属製セパレータの適用が検討され始めている。金属製セパレータにおいては、隣接して接することとなるガス拡散電極との接触抵抗が大きいため、燃料電池としてのエネルギー効率を大幅に低下させることが問題となっている。
このような問題を解決するために、使用される素材間の接触抵抗を検討し、固体高分子型燃料電池のエネルギー変換効率を最大限に発揮させるための固体高分子型燃料電池部材用の接触抵抗が低い材料も検討されつつある。このような例として、ステンレス鋼(SUS304)をプレス成形することにより内周部に多数個の凹凸からなる膨出成形部を形成し、膨出先端側端面に0.01〜0.02μmの厚さの金メッキ層を形成させた燃料電池セパレータが開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、他の部分に接触し接触抵抗を生ずる部分に貴金属又は貴金属の合金を付着させていることを特徴とする固体高分子型燃料電池用の低接触抵抗ステンレス鋼、チタン、及びセパレータなどが開示されている(例えば特許文献2参照)。
これらは、いずれも接触抵抗を低下させるために高コストの貴金属(金や白金、パラジウムなど)を用いているため、さらにコスト低下や希少資源の節約の観点から、貴金属を使わないで接触抵抗を下げる方法が望まれている。
貴金属を使わないで接触抵抗を下げる方法として、ステンレス鋼製セパレータと、それに接触する炭素材料との間に、厚み0.1〜200μmの窒化チタン層を設けて、ステンレス鋼製セパレータとガス拡散電極材の界面の接触抵抗を低減させる方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
しかしながらこの方法では、接触抵抗の低減に限界があり、又窒化チタン層内にピンホールが発生し、金属基板から金属イオンが溶出し易いという問題があった。
さらには、金属基板表面に黒鉛又は非晶質炭素材料を含む撥水性樹脂を含む、撥水性導電層を形成した燃料電池セパレータが提案されている。(例えば特許文献4参照)
しかしながら、この方法では、導電剤に黒鉛や非晶質炭素材料を使用しているため、耐食性には優れるが、金属基板と導電層との接触抵抗が大きくなり易いので、結果的に樹脂中に多くの黒鉛や非晶質炭素材料を添加する必要があり、金属基板と導電層の接着性に劣るばかりでなく、導電層が脆く、摩耗しやすいという問題がある。
特開平10−228914号公報 特開2001−6713号公報 特開2003−331861号公報 特開2002−216786号公報
本発明は、燃料電池本体をコンパクト化でき、貴金属を使用しなくても十分な耐食性を発揮しつつ、セパレータとガス拡散電極との接触抵抗値を低下させることができ、耐摩耗性、長期耐久性に優れる燃料電池用セパレータ、及び該セパレータを用いた燃料電池を提供することをその課題としている。
本発明者は、導電性セラミックスとバインダー樹脂とを用いて鋭意検討した結果、上述の課題を解決できる燃料電池用セパレータ及び燃料電池を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題を解決する手段は、金属基板の少なくとも片面に少なくとも1層の導電性樹脂層を被覆してなる燃料電池セパレータであって、前記導電性樹脂層は、導電性セラミックスとバインダー樹脂とを質量比30/70〜70/30の割合で含み、厚みが0.5〜10μmの範囲であり、かつJIS K5400に従って測定される鉛筆硬度が5B以上であることを特徴とする燃料電池用セパレータ、及び該セパレータを用いた燃料電池である。
本発明は、上述のとおり、金属基板の少なくとも片面に少なくとも1層の導電性樹脂層を被覆してなる燃料電池セパレータであって、導電性樹脂層が導電性セラミックスとバインダー樹脂とを質量比30/70〜70/30の割合で含み、厚みが0.5〜10μmの範囲であり、かつJIS K5400に従って測定される鉛筆硬度が5B以上である。そのため、本発明によれば、耐食性、長期耐久性に優れた燃料電池用セパレータを提供できる。また、本発明において、JIS K7125に従って測定される導電樹脂層の静摩擦係数が0.2以下、及び/又は動摩擦係数が0.3以下である場合には、優れた耐摩耗性、長期耐久性を有する燃料電池用セパレータを提供できる。また、本発明はバインダー樹脂としてフッ素系樹脂を用いた場合には、特に優れた耐熱性、耐食性、及び撥水性を有する燃料電池セパレータを提供できる。また、本発明は導電性セラミックスとして金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物、及び金属珪化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いた場合には、金属セパレータとガス拡散電極との接触抵抗を軽減した燃料電池用セパレータを提供できる。また、本発明は金属基板としてステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、及び鋼からなる群より選ばれる1種を用いた場合には、さらに成形性に優れた燃料電池セパレータを提供できる。
また、本発明の燃料電池用セパレータを用いれば、全体としてコンパクトであり、長時間運転が可能で、かつエネルギー効率を大幅に向上させた燃料電池を提供できる。
以下、本発明の燃料電池用セパレータ及び該セパレータを用いた燃料電池(以下、それぞれ「本発明のセパレータ」「本発明の燃料電池」ともいう。)を詳しく説明する。
なお、本発明において、「金属基板の少なくとも片面」には、金属基板の片面はもちろん、金属基板の両面も含まれる。また、「少なくとも1層の導電性樹脂層を被覆してなる」には、1層はもちろん、2層以上導電性樹脂層を被覆してなる場合も含まれる。
[燃料電池用セパレータ]
本発明のセパレータは、金属基板の少なくとも片面に少なくとも1層の導電性樹脂層を有している。この導電性樹脂層は導電性セラミックス粉末とバインダー樹脂を含んでなる。
<バインダー樹脂>
導電性樹脂層を構成するバインダー樹脂としては、様々なバインダー樹脂が挙げられるが、中でもフッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、具体的には、THV(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(フッ化ビニリデン)、PVF(フッ化ビニル樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体)、パーフロ環状重合体等が挙げられる。
上記例示したフッ素系樹脂の中では、耐熱性に優れ、耐食性と撥水性とを有するTHV(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(フッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)が好ましい。
また上記フッ素系樹脂には、金属基板との接着性を向上させる目的で、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の樹脂を添加してもよい。添加可能な樹脂としては、例えば、フェノール樹、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルホンなどが挙げられる。前記ポリイミド系樹脂としては、縮合型の全芳香族ポリイミド、付加型のビスマレイミド系ポリイミド、やポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
<導電性セラミックス>
本発明のセパレータにおいて、上記バインダー樹脂と共に使用可能な導電性セラミックスは、体積抵抗値が10−2Ω・cm未満の金属化合物であり、例えば、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物、金属珪化物、金属酸化物などが該当する。それらの中でも、耐食性に優れ、体積抵抗値の小さい、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物、及び金属珪化物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記金属炭化物としては、例えば、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ホウ素等が挙げられる。
上記金属窒化物としては、例えば、窒化クロム、窒化アルミニウム、窒化モリブデン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ガリウム、窒化ニオブ、窒化バナジウム、窒化スカンジウム、窒化ランタン、窒化珪素及び窒化ホウ素等が挙げられる。
上記金属炭窒化物としては、例えば、炭窒化チタン、炭窒化ジルコニウム等が挙げられる。
上記金属ホウ化物としては、例えば、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、及びホウ化ランタンが挙げられる。
上記金属珪化物としては、例えば、珪化チタン、珪化ジルコニウム、珪化ハフニウム、珪化ニオブ、珪化タンタル、珪化クロム、珪化モリブデン、珪化バナジウム、珪化ランタン、珪化マンガン、珪化コバルト、珪化ニッケル、珪化銅及び珪化タングステンが挙げられる。
上記導電性セラミックスの中では、耐食性に優れ、比較的比重の小さい、炭化チタン粉末、炭化ニオブ粉末、炭化バナジウム粉末を使用することが好ましい。
導電性セラミックスの粒径は、平均粒径が0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上であり、かつ5.0μm以下、好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下の範囲であることが望ましい。平均粒径が0.1μm以上であれば、粒径が小さ過ぎて取り扱いにくいという問題が発生しない。一方、平均粒径が5.0μm以下であれば、導電性樹脂層から導電性セラミックス粒子が欠落しにくく、導電パスも形成しやすいため、高導電性が発現しやすい。
なお、上記導電性セラミックスの平均粒径は、顕微鏡法、光散乱法、ふるい分け法、液相沈降法、慣性衝突法を用いて測定されるが、測定精度や簡便性などを考慮すると、光散乱法を用いて測定することが好ましい。
導電性樹脂層は、導電性セラミックスとバインダー樹脂とを質量比で30/70〜70/30の割合で、好ましくは35/65〜70/30の割合で、さらに好ましくは40/60〜65/35の割合で含む。バインダー樹脂の含有量が全質量の30質量%以上であれば、セパレータの耐摩耗性の低下に起因したキズの発生が抑えられ、セパレータ基材を腐食し難くさせ、また導電性樹脂層が金属基板から欠落するのを抑えられる。また、バインダー樹脂の含有量が全質量の70質量%以下であれば、導電成分の比率の低下による金属基板とガス拡散電極材との接触抵抗の増大を抑えられる。
導電性樹脂層は、導電性セラミックスとバインダー樹脂とを上記質量比となるように、水又は有機溶媒中に分散又は溶解した塗料組成物を調製し、該塗料組成物を金属基板に塗布することにより形成できる。使用する有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、THF、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記塗料組成物は、25℃における粘度が50〜250mPa・Sの範囲、より好ましくは100〜250mPa・Sの範囲であることが好ましい。粘度が前記下限値以上であれば、塗布時に塗料が流れることもなく、下記の適切な厚みの導電樹脂層を付設できる。また、粘度が前記上限値以下であれば、導電性樹脂層の厚みを精度よく付設できる。
導電性樹脂層の厚みは、0.5μm以上、好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上であり、かつ10μm以下、好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下であることが望ましい。導電性樹脂層の厚みが0.5μm以上であれば、金属基板への防食効果を充分に発現でき、金属基板が腐食するのを抑えることができ、また厚みが10μm以下であれば、燃料電池自体の容積が大きくなりすぎることもない。
導電性樹脂層のJIS K5400に従って測定される鉛筆硬度は、5B以上であり、好ましくは4B以上であり、さらに好ましくは3B以上である。鉛筆硬度が5B以上であれば、耐摩耗性があり、燃料電池セパレータをプレス成形したり、スタックに組み上げたりする際にキズが入りにくく、セパレータ基材の腐食を防止できる。
一方、本発明に係る導電性樹脂層の鉛筆硬度としての上限は特に定まるものでは無いが、燃料電池を自動車や携帯用機器に用いた場合に発生する振動等による他の部材との摩擦を考慮すると6H以下であることが望ましい。
JIS K7125に従って測定される導電性樹脂層の摩擦係数は、耐摩耗性の観点と、燃料電池セパレータをプレス成形したり、スタックに組み上げたりする際にキズが入りにくく、またセパレータ基板の腐食を防止できる等の観点からできるだけ低い方が好ましい。具体的には、動摩擦係数は0.2以下、好ましくは0.18以下、さらに好ましくは0.15以下であり、下限は0.01以上であることが望ましい。また、静摩擦係数は、0.3以下、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.20以下であり、下限は0.05以上であることが望ましい。
前記フッ素系樹脂中には、金属基板との接着性をさらに向上させる目的で、シラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤を適宜添加してもよい。
<金属基板>
本発明のセパレータを構成する金属基板は、各種の金属からなる基板を用いることができる。例えば、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、及び鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を好適に使用できる。中でも、耐食性と成形性とに優れる、ステンレス鋼、チタン及びその合金が好ましい。
金属基板の厚みは、燃料電池全体をコンパクトにする観点からは0.05mm以上、好ましくは0.08mm以上であり、かつ3.0mm以下、好ましくは2.0mm以下の範囲であることが望ましい。
本発明のセパレータの形状は特に限定されるものではないが、例えば、凹部と凸部とが復次的に成形された溝形状はガス流路の表面積を大きするのに寄与できる観点から好ましい。前記の凹凸の溝形状としては、例えばm幅0.5〜2.0mm、深さ0.2〜0.8mm、ピッチ1.0〜4.0mmで両面に加工された形状が挙げられる。
<接触抵抗>
燃料電池用セパレータとガス拡散電極材(例えば材質カーボンペーパー)との接触抵抗は、発電効率の観点から50mΩcm以下であることが好ましく、30mΩcm以下であることがより好ましく、20mΩcm以下であることがさらに好ましく、下限は1mΩcm以上が好ましく、3mΩcm以上がさらに好ましい。
<溶出試験>
金属イオンの溶出量は、環境安全性の観点から、土壌汚染の溶出基準である、24ppm(mg/L)以下であり、好ましくは1.5ppm(mg/L)以下であり、0.3ppm(mg/L)以下であることが望ましい。
<セパレータの製造方法>
本発明のセパレータは、金属基板の少なくとも片面に導電性セラミックスとバインダー樹脂とを含む塗布液を塗布し、導電性樹脂層を形成させる。塗布液は導電性セラミックスとバインダー樹脂とを30/70〜70/30で含むように水や有機溶媒で分散又は溶解した塗料を用いることができる。
上記の塗布液を金属基板上に塗装する方法としては、特に限定されないが、スプレーコート、カーテンフローコート、浸漬法、エアドクタコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、リバースロールコータ、トランファロールコータ、キスロールコータ、キャストコータ、ホワードロールコータなどの各種コーティング法が適用できる。中でも均一な厚さで塗装でき、量産性に優れる、リバースロールコータ法が好ましい。塗布後は、オーブンなどを用いて0.5〜30分間程度乾燥、焼き付けさせることが好ましい。
[燃料電池]
一般に燃料電池は、使用される電解質の種類に応じて、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型及び固体酸化物型等に分類できる。本発明のセパレータは、そのうちの固体高分子電解質型燃料電池用のセパレータとして用いることができる。固体高分子電解質型燃料電池は、電解質として分子中にプロトン交換基を有する高分子樹脂膜を使用して、高分子樹脂膜を飽和に含水させるとプロトン伝導性電解質として機能することを利用した電池であり、本発明のセパレータを用いた燃料電池は、セパレータが耐摩耗性、耐食性導電性に優れているため、比較的低温で作動し、発電効率も高く、電気自動車搭載用を始めとする各種の用途での使用が見込める。
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[評価方法]
<燃料電池用セパレータとガス拡散電極材との接触抵抗の測定>
得られた燃料電池用セパレータとガス拡散電極材との接触抵抗の評価は以下のようにして行った。
1. 測定装置
抵抗計:「YMR−3型」((株)山崎精機研究所社製)
負荷装置:「YSR−8型」((株)山崎精機研究所社製)
電極:真鍮製平板2枚(面積1平方インチ、鏡面仕上げ)
2. 測定条件
方法:4端子法
印加電流:10mA(交流、287Hz)
開放端子電圧:20mVピーク以下
見かけの面圧:18×10Pa
カーボンペーパー:東レ社製「TGP−H−090」(厚み0.28mm)
3.測定方法
得られたセパレータを、カーボンペーパーを介して両側から真鍮製電極で挟み、所定の荷重を加えながら、4端子法にて所定の電流印加時の電圧を測定して以下の計算式にて接触抵抗値を求めた。
接触抵抗値(mΩcm)=抵抗測定値(mΩ)×電極面積(cm
<導電性樹脂層の鉛筆硬度>
金属基板上に導電性樹脂層を形成した燃料電池用セパレータを作製し、JIS K5400に準じて、導電性樹脂層の鉛筆硬度を、鉛筆硬さ試験機(TOYOSEIKI製)を用いて測定した。
<導電性樹脂層の静摩擦係数及び動摩擦係数>
金属基板上に導電性樹脂層を形成した燃料電池用セパレータを作製し、JIS K7125に準じて導電性樹脂層の静摩擦係数及び動摩擦係数を、スベリ試験機(インテスコ社製)を用いて測定した。なお、滑り片の底面は、フェルトで覆い、導電性樹脂層の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。
<塗料組成物の粘度測定>
塗料組成物の粘度測定は、JIS K5400(回転粘度計法)に従い、粘度測定を実施した。測定条件は、150mlのビーカーに深さ50mmになるまで塗料を入れ、温度を20℃に保った状態で、東機産業社製のTVB−10形粘度計「TVB−10H」にH3形ローターを取り付け、回転数100rpmで測定した。
<耐食性試験>
得られた燃料電池用セパレータをプレス成形し、大きさ30mm×30mmに裁断後、端部をフッ素樹脂(住友スリーエム(株)製 「THV220G」 比重2、融点=130℃)をアセトンに溶解させた溶液(固形分濃度15質量%)に浸して封止した。次いで、高圧用反応分解容器(三愛科学(株)製 「HU−50」、内部容器はテフロン(登録商標)製)の中に0.005molの硫酸水溶液50mlと、封止した上記サンプルを浸漬し、80℃のオーブンに入れて、20日後サンプルを取り出し、硫酸水溶液中の金属イオン量をICP(プラズマ発光分析装置 セイコー電子工業製 SPS1500VR)装置を用いて測定した。
なお、ICP測定による各金属イオン(Fe,Ni,Cr,Mo,Ti,Nb,V)の検出限界は、0.02ppmであった。
<実施例1〜3>
フッ素系塗料(三井・デュポンフロロケミカル(株)製 「PFA系エマルジョン」固形分濃度24質量% PFA比重2.15)と炭化チタン粒子(「(株)アライドマテリアル」製「OR07」 比重4.9 平均粒径0.7μm)を表1記載の割合で混合し塗料組成物を作製した。作製した塗料組成物の粘度は200mPa・sであった。
上記塗料組成物をSUS316L製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られたセパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1と表2に記載した。
<実施例4及び5>
フッ素系塗料(三井・デュポンフロロケミカル(株)製 「PFA系エマルジョン」固形分濃度24質量% PFA比重2.15)と炭化ニオブ粒子(「日本新金属(株)製「NbC」 比重7.82 平均粒径1.0〜3.0μm」及び炭化バナジウム粒子(「日本新金属(株)製「VC」 比重5.48 平均粒径1.0〜3.0μm」を表1記載の割合で混合し塗料組成物を作製した。作製した塗料組成物の粘度は200mPa・sであった。
上記塗料組成物をSUS316L製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られたセパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1と表2に記載した。
<実施例6〜10>
実施例1〜5で作製した塗料組成物を、チタン製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られたセパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1と表2に記載した。
<実施例11>
実施例1で作製した塗料組成物を、SUS316L製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られたセパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1と表2に記載した。
<実施例12>
実施例1で作製した塗料組成物を、チタン製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られたセパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1と表2に記載した。
<参考例1及び2>
N−メチル−2ピロリドンに固形分として12質量%になるように、ポリエーテルサルフォン(住友化学工業(株)製 「スミカエクセル5003P」 比重1.37)と炭化チタン粒子((株)アライドマテリアル」製 「OR07」 比重4.9 平均粒径0.7μm)を表1記載の割合で混合し塗料を作製した。
上記塗料をSUS316L製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、300℃で10分間焼き付けを行い、表1記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られた金属製セパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1及び表2に記載した。
<比較例1>
フッ素系塗料(三井・デュポンフロロケミカル(株)製 「PFA系エマルジョン」固形分濃度24質量% PFA比重2.15)と炭化チタン粒子(「(株)アライドマテリアル」製「OR07」 比重4.9 平均粒径0.7μm)を表1記載の割合で混合し塗料組成物を作製した。
上記塗料組成物をSUS316L製金属基板(厚み0.1mm)上にバーコータで塗布し、120℃で15分間加熱し溶剤を乾燥させ、その後300℃で10分間焼き付けを行い、表1に記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成した。
同じ方法で、他方の面にも表1記載の厚さを有する導電性樹脂層を形成し、燃料電池用セパレータを作製した。
得られた金属製セパレータの接触抵抗値、導電性樹脂層の鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数及び金属イオンの溶出量をそれぞれ測定し、表1及び表2に記載した。
Figure 2007273458
Figure 2007273458
表1より、本発明の範囲である実施例1〜12のセパレータは、鉛筆硬度が5B以上と大きく、静摩擦係数が0.3以下、動摩擦係数が0.2以下と小さいセパレータを得た。表2より、本発明の範囲内である実施例1〜12のセパレータは、鉛筆硬度、静摩擦係数、動摩擦係数が特定の範囲内にあるために耐摩耗性に優れており、耐酸試験後の金属イオンの溶出がほとんどないことから耐食性に優れていることが分かった。
これに対して、表1より、バインダー樹脂と導電性セラミックスの質量比が本発明の範囲から外れている比較例1は、鉛筆硬度が5B以下であった。また表2より、比較例1は鉛筆硬度が5B以下であり耐摩耗性が劣るために基板のSUS316Lより鉄イオンの溶出があり、耐食性に劣ることが分かった。
尚、表1より、鉛筆硬度の値が低いものに関しては(参考例1および2)、耐摩耗性に劣るため基板のSUS316Lより鉄イオンが多く溶出する傾向があった。
これより、本発明のセパレータは導電性、耐熱性に優れ、特に耐摩耗性、耐食性にも優れていることから、本発明のセパレータを用いた燃料電池は長時間の運転が可能であることが分かる。
本発明のセパレータは、導電性、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れるため、燃料電池用セパレータや燃料電池の分野で利用することができる。

Claims (7)

  1. 金属基板の少なくとも片面に少なくとも1層の導電性樹脂層を被覆してなる燃料電池セパレータであって、前記導電性樹脂層は、導電性セラミックスとバインダー樹脂とを質量比30/70〜70/30の割合で含み、厚みが0.5〜10μmの範囲であり、かつJIS K5400に従って測定される鉛筆硬度が5B以上であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. JIS K7125に従って測定される前記導電性樹脂層の動摩擦係数が0.2以下である請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
  3. JIS K7125に従って測定される前記導電性樹脂層の静摩擦係数が0.3以下である請求項1又は2記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 前記バインダー樹脂がフッ素系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  5. 前記導電性セラミックスが金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物、及び金属珪化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  6. 前記金属基板がステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、及び鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池。
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