JP2007272184A - 反射防止層形成用組成物、反射防止層形成方法および製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な反射防止機能を付与できる反射防止層形成用組成物、この反射防止層形成用組成物を用いた簡便な反射防止層形成方法、および該反射防止層を有する光学製品を提供すること。
【解決手段】反射防止層形成用組成物は、有機ケイ素化合物および内部空洞を有するシリカ系微粒子を固形分として含むとともに、前記固形分が有機系溶剤により希釈され、25℃、1質量%水溶液における表面張力が18〜25mN/mであるシリコーン系界面活性剤を含み、前記有機系溶剤の相対蒸発速度(ASTM−D3539)が1〜3である。
【選択図】なし

Description

本発明は、反射防止層形成用組成物、反射防止層形成方法、および反射防止層を形成してなる製品に関する。
プラスチックレンズは、従来のガラスレンズに比べ軽量で割れにくく、また染色が容易であることから、眼鏡レンズとして広く用いられている。
このようなプラスチックレンズは、表面にプライマー加工、ハードコート加工、反射防止加工、防汚加工等のコーティング加工を施し、性能の向上を図ることが一般に行われている。特に、眼鏡レンズのような分野では、表面反射が生じると、光線透過率を低下させるとともに、結像に寄与しない光の増加をもたらし、像のコントラストを低下させる。そのような場合には、反射防止加工をレンズ表面に施すと、装用者は良好な視界を得ることができる。
プラスチックレンズの反射防止層は、従来、主に真空蒸着法により、多層層として形成されることが多かった。しかしながら、真空蒸着法で反射防止層を形成したプラスチックレンズは、高温の環境下にさらされた場合、レンズ表面にクラックと呼ばれる筋状の模様が発生し、レンズ外観が悪化することがある。また、真空蒸着法では、真空プロセスを必要とするため、製造装置も大型化、複雑化してしまうという問題もあった。
そこで、最近では、反射防止機能を付与するための硬化性液体(反射防止層形成用組成物)を塗布する湿式法が提案されており、主にスピンコート法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、反射防止層をスピンコート法により塗布する際は、特許文献1にも示されるように、支持体に取り付けられたパッドにレンズを配置し、レンズをパッド側に吸引することでレンズをパッドと密着させて保持し、レンズの塗布面にノズルから硬化性液体を吐出する。スピンコート法では、支持体の高速回転によりレンズが回転し、塗布面に滴下された硬化性液体が遠心力によって塗り広げられるため、反射防止層を薄く、より均一な厚さとすることが可能である。
特開2003−222703号公報([0035]、[0036])
しかしながら、スピンコート法では、支持体の高速回転により塗布液に含まれる溶剤成分の気化が促進され、気化熱により、レンズが冷却される際にレンズに熱的なムラが生じやすくなるので、レンズ表面に色班が生じることもあった。また、パッドに保持されるレンズの部分の厚みが薄い場合には特に、パッドに保持された部分の熱が塗布面に伝達され易く、この点でも塗布面への悪影響があった。
そこで、本発明は、前記した課題を解決するとともに、十分な反射防止機能を付与できる反射防止層形成用組成物、この反射防止層形成用組成物を用いた簡便な反射防止層形成方法、および該反射防止層を有する製品を提供することを目的とする。
本発明の反射防止層形成用組成物は、有機ケイ素化合物およびシリカ系微粒子を有機系溶剤に分散してなる反射防止層形成用組成物であって、前記有機系溶剤の相対蒸発速度(ASTM−D3539)が1〜3であり、且つ、25℃、1質量%水溶液における表面張
力が15〜25mN/mである界面活性剤を含むことを特徴とする。
ここで、有機系溶剤の相対蒸発速度は、ASTM−D3539に準拠して測定される蒸発速度であり、下記の式(1)により測定される。
Figure 2007272184
本発明の反射防止層形成用組成物(以下、単に「本組成物」ともいう)によれば、有機ケイ素化合物およびシリカ系微粒子を固形分として含んでいるので、低屈折率の反射防止層形成に適している。また、本組成物は、固形分を分散させている有機系溶剤の相対蒸発速度が1〜3と特定の範囲にあるので、適度の乾燥速度を持ち、塗布後の基板表面に液ダレや液ダマリを生じることもない。さらにまた、25℃、1質量%水溶液における表面張力が15〜25mN/mである特定の界面活性剤を含んでいるため、基板に本組成物を塗布した際に、塗布ムラを生じない。このような本組成物の塗布方法としては、前記した効果が同時に発揮される浸漬法が好ましい。
本発明では、前記有機ケイ素化合物が下記式(2)で表される構造を有することが好ましい。
12 nSiX1 3-n (2)
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
ここで、上記式(2)で表される有機ケイ素化合物は、いわゆるシランカップリング剤であり、R1の重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる
。R2の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。従って、加水分解のためには水分が必要であり、本発明の有機系溶剤には、若干量の水が混在してもよい。
この発明によれば、本組成物に含まれる有機ケイ素化合物が前記した特定のシラン化合物から得られたものであるため、基板への塗布後に低屈折率でより強固な反射防止層を構成することができる。
本発明では、前記シリカ系微粒子が、内部空洞を有することが好ましい。
このような本発明によれば、シリカ系微粒子が内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。それ故、内部空洞を有するシリカ系微粒子は、内部空洞を有しないシリカ系微粒子よりも屈折率が低くなり、結果的に反射防止層の屈折率が低くなる。従って、反射防止層の屈折率を低くすることで、ハードコート層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
また、本発明の反射防止層形成方法は、前記したいずれかの反射防止層形成用組成物を用いて、基板に反射防止層を形成する反射防止層形成方法であって、反射防止層形成用組成物に基板を浸漬する浸漬工程と、前記浸漬工程後、前記反射防止層形成用組成物から引き上げられた基板を乾燥および焼成する焼成工程と、前記焼成工程後に、前記基板を上下180度に回転させる回転工程と、前記回転工程後の前記基板を、前記有機系溶剤組成物に再度浸漬する再浸漬工程と、前記再浸漬工程後、前記反射防止層形成用組成物から引き上げられた前記基板を再度、乾燥および焼成する再焼成工程とを備えることを特徴とする。
本発明の反射防止層形成方法によれば、反射防止層形成用組成物(以下、「本組成物」
ともいう)が有機ケイ素化合物およびシリカ系微粒子を固形分として含んでいるので、低屈折率の反射防止層形成に適している。そして、基板を本組成物に浸漬して、所定の乾燥・焼成工程を経た後に基板を上下180度に回転(反転)させて再浸漬を行うので、曲面を有するプラスチックレンズの場合、1度目の浸漬・焼成工程では、基板を本組成物から引き上げる際、基板と液面の角度が連続的に変化するため、基板が持ち出す液量も連続的に変化し、基板の反射防止層に厚み分布が生じてしまうが、2度目の浸漬・焼成工程により相殺され、非常に均一な厚みを持った2層反射防止層を形成することができる。
さらに、本発明のような浸漬法では、真空装置や大型の設備は不要となり、簡便に反射防止層付きの光学製品を製造することができる。また、浸漬法であるので、従来のスピンコート法に比べて廃溶剤の量を格段に減らすことができ、環境に対する負荷が非常に低くなる。
なお、前記した「回転工程、再浸漬工程および再焼成工程」を複数回繰り返すと、より均一な反射防止層形成を行うことができ好ましい。
本組成物を用いて、前記した反射防止層形成方法により基板に反射防止層が形成された製品は、反射防止効果に優れ、液ダレや塗布ムラに起因する外観不良がない。
このような製品としては、例えば、眼鏡レンズや記録媒体が挙げられる。記録媒体としては、例えば、CD系ディスクやDVD系ディスク等が挙げられる。
例えば、片面1層記録のDVD−RWディスクは、ポリカーボネート等の0.6mm厚の透明な基板の片面に、誘電層、記録層、誘電層、反射層を順次成層し、さらに、反射層の上にポリカーボネート等からなる0.6mm厚の第2の基板(通常透明基板)を貼り合わせている。このような製品においても、本発明の方法により反射防止層を形成することですぐれた反射防止効果が得られる。
以下、本発明について一実施形態を詳細に説明する。まず、反射防止層を形成するための組成物について説明する。
[反射防止層形成用組成物]
本発明で使用される反射防止層用組成物(本組成物)は、有機ケイ素化合物およびシリカ系微粒子が、下記式(1)で表される相対蒸発速度が1〜3である有機系溶剤に固形分として分散している。この有機系溶剤の相対蒸発速度は、ASTM−D3539に準拠して測定される蒸発速度であって、具体的には、25℃、乾燥空気下における酢酸n−ブチルの蒸発時間と各テスト溶剤の蒸発時間との比の値として定義される。各種有機系溶剤の相対蒸発速度は、「最新コーティング技術」(1983年(株)総合技術センター発行)17〜19ページ記載の表5等に記載されている。
Figure 2007272184
本発明における有機系溶剤の相対蒸発速度は、1〜3であることが必要であり、好ましくは1〜2である。相対蒸発速度が1未満であると、基板へ塗布後の溶剤の蒸発が遅いため、基板表面に形成された反射防止層に塗布ムラや液ダレによる不良現象を生じる。特に浸漬法による塗布の場合に大きな問題となる。一方、相対蒸発速度が3を越えると、溶剤が基板表面からすぐに蒸発してしまうため、液面の僅かな波動等の影響を受け、反射防止層の均一性に劣る。
また、有機系溶剤の沸点としては、50〜150℃であることが好ましく、60〜140℃の間であるとより好ましい。
ここで、有機ケイ素化合物としては、下記式(2)で表される構造を有するシラン化合物から得られたものであると基板への塗布後に低屈折率でより強固な反射防止層を構成することができる。
12 nSiX1 3-n (2)
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
上記式(2)におけるR1の重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
このようなシラン化合物の具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等が挙げられる。前記したシラン化合物は、2種以上を混合して用いてもよい。また、加水分解を行ってから用いた方が、より有効である。
シリカ系微粒子としては、内部空洞を有すると、シリカ自体よりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。それ故、内部空洞を有するシリカ系微粒子は、内部空洞を有しないシリカ系微粒子よりも屈折率が低くなり、結果的に反射防止層の屈折率が低くなる。すなわち、反射防止層の屈折率を低くすることで、ハードコート層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
ここで、内部空洞を有するシリカ系微粒子としては、特開2001−233611号公報に記載されている方法等で製造することができるが、本発明では、平均粒径が20〜150nmの範囲にあり、かつ屈折率が1.16〜1.39の範囲にあるものを使用することが望ましい。粒子の平均粒径が20nm未満になると、粒子内部の空隙率が小さくなって、所望の低屈折率が得られなくなる。また、平均粒径が150nmを超えると、有機薄層のヘーズが増加するので好ましくない。このように内部空洞を有するシリカ系微粒子としては、平均粒径20〜150nm、屈折率1.16〜1.39の中空シリカ微粒子を含む分散ゾル(触媒化成工業(株)製、スルーリア、及びレキューム)等が挙げられる。
また、本組成物には、界面活性剤が含有されている。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン系界面活性剤が使用可能である。
シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホ
ン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸ナトリム等のアルキルジフエニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルペンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
これらの界面活性剤のなかでは、組成物中の固形分の分散性、塗層の均一性、塗層の密着強度、さらに光学製品の光学特性に与える影響の観点より、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
ただし、本組成物における界面活性剤は、25℃、1質量%水溶液における表面張力が15〜25mN/mであり、好ましくは16〜24mN/mである。表面張力が25mN/mを越える界面活性剤を使用した場合や、界面活性剤自体を配合しないと、該組成物を基板に塗布した場合に液ダレを起こしやすくなる。
界面活性剤の本組成物中の濃度としては、0.001〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。また、界面活性剤の濃度としては臨界ミセル濃度以上であることが好ましい。
本組成物には、さらに、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂
や、これらの樹脂原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを、添加することが可能である。中でも屈折率を低減する意味で、フッ素含有の各種ポリマー、またはフッ素含有の各種モノマーを添加することが好ましい。このときのフッ素含有ポリマーとしては、フッ素含有ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらに他の成分と共重合可能な官能基を有することが好ましい。
また、上記成分の他に、必要に応じて、少量の硬化触媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン・ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、等を添加し本組成物の塗布性の向上や、硬化後の反射防止層の性能を改良することもできる。
本組成物は、具体的には、以下の様な手順により調製することが可能である。例えば、シラン化合物を、有機系溶剤で希釈し、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解を行う。さらに、シリカ系微粒子が5〜50質量%の分率で有機系溶剤中にコロイド状に分散したものを添加する。その後、必要に応じ、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加し、十分に撹拌した後に塗布液として用いる。このとき、硬化後の固形分に対して、塗布液の希釈する濃度は、好ましくは固形分濃度として1〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。固形分濃度が15質量%を越えると、後述する浸漬法による塗布の際、引き上げ速度を遅くしても、所定の層厚を得ることが困難となり、層厚が必要以上に厚くなってしまう。
このような本組成物は、固形分を分散させている有機系溶剤の相対蒸発速度が1〜3と特定の範囲にあり、さらにまた、25℃、1質量%水溶液における表面張力が15〜25mN/mである特定の界面活性剤を含んでいるため、基板に本組成物を塗布した際に、塗布ムラや液ダレを生じることもなく、反射防止層形成用組成物として極めて優れている。
[反射防止層形成方法]
本発明の反射防止層形成方法は、光学製品の基板に対して、前記した本組成物を以下に示す特定の浸漬法により塗布することを特徴とする。
ここで、基板とは、例えば、プラスチックレンズの場合であれば、プラスチックレンズ生地自体だけでなく、その上に、プライマー層やハードコート層を形成したものも含む意味である。基板にプライマー層やハードコート層を設ける場合は、公知の方法により形成すればよい。ハードコート層の形成法としてはシランカップリング剤と無機粒子とから得られた組成物による浸漬法が好ましい(例えば、特開2005−234529号公報参照)。また、ハードコート層の表面にプラズマ処理を施してあると、その後の浸漬法による塗布の際に塗層の密着性が向上するので好ましい。
以下に、上述した基板への反射防止層形成方法の一例について具体的に説明する。
図1に、基板10に対して本組成物を塗布する浸漬装置100を示す。
浸漬装置100は、本組成物を貯めておく第1貯液槽21と、第1貯液槽21から溢れてくる本組成物を受ける第2貯液槽22および第3貯液槽23と、第3貯液槽23から本組成物を第1貯液槽に還流するためのポンプ24と、異物を濾過するためのフィルタ25と、基板10を保持して上下動する保持治具26とを備えている。
従って、第1貯液槽21の液面は、常に一定の高さに保たれている。また、第2貯液槽22と第3貯液槽23はつながっており、第2貯液槽22に溜まった本組成物は、傾斜によって第3貯液槽23に流れ込む構造になっている。また、第3貯液槽23に溜まった本組成物は、ポンプ24によって強制的に第1貯液槽21に還流されるが、その際、フィルタ25で異物を濾過するようになっている。
なお、浸漬装置100に、液面の高さを一定にする機能が備わっていれば、第2貯液槽22や第3貯液槽23は、無くともよい。
基板10は、板面を第1貯液槽の液面に対して略垂直になるように保持治具26によって3箇所を保持されている。
保持治具26は、図示しない昇降可能な支持部によって支持されており、支持部の昇降速度は、図示しない制御装置により適宜設定することが出来る。支持部によって支持された保持治具26は、一定速度で引き上げることも、段階的に速度を変化させながら引き上げることも、連続的に速度を変化させながら引き上げることも、あるいは一定速度と段階的な速度変化と連続的な速度変化とを約み合わせることも可能であり、引き上げ速度は、最終的な反射防止層の層厚に対する要求精度により決定すればよい。
好ましい引き上げ速度は、50〜500mm/min程度であり、より好ましくは、100〜400mm/min程度である。
基板10は、第1貯液槽21に貯められている本組成物に浸漬されて暫く放置された後に引き上げられ、塗布層が形成される。好ましい浸漬時間は10〜60秒程度である。
塗布層が形成された基板10は、保持治具26に保持されたまま、図示しない乾燥・焼成工程へ送られる。
実際に、基板10に反射防止層を形成するには以下のようにして行う。
前記した浸漬装置100を用いて、第1貯液槽21の本組成物に基板10を浸漬する(浸漬工程)。所定時間浸漬した後、基板10を所定の速度で引き上げ、乾燥して焼成する(焼成工程)。次に、焼成後の基板10を、上下180度に回転させる(回転工程)。その後、基板10を、第1貯液槽21に再浸漬する(再浸漬工程)。再浸漬後の基板10は、同様に乾燥して焼成する(再焼成工程)。このようにして、基板10表面に反射防止層を形成する。焼成工程や再焼成工程における加熱温度は、50〜250℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。
このような本発明の方法では、本組成物として、固形分を分散させている有機系溶剤の相対蒸発速度が1〜3と特定の範囲にあるので基板10に本組成物を塗布した際に、塗布ムラや液ダレが生じにくい。しかも、焼成後の基板10を上下180度に回転(反転)させて再浸漬を行うので、1度目の浸漬・焼成工程では、液ダレにより基板10の反射防止層に厚み分布があったとしても、2度目の浸漬・焼成工程により相殺され、非常に均一な厚みを持った2層反射防止層を形成することができる。また、前記した「回転工程、再浸漬工程および再焼成工程」を複数回繰り返すと、より均一な反射防止層形成を行うことができ好ましい。
また、本組成物が、前記した特定の界面活性剤を含んでいると、塗布ムラや液ダレによる影響をより一層低減することができる。
なお、2層目の反射防止層を形成する際に、回転工程の前後いずれかでプラズマ処理を行うことも層密着性の点で好ましい。
さらに必要に応じて、反射防止層の表面には常法により防汚層(撥水層)を形成してもよい。このようにして、反射防止効果に優れ、液ダレや塗布ムラに起因する外観不良のない優れた光学製品を簡便に得ることができる。
ここで、具体的な光学製品としては、例えば、眼鏡用プラスチックレンズや記録媒体が挙げられる。プラスチックレンズとしては、レンズの強度、屈折率、耐熱性等の品質面を考慮すると、チオウレタン系プラスチックレンズや、チオエポキシ系プラスチックレンズ等が好ましい。
記録媒体としては、例えば、CD−R、CD−RW等のCD系ディスク、あるいは、DVD系ディスク(DVD−R、DVD−RW等)の2枚基板貼り合わせ型ディスクのような反射型記録可能型片面ディスク、あるいは、その他の規格の光ディスクが挙げられる。
さらには、液晶プロジェクタ用投射レンズ、特にその最も対物側のレンズ 、ビデオカメラやスチルカメラのレンズ 、複写機、レーザプリンタ、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、光ピックアップ用(CDやDVD等)のレンズ等の製造にも本発明を適用することができる。レンズ以外では、テレビやパソコン等のディスプレイのような製品にも適用できる。
また、本発明の製造方法は、今までのスピンコート法に比べ、使用する有機系溶剤の量を格段に減らすことができるため、環境負荷を大幅に減らすことが可能となる。
以下、本発明について実施例・比較例により詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例・比較例によって何等限定されるものではない。なお、各実施例・比較例とも、実施形態と同様の構造・機能を有するものは同じ符号を付けて説明する。
〔実施例1〕
予め浸漬法によりプライマー層およびハードコート層を形成し、プラズマにより表面改質処理を施した眼鏡用プラスチックレンズ基板10(中心厚11mm、外周厚4.5mm、直径80mm)に対し、図1に示す浸漬装置100を用いて、反射防止層形成用組成物の塗布を行った。
ここで、第1貯液槽21における本組成物の組成および浸漬条件は以下の通りである。(組成)
固形分 :3質量%
有機系溶剤 :PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)57質量%とメタノール40質量%の混合溶剤
(相対蒸発速度:1.16)
界面活性剤 :シリコーン系界面活性剤(濃度:固形分に対して1000質量ppm)
(東レダウコーニング製 FZ−77:25℃、 1質量%水溶液における表面張力は、20.3mN/m)
(浸漬・塗布条件)
基板10を、浸漬装置100の第1貯液槽21に30秒間浸漬した後、200mm/minの速度で引き上げた。
その後、常法により乾操・焼成を行い、反射防止層の上にさらに浸漬法により防汚層を形成して、プラスチック眼鏡レンズを得た。
(評価法)
反射防止層形成時に液ダレ、塗布ムラ等の不良現象を起こしていると、最終的にレンズの外観も悪化する。また、反射防止層形成時に液ダレ、塗布ムラ等の不良現象を起こしていると、最終的にレンズの層厚がばらつき、干渉色のばらつきとして観察される。そこで、以下の基準で、外観評価を行った。後述する実施例2、3および比較例1〜3と併せて、結果を表1に示す。
液だれ、塗布ムラに基づく外観不良なし:◎
(干渉色のばらつきのないもの)
液だれ、塗布ムラに基づく外観不良なし:○
(干渉色がややばらつくものまでは許容する)
液だれ、塗布ムラに基づく外観不良あり:×
〔実施例2〕
本組成物の組成を以下のように変え、基板10の引き上げ速度を150mm/minとした以外は、実施例1と同様にしてプラスチック眼鏡レンズを製造し、外観評価を行った。
(組成)
固形分 :3質量%
有機系溶剤 :PGME57質量%とエタノール40質量%の混合溶剤
(相対蒸発速度:1.02)
界面活性剤 :シリコーン系界面活性剤(濃度:固形分に対して1000質量ppm)
(東レ・ダウコーニング製 FZ−77:25℃、 1質量%水溶液における表面張力は、20.3mN/m)
〔実施例3〕
予め浸漬法によりプライマー層およびハードコート層を形成し、プラズマにより表面改質処理を施した眼鏡用プラスチックレンズ基板10(中心厚11mm、外周厚4.5mm、直径80mm)に対し、図1に示す浸漬装置100を用いて、反射防止層形成用組成物の塗布を行った。
ここで、第1貯液槽における本組成物の組成および浸漬条件は以下の通りである。
(組成)
固形分 :1.5質量%
有機系溶剤 :PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)57質量%とメタノール41.5質量%の混合溶剤
(相対蒸発速度:1.16)
界面活性剤 :シリコーン系界面活性剤(濃度:固形分に対して1000質量ppm)
(東レ・ダウコーニング製 FZ−77:25℃、 1質量%水溶液における表面張力は、20.3mN/m)
(浸漬・塗布条件)
基板10を浸漬装置100の第1貯液槽21に30秒間浸漬した後、200mm/minの速度で引き上げた。その後、常法により乾操・焼成を行った。
次に、焼成後の基板10を上下180度回転し、再度、前記した条件で浸漬を行った。その後、常法により乾操・焼成を行い、反射防止層の上にさらに浸漬法により防汚層を形成して、プラスチック眼鏡レンズを得た。
〔比較例1〕
実施例1における本組成物の組成を以下のように変え、基板10の引き上げ速度を100mm/minとした以外は、実施例1と同様にしてプラスチック眼鏡レンズを製造した。
(組成)
固形分 :3質量%
有機系溶剤 :PGME97質量%
(相対蒸発速度:0.69)
界面活性剤 :シリコーン系界面活性剤(濃度:固形分に対して1000質量ppm)
(東レ・ダウコーニング製 FZ−77:25℃、 1質量%水溶液における表面張力は、20.3mN/m)
〔比較例2〕
実施例1における本組成物の組成を以下のように変え、基板10の引き上げ速度を300mm/minとした以外は、実施例1と同様にしてプラスチック眼鏡レンズを製造した。
(組成)
固形分 :2質量%
有機系溶剤 :PGME38質量%とメタノール60質量%の混合溶剤
(相対蒸発速度:0.69)
界面活性剤 :シリコーン系界面活性剤(濃度:固形分に対して1000質量ppm)
(東レ・ダウコーニング製 FZ−7001:25℃、 1質量%水溶液
における表面張力は、30.5mN/m)
〔比較例3〕
実施例1における本組成物の組成を以下のように変え、基板10の引き上げ速度を450mm/minとした以外は、実施例1と同様にしてプラスチック眼鏡レンズを製造した。
(組成)
固形分 :2質量%
有機系溶剤 :PGME38質量%とメタノール60質量%の混合溶剤
(相対蒸発速度:0.69)
界面活性剤 :なし
Figure 2007272184
(評価結果)
表1の結果からわかるように、実施例1〜3で得られたプラスチック眼鏡レンズには、塗布ムラや液ダレのような外観不良は認められなかった。特に、実施例3においては、反射防止層の層厚のばらつきに起因する干渉色のばらつきが全く認められなかった。それ故、反射防止層の層厚が非常に均一であることが理解できる。
一方、比較例1は、有機系溶剤の相対蒸発速度が低いために、プラスチック眼鏡レンズには、塗布ムラに起因する外観不良が生じていた。また、比較例2では、界面活性剤の表面張力が高すぎるために、プラスチック眼鏡レンズには、液ダレに起因する外観不良が生じていた。比較例3も、界面活性剤そのものを用いていないため、同様に液ダレに起因する外観不良が生じていた。
なお、本発明の浸漬法によれば、貯留槽に塗布液(本組成物)を貯めた状態で基板(レンズ)を浸漬することから、基本的には塗布液の寿命が来るまでは廃液とはならない。それに対して従来のスピンコート法では、レンズ1枚毎に塗布液を滴下しスピンをすること
から、スピン時に振り切った液はそのまま廃液となる。実施例における浸漬方法では、基板10を1万枚処理した際の廃液量が約10Lであり、同じ層厚の反射防止層を形成する
ためにスピンコート法により基板を1万枚処理した際の廃液量は約40Lであった。すな
わち、約1/4に廃液量を減らすことができ、スピンコート法にくらべて環境負荷を大幅に減らすことが可能となる。
本発明は、プラスチックレンズやDVD等の光学製品に適用することができる。
本発明の実施形態に係る浸漬装置を示す図。
符号の説明
10…基板(基材)、21…第1貯液槽、22…第2貯液槽、23…第3貯液槽、24…ポンプ、25…フィルタ、26…保持治具、100…浸漬装置

Claims (6)

  1. 有機ケイ素化合物およびシリカ系微粒子を有機系溶剤に分散してなる反射防止層形成用組成物であって、
    下記式(1)で表される前記有機系溶剤の相対蒸発速度(ASTM−D3539)が1〜3であり、
    且つ、25℃、1質量%水溶液における表面張力が15〜25mN/mである界面活性剤を含むことを特徴とする反射防止層形成用組成物。
    Figure 2007272184
  2. 請求項1に記載の反射防止層形成用組成物において、
    前記有機ケイ素化合物が下記式(2)で表される構造を有することを特徴とする反射防止層形成用組成物。
    12 nSiX1 3-n (2)
    (式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
  3. 請求項1または請求項2に記載の反射防止層形成用組成物において、
    前記シリカ系微粒子が、内部空洞を有することを特徴とする反射防止層形成用組成物。
  4. 製品の基板に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止層形成用組成物を用いて、基板に反射防止層を形成する反射防止層形成方法であって、
    前記反射防止層形成用組成物に基板を浸漬する浸漬工程と、
    前記浸漬工程後、前記反射防止層形成用組成物から引き上げられた基板を乾燥および焼成する焼成工程と、
    前記焼成工程後に、前記基板を上下180度に回転させる回転工程と、
    前記回転工程後の前記基板を、前記有機系溶剤組成物に再度浸漬する再浸漬工程と、
    前記再浸漬工程後、前記反射防止層形成用組成物から引き上げられた前記基板を再度、乾燥および焼成する再焼成工程とを備えることを特徴とする反射防止層形成方法。
  5. 請求項4に記載の反射防止層形成方法により反射防止層が形成されていることを特徴とする製品。
  6. 請求項5に記載の前記製品が眼鏡レンズまたは記録媒体であることを特徴とする製品。
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