JP2007271327A - センサ装置およびセンサ付き転がり軸受装置 - Google Patents

センサ装置およびセンサ付き転がり軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 被検知部の材料選択に制約が少なく、被検知部への追加の加工が必要でないセンサ装置およびセンサ付き転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】 センサ装置は、固定体に取り付けられ被検知部からの超音波のエコーを検知する超音波センサを備えている。超音波センサ2は、所定方向に長い接触面積を有している被検知部Dからのエコーを検出するものであり、従来は円形の振動子52aであるのに対し、接触面積の長手方向に長い矩形の振動子2aを有している。
【選択図】 図3

Description

この発明は、転がり軸受と一体化されて転がり軸受の各種情報を検出するのに好適なセンサ装置およびセンサ付き転がり軸受装置に関する。
自動車においては、その制御を行うために種々の情報が必要であることから、車体側に固定される固定側軌道部材、車輪が取り付けられる回転側軌道部材、および両部材の間に配置された二列の転動体を有するハブユニット(転がり軸受)に、センサ装置を設けることが提案されている。たとえば、特許文献1には、固定側軌道部材に磁気インピーダンスセンサを設けるとともに、回転側軌道部材に、同センサに対向する環状の着磁部を設けることにより、接地荷重を精度よく求めることが開示されている。
特開2004−45370号公報
上記特許文献1のセンサ付き転がり軸受装置によると、磁気インピーダンスセンサによる検知が、被検知部の材料、形状、加工精度などの影響を受けるため、転がり軸受の材料の選択に制約があったり、着磁部の加工や別部材の追加が被検知部に必要となるという問題があった。
この発明の目的は、被検知部の材料選択に制約が少なく、被検知部への追加の加工が必要でないセンサ装置およびこのようなセンサ装置を備えたセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
この発明によるセンサ装置は、互いに接触する可動体および固定体からなる被検知部と、固定体に取り付けられ被検知部からの超音波のエコーを検知する超音波センサと、被検知部に作用する荷重とエコー強度との相関関係を利用して超音波センサの出力から被検知部に作用する荷重を求める処理手段とを備え、超音波センサは、所定方向に長い接触面を有している被検知部からのエコーを検出するものであり、接触面の長手方向に長い振動子を有していることを特徴とするものである。
超音波センサは、被検知部の接触面積を検知する接触面積検知センサであり、振動子の形状は、例えば、矩形または楕円形とされる。接触面積としては、「真実接触面積」、すなわち、微視的に見て表面に凹凸があるもの同士が接触した場合に、その凸部同士の「接触面積」を使用することが好ましい。
可動体と固定体の接触面積は、接触面に直角の方向の荷重が増加したときに増加し、接触面に直角の方向の荷重が減少したときに減少することから、この接触面積を検知することにより被検知部にかかる荷重を検出することができる。したがって、真実接触面積と転動体荷重との関係は比例関係となる。可動体は、接触面積の変化を反映しやすい形状である球状、円柱状、棒状、針状、円錐状、樽状、またはその他の形状とされていることが好ましい。可動体および固定体の材料は、通常、金属とされるが、固体であればよい。
超音波センサで検知されるエコーは、被検知部に作用する荷重の変化に伴う接触面積の変化によって変化し、これがエコー強度として検出される。超音波センサによると、非検出部が金属でない場合でも接触面積の変化を求めることかでき、被検知部の材料選択の制約を少なくし、しかも、被検知部への追加の加工を行わないで、被検知部に作用する荷重を検出することができる。
このセンサ装置は、転がり軸受と組み合わされてその転動体荷重を検出する転動体荷重検出用センサ装置として、好適に使用することができる。
この場合のセンサ装置は、転がり軸受の固定輪に取り付けられて転動体荷重の変化をエコー強度の変化によって検出する超音波センサと、転動体荷重とエコー強度との相関関係を利用して超音波センサの出力から転動体荷重を求める処理手段とを備えており、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有しているものとされる。これにより、軸受に作用する転動体荷重を検出することができるセンサ付き転がり軸受装置が得られる。このようなセンサ付き転がり軸受装置は、固定輪が車体側、回転輪が車輪側に取り付けられるようになされて、センサ付きハブユニットとして使用されることがある。
転がり軸受としては、深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、ころ軸受、ニードル軸受、スラスト軸受などのいずれの転がり軸受でも使用可能であり、また、単列のものだけでなく、複列のものにも適用できる。軸受の材料は、軸受鋼のような磁性材料であってももちろんよいが、非磁性の金属であっても、セラミックスであってもよい。
転がり軸受に作用する荷重が変化すると、この荷重変化によって固定輪と転動体との接触面積が変化する。接触面積と軸受に作用する荷重との関係は、理論的に求めることができるので、接触面積とセンサ出力との関係を予め実験的に求めておくことにより、センサ出力から転がり軸受に作用する荷重を求めることができる。こうして、被検知部(固定輪と転動体との接触面)への加工を施すことなく転がり軸受に作用する荷重を求めることができる。
この場合に、処理手段は、転動体荷重と接触面積との関係を示す理論式を蓄える理論式蓄積部と、センサ出力と接触面積との関係を示す実験式を蓄える実験式蓄積部と、センサ出力から実験式を使って接触面積を求める接触面積演算部と、この接触面積から理論式を使って転動体荷重を求める転動体荷重演算部とを有していることが好ましい。超音波センサは、通常のもの(単振動子の超音波センサ)でももちろんよいが、超音波センサは、所定ピッチで並ぶ複数の振動子を内部に有している(多振動子の超音波センサ)ことがある。
超音波センサのセンサ感度は、荷重による接触面積の変化量をΔS、振動子の音場広さをS1として、ΔS/S1にほぼ比例する。つまり、センサの感度は、接触面積の変化量ΔSに比例し、振動子の音場広さS1に反比例する。したがって、振動子の音場広さS1を小さくすることが感度向上に有効である。そこで、転動体と固定輪の軌道溝との接触面が楕円形となっていることに着目し、超音波センサの振動子を楕円の長軸方向に長い矩形とすることにより、超音波センサは、従来の円形振動子を使用したものに比べて、同じ転動体接触面積でも、音場広さS1が小さくなる分、センサ感度が向上する。被検知部は、転動体と固定輪の軌道溝との接触面に限定されるものではなく、所定方向に長い接触面を有している被検知部からのエコーを検出する場合に、振動子を接触面の長手方向に長い形状とすることで、種々の被検知部に作用する荷重の検出が可能となる。
超音波センサは、転がり軸受の固定輪に取り付けられることがあり、固定輪がハウジング等に支持されている場合には、超音波センサをこのハウジング等に保持させて固定輪とハウジング等との接触面を臨ますようにしてもよい。
転がり軸受では、転動体荷重と接触面積との関係を容易にかつ精度よく得ることができ、接触面積の変化を超音波センサで求めた場合、センサの出力と接触面積との関係を容易にかつ精度よく得ることができる。また、超音波センサによる接触面積の検知は、可動体および固定体が金属である場合に限られない点で優れている。
超音波センサは、たとえば、転がり軸受の頂部、底部、前部および後部の計4カ所に設けられ、これら4つのデータから転がり軸受に作用する荷重の3方向分力(上下方向荷重、前後方向荷重および左右方向荷重)が求められる。なお、センサは、等分配でかつ上記配置以外の4カ所に設けるようにしてもよい。3方向分力を求める場合、超音波センサは、頂部および底部のいずれか一方を省略して、3つとしてもよいし、円周上の任意の位置に等配分で3つ配置してもよい。また、円周上の任意の位置に等配分で5つ以上配置してもよく、超音波センサの配置は、必ずしも等配でなくてもよい。荷重の絶対値だけを求める場合には、超音波センサは1つであってもよく、超音波センサの数は、必要とする荷重(モーメントを含む)の数に応じて適宜変更される。
この発明によるセンサ付き転がり軸受装置は、転がり軸受と、転がり軸受に取り付けられた超音波センサと、実験式蓄積部、理論式蓄積部、接触面積演算部、転動体荷重演算部および3方向分力演算部を有する処理手段とを備えており、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有していることを特徴とするものである。
理論式蓄積部には、転動体荷重と接触面積との関係を示す理論式が蓄積され、実験式蓄積部には、センサ出力と接触面積との関係を示す実験式が蓄積される。そして、接触面積演算部において、センサ出力が接触面積に換算され、転動体荷重演算部において、接触面積が転動体荷重に換算され、3方向分力演算部において、転動体荷重が3方向分力(上下方向荷重、前後方向荷重および左右方向荷重)に換算される。
センサから荷重を求める第1の方法として、実験式演算部に蓄積されている出力と接触面積の関係を使用して、接触面積を求め、この接触面積と、理論式の荷重と接触面積の関係とから転動体荷重を再度演算することにより、センサ出力から荷重を求めることができる。ここで、理論式の荷重と接触面積(この「接触面積」は、上記「真実接触面積」とは相違しており、「見掛け接触面積」である。)の関係は、公知であり、次のような関係がある。
転動体と外輪の軌道溝との接触面(楕円)の面積πabを求めるためのa:接触楕円の長半径およびb:接触楕円の短半径は、接触物体の主曲率をρ1I,ρ1II,ρ2I,ρ2II(添字の1,2は物体を、添字のI,IIはその主曲率を含む平面を表す)、荷重をQ、接触の状態によって決まる係数をμおよびνとして、次のように表される。
a=e(Q/Σρ)1/3
b=e(Q/Σρ)1/3
=0.02363μ
=0.02363ν
Σρ=ρ1I+ρ1II+ρ2I+ρ2II
ただし、玉と内輪との接触の場合、玉:ρ1I=ρ1II=2/Dwであり、内輪:ρ2I=−1/r1、ρ2II=2/Fである。
センサから荷重を求めるには、第2の方法として、センサ出力と接触面積(この明細書において、上記第1の方法における「(見掛け)接触面積」以外の「接触面積」は、「真実接触面積」を意味している。)との実験的関係、および接触面積と転動体荷重との実験的関係から転動体荷重を演算する方法がある。この方法は、上記第1の方法に比べて、接触面積と転動体との関係、およびセンサ出力(エコー比)と転動体荷重との関係がリニアとなり、精度が向上する点で好ましい。
センサから荷重を求めるには、第3の方法として、接触面積を介さず直接センサ出力から転動体荷重を演算する方法がある。この方法は、上記第2の方法の関係を結合して、直接、センサ出力(エコー比)から転動体荷重を求めるもので、演算工数が削減される点でさらに好ましい。
このセンサ付き転がり軸受装置は、固定側軌道部材が車体側、回転側軌道部材が車輪側に取り付けられるようになされて、自動車のセンサ付きハブユニットとして使用されることがある。
転動体荷重は、例えば、以下の式で得られるエコー比から求められる。
エコー比=100×(H0−H1)/H0
H0:転動体が超音波センサから半ピッチ離れたときのエコー強度
H1:転動体が超音波センサ直下に位置するときのエコー強度
この発明のセンサ装置によると、互いに接触する可動体および固定体からなる被検知部と、固定体に取り付けられ被検知部からの超音波のエコーを検知する超音波センサと、被検知部に作用する荷重とエコー強度との相関関係を利用して超音波センサの出力から被検知部に作用する荷重を求める処理手段とを備えているので、たとえば転がり軸受に作用する荷重を検出するに際し、被検知部の材料選択に制約が少なく、また、被検知部への追加の加工も必要でないものとすることができる。また、超音波センサは、所定方向に長い接触面を有している被検知部に対応して、接触面の長手方向に長い振動子を有しているので、センサ感度を向上させることができ、転がり軸受の転動体荷重の検出などに好適に使用することができる。
この発明のセンサ付き転がり軸受装置によると、転がり軸受の材料選択に制約が少なくかつ追加の加工が必要でないようにして、転がり軸受に作用する3方向分力を演算することができる。したがって、これを自動車のセンサ付きハブユニットに適用した場合に、タイヤ接地荷重の3方向分力またはモーメントを含む6分力を求めることができ、車両制御の精度向上に資することができる。また、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有しているので、センサ感度を向上させることができ、より精度の高いタイヤ接地荷重の検出が可能となる。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
図1は、この発明のセンサ装置を備えたセンサ付き転がり軸受装置の1実施形態を示している。以下の説明において、左右および上下は、図の左右および上下をいうものとする。
図1および図2に示すように、センサ付き転がり軸受装置は、転がり軸受(1)と、転がり軸受(1)に取り付けられた超音波センサ(2)と、超音波センサ(2)の出力を処理する処理手段(図1には現れず、図2参照)とを備えている。
転がり軸受(1)は、外輪(固定体)(3)、内輪(4)、これらの間に配置された複数の転動体(可動体)(5)、および保持器(6)を備えている。図示は省略したが、外輪(3)はハウジングなどに固定され、内輪(4)には回転軸などが固定される。外輪(3)とハウジングとは一体構造であってもよい。
超音波センサ(2)は、振動子(2a)(図3参照)から出力された超音波の反射波を受信部で受けることにより、超音波のエコーを求めるもので、外周におねじ部が形成された筒状のケース(7)およびケース内に配置された振動子(2a)を有しており、転動体(5)と外輪(3)の軌道溝との接触面(被検知部)(D)に直角の方向から臨まされている。外輪(3)には有底のめねじ部が設けられており、ケース(7)のおねじ部のねじ込み量が調整可能とされている。ケース(7)のおねじ部には、ケース(7)の回り止めのためのナット(8)がねじ合わされており、ナット(8)と外輪(3)との間には、Oリング(9)が介在させられている。
転動体(5)と外輪(3)の軌道溝との接触面(D)は、図3(a)に示すように、楕円形となっており、これに対応して、超音波センサ(2)の振動子(2a)は、楕円の長軸方向に長い矩形とされている。すなわち、接触面(D)は、転がり軸受(1)の軸方向に長い楕円であり、振動子(2a)が軸方向に長い矩形とされている。転動体荷重を適正に求めるためには、最大荷重に対応する接触面(D)をカバーできる音場広さS1が必要であり、振動子(2a)の矩形の大きさは、最大荷重に対応する接触面(D)の大きさに対応できるように決定される。具体的には、転がり軸受(1)に作用する荷重が10kNの時、転動体接触楕円の長軸は7mm程度となるので、振動子(2a)の形状は、長さ10mm、幅4mmとされている。したがって、音場の広さS1=振動子(2a)の大きさと仮定すると、S1=40mmとなる。従来の振動子(52a)の形状は、図3(b)に示すように、円形である。したがって、従来の円形の振動子(52a)では、上記矩形の振動子(2a)に対応する振動子径が10mmとなり、音場の広さS1=振動子(2a)の大きさと仮定すると、S1=5×5×3.14=78.5mmとなる。
超音波センサ(2)のセンサ感度は、荷重による接触面積の変化量をΔS、振動子(2a)(52a)の音場広さをS1として、ΔS/S1にほぼ比例する(センサ感度∝ΔS/S1)。つまり、センサ(2)の感度は、接触面積の変化量ΔSに比例し、振動子(2a)(52a)の音場広さS1に反比例する。したがって、振動子(2a)(52a)の音場広さS1を小さくすることが感度向上に有効であり、図3(a)の矩形振動子(2a)を使用した超音波センサ(2)は、図3(b)の円形振動子(52a)を使用したものに比べて、同じ転動体接触面積でも、音場広さS1が小さくなるので、センサ感度が向上している。
超音波センサの出力は、以下に示すエコー比として求められる。
エコー比=100×(H0−H1)/H0
H0:転動体が超音波センサから半ピッチ離れたときの反射エコー強度
H1:転動体が超音波センサ直下に位置するときの反射エコー強度
転動体に作用する荷重が大きいと、接触面積も大きくなり、反射波は小さくなる。したがって、接触面積が大きい場合には、大きいエコー比が出力される。
超音波センサ(2)は、図1に示されている外輪頂部および外輪底部のほかに、外輪前部および外輪後部にも設けられており、これら4つのセンサ出力から転がり軸受(1)に作用する荷重の3方向分力(上下方向荷重、前後方向荷重および左右方向荷重)が求められている。
処理手段(10)は、図2に示すように、超音波センサ(2)の出力(エコー比)と接触面積との関係を示す実験式を蓄える実験式蓄積部(11)と、転動体荷重と接触面積との関係を示す理論式を蓄える理論式蓄積部(12)と、超音波センサ(2)の出力から実験式を使って接触面積を求める接触面積演算部(13)と、この接触面積から理論式を使って転動体荷重(各センサ位置における転動体荷重)を求める転動体荷重演算部(14)と、各超音波センサ(2)から得られた転動体荷重を使用して転がり軸受(1)に作用する3方向分力(上下方向荷重、前後方向荷重、左右方向荷重)を求める3方向分力演算部(15)とを有している。
転がり軸受(1)に作用する荷重が変化すると、転動体(5)と外輪(3)の軌道溝との接触面積が変化し、超音波センサ(2)の出力が変化する。この超音波センサ(2)の出力Piは、接触面積演算部(13)において、実験式蓄積部(11)に蓄積されている出力と面積との関係を使用して面積Siに換算される。次いで、この接触面積Siは、理論式蓄積部(12)に蓄積されている荷重と面積との関係を使用して荷重Liに変換される。次いで、3方向分力演算部(15)において、各超音波センサ(2)から得られた複数の転動体荷重Liを使用して3方向分力が求められる。3方向分力の演算式は、予め実験により求められる。
理論式蓄積部(12)に蓄えられる転動体荷重と接触面積との関係は、次のようにして理論的に求めることができる。転動体(5)と外輪(3)の軌道溝との接触面(楕円)の面積πabを求めるためのa:接触楕円の長半径およびb:接触楕円の短半径は、接触物体の主曲率をρ1I,ρ1II,ρ2I,ρ2II(添字の1,2は物体を、添字のI,IIはその主曲率を含む平面を表す)、荷重をQ、接触の状態によって決まる係数をμおよびνとして、次のように表される。
a=e(Q/Σρ)1/3
b=e(Q/Σρ)1/3
=0.02363μ
=0.02363ν
Σρ=ρ1I+ρ1II+ρ2I+ρ2II
ただし、玉と内輪との接触の場合、玉:ρ1I=ρ1II=2/Dwであり、内輪:ρ2I=−1/r1、ρ2II=2/Fである。
したがって、これらの式より、接触面積πabと荷重Qとの関係を求めることができる。この関係が図4に示されている。
図5は、超音波センサ(2)を使用した超音波測定法を用いた場合の接触面積とエコー比との関係を求めたもので、y=ax,y:エコー比、x:接触面積、a:回帰係数が成り立っている。こうして得られた超音波センサ(2)の出力(エコー比)と接触面積との関係が実験式蓄積部(11)に蓄えられる。これにより、このy=axを使用してエコー比から接触面積を求めることができる。図5に示したものでは、エコー比と接触面積との関係式を直線とすることが可能であるが、この実験式は直線に限定されるものではない。
なお、エコー比と転動体荷重との関係は、接触面積と転動体荷重との関係と同様に、図6に示す関係を有しており、これを利用してエコー比から転動体荷重を求めることができる。すなわち、転動体(5)に作用する荷重が大きいと、接触面積が大きくなって反射波が小さくなることから、転動体荷重が大きい場合には、大きいエコー比が出力される。
図7は、上記センサ付き転がり軸受装置の図2に示した処理手段(10)における処理の1例である転がり軸受荷重(例えばハブユニットに掛かるタイヤ接地荷重)の3方向分力演算方法を示すフローチャートである。次に、このフローチャートを参照して、処理の1例を示す。
図7において、転がり軸受荷重の3方向分力を求めるに際しては、まず、超音波センサ(2)から転がり軸受(1)の転動体(5)と軌道溝との接触面(D)に超音波が出射され(ステップS1)、次に、処理手段(10)の接触面積演算部(13)において、実験式蓄積部(11)に蓄積されている出力と接触面積との関係を使用して、転動体(5)と軌道溝との接触面(D)からの超音波の出力が接触面積に換算され(ステップS2)、次に、転動体荷重演算部(14)において、理論式蓄積部(12)に蓄積されている荷重と接触面積との関係を使用して、接触面積演算部(13)で得られた接触面積が転動体荷重に換算され(ステップS3)、次に、3方向分力演算部(15)において、転動体荷重演算部(14)で得られた転動体荷重を使用して転がり軸受(1)の3方向分力が演算される(ステップS4)。車輪の転がり半径を使用することにより、3方向分力から3方向のモーメント(上下軸回りのモーメント、前後軸回りのモーメントおよび左右軸回りのモーメント)も求めることができる。
3方向分力の演算は、予めセンサ出力(エコー比)から転動体荷重を求めておくことにより、図8に示すステップで行うことができる。すなわち、超音波センサ(Sti)(Sbi)(Sto)(Sbo)から転がり軸受(1)の転動体(5)と軌道溝との接触面(D)に超音波が出射され(ステップS1)、超音波センサ(Sti)(Sbi)(Sto)(Sbo)からの出力が演算されると(ステップS2)、処理手段(10)の転動体荷重演算部(14)において、予め測定しておいたエコー比と転動体荷重との関係を利用して転動体荷重を演算し(ステップ3)、処理手段(10)の3方向分力演算部(15)において、転動体荷重から6方向分力(3方向荷重と3方向モーメント)が演算される(ステップ4)。このようにすると、理論式蓄積部(12)における換算を不要として、直接、センサ出力(エコー比)から3方向または6方向分力を演算することができ、演算工数を削減することができる。
なお、上記実施形態においては、センサ装置が玉軸受に設けられてセンサ付き転がり軸受装置として使用される場合を示したが、この発明によるセンサ装置は、転がり軸受以外のものと組み合わせて使用することも可能である。この場合の超音波センサは、所定方向に長い接触面を有している被検知部からのエコーを検出するものとされ、接触面の長手方向に長い振動子(例えば、楕円形または矩形の振動子)を有しているものとされる。
また、玉軸受以外の転がり軸受や転がり軸受装置の適用例である自動車用ハブユニットにももちろん使用できる。また、超音波センサについては、単振動子のものであってもよく、また、多振動子のものであってもよい。
以下に、自動車のハブユニットに適用する場合の実施形態を説明する。
図9に示すセンサ付き転がり軸受装置は、自動車用センサ付きハブユニットとして使用されるもので、自動車用ハブユニット(21)およびセンサ装置(22)からなる。
ハブユニット(21)は、車体側に固定される固定側軌道部材(23)、車輪が取り付けられる回転側軌道部材(24)、両部材(23)(24)の間に2列に配置された複数の転動体である玉(25)、および各列の転動体(25)をそれぞれ保持する保持器(26)を備えている。
固定側軌道部材(23)は、軸受の外輪(固定輪)機能を有しているもので、内周面に2列の外輪軌道が形成されている円筒部(31)と、円筒部(31)の左端部近くに設けられて懸架装置(車体側部分)にボルトで取り付けられるフランジ部(32)とを有している。
回転側軌道部材(24)は、第1の軌道溝(34a)を有する大径部(34)および第1の軌道溝(34a)の径よりも小さい外径を有する小径部(35)を有している内軸(33)と、内軸(33)の小径部(35)外径に嵌め止められて右面が内軸(33)の大径部(34)左面に密接させられている内輪(36)とからなる。内軸(33)の右端近くには、車輪を取り付けるための複数のボルト(38)が固定されたフランジ部(37)が設けられている。内輪(36)の右部には、内軸(33)の軌道溝(34a)と並列するように、軌道溝(36a)が形成されている。固定側軌道部材(23)の右端部と内軸(33)との間には、シール装置(39)が設けられている。内軸(33)の小径部(35)の左端部には、おねじ部が設けられており、このおねじ部にねじ合わされたナット(40)によって、内輪(36)が内軸(33)に固定されている。固定側軌道部材(23)の左端部には、カバー(41)が被せ止められている。内輪と内軸の固定方法としては、図示しないが、内軸の端部を塑性変形させて、かしめ止めしてもよい。
センサ装置(22)は、固定側軌道部材(23)と内列の転動体(25)との間に作用する力(転動体荷重)を検出する超音波センサ(Sti)(Sbi)と、外列の転動体(25)の転動体荷重を検出する超音波センサ(Sto)(Sbo)と、これらの超音波センサ(Sti)(Sbi)(Sto)(Sbo)の出力を処理する処理手段(10)とを備えている。超音波センサ(Sti)(Sbi)(Sto)(Sbo)は、図9に示されている上下2カ所の他に、図示されていない前後2カ所にも設けられている。
超音波センサ(Sto)(Sbo)の振動子は、図3に示したものと同様、軸方向に長い矩形状とされている。また、センサ装置(2)の処理手段(10)は、図2に示したものと同様のものとされている。
図10は、自動車用センサ付きハブユニットとして使用されるセンサ付き転がり軸受装置の他の実施形態を示している。以下の説明において、図9と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
図10において、固定側軌道部材(23)には、断面が二等辺直角三角形状のセンサ設置用突出部(42)がその直角部分が突出部(42)先端に来るように設けられている。そして、この突出部(42)の直角部分を挟む二面に超音波センサ(Sti)(Sto)がそれぞれ取り付けられている。この実施形態によると、突出部(42)により、センサ設置箇所が補強されるため、センサ設置に伴う強度低下が防止される。突出部(42)は、センサ設置位置(固定側軌道部材(23)の最上部、最下部および上下の中間部)にだけ設けられてもよく、周方向に連続するように(断面形状が一定に限られるものではない)設けられてもよい。
図1は、この発明によるセンサ装置の1実施形態を示す縦断面図である。 図2は、この発明によるセンサ装置の処理手段の構成を示すブロック図である。 図3は、この発明によるセンサ装置の超音波振動子の形状を従来のものと比較して示す図である。 図4は、転動体荷重と接触面積との関係(理論式)を示すグラフである。 図5は、接触面積と超音波センサのエコー比との関係(実験式)を示すグラフである。 図6は、超音波センサで得られるエコー比と転動体荷重との関係を示すグラフである。 図7は、この発明によるセンサ付き転がり軸受装置における3方向分力演算方法を説明するためのフローチャートである。 図8は、この発明によるセンサ付き転がり軸受装置における3方向分力演算方法の他の形態を説明するためのフローチャートである。 図9は、この発明によるセンサ付き転がり軸受装置の他の実施形態を示す縦断面図である。 図10は、この発明によるセンサ付き転がり軸受装置のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
符号の説明
(1) 転がり軸受
(2) 超音波センサ(超音波センサ)
(3) 固定側軌道部材(固定体)
(4) 回転側軌道部材
(5) 転動体(可動体)
(10) 処理手段
(11) 実験式蓄積部
(12) 理論式蓄積部
(13) 接触面積演算部
(14) 転動体荷重演算部
(21) ハブユニット(転がり軸受)
(22) センサ装置
(23) 固定側軌道部材
(24) 回転側軌道部材
(25) 転動体(玉)
(Sti)(Sbi)(Sto)(Sbo) 超音波センサ
(D) 接触面(被検知部)

Claims (5)

  1. 互いに接触する可動体および固定体からなる被検知部と、固定体に取り付けられ被検知部からの超音波のエコーを検知する超音波センサと、被検知部に作用する荷重とエコー強度との相関関係を利用して超音波センサの出力から被検知部に作用する荷重を求める処理手段とを備え、超音波センサは、所定方向に長い接触面を有している被検知部からのエコーを検出するものであり、接触面の長手方向に長い振動子を有していることを特徴とするセンサ装置。
  2. 転がり軸受の固定輪に取り付けられて転動体荷重の変化をエコー強度の変化によって検出する超音波センサと、転動体荷重とエコー強度との相関関係を利用して超音波センサの出力から転動体荷重を求める処理手段とを備えており、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有していることを特徴とするセンサ装置。
  3. 処理手段は、転動体荷重と接触面積との関係を示す理論式を蓄える理論式蓄積部と、センサ出力と接触面積との関係を示す実験式を蓄える実験式蓄積部と、センサ出力から実験式を使って接触面積を求める接触面積演算部と、この接触面積から理論式を使って転動体荷重を求める転動体荷重演算部とを有している請求項2のセンサ装置。
  4. 転がり軸受と、転がり軸受に取り付けられた超音波センサと、実験式蓄積部、理論式蓄積部、接触面積演算部、転動体荷重演算部および3方向分力演算部を有する処理手段とを備えており、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
  5. 転がり軸受と、超音波センサと、超音波センサを使用して予め測定されたエコー比と転動体荷重との関係を蓄積する実験式蓄積部、エコー比から転動体荷重を求める転動体荷重演算部、および転動体荷重から3方向分力を求める3方向分力演算部を有する処理手段とを備えており、超音波センサは、転がり軸受の軸方向に長い形状の振動子を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
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