JP2007270831A - 内燃機関用の燃焼制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の動作状態の変動に拘わらず、常に、イオン電流のピーク位置及びピーク値を正確に抽出できる燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】 燃焼室の混合気の燃焼時に発生するイオンに対応したイオン電流を検出するイオン電流検出部3と、イオン電流検出部3の検出信号を直接的に受け、デジタルデータに変換して記憶するワンチップマイコン4とを備える。ワンチップマイコン4は、記憶したデジタルデータを微分演算し、その演算結果が所定値を超えるか否かを二値的に判定するデータ判定処理(ST2〜ST3)と、データ判定部での判定結果に基づき、全体的に第1レベルを示す第1領域と、全体的に第2レベルを示す第2領域とを抽出し、前記第1領域と第2領域との境界を前記イオン電流のピーク位置に特定するピーク特定処理(ST4〜ST6)とを有して、内燃機関の燃焼制御を行う。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車エンジンなどの内燃機関において、その燃焼を適切に制御できる装置に関し、特に、スパイクノイズが重畳したイオン電流であったり、或いは、イオン電流の発生位置を正確に特定できない場合であっても、イオン電流のピーク値を正確に抽出できる燃焼制御装置に関する。
内燃機関の燃焼室で混合気を燃焼させるとイオンが発生することが一般に知られている。そして、昨今、このイオンに対応するイオン電流に着目した燃焼制御の研究が盛んであり、計測したイオン電流に基づいてノッキング検出や失火検出をする試みがなされている。特に、イオン電流のピーク位置やそのピーク値は、重要な制御パラメータであり、例えば、ピーク値の有無によって失火判定をするとか、或いは、ピーク位置とピーク値とに基づいて点火タイミングの遅角制御や進角制御を行うなどの制御が可能となる。
図8(a)は、イオン電流を検出して燃焼制御を行う従来の回路構成を例示したものである。図示の通り、この燃焼制御装置は、イオン電流検出回路50と、イオン電流検出回路50の検出信号SGのピーク値を検出するピークホールド回路51と、内燃機関各部の動作を制御するワンチップマイコン52とで構成されている。
ピークホールド回路51は、イオン電流検出回路50の検出信号SGを受け、切出しウインドWinの時間幅における検出信号SGの最大値を保持する構成を有している。また、ワンチップマイコン52は、CPUコアと、メモリと、A/D変換器と、出力ポートとを内蔵しており、ピークホールド回路51のアナログ出力は、A/D変換器においてデジタル変換されてメモリに記憶されるようになっている。なお、ワンチップマイコン52は、ピークホールド回路51の動作時間を規定する切出しウインドWinを、出力ポートを通して、ピークホールド回路51に指示している。
図8(b)は、図8(a)の燃焼制御装置の正常な動作状態を示すタイムチャートである。図示の通り、検出信号SGは、比較的緩やかに増減する本来のイオン電流波形の手前に、鋭く増減する第1ピークを含むのが通例である。但し、図示例では、検出信号SGにスパイクノイズが重畳しておらず、また、検出信号SGと切出しウインドWinとの位置関係は適切に設定されている。ここで、切出しウインドWinは、動的に変化する運転条件に基づいて決定され、本来のイオン電流波形を確実に含むよう、やや広めの領域が確保されている。そして、図7(b)に示す正常動作状態では、A/D変換器に、検出信号SGの正確な第2ピークのピーク値が供給されるので、ワンチップマイコン52は正確なピーク値を取得することが可能となる。
しかしながら、イオン電流検出回路50からの検出信号SGのバラツキによっては、切出しウインドWinの中に第1ピークが入ってしまう場合がある。図7(c)は、この異常状態を図示したものであり、切出しウインドWinの領域中に第1ピークが含まれるため、ピークホールド回路51からは第1ピークのレベル値が出力されてしまうことになる(誤動作(1))。
また、図7(d)に示すように、イオン電流に、コロナ放電ノイズなどのスパイクノイズが重畳することもある。この場合には、ピークホールド回路51から、スパイクノイズのピーク値が出力されることになる(誤動作(2))。
ところで、自動車エンジンなどの内燃機関の動作状態は、時々刻々変化するので、イオン電流と切出しウインドWinとの位置関係を、常に最適状態に維持することは困難であり、したがって、不正確な位置関係であってもイオン電流検出回路50からの検出信号SGのピーク値を正確に特定できる装置が強く望まれるところである。また、もしピークホールド回路を省略することができれば、装置規模をより小型化することも可能となり更に望ましい。
そして、検出信号のピーク位置を正確に特定できれば、より確実なMBT(Minimum spark advance for Best Torque)制御も可能となる。すなわち、内燃機関が正常に燃焼している場合、イオン電流は第1ピークを示した後、上死点TDCの手前で減少して再び増加し、燃焼圧が最大となるクランク角の近傍で最大となり、イオン電流の第2ピークを示す(図9参照)。そして、点火時期がMBTに適合している場合には、燃焼圧の最大値となる圧力ピーク位置が、上死点TDCから特定のクランク角度だけ遅角した点に一致する。燃焼圧のピーク位置は、例えば、上死点から15°CA(クランク角)遅角した位置に現れる。
一方、燃焼圧のピーク位置とイオン電流の第二ピーク位置とは、ほぼ一致するので、イオン電流の第2ピーク位置を正確に把握して、第2ピーク位置が上死点TDCからどれだけ遅角あるいは進角しているかを判定することで、その時の点火時期がMBTに対して、どの程度ずれているかを判定することができる。
本発明は、これらの課題に着目してなされたものであって、内燃機関の動作状態の変動に拘わらず、常に、イオン電流のピーク位置及びピーク値を正確に抽出できる燃焼制御装置を提供することを目的とする。また、正確に抽出されたピーク位置に基づいて正確なMBT制御を実現する燃焼制御装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る内燃機関の燃焼制御装置は、燃焼室の混合気の燃焼時に発生するイオンに対応したイオン電流を検出する信号検出部と、前記信号検出部の検出信号を直接的に受け、デジタルデータに変換して記憶する入力記憶部と、前記デジタルデータを微分演算し、その演算結果が所定値を超えるか否かを二値的に判定するデータ判定部と、前記データ判定部での判定結果に基づき、全体的に第1レベルを示す第1領域と、全体的に第2レベルを示す第2領域とを抽出し、前記第1領域と第2領域との境界を前記イオン電流のピーク位置に特定するピーク特定部とを有して、内燃機関の燃焼制御を行うようにしている。
また、請求項7に係る内燃機関の燃焼制御装置は、燃焼室の混合気の燃焼時に発生するイオンに対応したイオン電流を検出する信号検出部と、前記信号検出部の検出信号を直接的に受け、デジタルデータに変換して記憶する入力記憶部と、前記デジタルデータを微分演算し、その演算結果が所定値を超えるか否かを二値的に判定するデータ判定部と、前記データ判定部での判定結果に基づき、全体的に第1レベルを示す第1領域と、全体的に第2レベルを示す第2領域とを抽出し、前記第1領域と第2領域との境界を前記イオン電流のピーク位置に特定するピーク特定部と、前記ピーク位置に基づいて、MBTが実現されるよう点火時期を決定する点火手段とを有して、内燃機関の燃焼制御を行うようにしている。
本発明では、入力記憶部が検出信号を直接的に受け、ピークホールド回路などの波形処理回路を介在させないので、低コスト化を実現できると共に、装着する部品点数を減少させることができる。また、イオン電流のピーク値はソフトウェア処理によって抽出されるので、取得したデジタルデータに応じた柔軟な処理が可能となる。
本発明のピーク特定部は、好ましくは、データ判定部の判定結果を時間順次に評価して、第1レベルが連続すると、その連続個数をカウントする計数手段と、データ判定部の判定結果を時間順次に評価して、第2レベルを検出すると、その連続個数が限界値を超えるか否かを判定する第1手段と、第1手段の判定の結果、第2レベルの連続個数が前記限界値を超えない場合には、前記カウントされた連続個数をそのまま維持する一方、前記限界値を越える場合には、前記カウントされた連続個数を初期値に戻す第2手段と、を有して構成されている。
前記計数手段及び前記第1手段は、特に限定されるものではないが、好ましくは、データ判定部の判定結果の評価処理を、時間軸上を負方向に実行するべきである。評価処理を、時間軸上負方向に実行することによって、本来のイオン電流波形の手前に発生する第1ピークの影響を確実に排除することができる。
本発明は、好ましくは、内燃機関の運転条件と、前記運転条件下で発生するイオン電流との関係を特定するデータテーブルTBL2を用意しておき、動的に変化する運転条件に基づいて前記データテーブルTBL2を参照して、その時のイオン電流の基本波周期Wを把握し、把握した前記基本波周期Wに基づいて前記限界値が決定される。実施例では、この限界値をノイズパルス幅bと称しているが、時間換算したノイズパルス幅(b×τ)を、基本波周期Wより適宜に小さい値に設定することで、イオン電流に重畳する高周波ノイズを適切に排除することができる。
また、本発明は、内燃機関の運転条件と、前記運転条件下で発生するイオン電流との関係を特定するデータテーブルTBL2を用意しておき、動的に変化する運転条件に基づいて前記データテーブルTBL2を参照して、その時のイオン電流の基本波周期Wを把握し、把握した前記基本波周期Wに対応して決定される差分時間幅(a×τ)で差分演算を実行して前記微分演算を実現するのが好ましい。具体的には、a×τ<Wの条件を満たすと共に、イオン電流に重畳すると予想されるスパイクノイズのパルス幅Wに対して、W<a×τの条件を満たす差分時間幅a×τが採用される。
また、本発明の入力記憶部は、好ましくは、内燃機関の運転条件に基づいて動的に決定される所定の範囲内の信号を取得するべきである。なお、実施例では、この所定範囲を切出しウインドWinと称しており、ウインド算出テーブルTBL1を検索して、切出しウインドWinの開始位置と終了位置を決定している。
請求項7の発明において、点火時期の決定手法は特に限定されないが、燃焼圧のピーク位置とイオン電流の第二ピーク位置とが、ほぼ一致することを活用するのが好適である。すなわち、(1)先ず、イオン電流の第二ピーク位置を正確に把握して、第二ピーク位置(燃焼圧のピーク位置)が、上死点TDCからどれだけ遅角あるいは進角しているかを判定する。(2)次に、この遅角又は進角の度合いを利用して、イオン電流の第二ピーク位置が上死点TDCから目標値だけ遅角した位置になるように点火時期を調節する。遅角すべき目標値は、例えば15°CA(クランク角)である。
以上説明した本発明によれば、内燃機関の動作状態の変動に拘わらず、常に、イオン電流のピーク位置及びピーク値を正確に抽出できる燃焼制御装置を実現することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)は、実施例に係る内燃機関用の燃焼制御装置EQUを示す回路図である。この燃焼制御装置EQUは、1次コイル1Pと2次コイル1Sとが電磁結合された点火コイル1と、点火コイル1を断続的に駆動するスイッチングトランジスタ2と、点火コイルの2次コイル1Sに接続されたイオン電流検出回路3と、スイッチングトランジスタ2をON/OFF制御すると共にイオン電流検出回路3からのアナログ検出信号SGを受けるワンチップマイコン4とで構成されている。そして、点火コイルの2次コイル1Sとグランドラインとの間に点火プラグ5が接続されている。
図示の通り、スイッチングトランジスタ2のベース端子は、ワンチップマイコン4に接続され、コレクタ端子は、点火コイルの一次コイル1Pに接続され、エミッタ端子は、グランドラインに接続されている。
イオン電流検出回路3は、点火プラグ5の放電電流で充電されるバイアス用のコンデンサCと、コンデンサCに並列接続されてコンデンサCの充電電圧を規制するチェナーダイオードZDと、チェナーダイオードZDに直列接続されたダイオードD1と、ダイオードD1の両端に接続された増幅部AMPとで構成されている。
チェナーダイオードZDとダイオードD1のアノード端子は、互いに直結され、ダイオードD1のカソード端子はグランドラインに接続されている。また、チェナーダイオードZDのカソード端子は、二次コイル1Sに接続されている。
イオン電流検出回路3の増幅部AMPは、反転端子と非反転端子と出力端子とを有する増幅素子Q1と、増幅素子Q1の反転端子に接続される入力抵抗R1と、増幅素子Q1の反転端子と出力端子の間に接続される帰還抵抗R2とで構成されている。なお、増幅素子Q1の反転端子とグランドラインとの間に、増幅素子Q1を保護するためのダイオードD2を接続しても良い。
増幅素子Q1として、この実施例では、OPアンプを使用している。OPアンプは、その入力インピーダンスがほぼ無限大(≒∞)で、反転端子と非反転端子との間が、仮想的に短絡状態である(imaginary short)。そのため、図1(b)に示す電流Iは、入力抵抗R1と帰還抵抗R2に共通して流れることになり、増幅部AMPの出力電圧Voutは、電流Iと帰還抵抗R2の積となる(Vout=I×R2)。つまり、この増幅部AMPでは、帰還抵抗R2が入力電流Iの検出抵抗として機能している。
図1の回路構成において、二次コイル1Sに負の高電圧が発生すると、図1(a)に示すように、点火プラグ5が点火放電し、点火電流がコンデンサCを充電する。この時、コンデンサCにはチェナーダイオードZDが並列接続されているので、コンデンサCの両端電圧は、チェナーダイオードZDの降伏電圧Vzに一致する。なお、この放電時には、ダイオードD1が短絡状態(ON)となるので、入力抵抗R1やその他の回路素子に流れる電流を無視することができる。
その後、二次コイル1Sの高電圧が消滅すると(図1(d)参照)、コンデンサCに充電されたバイアス電圧は、図1(b)に示す経路で放電する。この放電電流は、イオン電流Iに他ならず(図1(e)参照)、イオン電流Iは、増幅素子Q1の出力端子→帰還抵抗R2→入力抵抗R1→コンデンサC→二次コイル1S→点火プラグ5の経路で流れる。先に説明した通り、出力電圧Vout=R2×Iの関係が成立するので、増幅部AMPからはイオン電流Iに比例した電圧が得られる。
ワンチップマイコン4は、CPUコア4aと、A/Dコンバータ4bと、出力ポート4cと、メモリ部4dとが内蔵されて構成されている。そして、A/Dコンバータ4bは、イオン電流検出回路3からアナログ検出信号SGを直接的に受けて、これデジタルデータに変換している。また、出力ポート4cからは、スイッチングトランジスタ2のベース端子に向けて点火パルスが出力されている。
以上の通り、実施例に係る燃焼制御装置EQUは、イオン電流検出回路3とワンチップマイコン4とが直結されており、途中にピークホールド回路などを設けていない。そして、CPUコア4aにおける以下の独特の処理によってイオン電流のピーク値を正確に抽出している。以下、図2(a)のフローチャートに基づいて、CPUコア4aによって実行される演算処理の内容を説明する。
先ず、ワンチップマイコン4は、イオン電流検出回路3から得られるアナログ検出信号SGを、直接A/Dコンバータ4bで受け、デジタル変換されたデータをメモリ部4dに記憶する(ST1)。データ取得時のサンプリング周波数は、例えば、30KHz程度に設定され、この実施例ではサンプリング周期τを33μSとしている。なお、実際に取得されるデータは、図2(b)に示す切出しウインドWinの範囲(T)よりやや広い範囲(T+α)のデータであるが、説明の都合上、図2(b)には、点火パルスの立ち下がりタイミング(t=0)から+25mSのデータを全て図示している。
図2(a)のステップST1の処理によって必要な範囲のデータ取得が終われば、次に、メモリ部4dに記憶した切出しウインドWin内のN個のデータS(i)について、D(i)←S(i)−S(i−a)の差分演算によって微分処理を施す(ST2)。ここで、切出しウインドWinの位置及びその時間幅T(=33μS×(N−1))は、発生するイオン電流を確実に捕捉できるよう設定される。
イオン電流は、点火プラグ5の放電終了後に発生するが(図1(e)参照)、点火プラグ5の放電終了時や、発生したイオン電流の消失タイミングは、エンジン回転数やエンジン負荷などの運転条件に応じて動的に変化する。そこで、この実施例では、運転条件と発生するイオン電流との関係を予め実験的に求めておき、その関係を示すウインド算出テーブルTBL1をメモリ部4dに設けている。そして、実際の運転時には、各種センサから得られるデータに基づいて前記ウインド算出テーブルTBL1を検索し、その検索結果に基づいて、切出しウインドWinの開始位置と終了位置とをリアルタイムに決定している。
図2(b)は、イオン電流検出回路から得られるアナログ信号波形と、時間幅Tの切出しウインドとの関係を図示したものであり、ここでは、点火パルスの立ち下がりタイミング(t=0)を基準にして+4mSから+15mSの範囲を切出しウインドWinとしている。
図3(a)に示すフローチャートの通り、図2(a)の微分処理(ST2)は、i=1・・・NのN個のデータS(i)について、D(i)←S(i)−S(i−a)の演算によって実行される(ST21〜ST23)。図3(b)は、イオン電流検出回路から得られるアナログ検出信号SG(原波形)と、微分演算による微分波形とを図示している。なお、微分処理は、切出しウインド内のN個のデータについて、時間間隔a×τの差分を求めることを意味するが、差分時間間隔a×τは、イオン電流に重畳する高周波ノイズの周期τより長いが、イオン電流の基本波周期Wより短く設定される(W<a×τ<W)。このような差分時間間隔a×τを用いて微分処理を実行することによって、イオン電流に重畳する高周波ノイズの影響を排除して、イオン電流波形の全体的な増減傾向を把握することができる。
ところで、イオン電流の基本周波数F=1/Wは、エンジンの回転数やエンジン負荷などの運転条件に応じて動的に変化する。そこで、この実施例では、運転条件とイオン電流の基本波周期Wとの関係を示すデータテーブルTBL2をメモリ部4dに設け、上記したW<a×τ<Wの条件を満たす時間間隔a×τをリアルタイムに決定している。なお、ノイズ周期Wは、イオン電流の基本周波数Fより高いノイズを確実に除去する趣旨から、イオン電流の基本波周期Wより若干短い値(=W−β)に設定される。図示例では、運転条件から2.5KHz程度のイオン電流の基本周波数が予想されるので、a×τ<400μSの関係を満たす値としてa=10に設定して、差分時間間隔a×τを330μSにしている。
図2(a)のステップST2の微分処理が終われば、次に、微分値D(i)を微分閾値THと比較し、微分結果フラグFG(i)を算出する(ST3)。図4(a)は、判定処理の具体的な内容を示すフローチャートであり、図4(b)は、微分値D(i)の推移を示す微分波形と、微分波形から算出される微分結果フラグFG(i)との関係を図示している。
図4(a)のステップST32〜ST34に示す通り、変数i=1・・・NのN個のデータについて、微分値D(i)が微分閾値TH以上であれば微分結果フラグFG(i)をFG(i)=0とし、逆に、微分値D(i)が微分閾値TH未満であれば微分結果フラグFG(i)をFG(i)=1とする。ここで閾値THは、適宜に設定されるが、通常は、TH=0とすれば足りる。
なお、閾値TH=0と設定した場合、アナログ信号波形SGが時間軸方向に増加傾向(D(i)>0)となる時間帯は、判定処理(ST3)によって微分結果フラグFG(i)が0となり、逆に、アナログ信号波形SGが時間軸方向に減少傾向(D(i)<0)となる時間帯は、微分結果フラグFG(i)が1となる。
何れにしても、図2(a)のステップST3の処理によって微分結果フラグFG(i)を算出したら、次に、N個の微分結果フラグFG(i)について、時間軸上を逆向きに(換言するとFG(N)からFG(1)まで降順に)、特殊なカウント処理を行う(図2のST4)。
図5(a)に示す通り、このカウント処理では、最初にカウンタ変数CTの全領域をゼロクリアした後(ST41)、i=Nから開始してi=1まで時間軸上を逆向きに、ステップST43〜ST48の処理を実行する。ここで、時間軸上を逆方向に処理するのは、(a)エンジン制御において、イオン電流波形の第2ピークから波形終了までのデータが重要であること、及び(b)エンジン点火からイオン電流の第2ピークに至るまでの波形は比較的乱れやすいため、時間軸上を正方向に処理すると第2ピークを誤検出する可能性が高まること、のためである。
図5(a)に示すステップST43〜ST48の処理を具体的に説明すると、変数iに対する処理では、先ず、微分結果フラグFG(i)の値が1か否か判定される(ST43)。そして、微分結果フラグFG(i)が1であれば、CT(i)←CT(i+1)+1の演算によって、カウンタ値CT(i)を、時間軸上の上隣りのカウンタ値CT(i+1)より一つ増加させる(ST47)。一方、微分結果フラグFG(i)が0であれば、時間軸上で時間軸変数iより上方であって、ノイズパルス幅分のb個のカウンタ値CT(i+1),CT(i+2),・・・,CT(i+b)が同一値か否かが判定される(ST44)。
そして、全てのカウンタ値が同一値であれば、カウンタ値CT(i)をゼロクリアし(ST45)、逆に、一致しないカウンタ値が存在すれば、CT(i)←CT(i+1)の演算によってカウンタ値CT(i)の値を一つ上方のカウンタ値CT(i+1)と同一値にする(ST46)。
図5(a)のアルゴリズムにおいて、ノイズパルス幅b(時間換算するとb×τ)は、排除すべきスパイクノイズのパルス幅に対応して決定され、より具体的には、運転条件から把握されるイオン電流の基本周波数に基づいて決定される。例えば、実施例の運転条件では、イオン電流の基本周波数が2.5KHz程度であるので、この周波数より十分高いノイズを排除するべく、b=3と決定している。例えば、ノイズパルス幅b=3とした場合には、時間換算したノイズパルス幅b×τが99μSとなり、このパルス幅99μSを有するノイズの周波数は5KHz程度となる。したがって、図5のアルゴリズムでノイズパルス幅b=3と設定することで、周波数5KHz以上のノイズ成分を排除することが可能となる。
図6(a)は、ノイズパルス幅bをb=3に設定した場合について、図5のアルゴリズムを説明するための図面であり、メモリ部4dに確保されている微分結果フラグ領域FGとカウンタ領域CTとを示している。b=3に設定した場合には、カウンタ領域CT(i)の値を決定する際には、微分結果フラグFG(i)の値が問題になり(ST43)、FG(i)=0なら、CT(i+1)、CT(i+2)、CT(i+3)の値が問題になり、全て同一値なら、ゼロクリアされた値がカウンタ領域CT(i)に格納される(ST45)。また、CT(i+1)、CT(i+2)、CT(i+3)の値が一致しなければ、CT(i+1)の値がそのままカウンタ領域CT(i)に格納される(ST46)。
以上の通り、このアルゴリズムでは、微分結果フラグFG(i)=1の場合だけ、カウンタ値がインクリメント(+1)される。先に説明した通り、微分結果フラグFG(i)=1は、時間間隔a×τの微分値D(i)が、閾値THより小さいことを意味するが(D(i)<TH)、特に、閾値TH=0に設定した本実施例では、微分結果フラグFG(i)=1は、時間軸正方向の微分値D(i)が負であることを意味する。図6(b)は、この関係を図示したものであり、原波形の傾きが正の場合には、微分結果フラグFG(i)が0となり、原波形の傾きが負の場合には、微分結果フラグFG(i)が1になっている。なお、微分結果フラグFG(i)の位相がやや遅れるのは、時間間隔a×τの差分による微分演算を採っているからである。
何れにしても、本実施例では、時間軸上の上方から下方に向けて特殊なカウント演算を行い、微分結果フラグFG(i)が1の場合だけ、カウンタ値をインクリメント(+1)する。そして、微分結果フラグFG(i)が0の場合には、それがノイズパルス幅b分だけ連続しない限り、カウンタ値を変化させず、もしノイズパルス幅b以上に連続してFG(i)=0の場合には、カウンタ値をゼロクリアする。したがって、時間軸上逆向きに原波形が単調増加する状態を、カウンタ値で算出することになり、スパイクノイズのように、途中に急峻に増減する部分が含まれていても、これは読み飛ばされることになり、なだらかなピークのみが抽出される。
さて、図2に戻って説明を続けると、図2(a)のステップST5の処理では、カウンタ領域CT(1)〜CT(N)の各数値から、その最大値を抽出し、最大値を示すカウンタ位置からイオン電流のピーク位置(第2ピーク位置)を特定する。そして、特定されたピーク位置における入力データS(i)からイオン電流のピーク値を特定する(ST5)。
この場合、図7(c)に示すように、検出したピーク位置に、たまたまスパイクノイズが重畳している可能性もあり、その場合にはイオン電流のピーク値が不正確な値となる。そこで、ステップST5の処理でピーク位置が検出されたら、改めてステップST2で算出された微分値(図3参照)をチェックして、その微分値が閾値を超える位置(つまりノイズの位置)を検証する(ST6)。そして、検証されたノイズの発生位置が、ステップST5の処理で検出されたイオン電流のピーク位置と一致する場合には、イオン電流のピーク位置を時間軸上後方にずらして、ノイズの重畳していないピーク位置を採用することになる(ST6)。なお、微分値と閾値との対比に代えて、この微分値の再微分値と閾値とを対比するもの効果的である。
以上の通り、上記の構成によれば、イオン電流と切出しウインドの位置関係が最適状態でなく、切出しウインドの中にイオン電流の発生前のピークが含まれても、或いはまた、コロナ放電ノイズのようなスパイクノイズがイオン電流波形に重畳されても、イオン電流のピーク位置及びピーク電流値を正確に検出することができる。
なお、上記した具体的な説明は、特に本発明を限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱することなく、各種の改変が可能である。例えば、図7は特殊カウント処理を別のアルゴリズムを例示したものであり、微分結果フラグFG(i)=0の場合には、時間軸の上側のb−1個の微分フラグFG(i+1),FG(i+2)・・・FG(i+b−1)が全てゼロか否かを判定している(ST44)。この場合にも、実質的に図6の場合と同様の処理が実行されて、イオン電流のピーク位置を正確に抽出することができる。
実施例に係る燃焼制御装置の回路構成を示す回路図である。 ワンチップマイコンの制御動作の概要を示すフローチャートと、イオン電流検出回路の検出信号波形である。 微分処理を示すフローチャートと、微分波形及び原波形の波形図である。 判定処理を示すフローチャートと、微分波形及び微分結果フラグを示す図面である。 カウンタ処理を示すフローチャートと、微分結果フラグ及びカウント結果を示す図面である。 カウントアルゴリズムと、原波形及び微分結果フラグを示す図面である。 別のカウンタ処理とそのアルゴリズムを示す図面である。 従来技術の問題点を説明する図面である。 正常燃焼時におけるイオン電流波形と燃焼圧力波形との関係を示す図面である。
符号の説明
EQU 燃焼制御装置
3 信号検出部(イオン電流検出回路)
4 入力記憶部(ワンチップマイコン)
ST1 入力記憶部
ST2〜ST3 データ判定部
ST4〜ST6 ピーク特定部

Claims (7)

  1. 燃焼室の混合気の燃焼時に発生するイオンに対応したイオン電流を検出する信号検出部と、
    前記信号検出部の検出信号を直接的に受け、デジタルデータに変換して記憶する入力記憶部と、
    前記デジタルデータを微分演算し、その演算結果が所定値を超えるか否かを二値的に判定するデータ判定部と、
    前記データ判定部での判定結果に基づき、全体的に第1レベルを示す第1領域と、全体的に第2レベルを示す第2領域とを抽出し、前記第1領域と第2領域との境界を前記イオン電流のピーク位置に特定するピーク特定部とを有して、
    内燃機関の燃焼制御を行うようにしたことを特徴とする燃焼制御装置。
  2. 前記ピーク特定部は、
    データ判定部の判定結果を時間順次に評価して、第1レベルが連続すると、その連続個数をカウントする計数手段と、
    データ判定部の判定結果を時間順次に評価して、第2レベルを検出すると、その連続個数が限界値を超えるか否かを判定する第1手段と、
    第1手段の判定の結果、第2レベルの連続個数が前記限界値を超えない場合には、前記カウントされた連続個数をそのまま維持する一方、前記限界値を越える場合には、前記カウントされた連続個数を初期値に戻す第2手段と、
    を有して構成されている請求項1に記載の燃焼装置
  3. 前記計数手段及び前記第1手段は、データ判定部の判定結果の評価処理を、時間軸上を負方向に実行する請求項2に記載の燃焼装置。
  4. 内燃機関の運転条件と、前記運転条件下で発生するイオン電流との関係を特定するデータテーブルを用意しておき、動的に変化する運転条件に基づいて前記データテーブルを参照して、その時のイオン電流の基本波周期を把握し、把握した前記基本波周期に基づいて前記限界値が決定される請求項2又は3に記載の燃焼装置。
  5. 内燃機関の運転条件と、前記運転条件下で発生するイオン電流との関係を特定するデータテーブルを用意しておき、動的に変化する運転条件に基づいて前記データテーブルを参照して、その時のイオン電流の基本波周期を把握し、把握した前記基本波周期に対応して決定される差分時間幅で差分演算を実行することで前記微分演算を実現する請求項1〜4の何れかに記載の燃焼装置。
  6. 前記入力記憶部は、内燃機関の運転条件に基づいて動的に決定される所定の範囲内の信号を取得する請求項1〜5の何れかに記載の燃焼装置。
  7. 燃焼室の混合気の燃焼時に発生するイオンに対応したイオン電流を検出する信号検出部と、
    前記信号検出部の検出信号を直接的に受け、デジタルデータに変換して記憶する入力記憶部と、
    前記デジタルデータを微分演算し、その演算結果が所定値を超えるか否かを二値的に判定するデータ判定部と、
    前記データ判定部での判定結果に基づき、全体的に第1レベルを示す第1領域と、全体的に第2レベルを示す第2領域とを抽出し、前記第1領域と第2領域との境界を前記イオン電流のピーク位置に特定するピーク特定部と、
    前記ピーク位置に基づいて、MBTが実現されるよう点火時期を決定する点火手段とを有して、
    内燃機関の燃焼制御を行うようにしたことを特徴とする燃焼制御装置。
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