JP4573048B2 - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の燃焼室内で混合気の燃焼に伴って発生するイオン電流を点火プラグを介して検出して、そのイオン電流検出値に基づいて失火の有無を判定する内燃機関の失火検出装置に関する発明である。
近年、内燃機関の筒内で混合気が燃焼する際にイオン(燃焼イオン)が発生する特性に着目して、点火毎に筒内で発生するイオン電流を点火プラグの電極を介して検出し、そのイオン電流検出値に基づいて着火/失火を検出する技術が開発されている。従来の着火/失火の判定方法は、着火時にイオン電流が増加し、失火発生時にイオン電流が減少する性質を利用し、イオン電流検出信号の積分値又はピーク値を所定の失火判定値と比較して、イオン電流検出信号の積分値又はピーク値が失火判定値以上であれば、着火と判定し、そうでなければ、失火と判定するものである(特許文献1:特許第2505620号公報参照)。
更に、特許文献2(特許第2552754号公報)に記載された失火検出装置は、内燃機関の運転状態に応じてイオン電流検出信号のノイズレベルが変化することを考慮して、内燃機関の運転状態に応じて失火判定値を変化させることで、内燃機関の運転状態の変化によるノイズレベルの変化に応じて失火判定値を変化させて失火検出精度を向上させるようにしている。
特許第2505620号公報(第4頁等) 特許第2552754号公報(第3頁等)
一般に、燃焼イオンが発生する区間でイオン電流検出信号に重畳するノイズは、点火プラグのガイシ部に帯電した電荷により発生し、その帯電電荷量が多くなるほど、ノイズレベルが大きくなるという関係がある。また、本発明者の研究結果によれば、点火プラグの帯電電荷によるノイズの特徴は、燃焼時には燃焼イオン(電離ガス)により帯電電荷が中和される作用により帯電電荷量が減少してノイズの影響がほとんど無くなるが、失火時には、燃焼イオンが発生しないため、上述した燃焼イオンによる帯電電荷の中和作用が発生せず、帯電電荷量が減少しないため、ノイズレベルが大きくなるということが判明した。特に、失火が連続して発生する場合は、その連続失火回数が多くなるほど、帯電電荷量が増加してかなり大きなノイズが発生することが判明した。
従って、上記特許文献2のように、内燃機関の運転状態に応じて失火判定値を変化させても、連続失火時には、着火時よりもノイズレベルがかなり大きくなるため、ノイズレベルが失火判定値を越えてしまうことがあり、連続失火を誤って着火と判定してしまう可能性があった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、内燃機関の全ての気筒で点火プラグの帯電電荷によるノイズを燃焼イオンとして誤検出することを防止できて、失火検出精度を向上させることができる内燃機関の失火検出装置を提供することにある。
ところで、内燃機関の各気筒毎に燃焼状態が異なるため、燃焼イオンによる帯電電荷の中和作用の発生度合ひいては点火プラグの帯電電荷によるノイズレベルも各気筒毎に異なる。従って、従来のように内燃機関の全ての気筒に共通する1つの失火判定値を用いて失火を検出したのでは、一部の気筒で点火プラグの帯電電荷によるノイズを燃焼イオンとして誤検出することは避けられない。
このような事情を考慮して、請求項1に係る発明は、内燃機関の各気筒毎に燃焼状態が異なることを考慮して、内燃機関の各気筒毎に失火検出時と着火検出時とで失火判定値を可変設定する気筒別失火判定値設定手段を設け、更に、いずれかの気筒で失火を検出したときに当該失火気筒の前記失火判定値を増加補正する手段と、失火検出により前記失火判定値が増加補正された気筒について着火を検出したときに当該失火判定値を減少補正し又は失火検出前の失火判定値に復帰させる手段とを有する構成としたものである。このようにすれば、各気筒毎に燃焼状態が異なって、燃焼イオンによる帯電電荷の中和作用の発生度合ひいては帯電電荷によるノイズレベルが各気筒毎に異なるのに対応して、各気筒毎に失火判定値を帯電電荷によるノイズレベルに合わせて可変設定することができ、内燃機関の全ての気筒で帯電電荷によるノイズを燃焼イオンとして誤検出することを防止できて、失火の検出精度を向上させることができる。
この場合、請求項1に係る発明では、内燃機関の各気筒毎に失火検出時と着火検出時とで前記失火判定値を可変設定するようにしているため、各気筒毎に失火判定結果に基づいて失火判定値を簡単に可変設定することができる。尚、各気筒の燃焼状態として、失火/着火の他に、不完全燃焼、プレイグニッション等を検出する機能を備えているシステムでは、不完全燃焼、プレイグニッション等の判定結果も考慮して失火判定値を可変設定するようにしても良い。
また、失火が発生すると、点火プラグの帯電電荷量が増加してノイズレベルが大きくなるという特性を考慮して、請求項1に係る発明では、いずれかの気筒で失火を検出したときに当該失火気筒の失火判定値を増加補正し、失火検出により前記失火判定値が増加補正された気筒について着火を検出したときに当該失火判定値を減少補正し又は失火検出前の失火判定値に復帰させるようにしているため、各気筒毎に失火判定値を帯電電荷によるノイズレベルの増減に合わせて精度良く可変設定することができる。
また、失火が連続して発生する場合は、その連続失火回数が多くなるほど、点火プラグの帯電電荷量が増加してノイズレベルが大きくなる傾向があるが、帯電電荷量やノイズレベルは無制限に増加するものではなく、その増加にも一定の限界がある。
この点を考慮して、請求項のように、失火が連続して検出される気筒の失火判定値を連続失火検出回数又は連続失火検出時間に応じて所定の上限ガード値以下の範囲で増加補正するようにすると良い。このようにすれば、失火が連続して検出される気筒の失火判定値を、連続失火によるノイズレベルの増加量に合わせて精度良く増加補正できると共に、失火判定値の過補正を防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて点火制御系の回路構成を説明する。
点火コイル21の一次コイル22の一端はバッテリ23に接続され、該一次コイル22の他端は、イグナイタ24に内蔵されたパワートランジスタ25のコレクタに接続されている。二次コイル26の一端は点火プラグ27に接続され、該二次コイル26の他端は、2つのツェナーダイオード28,29を介してグランドに接続されている。
2つのツェナーダイオード28,29は互いに逆向きに直列接続され、一方のツェナーダイオード28にコンデンサ30が並列に接続され、他方のツェナーダイオード29にイオン電流検出抵抗31が並列に接続されている。コンデンサ30とイオン電流検出抵抗31との間の電位Vinが抵抗32を介して反転増幅回路33の反転入力端子(−)に入力されて反転増幅され、この反転増幅回路33の出力電圧Vがイオン電流検出信号としてエンジン制御回路34に入力される。イオン電流検出回路35は、ツェナーダイオード28,29、コンデンサ30、イオン電流検出抵抗31、反転増幅回路33等から構成され、このイオン電流検出回路35とエンジン制御回路34とによってイオン電流検出装置(イオン電流検出手段)が構成されている。
エンジン運転中は、エンジン制御回路34からイグナイタ24に送信される点火信号の立ち上がり/立ち下がりでパワートランジスタ25がオン/オフする。パワートランジスタ25がオンすると、バッテリ23から一次コイル22に一次電流が流れ、その後、パワートランジスタ25がオフすると、一次コイル22の一次電流が遮断されて、二次コイル26に高電圧が電磁誘導され、この高電圧によって点火プラグ27の電極36,37間に火花放電が発生する。この火花放電電流は、点火プラグ27の接地電極37から中心電極36へ流れ、二次コイル26を経てコンデンサ30に充電されると共に、ツェナーダイオード28,29を経てグランド側に流れる。コンデンサ30の充電後は、ツェナーダイオード28のツェナー電圧によって規制されるコンデンサ30の充電電圧を電源としてイオン電流検出回路35が駆動され、後述するようにしてイオン電流が検出される。
これに対して、イオン電流は、火花放電電流とは反対方向に流れる。つまり、点火終了後は、コンデンサ30の充電電圧によって点火プラグ27の電極36,37間に電圧が印加されるため、気筒内で混合気が燃焼する際に発生するイオンによって電極36,37間にイオン電流が流れるが、このイオン電流は、中心電極36から接地電極37へ流れ、更に、グランド側からイオン電流検出抵抗31を通ってコンデンサ30に流れる。この際、イオン電流検出抵抗31に流れるイオン電流の変化に応じて反転増幅回路33の入力電位Vinが変化し、反転増幅回路33の出力端子からイオン電流に応じた電圧Vがエンジン制御回路34に出力される。この反転増幅回路33の出力電圧Vからイオン電流が検出される。
エンジン制御回路34は、マイクロコンピュータを主体として構成され、回転角検出センサ38(クランク角センサ)、負荷検出センサ39(吸入空気量検出センサ、吸気圧検出センサ)等により検出した運転状態に応じて燃料噴射制御や点火時期制御を行うと共に、イオン電流検出回路35の出力を利用して、各気筒毎に所定の燃焼イオン検出区間におけるイオン電流のピーク値Ii 、積分値Qi 、イオン出力時間Ti の少なくとも1つを検出して、その検出値を失火判定値と比較して失火の有無を判定する。
次に、イオン電流検出回路35で検出するイオン電流波形が、正常燃焼時とノイズ発生時にどの様に変化するかを図2を用いて説明する。
図2(d)に示すように、点火コイル21の一次側巻線22への通電開始直後(点火信号OFF→ON切換直後)に、短い時間幅のパルス状のノイズ電流が誘起され、点火直後(点火信号ON→OFF切換直後)に、点火コイル21の二次側の残留磁気エネルギによってLC共振が発生し、その後、正常燃焼時には燃焼により発生したイオン(以下「燃焼イオン」という)の電流波形が現れる。本実施例では、各気筒毎にLC共振後に現れる燃焼イオンのピーク値Ii 、積分値Qi 、イオン電流出力時間Ti の少なくとも1つを検出して、その検出値を失火判定値と比較して失火の有無を判定する。
一方、点火プラグ27のガイシ部に帯電した電荷により発生するノイズには、図2(e)に示すように、筒内圧力が低下してから間欠的に発生するスパイクノイズがあるが、その他、点火直後の筒内圧力が高い時期に連続的に発生する連続コロナ放電ノイズもある。このような帯電電荷によるノイズは、帯電電荷量が多くなるほど、ノイズレベルが大きくなるという関係がある。
また、帯電電荷によるノイズの特徴は、燃焼時には燃焼イオン(電離ガス)により帯電電荷が中和される作用により帯電電荷量が減少してノイズの影響がほとんど無くなるが、失火時には、燃焼イオンが発生しないため、上述した燃焼イオンによる帯電電荷の中和作用が発生せず、帯電電荷量が減少しないため、ノイズレベルが大きくなる傾向がある。また、図3に示すように、失火が連続して発生する場合は、その連続失火回数が多くなるほど、点火プラグ27の帯電電荷量が増加してノイズレベルが大きくなる傾向があるが、帯電電荷量やノイズレベルは無制限に増加するものではなく、その増加にも一定の限界がある。
これらの事情を考慮して、本実施例では、図3に示すように、いずれかの気筒で失火を検出する毎に当該失火気筒の失火判定値を所定量ずつ増加補正し、失火検出により失火判定値が増加補正された気筒について着火を検出したときに当該失火判定値を失火検出前のベース失火判定値Vth0 (最小の失火判定値)に復帰させるようにしている。この際、失火が連続して検出される気筒の失火判定値は、上限ガード値Vthmax を越えないようにガード処理され、失火判定値の過補正が防止される。このようにすれば、各気筒毎に失火判定値を帯電電荷によるノイズレベルの増減に合わせて精度良く可変設定することができる。
以上説明した本実施例の失火判定値の可変設定と失火判定は、エンジン制御回路34によって図4及び図5の各ルーチンに従って実行される。以下、これら各ルーチンの処理内容を説明する。
[失火検出ルーチン]
図4の失火検出ルーチンは、エンジン運転中に各気筒毎に所定周期で実行される。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、回転角検出センサ38、負荷検出センサ39等の出力信号に基づいてエンジン回転速度Ne、負荷率等のエンジン運転状態を検出する。この後、ステップ102に進み、現在のエンジン運転状態に応じて燃焼イオン検出区間を設定する。図2の例では、燃焼イオン検出区間を点火後からATDC180℃Aまでの区間に設定している。尚、この燃焼イオン検出区間は、予め決められた一定の区間に設定するようにしても良い。
この後、ステップ103に進み、現在のクランク角が燃焼イオン検出区間内であるか否かを判定し、燃焼イオン検出区間内であれば、ステップ104に進み、イオン電流検出回路35で検出したイオン電流検出値iを所定のサンプリング周期(例えば20μs周期)で読み込み、次のステップ105で、燃焼イオン検出区間のイオン電流ピーク値Ii を検出する。尚、イオン電流ピーク値Ii に代えて、イオン電流積分値Qi (検出電荷量)又はイオン電流出力時間Ti を検出するようにしても良い。
その後、燃焼イオン検出区間終了タイミングになった時点で、上記ステップ103で、「No」と判定されて、ステップ106で「Yes」と判定され、ステップ107に進み、後述する図5の失火判定値設定ルーチンを実行して、各気筒毎に失火の有無に応じて失火判定値Vth(j) を可変設定する。ここで、(j) は気筒番号を示す。
この後、ステップ108に進み、イオン電流ピーク値Ii を失火判定値Vth(j) と比較し、イオン電流ピーク値Ii が失火判定値Vth(j) よりも大きければ、ステップ109に進み、着火と判定し、当該着火気筒(j) の失火検出フラグFmf(j) を「0」にセットする。これに対して、イオン電流ピーク値Ii が失火判定値Vth(j) 以下であれば、ステップ110に進み、失火と判定し、当該失火気筒(j) の失火検出フラグFmf(j) を「1」にセットする。尚、イオン電流ピーク値Ii に代えて、イオン電流積分値Qi 又はイオン電流出力時間Ti を失火判定値Vth(j) と比較して失火/着火を判定するようにしても良い。
[失火判定値設定ルーチン]
図5の失火判定値設定ルーチンは、上記図4の失火検出ルーチンのステップ107で実行されるサブルーチンであり、特許請求の範囲でいう気筒別失火判定値設定手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まずステップ201で、回転角検出センサ38、負荷検出センサ39等の出力信号に基づいてエンジン回転速度Ne、負荷率等のエンジン運転状態を検出する。この後、ステップ202に進み、現在のエンジン運転状態に応じてベース失火判定値Vth0 (最小の失火判定値)と連続失火時の失火判定値の上限ガード値Vthmax (最大の失火判定値)をマップ等により算出する。
尚、ベース失火判定値Vth0 と上限ガード値Vthmax は、それぞれ、予め決められた一定の値に設定するようにしても良い。また、上限ガード値Vthmax については、エンジン運転状態から推定される点火プラグ27の帯電電荷量に応じてマップ等により算出するようにしても良い。
この後、ステップ203に進み、失火判定値算出条件が成立しているか否かを判定する。例えば、イニシャル処理時や、失火検出が不要な運転条件であれば、失火判定値算出条件が不成立となり、ステップ204に進み、失火判定値Vth(j) をベース失火判定値Vth0 に設定する。
これに対して、現在のエンジン運転条件が失火検出が必要な運転条件であれば、失火判定値算出条件が成立して、ステップ205に進み、前記図4の失火検出ルーチンで検出した気筒毎の連続失火回数Nmf(j) をカウントする。この連続失火回数Nmf(j) は、着火検出時{失火検出フラグFmf(j) =0の時}に0にリセットされる。
この後、ステップ206に進み、気筒毎の連続失火回数Nmf(j) が例えば2回以上であるか否かを判定し、連続失火回数Nmf(j) が2回以上でない場合(つまり着火時又は失火回数が1回のみの場合)には、ステップ204に進み、失火判定値Vth(j) をベース失火判定値Vth0 に設定する。
一方、上記ステップ206で、気筒毎の連続失火回数Nmf(j) が2回以上であると判定されれば、ステップ207に進み、ベース失火判定値Vth0 に加算する増加補正量Δを、連続失火回数Nmf(j) 又は連続失火検出時間に応じてマップ等により算出する。尚、この増加補正量Δは、エンジン運転条件から推定される点火プラグ27の帯電電荷量に応じてエンジン運転条件毎にマップ等により設定しても良い。
この後、ステップ208に進み、ベース失火判定値Vth0 に増加補正量Δを加算することで、連続失火回数Nmf(j) 又は連続失火検出時間に応じて増加補正した失火判定値Vth(j) を求める。
そして、次のステップ209で、増加補正後の失火判定値Vth(j) を上限ガード値Vthmax と比較し、増加補正後の失火判定値Vth(j) が上限ガード値Vthmax を越えていれば、ステップ210に進み、今回の失火判定値Vth(j) を上限ガード値Vthmax とする(つまり上限ガード値Vthmax で失火判定値Vth(j) をガード処理する)。一方、上記ステップ209で、増加補正後の失火判定値Vth(j) が上限ガード値Vthmax 以下と判定されれば、増加補正後の失火判定値Vth(j) をそのまま今回の失火判定値Vth(j) とする。
以上説明した失火判定値Vth(j) の可変設定の一例を図3を用いて説明する。図3は、ある気筒について連続失火が発生した場合の失火判定値Vth(j) の設定例を示している。この例では、ある時刻t1 で1回目の失火が発生し、連続して2回目の失火が発生した時点t2 で、失火判定値Vth(j) がベース失火判定値Vth0 から所定量増加される。この後、連続失火検出回数が増加する毎にベース失火判定値Vth0 から所定量ずつ増加される。これにより、失火判定値Vth(j) が上限ガード値Vthmax に達した時点t3 で、失火判定値Vth(j) が上限ガード値Vthmax でガード処理される。この後は、連続失火検出回数が増加しても、失火判定値Vth(j) が上限ガード値Vthmax に維持される。その後、イオン電流ピーク値Ii が失火判定値Vth(j) を越えて着火が検出された時点t4 で、次のサイクルの点火時t5 から失火判定値Vth(j) をベース失火判定値Vth0 に復帰させる。
尚、図5の失火判定値設定ルーチンでは、ベース失火判定値Vth0 に加算する増加補正量Δを連続失火回数Nmf(j) 又は連続失火検出時間に応じて算出したが、失火検出毎に前回の失火判定値Vth(j) に加算する失火1回当たりの増加補正量δを算出して、失火検出毎に失火判定値Vth(j) を増加補正量δずつ増加補正するようにしても良い。この場合、増加補正量δは、エンジン運転条件から推定される点火プラグ27の帯電電荷量に応じてエンジン運転条件毎にマップ等により算出しても良いし、予め決められた一定値に設定しても良い。
また、図5の失火判定値設定ルーチンでは、増加補正量Δをベース失火判定値Vth0 に加算する加算量としたが、ベース失火判定値Vth0 又は前回の失火判定値Vth(j) に乗算する増加倍率を増加補正量としても良い。
また、図5の失火判定値設定ルーチンでは、連続失火回数が2回以上の場合に失火判定値Vth(j) をベース失火判定値Vth0 から増加させるようにしたが、失火判定値Vth(j) を増加補正する連続失火回数は2回以上に限定されず、それ以上の回数であっても良い。また、単発的に失火が発生する場合でも、失火を1回検出する毎に、その都度、失火判定値Vth(j) を増加補正するようにしても良い。
また、図5の失火判定値設定ルーチンでは、連続失火から着火に復帰した時に、直ちに失火判定値Vth(j) をベース失火判定値Vth0 に復帰させるようにしたが、連続失火から着火に復帰した時に、その後の着火検出回数に応じて失火判定値Vth(j) を徐々に減少補正して、緩やかにベース失火判定値Vth0 に復帰させるようにしても良い。
以上説明した失火判定値Vth(j) の可変設定は、各気筒毎に行われるため、各気筒毎に燃焼状態が異なって、燃焼イオンによる点火プラグ27の帯電電荷の中和作用の発生度合ひいては帯電電荷によるノイズレベルが各気筒毎に異なるのに対応して、各気筒毎に失火判定値Vth(j) を帯電電荷によるノイズレベルに合わせて可変設定することができ、エンジンの全ての気筒で帯電電荷によるノイズを燃焼イオンとして誤検出することを防止できて、失火検出精度を向上させることができる。
しかも、本実施例では、失火が連続して検出される気筒の失火判定値Vth(j) を連続失火検出回数又は連続失火検出時間に応じて所定の上限ガード値Vthmax 以下の範囲で増加補正するようにしたので、各気筒毎に失火判定値Vth(j) を帯電電荷によるノイズレベルの増加に合わせて精度良く増加補正できると共に、失火判定値Vth(j) の過補正を防止することができる。
本発明の一実施例における点火制御系とイオン電流検出回路の構成を示す回路図である。 点火信号、筒内圧力、燃焼イオン検出区間、正常燃焼時の検出電流波形、ノイズ発生時の検出電流波形との関係を説明するタイムチャートである。 ある気筒について連続失火が発生した場合の失火判定値Vth(j) の設定例を示すタイムチャートである。 失火検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 失火判定値設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
21…点火コイル、22…一次コイル、23…バッテリ、24…イグナイタ、25…パワートランジスタ、26…二次コイル、27…点火プラグ、31…イオン電流検出抵抗、33…反転増幅回路、34…エンジン制御回路(気筒別失火判定値設定手段)、35…イオン電流検出回路(イオン電流検出手段)、36…中心電極、37…接地電極

Claims (2)

  1. 内燃機関の燃焼室内で混合気の燃焼に伴って発生するイオン電流を点火プラグの電極を介して検出するイオン電流検出手段を備え、前記イオン電流検出手段のイオン電流検出値を失火判定値と比較して失火の有無を判定する内燃機関の失火検出装置において、
    内燃機関の各気筒毎に失火検出時と着火検出時とで前記失火判定値を可変設定する気筒別失火判定値設定手段を備え
    前記気筒別失火判定値設定手段は、いずれかの気筒で失火を検出したときに当該失火気筒の前記失火判定値を増加補正する手段と、失火検出により前記失火判定値が増加補正された気筒について着火を検出したときに当該失火判定値を減少補正し又は失火検出前の失火判定値に復帰させる手段とを有することを特徴とする内燃機関の失火検出装置。
  2. 前記気筒別失火判定値設定手段は、失火が連続して検出される気筒の失火判定値を連続失火検出回数又は連続失火検出時間に応じて所定の上限ガード値以下の範囲で増加補正することを特徴とする請求項に記載の内燃機関の失火検出装置。
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