JP2007270335A - コランダム積層体の製造方法、および、コランダム積層体 - Google Patents

コランダム積層体の製造方法、および、コランダム積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体を容易に製造できる方法を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に酸化アルミニウム膜を形成する酸化アルミニウム膜形成工程と、上記酸化アルミニウム膜形成工程により、上記基材上に形成された酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、上記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶からなるコランダム層とする結晶化工程と、を有することを特徴とする、コランダム積層体の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、ソフト溶液プロセスを用い、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体の製造方法に関するものである。
近年、天然に存在するような、結晶独自の立体形状を有する単結晶が、その未知なる特
性から各分野で求められている。なかでも従来ルビーやサファイアに代表される宝飾品を構成するものとして広く知られるコランダム結晶は、その優れた硬度および装飾性等から種々の応用展開が期待されており、例えば、基材上にコランダム結晶を付与することにより、基材表面の硬質化や、基材の装飾性向上等、コランダム結晶を基材の表面改質手段として用いる方法が期待されている。
コランダム結晶の製造方法としては、種々の方法が知られているが、代表的なものとしては、(1)酸素および水素炎中にコランダム結晶の原料粉末を落下させながら結晶粒を成長させる火炎溶融法(ベルヌーイ法)、(2)コランダム結晶の原料粉末を適当なフラックスに混合して坩堝で溶融し、溶液を徐冷しながら結晶を析出・成長させる、または溶液を坩堝の中で温度勾配を付けながら結晶を析出・成長させる、あるいはフラックスを蒸発させながら結晶を析出・成長させるフラックス法(例えば、非特許文献1または非特許文献2)、(3)コランダム結晶の原料粉末を坩堝で溶融し、融液から結晶を引き上げるチョクラルスキー法(例えば、特許文献1または特許文献2)、(4)コランダム結晶の原料粉末を成形した後、水素ガス雰囲気中、高温で長時間加熱して焼結する方法(例えば、特許文献3)を挙げることができる。
しかしながら、例えば、上記(3)のチョクラルスキー法では、種結晶を核として基材上にコランダム結晶を成長させること可能であるが、基材上にコランダム結晶を成長させることは困難である。
また、上記(1)の火炎溶融法、および上記(4)の成形後焼結する方法においても、基材上にコランダム結晶を成長させることは困難である。
一方、(2)のフラックス法では、坩堝の壁面にコランダム結晶が偶発的に成長する場合が想定できるものの、所望の部分に均一に形成することは不可能であるという問題があった。
このようなことから、上記コランダム結晶の利点を幅広く応用するため基材上にコランダム結晶を容易に形成できる方法が望まれていた。
特開平7−277893号公報 特開平6−199597号公報 特開平7−187760号公報 Elwell D., Man-made gemstones, Ellis Horwood Ltd., Chichester (1979) Elwell D., Scheel H. J., Crystal growth from high-temperature solutions, Academic Press, London (1975)
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体を容易に製造できる方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱された基材に接触させることにより、上記基材上に酸化アルミニウム膜を形成する酸化アルミニウム膜形成工程と、
上記酸化アルミニウム膜形成工程により、上記基材上に形成された酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、上記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶からなるコランダム層とする結晶化工程と、を有することを特徴とする、コランダム積層体の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記酸化アルミニウム膜形成工程により、基材上に形成された酸化アルミニウム膜を、上記結晶化工程によりコランダム結晶化することにより、基材上に直接コランダム結晶を形成することができるため、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体を容易に製造することができる。
また、本発明は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、コランダム結晶化温度以上に加熱された基材と接触させることにより、上記基材上にコランダム結晶からなるコランダム層を形成することを特徴とする、コランダム積層体の製造方法を提供する。
本発明によれば、金属酸化物膜成膜性を有する上記アルミニウム含有化合物を、コランダム結晶化温度以上に加熱された基材に接触させることにより、上記アルミニウム含有化合物から上記基材上に直接コランダム結晶を形成することができるため、基材上にコランダム結晶からなるコランダム積層体が形成されたコランダム積層体を容易に製造することができる。
上記発明においては、上記アルミニウム含有化合物がアルミニウム有機錯体であることが好ましい。アルミニウム有機錯体は金属酸化物膜成膜性に優れることから、上記発明により、均質なコランダム層が形成されたコランダム積層体を製造することができるからである。
また上記発明においては、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液が、上記コランダム結晶を着色する着色用金属化合物を含有することが好ましく、さらには、上記着色用金属化合物が、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を有するものであることが好ましい。これにより、上記発明において製造されるコランダム積層体の意匠性を向上することができる。
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、上記コランダム結晶が柱状構造を有することを特徴とするコランダム積層体を提供する。
本発明によれば、上記コランダム結晶が柱状構造を有するため、装飾性に優れたコランダム積層体を得ることができる。
また、本発明は基材と、上記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、上記コランダム層の厚みが10nm〜20μmの範囲内であることを特徴とするコランダム積層体を提供する。
本発明によれば、上記コランダム層の厚みが上記範囲内であることにより、例えば、コランダム層を付与することにより、基材の特性が損なわれることなく、基材の表面硬度のみが改質されたコランダム積層体を得ることができる。
上記発明においては上記コランダム結晶が柱状構造を有することが好ましい。上記コランダム結晶が柱状構造を有することにより、装飾性に優れたコランダム積層体を得ることができるからである。
また上記発明においては、上記コランダム結晶が、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することが好ましい。このような金属元素を含むことにより、上記コランダム結晶を着色させることができるため、上記発明のコランダム積層体の意匠性を向上することができるからである。
本発明は、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体を容易に製造できるという効果を奏する。
本発明はコランダム積層体の製造方法、および、コランダム積層体に関するものである。以下、本発明のコランダム積層体の製造方法、および、コランダム積層体について詳細に説明する。
A.コランダム積層体の製造方法
まず、本発明のコランダム積層体の製造方法について説明する。本発明のコランダム積層体の製造方法は、その工程により2態様に分けることができる。したがって、以下、各態様に分けて、本発明のコランダム積層体の製造方法について説明する。
A−1.第1態様のコランダム積層体の製造方法
本発明における第1態様のコランダム積層体について説明する。第1態様のコランダム積層体の製造方法は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱された基材に接触させることにより、上記基材上に酸化アルミニウム膜を形成する酸化アルミニウム膜形成工程と、
上記酸化アルミニウム膜形成工程により、上記基材上に形成された酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、上記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶からなるコランダム層とする結晶化工程と、を有することを特徴とするものである。
このような第1態様のコランダム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本態様のコランダム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図1に例示するように本態様のコランダム積層体の製造方法は、スプレー装置1により、アルミニウム含有化合物が溶解した酸化アルミニウム膜形成用溶液2を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液2と、酸化アルミニウム膜形成温度以上まで加熱された基材3とを接触させることにより(図1(a))、上記基材3上に酸化アルミニウム膜4を形成する酸化アルミニウム膜形成工程と(図1(b))、上記酸化アルミニウム膜形成工程により形成された酸化アルミニウム膜4をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、コランダム結晶からなるコランダム層5とする結晶化工程と(図1(c))、を有するものである。このような例において製造されるコランダム積層体10は、基材3上にコランダム層5が積層された構成を有するものとなる。
コランダム結晶は、その優れた硬度および装飾性等から種々の応用展開が期待されており、例えば、基材上にコランダム結晶を付与することにより、基材表面の硬質化や、基材の装飾性向上等、コランダム結晶を基材の表面改質手段として用いる方法が期待されているが、従来用いられてきたコランダム結晶の形成方法では、基材上にコランダム結晶を形成することが困難であるという問題があった。
本態様のコランダム積層体の製造方法によれば、上記酸化アルミニウム膜形成工程により基材上に形成された酸化アルミニウム膜を、上記結晶化工程によりコランダム結晶化することにより、基材上に直接コランダム結晶を形成することができるため、基材上にコランダム結晶からなるコランダム層が形成されたコランダム積層体を容易に製造することができる。
本態様のコランダム積層体の製造方法は、酸化アルミニウム膜形成工程と、結晶化工程とを有するものである。以下、このような本態様のコランダム積層体の製造方法の各構成について詳細に説明する。
1.酸化アルミニウム膜形成工程
まず、本態様における酸化アルミニウム膜形成工程について説明する。本態様における酸化アルミニウム膜形成工程は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱された基材に接触させることにより、上記基材上に酸化アルミニウム膜を形成する工程である。
(1)酸化アルミニウム膜形成用溶液
本工程に用いられる酸化アルミニウム膜形成用溶液について説明する。本工程に用いられる酸化アルミニウム膜形成用溶液は、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解されたものであり、少なくとも上記アルミニウム含有化合物と、これを溶解する溶媒とを含むものである。なかでも、本工程においては上記酸化アルミニウム膜形成用溶液が、少なくとも酸化剤または還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記酸化アルミニウム膜形成用溶液が少なくとも酸化剤または還元剤の少なくとも一方を含有することにより、より低い温度で酸化アルミニウム膜を形成することができるからである。また、基材の加熱温度を低下させることができることから、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液が、基材に到達する前に酸化され酸化アルミニウム微粒子となることを防止でき、透明性等の高い酸化アルミニウム膜を形成することができるからである。
以下、本工程に用いられる酸化アルミニウム膜形成用溶液の各構成について説明する。
i.アルミニウム含有化合物
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液に用いられるアルミニウム含有化合物について説明する。上記アルミニウム含有化合物は、後述する酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱された基材と接触することにより、酸化アルミニウム膜を形成するものである。
本工程に用いられるアルミニウム含有化合物としては、金属酸化物膜成膜性を有するものであれば特に限定されるものではない。ここで、上記「金属酸化物膜成膜性」とは、酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱された基材と接触することにより、上記基材上に酸化アルミニウム膜を形成することができる性質を指すものである。
ここで、本発明において、「金属酸化物膜成膜性」を有するアルミニウム含有化合物とは、以下に示す試験において所定の基準を満たす酸化アルミニウム膜を与えるアルミニウム含有化合物をいう。すなわち、対象となる1種類のアルミニウム含有化合物、および、溶媒からなる酸化アルミニウム膜形成用溶液を用意し、この酸化アルミニウム膜形成用溶液0.1mol/Lを超音波ネプライザー等を用いて粒径0.5μm〜20μm程度の液滴とし、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱した基材と1時間接触させることにより、基材上に酸化アルミニウム膜を形成する。
その後、得られた酸化アルミニウム膜を常温まで冷却し、1cm程度の酸化アルミニウム膜の領域を圧力0.2Pa程度でウエス等を用いて拭う試験を行う。
その結果、剥離を生じない強度を有する酸化アルミニウム膜を与えるアルミニウム含有化合物を、本発明における「金属酸化物膜成膜性」を有するアルミニウム含有化合物とする。したがって、例えば、得られる酸化アルミニウム膜が粉体である場合等は、ウエス等で拭った際に容易に剥離するため、「金属酸化物膜成膜性」を有するアルミニウム含有化合物には該当しない。
なお、上記基材としては、実際に酸化アルミニウム膜を形成する際に用いられるものを使用するものとする。
また、上記「酸化アルミニウム膜形成温度」とは、本工程に用いられるアルミニウム含有化合物に含まれるアルミニウムと酸素とが結合し、基材上に酸化アルミニウム膜を形成することが可能な温度をいい、アルミニウム含有化合物の種類や溶媒等の酸化アルミニウム膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。このような「酸化アルミニウム膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望のアルミニウム含有化合物を含有する酸化アルミニウム膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、酸化アルミニウム膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本態様における「酸化アルミニウム膜形成温度」とすることができる。この際、酸化アルミニウム膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
本工程に用いられるアルミニウム含有化合物は、上記「金属酸化物膜成膜性」を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなアルミニウム含有化合物としては、アルミニウム塩およびアルミニウム錯体を例示することができる。
ここで、上記「アルミニウム錯体」とは、アルミニウムイオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中にアルミニウム−炭素結合を有する、いわゆる有機アルミニウム化合物を含むものである。
上記アルミニウム塩としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。なかでも、本工程においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記アルミニウム錯体としては、アルミニウムイオンに無機物が配位したアルミニウム無機錯体、アルミニウムイオンに有機物が配位したアルミニウム有機錯体、および、分子中にアルミニウム−炭素結合を有する有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
本工程においては、上記アルミニウム無機錯体、アルミニウム有機錯体、および、有機アルミニウム錯体のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでもアルミニウム有機錯体を用いることが好ましい。アルミニウム有機錯体は金属酸化物膜成膜性に優れることから、本態様のコランダム積層体の製造方法により、より均質なコランダム層が形成されたコランダム積層体を製造することができるからである。
本工程に用いられる上記アルミニウム有機錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウム−n-ブトキシド、アルミニウム−iso-プロポキシド、アルミニウムメトキシド、塩化ジエチルアルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ステアリン酸アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、乳酸アルミニウムを挙げることができるが、なかでもアルミニウムアセチルアセトナートを用いることが好ましい。
また、本工程に用いられるアルミニウム含有化合物は、1種類のみであっても良く、または、2種類以上を混合して用いても良い。
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液におけるアルミニウム含有化合物の濃度としては、アルミニウム含有化合物の種類等に応じて任意調整すれば良い。例えば、アルミニウム含有化合物がアルミニウム塩の場合は、通常、0.001mol/L〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましい。
一方、アルミニウム含有化合物がアルミニウム錯体である場合は、通常、0.001mol/L〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、酸化アルミニウム膜成膜に時間がかかり、工業的に好適でない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の酸化アルミニウム膜を得ることができない可能性があるからである。
ii.溶媒
本工程に用いられる溶媒は、上述したアルミニウム含有化合物を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではない。このような溶媒としては、アルミニウム含有化合物がアルミニウム塩の場合、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
また、アルミニウム含有化合物がアルミニウム錯体の場合、例えば、水、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
また、本工程においては、上記溶媒を組み合わせて使用しても良く、例えば、水への溶解性は低いが有機溶媒への溶解性は高いアルミニウム含有化合物と、有機溶媒への溶解性は低いが水への溶解性が高い還元剤とを使用する場合は、水と有機溶媒とを混合することにより両者を溶解させ、均一な酸化アルミニウム膜形成用溶液とすることができる。
iii.酸化剤
本工程に用いられる酸化剤は、上述したアルミニウム含有化合物が溶解してなるアルミニウムイオンの酸化を促進する働きを有するものである。アルミニウムイオンの価数を変化させることにより、酸化アルミニウム膜を形成しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で酸化アルミニウム膜を得ることができる。
このような酸化剤としては、上述した溶媒に溶解し、アルミニウムイオンの酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられることができるが、なかでも本工程においては過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液における酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常、0.001mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜0.1mol/Lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、酸化剤を含有させることによる基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
iv.還元剤
本工程に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、酸化アルミニウム膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。酸化アルミニウム膜形成用溶液のpHが上昇することで酸化アルミニウム膜を形成しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができる。なかでも本工程においてはボラン系錯体を使用することが好ましい。
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液における還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜0.1mol/Lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、還元剤を添加することによる基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
また、本工程においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても良い。このように使用した場合でも、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、基材加熱温度を低下させることができる組合せであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等を挙げることができる。なかでも本工程においては、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
v.着色用金属化合物
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液には、着色用金属化合物を含有させても良い。本工程に用いられる上記着色用金属化合物は、本工程により形成された酸化アルミニウム膜を後述する結晶化工程によりコランダム結晶からなるコランダム層とした際に、上記コランダム結晶を着色させるものである。上記酸化アルミニウム膜形成用溶液にこのような着色用金属化合物が含まれることにより、本態様において製造されるコランダム積層体の意匠性を向上することができるという利点を有するため、本態様により製造されるコランダム積層体の用途等により、必要に応じてこのような着色用金属化合物を用いることが好ましい。
本工程に用いられる上記着色用金属化合物としては、上記コランダム結晶にドーピングされることにより、上記コランダム結晶を着色することが可能な金属元素を含むものであれば特に限定されない。このような金属元素としては、特に限定されるものではないが、通常、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つを用いることが好ましい。
このような着色用金属化合物としては、例えば、上記金属元素を含む金属塩や、上記金属元素を含む有機金属錯体を挙げることができる。
上記金属塩としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。なかでも本工程においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。
また、上記有機金属錯体としては、例えば、マグネシウムジエトキシド、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。なかでも本工程においては、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、および、クロム(III)アセチルアセトナートをより好ましく用いることができる。
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液中における上記着色用金属化合物の含有量としては、着色用金属化合物の種類等に応じて、上記コランダム結晶を所望の程度の着色できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本工程においては、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液中に含有されるアルミニウム元素に対して、0.1mol%〜20mol%の範囲内であることが好ましく、さらには0.1mol%〜10mol%の範囲内であることが好ましく、特に0.1mol%〜5mol%の範囲内であることが好ましい。
vi.添加剤
また、本工程に用いられる酸化アルミニウム膜形成用溶液は、セラミックス微粒子、および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子が上記酸化アルミニウム膜形成用溶液に含有されることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように酸化アルミニウム膜が形成され、コランダム結晶膜の屈折率を調整することができる等の利点を有する。
なお、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
このようなセラミックス微粒子は、上記目的を達成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液と基材表面との界面に作用するものであり、酸化アルミニウム膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な酸化アルミニウム膜を得ることができる。また、上記界面活性剤の使用量は、使用するアルミニウム含有化合物や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような界面活性剤は、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
(2)基材
次に、本工程に用いられる基材について説明する。本工程に用いられる基材は、本工程において上記酸化アルミニウム膜形成用溶液と接触されることにより、酸化アルミニウム膜が形成されるものである。
本工程に用いられる基材としては、後述するコランダム結晶化温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような基材としては、可撓性を有するフレキシブル材であっても良く、または、可撓性を有さないリジッド材であっても良い。
また、本工程に用いられる基材を構成する材料としては、例えば、石英ガラス、SUS、金属板、セラミック基板、シリコンウェハー等を挙げることができる。なかでも本工程においては、シリコンウェハー、金属板、セラミック基板を使用することが好ましい。これらの材料は汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
また、本工程に用いられる基材の形態は特に限定されるものではなく、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものであっても良い。なかでも本工程においては、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。
(3)スプレー装置
次に、本工程に用いられるスプレー装置について説明する。本工程に用いられるスプレー装置は、少なくとも上述した酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化する機能を有するものである。
本工程に用いられるスプレー装置としては、上述した酸化アルミニウム膜形成用溶液を所望の大きさの液滴からなる霧状とすることができるスプレー方式を備える装置であれば特に限定されない。このようなスプレー方式としては、例えば、エアースプレー方式、エアーレススプレー方式、または回転微粒子化スプレー方式、超音波霧化方式、静電霧化方式等を例示することができる。
また、本工程に用いられるスプレー装置のノズル径としては、所望の酸化アルミニウム膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、なかでも50μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、特に100μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
(4)接触方法
本工程においては、酸化アルミニウム膜形成温度以上に加温された基材に、スプレー装置により霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を接触させることにより、酸化アルミニウム膜を形成する。以下、本工程における基材と、酸化アルミニウム膜形成用溶液との接触方法について説明する。
本工程における上記接触方法としては、上述したスプレー装置により霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液と、酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱された基材とを接触させることができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては例えば、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材に噴霧する方法と、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法とを挙げることができる。
上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材に噴霧する方法において、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液の液滴の径としては、基材との接触時に基材の温度を低下させない範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、0.01μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、さらには0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、液滴が基材に接触する際に、基材温度が低下せず、均一な酸化アルミニウム膜を得ることができるからである。
また、上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材に噴霧する方法において、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液の吐出量としても、酸化アルミニウム膜形成用溶液が基材と接触する際に、基材の温度を低下させない範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、0.0001L/min〜0.1L/minの範囲内であることが好ましく、さらには0.0001L/min〜0.05L/minの範囲内であることが好ましく、特に0.001L/min〜0.01L/minの範囲内であることが好ましい。上記範囲を超える場合は、基材温度の低下を引き起こす可能性があり、上記範囲に満たない場合は、酸化アルミニウム膜の成膜に時間がかかり、コスト上好ましくないからである。
上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材に噴霧する方法としては、基材上に所望の金属酸化物膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、固定された基材上に噴霧する方法と、移動する基材上に噴霧する方法とを例示することができる。
上記固定された基材上に噴霧する方法としては、例えば、図2に示すように、固定された基材3を酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱し、この基材3に対して、スプレー装置1を用いて霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液2を噴霧する方法等が挙げられる。
一方、上記移動する基材上に噴霧する方法としては、例えば、図3に示すように、基材3を、酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱したローラー6〜8を用いて連続的に移動させ、この基材3に対して、スプレー装置3を用いて霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液2を噴霧する方法等が挙げられる。この方法は、連続的に酸化アルミニウム膜を形成することができるという利点を有する。
また、上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材に噴霧する方法において、用いられる基材の形状としては、スプレー装置による噴霧ができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、板状、筒状の基材を用いることができる。上記筒状の基材を用いた場合、スプレー装置が筒の内部に入り込むことができれば、筒の内面に酸化アルミニウム膜を形成することができる。
一方、上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法において、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液の液滴の径としては、基材の温度を低下させない範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては0.01μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な酸化アルミニウム膜を得ることができるからである。
上記霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図4に示すように、スプレー装置1を用いて酸化アルミニウム膜形成用溶液2をミスト状にした空間に、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱された基材3を通過させる方法等を挙げることができる。
本工程においては、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液と加熱された基材とを接触させるのであるが、その際、基材は上述した「酸化アルミニウム膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「酸化アルミニウム膜形成温度」は、アルミニウム含有化合物の種類や溶媒等の酸化アルミニウム膜形成用溶液の組成によって異なるものであるが、酸化アルミニウム膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加えない場合は、通常、400℃〜1000℃の範囲内であることが好ましく、なかでも、450℃〜700℃の範囲内であることが好ましい。
一方、酸化アルミニウム膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加える場合は、通常、150℃〜400℃の範囲内であることが好ましく、なかでも、200℃〜400℃の範囲内であることが好ましい。
また、本工程において、基材を加熱する手順としては、基材を酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱することができる手順であれば特に限定されるものではない。このような手順としては、例えば、霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液と基材とを接触させながら基材を加熱する方法、または霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液と基材とを接触させる前に、予め基材を加熱する方法等を挙げることができ、なかでも本工程においては前者の方法が好ましい。前者の方法によれば、基材の温度を安定して保持することができるからである。
本工程に用いられる基材の加熱方法としては、基材を酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、基材を酸化アルミニウム膜が形成される成膜面側から加熱する表面加熱方法、基材を上記成膜面とは反対面側から加熱する裏面加熱方法、および、基材を上記成膜面とその反対面との両面から加熱する両面加熱方法を挙げることができる。本工程においては上記表面加熱方法、裏面加熱方法、および、両面加熱方法のいずれであっても好適に用いることができる。
ここで、上記表面加熱方法は、基材の厚みが大きい場合や、基材の形態が平面ではなく、凹凸形状を有するものであったり、メッシュ状等の形態を有するものである場合であっても、基材の成膜面を容易に酸化アルミニウム膜形成温度以上に加熱できるという利点を有する。
また、上記裏面加熱方法は、実施が容易であるという利点を有する。
さらに、上記両側加熱方法は、基材の両側の熱膨張率の差を低減することができるため、加熱時の基材の変形を防止することができるという利点を有する。
上記基材を加熱する加熱方式としては、対流加熱方式、伝導加熱方式、および、輻射加熱方式を挙げることができるが、本工程においてはいずれの加熱方式であっても好適に用いることができる。
ここで、上記対流加熱方式とは、空気やガスまたは液体等を媒体とし、これらの媒体を加熱して基材に接触させることにより基材を加熱する方式である。
また、上記伝導加熱方式とは、媒体を介さずに熱源を直接基材に接触させ、上記熱源からの熱伝導により基材を加熱する方式である。
さらに、上記輻射加熱方式とは、分子振動を誘起する電磁波を基材に照射することにより加熱する方式である。
本工程に用いられる基材の加熱装置としては、例えば、ホットプレート、赤外線ヒーター等を例示することができる。また、上記赤外線ヒーターとしては、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等を例示することができる。
(5)その他
本工程においては、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を基材と接触させる際に、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液の組成を経時変化させても良い。例えば、上記酸化アルミニウム膜形成溶液中の着色用金属化合物の種類を経時で変化させることにより、厚み方向や、面方向で着色が連続的に変化したコランダム結晶を形成できる酸化アルミニウム膜を得ることができる。
上記酸化アルミニウム膜形成用溶液の組成を経時変化させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、単一のスプレー装置を用い、当該スプレー装置から吐出される酸化アルミニウム膜形成用溶液の組成を経時変化させる方法や、互いに異なる組成の酸化アルミニウム膜形成用溶液を吐出する複数のスプレー装置を用い、経時で各スプレー装置の吐出量を変化させることにより経時変化させる方法等を例示することができる。
また、本工程においては、成膜された酸化アルミニウム膜の洗浄を行っても良い。上記酸化アルミニウム膜の洗浄は、酸化アルミニウム膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、酸化アルミニウム膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
2.結晶化工程
次に、本態様のコランダム積層体の製造方法における結晶化工程について説明する。本工程は、上記酸化アルミニウム膜形成工程により、上記基材上に形成された酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、上記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶からなるコランダム層とする工程である。すなわち、上記酸化アルミニウム膜形成工程により基材上に形成される酸化アルミニウム膜は、通常、アモルファス状態となっているため、本工程は、これをコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、酸化アルミニウム膜をアモルファス状態からコランダム結晶状態とするものである。
本工程における上記酸化アルミニウム膜の加熱温度としては、上記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化できる温度以上であれば特に限定されない。なかでも本工程においては、上記加熱温度が、900℃〜1400℃の範囲内であることが好ましく、さらには1000℃〜1200℃の範囲内であることが好ましく、特に1050℃〜1150℃の範囲内であることが好ましい。
本工程において、上記酸化アルミニウム膜を加熱する方法としては、上記酸化アルミニウム膜を上記コランダム結晶化温度以上に均一に加熱することができる方法であれば特に限定されない。このような加熱方法としては、例えば、焼成炉、カーボンヒーター、ハロゲンヒーターを用いる方法等を挙げることができる。
3.コランダム積層体
次に、本態様のコランダム積層体の製造方法により製造されるコランダム積層体について説明する。本態様のコランダム積層体の製造方法により製造されるコランダム積層体は、基材と、上記基材上に形成されたコランダム結晶からなるコランダム層とを有するものである。
本態様のコランダム積層体の製造方法により製造されるコランダム積層体の具体的態様については、後述する「B.コランダム積層体」においてその一例を説明するため、ここでの説明は省略する。
A−2:第2態様のコランダム積層体の製造方法
次に、本発明の第2態様のコランダム積層体の製造方法について説明する。第2態様のコランダム積層体の製造方法は、スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、コランダム結晶化温度以上に加熱された基材と接触させることにより、上記基材上にコランダム結晶からなるコランダム層を形成することを特徴とするものである。
このような第2態様のコランダム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図5は本態様のコランダム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図5に例示するように本態様のコランダム積層体の製造方法は、スプレー装置1により、アルミニウム含有化合物が溶解した酸化アルミニウム膜形成用溶液2を霧化し、霧化された上記酸化アルミニウム膜形成用溶液2と、コランダム結晶化温度以上まで加熱された基材3とを接触させることにより(図5(a))、上記基材3上にコランダム結晶からなるコランダム層5が形成されたコランダム積層体10を製造するものである(図5(b))。
本態様のコランダム積層体の製造方法によれば、金属酸化物膜成膜性を有する上記アルミニウム含有化合物を、コランダム結晶化温度以上に加熱された基材に接触させることにより、上記アルミニウム含有化合物から上記基材上に直接コランダム結晶を形成することができるため、基材上にコランダム結晶からなるコランダム積層体が形成されたコランダム積層体を容易に製造することができる。
本態様のコランダム積層体の製造方法は、スプレー装置により霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液と、基材とを接触させる際の基材の加熱温度をコランダム結晶化温度以上とすること以外は、上記「A−1:第1態様のコランダム積層体の製造方法」の「1.酸化アルミニウム膜形成工程」の項において、基材上に酸化アルミニウム膜を製造する方法として説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様において、スプレー装置により霧化された酸化アルミニウム膜形成用溶液と、基材とを接触させる際の基材の加熱温度としては、上記酸化アルミニウム膜形成用溶液から基材上に直接コランダム結晶を形成できる温度の範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本態様においては、上記加熱温度が、800℃〜1300℃の範囲内であることが好ましく、さらには900℃〜1200℃の範囲内であることが好ましく、特に1000℃〜1100℃の範囲内であることが好ましい。
なお、本態様において上記基材を加熱する方法としては、基材をコランダム結晶化温度以上に均一に加熱できる方法であれば特に限定されない。このような方法の具体例としては、上記「A−1:第1態様のコランダム積層体の製造方法」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様のコランダム積層体の製造方法により製造されるコランダム積層体は、基材と、上記基材上に形成されたコランダム結晶からなるコランダム層とを有するものである。
本態様のコランダム積層体の製造方法により製造されるコランダム積層体の具体的態様については、後述する「B.コランダム積層体」においてその一例を説明するため、ここでの説明は省略する。
B.コランダム積層体
次に、本発明のコランダム積層体について説明する。本発明のコランダム積層体は、基材と、上記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層とを有するものである。
このような本発明のコランダム積層体について図を参照しながら説明する。図6は、本発明のコランダム積層体の一例を示す概略断面図である。図6に例示するように、本発明のコランダム積層体10は、基材3と、上記基材3上に形成されたコランダム層5を有するものである。上記のような例において、コランダム層5はコランダム結晶から構成されるものである。
本発明のコランダム積層体は、上記コランダム層の形態により、2態様に大別することができる。したがって、以下、各態様に分けて、本発明のコランダム積層体について説明する。
B−1:第1態様のコランダム積層体
まず、本発明の第1態様のコランダム積層体について説明する。第1態様のコランダム積層体は、基材と、上記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、上記コランダム結晶が柱状構造を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、上記コランダム結晶が柱状構造を有することから、上記コランダム層に入射した光を乱反射させることができるため、装飾性に優れたコランダム積層体を得ることができる。
本態様のコランダム積層体は、基材と、コランダム層とを有するものである。以下、本態様のコランダム層の各構成について詳細に説明する。なお、本態様に用いられる基材については、上記「A.コランダム積層体の製造方法」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
1.コランダム層
本態様におけるコランダム層について説明する。本態様におけるコランダム層は、柱状構造を有するコランダム結晶からなるものである。
ここで、本態様において「コランダム結晶が柱状構造を有する」とは、以下の場合をいう。すなわち、本態様におけるコランダム層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4500、日立製作所製)または透過型電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立製作所製)で測定し、断面図を得る。得られた断面図より、クラックに沿ってコランダム結晶の輪郭を特定する。この際、輪郭内にはクラックが存在しないように特定する。次に、特定されたコランダム結晶の領域のうち、結晶径が最長となる長さを測定し、その長さが、コランダム層の厚みに対して70%以上であるものが少なくとも1つ存在する場合は、本態様において、「コランダム結晶が柱状構造を有する」ものであるとする。
上記柱状構造を有するコランダム結晶からなるコランダム層の例を図7に示す。図7(a)は上記コランダム層の断面を示すSEM画像であり、図7(b)は上記コランダム層の表面を示すSEM画像である。
上記柱状構造を有するコランダム結晶の形状としては、コランダム結晶の積層方向の結晶径が、コランダム結晶の積層方向に直交する方向の結晶径よりも長いことが好ましく、なかでも、金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、金属酸化物結晶の積層方向に直交する方向の結晶径で除した値が2以上、特に5以上であることが好ましい。積層方向に長い金属酸化物結晶を用いることにより、コランダム層の電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性を向上させることができるからである。
なお、本態様において、「積層方向」とは、コランダム層および基材により形成される界面の鉛直方向をいうものである。また、本態様において、「コランダム結晶の積層方向の結晶径を、コランダム結晶の積層方向に直交する方向の結晶径で除した値」は、以下の方法により算出される。すなわち、コランダム層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4500、日立製作所製)または透過型電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立製作所製)で測定し、断面図を得る。得られた断面図より、クラックに沿ってコランダム結晶の輪郭を特定する。この際、輪郭内にはクラックが存在しないように特定する。次に、特定されたコランダム結晶の領域のうち、積層方向の結晶径が最長となる長さ(積層方向結晶径)を測定し、その長さが、コランダム層の厚みに対して70%以上であるものを20個特定する。次に、上記20個それぞれのコランダム結晶において、積層方向と直交する方向の結晶径が最長となる長さ(直交方向結晶径)を測定する。次に、積層方向結晶径を直交方向結晶径で除し、20個の平均をとることにより、上記の値を算出する。
本態様におけるコランダム層の厚みとしては、本態様のコランダム積層体の用途等に応じて任意に調整することができるが、なかでも10nm〜20μmの範囲内が好ましく、さらには100nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に500nm〜5μmの範囲内が好ましい。
なお、上記コランダム層の厚みは、上記走査型電子顕微鏡または上記透過型電子顕微鏡で測定することにより求めることができる。
上記コランダム結晶は、金属元素がドーピングされることにより着色されていても良い。このような金属元素を含むことにより、上記コランダム結晶を着色させることができるため、上記発明のコランダム積層体の意匠性を向上することができるからである。上記金属元素としては、上記コランダム結晶を所望の色に着色できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様においては、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素が用いられることが好ましい。
また、本態様においては上記金属元素が1種類のみドーピングされていても良く、または、2種類以上がドーピングされていてもよい。
上記金属元素がドーピングされた態様としては、コランダム層中に均一にドーピングされた態様であっても良く、コランダム層中に不均一にドーピングされた態様であっても良い。上記不均一にドーピングされた態様としては、コランダム層の厚み方向において濃度勾配を有する態様であっても良く、また、コランダム層の面方向において濃度勾配を有する態様であっても良い。さらには、2種類以上の金属元素を用い、コランダム層の厚み方向において金属元素の種類が連続的に変化する態様であっても良く、さらには、コランダム層の面方向において金属元素の種類が連続的に変化する態様であっても良い。
本態様におけるコランダム層が基材上に形成された態様としては、基材の全面に形成された態様であっても良く、または、基材上に部分的に形成された態様であっても良い。
2.その他
本態様のコランダム積層体は、例えば、シリコン・オン・サファイア(SOS)基板として好適に用いることができる。
また、本態様のコランダム積層体は、例えば、上記「A.コランダム積層体の製造方法」の項において説明した方法により製造することができる。
B−2:第2態様のコランダム積層体
次に、本発明の第2態様のコランダム積層体について説明する。本態様のコランダム積層体は、基材と、上記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、上記コランダム層の厚みが10nm〜20μmの範囲内であることを特徴とするものである。
本態様によれば、上記コランダム層の厚みが上記範囲内であることにより、例えば、コランダム層を付与することにより、基材の特性が損なわれることなく、基材の表面硬度のみが改質されたコランダム積層体を得ることができる。
本態様のコランダム積層体は、基材と、コランダム層とを有するものである。以下、本態様のコランダム層の各構成について詳細に説明する。なお、本態様に用いられる基材については、上記「A.コランダム層の製造方法」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
1.コランダム層
本態様におけるコランダム層について説明する。本態様におけるコランダム層は、コランダム結晶からなるものであり、厚みが10nm〜20μmの範囲内であることを特徴とするものである。
図8は、本態様に用いられるコランダム層の一例を示すSEM写真である。図8に示すように本態様に用いられるコランダム層は、基板上に厚みが10nm〜20μmの範囲内であることを特徴とするものである。
本態様のコランダム積層体は、コランダム層の厚みが上記範囲内であることにより、例えば、コランダム層を付与することにより、基材の特性が損なわれることなく、基材の表面硬度のみが改質されたコランダム積層体を得ることができるものである。
本態様に用いられるコランダム層の厚みとしては、上記範囲内であれば特に限定されるものではないが、100nm〜10μmの範囲内であることが好ましく、特に500nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
なお、コランダム層の厚みは、例えば上記「B−1:第1態様のコランダム層」の項において説明した方法により測定することができる。
本態様におけるコランダム層はコランダム結晶からなるものであるが、なかでも柱状構造を有するコランダム結晶からなるものであることが好ましい。上記コランダム結晶が柱状構造を有することから、上記コランダム層に入射した光を乱反射させることができるため、装飾性に優れたコランダム積層体を得ることができるからである。
ここで、上記「柱状構造」および、上記コランダム結晶が柱状構造を有することを確認する方法については、上記「B−1:第1態様のコランダム積層体」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、上記柱状構造を有するコランダム結晶の形状としては、コランダム結晶の積層方向の結晶径が、コランダム結晶の積層方向に直交する方向の結晶径よりも長いことが好ましく、なかでも、金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、金属酸化物結晶の積層方向に直交する方向の結晶径で除した値が2以上、特に5以上であることが好ましい。積層方向に長い金属酸化物結晶を用いることにより、コランダム層の電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性を向上させることができるからである。
なお、このようなコランダム結晶の形状を評価する方法は、上記「B−1:第1態様のコランダム積層体」の項に記載した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
さらに、上記コランダム結晶は、金属元素がドーピングされることにより着色されていても良い。これにより、上記コランダム結晶を着色させることができるため、本態様のコランダム積層体の意匠性を向上することができる利点がある。
上記金属元素およびドーピングの態様については、上記「B−1:第1態様のコランダム積層体」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.その他
本態様のコランダム積層体の用途は、上記「B−1:第1態様のコランダム積層体」の項において説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本態様のコランダム積層体は、例えば、上記「A.コランダム積層体の製造方法」の項において説明した方法により製造することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
1.実施例1
シリコンウェハ板(50mm×50mm、厚さ0.7mm)を基材とした。まず、アルミニウムアセチルアセトナート0.1mol/L、コバルトアセチルアセトナート0.0005mol/Lとなるように溶液(溶媒はエタノール15%、トルエン85%)を1L調整し、酸化アルミニウム膜形成用溶液を得た。
上記シリコンウェハ基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を1000mL、超音波ネプライザ(オムロン社製)を用いて噴霧し、基材上に酸化アルミニウム膜を形成した。
酸化アルミニウム膜を形成したシリコンウェハを1000℃で1時間で焼成することによって、青い発色をしたコランダム結晶からなるコランダム層を有するコランダム積層体を得た。
上記方法により得られたコランダム積層体のコランダム層は、XRDによりコランダム結晶からなることがわかった。また、XPSにより組成分析をおこなったところ、アルミナ膜中にコバルトが0.5%存在していることがわかった。
2.実施例2
本実施例においては、シリコンウェハ板(50mm×50mm、厚さ0.7mm)を基材とした。まず、アルミニウムアセチルアセトナート0.1mol/L、コバルトアセチルアセトナート0.0005mol/Lとなるように溶液(溶媒はエタノール15%、トルエン85%)を1L調整し、酸化アルミニウム膜形成用溶液を得た。
上記シリコンウェハ基材をカーボンヒーター(東芝セラミック社製)で1000℃に加熱し、この基材に上記酸化アルミニウム膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)を用いて1000mL噴霧し、青い発色をしたコランダム結晶からなるコランダム層を有するコランダム積層体を得た。
上記方法により得られたコランダム積層体のコランダム層は、XRDによりコランダム結晶からなることがわかった。また、XPSにより組成分析をおこなったところ、アルミナ膜中にコバルトが0.5%存在していることがわかった。
本発明のコランダム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の製造方法の他の例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の製造方法の他の例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の製造方法の他の例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の製造方法の他の例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の一例を示す概略図である。 本発明のコランダム積層体の一例を示すSEM写真である。 本発明のコランダム積層体の他の例を示すSEM写真である。
符号の説明
1 … スプレー装置
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … 基材
4 … 酸化アルミニウム膜
5 … コランダム層
6〜8 … ローラー
10 … コランダム積層体

Claims (9)

  1. スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された前記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、酸化アルミニウム膜形成温度以上の温度まで加熱された基材に接触させることにより、前記基材上に酸化アルミニウム膜を形成する酸化アルミニウム膜形成工程と、
    前記酸化アルミニウム膜形成工程により、前記基材上に形成された酸化アルミニウム膜をコランダム結晶化温度以上に加熱することにより、前記酸化アルミニウム膜をコランダム結晶からなるコランダム層とする結晶化工程と、を有することを特徴とする、コランダム積層体の製造方法。
  2. スプレー装置により、金属酸化物膜成膜性を有するアルミニウム含有化合物が溶解された酸化アルミニウム膜形成用溶液を霧化し、霧化された前記酸化アルミニウム膜形成用溶液を、コランダム結晶化温度以上に加熱された基材と接触させることにより、前記基材上にコランダム結晶からなるコランダム層を形成することを特徴とする、コランダム積層体の製造方法。
  3. 前記アルミニウム含有化合物がアルミニウム有機錯体であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコランダム積層体の製造方法。
  4. 前記酸化アルミニウム膜形成用溶液が、前記コランダム結晶を着色する着色用金属化合物を含有することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のコランダム積層体の製造方法。
  5. 前記着色用金属化合物が、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を有するものであることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のコランダム積層体の製造方法。
  6. 基材と、前記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、
    前記コランダム結晶が柱状構造を有することを特徴とする、コランダム積層体。
  7. 基材と、前記基材上に形成され、コランダム結晶からなるコランダム層と、を有するコランダム積層体であって、
    前記コランダム層の厚みが10nm〜20μmの範囲内であることを特徴とする、コランダム積層体。
  8. 前記コランダム結晶が柱状構造を有することを特徴とする、請求項7に記載のコランダム積層体。
  9. 前記コランダム結晶が、Mg、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Cr、Ta、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することを特徴とする、請求項6から請求項8までのいずれかの請求項に記載のコランダム積層体。
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