JP2007269687A - 有機結晶性粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】実質的に有機溶媒が不要であり、しかも、幅広い有機化合物にわたって有機結晶性粒子を得ることができる有機結晶性粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】有機結晶性粒子の製造方法は、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1の有機化合物と、該第1の有機化合物とは異なる第2の有機化合物と、を存在させると共に、少なくとも該第1の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させて該第1の有機化合物と該第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子を形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機結晶性粒子の製造方法に関する。
有機結晶性粒子は、その粒径や形状を変えることにより様々な色や光沢を発現するため、化粧品をはじめ、シャンプーやリンス、石鹸等の日用品、さらに塗料やインクの原料としても使用されている。
ここで、有機結晶性粒子を化粧品等に配合するには、衛生上、有機溶剤等ができるだけ低減されていることが求められる。よって、有機溶剤等を使用しない方法で製造されることが好ましい。
そのような有機溶剤等を使用せずに有機結晶性粒子を製造する方法としては、有機化合物を超臨界二酸化炭素に溶解させて結晶化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記特許文献1では、具体的には、超臨界二酸化炭素を使用して4−イソプロピル−5−メチルフェノールの晶析を行う方法が記載されている。
特開平6−247887号公報
しかしながら、前記特許文献1の方法では有機化合物を超臨界二酸化炭素に溶解させるため、処理できる有機化合物の種類や処理量が有機化合物の溶解度により制限される。実際、前記特許文献1でも得られた晶析量は0.01(結晶g/溶解槽mL)未満である。
本発明は、実質的に有機溶媒が不要であり、しかも、幅広い有機化合物にわたって有機結晶性粒子を得ることができる有機結晶性粒子の製造方法を提供することを課題とする。
上記目的を達成する本発明は、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1の有機化合物と、該第1の有機化合物とは異なる第2の有機化合物と、を存在させると共に、少なくとも該第1の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させる該第1の有機化合物と該第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子の製造方法である。
本発明によれば、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下において第1の有機化合物を溶融させて有機結晶性粒子を製造するので、実質的に有機溶媒が不要であり、しかも、幅広い有機化合物にわたって有機結晶性粒子を得ることができる。また、第2の有機化合物の存在によって有機結晶性粒子を多様に設計することができる。
以下、実施形態について説明する。
本実施形態の有機結晶性粒子の製造方法は、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1の有機化合物と、その第1の有機化合物とは異なる第2の有機化合物と、を存在させると共に、少なくとも第1の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させて第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子を形成するものである。
第2の有機化合物としては、例えば、第1の有機化合物と相溶性を有すると共に極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物や亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する高分子化合物が挙げられる。以下、前者を実施形態1及び後者を実施形態2としてそれぞれ説明する。
(実施形態1)
実施形態1の有機結晶性粒子の製造方法は、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である第1の有機化合物と、第1の有機化合物と相溶性を有すると共に極性基を有し且つ低分子量である第2の有機化合物とを存在させ、そして、第1及び第2の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させて第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子を形成するものである。
この有機結晶性粒子の製造方法は、耐圧容器に第1及び第2の有機化合物を充填した後、耐圧容器内を亜臨界流体又は超臨界流体の存在下として有機結晶性粒子を製造するバッチ方式、或いは、第1及び第2の有機化合物を混合流通させながら、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下を通過させて連続的に有機結晶性粒子を製造する連続方式のいずれで行ってもよい。バッチ方式の場合に使用される耐圧容器としては、密閉系であり、使用する温度及び圧力に耐えることができ、減圧操作を行う排気機構を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス製等の公知の容器を挙げることができる。また、内容物の攪拌のための攪拌機構を備えたものが好ましい。
(1)この有機結晶性粒子の製造方法では、亜臨界流体又は超臨界流体を用いる。
亜臨界流体とは、亜臨界状態の流体をいう。亜臨界状態とは、温度が流体の臨界温度以上であるか、又は、圧力が流体の臨界圧力以上である状態をいう。超臨界流体とは、超臨界状態の流体をいう。超臨界状態とは、温度が流体の臨界温度以上であり且つ圧力が流体の臨界圧力以上である状態をいう。例えば、流体が二酸化炭素である場合、亜臨界状態とは、温度が31.1℃以上であり且つ圧力が7.38MPa未満である状態、又は、温度が31.1℃未満で且つ圧力が7.38MPa以上である状態をいい、超臨界状態とは、温度が31.1℃以上であり且つ圧力が7.38MPa以上である状態をいう。なお、亜臨界流体又は超臨界流体を生じる温度及び圧力の範囲は、使用される流体により異なるため特に限定されない。上記のように二酸化炭素の場合、亜臨界流体又は超臨界流体を生じる条件設定については、二酸化炭素の相図(温度−圧力曲線)を参照して行えばよい(例えば、「熱計算ハンドブック」(日本能率協会)第Db14頁の表22参照)。
亜臨界流体又は超臨界流体を生じる物質としては、例えば、二酸化炭素、水、窒素、メタン、エタン、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらのうち、臨界条件が穏やかである、不燃性である、毒性がない、安価であるという観点から、二酸化炭素が好ましい。
亜臨界流体又は超臨界流体を生じさせる方法としては、例えば、バッチ方式の場合、第1及び第2の有機化合物を充填した耐圧容器を所定温度に昇温するのに続いて、耐圧容器に流体を高圧ポンプ等を用いて注入して圧力を上昇させる方法、第1及び第2の有機化合物を充填した耐圧容器に流体を高圧ポンプ等を用いて注入して圧力を上昇させるのに続いて、耐圧容器を所定温度に昇温する方法、第1及び第2の有機化合物を充填した耐圧容器に流体を高圧ポンプ等を用いて注入して圧力を上昇させると同時に、耐圧容器を所定温度に昇温する方法等が挙げられる。
(2)この有機結晶性粒子の製造方法では、各々、相互に相溶性を有すると共に極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1及び第2の有機化合物を用いる。
ここで、極性基とは、有極性液体、すなわち分子が電気双極子をもっている液体に対して親和性の高い置換基をいう。極性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、−OH基、−COOH基、−COO−基、−CO−基、−O−基、NH2基、−NH−基、−CON基等が挙げられる。
低分子量とは、高分子未満、すなわち重量平均分子量が10000未満であることをいう。第1及び第2の有機化合物は、重量平均分子量が50〜5000であることが好ましく、100〜1000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定することができる。
結晶性とは、結晶構造をとることをいう。
第1及び第2の有機化合物としては、例えば、1−オクタデカノール等のアルコール類、ジステアリルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールジステアレート等のエステル類等の両親媒性の化合物、スフィンゴリピッドE(薬事名:N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)等のスフィンゴ脂質等が挙げられる。これらの原料として使用する際の形態としては、例えば、塊状、粒状、溶融した液状等が挙げられ、これらのうち粒状が好ましい。
第1及び第2の有機化合物のそれぞれの亜臨界流体又は超臨界流体に対する量は、亜臨界流体又は超臨界流体への溶解度より高ければよいが、凝集を抑制する観点から、その上限を溶解度の10000倍以下とすることが好ましく、1000倍以下とすることがより好ましく、100倍以下とすることがさらに好ましい。
第1の有機化合物と第2の有機化合物との混合比率は、特に限定されるものではなく、所望の物性を有する有機結晶性粒子を生成させるための任意の比率で混合することができる。但し、主成分となる有機化合物と主成分を改質する添加剤となる有機化合物の区別が明確である場合、主成分総量に対する添加剤総量のモル比率は、添加剤総量/主成分総量=0.01〜1.00とすることが好ましく、0.05〜0.80とすることがより好ましく、0.1〜0.50とすることがさらに好ましい。
なお、亜臨界流体又は超臨界流体における第1及び第2有機化合物の分散性を向上させる観点からは、分散助剤を予め添加しておいてもよい。分散助剤としては、例えば、高分子分散剤等が挙げられる。これらの分散助剤を単独で又は2種以上を混合して添加すればよい。分散助剤の添加量は、第1及び第2の有機化合物100質量部に対して50質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることがさらに好ましい。分散助剤の種類や量の設定により分散滴径を制御することが可能である。
また、その他に任意成分として、凝集抑制などの目的を考えた場合、例えば、タルク、マイカ、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、微粒子シリカ、多孔質シリカなどの無機粒子、無機微粒子等を添加してもよい。
(3)この有機結晶性粒子の製造方法では、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下で、第1及び第2の有機化合物を溶融させる。従って、第1及び第2の有機化合物は、亜臨界流体又は超臨界流体に完全に溶解するのではなく、一部が亜臨界流体又は超臨界流体に溶解した状態で亜臨界流体又は超臨界流体の存在下で存在する。
溶融とは、亜臨界流体又は超臨界流体の温度が、亜臨界流体又は超臨界流体の圧力における第1及び第2の有機化合物のいずれの融点以上である場合に生じる状態をいう。なお、第1及び第2の有機化合物の溶融は、例えば、観察窓付き高圧セルを用いた溶融性試験により目視で確認することができる。
溶融している第1及び第2の有機化合物のそれぞれのうち亜臨界流体又は超臨界流体に溶解している質量に対する溶融している質量の比(溶融量/溶解量)は、溶融物からの晶析を優先させる観点から、0.1以上となるようにすることが好ましく、0.1〜100000となるようにすることがより好ましく、10〜1000となるようにすることがさらに好ましい。
凝集抑制及び粒径制御の観点からは、溶融している第1及び第2の有機化合物を分散させることが好ましい。分散とは、亜臨界流体又は超臨界流体で、溶融した第1及び第2の有機化合物が粒子化して散在している状態をいう。なお、第1及び第2の有機化合物の分散は、例えば、観察窓付き高圧セルを用いた分散性試験により目視で確認することができる。
第1及び第2の有機化合物を分散させる方法としては、予め分散助剤を添加しておく方法の他、バッチ方式の場合には、攪拌等の機械的分散力を適用する方法等が挙げられる。攪拌により分散をさせる場合には、攪拌の回転数、攪拌翼の形状等を変更することにより分散滴径を制御することが可能である。分散させる時期は、温度及び圧力の設定直後でも、また、調整中でもいずれでもよい。
(4)この有機結晶性粒子の製造方法では、溶融した第1及び第2の有機化合物を冷却及び/又は減圧することにより固化させて有機結晶性粒子を形成する。
冷却は、冷却後の温度が第1及び第2有機化合物の大気圧における融点未満となるように行う。冷却方法及び冷却時間は特に限定されない。なお、バッチ方式の場合、冷却は、耐圧容器の内容物を攪拌しながら行うことが好ましい。攪拌を行うことで、得られる有機結晶性粒子の大きさを小さくでき、均一な粒度分布の粒子を製造しやすくなる。攪拌羽根の形状、回転数等は、使用する耐圧容器等に応じて適宜決定することが可能である。
減圧は、流体を排出することにより行う。なお、バッチ方式の場合、減圧も冷却同様に耐圧容器内の内容物を攪拌しながら行うことが好ましい。また、減圧は、一段階で行っても、多段階で行っても、後述するように流体と共に有機結晶性粒子を排出するように行ってもよい。さらに、また、減圧は、冷却と同時に行ってもよい。
バッチ方式において有機結晶性粒子の回収する方法としては、例えば、耐圧容器内を大気圧まで減圧した後に耐圧容器を開放し、耐圧容器内より有機結晶性粒子を回収する方法、耐圧容器からの流体の排出速度を調整し、流体の排出と共に有機結晶性粒子を耐圧容器外に排出させて回収する方法等が挙げられる。有機結晶性粒子を耐圧容器外で回収する方法では、凝集を低減することができると共に、耐圧容器外へ排出する際の耐圧容器内の温度及び圧力の条件によって粒子径を制御することができる。また、耐圧容器外への流体及び有機結晶性粒子の排出と同時に、別の流体を耐圧容器に導入することにより、連続して内容物を排出させることができる。
連続方式において有機結晶性粒子の回収する方法としては、例えば、流体と共に有機結晶性粒子を排出させて回収する方法等が挙げられる。流体と共に有機結晶性粒子を排出させる方法では、凝集を低減することができると共に、排出する際の温度及び圧力の条件によって粒子径を制御することができる。
なお、回収した有機結晶性粒子は、さらに解砕してもよい。
回収される有機結晶性粒子の形態としては、例えば、板状が挙げられる。板状の有機結晶性粒子は、その厚さに対する短径の比(短径/厚さ)が2以上のものであり、当該比が3以上のものが好ましく、5以上のものがより好ましく、10以上のものがさらに好ましく、上限が通常1000程度である。
板状の有機板状粒子の短径は、0.1〜2000μmであることが好ましく、0.1〜400μmであることがより好ましく、0.1〜80μmであることがさらに好ましい。一方、長径は、0.1〜3000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.1〜100μmであることがさらに好ましい。これらの短径及び長径は、例えば、有機板状粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて測定することができる。このとき、短径とは、SEM写真における有機板状粒子の像を2本の平行線で挟んで、その平行線の間隔が最小となるときの当該平行線間の間隔をいい、一方、長径とは、上記のように短径を定義したときの平行線に直交する方向の2本の平行線で有機板状粒子の像を挟んだときの当該平行線間の間隔をいう。
以上の有機結晶性粒子の製造方法によれば、化粧品をはじめ、シャンプーやリンス、石鹸等の日用品、更に塗料やインクの原料として好適に用いられる、滑り性、感触等に優れる乾燥した有機結晶性粒子を効率的に製造することができる。
また、第1の有機化合物の他にそれと相溶性のある第2の有機化合物を用いているので、得られる有機結晶性粒子の粒子径や粒子表面平滑性などの形態や融点などの物性を自在に制御することができる。このような形態や物性を制御することにより、有機結晶性粒子を化粧品などに適用した場合、粉体の感触や肌への付着性、肌内部への浸透性などの向上を期待することができる。
以上のようにして製造した有機結晶性粒子は、例えば、化粧品をはじめ、シャンプーやリンス、石鹸等の日用品、さらに塗料やインクの原料として好適に用いられる。
(実施形態2)
本実施形態の有機結晶性粒子の製造方法は、亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である第1の有機化合物と、亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する第2の有機化合物である高分子化合物と、を存在させ、そして、第1の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させて第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子を形成するものである。
この有機結晶性粒子の製造方法では、極性基を有し且つ低分子量である第1の有機化合物と、亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する第2の有機化合物である高分子化合物とを用いる。
亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する高分子化合物としては、例えば、フッ素系高分子化合物、シリコーン系高分子化合物等が挙げられる。これらは、一般に分子間力が低く、亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解しやすい性質を有する。
フッ素系高分子化合物としては、例えば、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル−長鎖アルキル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
シリコーン系高分子化合物としては、例えば、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、シリコーン変性アクリル樹脂等が挙げられる。
第1の有機化合物を主成分として、主成分総量に対する高分子化合物総量の質量比率は、特に限定するものではないが、高分子化合物総量/主成分総量=0.001〜1.00とすることが好ましく、0.005〜0.80とすることがより好ましく、0.01〜0.50とすることがさらに好ましい。
第1の有機化合物の構成を含めその他の構成は実施形態1と同一である。
以上の有機結晶性粒子の製造方法によれば、化粧品をはじめ、シャンプーやリンス、石鹸等の日用品、更に塗料やインクの原料として好適に用いられる、滑り性、感触等に優れる乾燥した有機結晶性粒子を効率的に製造することができる。
また、第1の有機化合物の他に高分子化合物を用いているので、得られる有機結晶性粒子の親水性や疎水性などの表面物性を制御することができる。このように表面物性を制御することにより、耐圧容器の内壁や攪拌軸、攪拌翼など製造装置への有機結晶性粒子の付着抑制を期待することができる。
(その他の実施形態)
上記実施形態1では、各々、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1及び第2の有機化合物を用いる構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物を3種以上用いる構成であってもよい。
上記実施形態2では、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1の有機化合物と亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する高分子化合物とを用いる構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物をさらに1種又は複数種用いる構成であっても、また、亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する高分子化合物さらに1種又は複数種用いる構成であってもよい。
(有機結晶性粒子製造装置)
図1は、実験に用いた有機結晶性粒子製造装置10を示す。
この有機結晶性粒子製造装置10は、耐圧容器11を備えている。この耐圧容器11には、容器本体11a内部に攪拌翼12が設けられており、その攪拌翼12に結合した攪拌軸13が蓋部材11bを貫通して外部まで延びて駆動用のモータMに結合している。また、この耐圧容器11には、内部圧計測用の圧力計Pと内部加熱用のヒータ14と内部温度検知用の温度センサ15とが設けられている。ヒータ14及び温度センサ15のそれぞれはコントローラ16に接続されている。さらに、この耐圧容器11には、二酸化炭素ボンベ17から延びる流体供給管18が接続されている。流体供給管18には、二酸化炭素ボンベ17側から順に、フィルタ19、供給ポンプ20、逆止弁21及び第1バルブV1が介設されている。供給ポンプ20には、冷却ユニット22が接続されている。また、この耐圧容器11には、第2バルブV2が介設された排出管23が接続されている。
(有機結晶性粒子)
<実施例1>
容積500mLの耐圧容器11に、スフィンゴリピッドE(花王社製、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)50gとステアリルアルコール(花王社製 商品名:カルコール8098)3.75gとを充填して密封した。なお、スフィンゴリピッドE及びステアリルアルコールのいずれも、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物である。
次に、第1バルブV1を開いて耐圧容器11に二酸化炭素ボンベ17より二酸化炭素を供給した後、第1バルブV1を閉じてヒータ14で加熱することにより耐圧容器11内を85℃及び25MPaに調整し、その状態で120分保持した。なお、充填したスフィンゴリピッドEの量は、この条件におけるスフィンゴリピッドEの溶解度の約170倍に相当する。
続いて、耐圧容器11内を50℃まで冷却した。冷却後の圧力は16MPaであった。
その後、第2バルブV2を開いて排出管23から二酸化炭素を徐々に排出し、耐圧容器11内の圧力を16MPaから大気圧まで減圧した。この減圧工程の間、耐圧容器11内の温度を45℃に維持した。
そして、大気圧まで減圧したのち、耐圧容器11を解放し、耐圧容器11内より有機結晶性粒子を回収した。
得られた有機結晶性粒子を実施例1とした。
<実施例2>
容積1000mLの耐圧容器11に、スフィンゴリピッドE(花王社製、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)100gとステアリン酸(和光純薬工業製)7.88gとを充填して密封した以外、実施例1と同様にして得た有機結晶性粒子を実施例2とした。なお、ステアリン酸は、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物である。
<実施例3>
容積1000mLの耐圧容器11に、スフィンゴリピッドE(花王社製、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)100gとコレステロール(和光純薬工業製)10.75gとを充填して密封した以外、実施例1と同様にして得た有機結晶性粒子を実施例3とした。なお、コレステロールは、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物である。
<実施例4>
容積1000mLの耐圧容器11に、スフィンゴリピッドE(花王社製、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)100gとポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト- ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体10gとを充填して密封した以外、実施例1と同様にして得た有機結晶性粒子を実施例4とした。なお、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト- ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体は、亜臨界二酸化炭素にも超臨界二酸化炭素にも分散乃至溶解するシリコーン系高分子化合物である。
<比較例1>
容積1000mLの耐圧容器11に、スフィンゴリピッドE(花王社製、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)100gを充填して密封した以外、実施例1と同様にして得た有機結晶性粒子を比較例1とした。
(試験評価方法)
<粒子性状>
実施例1〜4及び比較例1のそれぞれについて粒子性状を調べた。
<粒子形態>
実施例1〜4のそれぞれについてSEMで観察した。
<融点>
実施例1〜3のそれぞれについて示差走査熱量計(リガク製、DSC8230)を用いて熱吸収を測定した。
<粒子回収後の耐圧容器>
実施例4及び比較例1のそれぞれについて粒子回収後の耐圧容器11の状態を調べた。
(試験評価結果)
表1は、実施例1〜4及び比較例1の構成及びそれらの試験評価結果を示す。
<粒子性状>
実施例1〜4のいずれも乾燥しており、滑り性、感触に優れたものであった。
実施例4では凝集は見られなかったが、比較例1では凝集が見られた。
<粒子形態>
図2〜5は、実施例1〜4のSEM写真の視野中で最も大きい有機結晶性粒子を示す。なお、倍率は5000倍である。
これらによると、実施例1〜4のいずれも長径及び短径の板状粒子であることが分かる。
<融点>
図6〜8は、実施例1〜3のDSC曲線を示す。なお、図6〜8には、併せてスフィンゴリピッドEのDSC曲線も示している。
これらによると、表1にも示すように、スフィンゴリピッドEの他に極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物を添加した実施例1〜3のいずれの熱吸収のピーク温度、つまり、融点もスフィンゴリピッドE単独の有機結晶性粒子の融点よりも低いことが分かる。
<有機結晶性粒子回収後の耐圧容器>
図9及び10は、実施例4及び比較例1の粒子回収後の耐熱容器の内部を示す。
図9及び表1に示すように、スフィンゴリピッドEの他にシリコーン系高分子化合物を添加した実施例4では、耐圧容器11の内壁や攪拌翼12や攪拌軸13への有機結晶性粒子の付着が見られなかった。
一方、図10及び表1に示すように、スフィンゴリピッドE単独の比較例1では、耐圧容器11の内壁への凝集物の付着が見られた。
本発明は、化粧品をはじめ、シャンプーやリンス、石鹸等の日用品、さらに塗料やインクの原料として好適に用いられる有機結晶性粒子の製造方法について有用である。
有機結晶性粒子製造装置を示す構成図である。 実施例1のSEM写真である。 実施例2のSEM写真である。 実施例3のSEM写真である。 実施例4のSEM写真である。 実施例1のDSC曲線を示す図である。 実施例2のDSC曲線を示す図である。 実施例3のDSC曲線を示す図である。 実施例4の回収後の耐熱容器の内部の写真である。 比較例1の回収後の耐熱容器の内部の写真である。
符号の説明
10 有機結晶性粒子製造装置
11 耐圧容器
11a 容器本体
11b 蓋部材
12 攪拌翼
13 攪拌軸
14 ヒータ
15 温度センサ
16 コントローラ
17 二酸化炭素ボンベ
18 流体供給管
19 フィルタ
20 供給ポンプ
21 逆止弁
22 冷却ユニット
23 排出管
M モータ
V1 第1バルブ
V2 第2バルブ
P 圧力計

Claims (7)

  1. 亜臨界流体又は超臨界流体の存在下に、極性基を有し且つ低分子量である結晶性の第1の有機化合物と、該第1の有機化合物とは異なる第2の有機化合物と、を存在させると共に、少なくとも該第1の有機化合物を溶融させ、それを冷却及び/又は減圧することにより固化させる該第1の有機化合物と該第2の有機化合物とを含有する有機結晶性粒子の製造方法。
  2. 上記第2の有機化合物が上記第1の有機化合物と相溶性を有すると共に極性基を有し且つ低分子量である結晶性の有機化合物であり、
    上記亜臨界流体又は超臨界流体の存在下で、上記第1の有機化合物と共に上記第2の有機化合物をも溶融させる請求項1に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
  3. 上記第2の有機化合物が上記亜臨界流体又は超臨界流体に分散乃至溶解する高分子化合物である請求項1に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
  4. 上記第2の有機化合物である高分子化合物がフッ素系高分子化合物又はシリコーン系高分子化合物である請求項3に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
  5. 上記亜臨界流体又は超臨界流体が亜臨界二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である請求項1に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
  6. 上記第1の有機化合物の分子量が10000未満である請求項1に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
  7. 上記第1の有機化合物のうち上記亜臨界流体又は超臨界流体に溶解している質量に対する溶融している質量の比が0.1以上である請求項1に記載された有機結晶性粒子の製造方法。
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