JP2007266469A - 積層型圧電体とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外部電極がはく離したり接続不良を生じたりするのを、従来に比べて、さらに確実に防止することができる積層型圧電体と、前記積層型圧電体の製造方法とを提供する。
【解決手段】積層型圧電体1は、圧電体層2と、内部電極層3との積層体4の側面に形成した溝11、12内に、導電材料を充てんして、外部電極9、10を形成した。製造方法は、圧電体層2のもとになる原料粉末を含むスラリーからなるシートの片面に、導電ペーストを、内部電極層3の平面形状にパターン形成すると共に、シートを、溝11、12のもとになる凹部を有する平面形状に形成し、複数枚、積層して焼成することで積層体4を形成し、次いで、溝11、12内に導電ペーストを充てんして焼成することで外部電極9、10を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電体層と、内部電極層とが、複数層ずつ、交互に積層された積層体からなる積層型圧電体と、前記積層型圧電体の製造方法とに関するものである。
例えば、圧電アクチュエータ、超音波モータ、レゾネータ、圧電トランス、加速度センサ、超音波センサ、圧電ブザー、圧電スピーカ等の用途に、前記積層型圧電体が、広く利用されている。図11は、従来の、積層型圧電体1の一例を示す、一部切り欠き斜視図である。図12は、図11の積層型圧電体1のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層3の位置での、前記内部電極層3の面方向に沿う断面図である。図13は、図11の積層型圧電体1のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層3の位置での、前記内部電極層3の面方向に沿う断面図である。
図11〜図13を参照して、この例の積層型圧電体1は、平面形状が矩形状の圧電体層2と、同じく平面形状が矩形状の内部電極層3とを、複数層ずつ、交互に積層した四角柱状の積層体4と、前記積層体4の、複数層の内部電極層3を、電気的に、外部に接続するために、前記四角柱の外周を構成する4側面5〜8のうち、互いに背向する2側面5、7に、それぞれ、積層体4を構成する各層の積層方向、すなわち、四角柱の長さ方向の略全長に亘って形成された、一対の外部電極9、10とを備えている。
図12を参照して、前記積層体4のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層3は、それぞれ、四角柱の、図において左側の側面7に達すると共に、他の3側面5、6、8との間に間隔をあけて形成されており、前記側面7に形成された外部電極10と電気的に接続されていると共に、側面5に形成された外部電極9とは電気的に絶縁されている。
また、図13を参照して、前記積層体4のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層3は、それぞれ、四角柱の、図において右側の側面5に達すると共に、他の3側面6、7、8との間に間隔をあけて形成されており、前記側面5に形成された外部電極9と電気的に接続されていると共に、側面7に形成された外部電極10とは電気的に絶縁されている。
前記各部を備えた積層型圧電体1を、例えば、圧電アクチュエータとして使用する場合には、使用に先立って、積層体4を構成する各圧電体層2を分極処理する。分極処理の方法としては、例えば、外部電極9、10から、前記外部電極9、10と、電気的に、交互に接続された内部電極層3を介して、前記各圧電体層2に、直流電圧を、厚み方向に印加する方法等が挙げられる。
圧電体層2が分極処理された積層型圧電体1は、外部電極9、10から、内部電極層3を介して、各圧電体層2に、所定の波形を有する駆動電圧を印加すると、積層体4を、前記駆動電圧の波形に応じて、四角柱の長さ方向に伸縮させるように駆動される。すなわち、印加する電圧の極性が、圧電体層2の分極方向と一致する場合は、各圧電体層2が、厚み方向に伸長するため、積層体4が、四角柱の長さ方向に伸長し、分極方向と逆極性である場合は、各圧電体層2が、厚み方向に収縮するため、積層体4が、四角柱の長さ方向に収縮する。
また、電圧の印加を停止した状態では、積層体4は、前記伸長状態と収縮状態の中間の、伸長も収縮もしない静止状態を維持する。そのため、例えば、外部電極9、10間に、圧電体層2の分極方向と一致する極性の電圧の印加と、停止とを、交互に繰り返す波形を有する駆動電圧や、圧電体層2の分極方向と一致する極性の電圧の印加と、逆極性の電圧の印加とを、交互に繰り返す波形を有する駆動電圧を印加すると、積層型圧電体1が、積層体4を、四角柱の長さ方向に伸縮させるように駆動される。
前記積層型圧電体1としては、近年、圧電体層2のもとになる原料粉末を含むスラリーをシート状に成形し、前記シートの片面に、導電ペーストを、内部電極層3の平面形状にパターン形成すると共に、シートを、圧電体層2の平面形状に打ち抜いた後、打ち抜いたシートを、複数枚、積層して焼成する、同時焼成法によって積層体4を形成した、いわゆる同時焼成タイプのものが、普及しつつある。
前記同時焼成タイプの積層型圧電体1は、あらかじめ、所定の平面形状を有する平板状に形成した圧電体層と、内部電極層とを、交互に積み重ねて積層体を形成する、いわゆるスタックタイプのものに比べて、駆動の低電圧化、小型化の点や、製造コストを低減する点で有利である。同時焼成タイプの積層型圧電体1において、外部電極9、10は、導電ペーストを、積層体4の、四角柱の2側面5、7に、それぞれ、前記外部電極9、10の形状にパターン形成した後、焼成して形成される。
ところが、近年の、電子機器類の小型化、低背化、軽量化に伴って、積層型圧電体についても、さらに小型で、しかも、変位量の大きいものが求められると共に、高電界、高圧力等の、より過酷な条件下で、長時間に亘って連続的に駆動できることが求められつつあることから、同時焼成タイプの積層型圧電体1の構造についても、更なる改良をするために、種々、検討されている。
特に、従来の、同時焼成タイプの積層型圧電体1においては、前記高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際に、外部電極9、10が、積層体4からはく離したり、はく離しないまでも、内部電極層3との間の接続抵抗が大きくなったりするという問題があり、その改善が求められている。
特許文献1には、外部電極9、10のもとになる導電ペースト中に、有機のバインダを含有させ、前記バインダを、導電ペーストの焼成時に、熱分解させて除去することで、前記外部電極9、10を、前記バインダが除去された跡が連続したボイドとなった、三次元網目状構造を有する多孔質導電体として、積層体4の伸縮に対する追従性を向上させることで、前記積層体4の伸縮によって、外部電極9、10に加わる応力を緩和して、積層型圧電体1の駆動時に、積層体4からはく離したり、内部電極層3との間で接続不良を生じたりするのを抑制することが記載されている。
また、特許文献2には、積層体4の、外部電極9、10を形成する側面5、7を、#6000より粗い砥石で研削して粗面化すると共に、外部電極9、10のもとになる導電ペーストとして、ガラス質を1%以上含有するものを使用し、さらに、導電ペーストを、前記ガラス質の軟化点より高く、かつ、導電ペーストが、厚み方向に10%以上、収縮する温度で焼成することが記載されている。
前記温度で焼成を行うと、導電ペーストの、焼き付け時の収縮による応力によって、積層体4の側面5、7の表層部に亀裂を生じさせると共に、前記亀裂内に、ガラス質を浸入させて、いわゆる、アンカー効果を生じさせることができるため、外部電極9、10が、積層体4からはく離したり、内部電極層3との間で接続不良を生じたりするのを抑制できると考えられている。
特開2005−217180号公報(請求項17、段落[0057]〜[0058]、段落[0077]〜[0080]) 特開2005−340540号公報(請求項1、6、段落[0047]、段落[0058]〜[0063]、図2(a)(b))
ところが、特許文献1、2に記載された構成でも、外部電極が、積層体からはく離したり、接続不良を生じたりするのを、確実に防止できない場合がある。例えば、従来の積層型圧電体では、積層体の四角柱の側面から突出させて、外部電極を形成しているため、前記外部電極が、外的な衝撃に弱く、衝撃を受けると、外部電極が破損して、積層体からはく離したり、接続不良を生じたりしやすいという問題がある。
本発明の目的は、外部電極がはく離したり接続不良を生じたりするのを、従来に比べて、さらに確実に防止することができる積層型圧電体と、前記積層型圧電体の製造方法とを提供することにある。
請求項1記載の発明は、圧電体層と、内部電極層とが、複数層ずつ、交互に積層された積層体と、前記積層体の、複数層の内部電極層を、電気的に、外部に接続するための外部電極とを備えた積層型圧電体であって、前記積層体の外周面に、内部電極層に達し、かつ、積層体を構成する各層の積層方向に伸びる溝が形成され、前記溝内に、内部電極層と接触させて、導電材料が充てんされて、溝の開口で露出した表面が、溝の両側の外周面と同一平面、または外周面より内方に位置する外部電極が構成されていることを特徴とする積層型圧電体である。
請求項1記載の発明においては、外部電極が、圧電体層と内部電極層との積層体の外周面に設けた溝内に、導電材料を充てんすることで、溝の開口で露出した表面が、溝の両側の外周面と同一平面、または外周面より内方に位置するように形成されているため、前記外部電極は、従来の、積層体の外周面(四角柱の側面等)から外方へ突出して形成される外部電極に比べて、外的な衝撃を受けにくい。
その上、前記外部電極は、溝を構成する複数面の内周面に接触して形成され、通常は平面である積層体の外周面に接触して形成される従来の外部電極に比べて、積層体に対する接触面積が大きいことから、外的な衝撃に強い。また、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際にも、従来の外部電極に比べて、はく離したり、接続不良を生じたりしにくい。そのため、請求項1記載の発明によれば、外的な衝撃を受けた際や、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際に、外部電極がはく離したり、接続不良を生じたりするのを、従来に比べて、さらに確実に防止することができる。
また、請求項1記載の発明によれば、先に説明したように、外部電極の表面が、積層体の、溝の外周面と同一平面、または外周面より内方に位置するように形成されているため、積層型圧電体の、全体の容積を、従来に比べて小さくすることができ、積層型圧電体の、さらなる小型化の要求に、十分に対応することもできる。
請求項2記載の発明は、溝の、積層体を構成する各層の、面方向の形状が、積層体の外周面側で開口幅が狭く、面方向の内方へ向けて、開口幅が徐々に広くなる略台形状に形成されている請求項1記載の積層型圧電体である。請求項2記載の発明によれば、溝の平面形状を、前記のように略台形状にすることで、前記溝の縁部を、外部電極の、溝からの抜け止めとして機能させることができるため、外的な衝撃を受けた際や、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際に、外部電極がはく離したり、接続不良を生じたりするのを、より一層、確実に防止することができる。
請求項3記載の発明は、外部電極の、溝の開口で露出した表面が、算術平均粗さRaが1μm以下の平滑面とされている請求項1記載の積層型圧電体である。請求項3記載の発明によれば、例えば、外部電極に駆動電圧を供給するためのリード線等を接合するための半田等に対する、外部電極の濡れ性を向上することができる。
請求項4記載の発明は、圧電体層のもとになる原料粉末を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを、シート状に成形する工程と、前記シートの片面に、内部電極層のもとになる導電ペーストを、前記内部電極層の平面形状にパターン形成する工程と、前記シートに、溝のもとになる凹部を形成する工程と、前記シートを、複数枚、積層して、積層体の前駆体を形成する工程と、前記前駆体を焼成して、圧電体層と、内部電極層とが、複数層ずつ、交互に積層されていると共に、外周面に溝を有する積層体を形成する工程と、前記積層体の溝に、外部電極のもとになる導電ペーストを充てんした後、焼成して、積層体の、複数層の内部電極層を、電気的に、外部に接続するための外部電極を形成する工程とを含むことを特徴とする積層型圧電体の製造方法である。
請求項4記載の発明によれば、前記本発明の積層型圧電体を、いわゆる同時焼成法によって、効率よく生産できる上、製造される積層型圧電体の、駆動のさらなる低電圧化や、より一層の小型化が可能となる。
本発明によれば、外部電極がはく離したり接続不良を生じたりするのを、従来に比べて、さらに確実に防止することができる積層型圧電体と、前記積層型圧電体の製造方法とを提供することができる。
図1は、本発明の積層型圧電体1の一例を示す、一部切り欠き斜視図である。図2は、図1の積層型圧電体1のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層3の位置での、前記内部電極層3の面方向に沿う断面図である。図3は、図1の積層型圧電体1のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層3の位置での、前記内部電極層3の面方向に沿う断面図である。図4は、図1の積層型圧電体1の、各層の積層方向の断面図である。
図1〜図4を参照して、この例の積層型圧電体1は、平面形状が矩形状の圧電体層2と、同じく平面形状が矩形状の内部電極層3とを、複数層ずつ、交互に積層した四角柱状の積層体4と、前記積層体4の、複数層の内部電極層3を、電気的に、外部に接続するために、前記四角柱の外周を構成する4側面5〜8のうち、互いに背向する2側面5、7に、積層体4を構成する各層の積層方向、すなわち、四角柱の長さ方向の略全長に亘って形成した溝11、12内に、導電材料を充てんすることで構成された、一対の外部電極9、10とを備えている。
図2を参照して、前記積層体4のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層3は、それぞれ、四角柱の、図において左側の側面7に達すると共に、他の2側面6、8、および側面5から内方に凹入した溝11との間に間隔をあけて形成されており、前記側面7から内方に凹入した溝12内に形成された外部電極10と電気的に接続されていると共に、溝11内に形成された外部電極9とは電気的に絶縁されている。
また、図3を参照して、前記積層体4のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層3は、それぞれ、四角柱の、図において右側の側面5に達すると共に、他の2側面6、8、および側面7から内方に凹入した溝12との間に間隔をあけて形成されており、前記側面5から内方に凹入した溝11内に形成された外部電極9と電気的に接続されていると共に、溝12内に形成された外部電極10とは電気的に絶縁されている。そのため、図4を参照して、積層体4を構成する内部電極層3は、積層順に、外部電極9、10と、電気的に、交互に接続されている。
図5は、図1の積層型圧電体1のうち、溝11、12と、前記溝11、12内に形成された外部電極9、10の、積層体4を構成する各層の、面方向の形状を示す拡大断面図である。図5を参照して、この例では、前記外部電極9、10の、溝11、12の開口で露出した表面が、積層体4の、前記溝11、12の両側の外周面である四角柱の側面5、7と同一平面に位置するように形成されている。そのため、外部電極9、10は、従来の、積層体4の外周面から外方へ突出して形成される外部電極に比べて、外的な衝撃を受けにくい。
その上、前記外部電極9、10は、溝11、12を構成する複数面(図では3面)の内周面に接触して形成され、通常は平面である積層体4の外周面に接触して形成される従来の外部電極に比べて、積層体4に対する接触面積が大きいことから、外的な衝撃に強い。また、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際にも、従来の外部電極に比べて、はく離したり、接続不良を生じたりしにくい。
しかも、この例では、溝11、12の、面方向の形状が、積層体4の外周面である四角柱の側面5、7で開口幅W1が狭く、かつ、最奥部で開口幅W2が広い上、前記側面5、7から最奥部へ向けて、開口幅が徐々に広くなると共に、奥行きD1が、幅方向の全域で等しい略台形状に形成されている。そのため、前記溝11、12の縁部を、外部電極9、10の、溝11、12からの抜け止めとして機能させて、外的な衝撃を受けた際や、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際に、前記外部電極9、10が、積層体4からはく離したり、内部電極層3との間で接続不良を生じたりするのを、より一層、確実に防止することができる。
図6は、溝11、12と外部電極9、10の、面方向の形状の変形例を示す拡大断面図である。図6を参照して、この例では、溝11、12の、面方向の形状が、奥行きD2が、幅方向の全域で等しく、かつ、積層体4の外周面である四角柱の側面5、7から最奥部まで、開口幅W3が等しい矩形状に形成されている点が、先の例と相違している。
この例では、溝11、12の縁部による、抜け止めの効果は得られないが、外部電極9、10の、溝11、12の開口で露出した表面が、積層体4の、前記溝11、12の両側の外周面である四角柱の側面5、7と同一平面に位置するように形成されていると共に、外部電極9、10が、溝11、12を構成する複数面(図では3面)の内周面に接触して形成されているため、従来の、積層体4の外周面から外方へ突出して形成される外部電極に比べて、外的な衝撃を受けた際や、高電界、高圧力等の過酷な条件下で、連続的に駆動させた際に、前記外部電極9、10が、積層体4からはく離したり、内部電極層3との間で接続不良を生じたりするのを防止する効果を得ることはできる。
なお、図示していないが、外部電極9、10の、溝11、12の開口で露出した表面は、積層体4の、前記溝11、12の両側の外周面である四角柱の側面5、7より内方に、一段、凹入させた位置に形成してもよい。外部電極9、10の、溝11、12の開口で露出した表面は、日本工業規格JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」において規定された、輪郭曲線としての粗さ曲線の算術平均粗さRaが1μm以下の平滑面とされているのが好ましい。
外部電極9、10の表面の、算術平均粗さRaが、前記範囲以内であれば、外部電極に駆動電圧を供給するためのリード線等を接合するための半田等に対する、外部電極の濡れ性を向上することができる。そのため、外部電極9、11を、リード線等と、より強固に接合して、積層型圧電体1の信頼性を向上することができる。
前記各部のうち、圧電体層2は、従来同様に、ペロブスカイト型のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、ニオブ酸系、チタン酸ビスマスナトリウム系、タングステンブロンズ型、ビスマス層状構造等の、種々の圧電材料によって形成することができる。個々の圧電体層2の厚みは20〜100μm、特に30〜70μmであるのが好ましい。圧電体層2の厚みが、前記範囲未満では、特に、積層体4を、同時焼成法によって形成する際に、内部電極層3のもとになる導電ペーストからの、金属の拡散によって、個々の圧電体層2の圧電特性が低下して、積層型圧電体1の全体として見たときの圧電歪み定数d33や、圧電出力定数g33が低下するおそれがある。
また、前記範囲を超える場合には、限られたサイズの中で、積層体4を構成することができる、圧電体層2の層数が少なくなるため、やはり、積層型圧電体1の全体として見たときの圧電歪み定数d33や、圧電出力定数g33が低下するおそれがある。これに対し、圧電体層2の厚みが、前記範囲内であれば、高感度で、低電圧駆動が可能である上、小型の積層型圧電体1を得ることができる。
内部電極層3は、耐酸化性に優れる上、電気抵抗の小さい銀を主体として形成されているのが好ましい。ただし銀は、特に、積層体4を、同時焼成法によって形成する際に、圧電体層2に拡散しやすく、拡散によって、先に説明したように、圧電体層2の圧電特性を低下させるおそれがあるため、前記拡散を防止して、圧電体層2に、本来の圧電特性を付与することを考慮すると、他の金属との合金の状態で用いるのが好ましい。
銀と合金を形成する他の金属としては、前記金属自体の、あるいは合金としての、化学的な安定性や、導電性等を考慮するとパラジウムが好ましい。また、銀とパラジウムの合金における、銀の割合は70重量%以上であるのが好ましい。前記範囲より銀の割合が少ない場合には、内部電極層3に、良好な導電性を付与できないおそれがある。
また、内部電極層3には、圧電体層2と同じ成分が含有されているのが好ましい。内部電極層3に、圧電体層2と同じ成分を含有させることで、焼成時の、圧電体層2の組成の変化を抑制すると共に、圧電体層2と、内部電極層3との密着力を高めて、前記圧電体層2と内部電極層3との間でのはく離のない、信頼性の高い積層型圧電体1を得ることができる。
外部電極9、10は、導電成分としての銀または銀を含む合金と、ガラス成分との混合物によって形成するのが好ましい。導電成分として、銀または銀を含む合金を用いることで、外部電極9、10のヤング率を低くして、積層体4の伸縮に対する追従性を向上させて、前記積層体4の伸縮によって、外部電極9、10に加わる応力を緩和することができる。また、ガラス成分を含有させることによって、積層体4と、外部電極9、10との密着力を向上させることもできる。そのため、外部電極9、10が、積層体4からはく離したり、内部電極層3との間で接続不良を生じたりするのを抑制することができる。
図7〜図10は、前記積層型圧電体1を、本発明の製造方法によって製造する各工程を示す斜視図である。本発明の製造方法では、前記図7の工程に至る前に、まず、圧電体層2のもとになる原料粉末、例えば、圧電材料の仮焼粉末と、有機バインダ等とを含むスラリーを調製した後、前記スラリーを、公知のシート成形法によって、シート状に成形する。シート(いわゆるセラミックグリーンシート)は、圧電体層2の1つ分の大きさに形成してもよいが、前記シートの、ひいては積層体4や積層型圧電体1の生産性を向上することを考慮すると、同一面内に、複数個の圧電体層2となる領域を含む大きさに形成するのが好ましい。
原料粉末は、先に説明した、厚み20〜100μmの微細な圧電体層2のもとになる、厚みや平面形状が小さい上、溝11、12のもとになる微細な凹部を有するシートを、再現性よく形成するための良好な加工性を、前記シートに付与することを考慮すると、平均粒径が0.8μm以下であるのが好ましい。
有機バインダとしては、例えばアクリル系、ブチラール系等の高分子化合物が挙げられる。また、スラリーには、さらに必要に応じて、分散剤としての、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤や、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等の可塑剤等の、各種添加剤を含有させることもできる。前記各成分と共にスラリーを構成する分散媒としては、水もしくは各種の有機溶媒が挙げられる。
次に、前記シートの片面の、圧電体層2となる領域に重ねて、内部電極層3のもとになる導電ペーストを、例えば、スクリーン印刷法等の、周知のパターン形成方法によって、前記内部電極層3の平面形状にパターン形成する。導電ペーストとしては、先に説明した銀の合金等の粉末を、導電成分として含有すると共に、必要に応じて、先に説明した圧電体層2と同じ成分としての圧電材料の粉末や、有機バインダ、可塑剤等を添加したものが挙げられる。前記各成分と共に導電ペーストを構成する分散媒としては、水もしくは各種の有機溶媒が挙げられる。
次に、図7を参照して、前記シートに、溝11、12のもとになる凹部14を形成すると共に、シートを、圧電体層2の平面形状に略対応した平面形状に形成する加工をする。シートの加工方法としては、例えば、パンチングや金型による打ち抜きの他、レーザによる加工を採用することもできる。そうすると、片面に、内部電極層3のもとになる導電ペースト層13を有すると共に、前記凹部14を備えたシート15が得られる。
次に、図8、図9を参照して、前記シート15を、凹部14を利用して位置合わせしながら、導電ペースト層13の位置が、先に説明した内部電極層3の位置に対応して交互に配置されるように、向きを交互に逆転させた状態で、複数枚、積層すると共に、最上層には、導電ペースト層13を形成していないシート15を積層した後、50〜200℃に加熱しながら、積層方向に、10〜200MPaの圧力をかけて一体化する。
そして、一体化された複数枚のシート15の外形を、圧電体層2の平面形状と一致するように仕上げ加工して、積層体4の前駆体16を形成した後、前記前駆体16を、300〜600℃で5〜40時間焼成して、有機バインダ等の有機物を除去すると共に、原料粉末を焼結させて、積層体4を形成する。
次に、図10を参照して、前記積層体4の、凹部14が積層方向に繋がれて形成された溝11、12に、それぞれ、外部電極9、10のもとになる導電ペースト17を、任意の印刷法によって印刷する等して充てんする。導電ペースト17としては、先に説明した導電成分のもとになる、銀または銀を含む合金の粉末と、ガラス成分のもとになるガラス粉末とを含有すると共に、必要に応じて、有機バインダ、可塑剤等を添加したものが挙げられる。
前記各成分と共に導電ペースト17を構成する分散媒としては、水もしくは各種の有機溶媒が挙げられる。前記銀等の粉末は、微細な溝11、12内に、隙間なく充てんすることを考慮すると、平均粒径が10μm以下であるのが好ましい。前記粉末は、焼成によって、導電性に優れた外部電極9、10を形成することを考慮すると、平均粒径が0.1μm以上であるのが好ましい。
次に、前記積層体4を、ガラス粉末の融点以上で、かつ内部電極層3を構成する銀の合金等の融点以下の温度に加熱して、導電ペースト17を焼成して、外部電極9、10を形成すると、図1の積層型圧電体1が製造される。なお、外部電極9、10のもとになる導電ペースト17は、溝11、12に、直接に充てんするのではなく、あらかじめ、前記導電ペースト17を用いて、外部電極用のペーストシートを作製した後、前記ペーストシートを、溝11、12に充填するようにしてもよい。
前記焼成によって、内部電極層3と、外部電極9、10との接合界面においては、前記内部電極層3中の銀の合金と、外部電極9、10中の銀とが相互に拡散するため、内部電極層から拡散したパラジウムを、一般的な分析手法、例えば電子プローブマイクロアナライザ分析(EPMA)、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)等によって分析することで、内部電極層3と、外部電極9、10との接合状態を確認することができる。
外部電極9、10は、まず、溝11、12内に、5重量%程度のガラス粉末を含むペーストを充てんし、焼成して形成した下地層と、前記下地層の上に、前記導電ペースト17を充てんし、焼成して形成した導電層とを有する2層構造に形成してもよい。また、単層構造の外部電極9、10や、2層構造の外部電極9、10のうちの導電層には、半田等の濡れ性を低下させない程度のガラス粉末を含有させてもよい。
《実施例》
出発原料として、それぞれ、純度99%以上のPb34、ZrO2、TiO2、BaCO3、SrCO3、WO3、およびYb23の各粉末を、トータルの組成比がPb0.9475Ba0.03Sr0.02(Zr0.5275Ti0.47250.9825(Yb0.57140.42860.01753となるように配合し、5φのジルコニアボールおよび水を加えて、ボールミルを用いて混合した。そして、得られた混合物を、120℃で乾燥後、昇温速度200℃/時間で950℃まで昇温して3時間、仮焼した後、5φのジルコニアボールを加えて、ボールミルを用いて粉砕して、平均粒径0.65μm、比表面積2.3m2/gの、圧電体層のもとになる原料粉末を得た。
次に、前記原料粉末と、バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂と、分散剤としてのポリカルボン酸のアミドアミン塩と、可塑剤としてのジブチルフタレートと、分散媒としてのトルエンとを配合し、15φのジルコニアボールを加えて、ボールミルを用いて32時間、混合してスラリーを調製し、前記スラリーを、ドクターブレード法によって、基板上に塗布した後、乾燥させて、圧電体層2のもとになる、厚み50μmのセラミックグリーンシートを作製した。
次に、銀とパラジウムの比率が、重量比で70:30である、平均粒径0.8μmの、銀−パラジウム合金の粉末と、カルボン酸系の分散剤と、バインダとしてのアクリル系樹脂と、可塑剤としてのジイソノニルフタレートと、分散媒としてのα−テルピネオールとを配合して、内部電極層3のもとになる導電ペーストを調製した。そして、前記導電ペーストを、スクリーン印刷法によって、先に作製したセラミックグリーンシートの片面に、内部電極層3の平面形状にパターン形成した。
次に、金型を用いて、導電ペーストを乾燥させた後のセラミックグリーンシートに、溝11、12のもとになる凹部14を形成すると共に、シートを、圧電体層2の平面形状に略対応した平面形状に形成する加工をして、図7に示すように、片面に、内部電極層3のもとになる導電ペースト層13を有すると共に、前記凹部14を備えたシート15を作製した。
凹部14の形状は、図5に示す、四角柱の側面5、7で開口幅W1が狭く、かつ、最奥部で開口幅W2が広い上、前記側面5、7から最奥部へ向けて、開口幅が徐々に広くなると共に、奥行きD1が、幅方向の全域で等しい略台形状、または、図6に示す、奥行きD2が、幅方向の全域で等しく、かつ、積層体4の外周面である四角柱の側面5、7から最奥部まで、開口幅W3が等しい矩形状とした。
次に、図8、図9に示すように、前記シート15を、凹部14を利用して位置合わせしながら、導電ペースト層13の位置が、内部電極層3の位置に対応して交互に配置されるように、向きを交互に逆転させた状態で、99枚、積層すると共に、最上層には、導電ペースト層13を形成していないシート15を1枚、積層した後、静水圧プレスを用いて、75℃に加熱しながら、積層方向に、75MPaの圧力を1分間、加えて一体化した。
次に、一体化された計100枚のシート15の外形を、圧電体層2の平面形状と一致するように、12mm×12mmの矩形状に仕上げ加工して、積層体4の前駆体16を形成した後、前記前駆体16を、600℃で10時間、焼成してバインダ等の有機物を除去し、次いで、昇温速度200℃/時間で1100℃まで昇温して3時間、大気中でさらに焼成して原料粉末を焼結させて、積層体4を作製した。
次に、平均粒径が0.5μm、1μm、および2μmの3種のうち、いずれかの銀粉末と、バインダとしてのアクリル系樹脂と、可塑剤としてのジイソノニルフタレートと、分散媒としてのα−テルピネオールとを配合して、外部電極9、10のもとになる導電ペーストを調製した。そして、図10に示すように、前記導電ペーストを、スクリーン印刷法によって、先に作製した積層体4の溝11、12に充てんし、乾燥後、800℃で30分間焼成して外部電極9、10を形成して、図1に示す積層型圧電体1を製造した。
前記積層型圧電体1の外部電極9、10に、それぞれリード線を接合し、前記リード線を介して、3kV/mmの直流電圧を15分間、印加して圧電体層2を分極させて、圧電アクチュエータを得た。そして、前記圧電アクチュエータの外部電極9、10に、リード線を介して、185Vの、極性が分極方向と一致する直流電圧を印加したところ、積層体4が、四角柱の長さ方向に12μm、伸長しているのが確認された。
また、前記圧電アクチュエータの外部電極9、10に、リード線を介して、185Vの、極性が分極方向と一致する直流電圧の印加と、停止とを、交互に繰り返す波形を有する駆動電圧(周波数150Hz)を印加して、積層体4を、1億サイクルに亘って、伸長と静止とを繰り返す駆動をさせた後、外観を確認したところ、外部電極9、10にスパークや断線等の異常は見られず、良好な耐久性を有することが確認された。
また、前記1億サイクルの駆動後に、再び、圧電アクチュエータの外部電極9、10に、リード線を介して、185Vの、極性が分極方向と一致する直流電圧を印加して、積層体4の、四角柱の長さ方向の伸長量を測定したところ、その低下率は、いずれも10%以下であった。特に、凹部を略台形状としたものは、伸長量の低下率が7%以下であって、良好な耐久性を示した。また、凹部を略台形状とすると共に、外部電極9、10のもとになる導電ペーストに、平均粒径が0.5μm、または1μmの銀粉末を含有させたものは、前記外部電極9、10の表面の算術平均粗さRaが1μm以下であって、リード線との接合が良好であったため、伸長量の低下率は5%以下であって、さらに良好な耐久性を示した。
《比較例》
比較のため、図11に示すように、積層体4に溝11、12を形成せず、前記積層体4の側面5、7突出させて、外部電極9、10を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、従来構造の積層型圧電体1を作製し、圧電体層2を分極させて、圧電アクチュエータを得た。そして、前記圧電アクチュエータの外部電極9、10に、リード線を介して、185Vの、極性が分極方向と一致する直流電圧を印加したところ、積層体4が、四角柱の長さ方向に12μm、伸長しているのが確認された。
しかし、前記圧電アクチュエータの外部電極9、10に、リード線を介して、実施例と同じ波形を有する駆動電圧(周波数150Hz)を印加して、積層体4を、伸長と静止とを繰り返す駆動をさせたところ、8000万サイクルで、積層体4から外部電極9、10がはく離してしまった。
本発明の積層型圧電体の一例を示す、一部切り欠き斜視図である。 図1の積層型圧電体のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層の位置での、前記内部電極層の面方向に沿う断面図である。 図1の積層型圧電体のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層の位置での、前記内部電極層の面方向に沿う断面図である。 図1の積層型圧電体の、各層の積層方向の断面図である。 図1の積層型圧電体のうち、溝と、前記溝内に形成された外部電極の、積層体を構成する各層の、面方向の形状を示す拡大断面図である。 溝と外部電極の、面方向の形状の変形例を示す拡大断面図である。 前記積層型圧電体を、本発明の製造方法によって製造する各工程を示す斜視図である。 前記積層型圧電体を、本発明の製造方法によって製造する各工程を示す斜視図である。 前記積層型圧電体を、本発明の製造方法によって製造する各工程を示す斜視図である。 前記積層型圧電体を、本発明の製造方法によって製造する各工程を示す斜視図である。 従来の、積層型圧電体の一例を示す、一部切り欠き斜視図である。 図11の積層型圧電体のうち、上から数えて奇数番目の内部電極層の位置での、前記内部電極層の面方向に沿う断面図である。 図11の積層型圧電体のうち、上から数えて偶数番目の内部電極層の位置での、前記内部電極層の面方向に沿う断面図である。
符号の説明
1 積層型圧電体
2 圧電体層
3 内部電極層
4 積層体
5 側面
6 側面
7 側面
8 側面
9 外部電極
10 外部電極
11 溝
12 溝
13 導電ペースト層
14 凹部
15 シート
16 前駆体
17 導電ペースト

Claims (4)

  1. 圧電体層と、内部電極層とが、複数層ずつ、交互に積層された積層体と、前記積層体の、複数層の内部電極層を、電気的に、外部に接続するための外部電極とを備えた積層型圧電体であって、前記積層体の外周面に、内部電極層に達し、かつ、積層体を構成する各層の積層方向に伸びる溝が形成され、前記溝内に、内部電極層と接触させて、導電材料が充てんされて、溝の開口で露出した表面が、溝の両側の外周面と同一平面、または外周面より内方に位置する外部電極が構成されていることを特徴とする積層型圧電体。
  2. 溝の、積層体を構成する各層の、面方向の形状が、積層体の外周面側で開口幅が狭く、面方向の内方へ向けて、開口幅が徐々に広くなる略台形状に形成されている請求項1記載の積層型圧電体。
  3. 外部電極の、溝の開口で露出した表面が、算術平均粗さRaが1μm以下の平滑面とされている請求項1記載の積層型圧電体。
  4. 圧電体層のもとになる原料粉末を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを、シート状に成形する工程と、前記シートの片面に、内部電極層のもとになる導電ペーストを、前記内部電極層の平面形状にパターン形成する工程と、前記シートに、溝のもとになる凹部を形成する工程と、前記シートを、複数枚、積層して、積層体の前駆体を形成する工程と、前記前駆体を焼成して、圧電体層と、内部電極層とが、複数層ずつ、交互に積層されていると共に、外周面に溝を有する積層体を形成する工程と、前記積層体の溝に、外部電極のもとになる導電ペーストを充てんした後、焼成して、積層体の、複数層の内部電極層を、電気的に、外部に接続するための外部電極を形成する工程とを含むことを特徴とする積層型圧電体の製造方法。
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