JP2007265493A - 磁気ヘッドスライダの製造方法、ヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法、及び磁気ヘッドスライダ - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ヘッドスライダの磁気特性を、磁界ストレスと熱ストレスを印加して評価する方法においては、温度を印加するための設備が必要であること、温度の上昇に時間がかかりすぎること等の課題があり、実際のヘッド製造での評価に用いることはタクト時間の大幅な増加のため困難であった。
【解決手段】基板1a上に再生素子2、記録素子3、ヒータ4を有する薄膜ヘッド部1bを形成した後、基板1aを短冊状のローバーに切断し、ローバーの状態で再生素子2の再生特性の温度評価を行い、合格品について、その後、浮上面研磨、レール加工を行い、個々の磁気ヘッドスライダに切断する製造方法において、再生素子2の再生特性の温度評価工程では、ローバーを保持機構502にセットし、磁界印加機構501により磁界を印加し、ヒータ4に通電して加熱しながらQST回路500にて再生素子2の抵抗、再生出力、インスタビリティ等の評価を行う。
【選択図】図1
【解決手段】基板1a上に再生素子2、記録素子3、ヒータ4を有する薄膜ヘッド部1bを形成した後、基板1aを短冊状のローバーに切断し、ローバーの状態で再生素子2の再生特性の温度評価を行い、合格品について、その後、浮上面研磨、レール加工を行い、個々の磁気ヘッドスライダに切断する製造方法において、再生素子2の再生特性の温度評価工程では、ローバーを保持機構502にセットし、磁界印加機構501により磁界を印加し、ヒータ4に通電して加熱しながらQST回路500にて再生素子2の抵抗、再生出力、インスタビリティ等の評価を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は磁気ヘッドスライダの製造方法、ヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法に係り、特に、製造工程における磁気ヘッド素子の特性評価に関する。また、特性評価に適した磁気ヘッドスライダに関する。
データ記憶装置として、光ディスクや磁気テープなどの様々な態様のメディアを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータ・システムにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話、あるいはデジタル・カメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途はその優れた特性により益々拡大している。
HDDは、データを記憶する磁気ディスクと、磁気ディスクへアクセスする磁気ヘッドスライダとを備えている。磁気ヘッドスライダは、磁気ディスクとの間のデータ読み出し及び/もしくは書き込みを行うヘッド素子部と、ヘッド素子部がその上に形成されたスライダとを有している。ヘッド素子部は、磁気ディスクへの記録データに応じて電気信号を磁界に変換する記録素子及び/又は磁気ディスクからの磁界を電気信号に変換する再生素子を備えている。
現在、磁気ヘッドスライダの再生素子には、高感度特性を有するGMR素子に代表される磁気抵抗効果素子が用いられている。記録密度の向上に伴い、磁気抵抗効果素子は益々小型化され、磁気抵抗効果素子を構成する自由層や固定層、あるいはシールド層の製造段階における磁気的な特性の劣化に起因する再生波形の不安定性が問題になっている。そこで、磁気ヘッドスライダの製造工程において、テスト装置にローバーまたは磁気ヘッドスライダをセットし、加熱手段により加熱し、回転する磁気ディスクからの磁界の代わりに外部からの磁界を印加して、実際のリード/ライトと同じような磁気的再生特性の評価を行い、磁気的に不安定なヘッドを取り除くことが行われている。
特許文献1には、レーザ光による加熱手段を有し、レーザ光の照射前後の薄膜磁気ヘッドの抵抗値を比較すると共にその良否判定を行う加熱試験装置が開示されている。特許文献2には、磁気ヘッドを高温又は低温に温度制御した恒温槽に入れ、電磁変換特性の温度評価を行う評価装置が開示されている。
上記従来技術においては、評価装置に温度を印加するための機構を設ける必要があること、また、温度の上昇に時間がかかりすぎる等の難点があり、実際のヘッド製造での評価に用いるには、費用が嵩み、タクト時間が大幅に増加するため困難であった。
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであって、その目的の一つは、加熱のための付帯設備を必要とせず、かつ短時間に温度を上昇させることができる再生特性の温度評価工程を含む磁気ヘッドスライダの製造方法を提供することにある。また、加熱のための付帯設備を必要とせず、かつ短時間に温度を上昇させることができる浮上状態で電磁変換特性の温度評価工程を含むヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電磁変換特性の温度評価に好適な磁気ヘッドスライダを提供することである。
本発明の他の目的は、電磁変換特性の温度評価に好適な磁気ヘッドスライダを提供することである。
本発明の磁気ヘッドスライダの製造方法は、基板の上部に再生素子、ヒータ、記録素子を形成し、基板をローバーに切断した後、ローバーに磁界を印加し、ヒータに通電した状態で、再生素子の再生特性を評価するステップを含み、この後、浮上面となる面を研磨し、研磨した面にレールを形成し、ローバーを個々の磁気ヘッドスライダに切断するものである。
本発明のヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法は、基板の上部に再生素子と、ヒータと、記録素子が形成された磁気ヘッドスライダを、サスペンションのジンバルに固定した後、サスペンションを位置決め駆動機構に取り付け、磁気ヘッドスライダを回転する磁気ディスク上に浮上させた状態で、ヒータに通電し、再生素子の電磁変換特性を評価するものである。
本発明の磁気ヘッドスライダは、スライダの空気流出端面の上部に再生素子と、ヒータと、記録素子を有する磁気ヘッドスライダにおいて、ヒータを再生素子の後部と、左右の後部に配置するものである。
本発明によれば、磁気ヘッドスライダの製造方法あるいはヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法における磁気ヘッドスライダの電磁変換特性の温度評価工程において、加熱のための付帯設備を必要とせず、かつ短時間に温度を上昇させることが出来る。また、電磁変換特性の温度評価に好適な磁気ヘッドスライダを提供することができる。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、重複する説明は省略されている。
最初に、本発明の理解の容易のため、ハードディスク・ドライブ(HDD)の全体構成を説明する。図3は、HDDの構成を模式的に示す平面図である。HDD100は、データを記録する記録メディアとしての磁気ディスク101を備えている。磁気ディスク101は、磁性層が磁化されることによってデータを記憶する不揮発性メモリである。HDD100の各構成要素は、ベース102内に収容されている。ベース102は、ベース102の上部開口を塞ぐカバー(不図示)とガスケット(不図示)を介して固定されることによってディスクエンクロージャを構成し、HDD100の各構成要素を密閉状態で収容することができる。
最初に、本発明の理解の容易のため、ハードディスク・ドライブ(HDD)の全体構成を説明する。図3は、HDDの構成を模式的に示す平面図である。HDD100は、データを記録する記録メディアとしての磁気ディスク101を備えている。磁気ディスク101は、磁性層が磁化されることによってデータを記憶する不揮発性メモリである。HDD100の各構成要素は、ベース102内に収容されている。ベース102は、ベース102の上部開口を塞ぐカバー(不図示)とガスケット(不図示)を介して固定されることによってディスクエンクロージャを構成し、HDD100の各構成要素を密閉状態で収容することができる。
磁気ディスク101は、スピンドルモータ103に固定されている。磁気ヘッドスライダ105は、ホスト(不図示)との間で入出力されるデータについて、磁気ディスク101への書き込み及び/又は読み出しを行うヘッド素子部を供えている。ヘッド素子部は、磁気ディスク101への記録データに応じて電気信号を磁界に変換する記録素子及び/又は磁気ディスク101からの磁界を電気信号に変換する再生素子と、記録素子及び/又は再生素子がその面上に形成されているスライダとを有している。
アクチュエータ106は、磁気ヘッドスライダ105を保持、移動する。アクチュエータ106は回動軸107に回動自在に保持されており、駆動機構としてのボイス・コイル・モータ(VCM)109によって駆動される。アクチュエータ106は、磁気ヘッドスライダ105が配置された長手方向におけるその先端部から、サスペンション110、アーム111、コイルサポート112及びフラットコイル113の順で結合された各構成部材を備えている。尚、サスペンション110の構成については、後で詳述する。VCM109は、フラットコイル113、上側ステータ・マグネット保持板114に固定されたステータ・マグネット(不図示)、及び下側ステータ・マグネット保持板に固定されたステータ・マグネット(不図示)から構成されている。
磁気ディスク101は、ベース102の底面に固定されたスピンドルモータ103に一体的に保持され、スピンドルモータ103により所定の速度で回転駆動される。磁気ディスク101は、図3において、反時計回りに回転する。HDD100の非動作時には、磁気ディスク101は静止している。VCM109は、コントローラ(不図示)からフラットコイル113に流される駆動信号に応じて、回動軸107を中心としてアクチュエータ106をその短手方向において回動する。これによって、アクチュエータ106は磁気ディスク101の上に磁気ヘッドスライダ105を移動する、もしくは、磁気ディスク101の外側へ磁気ヘッドスライダ105を移動することができる。
磁気ディスク101からのデータの読み取り/書き込みのため、アクチュエータ106は回転している磁気ディスク101表面のデータ領域上空に磁気ヘッドスライダ105を移動する。アクチュエータ106が回動することによって、磁気ヘッドスライダ105が磁気ディスク101の表面の半径方向に沿って移動する。これによって、磁気ヘッドスライダ105が所望のトラックにアクセスすることができる。磁気ヘッドスライダ105とコントローラとの間の信号は、伝送配線であるトレース201とFPC117が伝送する。磁気ヘッドスライダ105は、磁気ディスク101に対向するスライダのABS(Air Bearing Surface)と回転している磁気ディスク101との間の空気の粘性による圧力が、サスペンション110によって磁気ディスク101方向に加えられる圧力とバランスすることによって、磁気ディスク101上を一定のギャップを置いて浮上する。
磁気ディスク101の回転が停止すると、磁気ヘッドスライダ105が磁気ディスク101表面に接触し、吸着現象によってデータ領域の傷の発生、磁気ディスクの回転不能などの問題が起こるため、磁気ディスク101の回転が停止するときには、アクチュエータ106は磁気ヘッドスライダ105をデータ領域からランプ機構115に退避させる。アクチュエータ106がランプ機構115の方向に回動し、アクチュエータ先端部のタブ116がランプ機構115表面上を摺動しながら移動し、ランプ機構115上のパーキング面に載ることにより、磁気ヘッドスライダ105がアンロードされる。ロードのときには、パーキング面に支持されていた磁気ヘッドスライダ105は、ランプ機構115から離脱して磁気ディスク101表面上空に移動する。
尚、上記HDDはロード・アンロード方式を採用しているが、磁気ヘッドスライダ105がデータ書き込み/読み出し処理を行わない場合に、磁気ディスク101の内周に配置されているゾーンに退避するCSS(Contact Start and Stop)方式を採用することもできる。また、上記の説明では、簡単のために磁気ディスク101が一枚構成で、片面記憶のHDDを説明しているが、HDD100は、1もしくは複数枚の両面記憶磁気ディスクを備えることができる。
次に、図4を参照して磁気ヘッドスライダをサスペンションに取り付けた状態のヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)の構成を説明する。図4は、磁気ディスクの記録面側からみたHGAの構造を示している。図4に示すように、HGA200は、磁気ヘッドスライダ105、サスペンション110及び伝送配線であるトレース201を備えている。サスペンション110は、磁気ヘッドスライダ105を磁気ディスク対向面側で保持する可撓性のジンバル108と、ジンバル108を磁気ディスク対向面側で保持するロードビーム109及びマウント・プレート206を備えている。図4のHGA200は、ロード・アンロード・タイプであって、ロードビーム109の先端にランプ機構に退避するためのタブ116を備えている。磁気ヘッドスライダ105の前面(タブ側)にはヘッド素子部に接続された複数の端子が形成されており、各端子とトレース201の各配線とが半田や金のボール・ボンディングなどを使用して接続されている。
次に、図5を参照して磁気ヘッドスライダの構成について説明する。磁気ヘッドスライダ105は基板(スライダ)1aと、薄膜ヘッド部1bからなる。磁気ヘッドスライダ105は例えば、長さ1.25mm、幅1.0mm、厚さ0.3mmのほぼ直方体形状をしており、空気軸受面5、空気流入端面11、空気流出端面12、両側の側面、背面の計6面で構成される。空気軸受面5には、イオンミリング等により微細な段差(ステップ軸受)が設けられており、磁気ディスクと対向して空気圧力を発生し、背面に負荷される荷重を支える空気軸受の役目を果たしている。
空気軸受面5の段差は、実質的に平行な3種類の面に分類される。最もディスクに近いレール面6、レール面6より約100nm乃至200nm深いステップ軸受面である浅溝面7、レール面6より約1μm深くなっている深溝面8である。ディスクが回転することで生じる空気流が、ステップ軸受である浅溝面7からレール面6に進入する際に、先すぼまりの流路によって圧縮され、正の空気圧力を生じる。一方、レール面6や浅溝面7から深溝面8へ空気流が進入する際には流路の拡大によって、負の空気圧力が生じる。
磁気ヘッドスライダ105は、空気流入端11側の浮上量が空気流出端12側の浮上量より大きくなるような姿勢で浮上するように設計されている。したがって、流出端12近傍のレール面6がディスクに最も接近する。流出端12近傍では、レール面6が周囲の浅溝面7、深溝面8に対して突出しているので、スライダピッチ姿勢およびロール姿勢が一定限度を超えて傾かない限り、レール面6が最もディスクに近づくことになる。再生素子2および記録素子3は、レール面6の薄膜ヘッド部1bに属する部分に形成されている。ロードビーム109から押し付けられる荷重と、空気軸受面5で生じる正負の空気圧力とがうまくバランスし、記録素子3および再生素子2からディスクまでの距離を10nm程度あるいはそれ以下の適切な値に保つよう、ステップ軸受けの形状が設計されている。なお、上記の磁気ヘッドスライダ105は、空気軸受面が3種類の面から構成される2段ステップ軸受のスライダであるがが、これに限らず4種類以上の平行な面から構成される3段以上のステップ軸受のスライダであっても良い。
次に、図5のA−A線断面図である図6を参照して、スライダ1aの上に形成されている薄膜ヘッド部1bの内部の構成を説明する。薄膜ヘッド部1bはスライダ1a側からアルミナ絶縁膜150、再生素子2、ヒータ4、記録素子3、これらを隔てる絶縁膜(アルミナ)152、これら全体を覆う保護膜(アルミナ)154が積層されて構成されている。再生素子2は、下部シールド21、ギャップ膜22、ギャップ膜22の中に形成されている磁気抵抗効果素子23、上部シールド24で構成されている。磁気抵抗効果素子23には、GMR素子、CPP−GMR素子、TMR素子などが用いられる。ヒータ4はNiCr等の薄膜抵抗体であり、再生素子2の後部に配置されている。記録素子3は、下部磁極31と、浮上面に磁気ギャップ32を形成し後部で下部磁極21に磁気的に接続されている上部磁極33と、下部磁極31と上部磁極33の間に層間絶縁膜34を介して形成されたコイル35とで構成されている。このタイプの磁気ヘッドスライダは、TFC(Thermal Flying Control)スライダと呼ばれ、必要に応じてヒータ4に通電することにより、再生素子2及び記録素子3を覆っている絶縁膜(アルミナ)152を加熱して熱膨張させ、再生素子2及び記録素子3を突出させることにより磁気ディスク101との距離を調整することができる。
次に図7を参照して本発明の実施例による磁気ヘッドスライダ及びHGAの製造方法を説明する。アルミナ・チタンカーバイト(Al2O3-TiC)等のウェハ(基板)上に、複数個のヘッド素子からなる上記の薄膜ヘッド部1bをスパッタリング、めっき及びエッチング等の薄膜形成プロセスにより形成する(ステップ601)。次に基板をダイシングにより短冊状のローバーに切断する(ステップ602)。次にローバーの状態で、各ヘッド素子に対してヒータ4を用いたクワジスタティックテスト(QST)を行い、再生素子2の磁気的再生特性の温度評価を行う(ステップ603)。QSTについては後で詳細に説明する。次にQSTにおいて、合格したローバーの切断面(浮上面となる面)を研磨する(ステップ604)。次にローバーの各スライダの浮上面にイオンミリング等のエッチングにより、ステップ軸受を構成するレールを形成する(ステップ605)。次にダイシングによりローバーを個々の磁気ヘッドスライダに切断する(ステップ606)。この段階で磁気ヘッドスライダ105が完成する。
次に、図4で説明したように、磁気ヘッドスライダ105の背面をサスペンション110のジンバル108に接着剤にて固定してHGA200を組み立てる(ステップ607)。次にHGA200をダイナミックエレキテスト(DET)装置の位置決め駆動部に取り付け、ヒータ4を用いたダイナミックエレキテスト(DET)を行い、浮上状態での磁気ヘッドスライダ105の電磁変換特性の温度評価を行う(ステップ608)。DETについては後で詳細に説明する。DETにおいて合格したHGAがHDDに組み込まれる。なお、上記実施例では、QSTをローバーの状態で行ったが、ステップ606で切断した磁気ヘッドスライダに対して行っても良い。
次に図1を参照して、上記磁気ヘッドスライダの製造方法におけるQST(ステップ603)について説明する。図1にQST装置の概念図を示す。QST装置は、QST回路500と、磁界を印加する磁界印加機構501と、ローバー又は磁気ヘッドスライダ105をセットして磁界印加機構501で発生する磁界中に晒す保持機構502と、ヘッド素子部のヒータ4にQST回路500を介して電流を通電するヒータ通電回路503とで構成されている。QST回路500は、磁界印加機構501のコイルに通電する通電回路と、ヘッド素子部の再生素子2へバイアス電流を供給するバイアス電流供給回路と、再生素子2の再生波形を解析して磁気的再生特性を評価する評価回路とを有する。磁気ヘッドスライダ105の再生素子2、記録素子3、ヒータ4の配線は、QST回路500のそれぞれの回路端子に接続される。
QSTは、回転する磁気ディスクからの磁界の代わりに、磁界印加機構501からの磁界をローバー又は磁気ヘッドスライダ105に印加して、実際のリード/ライトと同じような磁気的再生特性の評価を行うものである。これによって、磁気ヘッドスライダ105を回転するディスクの上に浮上させることなく再生素子2の磁気的再生特性の評価を行うことができる。主な評価項目としては、抵抗、再生出力、インスタビリティなどである。インスタビリティとは再生波形の不安定性であり、波形形状異常、ベースライン異常、多数回測定における出力の変動、パルス状ノイズの発生、低周波でのノイズの増加、高周波でのノイズの増加などがあり、磁気抵抗効果素子の自由層や固定層、シールド等の磁気的な現象に起因するものである。QST回路500の評価回路は、検出した抵抗値、再生出力、インスタビリティについて、予め設定された基準値と比較し、差が所定の範囲外である場合、そのヘッド素子部を含むローバーあるいは磁気ヘッドスライダ105を不合格とする。さらに、本QSTでは、ヒータ4の発熱により、ヘッド素子部に熱膨張にともなう機械的ストレスを印加することも出来る。したがって、熱膨張によって生じた応力を再生素子2に印加できるので、機械的ストレスによる再生素子2への影響の評価も可能である。
上記QSTによれば、加熱のための付帯設備を必要とせず、かつ短時間に温度を上昇させることが出来るために短時間に再生素子の磁気的再生特性の温度評価が可能となる。したがって、簡便で低価格なQSTを実現することができる。また、回転するディスク上での条件と比較し、回転するディスク上ではディスク面への放熱があるために、温度上昇が妨げられてしまうのに対し、放熱の影響がなく、効率的に素子温度を上げることができるというメリットがある。
なお、上記QSTにおいて、ヘッド素子部のヒータ4に流す電流値を固定せず、少なくとも2つ以上の値に変化させてインスタビリティの測定を行う評価方法も有効である。あるいは、ヒータ4のONとOFFの場合の差で評価しても良い。
次に、図2を参照して、上記ヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)の製造方法におけるDET(ステップ608)について説明する。図2にDET装置の概念図を示す。DETは、HGA110をDET装置にセットして、スピンドルモータ602に装着されて回転する磁気ディスク101上に磁気ヘッドスライダ105を浮上させ、電磁変換特性の温度評価を行うものである。DET回路600は、ヘッド素子部の再生素子2へバイアス電流を供給するバイアス電流供給回路と、再生素子2の再生波形を解析して電磁変換特性を評価する評価回路とを有する。磁気ヘッドスライダ105を保持するサスペンション110の一端が、位置決め駆動機構601に取り付けられる。更に、再生素子2、記録素子3、ヒータ4の配線は、DET回路600のそれぞれの回路端子に接続される。本DETは、磁気ディスク101上を浮上している磁気ヘッドスライダ105のヒータ4に通電して、ヘッド素子部を加熱した状態で、再生素子2のインスタビリティの評価を行うテストである。また、再生素子2への温度ストレスの印加の際に、ヒータの電流増、記録素子3への記録電流印加、記録周波数増、再生素子2のバイアス電流増等により、再生素子2の温度を上げることができる。これにより、回転するディスク面への放熱の影響を少なくして、インスタビリティの評価を行うことが出来る。
以上の説明のとおり、上記磁気ヘッドスライダの製造方法によれば、QSTにおいて、加熱のための付帯設備を必要とせず、かつ短時間に温度を上昇させることが出来るために短時間で再生素子の磁気的再生特性の温度評価が可能となる。また、HGAの製造方法におけるDETにおいても、磁気ヘッドスライダのヒータを用いてヘッド素子の加熱を行うので、加熱のための付帯設備を必要としない。さらに、短時間に温度を上昇させることが出来るために短時間で再生素子の動作状態でのインスタビリティの評価が可能となる。
次に、上記QST及びDETに好適なヒータの配置構造を有する磁気ヘッドスライダの構成例を図8に示す。ヒータの配置以外は、図6に示した構成と同じであるため、図8では、ヘッド素子部の再生素子2とヒータ4の配置を上部から見た図を示している。ヒータ4はヘッド素子部内に複数個設けることにより、熱膨張による機械的ストレスを再生素子2に印加することも可能である。図8(a)は3つのヒータが再生素子2の後部と、さらに左右の後部に配置され、接続端子401と402の間に直列に接続されている。この構造では電流一定での動作が可能である。また、図8(b)は3つのヒータの配置は図8(a)と同じであるが、ヒータ4を並列接続した例である。この構造では電圧一定での動作が可能である。図8(c)は、ヒータ4の配置及び接続は図8(a)と同じであるが、左右のヒータ4Aに抵抗変化型抵抗体を用いた例である。この例では抵抗変化型抵抗体として相変化型アモルファス抵抗体を用いた。相変化型アモルファス抵抗体は、加熱することにより抵抗値が低下する特性を有するので、例えばレーザ照射により加熱して抵抗値を下げることが可能である。この構造では、抵抗値の異なる状態を実現でき、加熱評価や機械的ストレス評価を行う際は抵抗値を高くし、通常は低抵抗とすることが可能である。また、抵抗値を左右アンバランスとすることにより、機械的ストレスの方向や大きさを変えることが可能である。
図9は図8(c)に示した抵抗変化型抵抗体を用いた例の動作例を示す図である。図9(a)は左右の2つの抵抗変化型抵抗体を低抵抗にした場合である。図9(b)は2つの抵抗変化型抵抗体を高抵抗にした場合である。図9(c)は2つの抵抗変化型抵抗体の内1つを低抵抗、もう1つを高抵抗とした場合である。この場合、左右非対称になることから、熱膨張による機械的応力を変えることができる。また、図9(d)は図9(c)と異なる側の抵抗変化型抵抗体を低抵抗、もう1つを高抵抗とした場合である。図9(c)と異なった応力を与えることが可能である。
以上の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上述の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
1a…スライダ、1b…薄膜ヘッド部、2…再生素子、3…記録素子、4…ヒータ、4A…抵抗変化型抵抗体を用いたヒータ、5…空気軸受面、6…レール面、7…浅溝面、8深溝面、11空気流入端面、12…空気流出端面、21…下部シールド、22…ギャップ膜、23…磁気抵抗効果素子、24…上部シールド、31…下部磁極、32…磁気ギャップ、33…上部磁極、34…層間絶縁膜、35…コイル、
101…磁気ディスク、105…磁気ヘッドスライダ、108…ジンバル、109…ロードビーム、110…サスペンション、150,152…絶縁膜、154…保護膜、200…ヘッド・ジンバル・アセンブリ、201…トレース、401,402…端子、
500…クワジスタティックテスト(QST)装置、501…磁界印加機構、502…保持機構、503…ヒータ通電回路、600…ダイナミックエレキテスト(DET)装置、601…位置決め駆動機構、602…スピンドル、603…ヒータ通電回路。
101…磁気ディスク、105…磁気ヘッドスライダ、108…ジンバル、109…ロードビーム、110…サスペンション、150,152…絶縁膜、154…保護膜、200…ヘッド・ジンバル・アセンブリ、201…トレース、401,402…端子、
500…クワジスタティックテスト(QST)装置、501…磁界印加機構、502…保持機構、503…ヒータ通電回路、600…ダイナミックエレキテスト(DET)装置、601…位置決め駆動機構、602…スピンドル、603…ヒータ通電回路。
Claims (10)
- 基板の上部に再生素子と、ヒータと、記録素子を形成するステップと、
前記基板をローバーに切断するステップと、
前記ローバーに磁界を印加し、前記ヒータに通電した状態で、前記再生素子の再生特性を評価するステップと、
前記ローバーの浮上面となる面を研磨するステップと、
前記研磨した浮上面となる面にレールを形成するステップと、
前記ローバーを個々の磁気ヘッドスライダに切断するステップと、
を含むことを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。 - 前記再生素子の再生特性を評価するステップを、前記ローバーを個々の磁気ヘッドスライダに切断するステップの後に実行することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
- 前記再生素子の再生特性を評価するステップは、該再生素子の再生波形の不安定性を分析するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
- 基板の上部に再生素子と、ヒータと、記録素子が形成された磁気ヘッドスライダを、サスペンションのジンバルに固定するステップと、
前記サスペンションを位置決め駆動機構に取り付け、前記磁気ヘッドスライダを回転する磁気ディスク上に浮上させた状態で、前記ヒータに通電し、前記再生素子の電磁変換特性を評価するステップと、
を含むことを特徴とするヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法。 - 前記再生素子の電磁変換特性を評価するステップにおいて、さらに前記記録素子に記録電流を供給することを特徴とする請求項4記載のヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法。
- 前記磁気ヘッドスライダをサスペンションのジンバルに固定するステップの前に、
ローバー又は磁気ヘッドスライダに磁界を印加し、前記ヒータに通電した状態で、前記再生素子の再生特性を評価するステップを実行することを特徴とする請求項4記載のヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法。 - スライダの空気流出端面の上部に再生素子と、ヒータと、記録素子を有する磁気ヘッドスライダにおいて、前記ヒータを前記再生素子の後部と、左右の後部に配置することを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
- 前記ヒータは直列に接続され、電流駆動されることを特徴とする請求項7記載の磁気ヘッドスライダ。
- 前記ヒータは並列に接続され、電圧駆動されることを特徴とする請求項7記載の磁気ヘッドスライダ。
- 前記左右に配置されるヒータは抵抗変化型抵抗体であることを特徴とする請求項7記載の磁気ヘッドスライダ。
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JP2006087496A JP2007265493A (ja) | 2006-03-28 | 2006-03-28 | 磁気ヘッドスライダの製造方法、ヘッド・ジンバル・アセンブリの製造方法、及び磁気ヘッドスライダ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2009069231A1 (ja) * | 2007-11-30 | 2009-06-04 | Fujitsu Limited | ヘッドスライダの評価方法 |
US8063630B2 (en) * | 2008-03-14 | 2011-11-22 | Tdk Corporation | Testing method for thin-film magnetic head and jig used therefor |
-
2006
- 2006-03-28 JP JP2006087496A patent/JP2007265493A/ja active Pending
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WO2009069231A1 (ja) * | 2007-11-30 | 2009-06-04 | Fujitsu Limited | ヘッドスライダの評価方法 |
US8063630B2 (en) * | 2008-03-14 | 2011-11-22 | Tdk Corporation | Testing method for thin-film magnetic head and jig used therefor |
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