JP2007264455A - 車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システム - Google Patents

車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、煩雑な手間をユーザに強いることなく一段と簡易に車内空間の音場を最適に補正できるようにする。
【解決手段】本発明は、車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置に取り付けられるヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1により、運転席又は助手席のヘッドレストH1の頭部当接面H1Aに想定されたドライバーズリスニングポイントLP1からみて、遠くに位置する方の左スピーカFL又は右スピーカFRを介して出力される測定音を集音し、左スピーカFL又は右スピーカFRからマイクロフォンMF1に到達する音の周波数特性fHUと、左スピーカFL又は右スピーカFRから頭部当接面H1Aに想定されたドライバーズリスニングポイントLP1に到達するであろう音の仮想周波数特性fDLKとがほぼ近似するとの傾向に基づいて当該音の周波数特性fHUを補正するようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システムに関し、例えば車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のセンターコンソールパネルに取り付けられるカーオーディオのヘッドユニットに適用して好適なものである。
従来、カーオーディオにおいては、車内空間でオーディオを再生した場合であっても、リスニングポイントが左スピーカ及び右スピーカ間の中心ではなく、運転席又は助手席の何れかに片寄ってしまっている。
従って、そのようなリスニングポイントでは、各スピーカから当該リスニングポイントまでの距離がそれぞれ異なるため、各スピーカからの周波数特性についてもそれぞれ異なり、ユーザにとっては最適なリスニングポジションでオーディオを聴取しているとは言い難い状況であった。
このため、少なくとも2つの正規補正位置についての補正情報を得、これを用いて正規補正位置以外の補正位置に対する補正情報を演算によって求めるようにした音場補正装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005-341384公報
またカーオーディオでは、車内空間の形状に起因してオーディオの信号波が当該車内空間内で反射し、そのオーディオの信号波と反射波とが干渉することにより定在波が発生するため、周波数特性が乱れ易い。
このようなリスニング環境を改善するため、いわゆるイコライザー調整可能なカーオーディオや、リスニングポイントに測定用マイクロフォンを設置し、車内空間に設置された各スピーカからの音の到達時間を測定し、各スピーカによる音の出力タイミングを制御することにより各スピーカからの音波の位相を揃え、それぞれの音波の干渉による周波数特性の乱れを抑制するタイムアライメント調整可能なカーオーディオが開発されている。
このようなイコライザー調整や、タイムアライメント調整については、車内空間内で測定した音場データを基に人間の聴感を頼りにマニュアル的に行う場合と、カーオーディオ自体が音場測定からその結果の反映までを自動的に行う場合の2通りある。
ところでかかる構成のカーオーディオにおいては、音場測定からその結果の反映までを自動的に行う場合であっても、当該カーオーディオと共にリスニングポイントに設置する測定専用マイクロフォンが必要とされるが、その測定専用マイクロフォンに対して1m以上ものマイクケーブルを接続し、運転席又は助手席のリスニングポイントに設置しなければならないという煩雑な手間をユーザに強いるという問題があった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、煩雑な手間をユーザに強いることなく一段と簡易に車内空間の音場を最適に補正し得る車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システムを提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明においては、車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられる車載用電子機器及び当該車載用電子機器による車内空間の音場最適化補正方法であって、車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンにより、車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音を集音し、左スピーカ又は右スピーカから前面パネルを介してマイクロフォンに到達する音の周波数特性と、左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性とがほぼ近似するとの傾向に基づいて当該音の周波数特性を補正するようにする。
これにより、車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンによって集音した音の周波数特性が左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性とほぼ近似する傾向にあることを利用し、当該マイクロフォンによって集音した音の周波数特性を補正するだけで左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性を補正することができるので、ユーザに対して煩雑な手間を強いることなくヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントにおける音の仮想周波数特性を任意に調整することができる。
また本発明においては、車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられる車載用電子機器と、車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、左右に設けられた左スピーカ又は右スピーカとによって構築される車内空間の音場最適化補正システムであって、車載用電子機器は、当該車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンにより、運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音を集音し、左スピーカ又は右スピーカから前面パネルを介してマイクロフォンに到達する音の周波数特性と、左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面を介してリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性とがほぼ近似するとの傾向に基づいて当該音の周波数特性を補正するようにする。
これにより、車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンによって集音した音の周波数特性が左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性とほぼ近似する傾向にあることを利用し、当該マイクロフォンによって集音した音の周波数特性を補正するだけで左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性を補正することができるので、ユーザに対して煩雑な手間を強いることなくヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントにおける音の仮想周波数特性を任意に調整することができる。
本発明によれば、車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンによって集音した音の周波数特性が左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性とほぼ近似する傾向にあることを利用し、当該マイクロフォンによって集音した音の周波数特性を補正するだけで左スピーカ又は右スピーカからヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう音の仮想周波数特性を補正することができるので、ユーザに対して煩雑な手間を強いることなくヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントにおける音の仮想周波数特性を任意に調整させ得る車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システムを実現することができる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)音場最適化補正システムの構成
図1において、1は全体として本発明の音場最適化補正システム2を搭載した自動車を示し、当該音場最適化補正システム2は、運転席側ドアに設けられたフロント右スピーカFRと、助手席側ドアに設けられたフロント左スピーカFLと、CD(Compact Disc)プレーヤ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ等のカーオーディオ再生装置として用いられるヘッドユニット3によって構成されている。このヘッドユニット3は、運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられている。
またヘッドユニット3は、図2に示すように、その前面パネル3AにCD又はDVDの挿入口10、再生トラック番号や再生時間等の各種情報を表示する表示部11が設けられていると共に、前面パネル3Aのほぼ中央上方部分に携帯電話機のハンズフリー機能を実現するための無指向性のマイクロフォンMF1が埋め込まれており、当該マイクロフォンMF1を音場補正用に用いるようになされている。
因みに、マイクロフォンMF1としては、必ずしも無指向性である必要はなく、フロント左スピーカFL又はフロント右スピーカFRから出力される音を集音することができる程度の前面パネル3Aを中心とした約180度程度の指向性を有していてもよい。
この音場最適化補正システム2(図1)では、運転席におけるヘッドレストの頭部当接面をドライバーズリスニングポイントLP1とし、助手席におけるヘッドレストの頭部当接面をパッセンジャーズリスニングポイントLP2としたとき、フロント左スピーカFLからヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1に到達する音の周波数特性fHUだけを実際に測定し、その測定結果に基づいてドライバーズリスニングポイントLP1の運転者及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2のパッセンジャーにとって最適なリスニング環境を提供し得るようになされたものであるが、従来のように測定専用マイクロフォンを運転席や助手席に設置する等の煩雑な手間をユーザに強いることがないように考慮されており、そのための構成について以下具体的に説明する。
すなわち図3に示すように音場最適化補正システム2では、ヘッドユニット3を介してフロント左スピーカFLのみから出力される音場補正用の測定用信号(例えばTSP(Time Stretched Pulse)信号)に応じた測定音をドライバーズリスニングポイントLP1で集音した場合と、ヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1(ヘッドユニットポイントHP)でフロント左スピーカFLのみから出力されるTSP信号に応じた測定音を集音した場合とでは、双方の周波数特性にどれだけの相違があるかをまず検証する。
この場合、音場最適化補正システム2では、ドライバーズリスニングポイントLP1で測定音を集音する場合、図4に示すように運転席のヘッドレストH1の頭部当接面H1Aに設置された測定用マイクロフォンMF2を用いることを条件とする。
ここで、音場補正用に用いられるTSP信号とは、インパルス応答を測定するための信号であり、正弦波の周波数を短時間に高周波から低周波まで引き伸ばして連続的にスイープした結果得られる信号である。但し、音場補正用の測定用信号としてはTSP信号に限られるものではなく、その他種々の例えばM系列信号が用いられるようにしても良い。
実際上、運転席のヘッドレストH1の頭部当接面H1Aに設置された測定用マイクロフォンMF2(ドライバーズリスニングポイントLP1)で集音されたフロント左スピーカFLのみから到達する測定音の周波数特性fDLと、ヘッドユニット3(図3)のマイクロフォンMF1(ヘッドユニットポイントHP)によって測定されたフロント左スピーカFLのみから到達する測定音の周波数特性fHUとを比較したとき、図5(A)〜(D)に示すような比較結果が得られた。
すなわち、図5(A)〜(D)に示したように、4つの比較結果は全て車種が異なるものであるにも拘わらず、ヘッドユニットポイントHPにおけるフロント左スピーカFLの周波数特性fDLと、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの周波数特性fHUとでは全体的なパターンがほぼ同じであり、かつヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUと、ドライバーズリスニングポイントLP1における周波数特性fDLとは何れも大きな差がなく非常に近似していることが判明した。このことについて、続けて検証する。
ここで、自動車1の車内空間は、ホームオーディオ機器が設置される室内空間等の音響環境に比べると、一般的に車種が変わってもその特徴は近似していると考えられる。カーオーディオ再生装置としてのヘッドユニット3が取り付けられる主な対象車種としては、日本国内の分類でいえばいわゆる普通自動車(3ナンバー車や5ナンバー車等の定員10人以下をいう)に当たり、貨物用等を除くとその車幅は約1.5mから約1.9mの中にほぼ全ての普通自動車が該当する。
また、日本国内の分類でいう軽自動車を加えても、その車幅は約1.4mから約1.9m程度で、その差わずか50cm程度の中に全て集中することになる。さらに車内空間の高さ寸法についても、約1m〜約1.5m程度の中にほぼ全ての普通自動車が該当する。
それだけではなく、車内空間の前方は運転席、助手席(場合によってはベンチシート)が設置され、それぞれの座席は自動車1の前後方向の中心線CL(図1及び図3)を挟んで左右対称に近い形で配置されているのが一般的であり、どのような自動車1であっても運転席にはハンドルが装備されている。従って、車幅だけで考えれば、中心線CLからの寸法差でいえば最大約25cm程度に過ぎない。
このように自動車1では、車種に拘わらず、約50cm程度の寸法差の範囲内で多くの特徴が一致しているため、特に運転席や助手席付近の音場特性は車種が変わっても、互いに共通する傾向を持つと推測される。
従って、図5(A)〜(D)に示したように、車種が異なった場合であっても周波数特性の全体的なパターンがほぼ共通することについては、自動車1の車内空間が車種の違いに拘わらず本質的に変わるところがないことによるものであると考えられる。
一方、ヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUと、ヘッドレストH1のドライバーズリスニングポイントLP1における周波数特性fDLとの差が殆どなく非常に近似している理由については、フロント左スピーカFLとヘッドユニット3のマイクロフォンMF1との位置関係、フロント左スピーカFLとヘッドレストH1の測定用マイクロフォンMF2との配置関係とが近似することに基づいていると考えられる。
ここで、図6に示すようにフロント左スピーカFLからヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1(ヘッドユニットポイントHP)までの距離L1と、フロント左スピーカFLからヘッドレストH1に取り付けられた測定用マイクロフォンMF2(ドライバーズリスニングポイントLP1)までの距離L2とは異なり、L1<L2の関係が成立することになるため、厳密にはヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUと、ヘッドレストH1のドライバーズリスニングポイントLP1における周波数特性fDLとでは異なっていて当然である。
しかしながら、フロント左スピーカFLと、ヘッドユニット3と、ヘッドレストH1とから形成される一つの仮想音響空間BOXを想定したとき、フロント左スピーカFLから到達する測定音はヘッドユニット3の前面パネル3Aを壁として反射すると共に、フロント左スピーカFLから到達する測定音はヘッドレストH1の頭部当接面H1Aを壁として反射するため、フロント左スピーカFLからみればヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPと、ヘッドレストH1のドライバーズリスニングポイントLP1とは同じように音が反射する音響環境である。
また、フロント左スピーカFLからヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1までの距離L1と、フロント左スピーカFLからヘッドレストH1に取り付けられた測定用マイクロフォンMF2までの距離L2とは等しくないといっても、あくまで自動車の車内空間という限られた車幅の範囲内でのことであり、距離L1と距離L2との差は最大でも約25cm程度であって、それほど大きなものではないので、フロント左スピーカFLから見ればほぼ左右対称の位置関係にあるといえる。
従って音場最適化補正システム2では、フロント左スピーカFLのみからヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1に到達する測定音の周波数特性fHUをシミュレートし、そのヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUを、ヘッドレストH1のドライバーズリスニングポイントLP1においてフロント左スピーカFLから到達する測定音の周波数特性fDLとして用い得るようになされている。
このとき音場最適化補正システム2では、同様にして考えた場合、助手席のパッセンジャーズリスニングポイントLP2においても、フロント右スピーカFRとヘッドユニット3のマイクロフォンMF1との位置関係、フロント右スピーカFRとヘッドレストH1の測定用マイクロフォンMF2との配置関係とが近似することから、フロント左スピーカFLからヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1に到達する測定音をシミュレートした結果得られるへッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを、パッセンジャーズリスニングポイントLP2においてフロント右スピーカFRから到達する測定音の周波数特性fPRとして用い得るようになされている。
すなわち音場最適化補正システム2では、運転席のヘッドレストH1の頭部当接面H1Aに測定用マイクロフォンMF2を設置することなく、ヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1によってフロント左スピーカFLのみから到達する測定音を1回だけシミュレートした結果得られる周波数特性fHUを、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKとして用い得るようになされている。
同様に、音場最適化補正システム2では、助手席のヘッドレストの頭部当接面に測定用マイクロフォンを設置することなく、ヘッドユニット3の前面パネル2Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1によってフロント左スピーカFLのみから到達する測定音を1回だけシミュレートした結果得られる周波数特性fHUを、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKとして用い得るようになされている。
但し、この時点では、フロント左スピーカFLから運転席のドライバーズリスニングポイントLP1に到達するであろう測定音の仮想周波数特性fDLKと、フロント右スピーカFRから助手席のパッセンジャーズリスニングポイントLP2に到達するであろう測定音の仮想周波数特性fPRKとが得られたものの、フロント右スピーカFRからドライバーズリスニングポイントLP1に到達するであろう測定音の仮想周波数特性fDRKと、フロント左スピーカFLからパッセンジャーズリスニングポイントLP2に到達するであろう測定音の仮想周波数特性fPLKとについては未だ得られていない。
そこで音場最適化補正システム2では、フロント右スピーカFRからドライバーズリスニングポイントLP1に到達するであろう測定音の仮想周波数特性fDRK及びフロント左スピーカFLからパッセンジャーズリスニングポイントLP2に到達するであろう測定音の周波数特性fPLKについて、ヘッドユニット3のマイクロフォンMF1によって再度計測するのではなく計算によって求め得るようになされている。
そのため本発明の音場最適化補正システム2では、予め運転席のドライバーズリスニングポイントLP1に測定用マイクロフォンを設置し、フロント左スピーカFLのみから到達する測定音の実際の周波数特性fDLを検出し、続けてフロント右スピーカFRのみから当該ドライバーズリスニングポイントLP1に到達する測定音の実際の周波数特性fDRを検出し、その周波数特性差分Dを予め算出しておき、ヘッドユニット3に格納しておくようになされている。
そして音場最適化補正システム2では、測定用マイクロフォン等を一切用いることなくヘッドユニット3だけを用いてリスニング環境を改善する際、この周波数特性差分Dを、ヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPにおいて測定した周波数特性fHU(すなわちドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK)に加算して補正することにより、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKを生成し得るようになされている。
同様に、音場最適化補正システム2では、測定用マイクロフォン等を一切用いることなくヘッドユニット3だけを用いてリスニング環境を改善する際、この周波数特性差分Dを、ヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPにおいて測定した周波数特性fHU(すなわちパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK)に加算して補正することにより、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを生成し得るようになされている。
ここで、上述の周波数特性差分Dとしては、図7(A)〜(D)に示すように、車種が異なるにも拘わらず、概ね約400[Hz]付近で大きなゲインが得られるような特性を得ていることが分かる。これは、自動車1の車種が変わっても、車内空間の共通性及び特異性によって音場特性が車種に拘らず共通の傾向を持つからであろうと推測される。
なお、ヘッドユニット3に格納される周波数特性差分Dのゲインについては、実際のドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLのみから到達する測定音の周波数特性fDLと、フロント右スピーカFRのみから当該ドライバーズリスニングポイントLP1に到達する測定音の周波数特性fDRとの差分であるため、厳密に正確な値である。
ところで図7(A)〜(D)に示したように、この周波数特性差分Dのゲインについては共通ではなく車種毎に異なり、特に車幅の大きな(車内空間の横幅が大きな)自動車1では周波数特性差分Dのゲインが大きく、車幅の小さな自動車1では周波数特性差分Dのゲインが小さい傾向にあるため、ヘッドユニット3が車種毎に全ての周波数特性差分Dを予め算出して記憶しておくことが理想的である。
しかしながら音場最適化補正システム2のヘッドユニット3では、車種毎に全ての周波数特性差分Dを記憶しておくことはメモリの容量的に現実的ではないため、実際的にはフロント左スピーカFLとヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPに設けられているマイクロフォンMF1との距離が所定の閾値を超えているか否かによって周波数特性差分Dのゲインを多く設定して加算するか、或いは少なく設定して加算するかを選択的に切換えることにより、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKや、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを算出するようになされている。
このようにヘッドユニット3では、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRK及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKについても、実際に計測することなしに計算によって直ちに求め得るようになされている。
そしてヘッドユニット3は、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKと、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKと用いて、最終的にユーザ所望の音場空間になるように補正することによりリスニング環境を改善し得るようになされている。このような処理を実際に行うヘッドユニット3の回路構成及び音場最適化補正処理手順について以下、説明する。
(2)ヘッドユニットの回路構成
図8に示すように、音場最適化補正システム2のヘッドユニット3は、CPU(Central Processing Unit)構成のマイクロコンピュータ20が全体を統括制御し、前面パネル3Aの各種操作ボタン等でなるユーザインタフェース22から供給される各種命令を受け取り、当該各種命令に応じた信号処理をDSP(Digital Signal Processor)21によって実行させることにより、通常のCD又はDVDの再生処理等を実行し得るようになされている。
またヘッドユニット3は、ハンズフリー機能を実現するため、入出力端子T1及びT2を介して携帯電話機CPと接続し得るようになされており、当該携帯電話機CPから供給された相手接続先の音声信号に対してDSP21により復調処理等を行った後、アンプ24を介してフロント左スピーカFL及びフロント右スピーカFRから相手接続先の音声を出力する。
一方、ヘッドユニット3は、前面パネル3Aに埋め込まれたハンズフリー機能実現のためのマイクロフォンMF1を介して取得したユーザの音声をマイクアンプ23を介してDSP21に取り込み、当該DSP21により所定の圧縮符号化処理及び変調処理を施すことにより得られた音声信号を携帯電話機CPから相手接続先へ無線送信するようになされている。
ところでヘッドユニット3は、自動車1の車内空間における音場を最適に補正するため、最初にフロント左スピーカFLのみから音場補正用の測定用信号に応じた測定音を出力させ、その測定音を前面パネル3Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1によって集音し、その測定信号をマイクアンプ23を介してDSP21に入力する。
ここでマイクロフォンMF1は、図9に示すように、約70[Hz]付近から約7[kHz]付近まではフラットな周波数特性を有するものが用いられており、ヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれた場合でも、約70[Hz]付近から約7[kHz]付近の周波数帯域では車内空間の周波数特性を十分かつ正確に測定することが可能である。
ヘッドユニット3のマイクロプロセッサ20は、DSP21によってマイクアンプ23から供給された測定信号を解析することによりヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUを検出し、これをドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKとして認識したうえで、これを基に上述した周波数特性差分Dを加算して補正することによりドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKを算出する。
そしてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、DSP21によって得られたドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKとドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKとを基準として、その周波数特性を補正することにより、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるユーザ所望の最適なリスニング環境を構築し得るようになされている。
同様に、ヘッドユニット3のマイクロプロセッサ20は、DSP21によってマイクアンプ23から供給された測定信号を解析することにより検出したヘッドユニットポイントHPにおける周波数特性fHUをパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKとして認識したうえで、これを基に上述した周波数特性差分Dを加算して補正することによりパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを算出する。
そしてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、DSP21によって得られたパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKとパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKとを基準として、その周波数特性を補正することにより、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるユーザ所望の最適なリスニング環境を構築し得るようになされている。続いて、このような音場最適化補正処理手順について説明する。
(3)音場最適化補正処理手順
図10に示すように、ヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移り、ユーザによるユーザインタフェース22に対する操作に応じてドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKを検出するための測定開始トリガーが供給されたことを認識すると、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、DSP21を介してフロント左スピーカFLから測定音を出力し、次のステップSP3へ移り、その測定音を当該ヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれたマイクロフォンMF1で集音し、次のステップSP4へ移り、その測定音をDSP21に取り込んだ後、次のステップSP5へ移る。
ステップSP5においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、その測定音をDSP21によって解析(インパルス応答解析処理やFFT(Fast Fourier Transform)処理)することにより、ヘッドユニットポイントHPにおけるフロント左スピーカFLの周波数特性fHUを検出し、それをドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKとして認識し、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、フロント左スピーカFLから出力された測定音がヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPに設けられているマイクロフォンMF1に到達するまでの時間をインパルス応答によって算出し、その時間に基づいてフロント左スピーカFLと、ヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離を算出し、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、フロント左スピーカFLと、ヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはフロント左スピーカFLとヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離が所定の閾値よりも大きいことを表しており、このときヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、次のステップSP8へ移る。
ステップSP8においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、フロント左スピーカFLとヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離が所定の閾値よりも大きいため、自動車1が基準よりも大きな車幅の3ナンバー車であると認識し、次のステップSP9へ移る。
ステップSP9においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、上述したように約400[Hz]付近における周波数特性差分Dのゲインを多く設定し、これをヘッドユニットポイントHPにおけるフロント左スピーカFLの周波数特性fHUに加算して補正した後、次のステップSP12へ移る。
一方、ステップSP7で否定結果が得られると、このことはフロント左スピーカFLとヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離が所定の閾値よりも小さいことを表しており、このときヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、次のステップSP10へ移る。
ステップSP10においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、フロント左スピーカFLとヘッドユニットポイントHPのマイクロフォンMF1との距離が閾値よりも小さいため、自動車1が基準よりも小さな車幅の5ナンバー車であると認識し、次のステップSP11へ移る。
ステップSP11においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、約400[Hz]付近における周波数特性差分Dのゲインを少なく設定し、これをヘッドユニットポイントHPにおけるフロント左スピーカFLの周波数特性fHUに加算して補正した後、次のステップSP12へ移る。
ステップSP12においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、ヘッドユニットポイントHPにおけるフロント左スピーカFLの周波数特性fHUすなわちドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK又はパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKに対して、ステップSP9又はステップSP11で設定した周波数特性差分Dのゲインを設定して加算することにより、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRK又はパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを生成し、次のステップSP13へ移る。
ステップSP13においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、図11に示すようにヘッドユニットポイントHPで実際に測定した結果得られた周波数特性fHU(すなわちドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK、又はパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK)と、最終的にユーザが希望する音場空間を構築するための目標となる目標周波数特性FFとの差分を抽出し、次のステップSP14へ移る。
なお、ヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、ヘッドユニットポイントHPで実際に測定した結果得られた周波数特性fHUを基に上述の計算によって算出したドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRK、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKと、最終的にユーザが希望する音場空間を構築するための目標となる目標周波数特性FFとの差分についても抽出し、次のステップSP14へ移る。
ステップSP14においてヘッドユニット3のマイクロコンピュータ20は、ステップSP13で抽出した差分を基に目標周波数特性FFに近づけるように補正イコライジングすることにより、補正後の最終的な周波数特性fDLk´、fDRk´、fPRk´、fPLk´を得ると共に、フロント左スピーカFLとフロント右スピーカFRによる音の出力タイミングを制御して位相を揃えるタイムアライメント調整を行うことにより、ドライバーズリスニングポイントLP1やパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるリスニング環境を改善し、次のステップSP15へ移って処理を終了する。
(4)動作及び効果
以上の構成において、音場最適化補正システム2では、ヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれたハンズフリー機能用のマイクロフォンMF1を用いてフロント左スピーカFLやフロント右スピーカFRからの測定音を計測するようにしたことにより、測定用マイクロフォンを運転席のヘッドレストH1付近に設置する等の煩雑な手間をユーザに強いることなく、ドライバーズリスニングポイントLP1やパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるリスニング環境に容易に改善することができる。
また音場最適化補正システム2では、ヘッドユニット3のハンズフリー機能用のマイクロフォンMF1によってフロント左スピーカFLからの測定音を計測した結果得られるヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLKとして認識することが出来ると共に、予め正確に算出しておいたドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLとフロント右スピーカFRとの周波数特性差分Dを用いて当該仮想周波数特性fDLKを補正することにより、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKについても計算によって直ちに求めることが出来る。
このとき同様に音場最適化補正システム2は、ヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKとして認識することが出来ると共に、予め正確に算出しておいたパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRとフロント左スピーカFLとの周波数特性差分Dを用いて当該仮想周波数特性fPRKを補正することにより、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKについても計算によって直ちに求めることが出来る。
このように音場最適化補正システム2は、ヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK、及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRKとして認識し、かつそれを基にそれぞれの周波数特性差分Dを用いて計算により、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRK、及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを算出することができるので、実際に測定する場合よりも定在波によるピークやディップのない本来あるべき正確な仮想周波数特性fDRK及び仮想周波数特性fPLKを得ることができる。
すなわち音場最適化補正システム2では、あくまでヘッドユニット3のハンズフリー機能用のマイクロフォンMF1によってフロント左スピーカFLからの測定音を1度だけ計測した結果得られるヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを基に、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK及びフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKを得ることが出来ると共に、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK及びフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを得ることが出来る。
従って音場最適化補正システム2では、ヘッドユニット3のマイクロフォンMF1を用いてフロント左スピーカFLの測定音を1度測定するだけで済むため、従来に比較してユーザの手間を大幅に減らすことができる。
さらに音場最適化補正システム2では、ヘッドユニット3の前面パネル3Aに埋め込まれた固定のマイクロフォンMF1を用いると共に、予め算出しておいた正確な周波数特性差分Dを用いてヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを補正するようにしたことにより、従来のような測定用マイクロフォンの設置ミスや測定ミス等の人的ミスを無くすことが出来るので、一段と精度の高いドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK及びフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKや、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK及びフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを得ることができる。
そして音場最適化補正システム2は、このような精度の高いドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK及びフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKを基準にして補正イコライジング及びタイムアライメント調整を行うことにより、ドライバーズリスニングポイントLP1をユーザ所望のリスニング環境に容易かつ高精度に改善することができる。
同様に、音場最適化補正システム2は、このような精度の高いパッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK及びフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを基準にして補正イコライジング及びタイムアライメント調整を行うことにより、パッセンジャーズリスニングポイントLP2をユーザ所望のリスニング環境に容易かつ高精度に改善することができる。
以上の構成によれば、音場最適化補正システム2は、車種に拘わらず同様の車内空間を有する自動車1に搭載されることになるので、その車内空間の共通性及び特異性を利用して簡単な構造及び少ない計測回数によってドライバーズリスニングポイントLP1及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2における仮想周波数特性fDLK、fDRK、fPRK、fPLKを高精度に得、それを用いてリスニング環境を改善することができるので、煩雑な手間をユーザに強いることなく一段と簡易に車内空間の音場を最適かつ高精度に補正することができる。
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、フロント右スピーカFR、フロント左スピーカFLの2チャンネル構成の音場最適化補正システム1を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フロント右スピーカFR及びフロント左スピーカFL以外にリア右スピーカ及びリア左スピーカを加えた4チャンネル構成若しくはそれ以上のスピーカを有する多チャンネル構成の音場最適化補正システムを用いるようにしても良い。
また上述の実施の形態においては、ヘッドユニット3における前面パネル3Aのほぼ中央上方部分に埋め込まれたハンズフリー機能用の無指向性のマイクロフォンMF1を用いて車内空間の音場補正を行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図12に示すように、ヘッドユニット3における前面パネル3Aの左側上方部分に埋め込まれたマイクロフォンMF1を用いて車内空間の音場補正を行うようにしても良く、同様にヘッドユニット3における前面パネル3Aの右側上方部分に埋め込まれたマイクロフォンMF1を用いて車内空間の音場補正を行うようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、フロント左スピーカFL又はフロント右スピーカFRからヘッドユニット3のマイクロフォンMF1に到達する測定音の周波数特性fHUを測定し、その測定結果を用いてドライバーズリスニングポイントLP1及びパッセンジャーズリスニングポイントLP2のリスニング環境を改善するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、後部右座席と後部左座席のほぼ中間にヘッドユニット3を取り付け、リア左スピーカ及びリア右スピーカからヘッドユニット3のマイクロフォンMF1に到達する音の周波数特性を測定し、その測定結果を用いて後部右座席リスニングポイント及び後部左座席リスニングポイントのリスニング環境を改善するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、ヘッドユニット3のハンズフリー機能用のマイクロフォンMF1によってフロント左スピーカFLからの測定音を1度だけ計測した結果得られるヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを基に、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK及びフロント右スピーカの仮想周波数特性fDRKを得ると共に、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK及びフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを得るようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ヘッドユニット3のハンズフリー機能用のマイクロフォンMF1によってフロント右スピーカFRからの測定音を1度だけ計測した結果得られるヘッドユニットポイントHPの周波数特性fHUを基に、パッセンジャーズリスニングポイントLP2におけるフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fPRK及びフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fPLKを得ると共に、ドライバーズリスニングポイントLP1におけるフロント左スピーカFLの仮想周波数特性fDLK及びフロント右スピーカFRの仮想周波数特性fDRKを得るようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、フロント左スピーカFLからみればヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPと、ヘッドレストH1のドライバーズリスニングポイントLP1とが左右対称の位置関係になるように当該フロント左スピーカFLが助手席側ドアに取り付けられると共に、フロント右スピーカFRからみればヘッドユニット3のヘッドユニットポイントHPと、パッセンジャーズリスニングポイントLP2とが左右対称の位置関係になるように当該フロント右スピーカFRが運転席側ドアに取り付けられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ヘッドユニットポイントHPで測定される周波数特性fHUとドライバーズリスニングポイントLP1又はパッセンジャーズリスニングポイントLP2で測定されるであろう仮想周波数特性fDLK、fPRKとがほぼ近似するのであれば、フロント左スピーカFL及びフロント右スピーカFRの位置はこれに限るものではなく、フロント左スピーカFL及びフロント右スピーカFRからみて必ずしも左右対称の位置関係にならない僅かにずれた場所に取り付けられるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、車載用電子機器としてのヘッドユニット3を、集音手段としてのマイクロフォンMF1、制御手段としてのマイクロコンピュータ20及びDSP21によって構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる集音手段及び制御手段によって車載用電子機器を構成するようにしても良い。
本発明の車載用電子機器、車内空間の音場最適化補正方法及び車内空間の音場最適化補正システムは、例えば左スピーカ及び右スピーカのほぼ中間位置にヘッドユニットが設けられ、そのヘッドユニットの正面から僅かにずれた位置にリスニングポジションがあるような狭い室内空間のリスニング環境を改善する場合に適用することができる。
本発明における音場最適化補正システムの全体構成を示す略線図である。 ヘッドユニットの構成を示す略線図である。 測定ポイントの説明に供する略線図である。 マイクロフォンの設置場所を示す略線的斜視図である。 車種毎の周波数特性を示す特性曲線図である。 スピーカに対するヘッドユニット及びリスニングポイントの位置関係の説明に供する略線図である。 フロント左スピーカとフロント右スピーカとの周波数特性差分を示す特性曲線図である。 ヘッドセットの回路構成を示す略線的ブロック図である。 マイクロフォンの周波数特性を示す特性曲線図である。 音場最適化補正処理手順を示すフローチャートである。 周波数特性補正例の説明に供する特性曲線図である。 他の実施の形態におけるヘッドユニットの構成を示す略線的斜視図である。
符号の説明
1……自動車1……音場最適化補正システム、3……ヘッドユニット、10……挿入口、20……マイクロコンピュータ、21……DSP、22……ユーザインタフェース、23……マイクアンプ、24……アンプ、CP……携帯電話機、FL……フロント左スピーカ、FR……フロント右スピーカ、BOX……仮想音響空間、H1……ヘッドレスト、MF1……マイクロフォン、MF2……測定用マイクロフォン、LP1……ドライバーズリスニングポイント、LP2……パッセンジャーズリスニングポイント。

Claims (6)

  1. 車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられる車載用電子機器であって、
    上記車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンにより、上記車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音を集音する集音手段と、
    上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記前面パネルを介して上記マイクロフォンに到達する上記音の周波数特性と、上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記ヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントに到達するであろう上記音の仮想周波数特性とがほぼ近似するとの傾向に基づいて当該音の周波数特性を補正する制御手段と
    を具えることを特徴とする車載用電子機器。
  2. 上記集音手段は、上記車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音及び近くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音をそれぞれ集音し、
    上記制御手段は、上記遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカから上記前面パネル前面を介して上記マイクロフォンに到達する上記音の周波数特性と、上記近くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカから上記前面パネルを介して上記マイクロフォンに到達する上記音の周波数特性との周波数特性差分を予め算出しておき、当該周波数特性差分を用いて上記音の周波数特性を補正する
    ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電子機器。
  3. 上記制御手段は、上記補正後の周波数特性をユーザ所望のリスニング環境になるようにイコライザー調整する
    ことを特徴とする請求項2に記載の車載用電子機器。
  4. 上記集音手段のマイクロフォンは、携帯電話のハンズフリー機能を実現するための無指向性マイクロフォンである
    ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電子機器。
  5. 車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられた車載用電子機器による車内空間の音場最適化補正方法であって、
    上記電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンにより、上記車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の左スピーカ又は右スピーカを介して出力される音を集音する集音ステップと、
    上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記前面パネル前面を介して上記マイクロフォンに到達する上記音の周波数特性と、上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記ヘッドレスト前面を介して上記リスニングポイントに到達するであろう上記音の仮想周波数特性とがほぼ近似するとの傾向に基づいて、制御手段によって当該音の周波数特性を補正する周波数特性補正ステップと
    を具えることを特徴とする車内空間の音場最適化補正方法。
  6. 車内空間の運転席と助手席とのほぼ中間位置のフロントコンソールパネルに取り付けられる車載用電子機器と、上記車内空間に存在する運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、左右に設けられた左スピーカ又は右スピーカとによって構築される車内空間の音場最適化補正システムであって、
    上記車載用電子機器は、
    当該車載用電子機器の前面パネルに設けられたマイクロフォンにより、上記運転席又は助手席のヘッドレスト前面に想定されたリスニングポイントからみて、遠くに位置する方の上記左スピーカ又は上記右スピーカを介して出力される音を集音する集音手段と、
    上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記前面パネル前面を介して上記マイクロフォンに到達する上記音の周波数特性と、上記左スピーカ又は上記右スピーカから上記ヘッドレスト前面を介して上記リスニングポイントに到達するであろう上記音の仮想周波数特性とがほぼ近似するとの傾向に基づいて当該音の周波数特性を補正する制御手段と
    を具えることを特徴とする車内空間の音場最適化補正システム。
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