JP2007260999A - インクジェット記録用シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 写像性に優れるとともに、染料インク及び顔料インクのいずれを用いても印字適性に優れたインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】 基材の少なくとも片面にインク受容層を有し、インク受容層の上に光沢層を有し、光沢層は顔料と結着剤とを含有し、結着剤は、ポリビニルアルコールの存在下に共役ジエン単量体、並びに該共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和ニトリル単量体及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合して得られる共重合物と、ポリビニルアルコールとを含有し、結着剤は顔料100質量部に対して3〜30質量部含有されている。
【選択図】 なし

Description

本発明はインク受容層とその上の光沢層とを有するインクジェット記録用シートに関する。
インクジェット記録用シートは、紙等のシート状基材表面にシリカ、アルミナなどの多孔質の顔料と結着剤とを含有するインク受容層を設けた構成になっていて、このインク受容層にインクの液滴が定着するようになっている。そして、近年のインクジェットプリンターの目覚ましい進歩や、デジタルカメラの著しい普及により、インクジェット記録用シートに要求される品質も年々高くなってきている。
ところで、インクジェット記録方式に用いる記録用シートは、いわゆる上質紙・PPC用紙に似た風合いの普通紙タイプのものと、インク受容層を有することが明らかに視認できる塗工紙タイプのものに大別される。さらに塗工紙タイプの記録用シートは、インク受容層が光沢を有するグロスタイプと、光沢を有しないマットタイプとに大別される。特に、従来の銀塩写真に匹敵する光沢を有するインクジェット記録用シートにおいては、品質要求が厳しく、技術開発が活発に行われている。
このような光沢インクジェット記録用シートに要求される品質特性として、インク乾燥速度が速いこと、印字濃度が高いこと、インクの溢れや滲みがないこと、写像性が高いこと等が挙げられ、これら特性を向上するためには光沢層の改善が必要となってくる。例えば、光沢層が300nm以下の平均粒径を有するコロイド粒子とカチオン性樹脂とを少なくとも含有する技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。又、キャスト塗工層(光沢層)中に、(1)1次粒子の平均粒子径が3〜40nmで、2次粒子の平均粒子径が10〜400nmであるシリカ微細粒子と、(2)平均粒子径が200nm以下のコロイダルシリカとを含有する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、近年、顔料の分散技術が発達したため、顔料を色材とした顔料インクが普及しつつある。顔料インクで画像を記録すると保存性は良好であるが、染料インク用に設計された従来のインクジェット記録シートに印字した場合に画像の発色性に劣ったり、色材(顔料)がシート表面から欠落する問題がある。
そこで、この問題を解決するため、染料インクと顔料インクのいずれを用いても良好な記録画像が得られる技術が報告されている(特許文献3参照)。この技術においては、例えば、平均粒子径5〜20μmの非晶質シリカと、鹸化度90.0〜97.0mol%且つ重合度1000〜3500のポリビニルアルコールとを含有し、該非晶質シリカとポリビニルアルコールの構成質量比が100/100〜100/20である光沢層を設けることが開示されている。
また、顔料インク用インクジェット記録用媒体として、平均粒子直径1μm以下の顔料を用い、光沢層表面の20度鏡面光沢度が2〜18%で、像鮮明度光沢が20以下であるものが開示されている(特許文献4参照)。
特開平9−263039号公報 特開2000−85242号公報 特開2003−94794号公報 特開2002−321448号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の技術を用いても、高い光沢感を有し、かつ染料インクと顔料インクのいずれを用いても充分に高い画像濃度を得られるインクジェット記録用シートはいまだ得られていない。例えば、特許文献1、2記載の技術の場合、ある程度の光沢を有する記録用シートは得られるものの、顔料インクで印字した際の発色性が低い。また、特許文献3記載の技術の場合、染料インクと顔料インクのいずれを用いて印字した場合も発色性が満足できるものではない。特許文献4記載の技術の場合、染料インクで印字した際の発色性(印字濃度)や吸収性に問題がある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、写像性に優れるとともに、染料インク及び顔料インクのいずれを用いても印字適性(印字濃度、インク吸収性等)に優れたインクジェット記録用シートの提供を目的とする。
本発明者らは、光沢層の結着材として、以下の共重合物とポリビニルアルコールとを用いることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、基材の少なくとも片面にインク受容層を有し、前記インク受容層の上に光沢層を有するインクジェット記録用シートであって、前記光沢層は顔料と結着剤とを含有し、前記結着剤は、ポリビニルアルコールの存在下に共役ジエン単量体、並びに該共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和ニトリル単量体及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合して得られる共重合物と、ポリビニルアルコールとを含有し、前記結着剤は前記顔料100質量部に対して3〜30質量部含有されていることを特徴とする。
前記共役ジエン単量体はブタジエン単量体であり、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体はアクリロニトリル単量体であり、前記エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体はアクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
前記光沢層の60°鏡面写像性が60%以上であることが好ましい。
前記光沢層はキャストコート法により設けられてなることが好ましい。
本発明によれば、高い光沢感を有する(写像性に優れる)とともに、染料インク及び顔料インクのいずれを用いても印字適性(印字濃度、インク吸収性等)に優れたインクジェット記録用シートが得られる。
以下本発明の実施形態について説明する。本発明のインクジェット記録用シートは、基材の少なくとも一方の面にインク受容層を設け、インク受容層の上に光沢層を設けたものである。インク受容層と光沢層とはいずれも顔料及び結着剤を含む。
(基材)
本発明に使用される基材は、シート状のものであればいずれのものを用いることが可能であるが、透気性を有するものが好ましい。例えば塗工紙、未塗工紙等の紙を基材として好適に用いることができる。前記紙の原料パルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプ等を単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。尚、前記紙のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。また、不透明度を向上させるため、前記紙中に填料を含有させることが好ましいが、填料は、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂微粒子等、公知の填料の中から適宜選択して使用することができる。操業性の点から、前記紙の透気度は1000秒以下であることが好ましく、又、塗工性の点から紙のステキヒトサイズ度は5秒以上であることが望ましい。
(光沢層の顔料)
光沢層の顔料は特に限定されないが、以下のコロイダルシリカ、合成非晶質シリカ、及び/又は板状アルミナを含むことが好ましい。
1.コロイダルシリカ
本発明において好ましく使用できるコロイダルシリカは、一次粒子径が5〜55nm、より好ましくは10〜40nmである。一次粒子径が5nm未満であると、顔料インクを用いて印字した場合にインク発色性の低下が大きくなる傾向がある。一次粒子径が55nmを超えると、粒子間の空隙が増えて光沢層のインク吸収性は良好となるが、不透明性が増大するために染料インクで印字した際の発色性が低下する傾向にある。
又、前記コロイダルシリカは一次粒子が凝集して二次粒子径をもつものであっても良い。この場合、一次粒子径に対する二次粒子径の比(二次粒子径/一次粒子径)を1.5〜3.0とすることが好ましい。上記した一次粒子径及び一次粒子径に対する二次粒子径の比を有するコロイダルシリカを光沢層に含有させることにより、顔料インクの発色性が大きく向上する。上記比が1.5未満であると、顔料インク及び染料インクの発色性がいずれも低下する傾向にある。
コロイダルシリカの一次粒子径及び二次粒子径はBET法や動的光散乱法等で測定できる。
一次粒子径及び比が上記範囲であれば、それぞれ一次粒子径及び/又は比の異なる2種以上のコロイダルシリカを併用することもできる。
なお、上記コロイダルシリカの分散状態を顕微鏡で観察した場合、球状の単一コロイダルシリカ(一次粒子)が2〜3個連なった(凝集した)ものが多数観察される。このような凝集状態を便宜上、ピーナツ状と表す。そして、本発明におけるコロイダルシリカは、その分散状態を顕微鏡観察した場合に、球状の単一コロイダルシリカが少なくとも5個以上、通常は10個以上凝集したシリカ(房状又は鎖状のコロイダルシリカという)を含まない。但し、ここでいう「含まない」とは、その分散状態を顕微鏡観察した場合に、上記した房状又は鎖状のコロイダルシリカ、又は単一コロイダルシリカがまったく観察されないことをいうのでなく、これらのコロイダルシリカが観察されてもよいが、マクロ的な物性である上記比が1.5〜3.0であればよいものとする。ここで、上記したコロイダルシリカの一次粒子の連結個数を平均した値は、上記比にほぼ対応する。
前記コロイダルシリカは、アルコキシシランを原料としてゾルゲル法により合成し、合成条件によって一次粒子径(BET法粒子径)や二次粒子径(動的光散乱法粒子径)をコントロールすることが好ましい。本発明に使用できるコロイダルシリカとしては、扶桑化学工業社製の商品名クォートロン(ピーナッツ状)、日産化学工業社製スノーテックス(球状又は鎖状)を挙げることができる。
2.合成非晶質シリカ
本発明に好適に用いることができる合成非晶質シリカはその製造法により、湿式法シリカと気相法シリカに大別できる。
(湿式法シリカ)
湿式法で製造された合成非晶質シリカ(以下、適宜「湿式法シリカ」という)は顔料の透明性に関しては気相法シリカに劣るが、ポリビニルアルコールと併用した場合の塗料安定性に優れる。さらに、内部空隙の無い気相法シリカに比べ、湿式法シリカは液への分散性が良好であり、塗料濃度を高くすることが可能である。そのため、光沢層の顔料として、湿式法シリカを用いると、光沢層中の顔料比率を高くして光沢層の吸収性を高くできるので、インク吸収性を向上できると共に染料インクの発色性を向上できると考えられる。
又、湿式法シリカとしては、ゲル法で製造した「ゲル法シリカ」と、沈降法で製造した「沈降法シリカ」とがある。光沢層の顔料としては、ゲル法シリカと沈降法シリカのいずれを単独で用いてもよく、これらを併用してもよいが、沈降法シリカを用いるとインク吸収性がより向上するので好ましい。
高い光沢感を得るという点から、湿式法シリカの好ましい2次粒子径は1〜5μmであ
る。また、湿式法シリカのBET比表面積は150〜500m/gであることが好ましい。比表面積が500m/gを超えると発色性が低下する傾向にある。
(気相法シリカ)
光沢層に気相法シリカを含有させることが好ましい。気相法シリカを光沢層に含有させると、理由は明らかではないが、光沢層のインクの濡れが良好となるため、ベタ印字した際のムラが改善される傾向にある。
気相法シリカは、乾式法シリカ、又はヒュームドシリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。気相法シリカは、具体的には四塩化珪素などの揮発性シラン化合物の酸水素炎中における気相加水分解によって製造され、火炎の温度、酸素と水素の供給比率、及び原料の四塩化珪素供給量等の条件を変更することにより得られる。四塩化ケイ素の代わりに、メチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類を単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジルとして市販され、株式会社トクヤマからレオロシールQSタイプとして市販されており、容易に入手することができる。
気相法シリカの平均一次粒径は5〜50nmであることが好ましい。
又、気相法シリカの比表面積(BET法による)が130m/g〜300m/gであると、光沢層の透明性が高くなり、かつ塗料に配合した際の安定性が良好となるので好ましい。気相法シリカの比表面積が130m/gより小さい場合、光沢層の不透明性が増し、インクジェットプリンターで印字した場合の印字濃度が低下する等の不具合を生じる場合がある。気相法シリカの比表面積が300m/gを越えると、光沢層の透明性が良好となり、印字濃度が向上するが、塗料の安定性に劣る傾向にあり、塗工性が低下する場合がある。
合成非晶質シリカの二次粒子径は、体積平均粒子径であり、レーザー法粒度測定機(例えば、マルバーン社製の商品名:マスターサイザーS型)を用いて測定することができる。
(コロイダルシリカと合成非晶質シリカの配合比)
本発明において、光沢層の顔料としてコロイダルシリカと湿式法シリカを混合して用いることが好ましい。コロイダルシリカは得られた記録用シートの写像性を向上させ、湿式法シリカはインク吸収性を向上させるものと考えられる。
これらの割合としては、(上記コロイダルシリカの質量)/(上記湿式法で製造された合成非晶質シリカの質量)で表される比が30/70〜85/15であることが好ましく、40/60〜70/30であることがより好ましい。上記比が30/70未満であると、コロイダルシリカの配合割合が少なくなり、顔料インクの発色性向上が不十分となる傾向がある。また、上記比が85/15を超えてコロイダルシリカの配合量が多くなると、染料インクの発色性が低下する傾向があり、さらに、光沢層を塗工する際の操業性が低下する場合がある。
本発明においては、光沢層の顔料としてさらに気相法シリカを配合することが好ましい。この場合の配合割合は、コロイダルシリカと湿式法シリカの合計量100質量部に対し、気相法シリカを3〜60質量部とすることが好ましい。より好ましくは、上記合計量100質量部に対し、気相法シリカを15〜35質量部とする。気相法シリカの配合割合が少ない場合、ベタ印字した際のムラの改善効果が少なくなる傾向にある。また、気相法シリカの配合割合が多い場合、インク受容層の光沢感が低下する傾向にある。
3.アルミナ
本発明においては光沢層の顔料としてアルミナを使用することができる。アルミナとしては、例えば水酸化アルミニウム、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等のアルミナ(α型結晶のアルミナ、θ型結晶のアルミナ、Y型結晶のアルミナ等)、アルミナ水和物等を用いることができる。高い光沢感を得るためには、アルミナの形状は板状であることが好ましい。アルミナの平均粒径は1.5〜2.8μm、密度0.04〜0.11g/cm、BET比表面積は130〜180m/g、吸油量は140〜180ml/100gであることが好ましい。なお、アルミナの二次粒子径は、体積平均粒子径であり、レーザー法粒度測定機(例えば、マルバーン社製の商品名:マスターサイザーS型)を用いて測定することができる。
アルミナは、単独で使用することが好ましいが、シリカ等と混合して用いてもよい
(その他の顔料)
光沢層の顔料として、上述したコロイダルシリカ、合成非晶質シリカ、及びアルミナ以外の顔料を含有してもよい。このような顔料としては、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料の配合割合は、光沢層の全顔料に対して10質量%以下とすることが好ましい。
(光沢層の結着剤)
1.共重合物
光沢層の結着剤は、ポリビニルアルコール(PVA)の存在下に共役ジエン単量体、並びに該共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和ニトリル単量体及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合して得られる共重合物とポリビニルアルコールとを含有する。
この共重合物は、共重合体の周囲にPVAが結合したラテックスであり、文献(特開2003-312126号公報)に記載され、又、市販されている(例えば、日本ゼオン社製のNippol PNT7278,7325,7326)。
但し、上記文献にはスチレン単量体を用いた共重合物が記載されているが、スチレン単量体を用いると光沢層の写像性や、インクジェット記録における記録特性(印字濃度、インク吸収性)が劣るため、本発明ではスチレン単量体を用いない。
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエン単量体の中でも1,3−ブタジエンが好ましい。
共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。
このエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体を含有しても良い。
共重合物に用いる単量体の組み合わせの好ましい例としては、ブタジエン単量体と、ブタジエン単量体と共重合するアクリロニトリル単量体と、ブタジエン単量体と共重合するアクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。この場合、上記各単量体のうち、少なくともブタジエン単量体と、該ブタジエン単量体と共重合する単量体の2種類を用いて重合することができるが、好ましくは、ブタジエン単量体と、アクリロニトリル単量体と、アクリル酸アルキルエステル単量体とメタクリル酸アルキルエステル単量体のうちいずれか、を用いる。
上記共重合物は、上記各単量体をポリビニルアルコール(変性物を含む)の存在下で重合して得られる。重合時のポリビニルアルコールの使用量は特に限定されないが、単量体の合計100質量部当たり0.5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量部である。
上記共重合物は、乳化重合法により製造することが好ましく、乳化重合法としては、特に限定されないが、水性媒体中で分解して過酸化物ラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル開始剤)を用い、PVAの存在下に単量体を重合させる方法が好ましい。ポリビニルアルコールと単量体の添加方法は、特に限定されないが、それぞれを反応器に連続的に添加しながら重合することが好ましく、ポリビニルアルコール、単量体および水性媒体を混合して得られる単量体乳化物を、反応器に連続的に添加しながら重合することがより好ましい。
2.ポリビニルアルコール
光沢層の結着剤は、上記共重合物の他にポリビニルアルコールを含有する。ポリビニルアルコールは、いずれのタイプのものを使用してもよく、例えば、ケン化度が98%未満のもの、及びケン化度が98%以上のものを単独で使用し、又は併用することができる。又、ケン化度が98%未満のもの、又は98%以上のものの中から、2種類以上のポリビニルアルコールを併用することもできる。ここで、ケン化度が98%未満のものは、部分ケン化ポリビニルアルコールや中間ケン化ポリビニルアルコールと呼ばれる。ケン化度が98%以上のものは、完全ケン化ポリビニルアルコールと呼ばれる。
(1)ポリビニルアルコールのケン化度
ポリビニルアルコールのケン化度が低いほど、インク吸収性が向上する傾向にある。この理由は、ケン化度が低いほどポリビニルアルコールの親水性が高く、インクの吸収性も良好となるためと考えられる。また、ポリビニルアルコールのケン化度が低いほど、発色性が向上する傾向にある。この理由としては、ケン化度が低いほど透明性が高く、そのため塗工層の透明性が高くなり、印字濃度が向上するためと考えられる。
一方、ケン化度が低いほど、塗料安定性が劣る傾向にあり、経時により塗工液が増粘(ひどい時にはプリン状にゲル化)する場合がある。この理由は、ケン化度が低いほど、シリカ(上記した湿式法シリカ及びコロイダルシリカ)との相互作用が強くなるためと考えられる。このため、ポリビニルアルコールのケン化度は80%以上であることが好ましい。
又、上記したように、ポリビニルアルコールのケン化度が低いほど印字適性が向上し、ケン化度が低いほど操業性が向上するので、印字適性及び操業性を両立させる場合には、ケン化度が98%未満のもの、及びケン化度が98%以上のものを所定の配合割合で混合して用いることが好ましい。
(2)ポリビニルアルコールの重合度
又、ポリビニルアルコールの重合度が高くなると、顔料インク印字時の印字濃度が向上する一方、染料インクで印字した際のインク吸収性が劣る傾向にある。顔料インクの印字濃度が向上する理由としては、ポリビニルアルコールの重合度が高いほど光沢層表面に残り易くなり、そのため光沢層の柔軟性が高くなってクラック(ひび割れ)が低減することが考えられる。そして、光沢層のクラックが低減すると、インク中の着色顔料が光沢層表面に留まり易くなり、顔料インクの発色性(印字濃度)が向上すると考えられる。一方、ポリビニルアルコールの重合度が高くなると、インク溶媒と接触した際のポリビニルアルコールの溶解性が悪くなり、染料インクのインク吸収性が低下すると考えられる。
以上のことから、顔料インクの発色性を向上する点からはポリビニルアルコールの重合度が2000以上であることが好ましく、染料インクのインク吸収性を向上する点からはポリビニルアルコールの重合度が2000未満であることが好ましい。
さらに、顔料インクの発色性と染料インクのインク吸収性とを共に向上させるために、重合度2000以上のポリビニルアルコールと、重合度2000未満のポリビニルアルコールとを併用してもよい。
3.結着剤の配合割合
光沢層の結着剤の配合量は、光沢層の顔料100質量部に対して3〜30部である。配合量が3部未満である場合、光沢層のインク吸収性は良好となるものの塗工層の写像性が不足するため、光沢の優れたインクジェット記録シートを得ることができない。一方、配合量が30部を超えると、写像性は良好となるが、インク吸収性が劣る。
又、結着剤中のポリビニルアルコールと共重合物の質量比は、例えば(PVA):(共重合物)=1:9〜9:1の範囲で適宜変えることができる。
4.他の成分
光沢層には、上記した顔料と結着剤の他に、例えば、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、顔料分散剤、離型剤、発泡剤、pH調整剤、表面サイズ剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、防腐剤、耐水化剤、染料定着剤、界面活性剤、湿潤紙力増強剤、保水剤、カチオン性高分子電解質等を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜添加することができる。
(キャストコート法)
光沢層の表面に光沢を付与する方法としては、製造コストの点からキャストコーターを用いるキャストコート法が好適である。キャストコート法は、顔料と結着剤とを主成分とする塗工液を基材上に塗工して塗工層を設け、塗工層をキャストドラムに圧着して光沢仕上げする方法である。
キャストコート法としては、(1)塗工層が湿潤状態にある間に、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着して乾燥するウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥又は半乾燥した後に再湿潤液により膨潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するリウェット法、(3)湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)、の3種類がある。各方法の原理は、湿潤状態の塗工層を鏡面仕上げの面に押し当てて、塗工層表面に光沢を付与するという点では同一である。
好ましくは、銀塩写真に匹敵する面感、光沢を付与することが可能であるという点で、ゲル化キャストコート法(凝固法)を用いる。
凝固液としては、湿潤状態の塗工層中の水系結着剤を凝固する作用を持つもの、例えば、蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等のカルシウム、亜鉛、マグネシウム等の各種の塩の溶液が用いられる。特に、本発明では水系結着剤としてポリビニルアルコールを用いるため、凝固液としてホウ酸とホウ酸塩とを含有する液を用いることが好ましい。ホウ酸とホウ酸塩とを混合して用いることにより、凝固時の塗工層固さを適度なものとすることが容易となり、光沢層に良好な光沢感を付与できる。凝固液を塗布する方法は、塗工層に塗布できる限り特に制限されず、公知の方法(例えばロール方式、スプレー方式、カーテン方式等)の中から適宜選択することができる。
又、上記塗工液及び/又は凝固液には、必要に応じて剥離剤を添加することができる。剥離剤の融点は90〜150℃であることが好ましく、特に95〜120℃であることが好ましい。上記の温度範囲においては、剥離剤の融点が鏡面仕上げ面の温度とほぼ同等であるため、剥離剤としての能力が最大限に発揮される。剥離剤は上記特性を有していれば特に限定されるものではないが、ポリエチレン系のワックスエマルジョンを用いることが好ましい。
(60°鏡面写像性)
光沢層面の60°鏡面写像性が70%以上であることが好ましい。このようにすると、銀塩写真に匹敵する光沢を有し、さらに高い発色性とインク吸収性を達成したインクジェット記録用シートが得られる。
(インク受容層)
インク受容層は、基材と光沢層の間に設けられ、顔料と結着剤とを含む。
1.インク受容層の結着剤
インク受容層の結着剤は、インク吸収性を阻害しなければ特に限定されないが、インク受容層に用いる塗工液の塗工液物性を確保するため、水溶性高分子を含有することが好ましい。水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体;酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体を単独で使用し、または併用することができる。特に、透明性が高い結着剤であるポリビニルアルコールを用いると、印字部の発色濃度が向上するため好ましい。
インク受容層中の結着剤の配合量は特に制限されないが、塗工層強度、インク吸収性、塗工適性等を具備する点から、インク受容層の全顔料100質量部に対して2〜50質量部が好ましく、より好ましくは3〜25質量部である。
2.インク受容層の顔料
インク受容層に用いる顔料は、インク吸収性を阻害しなければ特に限定されないが、例えば合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合粒子、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、水和アルミナ(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、サチンホワイト、二酸化チタン、モンモリロナイト、プラスチックピグメント等の顔料を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。特に、透明性が高く、インクジェット記録を行った際の発色性が向上する点で、合成非晶質シリカ又はアルミナを用いることが好ましい。
3.その他の成分
インク受容層には上記各成分の他、本発明の効果を損なわない限り、その他添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を配合することもできる。
(光沢層及びインク受容層の形成)
基材上に光沢層及びインク受容層用塗工液を塗布する方法としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコータ、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター等の公知の塗工機をオンマシン又はオフマシンで用いた塗工方法の中から、適宜選択することができる。光沢層の場合は、この層を上記塗工方式で塗工した後、キャストコート法により光沢を付与することが好ましい。
インク受容層、及び光沢層の塗工量は、基材の表面を覆い、かつ十分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、発色性及びインク吸収性を両立させる観点から、それぞれの層について片面当たり、固形分換算で5〜30g/mであることが好ましい。
また、基材とインク受容層の間にインク吸収性、接着性、その他各種機能を有するアンダーコート層を設けてもよい。さらに、インク受容層、光沢層を設けた面と反対の基材面に、インク吸収性、筆記性、プリンター印字適性、その他各種機能を有するバックコート層をさらに設けてもよい。
(実施例)
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
(基材の製造)
濾水度330ml C.S.F.の広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)100部からなるパルプに、内添填料として、二酸化チタン4.0部、カチオン化デンプン0.4部、バンド剤(硫酸アルミニウム)1.0部、合成サイズ剤(WSA−30:荒川化学製の製品名)0.5部、内添紙力増強剤(ポリストロン678−20:荒川化学製の製品名)0.2部、及び歩留まり向上剤0.02部を添加してパルプスラリーを調整し、このスラリーから抄紙機を用いて抄紙して紙基材を得た。この基材の両面に、サイズプレス装置によって片面当たりの乾燥塗工量が2.0g/mとなるようにサイズプレス液(紙力増強剤である酸化デンプンを8%含む溶液)を塗工して坪量170g/mのインクジェット記録用シート用原紙を得た。
(インク受容層の形成)
上記原紙の一方の面に、下記塗工液Aをブレード方式で塗工後、乾燥させてインク受容層を設け、坪量180g/mのアンダー紙を得た。
塗工液A:顔料として、炭酸カルシウム複合合成シリカ(FMT−IJ511:ファイマテック社の製品名)100部、結着剤として、完全ケン化ポリビニルアルコール(PVA117:株式会社クラレの製品名)20部を配合して、固形分濃度20%の塗工液を調整した。
(光沢層の形成)
次に、上記インク受容層の上に、ロールコーターで塗工液Bを塗工し、塗工層が湿潤状態にある間に、凝固液Cを塗工層に塗布して塗工層を凝固させた。ついで、プレスロールを介して加熱された鏡面仕上げ面に塗工層を圧着して鏡面を写しとり、198g/mのインクジェット記録用シートを得た。
塗工液B:顔料として、ピーナツ状のコロイダルシリカ(クォートロンPL−1:扶桑化学工業株式会社、一次粒径14nm、二次粒径33.4nm、一次粒径に対する二次粒径の比が2.39)50部と、沈降法シリカ(ファインシールX−37:株式会社トクヤマ社製の湿式法シリカ、二次粒子径3.6μm、比表面積275m/g)50部とを配合し、結着剤として、ポリビニルアルコール(PVA−617 :株式会社クラレの商品名)10部と、ポリビニルアルコール存在下でメタクリル酸メチル、ブタジエン及びアクリロニトリルを共重合して得られた共重合物(PNT7325:日本ゼオン社の商品名)5部とを配合し、さらに離型剤(メイカテックスHP50:明成化学工業社製)を2部配合して濃度27%の塗工液を調製した。
凝固液C:(ホウ砂/ホウ酸)で表される配合比が2で、ホウ砂をNa24で換算し、ホウ酸をH3BOで換算した時の濃度が6%であり、離型剤(メイカテックスHP50:明成化学工業社製)0.25%、浸透剤(パイオニンD−3120−W:竹本油脂株式会社製の商品名)0.5%、及びpH調整剤としてリンゴ酸0.25%を配合して凝固液を調製した。
塗工液B中の結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を2部に変更し、上記共重合物(PNT7325:日本ゼオン社の商品名)の配合量を1部に変更したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
塗工液B中の結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を20部に変更し、上記共重合物(PNT7325:日本ゼオン社の商品名)の配合量を10部に変更したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
塗工液B中の結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を7.5部に変更し、上記共重合物(PNT7325:日本ゼオン社の商品名)の配合量を7.5部に変更したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
塗工液B中の顔料として、上記コロイダルシリカ及び沈降性シリカに代えて、板状アルミナ(AKP−G015:住友化学株式会社の商品名、体積平均粒子径1.8μm)を100部使用したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(比較例1)
塗工液Bの結着剤において、上記ポリビニルアルコールを配合せず、上記共重合物(PNT7325)のみを15部配合し、濃度27%の塗工液を調整したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(比較例2)
塗工液Bの結着剤において、上記共重合物(PNT7325)を配合せず、上記ポリビニルアルコールのみを15部配合し、濃度27%の塗工液を調整したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(比較例3)
塗工液Bの結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を26部に変更し、上記共重合物(PNT7325)の配合量を14部に変更したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(比較例4)
塗工液Bの結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を20部に変更し、さらに上記共重合物(PNT7325)の代わりにエチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン(AM−3150:昭和高分子株式会社製)を10部配合し、濃度27%の塗工液を調製したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(比較例5)
塗工液Bの結着剤において、上記ポリビニルアルコールの配合量を20部に変更し、さらに上記共重合物(PNT7325)の代わりにスチレンブタジエン(SN−335R:日本A&L社製)を10部配合し、濃度27%の塗工液を調製したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(評価方法)
各実施例及び比較例のインクジェット記録用シートを試料に用い、以下の方法で評価した。
1)コロイダルシリカの特性
1−1)一次粒子径の測定
塗工液Bに用いたコロイダルシリカの比表面積を窒素吸着法により測定し、以下の(1)式に従い一次粒子径を計算により求めた。
d=6000/(ρ×S)
但し、(1)式中、d:一次粒子径(nm)、ρ:シリカの密度(=2.2g/m)、S:比表面積(m/g)を表す。
1−2)二次粒子径の測定
MALVERN INSTRUMENTS社製のZETASIZER 3000HASを用いて測定した。
2)写像性
写像性測定器(スガ試験機株式会社製、ICM−1T)を用い、60°反射測定(入射光60°、反射光60°受光)を測定した。得られた値(60°鏡面写像性)について、以下の基準で写像性の優劣を評価した。
◎:写像性70%以上
○:写像性65%以上
△:写像性60%以上
×:写像性60%未満
3)印字濃度
インクジェットプリンターとして、染料インクプリンター(PM−970C、セイコーエプソン社製)、及び顔料インクプリンター(PX−G900、セイコーエプソン社製)をそれぞれ用いた。各プリンターにより、試料に黒、シアン、マゼンタ、イエローをベタ印字し、印字濃度をマクベス濃度計(Gretag Macbeth社製、RD−19)で測定した。測定した印字濃度に応じて、以下の基準で総合評価を行った。染料インクでの評価と顔料インクでの総合評価が共に△以上であれば実用上問題がない。
(染料インク)
◎:印字濃度4色の合計が7.5以上
○:印字濃度4色の合計が7.0以上7.5未満
△:印字濃度4色の合計が6.5以上7.0未満
×:印字濃度4色の合計が6.5未満
(顔料インク)
◎:印字濃度4色の合計が5.0以上
○:印字濃度4色の合計が4.5以上5.0未満
△:印字濃度4色の合計が4.0以上4.5未満
×:印字濃度4色の合計が4.0未満
4)インク吸収性
インクジェットプリンターとして、染料インクプリンター(PM−950C、セイコーエプソン社製)、及び顔料インクプリンター(PM−4000px、セイコーエプソン社製)をそれぞれ用い、各プリンターにより、試料に黒、シアン、マゼンタ、イエローをベタ印字した。上記ベタ印字部の各色境界部の滲み(境界滲み)、及びムラ(シアンベタ印字部分)の程度を5段階評価で目視評価した。目視評価の基準は、評価5が最も優れ(滲み、ムラがない)、評価1が最も劣る(著しい滲み及びムラがある)ものとした。境界滲み及びムラについてそれぞれ目視評価を行い、これらの総合評価を以下の指標で行った。
総合評価が△以上であれば実用上問題がない。
◎:境界滲み、ベタ印字ムラの目視評価がいずれも5である
○:境界滲み、ベタ印字ムラの目視評価がいずれも4.5以上である
△:境界滲み、ベタ印字ムラの目視評価のいずれかが4である
×:境界滲み、ベタ印字ムラの目視評価のいずれかが3.5以下である
得られた結果を表1に示す。
Figure 2007260999
表1から明らかなように、各実施例の場合、写像性に優れるとともに、染料インクと顔料インクのいずれを用いても印字適性(インク吸収性及び 印字濃度)が良好であった。なお、インク吸収性の点からは、光沢層中の顔料に対する結着剤の配合量が少ない方が良好であった。
一方、光沢層中の結着剤として共重合物(PNT7325)のみを用いた比較例1の場合、インク吸収性が劣った。
又、光沢層中の結着剤としてPVAのみを用いた比較例2の場合、写像性が劣った。
光沢層中の顔料100部に対する結着剤の配合量が30部を超えた比較例3の場合、インク吸収性が劣った。
光沢層中の結着剤として、共重合物(PNT7325)の代わりにエチレン酢酸ビニル共重合エマルジョンを使用した比較例4の場合は、インク吸収性に劣った。
光沢層中の結着剤として、共重合物(PNT7325)の代わりにスチレンブタジエンラテックスを使用した比較例5の場合、写像性、印字適性の全てが劣った。

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも片面にインク受容層を有し、前記インク受容層の上に光沢層を有するインクジェット記録用シートであって、前記光沢層は顔料と結着剤とを含有し、前記結着剤は、ポリビニルアルコールの存在下に共役ジエン単量体、並びに該共役ジエン単量体と共重合可能なエチレン性不飽和ニトリル単量体及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合して得られる共重合物と、ポリビニルアルコールとを含有し、前記結着剤は前記顔料100質量部に対して3〜30質量部含有されていることを特徴とするインクジェット記録用シート。
  2. 前記共役ジエン単量体はブタジエン単量体であり、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体はアクリロニトリル単量体であり、前記エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体はアクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
  3. 前記光沢層の60°鏡面写像性が60%以上である請求項1又は2に記載の記載のインクジェット記録用シート。
  4. 前記光沢層はキャストコート法により設けられてなる請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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