JP2007260924A - 凹版印刷機の着けローラ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 凹版面へのインキの転移性を向上させ、印刷物品質を良好にし、併せて着けローラの耐久性の向上を図る凹版印刷機の着けローラ装置を提供する。
【解決手段】 絵柄等が施された凹版面上へ必要なインキを供給する凹版印刷機の着けローラ装置において、前記凹版面に対設した前記着けローラを、同一絵柄に対して複数個備え、少なくとも一つはNBR(ニトリルゴム)ローラを凹版面の回転方向の上流側に配置し、少なくとも一つはPVC(塩化ビニル)ローラを前記NBRローラの下流側に配置している凹版印刷機の着けローラ装置とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、凹版印刷機の着けローラ装置に関し、特にインキの転移を適正かつ効果的に供給することを実現するものである。
従来の凹版印刷機の着けローラ装置の概略構成図を図5に示す。凹版胴(1)の周面には非画線部としての平面と画線部としての凹部とで形成された凹版面(1’)が装着されており、凹版胴(1)の当該凹版面にはワイピングローラ(3)が対接されている。前記凹版面には円周方向にわたり所定の間隔で配設された複数の着けローラ(5)が対設されている。
これら着けローラ(5)には、インキつぼ(8)及びつぼローラ(6)がそれぞれ対設しており、これらインキつぼ(8)には、それぞれ異なった色のインキが貯えられており、印刷作業に際しては、各インキつぼ(8)のインキ(7)がつぼローラ(6)からローラ群を経て均一皮膜になったインキを着けローラ(5)を介して凹版胴上の凹版面(1’)にインキを転移させ、この転移したインキのうち、絵柄部分以外の箇所に付着したインキを凹版面に圧接して回転するワイピングローラ(3)で拭き取った後、凹版胴(1)と圧胴(2)との間を通過する紙に残った絵柄部分のインキを転写させて印刷を施すものである。
一般に着けローラ(4、5)は、1色当たり1つ配置されており、材質としてはPVC(塩化ビニル)又はNBR(ニトリルゴム)である。また、凹版面1版当たりの円弧長と同長であり、周速は凹版面(1’)1版当たりの周速に対して同速である。このような着けローラ装置を備えた凹版印刷機での印刷作業は、インキの種類によっては、着けローラ(4、5)から凹版面(1’)の凹部へインキが充分に転移しきれないために、インキの転移効率が悪く、印刷品質の良い印刷物を連続的に得ることが難しかった。また、印刷品質の良い印刷物を得るために、凹版面(1’)と着けローラ(5)間のニップ幅(接触幅)を大きくすることや、過剰なインキ供給を行うことで対応を図っていたが、インキ消費の増大によるコスト負荷や着けローラの耐久性等を阻害するなどの要因となっていた。
この問題点を解消する方策として、少なくとも一つのベースプレート、及び載置材料を有するインキプレートに関し、前記載置材料の表面はエンボス領域にカットできる設計であり、その領域の形状はインキを塗布する表面の形状に対応する。載置材料は、ベースプレート表面の主要部上に堆積分布される少なくとも1つのPVC配合物層から成る回転印刷機用インキプレートがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、凹版印刷機の凹版胴に備えられた前記凹版面1版の円弧長に対して、前記凹版面にインキを転移する着けローラが1回転ギアの噛み合わせによる着けローラ装置であって、前記着けローラの円周長を、前記凹版面1版あたりの円弧長より0.1〜4.0%大きくした凹版印刷機の着けローラ装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、ローラ表面に着肉部分を持つ資材を貼り付けて構成したことを特徴とする凹版印刷用着けローラ、ローラ表面の着肉部分以外に、溌水、溌油性樹脂材を塗布して構成することを特徴とする凹版印刷用着けローラがある。(例えば、特許文献3参照。)。
W001/038096号公報 特開2002−307659号公報 特開2001−191495号公報
上述した先行技術を用いた場合、インキを過剰に供給することが防止できるためインキの節約になり、またスリップ現象によるインキの転移性向上による印刷物品質の向上、頻繁なニップ幅調整作業の削減が可能となる労働負荷の軽減、凹版面と着けローラ間の接触を強ニップ幅にすることが不要になるので、着けローラの耐久性の向上、更に作業環境の改善というような効果を発現することができる。
特許文献1を用いた場合、回転印刷機用インキプレートは製造コストが廉価であり、かつフォトポリマープレートよりも寿命が長い。更に、同公報のインキプレートは、インキプレートが印刷機に設置されるときにレリーフ領域が変形しないように、シリンダ上に取り付けられるプレート上にレリーフ領域が形成されるので、製造が一層簡単である。
しかしながら、着けローラの材質にPVCを用いると、PVC自体が変形しにくく、凹版面との接触時において、凹版面の凹部にインキを充填できない場合があり、所望する高品質な凹版印刷製品を得ることができない。
また、特許文献2を用いた場合、凹版面に対する着けローラ(NBR)をスリップさせながらインキを供給させることで、所望するインキ転移が実現できるが、前記着けローラ(NBR)は凹版面との接触で大きな弾性力を受けることになる。しばらく着けローラ(NBR)は、刷了後、同径、同硬度へ復元(回復)するのであるが、使用にともない劣化が顕著となることから、同径、同硬度へ回復せず、交換を余儀なくされる。
また、凹版面上へ着けローラをスリップさせる本手段を用いると、インキが低粘度の場合、所望しない模様面以外の領域にインキが飛散、付着し、品質を阻害する「ミスティング」と称する不具合を発生させる場合があった。
特許文献2を用いると、満足するインキの転移は望めるが、着けローラは定期的に交換しなければならず、この着けローラにかかるコストが増加するだけでなく、着けローラ交換におけるオペレータの労働負荷の軽減が図れない。
また、特許文献3を用いた場合、凹版印刷におけるインキの多量消費や、それを避けるために行われる着けローラの加工上の問題を解決するなど、多大の費用、労力、時間を減少させる等、効率的で経済的となる。
しかしながら、近年、凹版印刷の高速化、凹版面の深凹版化や細画線の採用等、取り巻く環境が大きく変化し、従前以上に効果的なインキの転移が求められ、凹版胴と着けローラとの間の接触を強圧とせざるを得ず、本手段のようにローラ表面に感光性樹脂版を着けローラ体の表面に貼り付けて構成した方法では、着けローラの堅牢性を満足することができなくなり、少しの使用においても極度に劣化する場合があった。
このような背景において、先行技術以上にインキ転移性を向上させ、印刷物品質を良好にし、併せてインキの過剰供給を防止すると同時に、着けローラの耐久性の向上も図れる凹版印刷機の着けローラ装置が求められていた。
凹版印刷機の着けローラ装置は、凹版面上へ必要量のインキを転移、供給するものであるが、一般的な装置としては、凹版面1版の円弧長あたりと同等の円周長を有する着けローラを用い、材質にPVCまたはNBRを用いたものが汎用されている。近年、凹版印刷製品として、今まで以上にインキ盛りが高く、細画線が再現できる等、上位品質が求められており、一般的な装置では、満足する凹版印刷製品を得ることが困難となっていた。
特許文献1のように、着けローラの材質としてPVCを用いることで、製造が簡単であり、製造にかかるコストが廉価となる方法があるが、近年主流であるインキ盛りが高く、細画線が再現できる高品質な凹版印刷製品を得ることが困難であり、効果的でなかった。
また、特許文献2のように、着けローラの円周長を凹版面1版の円弧長より大きく設計し、材質に表面の弾性係数の高いNBRを用いることで、改善を図る方法があるが、凹版面への着けローラ(NBR)を過剰に接触させるため、着けローラの耐久性に課題を残していた。また、凹版印刷製品が使用とともにばらつく傾向にあり、効果的でなかった。
また、特許文献3のように、ローラ表面に感光性樹脂版を着けローラ体の表
面に貼り付けて構成した方法は、凹版面との接触により、貼り付けた感光性樹脂版が外れる場合や、樹脂版自体の劣化が顕著であることから、長期的な使用には適さず、少量多種の凹版印刷にのみ用いられ、連続性の高い印刷製品(例えば、銀行券や諸証券)には適さなかった。
上記のような課題を解決するため、凹版面に対する着けローラの接触度合いや回転速度、着けローラの材質等に着目し、発明したものであり、絵柄等が施された凹版面上へ必要なインキを供給する凹版印刷機の着けローラ装置において、前記凹版面に対設した前記着けローラを、同一絵柄に対して複数個備えているものである。
また、前記着けローラのうち、少なくとも一つはNBRローラ、少なくとも一つはPVCローラを配置しているものである。
また、前記着けローラのうち、凹版面の回転方向の上流側にNBRローラを配置し、下流側にPVCローラを配置しているものである。
また、凹版印刷機の凹版胴に備えられた前記凹版面1版の円弧長に対して、前記凹版面にインキを転移する着けローラが1回転するギアの噛み合わせによる着けローラ装置であって、前記NBR着けローラの円周長を、前記凹版面1版当たりの円弧長より0.1〜1.5%大きくしたものである。
また、凹版印刷機の凹版胴に備えられた前記凹版面1版の円弧長に対して、前記凹版面にインキを転移する着けローラが駆動装置により回転する着けローラ装置であって、前記着けローラ駆動装置によって、前記凹版面1版当たりの回転数に対して着けローラの回転数を0.1〜1.5%速くしたものである。
本発明による凹版印刷機の着けローラ装置により、凹版面へのインキの転移、供給が適正に行われることになることから、凹版印刷製品の品質が良質となり、均質な製品を連続的かつ安定的に得ることが可能となる。
また、凹版面に対する着けローラの接触を過剰に設定しなくてもよいことから、着けローラの必要以上の劣化が抑制できるほか、着けローラへのインキの混入(堆積)がごくわずかとなり、長期的な連続稼動が可能となる。
また、凹版面に対する着けローラの接触が適正であることから、着けローラの摩滅減耗が必要最小限となり、着けローラの延命化が期待でき、着けローラにかかるコスト削減が図れる。
また、従来、低粘度インキを用いた場合に不具合として生じていたミスティングが抑制できることから、この事象に対する損紙の発生が減少し、コスト削減が図れる。
また、従前のようにオペレータが頻繁に着けローラ表面を観察、確認することが減少することから、作業性の大幅な改善が図れる。
さらに、本発明の凹版印刷機の着けローラ装置を用いれば、凹版印刷の高速化(例えば、枚葉紙;12,000枚/時間)がなされた場合においても、また、凹版面の深凹版化、細画線化がなされた場合においても、良質な凹版印刷製品を印刷できる精度を有しており、十分に対応することが可能である。
本発明による凹版印刷機の着けローラ装置の実施の形態について、図1乃至図5を用いて説明する。図5に示すように一般的な凹版印刷機の着けローラ装置は、凹版胴(1)の周面に凹版面(1’)が装着され、前記凹版面(1’)にはワイピングローラ(3)が対接されている。また、前記凹版面(1’)には周方向にわたり所定の間隔で配設された複数の着けローラ(5)が対設されている。これら着けローラ(5)にはインキつぼ(8)及びつぼローラ(6)がそれぞれ対設しており、これらインキつぼ(8)には、それぞれ異なった色のインキが貯えられており、印刷作業に際しては、各インキつぼ(8)のインキ(7)がつぼローラ(6)からローラ群を経て均一皮膜になったインキを着けローラ(5)を介して凹版胴上の凹版面(1’)にインキ(7)を転移させ、この転移したインキ(7)のうち、絵柄部分以外の箇所に付着したインキ(7)を凹版面(1’)に圧接して回転するワイピングローラ(3)で拭き取った後、凹版胴(1)と圧胴(2)との間を通過する紙に、残った絵柄部分のインキ(7)を転写させて印刷を施すものである。ここで、着けローラ(5)は、凹版面(1’)1版の円弧長あたりと同等の円周長を有しており、材質にPVCまたはNBR(ここでは、PVC)を用いている。
一般的な凹版印刷機の着けローラ装置(着けローラとしてPVC着けローラ)を用いて印刷を行うと、近年一般的に用いられるようになった凹版印刷の盛りを強調するための凹版深度の深い「深凹版」や細かな画線を配置した「細画線」を含む凹版面(1’)の再現性が悪く、このことは、印刷速度の高速化とも相まって、忠実な凹版模様の再現が困難であった。
上記を勘案した凹版印刷機の着けローラ(4)として、材質をNBRとし、着けローラの円周長を大きく設定し、凹版面(1’)との接触時に着けローラ(4)をスリップさせ、着けローラ(4)を擦りつけることで、インキ(7)の転移を向上させる方法があるが、この方法では、凹版面(1’)のエッジ部(肉止め部)には所望するインキ(7)が堆積するものの、エッジ部のない個所では、インキ(7)が堆積しがたく、満足する凹版印刷製品を得ることが困難であった。図3にNBR着けローラ(4)を用いたときの凹版面上の凹部へのインキ堆積状態の模式図を示す。
図1は、本発明の凹版印刷機の着けローラ装置の概略構成図である。また、図2は、本発明の着けローラ装置の着けローラの模式図;(a)はNBR着けローラ、(b)はPVC着けローラ、図4は、本発明の着けローラ(4、5)を用いたときの凹版面上の凹部へのインキ堆積状態の模式図をそれぞれ示す。
図1に示すように、本発明の凹版印刷機の着けローラ装置は、凹版面(1’)に対設した着けローラ(4,5)を、同一絵柄に対して複数個備えており、少なくとも一つはNBR(ニトリルゴム)ローラ(4)、少なくとも一つはPVC(塩化ビニル)ローラ(5)を配置している。NBR着けローラ(4)は、円周長を、凹版面1版当たりの円弧長より0.1〜1.5%大きく設定しており、また、NBR着けローラ(4)の回転数を、図示しないローラ駆動装置によって、凹版面1版当たりの回転数に対してNBR着けローラ(4)の回転数を0.1〜1.5%速く設定している。
インキつぼ(8)に供給されたインキ(7)は、つぼローラ(6)により、均一にならされ、対接する円周長を凹版面1版当たりの円弧長より0.1〜1.5%大きく設定したNBR着けローラ(4)、対接する円周長を凹版面1版当たりの円弧長と同等としたPVC着けローラ(5)に転移、供給される。
前記NBR着けローラ(4)は、前記PVC着けローラ(5)よりも上流側に設置されており、凹版面(1’)と最初に接触することになる。このとき、前記NBR着けローラ(4)が若干のスリップ現象により、インキ(7)を転移させ、図3に示す状態となる。凹版面(1’)のエッジ付近には、インキ堆積が少なくなる傾向にある。
表1は、NBR着けローラ(4)の円周長を変化させたときの凹版面(1’)へのインキ(7)の転移状態を評価した表である。NBR着けローラ(4)の円周長を凹版面1版当たりの円弧長と同等とした場合を100%とし、NBR着けローラ(4)の円周長を大きくした場合を100.1%、100.2%・・・とした。NBR着けローラ(4)の円周長の好適は、0.9%以上大きくしたものである。
Figure 2007260924
表2は、NBR着けローラ(4)の円周長を変化させたときの着けローラ(4)のインキ供給部(9)へのインキ堆積状態を評価した表である。NBR着けローラ(4)の円周長を凹版面1版当たりの円弧長と同等とした場合を100%とし、NBR着けローラ(4)の円周長を大きくした場合を100.1%、100.2%・・・とした。NBR着けローラ(4)の円周長を1.0%以上大きくすると、着けローラ(4)のインキ供給部(9)にインキ(7)が入り込むことを確認した。
Figure 2007260924
表3は、NBR着けローラ(4)の円周長を変化させたときの凹版面(1’)へのインキ(7)の転移状態と着けローラ(4)のインキ供給部(9)へのインキ堆積状態から総合的に評価した表である。NBR着けローラ(4)の円周長を凹版面1版当たりの円弧長と同等とした場合を100%とし、NBR着けローラ(4)の円周長を大きくした場合を100.1%、100.2%・・・とした。NBR着けローラ(4)の円周長の好適は、0.9%大きくしたものである。例えば、凹版面1版当たりの円弧長が260.0mmの場合、NBR着けローラ(4)の円周長は、262.3mmである。
Figure 2007260924
次に、PVC着けローラ(5)の円周長を変化させたときの凹版面(1’)へのインキ(7’)の転移状態とPVC着けローラ(5)のインキ供給部(9')へのインキ堆積状態から総合的に評価したものを表4に示す。PVC着けローラ(5)の円周長を凹版面1版あたりの円弧長と同等とした場合を100%とし、PVC着けローラ(5)の円周長を大きくした場合を100.1%、100.2%・・・とした。PVC着けローラ(5)の円周長の好適は、凹版面1版あたりの円弧長と同等とした場合である。
Figure 2007260924
上記の各ローラ径の検討結果をもとに、NBR着けローラ(4)とPVC着けローラ(5)の組み合わせについて検討した。
凹版面1版当たりの円弧長と円周長が同じ長さであるPVC着けローラ(5)と凹版面1版あたりの円弧長と円周長が同じ長さであるNBR着けローラ(4)とした組み合わせについては、凹版面(1’)の凹部へのインキ(7)の供給量としては、着けローラ(4、5)単独の使用と比較すると、多く転移されることになるが、図6に示すとおりインキ(7)が凹底部(1’’)まで供給されず、満足する印刷品質結果を得ることができない。
また、凹版面1版当たりの円弧長より円周長を大きく設定したPVC着けローラ(5)と凹版面1版当たりの円弧長より円周長を大きく設定したNBR着けローラ(4)とした組み合わせについて確認した結果、PVC着けローラ(5)から供給されたインキ(7)の一部をPVCより弾性係数の高いNBRを用いたNBR着けローラ(4)にて掻き取ってしまうことになり、凹版面(1’)の凹部へのインキ(7)の供給量としては、図7に示すとおりインキ(7)が凹底部(1’’)まで供給されず、満足する印刷品質結果を得ることができない。
また、凹版面1版当たりの円弧長より円周長を大きく設定したPVC着けローラ(5)と凹版面1版当たりの円弧長と円周長が同じ長さであるNBR着けローラ(4)とした組み合わせについて確認した結果、NBRより弾性係数の低いPVCを用いたPVC着けローラ(5)から供給されるインキ(7)は、凹版面1版当たりの円弧長より円周長を大きく設定したNBR着けローラ(4)を用いた場合と比較すると少なくなり、また、凹版面1版当たりの円弧長と円周長が同じ長さであるNBR着けローラ(4)により、再度インキ(7’)の供給を行ったとしても凹版面(1’)の凹部へのインキ(7)の供給量としては、図8に示すとおりインキ(7)が凹底部(1’’)まで供給されず、満足する印刷品質結果を得ることができない。
また、凹版面の回転方向の上流側にPVC着けローラ(5)を配置し、下流側にNBR着けローラ(4)を配置して印刷を行った結果、NBR着けローラ(4)を単独で使用した場合とインキ(7)の転移に変わりなく、凹版面(1’)の凹部へのインキの供給量としては、図9に示すとおりインキ(7)が凹底部(1’’)まで供給されず、満足する印刷品質結果を得ることができない。
また、凹版面1版の円弧長に対し、着けローラの回転数を前記凹版面1版当たりの回転数に対して同じとしたPVC着けローラ(5)、前記凹版面1版当たりの回転数に対して同じとしたNBR着けローラ(4)の組み合わせ、また、凹版面1版の円弧長に対し、着けローラの回転数を前記凹版面1版当たりの回転数に対して大きく設定したPVC着けローラ(5)、前記凹版面1版当たりの回転数に対して大きく設定したNBR着けローラ(4)の組み合わせ、また、凹版面1版の円弧長に対し、着けローラの回転数を前記凹版面1版当たりの回転数に対して大きく設定したPVC着けローラ(5)、前記凹版面1版当たりの回転数に対して同じとしたNBR着けローラ(4)の組み合わせについても確認したが、適正な結果を得ることができなかった。
さらに、PVC着けローラ(5)は、NBR着けローラ(4)よりも下流側に設置されており、凹版面(1’)への接触は、NBR着けローラ(4)からインキ(7)が供給された後に行われる。このとき、PVC着けローラ(5)の円周長を凹版面1版当たりの円弧長より大きく設定すると、NBR着けローラ(4)により、凹版面(1’)凹部へ転移させたインキ(7)の一部を掻き出してしまうことになる。また、凹版面(1’)凹部のエッジ部近傍には多くインキ(7、7’)が滞在することになるが、エッジ部近傍外においては、インキ(7、7’)があまり滞在しないことになる。凹版面(1’)の凹部へのインキ(7)の供給量としては、図7又は図8に示すとおりインキ(7)が凹底部(1’’)まで供給されず、満足する印刷品質結果を得ることができない。
このことから、下流側に設置する着けローラは、弾性力が小さく、凹版面(1’)との接触時においてスリップさせないのが効果的であり、PVC着けローラ(5)を用いることが良好である。また、PVC着けローラ(5)は、インキを積層できればよいため、表4に示すとおり、その円周長を凹版面1版当たりの円弧長と同等とすることで良好な結果を得ることができた。
この場合、凹版面1版あたりの円弧長が260.0mmの場合、PVC着けローラ(5)の円周長は、260.0mmである。
この発明の最良の実施形態としては、NBR着けローラ(4)により凹版面(1’)へインキ(7)が供給され、続いて、前記NBR着けローラ(4)の下流側に設置したPVC着けローラ(5)により、同一絵柄に対して倍加インキ(7’)を付加させる。倍加したインキ(7’)が付加された状態を図4に示す。図4に示すように、まず上流側に設置したNBR着けローラ(4)の適度なスリップ現象によりインキ(7)が転移、供給され、ある程度のインキが凹版面(1’)の凹部へ溜まる。次に、PVC着けローラ(5)により、倍加したインキ(7’)が追加供給され、満足するインキ(7)の充填を得ることができる。
倍加インキ(7’)について、印刷物の用途(例えば、偽造防止効果を必要とする証券類)によっては、異なる機能性や色彩を有するものを用いることで、より効果的な利用が可能である。
着けローラ(4、5)の円周長の大きさを比較した模式図を図2に示す。図2において、(a)はNBR着けローラ(4)であり、(b)はPVC着けローラ(5)である。インキ(7)は、インキ供給部(9、9’)を介して凹版面(1’)へ供給される。また、(a)の破線はPVC着けローラ(5)の大きさを示しており、NBR着けローラ(4)が大きく設定されていることを示す。
本発明の凹版印刷機の着けローラ装置を用いて、凹版印刷を実施した結果、深凹版、細画線を有する凹版面を用い、高速印刷(例えば、枚葉紙;12,000枚/時間)を実施した場合においても、良質かつ均質な凹版印刷製品を得ることができた。
また、長期使用にともない着けローラ(4、5)のインキ供給部(9、9’)にインキ(7)が混入したり、表面が劣化する場合があり、定期的な交換を必要としていたが、本発明の着けローラ装置では、着けローラ(4、5)は、凹版面(1’)との接触による摩滅損耗が小さく、着けローラ(4,5)のインキ供給部(9、9’)へのインキ堆積を抑制することも可能であり、着けローラ(4、5)の延命化が図れた。
本発明の凹版印刷機の着けローラ装置は、凹版面1版当たりの円弧長と円周長が同じであるPVC着けローラ(5)、凹版面1版当たりの円弧長より円周長が大きいNBR着けローラ(4)を含んでいれば、任意の構成とすることができる。
また、本発明の凹版印刷機の着けローラ装置は、凹版面1版の円弧長に対し、着けローラの回転数を前記凹版面1版当たりの回転数に対して同じとしたPVC着けローラ(5)、凹版面1版の円弧長に対し、着けローラの回転数を前記凹版面1版当たりの回転数に対して速くしたNBR着けローラ(4)を含んでいれば、任意の構成とすることができる。
本発明の形態では、2つの着けローラ(4,5)を用いて、凹版面(1’)へのインキ(7、7’)の転移を行ったが、各着けローラの配置されている中間位置に、乾燥装置(図示しない)を用いて、上流側ローラから転移したインキ(7)をわずかに乾燥させ、その後、下流側ローラからの倍加インキ(7’)を重ね刷りすることで、最初に凹版面(1’)へ転移したインキ(7)が下流側の着けローラ表面へ逆転移することを防止できるため、より完全なインキの転移を実現することが可能である。
これらの実施例は代表的な例示の一例に過ぎず、他の実施の形態があることは言うまでもない。
本発明の凹版印刷機の着けローラ装置の概略構成図である。 本発明の凹版印刷機の着けローラ装置の着けローラの断面模式図である。 先行技術である凹版印刷機の着けローラ装置(NBR着けローラ)を用いたときの凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。 本発明の凹版印刷機の着けローラ装置を用いたときの凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。 一般的な凹版印刷機の着けローラ装置の概略構成図である。 別の実施形態における凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。 別の実施形態における凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。 別の実施形態における凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。 別の実施形態における凹版面上の凹部へのインキ堆積状態を示す模式図である。
符号の説明
1 凹版胴
1’ 凹版面
1’’ 凹底部
2 圧胴
3 ワイピングローラ
4 着けローラ(NBR)
5 着けローラ(PVC)
6 つぼローラ
7 インキ
7’ 倍加したインキ
8 インキつぼ
9 着けローラ(NBR)のインキ供給部
9’ 着けローラ(PVC)のインキ供給部

Claims (5)

  1. 絵柄等が施された凹版面上へ必要なインキを供給する凹版印刷機の着けローラ装置において、前記凹版面に対設した前記着けローラを、同一絵柄に対して複数個備えていることを特徴とする凹版印刷機の着けローラ装置。
  2. 前記着けローラのうち、少なくとも一つはNBR(ニトリルゴム)ローラ、少なくとも一つはPVC(塩化ビニル)ローラを配置していることを特徴とする請求項1記載の凹版印刷機の着けローラ装置。
  3. 前記着けローラのうち、凹版面の回転方向の上流側にNBRローラを配置し、下流側にPVCローラを配置していること特徴とする請求項1及び2記載の凹版印刷機の着けローラ装置。
  4. 凹版印刷機の凹版胴に備えられた前記凹版面1版の円弧長に対して、前記凹版面にインキを転移する着けローラが1回転するギアの噛み合わせによる着けローラ装置であって、前記NBR着けローラの円周長を、前記凹版面1版当たりの円弧長より0.1〜1.5%大きくしたことを特徴とする請求項1から3記載の凹版印刷機の着けローラ装置。
  5. 凹版印刷機の凹版胴に備えられた前記凹版面1版の円弧長に対して、前記凹版面にインキを転移する着けローラが駆動装置により回転する着けローラ装置であって、前記着けローラ駆動装置によって、前記凹版面1版当たりの回転数に対して着けローラの回転数を0.1〜1.5%速くしたことを特徴とする請求項1から4記載の凹版印刷機の着けローラ装置。
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