JP2007260748A - H形鋼の冷却設備および冷却方法 - Google Patents

H形鋼の冷却設備および冷却方法 Download PDF

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高志 黒木
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直樹 中田
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Abstract

【課題】H形鋼の加速冷却において、フランジ幅方向の冷却均一性が高いH形鋼の冷却設備等を提供する。
【解決手段】熱間圧延後のH形鋼10のフランジ11の外面に、複数の噴射孔から冷却水を噴射して、フランジ11の外面を冷却するH形鋼10の冷却設備20であって、水同士が直接干渉せず、H形鋼10のフランジ11の全外面に冷却水イ、ロを供給するノズルを有するとともに、フランジ11の外面を冷却した冷却水イ、ロはウェブ12を冷却せず、ウェブ12は空冷となるようにした。このとき、冷却設備20内にH形鋼10のフランジ幅yに応じて噴射範囲を変更する仕切りを設けた。また、噴射方向が平行となる複数の平行ラミナー水流群を噴射するノズルを有するようにした。さらに、ウェブ12が空冷となるようにウェブ高さxに応じて噴射する流体の噴射速度などを制御するようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、H形鋼のフランジ面を均一に冷却するためのH形鋼の冷却設備および冷却方法に関するものである。
従来より、熱間粗圧延、仕上圧延を行った後に、高温鋼材に冷却媒体として冷却水を供給して冷却が行われている。近年、H形鋼の強度に対する要求が高くなってきており、このため鋼に添加する合金成分の検討、および加速冷却による材料組織の微細化が図られている。この合金成分による対応は、低コスト化の要求に必ずしも合致するものではないので、仕上圧延後の冷却速度が例えば5℃/s以上の加速冷却を行うことによって組織を微細化し、強度アップを図っている。
従来の加速冷却手段として、箱型に形成した冷却装置の冷却面側板に直径数ミリの孔を多数配列し、その箱型の冷却装置に冷却水を流し込み、多数噴射すること等により均一冷却を図る方法が実用化されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
特開2001−191107号公報(第4頁−第5頁、図1) 特開2002−011514号公報(第5頁−第6頁、図1)
顧客が要求する製品強度を確保するためには、フランジ全体を均一に冷やす必要があるが、従来の技術では、フランジの端部に冷却水を供給することができなかった。フランジの上端部ぎりぎりに冷却水を供給すれば、搬送中のH形鋼が上下に振動したときや、搬送ロールが磨耗しパスラインが変動したときに、冷却水がフランジの上部を超えて、ウェブに乗ってしまい、その乗り水は長い時間にわたってウェブに滞留し、ウェブの過冷却を起こしてしまうからである。フランジよりも肉厚が薄いウェブは圧延途中でもフランジに比べて冷えやすいのに、その上に乗り水があって余計に冷えると、ウェブが熱収縮する途中で塑性変形を起こし、その結果、ウェブ波を発生させ、製品として出荷できなくなってしまう。
しかしながら、フランジ端部に冷却水を供給しない場合は、水冷後の端部温度が十分に下がらず、組織の微細化が十分行えなくなって強度が不足する。フランジ幅が200mm以下のH形鋼を製造する場合は、フランジ全体に対して非水冷の領域が占める割合が比較的高いので、端部の局所的な強度だけではなく、フランジ全体平均の強度不足も問題となる。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、H形鋼の加速冷却において、フランジ幅方向の冷却均一性が高い冷却設備および冷却方法を提供することを目的とする。
本発明に係るH形鋼の冷却設備は、熱間圧延後のH形鋼のフランジの外面に、複数の噴射孔から冷却水を噴射して、前記フランジの外面を冷却する冷却設備であって、通材ラインを挟んで噴射する水同士が直接干渉せず、前記H形鋼のフランジの全外面に前記冷却水を供給するノズルを有するとともに、前記フランジの外面を冷却した前記冷却水はウェブを冷却せず、該ウェブは空冷となるようにしたものである。
また、本発明に係るH形鋼の冷却設備は、前記H形鋼のフランジ幅に応じて噴射範囲を変更することができるように、前記冷却設備内に仕切りを設けて垂直方向に複数に分割したヘッダを有するものである。
また、本発明に係るH形鋼の冷却設備は、噴射方向が平行となる複数の平行ラミナー水流群を噴射する前記ノズルを有するものである。
また、本発明に係るH形鋼の冷却設備は、前記ウェブが空冷となるようにウェブ高さに応じて噴射する流体の噴射速度と噴射方向を制御するようにしたものである。
本発明に係るH形鋼の冷却方法は、上記いずれかに記載の冷却設備を用いてH形鋼を冷却するようにしたものである。
本発明に係るH形鋼の冷却設備および冷却方法によれば、噴射する冷却水の噴射速度と噴射様式を最適化するようにしたので、フランジ全体を均一に冷やすことができるが、ウェブを冷却することがない。
こうして、H形鋼のフランジ幅方向で均一性の高い加速冷却を実現することができ、高強度で高品質のH形鋼を提供することができる。
図1は本発明の一実施の形態に係るH形鋼の製造設備を示す側面図、図2は図1の製造設備の一部を構成する冷却設備の正面図である。
図1に示すように、H形鋼10の製造設備は、通材ライン1に沿って、その上流側から下流側に、粗圧延機2、仕上圧延機3、冷却設備20、温度計4及び熱間鋸断機5が設けられており、H形鋼10がこの通材ライン1に沿って搬送されるようになっている。
H形鋼10は、図2に示すように、フランジ11とウェブ12からなり、テーブルローラー30上を通材ライン1方向(図の前後方向)に搬送されるようになっている。H形鋼10の搬送方向の両側には冷却設備20を構成するボックス型の多孔噴流装置21が設けられており、テーブルローラー30上をスライドするようになっている。この多孔噴流装置21には、通材ライン1を挟んでノズルが対向して配置されており、さらに、H形鋼10のフランジ幅yに応じて噴射範囲を変更できるように、多孔噴流装置21内に仕切りを設けて、多孔噴流装置21を垂直方向に複数に分割している。本実施の形態1では、下段ヘッダ21a、中段ヘッダ21b及び上段ヘッダ21cの3区画に分割している。
多孔噴流装置21に設けられたノズルは、通材ライン1を挟んで複数の棒状冷却水流群を平行に噴射する。そして噴射する水同士は、直接干渉しないように、またスプレーのように広がらないようにしてある。干渉したり、スプレーのように広がったりすると、水がウェブ12に乗ってしまうと、その乗り水によってウェブ12が冷却され、過冷却を起こしてウェブ波が発生し、製品として出荷できなくなるからである。
すなわち、図3の上面図に示すように、一方の側(図の左側)に位置する多孔噴流装置21より噴射する冷却水イと、他方の側(図の右側)に位置する多孔噴射流装置21より噴射する冷却水ロとは、隣接する冷却水イ、ロ同士が逆方向に噴射されており、かつすべての冷却水イ、ロの噴射方向は平行になっている。
また、図2の正面図に示すように、冷却水イ、ロはH形鋼10のウェブ12の面に対しても平行に噴射されるようになっている。
なお、棒状冷却水を噴射するノズルのノズル口の直径(D)と直管部(L)との比L/Dが17以上だと冷却水の直進性がますので、L/Dは17以上が好ましい。
こうして、多孔噴射流装置21より噴出した冷却水イ、ロはフランジ11の全外面を冷却する。また、フランジ11の最上部を通過する冷却水イ、ロは、フランジ11の外面を冷却することなく放物線状の軌跡となって反対側の多孔噴射流装置21に達する。このため、ウェブ12を冷却することがなく、ウェブ12は空冷となる。
ウェブ12が空冷となるように、ウェブ高さxに応じて噴射する冷却水イ、ロの噴射速度などを制御する。噴射速度は、ウェブ12に水が乗らない流速にすることが必要である。
ウェブ12に水が乗らないためには、ウェブ高さxに応じて、表1に示した噴射速度以上の速度で噴射する必要がある。
Figure 2007260748
ウェブ高さxとウェブ12に水がのらない噴射速度の関係は、図4の線図に示す通りで、ウェブ12に水がのらない噴射速度の範囲は、図4の斜線部分の範囲に相当する。
なお、一方の多孔噴流装置21より噴射され、これと対向する他方の多孔噴流装置21の壁に到達した冷却水イ、ロが、その壁で跳ね返ってウェブ12に乗ってこれを冷却しないように、多孔噴流装置21の壁には噴射する冷却水イ、ロが飛散しないような穴を設けてある(図示せず)。あるいは、壁に、冷却水イ、ロが飛散しないような緩衝材を設けてもよい(図示せず)。
次に、本発明の作用を説明する。図1に示すH形鋼10の製造設備において、粗圧延機2により粗圧延が行われ、仕上圧延機3により仕上圧延が行われた後に、冷却設備20に入り、ここで図2に示すように、多孔噴流装置21によってH形鋼10のフランジ11の外面に冷却水イ、ロが噴射される。冷却設備20によって冷却された後、温度計4によってフランジ幅y方向の温度分布を測定し、ついで熱間鋸断機5によって鋸断される。
冷却設備20では、図2に示すように、フランジ11の外面(全断面)にほぼ垂直に、多孔噴流の冷却水イ、ロを噴射する。この加速冷却によって、H形鋼10のフランジ11の中央部の表面温度は例えば640℃程度となる。これにより、H形鋼10の断面のフェライト組織は微細化され、強度アップが図られる。
加速冷却に際しては、H形鋼10のフランジ幅yに応じてヘッダ21a〜21cの段数を決定する。例えば図2では、下段ヘッダ21aのみを用いているが、フランジ幅yがこれより広い場合は、下段ヘッダ21a及び中段ヘッダ21bの2つを用いることができ、または下段ヘッダ21a、中段ヘッダ21b及び上段ヘッダ21cの3つを用いることができる。また、フランジ11の厚みおよびその製品の強度目標とH形鋼10の搬送速度に基づいて、使用する多孔噴流装置21の長さを決定する。
熱間仕上圧延後に、ウェブ高さxがともに700mmであり、フランジ幅yがそれぞれ200mm、300mmであるH形鋼a、b(表2)のフランジ11の外面に冷却水を噴射して、製品を製造した。
Figure 2007260748
この際、H形鋼a、bのフランジ幅yに応じて、使用するヘッダの段数を決定した。H形鋼a(フランジ幅yが200mmm)では図2に示すように下段ヘッダ21aのみを用い、H形鋼b(フランジ幅yが300mmm)では図示しないが下段ヘッダ21aと中段ヘッダ21bの2つのヘッダを用いた。H形鋼a、bのいずれの場合も、フランジ幅y方向の温度分布をほぼ一定の800℃として仕上圧延を行った後、多孔噴射装置21によって、フランジ11の中央が640℃程度になるまで冷却を行った。
実施例1では、図2に示すように、H形鋼a、bに対して、フランジ11の外面全体を冷却した。フランジ11の外面への流量は、5m3/min・m2 であった。その際、ノズルから噴出する冷却水イ、ロの流速は、16m/sであった。この流速は、図4に示すように、ウェブ12に水がのらない領域(斜線部分の領域)を満たしている(H形鋼a、bのウェブ高さxはともに700mmで、このときのウェブ11に水が乗らない噴射速度は14.7m/s以上である)。そして、上記の噴射速度において、噴射する冷却水イ、ロ同士が干渉せず、対向位置にある多孔噴流装置21まで到達するような速度に冷却装置20を配置した。なお、フランジ11の外面の最上部よりも上に噴射された冷却水イ、ロは、図2、図3に示すように、相互に干渉することなく、放物線状の軌跡となって通材ライン1の反対側に位置する多孔噴流装置21の壁まで到達した。
比較例1では、図5に示すように、H形鋼a、bに対して、フランジ11の外面の最上部及び最下部の20mmには冷却水を供給しなかった。
比較例2では、図6に示すように、H形鋼a、bに対して、フランジ11の外面全体を冷却した。フランジ11の外面への流量は、1m3/min・m2であった。ノズルから噴出する冷却水イ、ロの流速は、3m/sであった。
比較例3では、H形鋼a、bに対して、フランジ11の外面全体を冷却し、フランジ11の外面への流量を5m3/min・m2とした。その際、ノズルから噴出する冷却水イ、ロの流速は、16m/sであった。また、図7に示すように、H形鋼a、bの両フランジ11側から噴射する噴射流イ、ロ同士が干渉するように冷却装置20を配置した。
冷却後、熱間鋸断前に測定したH形鋼a、bの、フランジ温度と製品強度の評価を行った。その結果は、表3に示す通りであった。
Figure 2007260748
実施例1では、フランジ11の全面が均一に冷却され、フランジ11の全体の強度が均一に高くなるとともに、ウェブ12にも水がかからなかったため、ウェブ波が発生しなかった。
比較例1では、フランジ11の上端部、下端部の非水冷部の温度が高く、温度極大部分での強度が十分ではなかった。従って、強化元素の添加を行い、コスト増を余儀なくされた。
比較例2では、フランジ11の全体の強度は満足したが、噴射流イ、ロが、フランジ11だけでなく、ウェブ12へもかかってしまい、その乗り水によりウェブ12が熱収縮する途中で塑性変形を起こした。その結果、ウェブ波を発生させ、製品として出荷できなくなった。
比較例3では、フランジ11の全体の強度は満足したが、噴射流イ、ロ同士が干渉し、ウェブ12に水がかかってしまい、その乗り水によってウェブ12が熱収縮する途中で塑性変形を起こした。その結果、ウェブ波を発生させ、製品として出荷できなくなった。
上記の説明では、ヘッダ21a〜21cは、フランジ幅yが200mm及び300mmの場合に、それぞれ1段又は2段使用するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、製造するフランジ幅yの種類に応じてどのように区切ってもよい。例えば、製品のフランジ幅yが150mmから50mmピッチで大きくなるような場合では、ヘッダ21をより細かく分割してもよい。
本発明の一実施の形態に係るH形鋼の製造設備を示す側面図である。 図1の製造設備の一部を構成する冷却設備を示す正面図である。 図2の平行ラミナ水流群の噴射状態を示す上面図である。 ウェブ高さとウェブに水がのらない噴射速度との関係を示す線図である。 製造設備の一部を構成する比較例1に係る冷却設備を示す正面図である。 製造設備の一部を構成する比較例2に係る冷却設備を示す正面図である。 比較例3に係る平行ラミナ水流群の噴射状態を示す上面図である。
符号の説明
1 通材ライン、2 粗圧延機、3 仕上圧延機、4 温度計、5 熱間鋸断機、10 H形鋼、11 フランジ、12 ウェブ、20 冷却設備、21 多孔噴流装置、21a〜21c ヘッダ、x ウェブ高さ、y フランジ幅、イ,ロ 冷却水。

Claims (5)

  1. 熱間圧延後のH形鋼のフランジの外面に、複数の噴射孔から冷却水を噴射して、前記フランジの外面を冷却するH形鋼の冷却設備において、
    通材ラインを挟んで噴射する水同士が直接干渉せず、前記H形鋼のフランジの全外面に前記冷却水を供給するノズルを有するとともに、前記フランジの外面を冷却した前記冷却水はウェブを冷却せず、前記ウェブは空冷となることを特徴とするH形鋼の冷却設備。
  2. 前記H形鋼のフランジ幅に応じて噴射範囲を変更することができるように、前記冷却設備内に仕切りを設けて垂直方向に複数に分割したヘッダを有することを特徴とする請求項1記載のH形鋼の冷却設備。
  3. 噴射方向が平行となる複数の平行ラミナー水流群を噴射する前記ノズルを有することを特徴とする請求項1記載のH形鋼の冷却設備。
  4. 前記ウェブが空冷となるようにウェブ高さに応じて噴射する流体の噴射速度と噴射方向を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のH形鋼の冷却設備。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の設備を用いてH形鋼を冷却することを特徴とするH形鋼の冷却方法。
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