JP2007260608A - 銅張積層板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銅箔とポリイミド樹脂層との接着性を向上させた銅張積層板の製造方法を提供すること。
【解決手段】銅箔上にポリイミド樹脂層が積層する銅張積層板の製造方法において、ポリイミド樹脂層が積層する側の銅箔の表面を、酸化剤を含む処理液で表面処理することにより該銅箔の表面に酸化第二銅の酸化膜を形成する第一の工程と、酸化第二銅の酸化膜を形成した銅箔面にポリイミド樹脂層を積層する第二の工程とを備えたことを特徴とする銅張積層板の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は銅箔上にポリイミド樹脂層が積層する銅張積層板の製造方法に関し、より詳しくは、プリント配線板用に適した銅張積層板の製造方法に関する。
電子機器の電子回路には、絶縁材と導電材からなる積層板を回路加工したプリント配線板が使用されている。プリント配線板は、絶縁基板の表面(及び内部)に、電気設計に基づく導体パターンを、導電性材料で形成固着したものであり、基材となる絶縁樹脂の種類によって、板状のリジットプリント配線板と、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とに大別される。フレキシブルプリント配線板は、可撓性を持つことが特徴であり、常時屈曲を繰り返すような可動部では接続用必需部品となっている。また、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内で折り曲げた状態で収納することも可能であるために、省スペース配線材料としても用いられる。フレキシブルプリント配線板の材料となるフレキシブル基板は、基材となる絶縁樹脂にはポリイミドエステルやポリイミドが多く用いられているが、使用量としては耐熱性のあるポリイミドが圧倒的に多い。一方、導電材には導電性の点から一般に銅箔が用いられている。
フレキシブル基板は、その構造から3層フレキシブル基板と、2層フレキシブル基板がある。3層フレキシブル基板は、ポリイミドなどのベースフィルムと銅箔をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤で貼り合わせて、ベースフィルム層、接着剤層、銅箔層の3層で構成される積層板である。一方、2層フレキシブル基板は特殊工法を採用して、接着剤を使用せずに、ベースフィルム層、銅箔層の2層で構成される積層板である。2層フレキシブル基板は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの耐熱性の低い接着剤層を含まないので、信頼性が高く、回路全体の薄膜化が可能でありその使用量が増加している。
近年、電子機器における高性能化、高機能化の要求が高まっており、それに伴って電子デバイスに使用される回路基板材料であるプリント配線版の高密度化が望まれている。プリント配線版を高密度化するためには、回路配線の幅と間隔を小さくする、すなわちファインピッチ化する必要がある。先に記述したように、プリント配線板は導電性材料と樹脂フィルムを貼り合わせたものであるが、従来、導電性材料としては、樹脂との接着力を高めるために粗度が高い銅箔又は粗化処理された銅箔が使用されている。しかしながら、ファインピッチが要求される用途で、粗度が高い銅箔を使用すると、エッチングで回路を形成する際に、絶縁樹脂層の底部に銅箔が残る、いわゆる根残りが生じ、又は回路の直線性が低下して回路幅が不均一になりやすい等の問題が生じる。このため、プリント配線板を高密度化、ファインピッチ化するためには、表面粗度の低い銅箔を使用することが望まれてきた。
しかしながら、表面粗度の低い銅箔は、アンカー効果、すなわち絶縁樹脂層の銅箔表面の凸凹への食い込みが小さいため、機械的な接着強度が得られず、そのため絶縁樹脂に対する接着力が低くなるという問題があった。そこで、表面粗度の低い銅箔と絶縁樹脂との接着力を高めることが課題となっている。
特開2003−27162号公報 特開2002−321310号公報
例えば、特開2003−27162号公報には、ポリアミック酸を含むワニスを原料として樹脂基板とする2層プリント配線板用の積層板において、ワニスとの濡れ性が良好で粗化処理を施さずにポリイミドとの直接接合が可能な表面粗さの小さい積層板用の銅合金箔を提供する方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、接着性を向上するために、銅合金中へ副原料としてニッケル、銅シリコン母合金、銀、アルミニウム、銅ベリリウム母合金、コバルト、銅鉄母合金、マグネシウム、マンガン、銅リン母合金、鉛、スズ、チタン及び亜鉛等の添加が必要であり、また、銅箔への有機防錆処理はポリアミック酸を含むワニスとの濡れ性を改善するために行うことを示すのみで接着性の向上効果は不十分である。
また、特開2002−321310号公報には、銅表面をアゾール化合物及び有機酸を含有する水溶液と接触させることで、銅表面にアゾール化合物の厚い皮膜を形成し、樹脂との接着力を向上する方法が開示されている。しかし、この方法を採用するだけでは、接着性の向上効果は不十分であった。なお、銅箔と絶縁樹脂層との接着力を向上する機能を有する有機表面処理剤は、上記特許公報等で報告されており、当業者に公知である材料と言える。
以上のように、銅箔とポリイミド樹脂層との接着力を向上させる方法が種々検討されているが、これを満足しうる方法は未だ見出されていないのが現状である。本発明は、銅箔とポリイミド樹脂層との接着性を向上させるための銅張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者等が検討を行ったところ、銅箔の表面処理方法を工夫することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、銅箔上にポリイミド樹脂層が積層する銅張積層板の製造方法において、ポリイミド樹脂層が積層する側の銅箔の表面を、酸化剤を含む処理液で表面処理することにより該銅箔の表面に酸化第二銅の酸化膜を形成する第一の工程と、酸化第二銅の酸化膜を形成した銅箔面にポリイミド樹脂層を積層する第二の工程とを備えたことを特徴とする銅張積層板の製造方法である。
また本発明は、酸化膜を形成した銅箔面を、更に有機表面処理剤を用いて表面処理する工程Aを、第一の工程と第二の工程の間に備えた上記の銅張積層板の製造方法である。更に本発明は、第二の工程が、酸化膜を形成した銅箔面に、ポリイミド又はポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布・乾燥した後、熱処理又は硬化若しくはイミド化を伴う熱処理することすることを含む上記の銅張積層板の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる銅箔は、銅含有率が95wt%以上、特に好ましくは99wt%以上の銅又は銅合金から得られるものである。銅合金が含有し得る金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される銅合金であってもよい。
本発明の製造方法によって製造される銅張積層板が、フレキシブル基板用途に用いられる場合は、銅箔の厚みが5〜50μmの範囲内にあることがよく、より好ましくは8〜30μmの範囲内であることがよい。また、回路幅が40μmピッチ以下のファインピッチ用途で用いられる場合は、銅箔の厚みが8〜20μmの範囲内にあることがよい。なお、ピッチは回路幅と隣接する回路間の幅の合計を意味し、実用的にはピッチを小さくすることが望まれる。
本発明では、表面粗度が低い銅箔を用いても、銅箔とポリイミド樹脂層との高接着性が得られることから、特に回路幅が40μmピッチ以下のファインピッチ用途で用いられる銅張積層板に適している。好ましい銅箔の表面粗度は、十点平均粗さで0.1〜3μmの範囲内にあることがよく、更に好ましくは0.1〜1μmの範囲内にあることがよい。
本発明は、ポリイミド樹脂層が積層する側の銅箔の表面を、酸化剤を含む処理液で表面処理することにより、該銅箔表面に酸化第二銅の酸化膜を形成する第一の工程を備える。銅箔の表面処理に際しては、銅箔表面の付着物を除去するために予め酸水溶液で洗浄することが好ましい。この処理をソフトエッチングというが、用いられる酸水溶液は、酸性であればいかなる水溶液も用いることができる。特に、塩酸水溶液や硫酸水溶液が好ましい。また、濃度は0.5〜50wt%の範囲内にあることがよいが、好ましくは1〜5wt%の範囲内にあることがよい。pHは2以下とすることが更に好ましい。
本発明の第一の工程で使用する酸化剤を含む処理液(以下、酸化処理剤ともいう)に含まれる酸化剤としては、有機化合物、無機化合物の限定は無く、酸化処理剤はこの酸化剤を溶解可能な溶剤(水を含む)に溶解したものであるであればよい。酸化処理剤は、銅箔表面を酸化第二銅にまで酸化できるものが好ましい。この表面処理によって、銅箔とポリイミド樹脂層との接着力を向上させることができる。
好ましい酸化剤は具体例を挙げると次のような化合物があるが、これに限定されるものではない。過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、二クロム酸カリウム、ヨウ化カリウム、亜硫酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、クロラミン、硝酸、硫酸などが挙げられ、これらを単独にあるいは組み合わせて用いることができる。なお、第一の工程で使用する酸化処理剤は、銅箔を溶解しないか酸価が優先するものを選択する。また、酸化反応を促進させるために、酸化処理を行う前に、銅箔表面に置換パラジウム処理工程(後記する)を追加することも可能である。
酸化剤を溶解する溶剤としては、水、炭素数1〜8の炭化水素系アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等を用いることができるが、これに限定されるものではない。しかし、表面処理条件において、酸化剤によって酸化されない溶剤である必要がある。
処理液の濃度の範囲は1〜50wt%が好ましく、高濃度である方が銅箔表面の酸化処理時間が短い点で有利と考えられるが、低濃度すぎると銅箔表面が十分酸化されず、ポリイミド樹脂層との接着力向上の効果がなくなるので、より好ましくは5〜30wt%である。
酸化処理剤で銅箔表面を処理する場合、処理面全面に酸化処理剤と銅箔表面が接触すればよく、その方法は限定されないが、均一に接触させることが好ましい。銅箔を酸化処理剤に浸漬してもよく、また、スプレー等で銅箔に吹き付けても、適当な工具で銅箔に塗布してもよい。また、この際の酸化処理剤の温度は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは10〜50℃の範囲である。
第一の工程は、表面処理の終了後、銅箔表面に余分に付着した酸化処理剤を水洗除去する洗浄工程を含む。この洗浄工程では、酸化剤が完全に除去されるまで、水洗を行う。
洗浄工程で銅箔表面を洗浄する方法は限定されない。洗浄水に浸漬してもよく、また、スプレー等で吹き付けて洗い流しても、適当な基材にしみ込ませてふき取ってもよい。この洗浄工程では、銅箔表面に余分に付着した酸化処理剤を除去するが、銅箔表面に形成した酸化膜を可及的に除去してはならない。洗浄工程に使用する水の温度は、好ましくは0〜80℃、より好ましくは5〜50℃の範囲内である。また、洗浄時間は、好ましくは1〜1000秒間、より好ましくは3〜600秒間の範囲内にあることがよい。洗浄に使用する水の量は、好ましくは銅箔1m2あたり1〜500L、より好ましくは3〜50Lの範囲内にあることがよい。
また、銅箔表面の酸化状態によって置換パラジウム処理工程を酸化処理を行う前に追加することも可能である。この処理工程を追加した場合の処理例を以下に記す。まず、銅箔をクリーナー160(メルテックス社製)で1分処理し、銅箔表面を脱脂する。その後、10%wt硫酸水溶液に30秒浸漬させ、アクチベーター352(メルテック社製)/5%塩酸で3分処理し、イオン交換水で洗浄後、乾燥する。
本発明の製造方法では、第一の工程で形成した酸化膜の酸化状態と酸化膜の厚みを調整することで、ポリイミド樹脂層との接着力をより向上させることができる。すなわち、酸化膜の酸化状態は、酸化処理剤で表面処理した銅箔表面が完全に酸化第二銅で被覆されていることであり、酸化膜の厚みの範囲は1〜50nmがよい。酸化膜の厚みが、前記範囲を外れると銅箔とポリイミド樹脂層との接着力が低下する傾向にある。なお、酸化膜の酸化状態と酸化膜の厚みは、例えば、Quantum2000型XPS分析装置(PHI社製)を用い、X線源はAlKα(1486.7eV)単色化、X線出力は15kV、1.6mA(2
5W)、測定領域は200x200μm、分析室真空度は、3.8x10−7Pa、測定元素と積算回数はCuaes(90)、Cu2p(180)、スパッター速度4.7nm(SiO2換算)の測定条件で銅箔表面を測定することで確認することができる。
本発明の製造方法では、第二の工程において、酸化膜を形成した側の銅箔面に、ポリイミド樹脂層を積層する。有利には、この銅箔面に、ポリイミド樹脂溶液を塗布・乾燥するか、好ましくは更に熱処理してポリイミド樹脂層を形成する方法と、ポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布・乾燥した後、熱処理によって硬化又はイミド化することでポリイミド樹脂層を積層する方法とがある。ここで、熱処理は150℃以上に加熱する処理をいい、硬化又はイミド化するとはイミド化が未完了のポリイミド樹脂又ポリイミド樹脂前駆体中でイミド化が未完了のアミド結合の実質的に全部がイミド化されることをいう。
ポリイミド樹脂は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有するポリマーからなる耐熱性樹脂をいう。
ポリイミド樹脂は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で反応して製造することができる。使用されるジアミン化合物としては、例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリド、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられる。これらのジアミン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸テトラカルボン酸系二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、これらの反応は有機溶媒中で行わせることが好ましく、このような有機溶媒としては特に限定されないが、具体的には、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、硫酸ジメチル、スルフォラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライムなどを使用することができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、DMAcやNMPなどが特に好ましい。溶剤の使用量は、各成分を均一に溶解するのに充分な量とする。
また、このような溶媒を用いた反応において、用いるジアミノ化合物と酸無水物との配合割合は、等モル程度がよく、全ジアミノ化合物に対して酸無水物のモル比が0.95から1.05の割合で混合することが好ましい。
合成されたポリイミド又は前駆体樹脂は溶液として使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であり、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリイミド前駆体樹脂は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリイミド又は前駆体樹脂溶液を銅箔上に塗布する方法としては特に制限されず、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
銅箔上にポリイミド樹脂層(又は前駆体樹脂層)を塗布し、乾燥する操作を1回以上行って、1層以上のポリイミド樹脂層(又は前駆体樹脂層)を形成したのちは、熱処理を行って前駆体樹脂又はポリイミド樹脂のイミド化又は硬化を実質的に完了させる。熱処理は通常、150℃以上の温度に加熱することにより行われる。溶媒を除去する乾燥条件は、60〜200℃で1〜300分であるのが好ましく、特に好ましくは100〜180℃で2〜20分である。乾燥条件が150℃を超える場合は、熱処理も同時になされる。また、硬化又はイミド化の条件は、温度150〜420℃で、1〜300分であるのが好ましく、特に好ましくは180〜380℃で3〜30分である。乾燥及び熱処理においては、段階的に温度を上げて行うバッチ式でもよいし、連続的に温度を上げて行う連続硬化式でもよく、その方法は限定されない。
ポリイミド樹脂層は、単層のみから形成されるものでも、複数層からなるものでもよい。ポリイミド樹脂層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリイミド樹脂層の上に他のポリイミド樹脂を順次塗布して形成することができる。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリイミド樹脂を2回以上使用してもよい。
ポリイミド樹脂層の好ましい厚みの範囲は3〜100μm、より好ましくは10〜50μmがよい。
銅張積層板は、銅箔層を両面に有する両面銅張積層板とすることもできる。両面銅張積層体は、例えば2組の銅張積層板を準備し、樹脂側を向かい合わせ熱プレスにより圧着する方法によって製造することができる。この場合、その間にポリイミドフィルムを挟んで加熱圧着する方法が好ましい。その方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。このような銅箔を張り合わせる方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等を挙げることができる。このような銅箔を張り合わせる方法の中でも、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易に行え、更に導体の酸化を防止することができるという観点から真空ハイドロプレス、連続式熱ラミネータを用いることが好ましい。また、このようにして導体層を張り合わせる際には、200〜400℃程度に加熱しながら両面銅張積層板をプレスすることが好ましい。また、プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、通常、100〜150kgf/cm2程度が適当である。
また本発明の製造方法は、酸化膜を形成した銅箔面を、更に有機表面処理剤を用いて表面処理する工程Aを、第一の工程と第二の工程の間に備えることもできる。有機表面処理剤を用いて表面処理する方法は、公知技術を利用でき、この公知技術の例としては、特許文献2で開示されている方法等が挙げられる。公知の有機表面処理剤としては、銅箔とポリイミド樹脂層の接着強度を高めるための材料としての硫黄原子を含有する有機化合物、好ましくは窒素及び硫黄原子を有する複素環式化合物がある。また、官能基としてチオール基を有する複素環化合物が好ましく使用され、より好ましくはポリイミド樹脂との接着性の観点から、アミノ基とチオール基とを有する複素環化合物が好ましく使用される。
かかる有機表面処理剤としては、2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、2−アミノ−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−アミノ−4−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−4−フェニル−5−テトラデシルチアゾール、2−アミノ−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−4−フェニルチアゾール、4−アミノ−5−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、2−アミノ−6−(メチルスルフォニル)ベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2−アミノ−5−(メチルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メチルチオ−1H−1,2,4チアゾール、6−アミノ−1−メチルウラシル、3−アミノ−5−ニトロベンズイソチアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4−チアゾールアセチックアシッド、2−アミノ−2−チアゾリン、2−アミノ−6−チオシアネートベンゾチアゾール、DL−α−アミノ−2−チオフェンアセチックアシッド、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−6−プリンチオール、4−アミノ−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、N4−(2−アミノ−4−ピリミジニル)スルファニルアミド、3−アミノロダニン、5−アミノ−3−メチルイソチアゾール、2−アミノ−α−(メトキシイミノ)−4−チアゾールアセチックアシッド、チオグアニン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらを単独にあるいは組み合わせて用いることができる。また、シランカップリング剤等も好適に使用される。
本発明によれば、従来、接着力向上のために行われていた銅箔への金属処理を行わなくとも簡便な表面処理により銅箔と樹脂層間の接着力を飛躍的に向上させることができる。ファインピッチ形成に適した低粗度銅箔においても接着力を向上させることができるため、低コストで、高密度のプリント配線板に用いられる銅張積層板の製造が可能となり、その工業的価値は高いものである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
合成例1
実施例で使用したポリアミック酸を含むワニスは、次のようにして調製した。3つ口フラスコにジメチルアセトアミドを425g、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを31.8g及び1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを4.9gを加え、室温で30分攪拌した。その後、ピロメリット酸二無水物28.6g及びビフェニル-3,4,3',4'-テトカルボン酸二無水物を加え、窒素雰囲気下、室温で3時間攪拌した。粘度を測定したところ、30℃で28000cpsであった。
銅箔には、表面処理を施していない未処理電解銅箔(表面粗度:十点平均粗さ=約0.8μm、厚さ:18μm、20cm×13cm角)を用いた。まず、その銅箔表面の付着物を除去するため、5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔を、過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温25℃)に8分間浸漬して酸化処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥し、表面処理した銅箔Aを得た。XPS分析装置(PHI社製)を用いて、銅箔Aの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第二銅の存在が確認され、酸化第二銅酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から5nmであることが確認された。
銅箔Aの表面処理した面に、合成例1で調製したポリアミック酸を含むワニスを厚さ約450μmで塗布し、130℃で加熱乾燥後、最終温度360℃で3分間加熱硬化することでポリイミドの皮膜としてポリイミドと銅箔の2層からなる銅張積層板を作製した。この銅張積層板におけるポリイミド樹脂層の厚さは約25μmであった。
得られた銅張積層板について、プレス機を用いて幅10mmの短冊状に切断し、室温で180°、10mmピール強度を、引張試験機を用いて測定することにより、銅箔Aとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔を、過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温25℃)に16分間浸漬して酸化処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥し、表面処理した銅箔Bを得た。実施例1と同様にして、銅箔Bの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第二銅の存在が確認され、酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から10nmであることが確認された。
実施例1と同様にして、銅箔Bを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Bとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔をクリーナー160(メルテックス社製)で1分処理し、銅箔表面を脱脂した。その後、10wt%硫酸水溶液に30秒浸漬させ、アクチベーター352(メルテック社製)/5wt%塩酸で3分処理し、イオン交換水で洗浄後、乾燥した。
過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温約25℃)に4分間浸漬して酸化処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥して、表面処理した銅箔Cを得た。実施例1と同様にして、この銅箔Cの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第二銅の存在が確認され、酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から7nmであることが確認された。
実施例1と同様にして、銅箔Cを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Cとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔をクリーナー160(メルテックス社製)で1分処理し、銅箔表面を脱脂した。その後、10wt%硫酸水溶液に30秒浸漬させ、アクチベーター352(メルテック社製)/5wt%塩酸で3分処理し、イオン交換水で洗浄後、乾燥した。
過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温約25℃)に8分間浸漬して酸化処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥して、表面処理した銅箔Dを得た。実施例1と同様にして、この銅箔Dの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第二銅の存在が確認され、酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から10nmであることが確認された。
実施例1と同様にして、銅箔Dを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Dとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔をクリーナー160(メルテックス社製)で1分処理し、銅箔表面を脱脂した。その後、10wt%硫酸水溶液に30秒浸漬させ、アクチベーター352(メルテック社製)/5wt%塩酸で3分処理し、イオン交換水で洗浄後、乾燥した。
過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温約25℃)に16分間浸漬して酸化表面処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥して、表面処理した銅箔Eを得た。実施例1と同様にして、この銅箔Eの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第二銅の存在が確認され、酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から20nmであることが確認された。
実施例1と同様にして、銅箔Eを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Eとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例5で得られた銅箔Eを1wt%メタノール溶液に調整したシランカップリング剤AY43−031(東レ・ダウコーニング社製)に1分浸漬させ、引き上げた後、圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥し表面処理した銅箔Fを得た。
実施例1と同様にして、銅箔Fを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Fとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。このように処理した銅箔を、過酸化水素を16wt%の濃度に調整した水溶液(浴温25℃)に4分間浸漬して酸化表面処理を行い、一旦空気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで、イオン交換水750mL(浴温約25℃)に60秒間浸漬し、その後圧縮空気を約15秒吹き付けて乾燥し、表面処理した銅箔Gを得た。実施例1と同様にして、この銅箔Gの表面処理面の酸化状態を測定したところ、表面処理面には酸化第一銅の存在を確認した。
実施例1と同様にして、銅箔Gを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Gとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例1と同じ未処理電解銅箔を準備し、同様にして5wt%塩酸水溶液でソフトエッチング処理し、イオン交換水で洗浄し、乾燥して、銅箔Hを得た。実施例1と同様にして、この銅箔Hの表面処理面の酸化状態と厚みを測定したところ、表面処理面には酸化第一銅の存在が確認され、酸化膜の厚みは表面処理面の最表面から4nmであることが確認された。
実施例1と同様にして、銅箔Hを使用した銅張積層板を作製し、銅箔Hとポリイミド樹脂層の接着強度を測定した。測定結果を表1に示す。
以上の結果をまとめて、表1に示す。
Figure 2007260608
表面処理した銅箔A〜Fを使用した銅張積層板は、各々の銅箔とポリイミド樹脂層との接着性に優れるものであったが、銅箔Gと銅箔Hは、ポリイミド樹脂層との接着性に劣るものであった。

Claims (3)

  1. 銅箔上にポリイミド樹脂層が積層する銅張積層板の製造方法において、ポリイミド樹脂層が積層する側の銅箔の表面を、酸化剤を含む処理液で表面処理することにより該銅箔の表面に酸化第二銅の酸化膜を形成する第一の工程と、酸化第二銅の酸化膜を形成した銅箔面にポリイミド樹脂層を積層する第二の工程とを備えたことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
  2. 酸化膜を形成した銅箔面を、更に有機表面処理剤を用いて表面処理する工程Aを、第一の工程と第二の工程の間に備えたことを特徴とする請求項1に記載の銅張積層板の製造方法。
  3. 第二の工程が、酸化膜を形成した銅箔面に、ポリイミド又はポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布・乾燥した後、熱処理又は硬化若しくはイミド化を伴う熱処理することでポリイミド樹脂層を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の銅張積層板の製造方法。
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