JP2007254513A - コネクタハウジング成形用樹脂組成物及びコネクタハウジング - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性率を高めることができると共に、金型温度を高く維持した状態でスキン層を十分形成可能なコネクタハウジング成形用樹脂組成物、及び弾性率が高く且つ靭性のあるコネクタハウジングを提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなり、成形物の表面側から順に、非晶であるスキン層、及び結晶性のバルク層が形成されるように形成してコネクタハウジングとする。
【選択図】なし
【解決手段】ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなり、成形物の表面側から順に、非晶であるスキン層、及び結晶性のバルク層が形成されるように形成してコネクタハウジングとする。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車用ワイヤーハーネスに使用されるコネクタハウジングの成形に用いられるコネクタハウジング成形用樹脂組成物及びコネクタハウジングに関する。
従来、自動車用ワイヤーハーネスに使用されるコネクタハウジングは、自動車内の各使用部位に適した樹脂から形成されている。コネクタハウジングに使用される樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン66、ナイロン6等)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、半芳香族ナイロン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、及びこれらをアロイ化した樹脂等がある。これらは、ガラス繊維や炭素繊維(チョップドファイバー)、タルク等の無機添加剤を配合して強化した強化品、あるいは無機添加剤を配合しない非強化品のいずれかが用いられる。
自動車用コネクタハウジングには、非強化のポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する場合もある。)が多用されている。PBTは、ポリプロピレンと比較して耐熱性が優れており、ポリアミドと比較して吸水による寸法変化が小さいことや強度低下が小さいことが、多用される理由である。またPBTは結晶性樹脂であり、結晶化速度が比較的速く、固化し易いので生産性が高いという面からも好ましく用いられる。
また無機添加剤を配合しない非強化品が好ましく使用されるのは、適度な靭性を有するからである。自動車用コネクタハウジングには、コネクタ同士を固定するロックや端子を保持するランスやリテーナが設けられている。コネクタハウジングのロックやランス等は、コネクタを嵌合する場合や端子を挿入する際に変形を伴うから、コネクタハウジングを変形させた時に折れ難く適度な靭性(可とう性)を有する必要がある。
自動車用コネクタハウジングは、射出成形や射出圧縮成形、あるいはインサート成形によって量産される。一般にコネクタハウジングは、成形後、熱処理が必要な場合を除き、特別な処理を施さず、所定の温湿度環境で保管後、端子にリテーナ等を挿入する工程を経てコネクタとなる。
近年、自動車用コネクタの小型化に伴い、端子やハウジング等も小型化されている。当然、端子間の隔壁も薄くなる傾向にあり、端子を保持するリテーナ、ハウジング同士を結合するロックも、薄く、小さく設計されるようになってきている。自動車用コネクタの特徴である、ロックやランス構造は、小型化しても従来と同等の強度と靭性が要求される。しかしながら、非強化品のPBTからコネクタハウジングを成形すると、非強化品のPBT自体の弾性率が低い為、リテーナやロックの部分を薄肉に形成したのでは十分な保持力を出すことができないという問題があった。
そこで非強化のPBTの弾性率を高めるために、膨潤性のフッ素雲母系鉱物等を添加した樹脂組成物が公知である(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、樹脂組成物が電気電子機器分野のスイッチやコネクター等の機械部品やハウジング類に利用できる旨の記載がある。
上記特許文献1に記載されている樹脂組成物は、PBTに特定の無機フィラーを添加することで、弾性率と引張強度が向上するものの、引張伸びの特性を大きく低下させるという問題がある。また無機フィラーを添加することで、結晶化速度が極めて速くなる。そのため、成形物に靭性を保持するだけの十分な厚さを持ったスキン層を形成するには、射出成形時の金型温度を下げて、スキン層が形成され易くする必要がある。しかしながら、金型温度を下げることは、金型を冷却するための冷媒が必要になる等、製造コストを上昇させてしまう。また金型温度を成形毎に下げていたのでは、成形サイクルをハイサイクル化することができないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、弾性率を高めることができると共に、金型温度を高く維持した状態でスキン層を十分形成可能なコネクタハウジング成形用樹脂組成物を提供すること、及び弾性率が高く且つ靭性のあるコネクタハウジングを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコネクタハウジング成形用樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなることを要旨とするものである。
本発明の請求項2に係るコネクタハウジングは、ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなり、成形物の表面側から順に、非晶であるスキン層、及び結晶性のバルク層が形成されていることを要旨とするものである。
上記請求項1に記載されるコネクタハウジング成形用樹脂組成物によれば、ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる為、コネクタハウジングを射出成形した際に、弾性率を高めることができると共に、金型温度を高く維持した状態でスキン層を十分形成可能である。また金型温度を高く設定できるから、金型の冷却が不要であり製造コストを上昇させない。また成形サイクルをハイサイクル化することが容易であり、製造効率を向上させることができる。
上記請求項2に記載のコネクタハウジングによれば、ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなり、成形物の表面側から順に、非晶であるスキン層及び結晶性のバルク層が形成されていることにより、弾性率が高く且つ靭性のあるコネクタハウジングを提供することができる。コネクタハウジングは弾性率が高く且つ靭性があることから、リテーナやロックの部分を薄肉化しても十分な保持力が得られる為、自動車用コネクタの小型化に対応して、コネクタハウジングを十分小型化することが可能である。
本発明で用いられるポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体からなる酸成分と、1,4−ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体からなるジオール成分を縮合反応することにより得られる飽和ポリエステル樹脂のことである。
本発明で用いられる層状フィラーとしては、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の層から構成される層状フィロケイ酸塩鉱物等が用いられる。具体的には、モンモリロナイト、サボナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、マイカ、タルク、バーミキュラナイト、バイロサイト等が挙げられる。これらは合成物、天然物のいずれでも良い。また上記層状ケイ酸塩を有機溶媒に膨潤しやすくするために、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩からなる膨潤剤で処理したものでもよい。
また本発明の層状フィラーとしては、特開平7−268188号公報に記載のタルクとケイフッ化ナトリウム等を加熱して得られる四ケイ素フッ素雲母、特開平8−73710号公報に記載の膨潤性フッ素雲母系鉱物等を用いることができる。
PBTに層状フィラーを添加することで、成形物のコネクタハウジングのスキン層の弾性率とガラス転移点を高くすると共に、バルク層の弾性率も高めることができる。層状フィラーは層状構造ではない通常の無機フィラーと比較して、その層状構造により、少量の添加で弾性率を大きく向上させることができる。スキン層のガラス転移点が高くなることで、射出成形の金型温度を高く設定する事が出来るため、成形毎に金型を強制的に冷却する必要が無くなり、成形サイクルのハイサイクル化によって、ある程度金型温度が上昇しても、スキン層が確実に形成できる。また、成形物の弾性率が高くなることで、射出成形の際の製品突き出し(イジェクト)において、イジェクターピンが薄肉部を突き破る虞がなくなって、ハイサクル化を行う上でも有利である。
層状フィラーの配合量は、PBTが100重量部に対し、1〜10重量部である。層状フィラーの配合量が1重量部未満では、成形物は十分な剛性率向上効果が得られない。また層状フィラーの配合量が10重量部を越えると成形物の強度が低下する。好ましい層状フィラーの配合量は、PBTが100重量部に対し1〜5重量部である。
本発明において用いられる結晶化遅延剤は、PBTの結晶化を遅延させるものが用いられる。結晶化遅延剤として具体的には、黄色のアゾ系顔料及びカーボン系顔料の1種又は2種以上から選択されるものが用いられる。黄色のアゾ系顔料としては、ピグメントイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー等が挙げられる。またカーボン系顔料としては、カーボンブラック、表面に水酸基、カルボキシル基等の結合官能基を有するカーボンブラック等が挙げられる。一般にPBTに無機顔料等を添加すると結晶化を促進するが、意外にも上記顔料は結晶化を遅延させる。結晶化遅延剤は、上記化合物以外の顔料でも結晶化を遅延させるものであれば使用することができる。
本発明において結晶化遅延剤の配合量は、PBTが100重量部に対し、0.05〜1重量部である。結晶化遅延剤の配合量が0.05重量部未満では、十分な結晶化遅延効果が得られない。また、結晶化遅延剤の配合量が1重量部を越えると、成形物の強度を低下させる虞がある。好ましい結晶化遅延剤の配合量は、PBTが100重量部に対し0.05〜2重量部である。
PBTに層状フィラーを添加すると、特許文献1に記載されているように、結晶化が促進される。その結果、成形物の弾性率と引張強度が向上する。しかし、引張伸びが低下する。また、PBTの結晶化が促進されて、結晶化速度が極めて速くなると、射出成形時の金型温度を十分に下げなければ、靭性を保持するだけの十分な厚さを持ったスキン層を形成することができない。これに対し、結晶化遅延剤を加えると、樹脂組成物が結晶化する際に核生成を遅延させ結晶化速度を低下させる。その結果、成形された成形物には十分な厚さを持ったスキン層が形成され、良好な靭性を有する成形品が得られる。
本発明のコネクタハウジング成形用樹脂組成物には、PBT、層状フィラー、結晶化遅延剤以外に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の成分を添加することができる。他の成分としては、酸化防止剤、耐候性改良材、難燃剤、耐衝撃性改良材、可塑剤、流動性改良材、層状フィラー以外の有機・無機充填剤、補強剤などが挙げられる。
本発明のコネクタハウジング成形用樹脂組成物は下記の方法により製造する事ができる。ベント口が設けられた溶融混練機を用い、PBTが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部の配合割合からなる樹脂組成物に、分散媒としてヘキサフルオロプロピルアルコール(沸点59℃)を添加して分散し、混練を行う。組成物が十分混合したならば、ベント口を減圧状態として、分散媒を減圧除去した後、ペレット化することでコネクタハウジング用樹脂組成物が得られる。なお、このペレット化は常温で行うことができる。
本発明のコネクタハウジングは、上記のコネクタ成形用樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなることで、成形物の表層から、非晶であるスキン層、及び結晶化度が高くなったバルク層が形成されている層構造が確実に形成される。この観点から好ましい金型温度は、60℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。また、成形サイクルをハイサイクルするためには、金型を強制的に冷却しない状態で成形を行うことが望ましいことから、金型温度の下限は常温以上とするのが好ましい。また、組成物が十分な過冷却度を得るためには、溶融樹脂温度(混練温度)をPBTの融点以上の温度に設定することが好ましい。
コネクタハウジングにおいて、スキン層の厚みは5μm以上であるのが好ましい。スキン層の厚みは、実際に成形されたコネクタハウジングを切断してその断面を偏光顕微鏡で観察して、厚みを実測することで求められる。
コネクタハウジングの成形方法は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形等の、この種の自動車用ワイヤーハーネス用コネクタハウジングの各種成形方法が利用できる。
本発明のコネクタハウジングは、ハウジングロックや、ランス構造を持つ自動車用ワイヤーハーネスに利用されるコネクタハウジングとして最適である。
以下、本発明の実施例を用いて更に詳細に説明する。使用した各成分は下記の通りである。
PBT:GEプラスチックス社製、商品名「Valox」、融点225℃
アゾ系顔料:日本ピグメント社製、商品名「ピグメントカラーイエロー」
カーボン系顔料:三菱化学社製、商品名「MA100」
合成マイカ:コープケミカル社製、商品名「膨潤性雲母ME100」
合成スメクタイト:コープケミカル社製、商品名「親油性SAN」
上記アゾ系顔料の化学式は、下記の通りである。
PBT:GEプラスチックス社製、商品名「Valox」、融点225℃
アゾ系顔料:日本ピグメント社製、商品名「ピグメントカラーイエロー」
カーボン系顔料:三菱化学社製、商品名「MA100」
合成マイカ:コープケミカル社製、商品名「膨潤性雲母ME100」
合成スメクタイト:コープケミカル社製、商品名「親油性SAN」
上記アゾ系顔料の化学式は、下記の通りである。
実施例1
ヘキサフルオロイソプロピルアルコールを強制的に除去可能な真空ベントが設けられている二軸押出機を用いて、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールに合成マイカ2重量部分散させた混合物を、PBT100重量部と二軸押出機で混合した。この分散物を混合しながら、アゾ系顔料0.1重量部添加して混練した。十分混練した後、真空ベントよりヘキサフルオロイソプロピルアルコールを減圧除去し、押し出してペレット化して樹脂組成物を得た。なお、このペレットの製造は常温で行った。得られた樹脂組成物の曲げ弾性率、引張強度、破断伸び、結晶化温度を測定した。結果を表1に示す。また樹脂組成物の200℃における等温結晶化時間を測定したところ4.5分であった。また、この樹脂組成物を用いて自動車ワイヤーハーネス用コネクタハウジングを射出成形した。その結果、ロック部とランス部のスキン層が十分厚く靭性のあるコネクタハウジングが得られた。射出成形の条件は、混練温度(シリンダー温度)250℃、金型温度(成形温度)は40℃であった。
ヘキサフルオロイソプロピルアルコールを強制的に除去可能な真空ベントが設けられている二軸押出機を用いて、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールに合成マイカ2重量部分散させた混合物を、PBT100重量部と二軸押出機で混合した。この分散物を混合しながら、アゾ系顔料0.1重量部添加して混練した。十分混練した後、真空ベントよりヘキサフルオロイソプロピルアルコールを減圧除去し、押し出してペレット化して樹脂組成物を得た。なお、このペレットの製造は常温で行った。得られた樹脂組成物の曲げ弾性率、引張強度、破断伸び、結晶化温度を測定した。結果を表1に示す。また樹脂組成物の200℃における等温結晶化時間を測定したところ4.5分であった。また、この樹脂組成物を用いて自動車ワイヤーハーネス用コネクタハウジングを射出成形した。その結果、ロック部とランス部のスキン層が十分厚く靭性のあるコネクタハウジングが得られた。射出成形の条件は、混練温度(シリンダー温度)250℃、金型温度(成形温度)は40℃であった。
実施例2〜4
実施例2は実施例1の合成マイカの代りに合成スメクタイトを用い、実施例3は実施例1のアゾ系顔料の代りにカーボン系顔料を用い、実施例4は実施例2のアゾ系顔料の代りにカーボン系顔料を用いた。結果を表1に示す。
実施例2は実施例1の合成マイカの代りに合成スメクタイトを用い、実施例3は実施例1のアゾ系顔料の代りにカーボン系顔料を用い、実施例4は実施例2のアゾ系顔料の代りにカーボン系顔料を用いた。結果を表1に示す。
比較例1〜5
比較のために、PBT樹脂のみ(比較例1)、実施例1の合成マイカを添加しなかった場合(比較例2)、実施例2の合成マイカを添加しなかった場合(比較例3)、実施例3のカーボン系顔料を添加しなかった場合(比較例4)、実施例4のカーボン系顔料を添加しなかった場合(比較例5)について試験を行った。結果を表1に示す。
比較のために、PBT樹脂のみ(比較例1)、実施例1の合成マイカを添加しなかった場合(比較例2)、実施例2の合成マイカを添加しなかった場合(比較例3)、実施例3のカーボン系顔料を添加しなかった場合(比較例4)、実施例4のカーボン系顔料を添加しなかった場合(比較例5)について試験を行った。結果を表1に示す。
なお表1の試験方法は下記の通りである。
[曲げ弾性率]
ASTM−D790に準じた方法で、射出成形した板状試験片をクロスヘッドが2.5mm/minで移動する試験機で、応力−ひずみ曲線を測定し、初期勾配から曲げ弾性率を算出した。
[引張り強度]
ASTM−D638に準じた方法で射出成形したダンベル形状試験片を引張試験機にて、10mm/minの引張速度で試験した。引張応力の最大値を引張強度とした。
[破断伸び]
ASTM−D638に準じた方法で、引張試験における破断時の伸びを測定した。
[結晶化温度]
示差走査型熱量計(DSC)で250℃に昇温後3分間保持し、5℃/minの冷却速度で降温した時の発熱ピーク温度を測定した。
[曲げ弾性率]
ASTM−D790に準じた方法で、射出成形した板状試験片をクロスヘッドが2.5mm/minで移動する試験機で、応力−ひずみ曲線を測定し、初期勾配から曲げ弾性率を算出した。
[引張り強度]
ASTM−D638に準じた方法で射出成形したダンベル形状試験片を引張試験機にて、10mm/minの引張速度で試験した。引張応力の最大値を引張強度とした。
[破断伸び]
ASTM−D638に準じた方法で、引張試験における破断時の伸びを測定した。
[結晶化温度]
示差走査型熱量計(DSC)で250℃に昇温後3分間保持し、5℃/minの冷却速度で降温した時の発熱ピーク温度を測定した。
以下、PBTに結晶化遅延剤を加えた場合のせん断弾性率を測定した実験を行い、層状フィラーと結晶化遅延剤の添加効果について説明する。図1はPBTに層状フィラーや結晶化遅延剤を添加した場合のせん断弾性率を示すグラフである。図1に示すグラフは樹脂組成物を約280℃で溶融状態とした後、図中左矢印で示すように、組成物を冷却して行きながら、せん断弾性率を測定したものである。なお、測定条件は冷却速度が−10℃/min、周波数1Hzとした。図1のグラフは、組成物の冷却が進むとせん断弾性率が大きくなるが、その立ち上がる温度が低いほど結晶化が遅いことを意味する。
図1中で○は組成A:PBTのみ(比較例1参照)のせん断弾性率を示し、●は組成B:PBTにカーボン系顔料を加えた組成物(比較例3参照)のせん断弾性率を示すグラフである。図1に○で示した組成Aのグラフに対し、●で示した組成Bのグラフは、立ち上がりの温度が低温側にシフトしている。これはPBTにカーボン系顔料を添加することで結晶化が遅延していることを示すものである。
さらに図1において、□は組成C:PBTに合成マイカ(比較例4参照)のみを加えた組成物のグラフであり、■は組成D:PBTに合成マイカとカーボン系顔料を加えた組成物(実施例3参照)のグラフである。■の組成Dのグラフは、□の組成Cのグラフと比較して、立ち上がりの温度が低温側にシフトしている。これはPBTに合成スメクタイトを加えた場合にも、組成Bの場合と同様にカーボン系顔料添加による結晶化遅延効果が得られることを示すものである。
また図1において、◆は組成E:PBTに合成スメクタイトとカーボン系顔料を加えた組成物(実施例4参照)のグラフである。これは組成Dの合成マイカを合成スメクタイトに変更した組成であるが、この場合も組成Dの場合と同様に、カーボン系顔料添加による結晶化遅延効果が得られることを示すものである。このように、PBTのみの場合と比較してPBTに層状フィラーを加えた場合には、せん断弾性率の立ち上がり温度が高温側にシフトして結晶化速度が大きくなるが、結晶化遅延剤の添加により、結晶化は遅延する。以上の通り、結晶化遅延剤の添加は、PBTのスキン層の層構造に大きな影響を与えることは明らかである。
A:PBTのみ
B:PBTにカーボン系顔料を加えた組成物
C:PBTに合成マイカを加えた組成物
D:PBTに合成マイカとカーボン系顔料を加えた組成物
E:PBTに合成スメクタイトとカーボン系顔料を加えた組成物
B:PBTにカーボン系顔料を加えた組成物
C:PBTに合成マイカを加えた組成物
D:PBTに合成マイカとカーボン系顔料を加えた組成物
E:PBTに合成スメクタイトとカーボン系顔料を加えた組成物
Claims (2)
- ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなるコネクタハウジング成形用樹脂組成物。
- ポリブチレンテレフタレートが100重量部、層状フィラーが1〜10重量部、結晶化遅延剤が0.05〜1重量部からなる樹脂組成物を、金型温度が80℃以下で成形してなり、成形物の表面側から順に、非晶であるスキン層、及び結晶性のバルク層が形成されていることを特徴とするコネクタハウジング。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006077924A JP2007254513A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | コネクタハウジング成形用樹脂組成物及びコネクタハウジング |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006077924A JP2007254513A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | コネクタハウジング成形用樹脂組成物及びコネクタハウジング |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009295362A (ja) * | 2008-06-04 | 2009-12-17 | Hitachi Ltd | 箱形電子モジュール |
-
2006
- 2006-03-22 JP JP2006077924A patent/JP2007254513A/ja active Pending
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