JP2007254312A - 有機化合物及びこれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、新規な有機化合物、及びこれを用いた有機電界発光素子に関する。
有機発光素子、特に電界発光機能を備えた有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と呼ぶことがある)は、次世代平面ディスプレイとして注目されている。この有機電界発光素子を用いることにより、例えば、低消費電力、広視野角、自発光、高速応答性などの特徴を有するフルカラー高解像度ディスプレイの実現が可能である。
従来の有機電界発光素子の発光は、主に蛍光を利用したものであった。すなわち、発光層を挟んで電極を設け、両電極から電子及びホールを注入すると、それらが対電極に向かい、発光層においてある割合で再結合して励起子を生成し、その励起子の励起状態が基底状態に戻るときに発光が生じる。この励起状態には、電子スピンの向きが反平行である一重項励起状態と、電子スピンの向きが平行である三重項励起状態とがある。蛍光はこの一重項励起状態のみが関与する発光形態である。単純な量子力学的推論から、一重項励起状態と三重項励起状態の生成比率は1:3であるので、蛍光を利用した有機電界発光素子の場合には、内部量子効率の最大値は25%となる。つまり、励起状態の75%は発光に使用されないことになる。
さらに、有機電界発光素子に用いられる有機材料の屈折率(n)は約1.6〜1.7であり、また、外部への取り出し効率(ηext)は、古典光学における反射と屈折の法則からηext=1/(2n2)≒0.2、つまり20%程度である。そのため、蛍光を利用した有機電界発光素子においては、その外部量子効率は、内部量子効率(25%)×取り出し効率(20%)となり、最大5%程度と見積もられる。
このため、外部量子効率をさらに向上させるためには、励起状態のうち75%を占める三重項励起状態からの発光、すなわち燐光も利用する必要がある。燐光の利用が可能となれば、外部量子効率を最大20%程度まで向上させることができる。
そこで、最近では、燐光型有機EL素子の開発が進められており、燐光型発光材料を用いることで従来の蛍光素子の外部量子効率における理論限界の5%を超え、緑色では外部量子効率が19%にも達する高効率素子が報告されている。
燐光発光を利用した燐光型発光材料の開発は高効率発光の観点から活発に研究がされている。緑色、赤色燐光発光材料については、高い色純度を実現する材料が報告されている。また、青色燐光発光材料についても、これを用いた有機電界発光素子が、例えば、非特許文献1〜4などに報告されている。
安達(Adachi)ら、「Applied Physics Letters(アプライド・フィジックス・レターズ)」、2001年、79巻、pp.2082−2084
ホルムズ(Holmes)ら、「Applied Physics Letters(アプライド・フィジックス・レターズ)」、2003年、82巻、pp.2422−2424
時任(Tokito)ら、「Applied Physics Letters(アプライド・フィジックス・レターズ)」、2003年、83巻、pp.569−571
ホルムズ(Holmes)ら、「Applied Physics Letters(アプライド・フィジックス・レターズ)」、2003年、83巻、pp.3818−3820
しかしながら、上記非特許文献1〜4に記載されている青色有機電界発光素子の発光効率及び耐熱性は不十分であり、改善が必要であった。特に、上記非特許文献1〜3においてホスト材料として用いられているカルバゾール基を含むCBP等の化合物は、そのガラス転移温度(Tg)が非常に低く、有機電界発光素子の耐久性の低さの大きな原因となっている。
また、有機電界発光素子の耐久性を向上させるためには、青色燐光発光材料や青色燐光用ホスト材料だけではなく、有機層に使用される各材料について、薄膜の安定性及び耐熱性に優れることが求められている。
本発明は、耐熱性に優れる新規な有機化合物を提供する。
また、本発明は、このような有機化合物を用いた、発光効率が高くかつ耐熱性に優れる有機電界発光素子を提供する。
本発明は、下記式(1)で表される有機化合物である。
(式(1)中、X1はCR1またはNを表し、R1は水素原子または置換基を表す。Y1〜Y6は、それぞれ独立して置換基を表す。Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z1〜Z4、Z5〜Z7、Z8〜Z11、Z12〜Z14、Z15〜Z18、及びZ19〜Z21のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
(式(1)中、X1はCR1またはNを表し、R1は水素原子または置換基を表す。Y1〜Y6は、それぞれ独立して置換基を表す。Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z1〜Z4、Z5〜Z7、Z8〜Z11、Z12〜Z14、Z15〜Z18、及びZ19〜Z21のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
また、前記有機化合物において、前記R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y1〜Y6は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表す有機化合物であることが好ましい。
また、本発明は、下記式(2)で表される有機化合物である。
(式(2)中、X2はCR2またはNを表し、R2は水素原子または置換基を表す。Y7〜Y15は、それぞれ独立して置換基を表す。Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z22〜Z25、Z26〜Z28、Z29〜Z31、Z32〜Z35、Z36〜Z38、Z39〜Z41、Z42〜Z45、Z46〜Z48、及びZ49〜Z51のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
(式(2)中、X2はCR2またはNを表し、R2は水素原子または置換基を表す。Y7〜Y15は、それぞれ独立して置換基を表す。Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z22〜Z25、Z26〜Z28、Z29〜Z31、Z32〜Z35、Z36〜Z38、Z39〜Z41、Z42〜Z45、Z46〜Z48、及びZ49〜Z51のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
また、前記有機化合物において、前記R2は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y7〜Y15は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表す有機化合物であることが好ましい。
また、本発明は、下記式(3)で表される有機化合物である。
(式(3)中、X3はCR3またはNを表し、R3は水素原子または置換基を表す。Y16〜Y27は、それぞれ独立して置換基を表す。Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z52〜Z55、Z56〜Z58、Z59〜Z61、Z62〜Z64、Z65〜Z68、Z69〜Z71、Z72〜Z74、Z75〜Z77、Z78〜Z81、Z82〜Z84、Z85〜Z87、及びZ88〜Z90のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
(式(3)中、X3はCR3またはNを表し、R3は水素原子または置換基を表す。Y16〜Y27は、それぞれ独立して置換基を表す。Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z52〜Z55、Z56〜Z58、Z59〜Z61、Z62〜Z64、Z65〜Z68、Z69〜Z71、Z72〜Z74、Z75〜Z77、Z78〜Z81、Z82〜Z84、Z85〜Z87、及びZ88〜Z90のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
また、前記有機化合物において、前記R3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y16〜Y27は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表す有機化合物であることが好ましい。
また、前記有機化合物において、前記X1はCHであることが好ましく、またはZ1〜Z21は水素原子であることが好ましく、または、前記Y1〜Y6はメチル基であることが好ましい。
また、前記有機化合物において、前記X1はCHであり、かつ、Z1〜Z21は水素原子であり、かつ、Y1〜Y6はメチル基であることが好ましい。
また、本発明は、有機層を備える有機電界発光素子であって、前記有機化合物を前記有機層中に含む。
また、本発明は、発光層を備える有機電界発光素子であって、前記有機化合物を前記発光層中に含む。
また、本発明は、有機電界発光素子であって、ホスト材料及びドーパント材料を含む発光層を備え、前記ホスト材料は、前記有機化合物を含む。
また、本発明は、有機電界発光素子であって、ホスト材料及び燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、前記ホスト材料は、前記有機化合物を含む。
また、本発明は、有機電界発光素子であって、ホスト材料及び青色燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、前記ホスト材料は、前記有機化合物を含む。
また、本発明は、有機電界発光素子であって、ホスト材料及び純青色燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、前記ホスト材料は、前記有機化合物を含む。
本発明では、耐熱性に優れる新規な有機化合物を提供することができる。この有機化合物は薄膜化した場合にも安定性が高い。
また、有機層を備える有機電界発光素子において、このような特定の構造を有する有機化合物を有機層中に含むことにより、発光効率が高くかつ耐熱性に優れる有機電界発光素子を実現することができる。
本発明の実施形態について以下説明する。
<有機化合物>
本発明の実施形態に係る有機化合物は、下記式(1)で表される。
本発明の実施形態に係る有機化合物は、下記式(1)で表される。
(式(1)中、X1はCR1またはNを表し、R1は水素原子または置換基を表す。Y1〜Y6は、それぞれ独立して置換基を表す。Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z1〜Z4、Z5〜Z7、Z8〜Z11、Z12〜Z14、Z15〜Z18、及びZ19〜Z21のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
上記式(1)の有機化合物において、X1は合成のし易さ等の点からCR1が好ましい。R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、合成のし易さ等の点から水素原子がより好ましい。また、Y1〜Y6は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、合成のし易さ等の点からアルキル基がより好ましく、原材料の入手のし易さ等の点からメチル基が最も好ましい。また、Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、合成のし易さ等の点から水素原子がより好ましい。
また、本発明の実施形態に係る有機化合物は、下記式(2)で表される。
(式(2)中、X2はCR2またはNを表し、R2は水素原子または置換基を表す。Y7〜Y15は、それぞれ独立して置換基を表す。Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z22〜Z25、Z26〜Z28、Z29〜Z31、Z32〜Z35、Z36〜Z38、Z39〜Z41、Z42〜Z45、Z46〜Z48、及びZ49〜Z51のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
上記式(2)の有機化合物において、X2は合成のし易さ等の点からCR2が好ましい。R2は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、水素原子がより好ましい。また、Y7〜Y15は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、合成のし易さ等の点からアルキル基がより好ましく、原材料の入手のし易さ等の点からメチル基が最も好ましい。また、Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、水素原子がより好ましい。
また、本発明の実施形態に係る有機化合物は、下記式(3)で表される。
(式(3)中、X3はCR3またはNを表し、R3は水素原子または置換基を表す。Y16〜Y27は、それぞれ独立して置換基を表す。Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Z52〜Z55、Z56〜Z58、Z59〜Z61、Z62〜Z64、Z65〜Z68、Z69〜Z71、Z72〜Z74、Z75〜Z77、Z78〜Z81、Z82〜Z84、Z85〜Z87、及びZ88〜Z90のそれぞれの中の隣同士で環を形成してもよい。)
上記式(3)の有機化合物において、X3は合成のし易さ等の点からCR3が好ましい。R3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、水素原子がより好ましい。また、Y16〜Y27は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、合成のし易さ等の点からアルキル基がより好ましく、原材料の入手のし易さ等の点からメチル基が最も好ましい。また、Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基であることが好ましく、水素原子がより好ましい。
ここで、上記アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、直鎖、分岐または環状のプロピル基、直鎖、分岐または環状のブチル基等が挙げられ、合成のし易さ等の点から炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。炭素数が5以上であると、蒸着温度が高くなり真空蒸着しにくくなる、あるいは真空蒸着時に高温まで上げる必要があり分解する可能性がある、あるいは、アルキル鎖は絶縁性が高いので電子又はホールの伝導性が低くなるため、炭素数4以下であることが好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、化合物の安定性等の点からフッ素が好ましい。
上記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基であることが好ましい。また、ハロゲン化アルキル基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を含むアルキル基であり、化合物の安定性の点からフッ素を含むアルキル基であることが好ましく、また、具体的には、ハロゲン基を含むメチル基、エチル基、直鎖、分岐または環状のプロピル基、直鎖、分岐または環状のブチル基等であり、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−パーフルオロプロピル基、i−パーフルオロプロピル基、n−パーフルオロブチル基、等のフッ化アルキル基が挙げられる。炭素数が5以上であると、蒸着温度が高くなり真空蒸着しにくくなる、あるいは真空蒸着時に高温まで上げる必要があり分解する可能性がある、あるいは、電子又はホールの伝導性が低くなるため、炭素数4以下であることが好ましい。
上記アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基であることが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、直鎖、分岐または環状のプロポキシ基、直鎖、分岐または環状のブトキシ基等が挙げられる。炭素数が5以上であると、蒸着温度が高くなり真空蒸着しにくくなる、あるいは真空蒸着時に高温まで上げる必要があり分解する可能性がある、あるいは、電子又はホールの伝導性が低くなるため、炭素数4以下であることが好ましい。
上記Z1〜Z90の中の隣同士で形成してもよい環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族環、シクロヘキシル環等の脂肪族環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環等の複素環等が挙げられる。
上記式(1)、(2)、(3)で表される有機化合物のうち、合成経路が短く、容易に製造することができるという点で、下記化合物(5)等の上記式(1)で示される化合物が好ましい。ここで、下記化合物(5)は、上記式(1)において、X1はCR1を表し、R1及びZ1〜Z21は水素原子であり、Y1〜Y6はメチル基である。また、使用目的とする吸収波長、耐熱性、昇華温度等の特性に応じて、上記式(1)、(2)、(3)で表される有機化合物のうちから骨格を選択すればよい。
上記式(1)、(2)、(3)で表される有機化合物の分子量は1600以下であることが好ましく、1400以下であることがより好ましい。分子量が2000を超えると、蒸着膜を形成するときに昇華が困難になる傾向にあるので好ましくない。また、上記式(1)で表される有機化合物の分子量は618以上であることが好ましく、上記式(2)で表される有機化合物の分子量は888以上であることが好ましく、上記式(3)で表される有機化合物の分子量は1158以上であることが好ましい。本実施形態において、有機化合物の分子量を特定の範囲内とすることにより、薄膜の形成のし易さ、薄膜安定性及び耐熱性を同時に実現することができるため、好ましい。
本実施形態に係る有機化合物は、フェニル基のオルト位に置換基を有することにより、例えば、有機EL素子等の素子に用いた場合にベンゼン環同士が環を形成しにくく、電気化学的に安定である。フェニル基のオルト位に置換基を有さない場合には、例えば、有機EL素子等の素子に用いて有機EL素子等を駆動した際に、電気化学的に反応し、ベンゼン環同士が環を形成する可能性がある。したがって、有機EL素子等の素子の安定性が向上する。この点から、上記式(1)において、Z1,Z8,Z15のうち少なくとも1つ、好ましくは全てがメチル基等の置換基であってもよい。また、上記式(2)において、Z22,Z32,Z42のうち少なくとも1つ、好ましくは全てがメチル基等の置換基であってもよい。また、上記式(3)において、Z52,Z65,Z78のうち少なくとも1つ、好ましくは全てがメチル基等の置換基であってもよい。
また、本実施形態に係る有機化合物は、分子量が比較的大きく、耐熱性が高い。このため、有機EL素子等の素子に用いた場合に、高温環境下でも素子の安定性が向上する。さらに、本実施形態に係る有機化合物を用いて薄膜を形成したときに薄膜のアモルファス性が良好であり、有機EL素子等の素子に用いた場合に、素子の安定性が向上する。
本実施形態に係る上記式(1)で表される有機化合物としては、具体的には、下記式で示される化合物が挙げられる。
本実施形態に係る上記式(2)で表される有機化合物としては、具体的には、下記式で示される化合物が挙げられる。
本実施形態に係る上記式(3)で表される有機化合物としては、具体的には、下記式で示される化合物が挙げられる。
上記式(1)、(2)、(3)で表される化合物の合成について説明する。これらの合成では反応式1で示されるクロスカップリングビアリール合成を利用する。クロスカップリングビアリール合成は、Suzuki反応、Kharasch反応、Negishi反応、Stille反応、Grignard反応、Ullmann反応などが利用でき、更に他の金属(例としてPd、Cu、Ti、Sn、Ni、Pt)や金属錯体(例としてPd(PPh3)4、Pd(OAc)2、Pd2(dba)3、Pd(PPh3)2Cl2、Pd(dppf)2Cl2、Pd/C、Ni(PPh3)2Cl2、Ni(PPh3)4、Ni(dppp)Cl2、Ni(dppe)Cl2、Ni(acac)2)触媒、官能基W1、W2、塩基(例としてNa2CO3、K2CO3、Cs2CO3、Ba(OH)2などの無機塩基や、NEt3、NH(i−Pr)2、NHEt2、NHMe2、NMe3、DBU、DMAP、ピリジンなどの有機塩基)や溶媒(例としてトルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、水、ジメチルホルムアミドなど)やPPh3、P(o−Tol)3、P(t−Bu)3、PEt3を用い、室温または加熱することで合成してもよい。またクロスカップリングビアリール合成反応の収率向上や反応位置選択性を図るために、官能基W1、W2を他の官能基に変換する反応を取り入れても良い。これらの官能基変換としては、臭化物からホウ酸への変換が例としてあるが、これに限定しない。
次に一般式(1)で表される化合物の一例として1,3,5-Tris(2,6-dimethylbiphen-2’-yl)benzeneの合成について例示する。コンバージェントに合成する反応式2Aとダイバージェントに合成する反応式2Bのどちらの手法で合成してもよい。純度や合成収率からより好ましくは反応式2Aである。ここで、W1〜W4は官能基である。
次に一般式(2)で表される化合物の一例として1,3,5-Tris(2,6,3’,3”-tetramethyl-1,1’:2’,1”-terphen-2”-yl)benzeneの合成について例示する。コンバージェントに合成する反応式3Aとダイバージェントに合成する反応式3Bのどちらの手法で合成してもよい。純度や合成収率からより好ましくは反応式3Aである。ここで、W1〜W6は官能基である。
次に一般式(3)で表される化合物の一例として1,3,5-Tris(2,6,3’,3”,3’’’-pentamethyl-1,1’:2’,1”:2”,1’’’-quaterphen-2’’’-yl)benzeneの合成について例示する。コンバージェントに合成する反応式4Aとダイバージェントに合成する反応式4Bのどちらの手法で合成してもよい。純度や合成収率からより好ましくは反応式4Aである。ここで、W1〜W8は官能基である。
本実施形態に係る上記式(1),(2),(3)で示す有機化合物は、有機EL素子に限らず、表示素子,コンピュータ,テレビ,携帯電話,デジタルカメラ,PDA,カーナビゲーション等のディスプレイやバックライト、照明,インテリア,標識,交通信号機,看板など、CD,DVD等の記録光源、読み取り光源、複写機,スキャナ等の光源、CD−R,DVD−R等の記録用光ディスクの記録層用色素、レーザー色素、増感色素、医療診断用蛍光薬剤等の幅広い分野に好適に使用することができる。
<有機EL素子>
次に、本発明の実施形態に係る上記有機化合物を使用した有機EL素子の実施形態について説明する。
次に、本発明の実施形態に係る上記有機化合物を使用した有機EL素子の実施形態について説明する。
図1は、有機EL素子の概略断面構造を示す。ガラス、プラスチック等の透明基板10には、ITO(Indium Tin Oxide)等を用いて透明電極12が形成される。透明電極12は、ここでは陽極として機能する。透明電極12上には少なくとも1層の有機層20が形成されている。
有機層20は、少なくとも発光層24を備え、用いる有機化合物の機能等によって層構造が異なる。発光層の単層構造の他、正孔輸送層/発光層、発光層/電子輸送層、正孔輸送層/発光層/電子輸送層、等の多層構造を採用することが可能である。本実施形態では、透明電極12側から順に、正孔輸送層22/発光層24/正孔ブロック層26/電子輸送層28が積層されている。
有機層20上には、金属電極14が形成されている。金属電極14は、ここでは陰極として機能する。この金属電極14は、例えば、図1に示すようにLiF層(電子注入層)とAl電極等との積層体により構成することができる。また、Al電極の単独層により金属電極14を構成することもできる。また、Alの他にも、例えば、Mg−Ag合金、Al−Li合金等を使用することができる。また、図示しないが、透明電極12と正孔輸送層22との間には銅フタロシアニン(CuPc)、スターバーストアミン、バナジウム酸等を用いて正孔注入層を形成してもよい。
本実施形態では、以上のような構成の有機EL素子において上記式(1)〜(3)で示される有機化合物のうち少なくとも1つを用いる。この有機化合物は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層等の有機薄膜用の材料として用いることができるが、発光層、電子輸送層の材料として好ましく使用することができ、特に発光層の材料として好ましく使用することができる。
すなわち、本実施形態に係る有機電界発光素子において、有機層が発光層を含有し、上記式(1)〜(3)で表される有機化合物のうち少なくとも1つを発光層中に含むことが好ましい。また、発光層がホスト材料及びドーパント材料を含有し、ホスト材料は、上記式(1)〜(3)で表される有機化合物のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、発光層がホスト材料及び燐光発光性のドーパント材料を含有し、ホスト材料は、上記式(1)〜(3)で表される有機化合物のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、発光層がホスト材料及び青色燐光発光性のドーパント材料を含有し、ホスト材料は、上記式(1)〜(3)で表される有機化合物のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、発光層がホスト材料及び純青色燐光発光性のドーパント材料を含有し、ホスト材料は、上記式(1)〜(3)で表される有機化合物のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、発光効率が高くかつ耐熱性に優れる有機電界発光素子、特に発光効率が高くかつ耐熱性に優れる青色有機電界発光素子及び純青色有機電界発光素子を実現することができる。
なお本明細書で「純青色」とは、CIE1931のx−y色度座標において、x≦0.2かつy≦0.3の範囲の青色のことをいう。
ここで、上記有機化合物は、高効率な蛍光発光または燐光発光が可能であり、この化合物を発光材料として用いることで高効率の蛍光発光型有機EL素子または高効率の燐光発光型有機EL素子を実現することができる。特に、燐光発光型有機EL素子の発光層の材料として用いると、高効率の素子を実現することができるのでより好ましい。上記有機化合物は、単独で発光層24の材料として用いることもできるが、発光効率、駆動電力の低減、発光色の色純度向上等の観点より、ホスト材料として用いて、ドーパント材料を所定量ドープして発光層24とすることが好ましい。また、発光層の材料として使用する場合、目的とする色に応じて、上記式(1)、(2)、(3)で表される有機化合物のうちから骨格を選択すればよい。
次に、上記有機化合物と共に有機EL素子の有機層20に使用可能な材料の例を説明する。まず、発光層24のホスト材料として、この有機化合物を用いる場合に、ドーパント材料としては、青色燐光用としては例えば下記式(6),(4)に示されるような化合物が挙げられる。緑色燐光用としては例えば下記式(7)に示されるような化合物が挙げられる。赤色燐光用としては例えば下記式(8)に示されるような化合物が挙げられる。青色蛍光用としては例えば下記式(9)に示されるような化合物が挙げられる。
ここで、上記式(6)に示される化合物は、FIrpic(Iridium(III)bis(2-(4,6-difluorophenyl)pyridinato-N,C2')picolinate)、上記式(4)に示される化合物は、FIr6(Bis(4',6'-difluorophenylpyridinato)tetrakis(1-pyrazolyl)borate)、上記式(7)に示される化合物は、Ir(ppy)3(tris(2-phenylpyridine) iridium(III))、上記式(8)に示される化合物は、Ir(piq)3(tris(2-phenylisoquinoline) iridium (III))、上記式(9)に示される化合物は、Bis[4-(N,N-diphenylamino)styryl]-9,10-Anthraceneである。
また、正孔輸送層22に用いる材料としては、正孔輸送機能を備えていれば特に限定されないが、例えば、トリフェニルアミンの多量体を使用することができ、一例としては、下記式(10)に示すα−NPD(4,4'-Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl-amino]biphenyl)、下記式(11)に示すTPTE(triphenylamine tetramer)を使用することができる。
また、電子輸送層28に用いる材料としては、電子輸送機能を備えていれば特に限定されないが、例えば、下記式(12)に示すアルミキノリノール錯体(Alq3:Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)))を使用することができる。
ところで、発光層24のホスト材料として用いる上記有機化合物は、ハイポーラ性を有することが多い。発光層24のホスト材料としてハイポーラ性の化合物を用いる場合、発光層24から電子輸送層28に正孔が流れ出てしまうことを防止するために発光層24と電子輸送層28との間に正孔ブロック層26を形成することが好適である。電子輸送層28にAlq3等を用いている場合に電位輸送層28に正孔が流れ込むことでこのAlq3等が発光したり、正孔を発光層に閉じ込めることができずに発光効率が低下するなどといった問題を防止することができる。正孔ブロック層26に用いる材料としては、下記式(13)に示すTPBI(2,2',2''-(1,3,5-phenylene)tris[1-phenyl-1H-benzimidazole)や、下記式(14)に示すバソクプロイン(BCP)や、下記式(15)に示すBAlq(Aluminum(III)bis(2-methyl-8-quinolinato) 4-phenylphenolate)、下記式(16)に示すC60F42−X、下記式(17)に示すC60F42−Y等を挙げることができる。
また、発光層24から正孔輸送層22に電子が流れ出てしまうことを防止するために、発光層24と正孔輸送層22との間に電子ブロック層を形成することが好適である。電子ブロック層に用いる材料としては、下記式(18)に示すTCTA(4,4',4''-Tris(carbazol-9-yl)-triphenylamine)や、下記式(19)に示すIrppz(tris(phenylpyrazole) iridium)等を挙げることができる。
次に、上記有機化合物を燐光発光のためのホスト材料として用いた、本実施形態に係る有機EL素子の発光原理について説明する。
陽極として機能する透明電極12と、陰極として機能する金属電極14から、正孔及び電子を有機層20に注入すると、正孔は正孔輸送層22を介して、電子は電子輸送層28及び正孔ブロック層26を介して輸送され、発光層24に到達し、正孔と電子は再結合する。この正孔と電子の再結合により、まず発光層24中のホスト材料である上記有機化合物が励起状態となる。前述したように、この励起状態は、一重項励起状態が25%、三重項励起状態が75%となっていると考えられる。このような割合のホスト材料の励起エネルギは、ドーパント材料に移動し、ドーパント材料は、それぞれ一重項励起状態及び三重項励起状態となる。ドーパント材料の一重項励起状態は、さらに三重項励起状態に移動し、最終的に三重項励起状態からの燐光発光が主となる。これによって、発生した励起状態のエネルギのほぼ全てが発光エネルギとして使用されることになる。
本実施形態においては、上記有機化合物をホスト材料として使用すると、併用する燐光発光用ドーパント材料、例えば式(6),(4),(7),(8)として例示した材料、に応じて、青色、緑色、赤色の各燐光発光を高色純度、高効率で得ることができる。また、上記有機化合物のフェニル基上の置換基を変更することにより、あるいはフェニル基上の隣同士の置換基で環を形成することにより、上記有機化合物のバンドギャップの幅(吸収波長)を調整することができ、青色、緑色、赤色の各燐光発光用ドーパント材料に最適化したホスト材料を設計することができる。特に、上記有機化合物は従来十分な耐久性が得られていなかった青色燐光発光のホスト材料と比較して、極めて優れた青色燐光発光のホスト材料として使用することができる。
また、ここでは、上記有機化合物を燐光発光のためのホスト材料として使用した例を説明したが、蛍光発光用のホスト材料として使用することもできる。併用する蛍光発光用ドーパント材料、例えば式(9)として例示した材料、に応じて、青色、緑色、赤色の蛍光発光を高色純度、高効率で得ることができる。特に、上記有機化合物は青色の蛍光発光用のホスト材料として好適に使用することができる。
さらに、上記有機化合物のフェニル基上の置換基を変更することにより、あるいはフェニル基上の隣同士の置換基で環を形成することにより、青色、緑色、赤色の各燐光発光用材料、蛍光発光用材料に最適化した発光材料を設計することができる。
本実施形態に係る有機EL素子において、有機層に含まれる上記有機化合物は、フェニル基のオルト位に置換基を有することにより、ベンゼン環同士が環を形成しにくく、電気化学的に安定である。フェニル基のオルト位に置換基を有さない場合には、有機EL素子の有機層に用いて有機EL素子を駆動した際に、電気化学的に反応し、ベンゼン環同士が環を形成する可能性がある。したがって、有機EL素子の安定性が向上する。
また、本実施形態に係る有機EL素子において、有機層に含まれる上記有機化合物は、分子量が比較的大きく、耐熱性が高い。このため、有機EL素子に用いた場合に、高温環境下でも素子の安定性が向上する。さらに、本実施形態に係る有機化合物を用いて薄膜を形成したときに薄膜のアモルファス性が良好であり、有機EL素子に用いた場合に、素子の安定性が向上する。
本実施形態に係る有機EL素子は、表示素子,コンピュータ,テレビ,携帯電話,デジタルカメラ,PDA,カーナビゲーション等のディスプレイ、バックライト等の光源、照明、インテリア、標識、交通信号機、看板などに好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニルの合成>
下記式(20)に示す2,6−ジメチルフェニルボロン酸 97g(640mmol)、下記式(21)に示す2−ブロモヨードベンゼン 139g(580mmol)、Pd(PPh3)4 13.6g(11.8mmol)、炭酸ナトリウム 186g(1760mmol)を、蒸留水900mL、トルエン2400mLの混合溶媒に溶解させ、撹拌下90℃で90時間反応させた。反応終了後、放冷し、有機層を分離し、水洗した後、減圧下、溶媒を留去して粗生成物153gを得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル4.5kg、溶媒:ヘキサン100%)にて精製し、下記式(22)に示す2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニルを34.5g(収率22%)得た。また、ガスクロマトグラフィにより純度を確認したところ、98.6%であった。
<2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニルの合成>
下記式(20)に示す2,6−ジメチルフェニルボロン酸 97g(640mmol)、下記式(21)に示す2−ブロモヨードベンゼン 139g(580mmol)、Pd(PPh3)4 13.6g(11.8mmol)、炭酸ナトリウム 186g(1760mmol)を、蒸留水900mL、トルエン2400mLの混合溶媒に溶解させ、撹拌下90℃で90時間反応させた。反応終了後、放冷し、有機層を分離し、水洗した後、減圧下、溶媒を留去して粗生成物153gを得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル4.5kg、溶媒:ヘキサン100%)にて精製し、下記式(22)に示す2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニルを34.5g(収率22%)得た。また、ガスクロマトグラフィにより純度を確認したところ、98.6%であった。
<1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンの合成>
下記式(22)に示す2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニル 10g(38.29mmol)をアルゴン気流下、脱水テトラヒドロフラン(THF) 100mLに溶解し、マグネシウム4.19g(57.4mmol)に添加後、60℃に加熱して、Grignard試薬とした。別容器に下記式(23)に示す1,3,5−トリブロモベンゼン 3g(9.53mmol)、脱水THF45mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)3.2g(2.8mmol)を加え、50℃に加熱した。加熱後、上記Grignard試薬を滴下し、55℃で12時間撹拌した。反応終了後、水1Lに反応液を添加し、析出した結晶をろ過し、水、メタノールで洗浄した。Wet結晶をトルエン150mLに加熱溶解し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、活性炭処理後、減圧下、溶媒を留去した。スラリー状に結晶が析出した濃縮物にアセトン150mLを添加し、撹拌後、結晶をろ過した。得られた結晶3gを再度トルエン70mLに加熱溶解後、減圧下、溶媒を留去した。スラリー状に結晶が析出した濃縮物にヘキサン70mLを添加し、撹拌後、結晶をろ過した。得られた結晶2.2gを昇華精製(330℃、5×10−3Pa、30min)し、下記式(5)に示す目的物1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンを1.5g(収率25.4%)得た。構造は1H−NMRにより確認した。図2に1H−NMRスペクトルを示す。
下記式(22)に示す2−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニル 10g(38.29mmol)をアルゴン気流下、脱水テトラヒドロフラン(THF) 100mLに溶解し、マグネシウム4.19g(57.4mmol)に添加後、60℃に加熱して、Grignard試薬とした。別容器に下記式(23)に示す1,3,5−トリブロモベンゼン 3g(9.53mmol)、脱水THF45mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)3.2g(2.8mmol)を加え、50℃に加熱した。加熱後、上記Grignard試薬を滴下し、55℃で12時間撹拌した。反応終了後、水1Lに反応液を添加し、析出した結晶をろ過し、水、メタノールで洗浄した。Wet結晶をトルエン150mLに加熱溶解し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、活性炭処理後、減圧下、溶媒を留去した。スラリー状に結晶が析出した濃縮物にアセトン150mLを添加し、撹拌後、結晶をろ過した。得られた結晶3gを再度トルエン70mLに加熱溶解後、減圧下、溶媒を留去した。スラリー状に結晶が析出した濃縮物にヘキサン70mLを添加し、撹拌後、結晶をろ過した。得られた結晶2.2gを昇華精製(330℃、5×10−3Pa、30min)し、下記式(5)に示す目的物1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンを1.5g(収率25.4%)得た。構造は1H−NMRにより確認した。図2に1H−NMRスペクトルを示す。
白色結晶
1H−NMR(CDCl3):1.76(s,18H,CH3),6.65(6H,Ph),6.97(6H,Ph),7.09(6H,Ph),7.30(6H,Ph)ppm
1H−NMR(CDCl3):1.76(s,18H,CH3),6.65(6H,Ph),6.97(6H,Ph),7.09(6H,Ph),7.30(6H,Ph)ppm
(実施例2)
<青色用燐光発光有機電界発光素子の評価>
ガラス基板上にITOの透明電極を150nmの膜厚で形成し、有機洗浄、純水洗浄、乾燥、UVオゾン処理を行った。その基板を直ちに真空チャンバへ導入後、ArとO2のプラズマ処理を行った。
<青色用燐光発光有機電界発光素子の評価>
ガラス基板上にITOの透明電極を150nmの膜厚で形成し、有機洗浄、純水洗浄、乾燥、UVオゾン処理を行った。その基板を直ちに真空チャンバへ導入後、ArとO2のプラズマ処理を行った。
真空蒸着(真空度5×10−7Torr;1Torr≒133Pa)により、上記式(10)で示すα−NPDを30nm堆積して、正孔輸送層を形成した。その上に電子ブロック層として上記式(19)で示すIrppzを10nm、及び上記式(18)で示すTCTAを10nm蒸着した。次に、発光層のホスト材料として実施例1で得た上記式(5)で示す1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンを用い、ドーパント材料として上記式(4)で示すFIr6(純青色燐光材料)が6.7重量%の割合となるように同時蒸着して発光層を50nmの厚さに形成した。
さらに、上記式(14)で示すBCPを用いて電子輸送層兼正孔ブロック層を40nm堆積した。さらにこの後、電子注入層としてLiF層を0.5nm、金属電極としてAlを100nm蒸着した。以上により素子部を得た。
このような素子部の形成された基板を連続して(in-situ)高真空に排気したチャンバへ搬送し、そのチャンバを孤立系にした後、1気圧の高純度窒素で置換した。その後、紫外線硬化樹脂を用いて封止ガラスの端部を端子部は透明電極と、端子部以外はガラス基板の素子形成側表面に接着し、UVランプを用いて紫外線をこの樹脂部に照射し、素子部を密封した。
このようにして得られた有機EL素子に直流電流を印加し、連続駆動させてその発光効率及び発光スペクトル(ELスペクトル)の測定を行った。この素子の発光スペクトル(ELスペクトル)を図3に示す。458nmの青色ピークがメインピークとなっており、純青色燐光材料(FIr6)からの発光が得られていることがわかる。400〜430nm付近に別の発光ピークが現れていないことから、α−NPDなどの他の材料からの発光はなく、純青色燐光材料(FIr6)由来の発光のみであることがわかる。図4に示すように、注入電流密度7.7mA/cm2において外部量子効率は最大6.0%に到達し、11mA/cm2において外部量子効率は5.9%(1135cd/m2,at22.3V)であった。また、11mA/cm2における色度座標は(x,y)=(0.152,0.259)であり、非常に青色の純度が高かった。
<蒸着膜の安定性評価>
石英基板上に、真空蒸着(真空度5×10−7Torr;1Torr≒133Pa)により、実施例1で得た上記式(5)で示す1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンの層を100nmの厚さに形成した。この薄膜を形成した基板を室温下、大気中で放置したが、3ヶ月経過後も膜質の変化はなく良好であった。また、ITO付きガラス基板上でも同様の結果が得られた。
石英基板上に、真空蒸着(真空度5×10−7Torr;1Torr≒133Pa)により、実施例1で得た上記式(5)で示す1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンの層を100nmの厚さに形成した。この薄膜を形成した基板を室温下、大気中で放置したが、3ヶ月経過後も膜質の変化はなく良好であった。また、ITO付きガラス基板上でも同様の結果が得られた。
(実施例3)
<青色用燐光発光有機電界発光素子の作製及び評価>
ガラス基板上にITOの透明電極を150nmの膜厚で形成し、有機洗浄、純水洗浄、乾燥、UVオゾン処理を行った。その基板を直ちに真空チャンバへ導入後、ArとO2のプラズマ処理を行った。
<青色用燐光発光有機電界発光素子の作製及び評価>
ガラス基板上にITOの透明電極を150nmの膜厚で形成し、有機洗浄、純水洗浄、乾燥、UVオゾン処理を行った。その基板を直ちに真空チャンバへ導入後、ArとO2のプラズマ処理を行った。
真空蒸着(真空度5×10−7Torr;1Torr≒133Pa)により、上記式(10)で示すα−NPDを30nm堆積して、正孔輸送層を形成した。次に、発光層のホスト材料として実施例1で得た上記式(5)で示す1,3,5−トリス(2,6−ジメチルビフェン−2’−イル)ベンゼンを用い、ドーパント材料(純青色燐光材料)として上記式(4)で示すイリジウム錯体(FIr6)が7.2重量%の割合となるように同時蒸着して発光層を50nmの厚さに形成した。
さらに、上記式(14)で示すBCPを用いて正孔ブロック層を20nm堆積し、電子輸送層として上記式(12)で示すAlq3を30nm堆積した。さらにこの後、電子注入層としてLiF層を0.5nm、金属電極としてAlを150nm蒸着した。以上により素子部を得た。
このような素子部の形成された基板を連続して(in-situ)高真空に排気したチャンバへ搬送し、そのチャンバを孤立系にした後、1気圧の高純度窒素で置換した。その後、紫外線硬化樹脂を用いて封止ガラスの端部を端子部は透明電極と、端子部以外はガラス基板の素子形成側表面に接着し、UVランプを用いて紫外線をこの樹脂部に照射し、素子部を密封した。
このようにして得られた有機EL素子に直流電流を印加し、連続駆動させてその発光効率及び発光スペクトルの測定を行った。注入電流密度11mA/cm2において外部量子効率は最大4.0%に到達した(813.4cd/m2、19.51V)。この素子の発光スペクトル(ELスペクトル)を図5に示す。457nmの青色ピークがメインピークとなっており、青色燐光材料(FIr6)からの純度の良い発光が得られていることがわかる。
(比較例1)
<青色用燐光発光有機電界発光素子の作製及び評価>
ホスト材料を下記式(24)で示したCBP(融点:281℃、ガラス転移温度:室温以上で観測されない)に代えた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を構成した。この素子の発光スペクトルを図6に示す。青色燐光材料(FIr6)からの青色発光の他に、発光層以外(おそらくα−NPD由来)の発光スペクトルも観察された。注入電流密度11mA/cm2において外部量子効率は最大0.5%であり、実施例3より劣るものであった。
<青色用燐光発光有機電界発光素子の作製及び評価>
ホスト材料を下記式(24)で示したCBP(融点:281℃、ガラス転移温度:室温以上で観測されない)に代えた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を構成した。この素子の発光スペクトルを図6に示す。青色燐光材料(FIr6)からの青色発光の他に、発光層以外(おそらくα−NPD由来)の発光スペクトルも観察された。注入電流密度11mA/cm2において外部量子効率は最大0.5%であり、実施例3より劣るものであった。
<蒸着膜の安定性評価>
また、上記式(24)で示したCBPに代えた以外は、実施例2と同様にして石英基板上に薄膜を形成した。この薄膜を形成した基板を室温下、大気中で放置したところ、1ヶ月経過後には基板上で白濁する様子が観察された。また、ITO付きガラス基板上でも同様の結果が得られた。
また、上記式(24)で示したCBPに代えた以外は、実施例2と同様にして石英基板上に薄膜を形成した。この薄膜を形成した基板を室温下、大気中で放置したところ、1ヶ月経過後には基板上で白濁する様子が観察された。また、ITO付きガラス基板上でも同様の結果が得られた。
以上の結果をまとめて表1に示す。上記式(5)の有機化合物を用いた実施例2,3の場合は、比較例1のCBPに比べて、外部量子効率に優れ、蒸着膜の保存性も良好であった。これは、CBPよりもPLスペクトルが短波長化しており、効率良くホスト材料のエネルギーがドーパント材料(FIr6)に移動するためと考えられる。具体的には、CBPは1ヶ月後には凝集する部分が観察されるが、上記式(5)の有機化合物は3ヶ月間以上薄膜がアモルファス性を保っていた。
このように、発光層の青色燐光発光用ホスト材料として上記式(5)の有機化合物を用いることにより、CBPに比べ、外部量子効率が向上した。特に、ドーパントである純青色燐光材料との組み合わせにより、高効率かつ純度の高い青色燐光発光が得られた。また、上記式(5)の有機化合物を用いることにより、形成した薄膜の安定性も向上した。上記式(5)の有機化合物のHOMOの値は5.5eV程度であり、上記非特許文献4のようにHOMOが7.2eVに到達するような材料を用いなくても高効率発光が可能であった。
10 透明基板、12 透明電極(陽極)、14 金属電極(陰極)、20 有機層、22 正孔輸送層、24 発光層、26 正孔ブロック層、28 電子輸送層。
Claims (14)
- 請求項1に記載の有機化合物であって、
前記R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y1〜Y6は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z1〜Z21は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表すことを特徴とする有機化合物。 - 請求項3に記載の有機化合物であって、
前記R2は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y7〜Y15は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z22〜Z51は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表すことを特徴とする有機化合物。 - 請求項5に記載の有機化合物であって、
前記R3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Y16〜Y27は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表し、前記Z52〜Z90は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基を表すことを特徴とする有機化合物。 - 請求項1に記載の有機化合物であって、
前記X1はCR1を表し、R1及びZ1〜Z21は水素原子であり、Y1〜Y6はメチル基であることを特徴とする有機化合物。 - 有機層を備える有機電界発光素子であって、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を前記有機層中に含むことを特徴とする有機電界発光素子。 - 発光層を備える有機電界発光素子であって、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を前記発光層中に含むことを特徴とする有機電界発光素子。 - 有機電界発光素子であって、
ホスト材料及びドーパント材料を含む発光層を備え、
前記ホスト材料は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。 - 有機電界発光素子であって、
ホスト材料及び燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、
前記ホスト材料は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。 - 有機電界発光素子であって、
ホスト材料及び青色燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、
前記ホスト材料は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。 - 有機電界発光素子であって、
ホスト材料及び純青色燐光発光性のドーパント材料を含む発光層を備え、
前記ホスト材料は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
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