JP2007250334A - 燃料電池システム - Google Patents

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英夫 小原
Akinori Yukimasa
章典 行正
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Abstract

【課題】電力負荷の大幅かつ瞬時の変動時に、冷却水温度を安定に保ちつつ熱回収媒体を適温に維持できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム100は、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電および発熱を行う燃料電池11と、燃料電池11の内部を流れる冷却水と熱回収媒体との熱交換により燃料電池11の熱を熱回収媒体に伝える熱交換器40と、熱交換器を通る熱回収媒体の流量を調整する熱回収媒体の流量調整器51と、発電に相関する情報を検知する情報検知器22と、熱交換器を経た熱回収媒体の温度を検知する温度検知器57と、制御器102と、を備え、制御器102は、これらの情報および温度に基づいて流量調整器51により熱回収媒体の流量を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに係り、更に詳しくは、燃料電池システムの伝熱媒体の温度及び流量制御の改良に関する。
従来の燃料電池システムは、燃料電池の内部を流れる冷却水と熱回収水との熱交換を行う熱交換器と、この熱交換器の下流の流路に配設されたサーミスタ(温度検知器)と、熱回収水の流量を調整する熱回収水ポンプと、を備えて構成され、これにより、熱交換器を経た熱回収水のサーミスタ検知温度(以下、「熱回収水温度」と略す)に基づいて、熱回収水温度を適温(例えば60℃程度)に保つように、熱回収水ポンプにより熱回収水の吐出量を調整する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
つまり、この特許文献1記載の熱回収水の温度制御では、熱回収水温度(制御量)が熱回収水ポンプの制御器に連動(フィードバック)され、この制御器により、この温度を熱回収水の基準温度(ここでは60℃)に一致させるべく熱回収水ポンプの熱回収水の吐出流量(操作量)が調整されている。
特開2000−340244号公報
ところで、家庭用の電力負荷は、各家庭の生活環境に合わせて微小な変動を頻繁に繰り返す場合がある。
このため、燃料電池の内部温度を一定レベル(例えば70℃)に維持できるよう、制御器は、電力負荷変動とともに変化する燃料電池システムの発電電力の増減により燃料電池の内部温度が変動しないよう、燃料電池の出入口の冷却水温度を監視している。
すなわち、制御器に冷却水温度をフィードバックして、制御器が、この冷却水温度を安定に保つように適宜の操作量(冷却水を通す電磁弁の開度や冷却水ポンプの吐出流量等)を調整している。なおここで、冷却水温度の変動は、燃料電池の内部温度の変動に直結することから、冷却水温度のフィードバック応答速度を、極力速め、対応が後手に回るというフィードバック制御の欠点を補っている(すなわち、冷却水温度のフィードバックの時定数を短くしている)。
また、このような冷却水温度の他、熱回収水温度も同様に、熱交換器における冷却水流量の変動に起因して燃料電池システムの発電電力の増減により変わることから、特許文献1に記載の如く、制御器に熱回収水温度をフィードバックして、制御器が、この熱回収水温度を適温に保つように適宜の操作量(熱回収水ポンプの吐出流量等)を調整している。但し、ここでの熱回収水は、通常、家庭用の風呂や台所の給湯利用を想定され、熱回収水の許容温度範囲は広めであることから、熱回収水温度のフィードバック応答速度を速める必然性に乏しいと、見做されている。寧ろ、熱回収水温度のフィードバックの時定数を短くし過ぎる場合には、却って、熱回収水流量の過敏な変動により、熱交換器を介して冷却水温度(ひいては燃料電池の内部温度)に悪影響を与える場合がある。例えば、冷却水温度のハンチング(浪打現象)を招き、その結果として、燃料電池の発電反応が不安定化する可能性がある。
以上の理由により、対応が後手に回るといったフィードバック制御の欠点は、少なくとも熱回収水の温度及び流量制御では特段問題視されることなく、逆に、熱回収水温度の変化を所定の温度範囲内で許容し、熱回収水温度のフィードバックの応答速度を意図的に抑えた制御が用いられている。
しかしながら、本件発明者等は、このような時定数の長い熱回収水温度のフィードバック制御に拠った熱回収水温度及び流量制御では、燃料電池システムの付加価値を高めるのに限界があると、考えている。
例えば、家庭の電力負荷変動が一定レベルを超えて大幅かつ瞬時に下回った場合には、熱回収水温度のフィードバックによる熱回収水流量の出力応答遅れに起因した、熱回収水温度の大幅な低下は、給湯用の熱回収水の安定供給という観点から無視し切れない。
このため、燃料電池システムの付加価値向上(高性能化)を図るに際して、家庭の電力負荷変動が一定レベルを超えて瞬時かつ大幅に下回った場合において、熱回収水温度低下と冷却水温度ハンチングの両方を解消可能な温度及び流量制御システムの創出が、早晩望まれるであろうと、本件発明者等は考えている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電力負荷の大幅かつ瞬時の変動時に、冷却水温度を安定に保ちつつ熱回収媒体を適温に維持できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電および発熱を行う燃料電池と、前記燃料電池の内部を流れる冷却水と熱回収媒体との熱交換により前記燃料電池の熱を熱回収媒体に伝える熱交換器と、前記熱交換器を通る熱回収媒体の流量を調整する熱回収媒体の流量調整器と、前記発電に相関する情報を検知する情報検知器と、前記熱交換器を経た前記熱回収媒体の温度を検知する温度検知器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記情報および前記温度に基づいて、前記流量調整器により前記熱回収媒体の流量を調整するシステムである。
具体的には、前記制御器は、前記温度と予め定められた基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により調整するとともに、前記情報を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測して、前記予測された到達温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により調整するシステムである。
このように構成された燃料電池システムによれば、例えば家庭の電力負荷変動が一定レベルを超えて瞬時かつ大幅に下回った場合に、制御器が、従来の熱回収水温度のフィードバック制御と、熱回収水温度のフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を実行することから、冷却水温度を安定に保ちつつ、従来の熱回収水流量調整の応答遅れに起因した熱回収水流量の超過分を解消でき、熱回収水温度の低下を適切に抑制できる。
ここで、前記情報が量を表す情報であり、前記情報の上限値および下限値との間を複数に区分するエリアを予め設定した燃料電池システムであって、前記情報が、特定のエリア内の予め定められた基準値を越えた後に、前記特定のエリアの直下のエリアに進入した場合には、前記制御器は、前記温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を前記流量調整器により減ずるとともに、前記情報を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測して、前記予測された到達温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を前記流量調整器により減ずるよう構成されても良い。
これにより、前記情報が、特定のエリア内の予め定められた基準値を越えた後、この特定のエリアの直下のエリアを直ちに進入した場合であれば、制御器は、発電電力(すなわち電力負荷)の大幅かつ瞬時の変動があったと、適切に判定できる。
一方、前記情報が、特定のエリアに定められた基準値を超えずに、前記特定のエリアの直下のエリアに進入した場合には、前記制御器は、前記温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により減ずるよう構成されても良い。
これにより、前記情報が、特定のエリア内の予め定められた基準値を超えずに、この特定のエリアの直下のエリアを直ちに進入した場合であれば、制御器は、発電電力(すなわち電力負荷)の大幅かつ瞬時の変動が無かったと、適切に判定できる。
また、前記情報を時間の経過とともに記憶する記憶器を備え、前記制御器は、前記記憶器に記憶された一定期間に亘る前記情報の平均値を演算し、前記情報の平均値を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測しても良い。こうすれば、前記情報の頻繁な微小変動が平準化され好適である。
なお、前記発電に相関する情報は、例えば、前記燃料電池の発電電力、発電電圧および発電電流のうちの少なくとも一つである。
また、原料ガスと水とを用いて前記燃料ガスを生成して、前記燃料電池のアノードに前記燃料ガスを供給する燃料処理器と、前記燃料電池のカソードに前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流量調整器と、を備えて構成され、前記発電に相関する情報は、例えば、前記原料ガス流量、前記酸化剤ガス流量および前記水流量のうちの少なくとも一つである。すなわち、燃料電池の発電の多寡に追従して、制御器が、これらの流量を各種の流量調整弁により調整することから、当該流量を基に、家庭の電力負荷の変動を推定できる。
また、前記制御器は、前記情報検知器から取得した前記情報に基づき、到来前の前記情報の推定値を演算し、前記推定値を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測しても良い。こうすれば、発電電力の変化に対し先手を打って熱回収水の適正な流量を調整でき好適である。
本発明によれば、電力負荷の大幅かつ瞬時の変動時に、冷却水温度を安定に保ちつつ熱回収媒体を適温に維持できる燃料電池システムが得られる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態による燃料電池システムの一構成例を示したブロック図である。
燃料電池システム100(燃料電池コージェネレーションシステム)は、図1に示す如く、水素リッチな燃料ガス(還元剤ガス)と空気等の酸化剤ガスを用いて発電および発熱(排熱放出)を行う燃料電池11を備える。
このような燃料電池システム100は、大まかには、燃料電池11への発電ガス供給および排気用の発電ガス系統および、燃料電池11から出力される電力制御用の電力制御系統並びに、燃料電池11の温度を一定に保つ機能を果たす冷却水循環用の冷却系統並びに、燃料電池システム100の冷却水との熱交換により燃料電池システム100の発熱(排熱)による熱を効率的に回収する排熱回収系統並びに、燃料電池システム100の全体動作を適切に制御する制御器102を備える。
燃料電池システム100の発電ガス系統は、原料ガス流量調整器14(例えば原料ガス供給元弁)、水流量調整器15(例えば水供給元弁)、燃料処理器12およびブロア13を備える。
燃料処理器12は、燃料電池11に併設され、改質水を添加して原料ガスを改質して、水素リッチな高温(例えば数百度)の燃料ガスを生成する。なお都市ガス等の原料ガスは、原料ガス流量調整器14から、制御器102により開度調整された原料ガス流量調整弁17(開度調整電磁弁)を通って燃料処理器12に供給され、純水からなる改質水は、水流量調整器15から、制御器102により開度調整された改質水流量調整弁18(開度調整電磁弁)を通って燃料処理器12に供給されている。この燃料処理器12は、公知技術に基づくものであり、ここではその詳細な内部構成の説明は省略する。
燃料処理器12により、図1の矢印付きの2重線に示す如く、燃料ガスが燃料電池11のアノードに供給され、燃料電池11のアノードにおいて消費されなかった残余の燃料ガス(オフガス)は、燃料処理器12の加熱用のバーナ10に向けて燃料処理器12により排出され、このバーナ10の燃料として燃焼される。
また、燃料電池11に併設されるブロア13により、図1の矢印付きの2重線に示す如く、空気等の酸化剤ガスが、制御器102により開度調整された酸化剤ガス流量調整弁16(開度調整電磁弁)を通って燃料電池11のカソードに供給され、燃料電池11のカソードにおいて消費されなかった酸化剤ガスは、ブロア13により大気中に排出される。
燃料電池システム100の電力制御系統は、図1に示す如く、燃料電池11の直流の発電電力を交流電力に変換するインバータ21と、インバータ21から出力された交流電力を検知する電力検知器22と、を備える。
なおここで、インバータ21の出力側は、電力検知器22を介してインバータ21の交流電力を供給する電力負荷(例えば、家庭用電力負荷)と既存インフラの電力系統の両方に接続されている。
このため、このインバータ21の出力電力が負荷消費電力未満の際には、インバータ21および電力系統の双方から電力負荷に必要な電力を給電することが可能になる。
燃料電池システム100の冷却系統では、図1の太い一点鎖線矢印で示した環状の冷却水流路42を、その途中で燃料電池11の内部を通るようにして、冷却水が流されている。
この冷却水は、燃料電池11の発熱(反応熱)による熱を燃料電池11の外部に輸送する役割を担っている。
また、この冷却系統は、冷却水流路42内の冷却水を循環可能な冷却水ポンプ43を有し、この冷却水ポンプ43により、燃料電池11の内部を一定温度(例えば70℃)に保つ目的で、水タンク41の冷却水貯水量や冷却水流路42の冷却水流量が調整されている。
なお、冷却水と熱回収水との間の熱交換により熱回収水に熱を伝える熱交換器40が、この冷却水流路42の途中に設けられている。
また、燃料電池11の冷却水出入口付近の冷却水流路42には、この冷却水流路42を流れる冷却水温度を検知可能な冷却水出口温度検知器44(例えばサーミスタ)および冷却水入口温度検知器45(例えばサーミスタ)が配設されている。
更に、冷却水出口温度検知器44と熱交換器40との間の冷却水流路42の途中にバイパス弁46(3方弁;開度調整電磁弁)が配設され、このバイパス弁46から延びるバイパス流路47は熱交換器40と水タンク41との間の冷却水流路42に連通するように構成され、このバイパス流路47により、熱交換器40に冷却水を通水させないという冷却水の迂回ルートが形成されている。
そして、制御器102は、後程詳しく述べるとおり、冷却水出入口温度検知器44、45により検知された、直近の冷却水出入口温度を取得して、このような冷却水出入口温度に基づいて冷却水流量を変更することにより、冷却水温度を適切に調整できるという冷却水温度のフィードバック制御を実行している。
このような冷却水温度のフィードバック制御によれば、操作量(ここでは冷却水流量)以外の制御量(ここでは冷却水温度)の決定因子(外乱)や、システムの特性変動といった不確定要因の克服が容易であり好適である。
燃料電池システム100の排熱回収系統は、温水(既存インフラの市水を昇温した貯湯水)を貯蔵する、積層沸き上げ方式の貯湯タンク32(蓄熱部)を備える。そして、貯湯タンク32の下方部の熱回収水流出口32Aから取り出された熱回収水は、熱回収水ポンプ51により、熱交換器40を通して燃料電池システム100内の熱(排熱)を受け取り、これにより、熱回収水は、適温に昇温された後、貯湯タンク32の上方部の熱回収水流入口32Bに戻される。このように、熱回収水が循環される。
なおここで、上記熱回収水流出口32Aには、貯湯タンク32の市水(水道水)入口付近の水を、熱交換器40に向けて熱回収水流路52に導く、熱回収水流路52の入口が接続されている。また、上記熱回収水流入口32Bには、熱交換器40を経た熱回収水を貯湯タンク32へ導く、熱回収水流路52の出口が接続されている。
すなわち、熱回収水流路52は、貯湯タンク32の熱回収水流出口32A(熱回収水流路52の入口)と貯湯タンク32の熱回収水流入口32B(熱回収水流路52の出口)とを介して、貯湯タンク32に連通してなり、その入口から出口に至るように延びて構成されている。
なおここで、熱交換器40を経た熱回収水の温度を検知する熱回収水温度検知器57が、熱交換器40の下流側の熱回収水流路52に配設されている。
このような排熱回収系統によれば、熱回収水流路52を流れる熱回収水を上記熱交換器40の熱交換作用により加熱できるため、燃料電池11から放出された排熱エネルギーを、貯湯タンク32に貯める湯(温水)に含まれる熱エネルギーとして家庭で利用することが可能になる。
燃料電池システム100の制御器102は、マイクロプロセッサにより構成され、例えば図示していない演算器と記憶器(ROMやRAM)とを有して、後記の冷却水および熱回収水の温度及び流量制御を実行する。
なお記憶器には、冷却水および熱回収水の温度及び流量制御用のプログラムおよび当該制御に必要な各種のデータが格納されている。
また、上記各種の検知器(電力検知器22、冷却水出口温度検知器44、冷却水入口温度検知器45および熱回収水温度検知器57)が、制御器102の入力元の検知部として機能する。また、上記各種の電磁弁やポンプ(酸化剤ガス流量調整弁16、原料ガス流量調整弁17、改質水流量調整弁18、冷却水ポンプ43および熱回収水ポンプ51)が、制御器102の出力先の操作部として機能する。
本実施の形態では、制御器102が、単一のマイクロプロセッサからなる例を述べたが、これが複数のマイクロプロセッサ群により構成されても良い。例えば、制御器102のマイクロプロセッサは、上述のとおり、燃料電池システム100の全体動作(発電動作等)をも制御するが、当該全体動作を別のマイクロプロセッサにより制御しても良い。
次に、燃料電池システム100の冷却水および熱回収水の温度及び流量制御について、図面を参照しつつ説明する。
但し、以下に述べる冷却水の温度及び流量制御と、熱回収水の時刻T0から時刻T1迄の温度及び流量制御とは、従来の制御手法に倣ったものであり、これらの制御の内容は、本実施の形態の特徴(熱回収水の時刻T1以降の温度及び流量制御)を理解するに必要な範囲に限定して述べる。
図2は、本実施の形態による燃料電池システムの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図2(a)は、家庭の電力負荷の経時変化例を示しており、同(a)に示す如く、電力負荷推移においては頻繁に発生する電力負荷の小変動Aと、例えば時刻T1において1000Wから300Wに瞬時に変化する電力負荷の大変動Bと、がある。
図2(b)は、図2(a)の電力負荷の変動に呼応する燃料電池システム100の発電電力の経時変化例を示しており、この発電電力は、燃料電池システム100の発熱量、ひいては熱回収水の加熱量と比例関係にある。
図2(c)は、燃料電池11を冷却する冷却水流量の経時変化例を示し、図2中の(d)は、その冷却水温度の経時変化例を示している。
図2(e)は、燃料電池システム100により生成され、給湯に利用される熱回収水流量の経時変化例を示し、図2(f)は、その熱回収水温度の経時変化例を示している。
なお図2(e)、(f)では、後程詳しく述べる、本実施の形態による熱回収水温度のフィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせて使用した制御に基づく、熱回収水流量および温度の変化を点線で示すとともに、その比較例として、時定数を長めにとった、従来の熱回収水温度のフィードバック制御のみを使用した制御に基づく、熱回収水流量および温度の変化を実線で示している。
先ずは、冷却水の流量及び温度制御について述べる。
制御器102は、ここでは、冷却水出口温度検知器44の検知温度を監視して、この冷却水出口温度を安定に保つように、冷却水ポンプ43の冷却水の吐出流量を調整し、かつ、冷却水入口温度検知器45の検知温度を監視して、この冷却水入口温度を安定に保つように、バイパス弁46の開度を調整して、熱交換器40に流す冷却水流量と、熱交換器40を迂回してバイパス流路47に流す冷却水流量と、の適正な比率を設定している。
つまり、冷却水出口温度検知器44により検知された冷却水出口温度と、冷却水入口温度検知器45により検知された冷却水入口温度と、が、制御器102にフィードバックされている。そして、この場合のフィードバックの時定数T3は、冷却水温度の許容温度範囲が狭いことを勘案して、充分に短めに設定されている。このため、図2(b)の燃料電池システム100の発電電力の変化に同期するように、図2(c)の冷却水流量は、素早く応答できる。よって、電力負荷変動(小変動A、大変動B)が発生しても、冷却水温度は、冷却水流量の迅速な増減により、図2(d)に示す如く、ほぼ一定のレベルに調整され、これにより、燃料電池11の内部温度が常に安定(例えば70℃)に維持される。
次に、図2に示した時刻T0から時刻T1迄の熱回収水の流量及び温度制御について述べる。
制御器102は、熱回収水温度検知器57の検知温度を監視して、この熱回収水温度を適温に保つように、熱回収水ポンプ51の熱回収水の吐出流量を調整している。
つまり、熱回収水温度検知器57により検知された熱回収水温度(制御量)は、図3(a)のブロック線図に示す如く、制御器102にフィードバックされ、制御器102は、この熱回収水温度と予め定められた基準温度(例えば60℃)との間の差分を少なくするように、熱回収媒体の吐出流量(操作量)を、制御対象としての熱回収水ポンプ51に入力している。そして、この場合のフィードバックの時定数T4は、熱回収水温度の許容温度範囲が広いこと、および、冷却水温度のハンチングを適切に抑制することを勘案して、充分に長めに設定されている。要するに、熱回収水温度のフィードバックの時定数T4は、冷却水温度のフィードバックの時定数T3より長い。
このため、図2(e)の熱回収水流量は、図2(b)の発電電力の変化に緩慢に追従する。よって、電力負荷変動(小変動A)が発生すれば、熱回収水温度は、図2(f)に示す如く、その許容温度範囲D内で変動する。
次に、図2に示した時刻T1以降の、熱回収水の流量及び温度制御を、その比較例とともに述べる。
図2(a)の家庭の電力負荷が、時刻T1で瞬時かつ大幅に低下した場合(ここでは1000Wから300Wに瞬間に低下)に、この電力負荷の低下に連動して、図2(b)の発電電力およびこの発電電力に等価な燃料電池11の発熱量も同じく低下する。この場合に、時定数T4を長めにとった、従来の熱回収水温度のフィードバック制御のみを使用した比較例では、熱交換器40の熱回収水への伝熱量が減るにも拘らず、熱回収水の流量は、熱回収水温度のフィードバック時定数T4を長くした結果として、熱回収水の温度低下に対し緩慢な応答になっており、図2(e)、(f)の実線で示した比較例の如く、熱回収水の流量が迅速に目標流量まで移行できず、その結果として、熱回収水温度は、その許容温度範囲Dを下回ってしまう。
そこで、本実施の形態による熱回収水の温度制御では、制御器102が、家庭の電力負荷が瞬時かつ大幅に低下したと判定した場合(この判定基準は後で述べる)に限り、従来の熱回収水温度のフィードバック制御に加え、熱回収水温度のフィードフォワード制御により熱回収水流量を調整している。
より詳しくは、制御器102は、家庭の電力負荷が瞬時かつ大幅に低下したと判定すれば、時々刻々と変化する燃料電池システムの発電電力を基に、熱回収水の到来前の到達温度を予測する。そして、制御器102は、図3(b)のブロック線図に示す如く、予測された到達温度と上記基準温度との間の差分を少なくするように、この予測された到達温度を熱回収水の上記基準温度に戻せる熱回収媒体の目標流量(操作量)を演算して、現在の熱回収水の流量をこの目標流量に一致させるべく、熱回収水ポンプ51により調整する。
よって、制御器102は、熱回収水温度のフィードフォワード制御により、図2(e)の点線に示すように、先手を打って熱回収水の流量を段階的かつ強制的に適切に変更する。このため、本実施の形態の燃料電池システム102は、図2(e)の斜線部として図示した従来の熱回収水流量調整の応答遅れに起因した熱回収水流量の超過分を適切に解消でき、その結果として、図2(f)の矢印で示した如く、熱回収水の温度を比較例(図2(f)の実線参照)から昇温させて、熱回収水温度の低下を抑制可能になる。
次に、制御器102による、電力負荷の瞬時かつ大幅低下の有無の判定基準について、図面を参照して説明する。
図4は、家庭の電力負荷に呼応して変わる、制御器による燃料電池への交流発電電力指令値(以下、「電力指令値」と略す)のプロファイルの一例を示した図である。
なおこの燃料電池システム100では、図4に示す如く、発電電力の上限値および下限値との間を100W刻みの均等に複数、区分された、電力指令値のエリアが設定されている。
図4では、700〜800Wエリアと、800〜900Wエリアと、900〜1000Wのエリアの一部と、が代表的に図示されている。
また、エリア毎に、図4に示す如く、エリア閾値とエリア基準値とが、設定されている。なおここでは、エリア閾値の一例として、各エリア内の電力指令値の下限値が採用され、エリア基準値の一例として、各エリア内の電力指令値の中心値が採用されている。例えば、800〜900Wエリアのエリア閾値は800Wであり、そのエリア基準値は850Wである。なおここで、制御器102による熱回収水温度のサンプリングの時間間隔は、(Δt)として例示している。
制御器102は、図4中の黒丸(●)のポイントにおいて、図3(a)に示した熱回収水温度のフィードバック制御系による制御に加えて、図3(b)に示した熱回収水温度のフィードフォワード制御系による、熱回収水流量(操作量)の強制制御を一定期間に亘り実行する。
端的には、電力指令値プロファイルが、特定のエリア内の予め定められた基準値を越えた後、この特定のエリアの直下のエリアを直ちに進入した場合には、制御器は、発電電力(すなわち電力負荷)の大幅かつ瞬時の変動があったと判断して、熱回収水温度のフィードバック制御による熱回収流量の調整とともに、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量の強制制御を一定期間に亘り実行し、それ以外の状況下では、熱回収水温度のフィードバック制御による熱回収水流量の調整のみを実行する。
なおここで、制御器102は、以上の判定動作において、各エリア閾値を記憶器に記憶しておき、(エリア閾値)+50W<電力指令値であれば、フラグを「0」にセットし、(エリア閾値)<電力指令値であればこのフラグを「1」にセットすることにより、特定のエリア内の予め定められた基準値を超えたか否かを判定しても良い。また、制御器102は、以上の判定動作において、電力指令値の変化の傾き(電力指令値の時間微分値)に基づいて、上記特定のエリアの直下のエリアに直ちに進入したか否を判定しても良い。
より具体的には、図4の時刻(t)と時刻(t+Δt)との間の、電力指令値プロファイル200は、800〜900Wエリアのエリア閾値(850W)を越えた後、その直下の700〜800Wエリアに直ちに進入していることから、制御器102は、家庭の電力負荷の瞬時かつ大幅低下があったと判断して、800〜900Wエリアのエリア閾値(800W)の信号取得に同期して、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量の強制制御を一定期間に亘り実行する。
また、図4の時刻(t+Δt)と時刻(t+3Δt)との間の、電力指令値プロファイル201は、700〜800Wのエリア基準値(750W)を超えているものの、800〜900Wのエリア基準値(850)を超えずに、800〜900Wの直下の700〜800Wのエリアに再進入している。言い換えれば、この電力指令値プロファイル200は、700〜800Wのエリア基準値(750W)を超えた後、直ちに、その直上の800〜900Wのエリアに進入している。
よって、制御器102は、このような場合には、家庭の電力負荷の瞬時かつ大幅低下が無かったと判断して、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量(操作量)の強制制御を実行しない。要するに、電力指令値が、前回『時刻(t)と時刻(t+Δt))』のフィードフォワード制御による熱回収水流量の強制制御に対応するエリア閾値(ここでは800W)を、その後、何回跨いでも、当該エリアの基準値(ここでは850W)を再び超えない限り、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量の強制制御を再び実行することはない。
また、図4の時刻(t+Δt)と時刻(t+2Δt)との間の、電力指令値プロファイル202は、700〜800Wのエリア基準値(750W)を超えた後、700〜800Wエリアの直下の600〜700Wエリアに直ちに進入していることから、制御器102は、家庭の電力負荷の瞬時かつ大幅低下があったと判断して、700〜800Wエリアのエリア閾値(700W)の信号取得に同期して、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量(操作量)の強制制御を一定期間に亘り実行する。
更に、時刻(t+6Δt)と時刻(t+7Δt)との間の、電力指令値プロファイル203は、800〜900Wのエリア基準値(850W)を超えた後、800〜900Wエリアの直下の700〜800Wエリアに直ちに進入していることから、制御器102は、家庭の電力負荷の瞬時かつ大幅低下があったと判断して、800〜900Wエリアのエリア閾値(800W)の信号取得に同期して、熱回収水温度のフィードフォワード制御による、熱回収水流量(操作量)の強制制御を一定期間に亘り実行する。
なお、制御器102による熱回収水の温度及び流量の制御アルゴリズムは、制御量(ここでは熱回収水温度)の、発電電力以外の変化要因(外乱)についての適切な把握を前提にして設計する必要があり、現実には燃料電池システム100のシステム構成や運転条件に応じて燃料電池システム毎に、当該制御アルゴリズムは決定される。
本実施の形態の燃料電池システム100によれば、家庭の電力負荷変動が一定レベルを超えて瞬時かつ大幅に下回った場合に、制御器102が、従来の熱回収水温度のフィードバック制御と、熱回収水温度のフィードフォワード制御とを組み合わせた制御を実行することから、冷却水温度を安定に保ちつつ、従来の熱回収水流量調整の応答遅れに起因した熱回収水流量の超過分を解消でき、熱回収水温度の低下を適切に抑制できる。
<熱回収水温度のフィードフォワード制御の各種の変形例>
以下、上記熱回収水温度のフィードフォワード制御の変形例1〜3を説明する。
〔変形例1〕
ここまで、燃料電池システム100の制御器102は、電力指令値を何等処理することなくそのまま用いて、上記熱回収水温度のフィードフォワード制御を行っているが、この電力指令値が頻繁に微小変動する場合、制御器102が、正しい情報を取得できない可能性がある。そこで、このような電力指令値を、時間の経過とともに、制御器102の記憶器に記憶させ、制御器102は、熱回収水温度のフィードフォワード制御を実行する際に、当該記憶器に記憶された一定期間に亘る電力指令値の平均値を演算して、このような平均値を基に熱回収水の到達温度を予測しても良い。そうすれば、電力指令値の頻繁な微小変動が平準化され好適である。
〔変形例2〕
本実施の形態の制御器102による熱回収水温度のフィードフォワード制御では、フィードフォワード制御の基準量は、発電電力の情報を基に予測された熱回収水の到達予測温度と熱回収水の基準温度との差分であるが、こうした発電電力に限定されず、燃料電池システム102の発電(ひいては家庭の電力負荷)に直接または間接に相関する情報(物理量)であれば、他の情報を用いても良い。
例えば、燃料電池システム102の発電に直接に相関する情報例としては、上記発電電力の他、燃料電池システム102の発電電圧や発電電流がある。
また、燃料電池システム102の発電に間接に相関する情報例としては、原料ガス流量と、酸化剤ガス流量と、改質水流量と、がある。すなわち、燃料電池100の発電の多寡に追従して、制御器102が、これらの流量を既に述べた各種の流量調整弁16、17、18により調整することから、当該流量を基に、家庭の電力負荷の変動を推定できる。なおこの場合、当該流量を計測する流量計(不図示)を燃料電池システム100の適所に配設して、制御器102は、この流量計の検知データを取得する必要がある。
〔変形例3〕
本実施の形態の制御器102は、熱回収水温度のフィードフォワード制御において、電力検知器22から取得した発電電力のリアルタイムなデータを用いて、熱回収水の到達温度を予測しているが、この変形例として、制御器102が、電力検知器22から取得した発電電力のデータを基に到来前の発電電力の推定値を演算して、この推定値に基づいて熱回収水の到達温度を予測しても良い。こうすれば、発電電力の変化に対し先手を打って熱回収水の適正な流量を調整でき好適である。
本発明の燃料電池システムは、電力負荷の瞬時かつ大幅な変動時に、冷却水の温度を安定に保ちつつ熱回収媒体を適温に維持でき、例えば、家庭用の燃料電池発電システムとして有用である。
本発明の実施の形態1による燃料電池システムの一構成例を示したブロック図である。 本実施の形態による燃料電池システムの動作例を説明するためのタイミングチャートである。 本実施の形態の熱回収水温度のフィードフォワード制御を、従来の熱回収水温度のフィードバック制御とともに示したブロック線図である。 家庭の電力負荷に呼応して変わる、燃料電池システムの制御器による交流発電電力指令値の変動プロファイルの一例を示した図である。
符号の説明
10 バーナ
11 燃料電池
12 燃料処理器
13 ブロア
14 原料ガス流量調整器
15 水流量調整器
16 酸化剤ガス流量調整弁
17 原料ガス流量調整弁
18 改質水流量調整弁
21 インバータ
22 電力検知器
32 貯湯タンク
40 熱交換器
41 水タンク
42 冷却水流路
43 冷却水ポンプ
44 冷却水出口温度検知器
45 冷却水入口温度検知器
46 バイパス弁
47 バイパス流路
51 熱回収水ポンプ
52 熱回収水流路
57 熱回収水温度検知器
100 燃料電池システム
102 制御器

Claims (8)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電および発熱を行う燃料電池と、
    前記燃料電池の内部を流れる冷却水と熱回収媒体との熱交換により前記燃料電池の熱を熱回収媒体に伝える熱交換器と、
    前記熱交換器を通る熱回収媒体の流量を調整する熱回収媒体の流量調整器と、
    前記発電に相関する情報を検知する情報検知器と、
    前記熱交換器を経た前記熱回収媒体の温度を検知する温度検知器と、
    制御器と、を備え、
    前記制御器は、前記情報および前記温度に基づいて、前記流量調整器により前記熱回収媒体の流量を調整する、燃料電池システム。
  2. 前記制御器は、前記温度と、予め定められた前記熱回収水の基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により調整するとともに、前記情報を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測して、前記予測された到達温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により調整する、請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記情報が量を表す情報であり、前記情報の上限値および下限値との間を複数に区分するエリアを予め設定した燃料電池システムであって、
    前記情報が、特定のエリア内の予め定められた基準値を越えた後に、前記特定のエリアの直下のエリアに進入した場合には、前記制御器は、前記温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を前記流量調整器により減ずるとともに、前記情報を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測して、前記予測された到達温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により減ずる、請求項1または2記載の燃料電池システム。
  4. 前記情報が、特定のエリアに定められた基準値を超えずに、前記特定のエリアの直下のエリアに進入した場合には、前記制御器は、前記温度と前記基準温度との間の差分を少なくするように前記熱回収媒体の流量を、前記流量調整器により減ずる、請求項3記載の燃料電池システム。
  5. 前記情報を時間の経過とともに記憶する記憶器を備え、
    前記制御器は、前記記憶器に記憶された一定期間に亘る前記情報の平均値を演算し、前記情報の平均値を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測する請求項2記載の燃料電池システム。
  6. 前記発電に相関する情報は、前記燃料電池の発電電力、発電電圧および発電電流のうちの少なくとも一つである請求項1乃至5の何れかに記載の燃料電池システム。
  7. 原料ガスと水とを用いて前記燃料ガスを生成して、前記燃料電池のアノードに前記燃料ガスを供給する燃料処理器と、
    前記燃料電池のカソードに前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流量調整器と、を備え、
    前記発電に相関する情報は、前記原料ガス流量、前記酸化剤ガス流量および前記水流量のうちの少なくとも一つである請求項1乃至5の何れかに記載の燃料電池システム。
  8. 前記制御器は、前記情報検知器から取得した前記情報に基づき、到来前の前記情報の推定値を演算し、前記推定値を基に前記熱回収媒体の到達温度を予測する、請求項1乃至7の何れかに記載の燃料電池システム。
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