JP2007247810A - 通電焼結含油軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 焼結含油軸受の潤滑油に導電性物質を配合させた場合であっても、摺動性の悪化を招かず、しかも安定した通電性が得られるようにする。
【解決手段】 焼結金属を有してなり、その焼結金属の内部気孔に、潤滑油が含浸され且つ該潤滑油に導電性物質が配合されてなる通電焼結含油軸受1において、潤滑油に、導電性物質を分散させる分散剤を更に配合する。好ましくは、分散剤が、金属スルホネート系分散剤であり、潤滑油が、炭化水素系潤滑油である。
【選択図】図2

Description

本発明は、通電焼結含油軸受に係り、詳しくは、通電性が要求される部位、例えば電子写真画像形成装置に装備されるローラの支持部等に使用することが好適な通電焼結含油軸受に関する。
周知のように、銅や鉄等の多孔質体からなる焼結金属に潤滑油を含浸させてなる焼結含油軸受は、これに相対回転可能に支持された軸等との間の軸受隙間に油膜が形成されることにより良好なすべり特性が得られる等の理由から、種々の装置の回転支持部に広範に亘って使用されるに至っている。
その使用の一例として、通電性が必要とされる箇所、例えば電子写真画像形成装置(代表例として電子写真プリンタ)に装備されるローラの支持部に、この種の焼結含油軸受が使用される場合がある。この場合には、焼結含油軸受の内周に挿通された軸に所要の電荷が給電され、その電荷が、軸から油膜及び焼結含油軸受を介してその外周側の帯電ローラに導通される必要がある。
また、他の使用例として、この種の焼結含油軸受を、静電気が問題となる機器或いは装置における回転体の支持部に使用する場合には、当該機器等を損傷させる原因となる静電気の帯電の放置を防止すべく、その回転体の周辺で発生する静電気を、焼結含油軸受を含む経路を通じて逃がすことが必要となる。
しかしながら、この種の焼結含油軸受に含浸されている潤滑油は、電気的絶縁性を有しているのが通例であるため、焼結含油軸受を介在させてなる経路は、潤滑油(油膜)により導通状態が遮断される。したがって、この種の焼結含油軸受をそのまま使用したのでは、上記の通電性の要請に応じることができない。
そこで、例えば下記の特許文献1によれば、潤滑油に導電性物質を配合して通電性が得られるようにし、焼結含油軸受の内径面とその内周側に挿通される軸の外径面との間の軸受隙間を、油膜(油膜中の導電性物質)を介して導通状態とすることが開示されている。そして、同文献には、そのような潤滑油に配合される導電性物質として、カーボンブラック、黒鉛、銅粉などが用いられることも開示されている。
特開2003−120673号公報
ところで、上記の特許文献1に開示された通電焼結含油軸受によれば、潤滑油に配合した導電性物質が微細であること等に起因して凝集をおこし、潤滑性が低下することから、摺動性が悪化すると共に、安定した通電性が得られなくなる。
そのため、この種の焼結含油軸受に本来的に要求されるすべり特性等に却って悪影響を及ぼすことが懸念されるばかりでなく、主たる目的である通電性の確保の観点からも、充分であるとは言い難い。
したがって、上述の電子写真画像形成装置(電子写真プリンタ等)における軸に給電された電荷を、軸→油膜→焼結含油軸受→帯電ローラという経路で導電させる際に、特に油膜が原因となって導電阻害が生じるおそれがあり、また上述の静電気を逃がす役割を充分に果たし得なくなるおそれも生じていた。
本発明は、上記事情に鑑み、焼結含油軸受の潤滑油に導電性物質を配合させた場合であっても、摺動性の悪化を招かず、しかも安定した通電性が得られるようにすることを技術的課題とする。
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、焼結金属を有してなると共に、該焼結金属の内部気孔に、潤滑油が含浸され且つ該潤滑油に導電性物質が配合されてなる通電焼結含油軸受において、上記潤滑油に、導電性物質を分散させる分散剤が更に配合されていることに特徴づけられる。この場合、導電性物質としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
このような構成によれば、通電焼結含油軸受と、これに同軸支持される部材(例えばその内周に挿通される軸)との間に、相対回転が生じた場合には、その軸受の内部気孔に含浸された潤滑油が、両者間の隙間(主として軸受隙間)に滲み出て油膜が形成される。この油膜中には、導電性物質に加えて、その導電性物質を分散させる分散剤(例えば液体からなる分散剤)が配合されているので、導電性物質は均一に油膜中に分散した状態となり、その凝集の発生確率が極めて低くなる。しかも、焼結金属の内部気孔や表面開孔に対して、潤滑油中の導電性物質が適切に循環し得ることになる。これにより、微細で凝集をおこし易い導電性物質が潤滑油に配合されているにも拘わらず、潤滑性の低下を回避することが可能となり、良好な摺動性を維持しつつ、安定した通電性を得ることができる。
したがって、この通電焼結含油軸受を、例えば電子写真画像形成装置である電子写真プリンタに装備されるローラの支持部に使用した場合には、その軸受の内周側の軸に給電された所要の電荷が、軸から油膜(油膜中に均一に分散された導電性物質)及び通電焼結含油軸受を介してその外周側の帯電ローラに適切且つ確実に導かれることになり、給電された電荷の良好な導通状態の確保、ひいてはプリンタ性能の向上に寄与することが可能となる。また、この通電焼結含油軸受を、例えば静電気が問題となる機器或いは装置における回転体の支持部に使用した場合には、その回転体の周辺で発生する静電気が、油膜中に均一に分散された導電性物質及び通電焼結含油軸受を通じて支障なく円滑に逃げ得ることになり、当該機器等を損傷させる原因となる静電気の帯電放置の問題が回避される。
尚、上記の電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方法を用いて記録媒体に画像を形成する装置であって、既に述べた電子写真プリンタ(カラーLBPプリンタ、カラーLEDプリンタ等)、電子写真複写機(ディジタルPPC、カラーPPC等)、ファクシミリ装置、及びワードプロセッサ等が含まれ、これら全ての機器類の回転支持部に対して、上述の通電焼結含油軸受が使用可能である。
この場合において、潤滑油に配合する分散剤は、上述のグラファイト、カーボンブラック、またはカーボンナノチューブなどからなる導電性物質を、潤滑油中で適切且つ確実に分散させるという要請に応じる観点から、金属スルホネート系分散剤であることが好適である。
また、潤滑油に配合する導電性物質が過度に多量であると、潤滑油の流動性が悪化して適切な循環の阻害要因となるため、潤滑油の適切な循環を確保する観点から、導電性物質の配合量は、0.3〜1.0wt%であることが好ましい。更に、これに加えて潤滑油中に配合する分散剤は、このように配合された導電性物質の適切な分散を確保した上で、潤滑油の適切な循環をも依然として維持する必要があり、このような観点から、分散剤の配合量は、0.1〜0.5wt%であることが好ましい。
更に、導電性物質及び分散剤のそれぞれの配合量を上記の数値範囲とした上で、導電性物質の適切な分散性及び潤滑油の適切な循環性を確保するとの要請に応じるには、それらが配合される潤滑油を、炭化水素系潤滑油とすることが好適である。
この場合、導電性物質の適切な分散性及び潤滑油の適切な循環性をより確実に確保するには、焼結金属の油膜形成面における表面開孔率が20〜70%(更には上限が30%、下限が50%)であることが好ましい。
また、通電焼結含油軸受としての強度及び耐久性を確保して軽量化を図るとの要請に応じるには、この通電焼結含油軸受の全体の密度を、5.8〜7.0g/cmとすることが好ましい。
そして、強度や軽量化の観点から通電焼結含油軸受の全体の密度を上記の数値範囲とするには、焼結金属が、銅、銅合金及び鉄の中から選択される1種以上の粉末もしくは銅被覆鉄粉を主原料として形成されていること、また導電性物質及び分散剤を配合してなる潤滑油の含油率が15〜25vol%であることが好ましい。
以上のように本発明によれば、通電焼結含油軸受と、これに同軸支持される部材との間に、相対回転が生じた場合には、その軸受の内部気孔に含浸された潤滑油が、両者間の軸受隙間に滲み出て油膜が形成されるが、この油膜中には、導電性物質に加えて、その導電性物質を分散させる分散剤が配合されているので、導電性物質は均一に油膜中に分散した状態となり、その凝集の発生確率が極めて低くなる。しかも、焼結金属の内部気孔や表面開孔に対して、潤滑油中の導電性物質が適切に循環し得ることをも勘案すれば、潤滑性の低下を回避できることになり、良好な摺動性を維持しつつ、安定した通電性を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る通電焼結含油軸受を使用してなる軸受ユニットを示している。この軸受ユニットは、例えば、前述した電子写真プリンタ(詳しくはその現像装置)において、現像ローラの非印字領域と接触して、該領域を所要の電位、つまりトナーの帯電電位と同極性の電位に帯電させる帯電ローラを回転自在に支持するものである。そして、この軸受ユニットは、通電焼結含油軸受1と、その軸受1の内周に挿通された軸2と、軸方向位置規制部としてのワッシャ3及び4とを主要な要素として構成されている。
通電焼結含油軸受1は、青銅系焼結金属からなる多孔質体で円筒状に形成され、その内部気孔に炭化水素系潤滑油が含浸されている。この潤滑油には、導電性物質としてのグラファイト粉末と、このグラファイト粉末を分散させる金属スルホネート系分散剤とが配合されている。グラファイト粉末は、その平均粒径が1μm以下で、配合量は1wt%以下とされると共に、金属スルホネート系分散剤は、配合量が0.5wt%以下とされている。この実施形態では、潤滑油におけるそれぞれの配合比率が、炭化水素系潤滑油99.3wt%、金属スルホネート系分散剤0.2wt%、及びグラファイト粉末0.5wt%とされている。
通電焼結含油軸受1の内周面1aは、軸線Xと平行な中央領域1a1と、その両端側領域の逃げ部1a2、1a3とで構成されると共に、その表面の気孔率(開孔率)は20〜70%の範囲内(この実施形態では35%程度)に設定されている。そして、この通電焼結含油軸受1において、グラファイトと分散剤とを配合してなる潤滑油の含油率は、15〜25vol%(この実施形態では20vol%程度)とされ、製品密度(通電焼結含油軸受1の全体の密度)は、5.8〜7.0g/cm(この実施形態では6.5g/cm程度)とされている。
通電焼結含油軸受1の内周面1aにおける中央領域1a1は、軸2の外周面と微小な軸受隙間を介して対向している。この実施形態において、逃げ部1a2、1a3は、軸線Xと角度θをなすストレート面で構成され、角度θは、例えば10〜45度の範囲内に設定されている。また、逃げ部1a2、1a3の幅W1、W2は、例えば通電焼結含油軸受1の全幅Wに対して1/5〜1/3の範囲内に設定されている。
通電焼結含油軸受1の外周面は、図示されていない金属製のハウジングの内周に固定され、そのハウジングは帯電ローラの内周に固定されている。尚、通電焼結含油軸受1の外周を、帯電ローラの内周に直接固定する構造とすることもできる。
軸2は金属材で形成され、その一端部(図1の右側軸端)に図示されていない給電部材、例えば給電バネが装着されている。また、軸2の一端側部分(図1の右側部分)は図示されていないアームに揺動可能に支持され、弾性部材、例えば加圧バネによって所定方向(現像ローラ側)に押圧されている。
ワッシャ3、4は、それぞれ低摩擦材、例えば自己潤滑性を有する樹脂材で形成されている。一方のワッシャ3は、通電焼結含油軸受1の一方の端面側(図1及び図2の左端面側)に装着され、軸2の円周溝2aに嵌着された止め輪5によって、軸方向の一方(図1及び図2の左方向)に抜け止め規制されている。また、他方のワッシャ4は、通電焼結含油軸受1の他方の端面側(図1及び図2の右端面側)に装着され、軸2の肩部2bによって、軸方向の他方(図1及び図2の右方向)に抜け止め規制されている。通電焼結含油軸受1の端面とワッシャ3、4との間には隙間が設けられており、その大きさは例えば0.5mm以下である。
次に、上記構成を備えてなる軸受ユニットの作用を説明する。
帯電ローラが現像ローラの非印字領域と接触して回転すると、それに伴って通電焼結含油軸受1が回転する。通電焼結含油軸受1の回転に伴い、その内部気孔に含浸された潤滑油が、内周面1aの気孔から軸2の外周面との間の隙間に滲み出して油膜を形成し、その油膜によって、通電焼結含油軸受1及び帯電ローラの回転が、軸2に対して非接触支持される。この場合、上記の油膜中には、導電性物質としてのグラファイト粉末に加えて、そのグラファイト粉末を分散させる金属スルホネート系分散剤が配合されているので、グラファイト粉末は均一に油膜中に分散した状態となり、その凝集の発生確率が極めて低くなると同時に、通電焼結含油軸受1の内部気孔や表面開孔に対して、潤滑油中のグラファイト粉末が適切に循環し得ることになる。これにより、グラファイト粉末を炭化水素系潤滑油に配合したにも拘わらず、潤滑性の低下を阻止でき、良好な摺動性を維持しつつ、安定した通電性を得ることができる。
したがって、軸2に給電された電荷は、軸2→油膜(油膜中のグラファイト粉末)→通電焼結含油軸受1→(ハウジング)→帯電ローラという経路で適切且つ確実に導電される。この結果、帯電ローラと接触する現像ローラの非印字領域が所要の電位に帯電されて、トナーの飛散を電気的に防止する良好なトナーシールが構成される。
しかも、通電焼結含油軸受1の内周面1aにおける表面の開孔率、潤滑油の含油率、及びグラファイト粉末の平均粒径は、それぞれ上記の数値とされていることから、グラファイト粉末の適切な分散性を確保した上で、潤滑油の適切な循環性をも維持することができる。
尚、上記実施形態は、電子写真画像形成装置のうち、電子写真プリンタの回転体の支持部に本発明を適用したものであるが、これ以外の電子写真画像形成装置である電子写真複写機、ファクシミリ装置、及びワードプロセッサ等の回転体の支持部についても、同様にして本発明を適用することが可能である。また、これら以外に、静電気が問題となる機器或いは装置における回転体の支持部、更にはその他の通電性が要求される回転支持部に対しても、同様にして本発明を適用することが可能である。
また、上記実施形態は、内周面1aが平滑な面とされた通電焼結含油軸受1に本発明を適用したものであるが、内周面1aに動圧溝が形成されてなる通電焼結含油軸受1についても、同様にして本発明を適用することが可能である。
本発明の実施形態に係る通電焼結含油軸受が使用された軸受ユニットの全体構成を示す一部縦断側面図である。 上記軸受ユニットの要部を示す拡大縦断側面図である。
符号の説明
1 通電焼結含油軸受
1a 通電焼結含油軸受の内周面
1a1 通電焼結含油軸受の内周面の中央領域(軸受面)

Claims (6)

  1. 焼結金属を有してなると共に、該焼結金属の内部気孔に、潤滑油が含浸され且つ該潤滑油に導電性物質が配合されてなる通電焼結含油軸受において、
    上記潤滑油に、導電性物質を分散させる分散剤が更に配合されていることを特徴とする通電焼結含油軸受。
  2. 上記分散剤が、金属スルホネート系分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の通電焼結含油軸受。
  3. 上記潤滑油が、炭化水素系潤滑油であることを特徴とする請求項1または2に記載の通電焼結含油軸受。
  4. 密度が、5.8〜7.0g/cmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の通電焼結含油軸受。
  5. 上記焼結金属が、銅、銅合金及び鉄の中から選択される1種以上の粉末もしくは銅被覆鉄粉を主原料として形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の通電焼結含油軸受。
  6. 上記導電性物質及び分散剤を配合してなる潤滑油の含油率が、15〜25vol%であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の通電焼結含油軸受。
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