JP2007247728A - Oリングとこれを用いたシール構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】Oリングにより部材同士のシールに際して、シール性を確保しつつ嵌合対象部材の挿入性の向上を図る。
【解決手段】Oリング10は、断面形状において、リング断面の外周の側からリング中心の軸方向に沿ってリング断面中心に向かうスリット12を備える。このスリット12は、底部形状が半円状とされており、スリット両側のスリットサイド余肉部13と、スリット底部の側のスリット底部余肉部14とを形成する。この場合、スリット深さSDは、最大でもリング断面における太さの半分とされており、リング素材であるEDPMが隙なく存在するスリット底部余肉部14の領域を確保している。
【選択図】図1

Description

本発明は、Oリングと、嵌合孔を有する第1部材と嵌合凸部を有する第2部材とをOリングによりシールするシール構造に関する。
Oリングは、嵌合孔と嵌合凸部に介在してシールを簡便に図る部材として多用されている。その一例を挙げると、近年では、車両における燃料経路となるホース配管においていわゆるクイックコネクタ機構が採用され、そのコネクタ機構にOリングが組み込まれている。こうしたコネクタ機構は、燃料ホース以外の経路、例えば冷却水系路(ウォーターホース)にもその採用が進められている。
ところで、ウォーターホースは、燃料ホースに比して、ホース径が大きく、流体圧送時の圧力も高いことから、Oリングには高いシール性が求められるので、シール性確保のため、大きな圧縮しろが必要である。このため、コネクタ機構におけるオス部材とメス部材を嵌合する際の挿入荷重が大きくなり、挿入作業、引いては組み付け作業の作業性が悪く、その改善が要請されていた。
こうした要請に応えるため、Oリングの断面形状をC字状としてほぼ中空のようなOリングとし、形状変形を容易とする技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開平8−193658号公報
この文献で提案された断面C字状のOリングでは、部材挿入に追従した形状の変形が容易で摺動抵抗の低減をもたらし、挿入作業を容易とする。しかしながら、断面がC字状のOリングのシール性は、形状変形の復元力に左右され、Oリング素材(多くの場合はゴム部材)自体の圧縮変形によるシール性より低くなる。よって、シール性確保の点からは十分とは云えないことが指摘されるに到った。
本発明は、Oリングにより部材同士のシール性確保に際しての上記問題点を解決するためになされ、シール性を確保しつつ嵌合対象部材の挿入性の向上を図ることをその目的とする。
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明のOリングは、その断面形状において、リング断面の外周の側からリング中心の軸方向に沿ってリング断面中心に向かうスリットを備える。この本発明のOリングでは、スリットが縮まるように変形することで、スリットのないOリングに比して嵌合対象部材の挿入性を高めることができる。その一方、本発明のOリングは、スリットの底部の側において、嵌合対象部材の挿入に際してOリング素材自体の圧縮変形を起こさせるので、形状変形によりシール性を発揮するOリングに比して高いシール性を発揮することができる。
本発明のOリングにおけるスリットについては、スリットの両側のスリットサイド余肉部と、スリットの底部の側のスリット底部余肉部とが断面において存在し、このスリット底部余肉部の厚みが、リング断面における太さの1/2〜3/4の範囲とすることができる。スリット底部余肉部はOリング素材が隙なく存在する部位であることから、このスリット底部余肉部自体(つまりはOリング素材自体)の圧縮変形を発現させるので、シール性確保の信頼性が高まる。
また、スリット形状については、これを底部が半円状とされた溝形状とすることができる。こうすれば、スリット底部において圧縮荷重の集中による割れや損傷を抑制でき好ましい。
また、スリットの開口端部幅を、リング断面における太さの1/4〜2/3の範囲とすることができる。こうすれば、スリットの両側のスリットサイド余肉部がスリット開口が狭くなる側に撓む撓み変形を確実に起こさせるので、スリットサイド余肉部の形状変形(撓み変形)による嵌合対象部材の挿入性確保の信頼性が高まる。そして、スリットの開口端部幅が上記範囲であれば、嵌合対象部材の挿入に際して撓み変形しつつあるスリットサイド余肉部間のスリット内部に、嵌合対象部材を通過する流体の流入を起こし得る。よって、スリット間に流入した流体はその液圧をスリットサイド余肉部を拡張させる側に作用させるので、シール性をより高めることができる。
加えて、本発明は、嵌合孔を有する第1部材と、該嵌合孔に嵌合する嵌合凸部を有する第2部材とをOリングによりシールするシール構造にも適用でき、このシール構造において、高いシール性と挿入性向上を両立できる。そして、Oリングを嵌合孔の周壁凹所または嵌合凸部の周壁凹所に配設するに当たっては、嵌合孔に嵌合凸部を嵌合する際にはスリット底部余肉部がスリットサイド余肉部より先に押圧されるようにすることができる。こうすれば、嵌合孔への嵌合凸部の嵌合に際して、スリットサイド余肉部はスリット底部余肉部の側から押圧され、スリットサイド余肉部はその基部から押圧されるので、スリットサイド余肉部の先端(即ち、スリット開口端側)のめくれ上がりを回避できる。よって、Oリングの損傷回避の上からも好ましい。しかも、スリット底部余肉部は先に押圧されて圧縮変形するので、嵌合孔への嵌合凸部の嵌合初期の状況からシール性を確保し、その上で、嵌合孔への嵌合凸部の嵌合を完了できるので、嵌合挿入時の流体漏れも抑制できる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。図1は実施例におけるOリング10を一部破断して概略を斜視にて示すと共に断面を拡大して示す説明図である。
図示するように、Oリング10は、既存のOリング同様に環状をなし、合成ゴム、天然ゴム、または合成樹脂にて形成されている。本実施例では、Oリング10をEDPM(エチレンプロピレンゴム重合体)にて形成し、外周ばり等の形状公差は、JISに規定する規格とした。
本実施例のOリング10は、図1の断面図に明らかなように、断面形状において、リング断面の外周の側からリング中心の軸方向に沿ってリング断面中心に向かうスリット12を備える。このスリット12は、底部形状が半円状とされており、スリット両側のスリットサイド余肉部13と、スリット底部の側のスリット底部余肉部14とを形成する。この場合、スリット深さSDは、最大でもリング断面における太さの半分とされており、当該太さの1/4〜1/2未満の範囲である。よって、スリット底部余肉部14は、スリットの深さ方向において、リング断面太さの1/2〜3/4の範囲の厚みを備える。このように、スリット底部余肉部14の厚みをリング断面太さの1/2以上とすれば、Oリング素材であるEDPMが隙なく存在するこのスリット底部余肉部14の領域を確保でき、リング断面太さの3/4以下とすれば、後述のスリットサイド余肉部13の長さを確保できることから好ましい。
また、スリット12のスリット幅SWは、リング断面太さの1/4〜2/3の範囲である。スリット幅SWをリング断面太さの1/4以上とすれば、両側のスリットサイド余肉部13を、スリット開口が狭くなる側に撓むよう撓み変形させることが容易であり、リング断面太さの2/3以下であれば、両側のスリットサイド余肉部13をその厚みを確保した上で形成でき、好ましい。
なお、上記したスリット12を有するOリング10の製造に際しては、既存の製造手法で用いられる金型に、スリット12に対応する環状の凹部を形成すればいい。
次に、本実施例のOリング10の装着の様子と、その効果について説明する。図2はOリング10を装着したクイックコネクタ機構20をその要部拡大図を含んで概略的に示す説明図、図3はコネクタ装着時におけるOリング10の様子を概略的に示す説明図である。
図2に示すように、クイックコネクタ機構20は、水経路を形成するゴムホース22の先端に装着されたメスコネクタ24とオスコネクタ26とを有する。メスコネクタ24は、ゴムホース22の開口端に差し込み装着して固定され、メスコネクタ24の嵌合用の嵌合孔28に、段差凹所29を備え、当該凹所に組み込んだブッシュ30と協働して、Oリング10の装着凹所32を形成する。また、メスコネクタ24は、端部側外周にスプリング装着溝25を備える。オスコネクタ26は、その先端を嵌合孔28に嵌合する嵌合凸部34とし、フランジ36をストッパーとして備える。このオスコネクタ26がメスコネクタ24に嵌合装着されると、オスコネクタ26は、スプリング装着溝25に装着された固定スプリング38により、軸方向の移動が制限され、メスコネクタ24に対して装着固定された状態となる。
Oリング10は、メスコネクタ24の装着凹所32に配設され、その際には、スリット底部余肉部14はメスコネクタ24の開口端側(オスコネクタ26の差し込み口側)に位置し、スリット12とスリットサイド余肉部13はオスコネクタ26の先端側(差し込み端側)に位置するようにされる。この様子は、図3に示されている。
この図3に示すように、オスコネクタ26の嵌合初期の状況では、オスコネクタ26のコネクタ先端26aはOリング10に接触していないので、Oリング10は、装着凹所32においていわゆるフリーの状態にある(図3(a)参照)。そして、スリット底部余肉部14は、上記したようにメスコネクタ24の開口端側(オスコネクタ26の差し込み口側)に位置し、コネクタ先端26aによる押圧を受けていない。このコネクタ先端26aは、Oリング接触時によるリング損傷を回避するため、テーパ状、或いは球面状とされている。
オスコネクタ26が更に差し込まれその嵌合が進むと、オスコネクタ26は、コネクタ先端26aをOリング10のスリット底部余肉部14に押し付ける(図3(b)参照)。この状態では、コネクタ先端26aはスリットサイド余肉部13にまで達していないことから、スリット底部余肉部14は、スリットサイド余肉部13より先に押圧されて、スリット底部余肉部14自体で圧縮変形を起こす。オスコネクタ26が更に嵌合されて嵌合が完了した状態では、オスコネクタ26は、その嵌合凸34外周で、スリット底部余肉部14のみならずスリットサイド余肉部13をも押し付ける(図3(c)参照)。この状態では、スリット底部余肉部14自体が圧縮変形を起こしているほか、スリット12の両側のスリットサイド余肉部13は、スリット12が縮まるように変形する。
以上のようにしてクイックコネクタ機構20に組み込んで使用される本実施例のOリング10は、スリット12を形成しつつ、スリット底部にはリング素材であるEDPMが隙なく存在するスリット底部余肉部14を、リング断面における太さの1/2〜3/4の範囲の厚みで備える。しかも、ゴムホース22と接続されたメスコネクタ24へのオスコネクタ26の嵌合装着に際しては、オスコネクタ26によりスリット底部余肉部14が先に押圧されるようにした。よって、次の利点がある。
本実施例のOリング10では、リング素材であるEDPMが隙なく存在するスリット底部余肉部14の圧縮変形を起こす。このスリット底部余肉部14の部分は、スリットを有しないOリングと比べて圧縮変形を起こす範囲が少ないものの、形状変形によりシール性を発揮するOリングに比しては高いシール性を発揮することができる。しかも、このスリット底部余肉部14はスリットサイド余肉部13よりも先に押圧され、スリットサイド余肉部13はスリット底部余肉部14の側である余肉部基部の側から押圧される。よって、スリットサイド余肉部13の先端(即ち、スリット12の開口端側)のめくれ上がりを回避できるので、Oリングの損傷を有効に回避でき好ましい。
しかも、スリット底部余肉部14が先に押圧されて圧縮変形することで、メスコネクタ24の嵌合孔28へのオスコネクタ26の嵌合凸部34の嵌合初期の状況からシール性を確保し、その上で、嵌合孔28への嵌合凸部34の嵌合を完了できるので、メスコネクタ24とオスコネクタ26の嵌合挿入時の流体漏れも抑制できる。
加えて、オスコネクタ26の嵌合が進む過程では、図3(b)〜(c)に示すように、スリット12が存在する故に、スリットサイド余肉部13をその間のスリット12の開口が狭くなる側に容易に撓み変形させる。よって、メスコネクタ24の嵌合孔28にオスコネクタ26の嵌合凸部34を嵌合させる際の挿入性を、スリットのないOリングに比して確実に高めることができる。更に、撓み変形するスリット12の底部形状を半円形状としたので、撓み変形の際にスリット底部に圧縮加重が集中しないようにできることから、スリット底部での割れや損傷を回避でき、好ましい。
また、本実施例では、スリットサイド余肉部13をスリット12の開口が狭くなる側に撓み変形させる際に、このスリット12への流体の流入を起こし得る。よって、スリット12に流入した流体はその液圧をスリットサイド余肉部13を拡張させる側に作用させて、装着凹所32の壁面や嵌合凸部34の壁面とのスリットサイド余肉部13の密着を図るので、シール性をより高めることができる。
上記した本実施例のOリング10を組み込んだクイックコネクタ機構20において、オスコネクタ26装着時の挿入荷重やOリング10に掛かる面圧を、スリットのないOリングを組み込んだクイックコネクタ機構と対比したところ、コネクタ挿入荷重(ピーク値)で約4割低減し、面圧にあっても約6割程度を確保できた。具体的数値を上げると、コネクタ挿入荷重のピーク値は約50Nであり、挿入性向上に求められる100N以下の荷重値条件を満足していた。また、面圧についても、水配管中にクイックコネクタ機構20を用いた際に求められる1.0MPa以上の面圧条件をも満足していた。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、スリット12については、底部形状が半円状の溝としたが、V字状の溝としたり、異形のスリットとすることもできる。この異形形状スリットとしては、図1における断面において、スリット12の底部をスリット幅より大きな径の円形底部とすることなどである。
実施例におけるOリング10を一部破断して概略を斜視にて示すと共に断面を拡大して示す説明図である。 Oリング10を装着したクイックコネクタ機構20をその要部拡大図を含んで概略的に示す説明図である。 コネクタ装着時におけるOリング10の様子を概略的に示す説明図である。
符号の説明
10…Oリング
12…スリット
13…スリットサイド余肉部
14…スリット底部余肉部
20…クイックコネクタ機構
22…ゴムホース
24…メスコネクタ
25…スプリング装着溝
26…オスコネクタ
26a…コネクタ先端
28…嵌合孔
29…段差凹所
30…ブッシュ
32…装着凹所
34…嵌合凸部
36…フランジ
38…固定スプリング
SD…スリット深さ
SW…スリット幅

Claims (4)

  1. Oリングであって、
    断面形状において、リング断面の外周の側からリング中心の軸方向に沿ってリング断面中心に向かうスリットを備え、
    該スリットは、
    前記スリットの両側のスリットサイド余肉部と、前記スリットの底部の側のスリット底部余肉部とを形成し、該スリット底部余肉部の厚みが、リング断面における太さの1/2〜3/4の範囲とされている
    Oリング。
  2. 請求項1に記載のOリングであって、
    前記スリットは、
    底部が半円状とされた溝形状とされている
    Oリング。
  3. 請求項1または請求項2に記載のOリングであって、
    前記スリットの開口端部幅は、リング断面における太さの1/4〜2/3の範囲とされている
    Oリング。
  4. 嵌合孔を有する第1部材と、該嵌合孔に嵌合する嵌合凸部を有する第2部材とをOリングによりシールするシール構造であって、
    前記Oリングは、
    断面形状において、リング断面の外周の側からリング中心の軸方向に沿ってリング断面中心に向かうスリットを備え、
    該スリットにより、前記スリットの両側のスリットサイド余肉部と、前記スリットの底部の側のスリット底部余肉部とを形成し、
    前記嵌合孔の周壁凹所または前記嵌合凸部の周壁凹所に配設され、前記嵌合孔に前記嵌合凸部を嵌合する際には前記スリット底部余肉部が前記スリットサイド余肉部より先に押圧される
    シール構造。
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