JP2007246833A - 繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法 - Google Patents

繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、繊維強化プラスチックに含まれる繊維および充填材、特に炭酸カルシウムを、その質と回収率を保持しつつ、効率的かつ低コストで分離回収する方法ならびに当該方法により回収された繊維や充填材を再利用した成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】繊維強化プラスチックの処理過程で生じる炭酸カルシウム含有溶液から炭酸カルシウムを分離回収する方法であって、前記炭酸カルシウムを含有する溶液に凝集剤として水酸化カルシウムを添加し、該炭酸カルシウムを凝集させる工程、および凝集した前記炭酸カルシウムをろ過により回収する工程、を有することを特徴とする方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化プラスチックをリサイクルする技術に関し、より詳しくは、繊維強化プラスチックに含まれる繊維および充填材を分離回収する方法ならびに当該方法により回収された回収材を再利用した成形品に関する。
繊維強化プラスチック(以下、FRPという)は、その耐熱性、機械的性質、耐候性、耐薬品性、耐水性などに優れているため、浴槽、浄化槽等の住宅機材、壁パネル、プール等の建築資材、ボート、ヨット等の小型船舶、自動車、鉄道車両、電化製品、パイプ等の工業機材、貯水槽、耐食機器等の容器、その他ヘルメット、各種スポーツ用品など種々の分野で利用されている。
上記のようにFRPは優れた汎用性を有するが、一方で、その廃棄物による地球環境汚染が問題になっており、その処理および再資源化の技術確立が求められている。
FRPを構成する不飽和ポリエステル樹脂を処理、再利用する技術については、例えば、不飽和ポリエステル樹脂を熱分解する方法(例えば、特許文献1参照)や化学的に分解または溶解する方法(例えば、特許文献2〜6参照)などがある。
しかし、不飽和ポリエステル樹脂を熱分解し、残りの充填材を回収しようとする場合には、熱分解には300℃以上の高温を要するため、充填材が熱劣化する可能性が高く、また、樹脂分解物によって充填材が腐食する可能性も考えられる。
また、特許文献7には、FRPなどの不飽和ポリエステル樹脂未硬化物をリン酸類等を含む処理溶液により溶解した後、当該未硬化物に含まれる繊維や充填材等を洗浄、ろ過により回収する方法が開示されている。しかし、多量のFRPを一度に処理した場合、すなわち、FRPの処理工程をプラント化した場合に発生する課題やその解決手段については何ら記載が為されていない。
つまり、多量のもしくはサイズの大きいFRP成形体を一度に処理すると、多量かつ塊状の繊維と当該繊維に付着した多量の充填材が回収されるが、このような繊維から効率的かつ十分に充填材を分離回収することは困難なことであり、さらには、分離回収後の繊維がガラス繊維である場合には、当該ガラス繊維を、その繊維長をできるだけ確保しながら十分に洗浄することは困難なことであり、ましてこれら工程を低コストで行うことは極めて困難なことである。
また、FRPを溶解処理する処理溶液や繊維の洗浄排水等に含まれる充填材(主に炭酸カルシウム)の回収をろ過により行う場合、その回収率を高めるためには、炭酸カルシウムの平均粒径(約2〜5μm)や粒度分布(約0.5〜10μm)を考慮して、保留粒子径が1μm以下のろ紙を使用する必要がある。しかし、回収すべき充填材の量が多い場合には、ろ紙の目詰まりが生じ易く、効率的な回収が困難となる。
さらに、FRP成形体の処理をリサイクル技術として成り立たせるためには、繊維や充填材等の回収材の回収コストをできる限り低く抑える必要があるが、特に、充填材として主に用いられている炭酸カルシウムについては、バージン材のコストが非常に低いため、その回収に多くのコストをかけることはできない。
特開平8−85736号公報 特開平8−113619公報 特開平8−134340公報 特開平8−225635公報 特開平9−221565公報 特開平9−316311公報 特開平2004−323725号公報
上記を鑑みて、本発明は、FRPに含まれる繊維および充填材、特に炭酸カルシウムを、その質と回収率を保持しつつ、低コストで効率的に分離回収する方法ならびに当該方法により回収された繊維や充填材を再利用した成形品を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(13)に記載の事項をその特徴とするものである。
(1)繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法であって、前記充填材含有溶液に凝集剤を添加し、充填材を凝集させる第1の工程、および凝集した前記充填材を回収する第2の工程、を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法。
(2)前記充填材が炭酸カルシウムであり、前記凝集剤が水酸化カルシウムであることを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
(3)繊維強化プラスチックの処理過程で生じる炭酸カルシウム含有溶液から炭酸カルシウムを分離回収する方法であって、前記炭酸カルシウム含有溶液に凝集剤として水酸化カルシウムを添加し、炭酸カルシウムを凝集させる第1の工程、凝集した前記炭酸カルシウムを回収する第2の工程、回収した前記炭酸カルシウムの凝集体を水に分散させた後、該分散水溶液に二酸化炭素をバブリングする第3の工程、および前記バブリング処理後の前記凝集体を回収する第4の工程、を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの処理過程で生じる炭酸カルシウム含有溶液から炭酸カルシウムを回収する方法。
(4)前記第3の工程において、回収した前記炭酸カルシウムの凝集体を水に分散させる前に、該凝集体をアセトンおよび水で順次洗浄することを特徴とする、上記(3)に記載の方法。
(5)前記二酸化炭素のバブリング流量が0.5〜2L/分であることを特徴とする、上記(3)または(4)に記載の方法。
(6)前記水酸化カルシウムを、前記炭酸カルシウム含有溶液中の炭酸カルシウム100重量部に対して、10〜200重量部の範囲で添加することを特徴とする、請求項(2)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記第2の工程における回収を行う前に、前記凝集体を含む溶液に希釈溶媒を添加する工程、を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記第4の工程における回収を行う前に、前記凝集体を含む溶液に希釈溶媒を添加する工程、を有することを特徴とする、上記(3)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記希釈溶媒が水またはアセトンであることを特徴とする、上記(7)または(8)に記載の方法。
(10)前記希釈溶媒を、前記凝集体を含む溶液100重量部に対して、10〜500重量部の範囲で添加することを特徴とする、上記(7)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記第2の工程における回収をろ過により行うことを特徴とする、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)前記第4の工程における回収をろ過により行うことを特徴とする、上記(3)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記ろ過に用いるろ紙の保留粒子径が3〜10μmであることを特徴とする、上記(11)または(12)に記載の方法。
本発明の分離回収方法によれば、FRPに含まれる繊維および充填材、特に炭酸カルシウムを、その質と回収率を保持しつつ、低コストで効率的に分離回収することができ、また、当該方法により回収された繊維や充填材を再利用した成形品を安価に提供することが可能となる。
本願発明の、FRPに含まれる繊維および充填材の分離回収方法は、(A)繊維強化プラスチックを処理溶液により溶解処理した後、不溶物として残った繊維と前記処理溶液とを分離回収する工程、(B)前記(A)工程で分離回収した前記繊維を水中で機械的に攪拌洗浄し、脱水した後、前記繊維と前記繊維に付着していた充填材を含む洗浄排水とを分離回収する工程、および(C)前記(A)工程で分離回収した前記処理溶液および/または前記(B)工程で分離回収した前記洗浄排水に含まれる充填材を回収する工程、を有することをその特徴とするものである。
本発明で処理対象となるFRPは、特に限定されないが、不飽和ポリエステル等を含む熱硬化性樹脂組成物、繊維および炭酸カルシウム等の充填材などを主な構成原料とする一般的なものであり、強化材として用いる上記繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ホウ素繊維、アルミニウム繊維等の無機繊維や麻、石綿、合成繊維等の有機繊維などが挙げられる。また、一般的なFRPの製造方法は、例えば、熱硬化性樹脂組成物中に繊維や充填材等を混合分散させ成形型に塗布、加熱する方法やシート状の繊維に充填材含有熱硬化性樹脂組成物を含浸した後、加熱する方法等が挙げられる。本発明は、特に、処理対象となるFRPがガラス繊維強化プラスチックである場合に好適であり、この場合、処理過程において回収材としての質(繊維長など)が落ち易いガラス繊維を、その質をできるだけ保持させたまま、効率的に回収することが可能である。
本発明の(A)工程において、FRPを溶解処理する処理溶液は、特に限定されないが、触媒および有機溶媒を含むものであることが好ましく、該触媒は、リン酸類、リン酸類の塩および金属塩からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
上記リン酸類としては、特に限定されないが、例えば、リン酸、次リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ピロ亜リン酸などが挙げられ、上記リン酸類の塩としては、例えば、上記リン酸類の陰イオンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、錫、アンモニウムなどの陽イオンとの塩が挙げられる。これらリン酸類の塩は、1個の金属と2個の水素を有する第一塩、2個の金属と1個の水素を有する第二塩、3個の金属を有する第三塩のいずれでもよく、酸性塩、アルカリ性塩、中性塩のいずれでもよい。また、溶媒への溶解性を考慮すると、リン酸類のアルカリ金属塩を触媒として用いることが好ましく、リン酸類のアルカリ金属塩はリン酸三カリウムであることがより好ましい。さらに、上記リン酸類やリン酸類の塩は、その水分含有率が低いほどFRPの処理効率を上昇させる傾向にあるため、予め水分を除去したものを用いることが好ましく、その水分含有率は5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。なお、水分含有率は、カールフィッシャー滴定法を用いて測定することが可能である。
また、上記触媒として用いうる上記金属塩としては、特に限定されないが、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩であることが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩であることがより好ましく、セシウムおよび/またはルビジウムの炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩であることが特に好ましい。
また、上記触媒の濃度は、上記有機溶媒に対し、0.001〜80重量%の範囲であることが好ましい。0.001重量%未満ではFRPの溶解速度が遅くなる傾向があり、80重量%を超えると溶解処理液を調整することが困難である。特に好ましい濃度としては、0.1〜20重量%である。また、触媒は、必ずしもすべてが有機溶媒に溶解している必要はなく、むしろ、すべてが溶解していない過飽和状態であることが好ましく、この場合、溶質は平衡状態にあり、失活した触媒を補うことができる。
また、処理溶液に用いる上記有機溶媒としては、特に限定されないが、アルコール系溶媒を含むことが好ましく、該アルコール系溶媒の沸点が170℃以上であることがより好ましい。アルコール系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、iso-ペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、さらには、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#300、ポリエチレングリコール#400(いずれも関東化学株式会社製商品名)等に例示されるポリエチレングリコールなどが挙げられ、これら溶媒は単独でも、数種類混合して用いてもよい。溶解率、安全性、コストの観点からは、メタノールやベンジルアルコールが好ましい。また、上記以外にも、アミド系、ケトン系、エーテル系、エステル系の溶媒などを混合して使用してもよい。
本発明におけるFRPの溶解処理は、例えば、上記処理溶液中にFRPを浸漬することによって行うことができ、また、処理速度を高めるために、処理液をスプレー等によって噴霧することもでき、これを高圧で吹き付けることもできる。また、FRPを処理溶液中に浸漬して処理する場合には、処理対象となるFRPを有機溶媒で腐食しないような網状の容器、例えば、網状のステンレス容器に入れて、これを処理溶液に浸すことで、繊維の回収が容易になる。また、これと同様に、上記触媒を網状のステンレス容器に充填し、これを有機溶媒中に浸しておいてもよく、これにより触媒の拡散や溶媒との接触面積が大きくなり、交換作業も容易になる。また、溶解処理時には、処理溶液に超音波振動を加えたり、窒素ガスをバブリングしてもよい。
また、一度溶解処理に供した処理溶液は、そのまま続けて使用することができ、溶解処理にかかる時間や沈殿する充填材が一定以上の値になり、処理効率が悪化したら新たな処理溶液と交換することが望ましい。また、処理溶液を循環させる方式とすることで、FRPとの接触率が向上し、溶解処理効率が向上する。
また、溶解処理時の条件としては、特に制限はないが、回収材の品質低下を防ぐ観点から、処理溶液の温度を当該溶液の凝固点以上沸点以下の温度に設定することが好ましく、250℃以下に設定することがより好ましく、200℃以下に設定することが特に好ましい。また、処理時の雰囲気は、大気中でも、窒素、アルゴンまたは二酸化炭素等の不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下または加圧下のいずれでもよい。安全性や作業の簡便性に優れる点で、大気中、常圧下であることが好ましい。すなわち、本発明におけるFRPの溶解処理では、特定の気体雰囲気や特定の気圧を設定するための装置などを必ずしも必要としない。
また、FRPを処理する際には、処理対象となるFRP成形体をそのままの大きさで処理しても、切断もしくは破砕した後に処理してもよい。本発明は、一度にkg単位以上の多量のFRP成形体を効率的かつ低コストで処理することができるため、必要以上に切断・粉砕する必要はない。処理対象となるFRPを切断・破砕する場合には、その切断・破砕片を処理装置の規模に合わせた大きさにすればよく、特に制限されないが、FRPに含まれる繊維、特にガラス繊維は、細かく切断することによって再利用が難しくなる傾向にあるため、切断・破砕片を少なくとも10mm以上(最大径)とすることが好ましく、装置の規模や切断・破砕工程、処理時間等をも考慮すると、10mm以上2m以下の範囲とすることがより好ましい。
以上のようにしてFRPを溶解処理した後は、不溶物として残った繊維と前記処理溶液を分離回収する。なお、ここで分離回収された繊維にはFRPに含まれる充填材が多量に(全充填材量の7割以上)が付着しており、また処理溶液にも充填材が含まれている。
次に、本発明における(B)工程では、上記(A)工程において不溶物として分離回収された繊維を水中で機械的に攪拌洗浄し、脱水した後、洗浄後の繊維と上記分離回収した繊維に付着していた充填材を含む洗浄排水とを分離回収する。
上記機械的な攪拌洗浄は、特に限定されないが、例えば、繊維を投入する洗浄槽と当該洗浄槽内の洗浄水を攪拌する攪拌部を有する攪拌洗浄装置、または洗浄層自身が回転することにより当該洗浄槽内の洗浄水を攪拌する攪拌洗浄装置などを用いて行うことができ、より具体的には、家庭で使用されているような洗濯機と同様の構造のものを用いることができる。また、上記脱水の方法は、特に限定されないが、遠心力を利用する方法が好ましく、例えば、上記攪拌洗浄装置の洗浄槽を高速で回転させることで槽内の繊維の脱水を行うことが可能であり、この場合、洗浄と脱水を1つの装置で連続的に行うこともできる。また、繊維は、洗浄後の回収を容易にするために、ナイロンメッシュ等の繊維製のネットなどに入れて上記攪拌洗浄に供することが望ましい。
また、攪拌洗浄の条件は、繊維を過剰に切断しないように洗浄し、充填材を分離することができればよく、特に限定されないが、繊維1kgあたり5〜10Lの洗浄水にて、15〜60分間、1〜200回転/分程度の条件で、同一方向に撹拌しても、反転させて撹拌してもよく、1〜5回洗浄することが好ましい。なお、攪拌洗浄を複数回行う場合には、回収材のコストを低減させるために、最終回の攪拌洗浄以外の回には、一度以上使用した洗浄排水をろ過や蒸留した水を再利用することが望ましい。
また、(A)工程で水に不溶な有機溶媒を含む処理溶液によりFRPの溶解処理をした場合には、分離回収された繊維を水で攪拌洗浄する前に、水と有機溶媒の双方に可溶な溶媒で置換洗浄することが好ましく、これにより溶解処理時に繊維に付着した樹脂や水に不溶な有機溶媒等を洗浄することができる。ここで用いる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールを用いることが好ましい。
以上のように、充填材等が付着した塊状の繊維を機械的に水中で攪拌洗浄し、脱水することで、回収材として有用な質(繊維長や色相)を有する繊維を効率的かつ低コストに回収することができ、また、繊維に付着した充填材を効率的に分離回収することもできる。
次に、本発明における(C)工程では、上記(A)工程で分離回収された処理溶液および/または上記(B)工程で分離回収された洗浄排水から、これらに含まれる充填材を分離回収する。なお、FRPの溶解処理により得られる充填材は、そのほとんどが上記処理溶液と洗浄排水に含まれているが、繊維や充填材を分離回収する際に用いたその他の溶媒、例えば、上記置換洗浄に用いた有機溶媒などにも充填材が含まれている場合には、ここからも同様に分離回収することが好ましい。要するに、充填材の回収率を向上させるためには、FRPの処理過程(FRPの溶解処理、繊維の分離回収処理)で生じた充填材含有溶液の全てについて、(C)工程における分離回収を行うことが望まれる。
上記(C)工程における充填材の分離回収方法としては、例えば、ろ過、蒸留、デカンテーション、遠心分離等の公知の固液分離操作により行うことができ、特に限定されないが、コストや作業性の観点からろ過により行うことが好ましく、ろ過は吸引ろ過であることがより好ましい。
ろ過により充填材を分離回収する場合には、ろ紙の目詰まりを防ぐために、上記処理溶液や洗浄排水等の充填材含有溶液に予め凝集剤を添加し、当該溶液に含まれる充填材を凝集させることが好ましい。もちろん、ろ過以外の固液分離操作により充填材を分離回収する場合にも、必要に応じて凝集剤を添加してもよい。
上記凝集剤としては、特に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、カリウム、ナトリウム等の水酸化物、塩化物、硫化物、またはこれらの水和物などの無機塩を用いることができる。また、分離回収する充填材が主に炭酸カルシウムである場合には、ろ過効率や保留率の観点から、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩化アルミニウム・六水和物、塩化カルシウム・二水和物、硫酸水素カリウム、塩化第二鉄・六水和物等を凝集剤として用いることが好ましく、炭酸カルシウムの回収率を考慮すると、水酸化カルシウムを凝集剤として用いることが特に好ましい。
つまり、水酸化カルシウムを凝集剤として用いた場合には、回収した凝集体(正確には、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの凝集体)を適宜量の水に分散させ、該分散水溶液に二酸化炭素をバブリングして、凝集剤である水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変化させた後、再度これをろ過等の固液分離操作により回収することで、凝集体の全てを炭酸カルシウムとして回収することが可能となる。一方、水酸化カルシウム以外の凝集剤を用いた場合には、例えば、回収した凝集体を水洗するなどして凝集体から凝集剤を除去することになる。
したがって、FRPに含まれる充填材が主に炭酸カルシウムであり、FRPの処理過程で生じた炭酸カルシウム含有溶液に水酸化カルシウムを凝集剤として添加する場合における上記(C)工程とその後の後処理工程は、好ましくは、(C1)炭酸カルシウム含有溶液(上記(A)工程で分離回収した処理溶液および/または上記(B)工程で分離回収した洗浄排水を含む)に凝集剤として水酸化カルシウムを添加し、該炭酸カルシウム含有溶液に含まれる炭酸カルシウムを凝集させる工程、(C2)凝集した炭酸カルシウムを回収する工程、(C3)回収した炭酸カルシウムの凝集体を水に分散させた後、該分散水溶液に二酸化炭素をバブリングする工程、および(C4)二酸化炭素によりバブリング処理した後の凝集体を回収する工程、を有するということになる。なお、上記二酸化炭素のバブリング条件としては、特に限定されないが、0.5〜2L/分の流量で、分散水溶液のpHが12〜13から6〜7程度に低下し、一定になるまでバブリングを行う。また、上記(C2)工程で回収された炭酸カルシウムの凝集体は、水に分散させる前(上記(C3)工程前)に、アセトンおよび水で順次洗浄しておくことが好ましい。また、上記(C2)工程や上記(C4)工程における炭酸カルシウム凝集体の回収は、ろ過、蒸留、デカンテーション、遠心分離等の公知の固液分離操作により行うことができ、中でもろ過により行うことが好ましい。
上記凝集剤の添加量としては、上記処理溶液や洗浄排水中の充填材濃度、ろ過保留率、ろ過効率等を考慮して適宜決定することが好ましく、特に限定されないが、上記処理溶液や洗浄排水等の充填材含有溶液中の充填材100重量部に対して、10〜200重量部添加することが好ましく、50〜150重量部添加することがより好ましい。
また、上記のような凝集剤を添加してろ過を行う場合に用いるろ紙の保留粒子径は、充填材やその凝集体の大きさ等を考慮して決定すればよく、特に限定されないが、3μm〜10μmであることが好ましく、5μm〜8μmであることがより好ましい。
また、上記(C)工程における充填材の分離回収方法がろ過である場合には、上記処理溶液や洗浄排水等の充填材含有溶液に予め希釈溶媒を混合することが好ましく、これによりろ過効率を大幅に向上させることが可能となる。もちろん、上記(C2)工程や(C4)工程における凝集体の回収をろ過により行う場合にも、当該凝集体を含む溶液に予め希釈溶媒を添加することが好ましい。なお、ろ過以外の固液分離操作により充填材もしくはその凝集体の回収を行う場合であっても、必要に応じて希釈溶媒を混合してもよい。
上記のような希釈溶媒としては、特に限定されないが、好ましくは、水、アセトン、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メタノール、ベンジルアルコール、酢酸エチルなどを用いることができ、より好ましくは、アセトンである。また、希釈溶媒の添加量は、特に限定されないが、上記処理溶液や洗浄排水等の充填材含有溶液100重量部に対して、10〜500重量部添加することが好ましい。
上記(C)工程により分離回収された充填材(上記(C4)工程により回収された炭酸カルシウム凝集体を含む)は、最後にアセトンや水等の溶媒により洗浄し、ろ過することを必要回数繰り返した後、乾燥し、溶媒を除去することで再度利用可能な質の高い回収充填材となる。
一方、上記(C)工程により充填材を分離回収した後の上記処理溶液には、FRPを構成するプラスチック原料である不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が溶解しているが、これは当該処理溶液の溶媒を公知の方法により除去することで容易に分離回収することができる。また、ここで除去された処理溶液の溶媒や上記(C)工程により充填材を分離回収した後の上記洗浄排水は、必要に応じて蒸留処理等を施すことにより、FRPの溶解処理用溶媒や繊維等の洗浄水として繰り返し使用することが可能である。
本発明の成形体は、本発明の分離回収方法によりFRPから回収した繊維および/または充填材を用いてなるものであり、これら回収材は、再度FRPの材料として使用することも、断熱材などの他用途に使用することもできる。なお、回収材のみで製造されたFRPは、バージン材のみで製造したFRPよりも強度の面で多少劣るが、バージン材やその他の充填材等を適宜添加することで十分に補うことが可能である。また、本発明による回収材のみで製造されたFRPの色相や光沢などの質感は、バージン材のみで製造したFRPと同等かそれ以上である。さらに、本発明による回収材もしくはこれを用いてなる成形体は、本発明の分離回収方法が効率的でかつ低コストであるため、安価に提供することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<(A)工程におけるFRPの溶解処理>
(実施例1〜4)
表1に示す組成の処理溶液を185Lの溶解槽に入れ、処理対象FRPとしてユニットバス壁パネル(300mm×300mm×5mm)を投入し、処理溶液の温度を190℃に保持し、FRPを溶解処理し、溶解処理が終了するまでの時間を測定した。結果を表1に示す。なお、処理溶液に用いた触媒および処理対象FRPはそれぞれ適当な大きさのステンレス製網状容器に入れて溶解槽に投入した。また、溶解処理時には、処理溶液中に40L/分の流量で窒素バブリングを行い、触媒は常に過飽和状態であった。また、実施例1および3の触媒として用いたリン酸三カリウム水和物(関東化学製)の水分除去は、300℃の乾燥機中で6時間以上加熱して行い、乾燥後の水分量をカールフィッシャー滴定法により測定した結果、1%未満であった。
Figure 2007246833
<(B)工程におけるガラス繊維の洗浄と回収>
(実施例5)
実施例3と同様にしてFRPを溶解処理した後、ステンレス製網状容器内に残ったガラス繊維とこれに付着する充填材の合計量4.0kgを繊維製のネットに入れ、エチレングリコールにより置換洗浄したものを家庭用洗濯機((株)日立製作所製、NW−42F)の水槽に投入し、40kgの水量で0.5時間機械的に攪拌洗浄し、排水した後、水槽の回転により発生する遠心力を利用して0.3時間脱水を行った。その後、同条件の攪拌洗浄と脱水を2回行い、ガラス繊維を洗浄した。この結果、一定以上の繊維長を有し、充填材などが付着していない白色のガラス繊維を得ることができた。また、その回収率は、95%であった。
(比較例1)
家庭用洗濯機による攪拌洗浄の代わりにエアーバブリングによる攪拌洗浄を行った以外は実施例5と同様にガラス繊維の洗浄を行ったが、塊状であるガラス繊維の攪拌効率が悪く、充填材の分離が不十分であった。
<(C)工程における充填材(炭酸カルシウム)の回収>
以下では、炭酸カルシウムを含む溶液からろ過によりこれを回収する場合について、凝集剤の種類および添加量、ならびに希釈溶媒の種類と添加量について検討を行った結果を述べる。
1.凝集材の種類
(実施例6〜10、参考例1)
炭酸カルシウムを水に分散させた分散水溶液(濃度4.0重量%)5gに、表2に示す各種凝集剤1gを水5gに分散させた分散液を添加した後、この混合液をスパチュラで攪拌し、5Aのろ紙(保留粒子径7μm)を用いて吸引ろ過した。その後、ろ紙上の固形物を120℃で1時間加熱乾燥し、秤量してろ過後質量を測定し、ろ過された固形分の保留率を算出した。なお、実施例6〜9および参考例1の保留率は、(ろ過後質量)×100/(分散水溶液中の炭酸カルシウム質量)で算出し、実施例10の保留率は、(ろ過後質量)×100/(分散水溶液中の炭酸カルシウム+凝集剤として添加した水酸化カルシウム質量)で算出した。結果を表2に示す。
Figure 2007246833
2.凝集剤(水酸化カルシウム)の添加量
(実施例11〜16、参考例2および3)
炭酸カルシウムを水に分散させた分散水溶液(濃度4.0重量%および10重量%)5gに、凝集剤として水酸化カルシウムを0.05g〜0.50gの範囲で添加した後、これらの液をスパチュラで約30秒撹拌して、そのまま5B(保留粒子径4μm)のろ紙を用いて吸引ろ過した。その後、ろ紙上の固形分を120℃で1h加熱乾燥し、秤量してろ過後質量を測定し、ろ過された固形分の保留率を算出した。また、溶媒がすべてろ過されるのに要した時間(ろ過時間)を測定した。なお、目詰まりして全量がろ過できなかった場合は、目詰まりするまでの時間とした。また、ここでの保留率は、(ろ過後質量)×100/(分散水溶液中の炭酸カルシウム+凝集剤として添加した水酸化カルシウム質量)で算出した。結果を表3に示す。
Figure 2007246833
3.希釈溶媒の種類と量
(実施例17〜28)
炭酸カルシウムを水に分散させた分散水溶液(濃度60重量%)に、凝集剤として水酸化カルシウムを1.50gもしくは0.30g添加し、さらに各種希釈溶媒を、炭酸カルシウム分散水溶液と併せて25.00gになるように加えた。これらの液をスパチュラで約30秒撹拌して、そのまま5Bのろ紙を用いて吸引ろ過した。ろ紙上の固形分を120℃で1h加熱乾燥し、秤量してろ過後質量を測定し、ろ過された固形分の保留率を算出した。また、溶媒がすべてろ過されるのに要した時間(ろ過時間)を測定した。さらに、ろ過により回収された固形分の色相を目視で観察した。なお、目詰まりして全量がろ過できなかった場合は、目詰まりするまでの時間とした。また、ここでの保留率は、(ろ過後質量)×100/(分散水溶液中の炭酸カルシウム+凝集剤として添加した水酸化カルシウム質量)で算出した。結果を表4に示す。
Figure 2007246833

Claims (13)

  1. 繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法であって、
    前記充填材含有溶液に凝集剤を添加し、充填材を凝集させる第1の工程、および
    凝集した前記充填材を回収する第2の工程、
    を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの処理過程で生じる充填材含有溶液から充填材を分離回収する方法。
  2. 前記充填材が炭酸カルシウムであり、前記凝集剤が水酸化カルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 繊維強化プラスチックの処理過程で生じる炭酸カルシウム含有溶液から炭酸カルシウムを分離回収する方法であって、
    前記炭酸カルシウム含有溶液に凝集剤として水酸化カルシウムを添加し、炭酸カルシウムを凝集させる第1の工程、
    凝集した前記炭酸カルシウムを回収する第2の工程、
    回収した前記炭酸カルシウムの凝集体を水に分散させた後、該分散水溶液に二酸化炭素をバブリングする第3の工程、および
    前記バブリング処理後の前記凝集体を回収する第4の工程、
    を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの処理過程で生じる炭酸カルシウム含有溶液から炭酸カルシウムを回収する方法。
  4. 前記第3の工程において、回収した前記炭酸カルシウムの凝集体を水に分散させる前に、該凝集体をアセトンおよび水で順次洗浄することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記二酸化炭素のバブリング流量が0.5〜2L/分であることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
  6. 前記水酸化カルシウムを、前記炭酸カルシウム含有溶液中の炭酸カルシウム100重量部に対して、10〜200重量部の範囲で添加することを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記第2の工程における回収を行う前に、前記凝集体を含む溶液に希釈溶媒を添加する工程、を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記第4の工程における回収を行う前に、前記凝集体を含む溶液に希釈溶媒を添加する工程、を有することを特徴とする、請求項3〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記希釈溶媒が水またはアセトンであることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記希釈溶媒を、前記凝集体を含む溶液100重量部に対して、10〜500重量部の範囲で添加することを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記第2の工程における回収をろ過により行うことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記第4の工程における回収をろ過により行うことを特徴とする、請求項3〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記ろ過に用いるろ紙の保留粒子径が3〜10μmであることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
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