JP2007246663A - 水素化処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 触媒量の増量を行うことなく、燃料基材として有用な成分及び潤滑油基材として有用な成分の双方の収率を向上させることができ、且つ、燃料基材として有用な成分の低温流動性を十分に改善できるパラフィン系炭化水素の水素化処理方法を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する水素化処理方法は、水素存在下、パラフィン系炭化水素を含む被処理物を、水素化分解能及び/又は水素化異性化能を有する第1の触媒層、及び、第1の触媒層よりも水素化分解能及び/又は水素化異性化能が高い第2の触媒層にこの順序で流通させることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、パラフィン系炭化水素の水素化処理方法に関する。
硫黄分及び芳香族炭化水素の含有量が低いクリーンな液体燃料への要求が近年急速に高まってきている。そこで、燃料製造業界においては、硫黄分を10ppmまで低減させたクリーン燃料の製造方法が種々検討されている。それらの中でも、ワックス等のパラフィン系炭化水素を触媒存在下で水素化処理(水素化分解・水素化異性化)する方法は、硫黄分を全く含まない究極のクリーン燃料の製造方法としてその期待は非常に大きい。
パラフィン系炭化水素の水素化処理は、通常、触媒を充填した反応塔にパラフィン系炭化水素と水素とを導入する方法により行われる(例えば、非特許文献1を参照)。近年では、燃料基材として有用な成分の収率向上を目指して、パラフィン系炭化水素の水素化処理方法が精力的に検討されている。例えば、燃料基材として有用な中間留分への変換度及び選択度の向上を目的として、孔容量を規定した無定形シリカ−アルミナから製造された担体と、この担体上に担持された白金とからなる触媒に被処理物(炭化水素)を接触させる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
一方、パラフィン系炭化水素を水素化処理することにより、潤滑油基材として有用な成分を得ることもできる。例えば、特定の沸点範囲のワックスを水素化異性化することにより高い転換率で潤滑油基材を得る方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、フィッシャー・トロプシュ合成法により得られる生成物を水素化分解・水素化異性化した後、中間留分と底部生成物とに分離し、底部生成物を更に水素化分解して潤滑油として有用な成分を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
「石油精製プロセス」、(社)石油学会、p.231、1998年 特開平6−41549号公報 国際公開第00/14183号パンフレット 国際公開第2004/081157号パンフレット
ところで、燃料製造プロセスの経済性向上の観点からは、パラフィン系炭化水素を水素化処理する際に、燃料基材として有用な成分への転換率と潤滑油基材として有用な成分の転換率の双方を向上させることが望ましい。更に、燃料基材として用いられる成分についてはその低温流動性が十分に改善されていることが望ましい。
しかしながら、従来の水素化処理技術は上述のように特定の成分への転換率やその性状を向上させることに目的が置かれており、上記の要求のすべてに応える有効な技術は未だ開発されていないのが実情である。なお、使用する触媒量を増量することにより転換率を向上させる方法が考えられるが、かかる方法は経済性の観点から望ましくない。
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、触媒量の増量を行うことなく、燃料基材として有用な成分及び潤滑油基材として有用な成分の双方の収率を向上させることができ、且つ、燃料基材として有用な成分の低温流動性を十分に改善できるパラフィン系炭化水素の水素化処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、パラフィン系炭化水素を流通させて水素化処理を行う反応塔において、2段以上の触媒層を設け、それらの触媒層の活性を特定の関係にした場合に、反応塔を経た炭化水素が、燃料基材として有用な成分及び潤滑油基材として有用な成分の双方を従来よりも高い濃度で含有するとともに、かかる成分のうち軽油留分の流動点も十分低くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水素化処理方法は、水素存在下、パラフィン系炭化水素を含む被処理物を、水素化分解能及び/又は水素化異性化能を有する第1の触媒層、及び、第1の触媒層よりも水素化分解能及び/又は水素化異性化能が高い第2の触媒層にこの順序で流通させることを特徴とする。
本発明でいう水素化処理には、水素化分解及び水素化異性化の双方が包含される。
また、本発明において「パラフィン系炭化水素」とは、n−パラフィンを主成分とする分岐度の低い炭化水素混合物を意味する。
本発明の水素化処理方法によれば、パラフィン系炭化水素を上記の触媒層に流通させることにより、使用する触媒量を増量させることなく、燃料基材として有用な成分への転換率及び潤滑油基材として有用な成分への転換率の双方を向上させることができ、且つ、燃料基材として有用な成分の低温流動性を十分に改善できる。
本発明によれば、上記の効果が触媒の使用量の増加なしに奏されることから、燃料基材として有用な成分及び潤滑油基材として有用な成分の収率を十分維持しつつ或いは収率を向上させつつ、触媒に含まれる高価な活性金属の含有量を低減することも可能となる。従って、本発明によれば、燃料製造プロセスにおける経済性を向上させることができる。
本発明の水素化処理方法においては、第1の触媒層及び第2の触媒層が同種の金属を含有し、かつ、第1の触媒層における金属の濃度が第2の触媒層における金属の濃度よりも低いことが好ましい。
また、上記金属が白金又はパラジウムであることが好ましい。従来の水素化処理方法で用いられる触媒は、白金又はパラジウムなどの活性金属を高濃度で含むものであり、非常に高価である。かかる高価な活性金属を含む触媒を用いる場合は、特に、本発明を適用することで経済性向上の効果がより有効に発揮される。
本発明の水素化処理方法においては、パラフィン系炭化水素を含む被処理物が、フィッシャー・トロプシュ合成法により得られるものであることが好ましい。
この場合、硫黄分および芳香族炭化水素の含有量が更に高水準で低減されたクリーン燃料を経済性よく製造することが可能となる。
本発明によれば、触媒量の増量を行うことなく、燃料基材として有用な成分及び潤滑油基材として有用な成分の双方の収率を向上させることができ、且つ、燃料基材として有用な成分の低温流動性を十分に改善できるパラフィン系炭化水素の水素化処理方法を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の水素化処理方法が実施される炭化水素油製造装置の一例を示すフロー図である。図1に示される炭化水素油製造装置100は、パラフィン系炭化水素を含む原料から、燃料基材や潤滑油基材として有用な成分を含有する炭化水素油を製造する装置である。
図1に示される炭化水素油製造装置100は、パラフィン系炭化水素を含む原料(被処理物)を水素化処理する反応塔10と、反応塔10を経た被処理物を所望の留分に分留するための蒸留塔20とを備えている。そして、反応塔10の塔頂部には被処理物を反応塔10に供給するための供給ラインL1が接続されており、さらにこのラインL1には水素が導入されるラインL2が接続されている。これらのラインを通じて反応塔10に被処理物及び水素が供給される。また、反応塔10の底部と蒸留塔20とが移送ラインL3で接続されており、反応塔10を経た被処理物はこのラインL3を通じて蒸留塔20に送られる。
本実施形態においては、反応塔10が、水素化分解能及び/又は水素化異性化能を有する第1の触媒層12、及び、第1の触媒層よりも水素化分解能及び/又は水素化異性化能が高い第2の触媒層14を塔頂部側からこの順で有している。そして、この反応塔10において、本発明の水素化処理方法が実施される。
水素化処理に供されるパラフィン系炭化水素としては、その炭素数については特に制限はないが、例えば炭素数15〜100程度の炭化水素を含むものが挙げられる。本実施形態においては、好ましくは炭素数18以上、より好ましくは炭素数20〜90のノルマルパラフィンを、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有するパラフィン系炭化水素が、水素化処理に供される。
パラフィン系炭化水素の製法についても特に制限はなく、石油系および合成系の各種パラフィン系炭化水素を被処理物にすることができる。本発明において、特に好ましいパラフィン系炭化水素として、フィッシャー・トロプシュ合成法により製造されるいわゆるFTワックスを挙げることができる。
第1の触媒層12に含まれる触媒としては、例えば、固体酸を含んで構成される担体に、活性金属として周期律表第VIII族に属する金属を担持したものが挙げられる。
担体としては、結晶性及び非結晶性固体酸のいずれも使用できる。結晶性固体酸としては、ゼオライトが挙げられ、より具体的には、HYゼオライト、超安定化Y型(USY)ゼオライト、モルデナイト、βゼオライトなどが挙げられる。これらのうち、USYゼオライトが好ましい。USYゼオライトは、Y型のゼオライトを水熱処理及び/又は酸処理により超安定化したものであり、Y型ゼオライトが本来有する20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる微細細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成されている。担体としてUSYゼオライトを使用する場合、その平均粒子径に特に制限は無いが、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、USYゼオライトにおいて、シリカ/アルミナのモル比率(アルミナに対するシリカのモル比率;以下、「シリカ/アルミナ比」という。)は10〜100であると好ましく、20〜80であるとより好ましく、25〜60であるとさらにより好ましい。特に、平均粒子径0.5μm以下、且つ、シリカ/アルミナ比30以上のUSYゼオライトを用いるのが好ましい。
非結晶性固体酸としては、例えば、シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナボリア、シリカチタニア、シリカマグネシア、カオリナイト、アルミノフォスフェイト、シリカアルミノフォスフェイトなどが挙げられる。これらのうち、シリカアルミナ、シリカジルコニア、シリカアルミノフォスフェイトが好ましい。
本実施形態において、更に好適な担体としては、USYゼオライトと、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びシリカアルミノフォスフェイトの中から選ばれる1種類以上の固体酸とを含んで構成されるものが挙げられる。これらのうち、USYゼオライトとシリカアルミナとを含んで構成されるものが特に好ましい。
触媒担体は、上記固体酸とバインダーとを含む混合物を成形した後、焼成することにより製造することができる。固体酸の配合割合は、担体全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、8〜70質量%であることがより好ましい。また、担体がUSYゼオライトを含んで構成される場合、USYゼオライトの配合量は、担体全量を基準として1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。更に、担体がUSYゼオライト及びシリカアルミナを含んで構成される場合、USYゼオライトとシリカアルミナとの配合比(USYゼオライト/シリカアルミナ)は、質量比で0.02〜0.3であることが好ましい。
バインダーとしては、特に制限はないが、アルミナ(ベーマイトなど)、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシアが好ましく、アルミナがより好ましい。バインダーの配合量は、担体全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
混合物の焼成温度は、300〜600℃の範囲内であることが好ましく、400〜550℃の範囲内であることがより好ましく、430〜500℃の範囲内であることが更に好ましい。
第VIII族の金属としては、具体的にはコバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらのうち、パラジウム又は白金を用いることが好ましい。
これらの金属は、含浸やイオン交換等の常法によって上述の担体に担持させることができる。担持する金属量は、第1の触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能が後述する第2の触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能よりも低くなるのであれば特に制限はない。例えば、第1の触媒層及び第2の触媒層が同種の金属を含有する触媒からそれぞれ構成される場合、第1の触媒層を構成する触媒における上記同種の金属の濃度が第2の触媒層を構成する触媒における濃度よりも低くなるように担持する金属量を設定できる。この場合、第1の触媒層を構成する触媒における金属の含有割合が0.2〜5.0質量%であることが好ましい。
第2の触媒層14に含まれる触媒としては、例えば、固体酸を含んで構成される担体に、活性金属として周期律表第VIII族に属する金属を担持したものが挙げられる。
担体としては、結晶性及び非結晶性固体酸のいずれも使用できる。結晶性固体酸としては、ゼオライトが挙げられ、より具体的には、HYゼオライト、超安定化Y型(USY)ゼオライト、モルデナイト、βゼオライトなどが挙げられる。これらのうち、USYゼオライトが好ましい。USYゼオライトは、Y型のゼオライトを水熱処理及び/又は酸処理により超安定化したものであり、Y型ゼオライトが本来有する20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる微細細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成されている。担体としてUSYゼオライトを使用する場合、その平均粒子径に特に制限は無いが、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、USYゼオライトにおいて、シリカ/アルミナのモル比率(アルミナに対するシリカのモル比率;以下、「シリカ/アルミナ比」という。)は10〜100であると好ましく、20〜80であるとより好ましく、25〜60であるとさらにより好ましい。特に、平均粒子径0.5μm以下、且つ、シリカ/アルミナ比30以上のUSYゼオライトを用いるのが好ましい。
非結晶性固体酸としては、例えば、シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナボリア、シリカチタニア、シリカマグネシア、カオリナイト、アルミノフォスフェイト、シリカアルミノフォスフェイトなどが挙げられる。これらのうち、シリカアルミナ、シリカジルコニア、シリカアルミノフォスフェイトが好ましい。
本実施形態において、更に好適な担体としては、USYゼオライトと、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びシリカアルミノフォスフェイトの中から選ばれる1種類以上の固体酸とを含んで構成されるものが挙げられる。これらのうち、USYゼオライトとシリカアルミナとを含んで構成されるものが特に好ましい。
触媒担体は、上記固体酸とバインダーとを含む混合物を成形した後、焼成することにより製造することができる。固体酸の配合割合は、担体全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、8〜70質量%であることがより好ましい。また、担体がUSYゼオライトを含んで構成される場合、USYゼオライトの配合量は、担体全量を基準として1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。更に、担体がUSYゼオライト及びシリカアルミナを含んで構成される場合、USYゼオライトとシリカアルミナとの配合比(USYゼオライト/シリカアルミナ)は、質量比で0.02〜0.3であることが好ましい。
バインダーとしては、特に制限はないが、アルミナ(ベーマイトなど)、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシアが好ましく、アルミナがより好ましい。バインダーの配合量は、担体全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
混合物の焼成温度は、300〜600℃の範囲内であることが好ましく、400〜550℃の範囲内であることがより好ましく、430〜500℃の範囲内であることが更に好ましい。
第VIII族の金属としては、具体的にはコバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらのうち、パラジウム又は白金を用いることが好ましい。
これらの金属は、含浸やイオン交換等の常法によって上述の担体に担持させることができる。担持する金属量は、第2の触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能が第1の触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能よりも高くなるのであれば特に制限はない。例えば、第1の触媒層及び第2の触媒層が同種の金属を含有する触媒からそれぞれ構成される場合、第2の触媒層を構成する触媒における上記同種の金属の濃度が第1の触媒層を構成する触媒における濃度よりも高くなるように担持する金属量を設定できる。この場合、第2の触媒層を構成する触媒における金属の含有割合が0.5〜10.0質量%であることが好ましい。
更に、本実施形態においては、第1の触媒層を構成する触媒と第2の触媒層を構成する触媒とが、同種の金属と、同種の担体とを含むことが好ましい。この場合、第1の触媒層を構成する触媒における金属の濃度C1(質量%)に対する第2の触媒層を構成する触媒における金属の濃度C2(質量%)の比[C2/C1]を、1.2以上とすることが好ましく、1.5以上とすることがより好ましく、2.0以上とすることがさらにより好ましい。
第1の触媒層及び第2の触媒層のそれぞれの体積は特に限定されないが、例えば、反応塔10が有する第1の触媒層及び第2の触媒層を流れ方向に垂直な平面で切断したときの断面積が切断位置によらず一定である場合、図1に示される第1の触媒層の厚みD1に対する第2の触媒層の厚みD2の比[D2/D1]を0.5〜2.0の範囲内とすることが好ましく、0.7〜1.5の範囲内とすることがより好ましい。
反応塔10での水素化処理は、次のような反応条件下で行うことができる。水素分圧としては、0.5〜10MPaが挙げられるが、1〜8MPaが好ましい。被処理物(パラフィン系炭化水素)の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h−1が挙げられるが、0.5〜5h−1が好ましい。水素/油比としては、150〜800NL/Lが挙げられ、300〜700NL/Lが好ましい。
なお、本明細書において、「LHSV(liquid hourly space velocity;液空間速度)」とは、触媒が充填されている触媒層の容量当たりの、標準状態(25℃、101325Pa)における原料油の体積流量のことをいい、単位「h−1」は時間(hour)の逆数を示す。また、水素/油比における水素容量の単位である「NL」は、正規状態(0℃、101325Pa)における水素容量(L)を示す。
また、水素化処理における反応温度としては、250〜370℃が挙げられるが、260〜350℃が好ましく、270〜340℃がより好ましい。
なお、図1に示される反応塔10では被処理物をダウンフローで供給するが、必要に応じて第1の触媒層12及び第2の触媒層14の順序を逆にし、アップフローで供給することもできる。この場合、水素化処理を経た被処理物は反応塔10の塔頂部から蒸留塔20へと移送される。
また、本実施形態においては、2段の触媒層を備える反応塔10の代わりに3段以上の触媒層を備える反応塔を用いて水素化処理を実施してもよい。この場合、かかる反応塔の各触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能が、上流側から下流側に向かって順に高くなるように設定されていればよい。具体的には、例えば、同種の金属と同種の担体とを含む触媒を反応塔に充填して各触媒層を構成する場合、下流側の触媒層に充填される触媒に含まれる金属濃度がその触媒層よりも上流側の触媒層に充填される触媒に含まれる金属濃度よりも高くなるように金属の担持量を調整する方法により実施できる。
また、上記3段以上の触媒層を備える反応塔においては、最も上流側の触媒層を構成する触媒における金属濃度Cup(質量%)に対する最も下流側の触媒層を構成する触媒における金属濃度Cdown(質量%)の比[Cdown/Cup]を、1.2以上とすることが好ましく、1.5以上とすることがより好ましく、2.0以上とすることがさらにより好ましい。
反応塔10において実施される水素化処理には、水素化分解及び水素化異性化の双方が包含される。また、水素化分解と水素化異性化の両反応が複雑に絡み合いながら進行する場合も含まれる。なお、分解とは分子量の低下を伴う化学反応を意味し、異性化とは分子量及び分子を構成する炭素数を維持したまま、炭素骨格の異なる他の化合物への転換を意味する。
蒸留塔20としては、公知の蒸留塔を使用できる。蒸留塔20では、反応塔10を経た被処理物が、例えば、ナフサ(沸点145℃以下の留分)、灯油留分(沸点145〜260℃の留分)、軽油留分(沸点260〜360℃の留分)、ワックス留分(沸点360℃以上の留分)のように所望の留分に分別される。これらの留分は、例えば、蒸留塔20に接続されたラインL4〜L7から回収できる。回収されたワックス留分は、更にメチルエチルケトン等の溶剤による脱蝋処理が施された後、潤滑油基材として利用される。
上記の炭化水素油製造装置100によれば、本発明の水素化処理方法が実施される反応塔10を備えることにより、燃料基材として有用な成分(例えば、灯油留分及び軽油留分)及び潤滑油基材として有用な成分(例えば、ワックス留分を脱蝋処理したもの)の双方を収率よく得ることができるとともに、燃料基材として有用な成分(例えば、軽油留分)の低温流動性を十分改善することができる。
本実施形態では、反応塔10を経た被処理物は、例えば、気液分離槽で、未反応水素ガスや炭素数4以下の炭化水素からなる軽質炭化水素ガスと、炭素数5以上の炭化水素からなる液状の炭化水素組成油とに分離された後、蒸留塔20に供給されてもよい。
図2は、本発明の水素化処理方法が実施される炭化水素油製造装置の他の例を示すフロー図である。図2に示される炭化水素油製造装置110は、炭化水素油製造装置100における反応塔10に代えて、移送ラインL8を介して直列に接続された2つの反応塔30及び40を備えていること以外は炭化水素油製造装置100と同様の構成を有している。炭化水素油製造装置110では、反応塔30が上述した第1の触媒層と同様の触媒層16を備え、反応塔40が上述した第2の触媒層と同様の触媒層18を備えており、これら2つの反応塔30及び40によって本発明の水素化処理が実施される。
反応塔30及び反応答40での水素化処理は、次のような反応条件下で行うことができる。水素分圧としては、0.5〜10MPaが挙げられるが、1〜8MPaが好ましい。被処理物(パラフィン系炭化水素)の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h−1が挙げられるが、0.5〜5h−1が好ましい。水素/油比としては、150〜800NL/Lが挙げられ、300〜700NL/Lが好ましい。
また、本実施形態においては、触媒層16を構成する触媒と触媒層18を構成する触媒とが、同種の金属と、同種の担体とを含むことが好ましい。この場合、触媒層16を構成する触媒における金属の濃度C3(質量%)に対する触媒層18を構成する触媒における金属の濃度C4(質量%)の比[C4/C3]を、1.2以上とすることが好ましく、1.5以上とすることがより好ましく、2.0以上とすることがさらにより好ましい。
また、反応塔30の触媒層16及び反応塔40の触媒層18のそれぞれの体積は特に限定されないが、例えば、触媒層16及び触媒層18を流れ方向に垂直な平面で切断したときの断面積が切断位置によらず一定である場合、図2に示される触媒層16の厚みD3に対する触媒層18の厚みD4の比[D4/D3]を0.5〜2.0の範囲内とすることが好ましく、0.7〜1.5の範囲内とすることがより好ましい。
また、本実施形態においては、3つ以上の反応塔を直列に接続して水素化処理を行ってもよい。この場合、各反応塔が備える触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能が、上流側から下流側に向かって順に高くなるように設定されていればよい。具体的には、例えば、同種の金属と同種の担体とを含む触媒を各反応塔に充填する場合、下流側の反応塔に充填される触媒に含まれる金属濃度がその反応塔よりも上流側の反応塔に充填される触媒に含まれる金属濃度よりも高くなるように金属の担持量を調整する方法により実施できる。
さらに、複数の触媒層を備える反応塔と1つの触媒層を備える反応塔とを組み合わせて直列に配置することも可能である。この場合も、各反応塔が備える触媒層の水素化分解能及び/又は水素化異性化能が、上流側から下流側に向かって順に高くなるように設定されていればよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<触媒の調製>
(触媒1)
平均粒子径0.3μmのUSYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比:38)、シリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:9.5)及びバインダーとしてベーマイトを重量比3:57:40で混合混練し、これを直径1/16インチ(約1.6mm)、長さ約4mmの円柱状に成型した後、450℃で3時間焼成し担体を得た。この担体に、ジクロロテトラアンミン白金(II)水溶液を含浸し、白金を担持した。これを120℃で1時間乾燥し、次いで500℃で1時間焼成することで触媒1を得た。なお、白金の担持量は、触媒全量に対して0.5質量%であった。
(触媒2)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して0.60質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒2を得た。
(触媒3)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して0.90質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒3を得た。
(触媒4)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して0.95質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒4を得た。
(触媒5)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して1.00質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒5を得た。
(触媒6)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して1.05質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒6を得た。
(触媒7)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して1.10質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒7を得た。
(触媒8)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して1.20質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒8を得た。
(触媒9)
触媒1における白金の担持量を触媒全量に対して1.40質量%となるように変更したこと以外は触媒1の調製と同様にして、触媒9を得た。
<パラフィン系炭化水素の水素化(水素化分解・水素化異性化)処理>
(実施例1)
固定床反応器の上流側(上層)に触媒3(白金濃度0.90質量%)を100g、下流側(下層)に触媒7(白金濃度1.10質量%)を100gそれぞれ充填し、反応器内に2層構成の触媒層を設けた。なお、各触媒層の形状及びサイズ(体積)は同じである。
次に、反応器の塔頂(触媒層の上層側)より、原料であるFTワックス(炭素数23〜80(沸点361℃以上)の炭化水素の含有量91質量%、ノルマルパラフィン含有量:85質量%)を200ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
すなわち、FTワックスに対して水素/油比590NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4MPaで一定となるように背圧弁を調節し、下記式(1)で定義される分解率が80質量%となるように反応温度を調節した。このときの反応温度は309℃であった。
Figure 2007246663


なお、分解率は、水素化処理を経たFTワックス(生成油及び生成ガス)のガスクロマトグラフィー測定の結果から算出した。
更に、水素化処理により得られた生成油を蒸留し、灯油留分(沸点145℃〜260℃の留分)、軽油留分(沸点260℃〜360℃の留分)、及び、未分解ワックス留分(沸点360℃以上の留分)を得た。
続いて、ワックス留分を−20℃でメチルエチルケトンを用いて脱蝋し、潤滑油基材を得た。
上記で得られた灯油留分及び軽油留分を燃料基材として有用な中間留分(沸点145℃〜360℃の留分)とし、その収率(生成油及び生成ガスの合計質量を基準とした質量%)を算出した。また、上記で得られた潤滑油基材の収率(生成油及び生成ガスの合計質量を基準とした質量%)を算出した。更に、上記で得られた軽油留分の流動点をJIS K2269試験法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2007246663

(実施例2)
固定床反応器の上流側(上層)に触媒2(白金濃度0.60質量%)を100g、下流側(下層)に触媒9(白金濃度1.40質量%)を100gそれぞれ充填し、反応器内に2層構成の触媒層を設けた。なお、各触媒層の形状及びサイズ(体積)は同じである。
次に、反応器の塔頂(触媒層の上層側)より、原料であるFTワックス(炭素数23〜80(沸点361℃以上)の炭化水素の含有量91質量%、ノルマルパラフィン含有量:85質量%)を200ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
すなわち、FTワックスに対して水素/油比590NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4MPaで一定となるように背圧弁を調節し、上記式(1)で定義される分解率が80質量%となるように反応温度を調節した。このときの反応温度は307℃であった。
その後、実施例1と同様の操作を行い、中間留分及び潤滑油基材の収率、並びに、軽油留分の流動点を求めた。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
固定床反応器の上流側(上層)に触媒1(白金濃度0.50質量%)を100g、下流側(下層)に触媒8(白金濃度1.20質量%)を100gそれぞれ充填し、反応器内に2層構成の触媒層を設けた。なお、各触媒層の形状及びサイズ(体積)は同じである。
次に、反応器の塔頂(触媒層の上層側)より、原料であるFTワックス(炭素数23〜80(沸点361℃以上)の炭化水素の含有量91質量%、ノルマルパラフィン含有量:85質量%)を200ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
すなわち、FTワックスに対して水素/油比590NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4MPaで一定となるように背圧弁を調節し、上記式(1)で定義される分解率が80質量%となるように反応温度を調節した。このときの反応温度は310℃であった。
その後、実施例1と同様の操作を行い、中間留分及び潤滑油基材の収率、並びに、軽油留分の流動点を求めた。得られた結果を表1に示す。
(実施例4)
固定床反応器の上流側(上層)に触媒4(白金濃度0.95質量%)を100g、下流側(下層)に触媒6(白金濃度1.05質量%)を100gそれぞれ充填し、反応器内に2層構成の触媒層を設けた。なお、各触媒層の形状及びサイズ(体積)は同じである。
次に、反応器の塔頂(触媒層の上層側)より、原料であるFTワックス(炭素数23〜80(沸点361℃以上)の炭化水素の含有量91質量%、ノルマルパラフィン含有量:85質量%)を200ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
すなわち、FTワックスに対して水素/油比590NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4MPaで一定となるように背圧弁を調節し、上記式(1)で定義される分解率が80質量%となるように反応温度を調節した。このときの反応温度は311℃であった。
その後、実施例1と同様の操作を行い、中間留分及び潤滑油基材の収率、並びに、軽油留分の流動点を求めた。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
固定床反応器に触媒5(白金濃度1.00質量%)を200g充填し、反応器内に単層の触媒層を設けた。なお、この触媒層は、実施例1における2層構成の触媒層と同形状、同サイズ(体積)である。
次に、反応器の塔頂(触媒層の上層側)より、原料であるFTワックス(炭素数23〜80(沸点361℃以上)の炭化水素の含有量91質量%、ノルマルパラフィン含有量:85質量%)を200ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
すなわち、FTワックスに対して水素/油比590NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4MPaで一定となるように背圧弁を調節し、上記式(1)で定義される分解率が80質量%となるように反応温度を調節した。このときの反応温度は312℃であった。
その後、実施例1と同様の操作を行い、中間留分及び潤滑油基材の収率、並びに、軽油留分の流動点を求めた。得られた結果を表1に示す。
表1に示されるように、下層の触媒層における白金濃度を上層における白金濃度よりも高めた水素化触媒でFTワックスを水素化処理する実施例1〜4の水素化処理方法によれば、比較例1の水素化処理方法に比べて中間留分及び潤滑油基材の双方の収率を向上させるとともに軽油留分の流動点を改善できることが確認された。また、上層の白金濃度に対する下層の白金濃度の比[下層濃度]/[上層濃度]を1.2以上とした実施例1〜3は、上記の効果が極めて高水準で得られることが確認された。
本発明の水素化処理方法を実施する炭化水素油製造装置の一例を示すフロー図である。 本発明の水素化処理方法を実施する炭化水素油製造装置の他の例を示すフロー図である。
符号の説明
10,30,40…反応塔、12…第1の触媒層、14…第2の触媒層、16…触媒層(第1の触媒層)、18…触媒層(第2の触媒層)、20…蒸留塔、100,110…炭化水素油製造装置。

Claims (4)

  1. 水素存在下、
    パラフィン系炭化水素を含む被処理物を、
    水素化分解能及び/又は水素化異性化能を有する第1の触媒層、及び、前記第1の触媒層よりも水素化分解能及び/又は水素化異性化能が高い第2の触媒層にこの順序で流通させることを特徴とする水素化処理方法。
  2. 前記第1の触媒層及び前記第2の触媒層が同種の金属を含有し、かつ、前記第1の触媒層における前記金属の濃度が前記第2の触媒層における前記金属の濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の水素化処理方法。
  3. 前記金属が、白金又はパラジウムであることを特徴とする請求項2に記載の水素化処理方法。
  4. 前記パラフィン系炭化水素を含む被処理物が、フィッシャー・トロプシュ合成法により得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素化処理方法。

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