以下、本発明を適用したサーマルヘッドが用いられる熱転写型のプリンタ装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す熱転写型のプリンタ装置1(以下、プリンタ装置1という。)は、インクリボンの色材を昇華させて印刷媒体に熱転写する昇華型のプリンタであり、記録ヘッドに本発明を適用したサーマルヘッド2を用いる。このプリンタ装置1は、サーマルヘッド2で発生した熱エネルギをインクリボン3に印加することによって、インクリボン3の色材を昇華させて印刷媒体4に熱転写し、カラー画像や文字を印刷する。このプリンタ装置1は、家庭用のプリンタ装置であり、印刷媒体4として例えばポストカードサイズのものを印刷することができる。
ここで用いるインクリボン3は、長尺状の樹脂フィルムからなり、熱転写前のインクリボン3が供給側スプール3aに巻回され、熱転写後のインクリボン3が巻取側スプール3bに巻回された状態でインクカートリッジに収納されている。このインクリボン3は、長尺状の樹脂フィルムの一方の面に、イエローの色材で形成されたインク層と、マゼンタの色材で形成されたインク層と、シアンの色材で形成されたインク層と、印刷媒体4上に印刷された画像や文字の保存性を向上させるために、印刷媒体4上に熱転写させるラミネートフィルムからなるラミネート層とから構成される転写層3cが繰り返し並設されている。
プリンタ装置1は、図1に示すように、サーマルヘッド2と、このサーマルヘッド2と対向する位置に設けられたプラテン5と、装着されたインクリボン3の走行をガイドする複数のリボンガイド6a,6bと、インクリボン3と共にサーマルヘッド2とプラテン5との間に印刷媒体4を走行させるピンチローラ7a及びキャプスタンローラ7bと、印刷後の印刷媒体4を排紙する排紙ローラ8と、印刷媒体4をサーマルヘッド2側に搬送させる搬送ローラ9とを備える。サーマルヘッド2は、図2に示すように、プリンタ装置1の筐体側の取付部材10にネジ等の固定部材11で取り付けられ、プリンタ装置1に設けられている。
インクリボン3をガイドするリボンガイド6a,6bは、サーマルヘッド2の前後、即ちサーマルヘッド2に対してインクリボン3が進入する側とインクリボン3を排出する側とに設けられる。リボンガイド6a,6bは、重なり合ったインクリボン3と印刷媒体4とがサーマルヘッド2と略垂直に当たるように、サーマルヘッド2の前後で、サーマルヘッド2とプラテン5との間にインクリボン3と印刷媒体4とをガイドし、サーマルヘッド2の熱エネルギを確実にインクリボン3に印加できるようにしている。
リボンガイド6aは、サーマルヘッド2に対してインクリボン3が進入する側に設けられる。このリボンガイド6aは、下端側の面12が曲面となっており、サーマルヘッド2よりも上方に設けられた供給側スプール3aから供給されたインクリボン3をサーマルヘッド2とプラテン5との間に進入させる。
リボンガイド6bは、サーマルヘッド2に対してインクリボン3が排出される側に設けられる。このリボンガイド6bは、下端に平坦に形成された平坦部13と、この平坦部13のサーマルヘッド2と反対側の端部から略垂直に立ち上がり、インクリボン3を印刷媒体4から剥離させる剥離部14とを有する。このリボンガイド6bは、平坦部13で熱転写後のインクリボン3の熱を冷まし、平坦部13で熱を冷ました後、剥離部14でインクリボン3を印刷媒体4に対して略垂直に立ち上げて、インクリボン3を印刷媒体4から剥離させる。このリボンガイド6bは、ネジ等の固定部材15でサーマルヘッド2に取り付けられている。
このような構成のプリンタ装置1では、図1に示すように、プラテン5をサーマルヘッド2に押圧しながら、サーマルヘッド2とプラテン5との間に、巻取側スプール3bを巻取方向に回転させることでインクリボン3を巻取方向に走行させ、ピンチローラ7aとキャプスタンローラ7bとで印刷媒体4を挟み込み、キャプスタンローラ7b及び排紙ローラ8を排紙方向(図1中矢印A方向)に回転させることで排紙方向に印刷媒体4を走行させる。印刷する際には、先ずサーマルヘッド2からインクリボン3のイエローのインク層に対して熱エネルギを印加し、イエローの色材をインクリボン3と重なり合って走行している印刷媒体4に熱転写する。イエローの色材を熱転写した後、イエローの色材が熱転写された画像や文字を形成する画像形成部にマゼンタの色材を熱転写するため、搬送ローラ9をサーマルヘッド2側(図1中矢印B方向)に回転させて印刷媒体4をサーマルヘッド2側に逆走させ、画像形成部の始端をサーマルヘッド2と対向させ、インクリボン3のマゼンタのインク層をサーマルヘッド2と対向させる。そして、イエローのインク層を熱転写する場合と同様に、マゼンタのインク層に対しても熱エネルギを印加して、マゼンタの色材を印刷媒体4の画像形成部に熱転写させる。シアンの色材及びラミネートフィルムについても、マゼンタを熱転写する場合と同様に画像形成部に熱転写し、印刷媒体4にシアン、ラミネートフィルムを順次熱転写して、カラー画像や文字を印刷する。
このようなプリンタ装置1に用いられるサーマルヘッド2は、印刷媒体4の走行方向に対して直交方向、即ち印刷媒体4の幅方向の両端に余白を設けた縁ありの画像を印刷できる他、余白を無くした縁なしの画像を印刷することができる。サーマルヘッド2は、印刷媒体4の幅方向の両端まで色材を熱転写できるように、図3中矢印L方向に示す長さが印刷媒体4の幅よりも長くなっている。
サーマルヘッド2は、図3に示すように、インクリボン3の色材を印刷媒体4に熱転写するヘッド部20が放熱部材50に取り付けられている。このヘッド部20は、図4及び図5に示すように、ガラス層21と、ガラス層21上に設けられる発熱抵抗体22と、この発熱抵抗体22の両側に設けられる一対の電極23a,23bと、発熱抵抗体22上及び発熱抵抗体22の周囲に設けられる抵抗体保護層24とを備える。このサーマルヘッド2は、一対の電極23a,23b間から露出している発熱抵抗体22の部分が発熱部22aとなる。ガラス層21は、上面に、一対の電極23a、発熱抵抗体22、抵抗体保護層24が形成されるものであり、ヘッド部20のベース層となる。
ガラス層21は、図4及び図5に示すように、インクリボン3と対向する外側の面に略円弧状の突部25を有し、内側の面に溝部26が設けられている。このガラス層21は、例えば軟化点が500℃程度のガラスで略矩形状に形成されている。突部25は、ガラス層21の幅方向の略中央、長さ方向(図2中L方向)に略半円柱状に形成されている。ガラス層21は、インクリボン3と対向する面に略円弧状の突部25を設けることで、突部25上に設けられた発熱部22aのインクリボン3に対する当たりを良くする。これにより、サーマルヘッド2では、発熱抵抗体22の発熱部22aから発生した熱エネルギがインクリボン3に適切に印加できるようになる。
なお、突部25の中央部25aは、略平坦となっていてもよい。また、このガラス層21は、ガラスに代表される所定の表面性や熱特性等を有する材質であればよく、ここでいうガラスの概念には、人工水晶や人造ルビー、人造サファイヤ等の合成宝石や人造石、又は高密度セラミック等を含むものである。
ガラス層21の内側の面に設けられる溝部26は、図4及び図5に示すように、突部25上にサーマルヘッド2の長さ方向(図4中L方向)に略直線状に設けられた発熱部22aの列22bと対向し、発熱部22aに向かって凹状に形成されている。そして、ガラス層21では、突部25と溝部26との間を発熱部22aから発生した熱エネルギを蓄熱する蓄熱部27としている。
ガラス層21では、溝部26を設けることによって、ガラスよりも熱伝導率が低いという空気の特性により、層全体に熱エネルギが伝わらず、発熱部22aと溝部26との間の蓄熱部27に熱エネルギを蓄熱しやすくなる。ガラス層21では、溝部26を設けることによって、層全体に熱エネルギが放熱されないため、発熱部22aから発生した熱エネルギの放熱を抑えることができ、インクリボン3側への熱量を多くすることができる。これにより、このガラス層21では、サーマルヘッド2の熱効率を向上させることができる。また、ガラス層21では、蓄熱部27に蓄熱された熱エネルギにより、印刷媒体4に色材を熱転写する際に、省電力で直ちに色材を昇華温度まで上げることができるため、サーマルヘッド2の熱効率を良好にすることができる。また、ガラス層21では、溝部26を形成することによって、蓄熱部27の厚みが薄くなり、蓄熱部27の蓄熱量が少なくなるため、短時間で放熱できるようになり、発熱部22aを発熱させないときには、サーマルヘッド2の温度を直ちに下げることができる。以上のことから、ガラス層21では、溝部26を設けることによって、サーマルヘッド2の熱効率及び応答性を向上させることができる。これにより、サーマルヘッド2では、応答性が良好であることから画像や文字がぼけたりといった不具合が生じることなく、省電力で高速に高品位な画像や文字を印刷することができる。
熱エネルギを発生する発熱抵抗体22は、図5に示すように、ガラス層21の突部25側の面に形成されている。この発熱抵抗体22は、例えばTa−NやTa−SiO2等の高抵抗で耐熱性を有する材料で形成されている。発熱抵抗体22の一対の電極23a,23b間から露出し、発熱する発熱部22aは、突部25上に略直線状に設けられ、熱エネルギを分散させるため、熱転写させたいドットサイズよりもやや大きく、略矩形又は正方形状に形成されている。この発熱抵抗体22は、ガラス層21上にフォトリソグラフィ技術でパターン形成する。
発熱抵抗体22の両側に設けられる一対の電極23a,23bは、発熱抵抗体22に詳細を図示しない電源からの電流を発熱部22aに供給し、発熱部22aを発熱させる。一対の電極23a,23bは、例えばアルミニウム、金、銅等の電気伝導性の良い材料で形成されている。この一対の電極23a,23bは、図3及び図6に示すように、すべての発熱部22aと電気的に接続された共通電極23aと、発熱部22a毎に別個に電気的に接続された個別電極23bとから構成され、発熱部22aを隔てて互いに隔離して設けられている。
共通電極23aは、ガラス層21の突部25を挟んで、後述する電源用フレキシブル基板80が貼り合わされる側とは反対側に設けられている。共通電極23aは、すべての発熱部22aと電気的に接続され、両端がガラス層21の短辺に沿って、電源用フレキシブル基板80が貼り合わされる側に導出され、電源用フレキシブル基板80と電気的に接続されている。この共通電極23aは、電源用フレキシブル基板80を介して、図示しない電源と電気的に接続されているリジット基板70と電気的に接続され、電源と各発熱部22aとを電気的に接続している。
個別電極23bは、ガラス層21の突部25を挟んで、後述する信号用フレキシブル基板90が貼り合わされる側に設けられている。個別電極23bは、発熱部22aに対して1対1で設けられている。この個別電極23bは、リジット基板70の発熱部22aの駆動を制御する制御回路と接続されている信号用フレキシブル基板90と電気的に接続されている。
この共通電極23a及び個別電極23bは、発熱部22aの駆動を制御する回路によって選択された発熱部22aに電流を所定の時間供給し、色材の昇華させて、印刷媒体4に熱転写できる温度まで発熱部22aを発熱させる。
なお、ヘッド部20では、ガラス層21上の全面に発熱抵抗体22を必ずしも設ける必要はなく、突部25上の一部に発熱抵抗体22を設け、共通電極23a及び個別電極23bの端部を発熱抵抗体22上に形成するようにしてもよい。
ヘッド部20の最も外側に設けられる抵抗体保護層24は、図4に示すように、発熱抵抗体22及び共通電極23aの全体、及び個別電極23bの発熱部22a側の端部を覆い、サーマルヘッド2とインクリボン3が接した際に生じる摩擦等から発熱部22a、発熱部22aの周囲に設けられた一対の電極23a,23bを保護する。この抵抗体保護層24は、高温下で高強度、耐摩耗性等の機械的特性及び耐熱性、耐熱衝撃性、熱伝導性等の熱的特性に優れた金属を含む無機材料で形成され、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、窒素(N)を含むサイアロン(商品名SIALON)で形成されている。
以上のような構成のヘッド部20では、図4及び図5に示すように、ガラス層21の内側の面に、ヘッド部20の長さ方向(図4中L方向)に略直線状に形成された発熱部22aの列22bと対向する位置に形成する溝部26の幅W1(溝部26の壁面30の延長線と天井面31aの延長線との交点の幅)が発熱部22aの長さL1と同じ又は発熱部22aの長さL1よりも大きくなるように溝部26を形成する。ガラス層21では、溝部26の幅W1が発熱部22aの長さL1と同じ又は発熱部22aの長さL1よりも大きくなるように形成することによって、サーマルヘッド2の熱効率を更に向上させることができる。
即ち、ガラス層21では、溝部26の幅W1が発熱部22aの長さL1と同じ又は発熱部22aの長さL1よりも大きくなるように形成することによって、蓄熱部27の両端の厚みが溝部26の幅W1を発熱部22aの長さL1よりも小さくなるように形成した場合と比べて薄くなる。これにより、ガラス層21では、蓄熱部27に蓄熱された熱エネルギが蓄熱部27の両端から蓄熱部27の周囲の領域、即ち溝部26の周辺部28に放熱されにくくなる。特に、ガラス層21では、溝部26の幅W1を発熱部22aの長さよりも大きくすることによって、発熱部22aと同じ長さにした場合よりも、より蓄熱部27の両端の厚みが薄くなるため、より放熱されにくくなる。このように、ガラス層21では、周辺部28への放熱が抑えられるため、インクリボン3側への熱量を更に多くすることができ、サーマルヘッド2の熱効率を更に向上させることができる。
なお、発熱部22aの長さは、例えば200μmであり、溝部26の幅は、50μm〜700μmであり、好ましくは200μm〜400μmである。
また、ガラス層21では、図5及び図10に示すように、突部25の中央部25aの曲率半径R1よりも両側25bの曲率半径R2の方が小さくなるように形成する(R1>R2)。例えば、ガラス層21では、中央部25aの曲率半径R1を例えば2.5μmとし、両側25bの曲率半径R2を例えば1.0μmとする。ガラス層21では、中央部25aの曲率半径R1よりも両側25bの曲率半径R2の方が小さくなるように突部25を形成することによって、両側25bの曲率半径R2が中央部25aの曲率半径R1よりも大きくなるように形成した場合(R1≦R2)よりも両側25bと溝部26との間のガラス層21の厚みが薄くなる、即ち蓄熱部27の両端の厚みが薄くなる。これにより、蓄熱部27では、蓄熱量が更に少なくなり、両端から溝部26の周辺部28に放熱される熱量も更に少なくなるため、熱効率を更に向上させることができる。また、このガラス層21では、中央部25aの曲率半径R1よりも両側25bの曲率半径R2の方が小さくなるように突部25を形成することによって、突部25の幅が小さくなるため、層全体を小型化することができる。
また、ガラス層21では、図5に示すように、溝部26の発熱部22a側とは反対側、即ち基端29側から壁面30が略垂直に立ち上がるように形成する。このような溝部26を有するガラス層21では、プラテン5がサーマルヘッド2を押圧した際に、突部25側から溝部26の基端29側の両端29aにかかった圧力が両端29aに集中することなく、ガラス層21の底面21aに分散されることから、プラテン5からの押圧に対して物理的強度が高くなる。これにより、ガラス層21では、プラテン5からの押圧で、両端29aが変形や破損することを防止でき、ガラス層21の変形や破損を防止することができる。
なお、ガラス層21は、図7に示すように、発熱部22aの長さ方向で相対する壁面30の間の幅が先端31側より基端29側の方が広くなるように形成してもよい。このようなガラス層21では、発熱部22aの長さ方向で相対する壁面30の間の幅が先端31側より基端29側の方が広くなっていることによって、例えば金型を使って熱プレスで溝部26を成型する場合に、離型しやすくなる。これにより、このガラス層21は、金型成型で容易に成型することができ、生産効率を向上させることができる。
また、ガラス層21では、図5に示すように、溝部26の先端31側の天井面31aの両端コーナ部31bを略円弧状にして、両端コーナ部31bの間の天井面31aが略平坦となるように溝部26を形成する。ガラス層21では、溝部26の先端31側の両端コーナ部31bを略円弧状にすることによって、プラテン5がサーマルヘッド2を押圧した際に、突部25側から両端コーナ部31bにかかった圧力が分散され、プラテン5からの押圧に対して物理的強度が高くなる。これにより、ガラス層21では、プラテン5からの押圧で溝部26の先端31側の両端コーナ部31bが変形や破損することを防止できる。
なお、図5に示すヘッド部20のガラス層21では、更に図8及び図9に示すように、溝部26の先端31の天井面31aと突部25の中央部25aの表面との間の厚み、即ち突部25の厚みT1が略一定、即ち略均一となるように、溝部26の天井面31aを突部25の中央部25aの表面にならって略円弧状に形成してもよい。ガラス層21では、図9に示すように、同心円で、溝部26の天井面31aと突部25の中央部25aとを形成することで、突部25の厚みT1が略均一となるように形成することができる。なお、突部25の厚みT1は、10μm〜100μmであり、好ましくは20μm〜40μmであり、例えば27.5μmとすることが特に好ましい。このガラス層21では、突部25の厚みT1を略均一にし、突部25の厚みT1を偏在させないようにすることによって、プラテン5から押圧された際、溝部26の両端コーナ部31bに応力が集中しないようになる。これにより、このガラス層21では、突部25の厚みT1が非常に薄くても、物理的強度が高くなる。また、ガラス層21では、突部25の厚みT1を略均一にすることで、蓄熱部27の厚みが略均一となり、蓄熱部27の厚みが偏在していないことによって、蓄熱部27の熱的バランスが良くなり、サーマルヘッド2の熱効率、応答性が良好となる。
以上のようなヘッド部20を有するサーマルヘッド2では、ガラス層21に溝部26を形成することによって、発熱部22aから発生した熱エネルギがガラス層21に放熱されにくくなり、且つ蓄熱部22aに蓄熱された熱により、省電力で発熱部22aを色材の昇華温度まで発熱させることができるため、熱効率が向上する。また、このサーマルヘッド2では、ガラス層21に溝部26を設けることによって、蓄熱部22の厚みが薄くなり、蓄熱量が少なくなるため、放熱しやすくなり、応答性が向上する。したがって、このサーマルヘッド2では、ガラス層21に溝部26を形成することによって、熱効率及び応答性が向上する。
更に、このサーマルヘッド2では、ガラス層21の溝部26の幅W1を発熱部22aの幅と同じ又は発熱部22aの長さL1よりも大きくすることによって、蓄熱部27の両端の厚みが薄くなり、蓄熱部27から放熱されにくくなり、発熱部22aから発生した熱エネルギの放熱が抑えられ、熱効率が更に向上する。
また、熱効率のことに関して言えば、このサーマルヘッド2では、ガラス層21の突部25の中央部25aの曲率半径R1よりも両側の曲率半径R2の方を小さくすることによって、蓄熱部27の両側の幅が狭くなり、更に蓄熱部27から放熱されにくくなり、発熱部22aから発生した熱エネルギの放熱が更に抑えられ、熱効率が更に向上する。
更にまた、このサーマルヘッド2では、図5に示すように、ガラス層21の溝部26を略垂直に立ち上げて、先端31側の両端コーナ部31bを円弧に形成したり、図8に示すように、突部25の厚みT1が略均一となるように形成することによって、物理的強度が向上する。このサーマルヘッド2では、ガラス層21の物理的強度が向上することによって、印刷する際に受けるプラテン5からの押圧により、単位面積当たり45kg程度の大きな圧力がガラス層21にかかってもガラス層21の変形や破損、特に厚みの薄い突部25の変形や破損を防止することができる。
以上のことから、このサーマルヘッド2では、熱効率及び応答性が良好であり、プラテン5による押圧によってガラス層21や突部25が変形や破損しないため、高品位な画像や文字を省電力で高速に印刷することができる。また、サーマルヘッド2では、図7に示すように、溝部26の壁面30の間の幅を先端31側より基端29側の方が広くなるように形成することで、例えば金型を使って熱プレスで溝部26を成型する場合に、離型しやすくなり、生産効率が向上する。
また、上述したヘッド部20のガラス層21では、図11及び図12に示すように、ヘッド部20の長さ方向(図11中L方向)に略直線状に複数並設された発熱部22aの列22bと対向して溝部26を設け、溝部26の発熱部22aの並設方向の両側に強度を補強するための第1の補強部32を設ける。この第1の補強部32は、ガラス層21の厚みを厚くして形成する。第1の補強部32の厚みT2は、突部25の厚みT1よりも厚くなっている(T2>T1)。ガラス層21は、溝部26の長さ方向の両側に突部25の厚みT1よりも厚い厚みT2を有する第1の補強部32を設けることによって、突部25を補強することができる。これにより、ガラス層21では、プラテン5から押圧された際に、プラテン5からの押圧によって、突部25が変形したり、破損することを防止できる。
また、ガラス層21には、図11及び図12に示すように、第1の補強部32の他に、この第1の補強部32の内側に、突部25の端部から第1の補強部32に向かって厚みが漸次厚くなり、厚みT3を有する更なる第2の補強部33が形成されている。これにより、ガラス層21では、第1の補強部32の他に、更に第2の補強部33を設けることによって、更に突部25が補強される。これにより、ガラス層21では、突部25の物理的強度がより高くなり、プラテン5から押圧された際に突部25が変形や破損することをより防止できる。
サーマルヘッド2では、ガラス層21の発熱部22aの並設方向の両側に第1の補強部32及び第2の補強部33を形成することによって、ガラス層21の物理的強度が向上し、印刷する際に受けるプラテン5からの押圧によって、大きな圧力がガラス層21にかかってもガラス層21の変形や破損、特に厚みの薄い突部25の変形や破損を防止することができる。
以上のようなガラス層21を有するヘッド部20は、以下のようにして製造される。先ず、図13に示すように、ガラス層21の原材料となるガラス41を用意し、次いで、図14に示すように、熱プレス等で、ガラス41を上面に突部25を有するガラス層21に成型する。
次に、詳細を図示しないが、ガラス層21の突部25が設けられた面にスパッタ等の薄膜形成技術を用いて、発熱抵抗体22となる抵抗体膜を高抵抗で耐熱性を有する材料で形成し、一対の電極23a,23bとなる導体膜をアルミニウム等の電気伝導性の良い材料で所定の厚みに形成する。
次に、図15に示すように、例えばフォトリソグラフィ等のパターン形成技術で、発熱抵抗体22及び一対の電極23a,23bをパターン形成し、一対の電極23a,23b間から発熱抵抗体22を露出させて発熱部22aを形成する。発熱抵抗体22及び一対の電極23a,23bが形成されていない部分は、ガラス層21が露出している。
次に、図16に示すように、スパッタ等の薄膜形成技術を用いて、発熱抵抗体22及び一対の電極23a,23b上に、抵抗体保護層24を例えばサイアロンで所定の厚みに形成する。
次に、図17に示すように、ガラス層21の突部25が形成された面とは反対側の面、即ちサーマルヘッド2の内側となる面に、例えばカッター42で切削して凹状の溝部26を発熱部22aの列22bに対向するように形成し、ヘッド部20を製造する。カッター42で溝部26を形成することによって、図17に示すように、ガラス層21に第1の補強部32及び第2の補強部33を一連の切削工程で形成することができる。
なお、溝部26を切削して形成した後には、溝部26の内面についた傷を除去するため、溝部26の内面にフッ酸処理を施してもよい。また、溝部26は、切削等の機械加工で形成する他、エッチングや熱プレス等で形成してもよい。
また、図7に示すような溝部26を形成する場合には、壁面30が先端31側から基端29側に向かって広がっているため、離型しやすくなることから、金型を用いて熱プレスで形成してもよい。また、溝部26を熱プレスで形成する場合には、上型で突部25を形成し、下型で溝部26を形成し、突部25と同時に溝部26を形成するようにしてもよい。
ヘッド部20は、図20に示したセラミック基板101を用いたサーマルヘッド100と比較しても、セラミック基板を用いずに全体がガラス層21で形成されているため、セラミック基板を除去して部品点数を減らすことができ、構成を簡素化することができる。また、サーマルヘッド2では、部品点数を減らすことができることによって、生産効率を向上させることができる。
以上のようなヘッド部20を有するサーマルヘッド2は、図3及び図18に示すように、放熱部材50上に接着剤層60を介してヘッド部20を設け、このヘッド部20とヘッド部20の制御回路等が設けられたリジット基板70とを電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90で電気的に接続している。サーマルヘッド2では、電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90を放熱部材50側に湾曲させることで、リジット基板70が放熱部材50の側面に配置される。
放熱部材50は、色材を熱転写する際にヘッド部20から発生した熱エネルギを効率的に放熱するものであり、例えばアルミニウム等の高い熱伝導性を有する材料で形成されている。この放熱部材50には、図3及び図18に示すように、上面に幅方向の略中央、長さ方向(図18中L方向)に亘ってヘッド部20が取り付けられる取付突部51が形成されている。また、放熱部材50には、電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90が湾曲される側の側面の上端に電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90を側面に沿って湾曲させるためのテーパ52が形成され、このテーパ52の下端にリジット基板70を側面に配置させるための第1の切欠部53が形成されている。また、放熱部材50には、信号用フレキシブル基板90に設けられた後述する半導体チップ91を放熱部材50側に配置できるように第2の切欠部54が形成されている。
放熱部材50の取付突部51には、図19に示すように、接着剤層60を介してヘッド部20が取り付けられている。この接着剤層60は、熱伝導性を有し、弾性を有する接着剤で形成されている。接着剤層60は、熱伝導性を有しているため、ヘッド部20から発生した熱を放熱部材50に効率的に放熱することができる。また、接着剤層60は、弾性を有しているため、放熱部材50とヘッド部20との熱膨張係数の違いにより、ヘッド部20と放熱部材50とが異なる膨張、収縮を起こしても、ヘッド部20が発熱した際に放熱部材50からヘッド部20が剥がれないようにすることができる。接着剤層60の厚みは、例えば50μm程度である。
この接着剤層60は、図19に示すように、熱伝導性を有する樹脂、例えば加熱硬化型で、液状のシリコーンゴム等で形成され、高硬度で熱伝導性を有するフィラー61が含有されている。含有されているフィラー61は、粒状又は線状の例えば酸化アルミニウムである。この接着剤層60は、フィラー61が含有されていることによって、フィラー61がヘッド部20と放熱部材50との間のスペーサとして機能し、プラテン5から押圧されたヘッド部20によって圧縮されず、ガラス層21の基端29側の端部29aが放熱部材50側にくぼまないように一定の厚みを維持できる。これにより、この接着剤層60では、フィラー61により厚みを一定に維持できるため、ヘッド部20がプラテン5から押圧された際に、突部25から溝部26の基端29側の両端29aにかかった圧力がガラス層21の底面21aに分散され、ガラス層21の底面21a全体で圧力を受けることができるようになる。また、この接着剤層60は、フィラー61が転動することによって、プラテン5からかかった圧力を底面21aと平行方向に逃がすことができる。以上のように、サーマルヘッド2では、プラテン5からガラス層21に大きな圧力がかかっても、ガラス層21が放熱部材50側にくぼむことを防止でき、ガラス層21が変形や破損することを防止できる。
なお、接着剤層60に含有させるフィラー61は、接着剤層60の厚みと同じ又は接着剤層60の厚みよりも大きい直径を有するものであってもよい。接着剤層60では、厚みと同じ又は厚みよりも大きい直径を有するフィラー61を含有することにより、このフィラー61により、プラテン5からヘッド部20が押圧された際にヘッド部20によって圧縮されず、より厚みを一定に維持することができ、ガラス層21の変形や破損をより防止することができる。
図3に示す放熱部材50の側面に配置されるリジット基板70には、電源から電流をヘッド部20に供給する図示しない電源用の配線と、複数の電子部品が実装されたヘッド部20の駆動を制御する図示しない制御回路とが設けられている。リジット基板70には、図3に示すように、電源線や信号線等となるフレキシブル基板71が電気的に接続されている。リジット基板70は、放熱部材50の側面の第1の切欠部53に配置され、両端がネジ等の固定部材72で放熱部材50に固定されている。
リジット基板70と電気的に接続される電源用フレキシブル基板80は、図3及び図6に示すように、一端がリジット基板70の図示しない電源用の配線と電気的に接続され、他端がヘッド部20の共通電極23aと電気的に接続され、ヘッド部20の共通電極23aとリジット基板70の配線とを電気的に接続し、各発熱部22aに電流を供給している。なお、電源用フレキシブル基板80は、共通電極23aとの間に、導電性粒子を含む絶縁樹脂材料からなるフィルム、例えば異方性導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介在させて、共通電極23aと電気的に接続するようにしてもよい。電源用フレキシブル基板80と共通電極23aとをACFで電気的に接続することによって、発熱部22aで発生した熱エネルギが共通電極23aを介して電源用フレキシブル基板80側に放熱されることを防止することができる。
リジット基板70の制御回路と電気的に接続される信号用フレキシブル基板90は、図3及び図6に示すように、一端がリジット基板70の図示しない制御回路と電気的に接続され、他端がヘッド部20の個別電極23bと電気的に接続される。この信号用フレキシブル基板90は、サーマルヘッド2の長さ方向(図3中L方向)に複数並設されている。
各信号用フレキシブル基板90には、図6及び図18に示すように、一方の面に、ヘッド部20の各発熱部22aを駆動させる駆動回路が設けられた半導体チップ91が設けられ、同一面のヘッド部20との接続側に半導体チップ91と各個別電極23bとを電気的に接続する接続端子92が設けられている。
各信号用フレキシブル基板90に設けられている半導体チップ91は、図18に示すように、信号用フレキシブル基板90の内側に配置される。この半導体チップ91は、図6に示すように、リジット基板70の制御回路から送られてきた印刷データに対応したシリアル信号をパラレル信号に変換するシフトレジスタ93と、発熱部22aの発熱の駆動を制御するスイッチング素子94とを有する。シフトレジスタ93は、印刷データに対応したシリアル信号をパラレル信号に変換し、変換されたパラレル信号をラッチする。スイッチング素子94は、各発熱部22aに設けられた個別電極23b毎に設けられる。シフトレジスタ93でラッチされたパラレル信号は、スイッチング素子94のオンオフを制御して、各発熱部22aに対する電流供給及び供給時間等を制御して、発熱部22aの発熱を駆動制御する。
接続端子92は、図6に示すように、発熱部22aと1対1で設けられた各個別電極23bに対応して設けられ、個別電極23bと半導体チップ91とを電気的に接続している。接続端子92と個別電極23bとは、図4に示すように、個別電極23b側のガラス層21と信号用フレキシブル基板90との間に、導電性粒子を含む絶縁樹脂材料からなるフィルム95、例えば異方性導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を挟み、このACFを介して電気的に接続される。サーマルヘッド2では、ヘッド部20の個別電極23bと信号用フレキシブル基板90の接続端子92を絶縁樹脂材料からなるACFで接続することによって、発熱部22aの近傍で信号用フレキシブル基板90を接続しても、発熱部22aで発生した熱エネルギが個別電極23bを介して信号用フレキシブル基板90側に放熱されることを防止でき、熱効率の低下を抑えることができる。これにより、サーマルヘッド2では、ヘッド部20のガラス層21に溝部26を設け、更に個別電極23bと信号用フレキシブル基板90との接続をACFで行うことによって、発熱部22aの熱エネルギの放熱が更に抑えられ、熱効率を更に向上させることができる。また、サーマルヘッド2では、ACFで接続することによって、個別電極23bを介して信号用フレキシブル基板90側に発熱部22aの熱エネルギが放熱されることを防止できるため、信号用フレキシブル基板90上に設けられている半導体チップ91を熱から保護することができる。
なお、接続端子92と個別電極23bとの電気的接続は、ACF等のフィルム95に代えて導電性ペースト等の樹脂を有した熱伝導性の低い材料で電気的に接続してもよい。また、サーマルヘッド2では、半導体チップ91を外側に配置するようにしてもよい。
また、サーマルヘッド2では、放熱部材50と、リジット基板70や電源用フレキシブル基板80、信号用フレキシブル基板90との間に絶縁部材を介在させて、放熱部材50と半導体チップ90との間、及びリジット基板70と放熱部材50との間の電気的接触、機械的接触を防ぐようにしてもよい。
以上のように、サーマルヘッド2では、ヘッド部20の個別電極23bとリジット基板70の制御回路とを電気的に接続する信号用フレキシブル基板90上にシリアル信号をパラレル信号に変換するシフトレジスタ93を有する半導体チップ91を設けることによって、リジット基板70と信号用フレキシブル基板90との間をシリアル伝送にすることができ、電気的な接続点の数を減らすことができる。
以上のような構成のサーマルヘッド2では、ヘッド部20とリジット基板70とを電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90で接続することによって、リジット基板70をヘッド部20の周辺に自由に配置することができる。サーマルヘッド2では、図3及び図18に示すように、半導体チップ91を放熱部材50の第2の切欠部54に対向させ、半導体チップ91が内側となるように、電源用フレキシブル基板80及び信号用フレキシブル基板90を放熱部材50のテーパ52に沿って湾曲させ、リジット基板70を放熱部材50の第1の切欠部53に配置させる。これにより、サーマルヘッド2では、リジット基板70を放熱部材50の側面に配置することで、小型化することができ、プリンタ装置1全体を小型化することができる。したがって、このサーマルヘッド2では、プリンタ装置1、特に家庭用のプリンタ装置に要求されている小型化を実現することができる。
また、サーマルヘッド2では、放熱部材50上に接着剤層60を介して、ヘッド部20を設けるだけであるため、構成が簡素化され、容易に製造することができ、生産効率を向上させることができる。また、サーマルヘッド2では、半導体チップ91を内側に配置することによって、半導体チップ91を静電気から保護することができる。
サーマルヘッド2では、半導体チップ91を内側に配置し、リジット基板70を放熱部材50の側面に配置して、小型化できることによって、図1及び図2に示すように、印刷媒体4の進入側のリボンガイド6aを近接させて配置することができる。これにより、このサーマルヘッド2を用いたプリンタ装置1では、インクリボン3及び印刷媒体4とをサーマルヘッド2とプラテン5との間に進入する直前までガイドすることができ、サーマルヘッド2とプラテン5との間に適切に進入させることができる。したがって、このプリンタ装置1では、インクリボン3や印刷媒体4をサーマルヘッド2とプラテン5との間に適切に進入させることにできることによって、サーマルヘッド2に対してインクリボン3や印刷媒体4が略垂直に当たるようになり、サーマルヘッド2の熱エネルギがインクリボン3に適切に印加されるようになる。また、このサーマルヘッド2では、小型化できることによって、近傍を走行するインクリボン3や印刷媒体4の走行路の設計に自由度を持たせることができる。
また、このサーマルヘッド2では、信号用フレキシブル基板90に半導体チップ91を設けているため、ヘッド部20のガラス層21に半導体チップ91を設ける必要がなくなるため、ガラス層21を小さくすることができ、コストを下げることができる。
以上のようなサーマルヘッド2を用いたプリンタ装置1では、画像や文字を印刷する際に、図1及び図2に示すように、サーマルヘッド2に対してインクリボン3と印刷媒体4とをプラテン5で押圧しながら、サーマルヘッド2とプラテン5との間にインクリボン3と印刷媒体4とを走行させる。
この際には、サーマルヘッド2には、プラテン5から単位面積当たり約45kg程度の大きな力がかかるが、上述したように、図5に示すように、ガラス層21の溝部26を略垂直に立ち上げて、先端31側の両端コーナ部31bを円弧に形成したり、図8に示すように、突部25の厚みT1が略均一となるように形成したり、図11に示すように、ヘッド部20の長さ方向の両端に第1の補強部32及び第2の補強部33を設けたり、図19に示すように、ヘッド部20と放熱部材50との間の接着剤層60にフィラーを入れることによって、物理的強度が向上し、プラテン5からの押圧によって、ガラス層21が変形や破損することが防止されている。
そして、サーマルヘッド2とプラテン5との間を走行する印刷媒体4に対して、インクリボン3の色材を熱転写する。色材を熱転写する際には、リジット基板70の制御回路に送られた印刷データに対応したシリアル信号を信号用フレキシブル基板90に設けられた半導体チップ91のシフトレジスタ93でパラレル信号に変換し、変換されたパラレル信号をラッチして、ラッチされたパラレル信号で個別電極23b毎に設けたスイッチング素子94のオン又はオフする時間を制御する。サーマルヘッド2では、スイッチング素子94がオンされると、そのスイッチング素子94に接続されている発熱部22aに所定の時間電流が流れ、発熱部22aが発熱し、インクリボン3に発生した熱エネルギを印加して、色材を昇華させて印刷媒体4に熱転写する。スイッチング素子94がオフされると、そのスイッチング素子94に接続されている発熱部22aに電流が流れず、発熱部22aが発熱しないため、インクリボン3に熱エネルギが印加されず、色材が印刷媒体4に熱転写されない。プリンタ装置1では、印刷データの1ライン毎のシリアル信号がサーマルヘッド2の制御回路から信号用フレキシブル基板90の半導体チップ91に送られ、上述した動作を繰り返して、画像形成部にイエローを熱転写する。イエローを熱転写した後は、同様に画像形成部にマゼンタ、シアン、ラミネートフィルムを順次熱転写して、1枚の画像を印刷する。
インクリボン3の色材を熱転写する際には、サーマルヘッド2のヘッド部20のガラス層21に発熱部22aの長さL1と同一又は発熱部22aの長さL1よりも大きい幅W1を有する溝部26が設けられているため、発熱部22aから発生した熱エネルギがガラス層21側に放熱されにくく、ガラス層21の蓄熱部27に蓄熱された熱エネルギが溝部26の周辺部28に放熱されにくいため、インクリボン3に対する熱量が多くなる。また、サーマルヘッド2では、ガラス層21の突部25の中央部25aの曲率半径R1よりも両側25bの曲率半径R2を小さくすることによって、蓄熱部27に蓄熱された熱エネルギが周辺部28に更に放熱されにくくなる。これにより、サーマルヘッド2では、ガラス層21の蓄熱部27に蓄熱された熱エネルギによって、発熱部22aの温度が上がりやすくなる。以上のことから、このサーマルヘッド2では、熱効率が良好となる。また、このサーマルヘッド2では、ガラス層21に溝部26を設けることによって、ガラス層21の蓄熱量が少なくなるため、発熱部22aを発熱させないときには、温度が直ちに下がり、応答性が良好となる。これにより、このプリンタ装置1では、熱効率及び応答性を良好にすることができるため、省電力で高品位な画像や文字を高速印刷することができる。
以上のように、サーマルヘッド2は、小型化され、プラテン5からの押圧によって、ガラス層21が変形や破損せず、熱効率及び応答性も良好であるため、家庭用のプリンタ装置1においても、省電力で高品位な画像や文字を高速に印刷することができる。
なお、サーマルヘッド2は、上述では家庭用のプリンタ装置1でポストカードを印刷する例に挙げたが、家庭用のプリンタ装置1に限らず、業務用にプリンタ装置にも適用でき、大きさも特に限定されず、ポストカードの他に、Lサイズのフォト用紙や普通紙等にも適用でき、このような場合にも高速印刷することができる。
1 プリンタ装置、2 サーマルヘッド、3 インクリボン、4 印刷媒体、5 プラテン、20 ヘッド部、21 ガラス層、22 発熱抵抗体、22a 発熱部、23a 共通電極、23b 個別電極、24 抵抗体保護層、25 突部、26 溝部、27 蓄熱部、28 周辺部、29 基端、30 壁面、31 先端、31a 天井面、31b 両端コーナ部、32 第1の補強部、33 第2の補強部、50 放熱部材、60 接着剤層、61 フィラー、70 リジット基板、80 電源用フレキシブル基板、90 信号用フレキシブル基板、91 半導体チップ、92 接続端子、93 シフトレジスタ、94 スイッチング素子、95 フィルム