特許文献1に記載の医療用チューブは、錘が取り付けられた先端部分が重力によって曲がるのを利用して体内腔の屈曲した経路を進行する。このため、経路の屈曲方向が変化する毎に患者の姿勢を変化させて、医療用チューブの曲げ方向を経路の屈曲方向に合わせる必要があり、患者への負担が増加するおそれがある。これに対して、特許文献2に記載の医療用チューブは、操作ワイヤを引っ張り操作することによって先端部分が能動的に所望の方向に曲がるので、患者の姿勢を一定に保ったままで屈曲した経路を医療用チューブが進行することができる。しかし、軟質樹脂材料で形成された先端部分と硬質樹脂材料で形成された本体部分とをつなぎ合わせて医療用チューブを作製するために、製造コストが高くなってしまう。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、安価に作製でき、かつ体内腔の屈曲した経路を容易に進行することのできる医療用チューブを提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用チューブの特徴は、主ルーメンが内部に形成された本体管部と、前記本体管部の外径よりも小さい外径を有し、且つ前記本体管部を形成する材質と同一の材質で前記本体管部の一端に一体的に形成された誘導管部とを備え、前記誘導管部および前記本体管部の軸心から偏倚した径方向位置にて前記誘導管部から前記本体管部にかけて軸方向に沿って操作ワイヤ用ルーメンが形成され、この操作ワイヤ用ルーメン内に、一端が前記誘導管部に固定された操作ワイヤを挿通したもので医療用チューブを構成したことにある。この場合、前記誘導管部の外周を覆うように、1つまたは複数の錘が取り付けられているものであるとよい。
上記した本発明の医療用チューブは、本体管部とこの本体管部の一端につながる誘導管部を有する。また、誘導管部は本体管部よりも外径が小さい。このため、誘導管部は本体管部に比べて剛性が低く、曲がりやすくなっている。また、誘導管部から本体管部にかけて軸方向に沿って操作ワイヤ用ルーメン形成されているが、この操作ワイヤ用ルーメンは、誘導管部および本体管部の軸心から偏倚した径方向位置にて形成される。したがって、操作ワイヤルーメン内を挿通する操作ワイヤに張力を付与することによって、操作ワイヤの一端が固定される誘導管部に張力が軸心から偏倚した状態で付与されて、誘導管部を能動的に曲げることができる。よって、誘導管部を先頭に医療用チューブを体内腔に入れて、経路の曲がり具合に応じて操作ワイヤに張力を付与して誘導管部を曲げることにより、屈曲した経路中を医療用チューブが容易に進行することができる。ここで、誘導管部は本体管部と同一の材質で一体的に形成されているので、誘導管部と本体管部とを別々に作製してつなぎ合わせるなどの作業を要せず、安価に作製できる。
この場合、本発明の医療用チューブは、複数の前記操作ワイヤ用ルーメンが前記誘導管部から前記本体管部にかけて形成され、複数の前記操作ワイヤ用ルーメンのうちの少なくとも2つ以上に前記操作ワイヤが挿通されているものであるとよい。こうすることにより、複数の操作ワイヤのそれぞれに張力を付与して様々な方向に誘導管部を曲げることができる。操作ワイヤが挿通された操作ワイヤ用ルーメンの適切な数は、2〜4個であり、誘導管部および本体管部の周方向に80°〜180°の間隔をおいて形成し、さらには等間隔をおいて形成するのがよい。
また、本発明の医療用チューブは、複数の前記操作ワイヤ用ルーメン内に挿通された操作ワイヤの他端に接続され、前記操作ワイヤに張力を付与する張力付与手段をさらに備えるものとするのがよい。この張力付与手段によって一端側が誘導管部に固定された操作ワイヤを引っ張ることにより、操作ワイヤに張力が付与されて、誘導管部を所望の方向に曲げることができる。また、一つの張力付与手段でそれぞれの操作ワイヤの張力を調整することができるので、便宜である。
前記張力付与手段は、複数の前記操作ワイヤ用ルーメン内に挿通されたそれぞれの前記操作ワイヤの他端が個別に接続される複数の操作手段を有するものであるとよい。操作手段を個別に操作することによって、操作手段に対応する操作ワイヤに張力が付与されて、所望の方向に誘導管部を曲げることができる。また、複数の操作手段を同時に操作して複数の操作ワイヤに同時に張力を付与することにより、誘導管部の曲げ方向を調整してより様々な方向に誘導管部を曲げることができる。
また、前記張力付与手段は、複数の前記操作ワイヤ用ルーメン内に挿通された全ての前記操作ワイヤの他端が接続されるとともに、操作状態に応じて所定の操作ワイヤに張力を付与する操作手段を有するものであってもよい。例えば、操作手段をジョイスティックのような操作レバーとし、これを自在方向に傾倒させて各操作ワイヤの張力を調整するように構成することもできる。こうすることにより、全ての操作ワイヤが一つの操作手段で操作でき、誘導管部の曲げ操作をより簡単に行うことができる。
以下、本発明に係る医療用チューブについて、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の医療用チューブとしてのイレウスチューブの全体を示す正面図である。図においてイレウスチューブ100は、本体管部10および誘導部20を有している。本体管部10は、例えば長さが250〜300cmで外径が6mmの長尺形状とされ、内部に複数のルーメンが軸方向に形成されている。本体管部10の基端側は3本の分岐管(第一分岐管10a,第二分岐管10b,第三分岐管10c)に分岐している。また、本体管部10の基端に近い部分からは接続チューブ40の一端が接続され、この接続チューブ40の他端は張力付与装置50に接続している。
イレウスチューブ100の誘導部20は、イレウスチューブ100を経鼻的または経口的に体内腔に挿入するときに先頭になって体内腔を進み、本体管部10を患部まで誘導する部分であり、本体管部10の先端側(図示左端側)に設けられている。本体管部10の図示左方寄りの外周には、バルーン30が取り付けられている。このバルーン30は、後述するバルーンルーメンから流体の供給を受けて膨張し、胃よりも下流の部分(例えば小腸や十二指腸など)の内壁に当接するものである。なお、バルーン30は、イレウスチューブ100に複数個(例えば2個)取り付けられていてもよい。また、本体管部10の外周には、複数の吸入孔11が設けられている。さらに、本体管部10のバルーン30が取り付けられている部分よりも図示左方側の外周には、イリゲーション側孔12が設けられている。
図2は、図1におけるA−A断面図であり、本体管部10の径方向断面形状を示すものである。図2に示すように、本体管部10の断面略中央には、体内の内容物などを吸引して外部に排出するためのルーメンである吸引ルーメン13が形成されている。この吸引ルーメン13は、本発明における主ルーメンに相当する。また、吸引ルーメン13の図示下側には、バルーン30に流体を供給するためのルーメンであるバルーンルーメン15が形成されている。さらに、吸引ルーメン13の図示上側には、体内腔が陰圧となるのを防止するために体内腔に空気を供給するルーメンであるイリゲーションルーメン14が形成されている。イリゲーションルーメン14は、体内に造影剤などの薬液を吐出するために用いられることもある。吸引ルーメン13は、本体管部10の軸方向に沿って形成されている。そして、前述の吸入孔11が吸引ルーメン13に連通している。バルーンルーメン15は吸引ルーメン13と並行に本体管部10の軸方向に沿って2つ形成されており、バルーン30にそれぞれ連通している。イリゲーションルーメン14も吸引ルーメン13と並行に本体管部10の軸方向に沿って形成される。また、イリゲーション側孔12はこのイリゲーションルーメン14に連通している
本体管部10の基端側から分岐した3本の分岐管のうち、第一分岐管10aは本体管部10の吸引ルーメン13に、第二分岐管10bは2つのバルーンルーメン15に、第三分岐管10cはイリゲーションルーメン14に、それぞれ連通している。第一分岐管10aの端部にはコネクタ10dを介して吸引バック(図示省略)が接続される。また、図1に示すように第二分岐管10bの端部には弁10eが接続される。さらに、第三分岐管10cの端部には、逆流防止弁10fが接続される。この逆流防止弁10fは、流体が外部から第三分岐管10c側に流れるのを許容し、流体が第三分岐管10c側から外部に流れるのを遮断する。
図2に示すように、本体管部10には、吸引ルーメン13の周囲に等間隔で、第一操作ワイヤ用ルーメン16a、第二操作ワイヤ用ルーメン16bおよび第三操作ワイヤ用ルーメン16c(以下、これらを総称するときには単に操作ワイヤ用ルーメン16と呼ぶ)が軸方向に沿って形成されている。これらの操作ワイヤ用ルーメン16a,16b,16c内には、それぞれ可撓性の第一操作ワイヤ17a、第二操作ワイヤ17b、第三操作ワイヤ17c(以下、これらを総称するときには単に操作ワイヤ17と呼ぶ)が挿入されている。
図3は、図1に示すイレウスチューブ100の本体管部10および誘導部20の軸心を含む軸方向断面図であり、図4は図3における誘導部20近傍(図示B部)の拡大断面図、図5は図3における本体管部10と誘導部20との連結部近傍(図示C部)の拡大断面図である。図3および図4に示すように、誘導部20は、誘導管部21と、錘22とを備える。誘導管部21は、内部に通路21aが形成された長尺の管状部分である。通路21aは、誘導管部21の一方端側に形成された先端開口21bを経て外部に連通しているとともに、誘導管部21の他方端側で本体管部10内の吸引ルーメン13に連通している。また、誘導管部21の外周側には、軸方向に沿って複数個(本例では6個)の錘22が一定間隔を置いて取り付けられている。錘22の形状は球体に円柱状の孔を貫通させたリング形状であり、それぞれの錘22が誘導管部21の外周を覆うように配設している。これらの錘22の外周には軟質樹脂製のカバー23が被せられている。このカバー23によって、各錘22の軸方向移動が規制され、錘22は誘導管部21の所定位置に固定される。
また、図2、図3および図4からわかるように、第一操作ワイヤ用ルーメン16aは、誘導管部21および本体管部10の軸心から偏倚した径方向位置にて、誘導管部21から本体管部10にかけて軸方向に沿って形成されている。第一操作ワイヤ用ルーメン16aは、その一端(図4において左端)が誘導管部21の先端に近い位置にて閉塞され、その他端が接続チューブ40に連通している。第一操作ワイヤ17aは、その一端(図4において左端)が第一操作ワイヤ用ルーメン16aの閉塞端から突き出て、誘導管部21の管壁中に固定されている。なお、他の操作ワイヤ用ルーメンおよび操作ワイヤも、第一操作ワイヤ用ルーメン16aおよび第一操作ワイヤ17aと同様な構成となっているので、その説明を省略する。
図3および図5に示すように、誘導管部21は本体管部10と略同軸的に形成されている。また、誘導管部21の本体管部10に近い端側は、本体管部10に近づくにつれて外径が大きくなるテーパ形状となっており、本体管部10との境目で連続的に本体管部10につながるようにされている。このため、上記テーパ形状の部分も含めて誘導管部21の外径は本体管部10の外径よりも小さくされている。また、誘導管部21の管壁の肉厚は、本体管部10の管壁の肉厚よりも薄くされている。さらに、誘導管部21を形成する材質は、本体管部10を形成する材質と同一の材質とされており、本体管部10と誘導管部21とは一体的に形成される。上記材質としては、軟質な熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリウレタンやポリ塩化ビニルが好ましく用いられる。
図1に示すように、本体管部10には接続チューブ40が取り付けられている。この接続チューブ40は、その一端が第一操作ワイヤ用ルーメン16a、第二操作ワイヤ用ルーメン16b、第三操作ワイヤ用ルーメン16cのそれぞれに連通しており、その他端が張力付与装置50に接続している。操作ワイヤ用ルーメン16内の各操作ワイヤ17a,17b,17cは、この接続チューブ40内を通過して張力付与装置50に導入されている。
張力付与装置50は、図1に示すように本実施形態ではボールペンのような長尺状の形状を有している。図6は、張力付与装置50の長手方向軸を含んだ軸方向断面図、図7は図6のD−D断面図である。これらの図に示すように、張力付与装置50は、丸棒状に形成された本体51を有する。この本体51には、軸方向に形成された通路52が周方向に等間隔で3箇所形成されている。また、本体51の外周に、軸方向に沿ってスリット状に切り欠いた窓部53が形成されている。この窓部53は、それぞれの通路52に連通するように周方向に等間隔で3箇所形成され、通路52の所定部分(図6においては通路52の左半分程度の部分)が外部に開口するように、通路52に対面して設けられている。また、窓部53の幅は、通路52の幅よりも狭くされている。
本体51には操作レバー54が取り付けられている。この操作レバー54は、ガイド部54a、連結部54bおよび操作部54cを有している。ガイド部54aは、通路52内に挿入されて、通路52に沿って本体51の軸方向に移動可能とされる。連結部54bはガイド部54aから立設し、本体51の径外方に伸びて窓部53から外方に突出している。操作部54cは、連結部54bの突出部分に連結している。したがって、操作部54cを指で操作して窓部53に沿って移動させることにより、ガイド部54aを通路52内で移動させることができる。なお、操作レバー54は、3つの通路52に対応して、本体51の周方向に等間隔で3個設けられている。
図6に示すように、本体51の先端には蓋55が取り付けられている。蓋55は、内部が中空とされた砲弾形状に形成されており、径の大きい端面側が本体51の端部に接続され、径の小さい端面側には開口55aが形成される。この開口55aには、接続チューブ40の一端が取り付けられている。接続チューブ40内には3本の操作ワイヤ17a,17b,17cが挿通しているが、これらの操作ワイヤ17a,17b,17cは接続チューブ40から蓋55内の空間を経て本体51の通路52に進入している。そして、3つの操作レバー54のガイド部54aにその端部がそれぞれ固定されている。したがって、いずれかの操作部54cを指で図示右方向にスライドさせることによりその操作レバー54に固定された操作ワイヤ17を引っ張って張力を付与することができる。なお、通路52内にスプリングなどの付勢手段を配設し、操作レバー54をこの付勢手段によって付勢して、通常時は操作部54cが図6において左端側に配置するようにしてもよい。
このような構成のイレウスチューブ100において、腸閉塞の治療または診察を行うときは、まず誘導部20側から経鼻的または経口的にイレウスチューブ100を体内腔に挿入する。すると、イレウスチューブ100は食道を通って胃まで達し、さらに幽門輪を経て胃を通過しようとする。このとき、幽門輪を越えるために、施術者は張力付与装置50の操作レバー54を操作して、操作部54cを図6において右方向に移動する。すると、操作された操作レバー54に一端が接続された操作ワイヤ17が引っ張られる。このため、引っ張られた操作ワイヤ17に張力が付与され、この張力が誘導管部21に伝わる。ここで、図2に示すように、3つの操作ワイヤ用ルーメン16a,16b,16cは吸引ルーメン13の周囲に形成されており、本体管部10および誘導管部21の軸心から偏倚した位置に設けられているので、操作ワイヤ17に付与された張力は軸心からずれて誘導管部21に伝わる。したがって、誘導管部21は、張力が付与された操作ワイヤの偏倚方向に縮もうとする。
また、誘導管部21は本体管部10よりも外径が小さく管壁も薄いので、本体管部10よりも剛性が低く、曲がりやすくなっている。したがって、上記張力によって、図8に示すように、誘導部20のみが、張力が付与された操作ワイヤの偏倚方向に曲がる。このような操作によって誘導部20を所望の方向に曲げることにより、誘導部20の先端が幽門輪の方向に向く。その状態でさらにイレウスチューブ100を進行させることにより、イレウスチューブ100が幽門輪を通過することができる。その後、上記と同様な操作を行うことによって、トライツ靱帯などの屈曲した経路を持つ部位を越えて、イレウスチューブ100が小腸まで進行する。この場合において、経路の屈曲方向が変化したときは、張力付与装置50を操作する施術者は、操作すべき操作レバー54を適宜変更して経路の屈曲方向にイレウスチューブ100が向くようにする。このとき、同時に二つの操作レバー54を操作して誘導管部21の曲げ方向を調整することもできる。たとえば、2つの操作レバー54を同じ量だけ操作すれば、それぞれの操作レバー54を別個に操作したときの曲げ方向の中間の方向に誘導部20を曲げることができる。
本体管部10が小腸等に達した時点で、第二分岐管10bから流体をバルーンルーメン15に供給する。すると、流体がバルーンルーメン15を経てバルーン30に供給され、図9に示すようにバルーン30が膨張して小腸等の内壁に当接する。このため、小腸等の蠕動運動がバルーン30にも伝わり、小腸等の蠕動運動によってイレウスチューブ100が小腸等内を進行する。そして、目的の位置までイレウスチューブ100が進行する。
目的の位置までイレウスチューブ100が進行したら、第一分岐管10aに接続される吸引バックを作動させて、吸引ルーメン13内を陰圧にする。すると、吸入孔11および誘導管部21の先端開口21bから小腸等内の内容物が吸引ルーメン13内に取り込まれる。このように取り込まれた内容物は、吸引ルーメン13から第一分岐管10aを経て吸引バックに回収される。このようにして、腸閉塞の治療等を行う。
図10は、上記張力付与装置50とは別の張力付与装置60を有するイレウスチューブ100の全体を示す正面図である。この張力付与装置60の一部を断面で示した正面図を図11(a)に、平面図を図11(b)に示す。張力付与装置60は、操作スティック61とホルダー62とを備える。操作スティック61は、施術者が指でつかむ部分である操作部61aと、この操作部61aに一端が連結した連結棒部61bと、連結棒部61bの他端に取り付けられた球体61cを有する。球体61cは、図12に示すようにその表面が球面形状に形成され、連結棒部61bとの連結部分から3本のスリットS1,S2,S3が等間隔に形成されている。
図11(a)に示すように、ホルダー62は、球状の空間を形成する球状内壁62aを有している。この球状内壁62aで囲われた球状空間は、ホルダー62の上部開口62bおよび下部開口62cで外部に連通している。そして、球体61cはこの球状空間内に回転自在に配設される。このとき、球体61cに連結した連結棒部61bおよび操作部61aは、ホルダー62の上部開口62bから外部に突出される。
一方、ホルダー62の下部開口62cからは、接続チューブ40内を通過した3本の操作ワイヤ17がホルダー62内の球状空間に導入される。3本の操作ワイヤ17は、球体61cに形成されたスリットS1,S2,S3にそれぞれ埋め込まれて球体61cの表面での位置が規制されるとともに、3本のスリットS1,S2,S3の合流部に設けられる連結棒部61bに固定される。このため、操作部61aを操作して操作スティック61を傾倒させると、それに伴って球体61cが球状空間内で回転し、スリットS1,S2,S3内に収められた操作ワイヤ17のうちのいずれか一本または二本の操作ワイヤが引っ張られて張力が付与される。このようにしていずれか一本または二本の操作ワイヤに張力を付与して誘導部20を曲げることができる。このように、本例に示す張力付与装置60は、1本の操作スティック61を傾倒させて、3本の操作ワイヤ17への張力の付与を制御することができる。このとき、操作スティック61の傾倒方向と誘導部20が曲がる方向とを対応付けておけば、操作スティック61の傾倒操作によって誘導部20がどちらの方向に曲がるかを体感することができ、操作性を良好にすることができる。
また、張力付与装置は、図13のように構成することもできる。この例は、図11に示す張力付与装置60のように操作スティックを設けずに、球体自体を手のひらなどで回転操作するタイプの張力付与装置である。図13に示すように張力付与装置70は、球体71およびホルダー72を有する。球体71はその表面に3本のスリットS1,S2,S3が上記球体61cと同じように形成されている。ホルダー72は、上方に開口した半球状の空間を形成する半球状内壁72aを有している。また、半球状内壁72aの図示下部には下部開口72cが形成されている。そして、球体71は、その下半部分がホルダー72の半球状内壁72aによって形成される半球状の空間内に回転自在に収容されて、上半部分がホルダー72の上方に露出している。操作ワイヤ17は、下部開口72cから半球状の空間に導入されて、球体71の各スリットS1,S2,S3に埋め込まれる。そして、各スリットS1,S2,S3の上部合流点Oでそれぞれの操作ワイヤ17が結線される。このような構成の張力付与装置70は、手のひらで球体71の上部を転がすことによって、3本の操作ワイヤの張力を制御することができる。また、球体71の転動方向と、誘導部20が曲がる方向とを対応付けておけば、球体71の転動操作によって誘導部20がどちらの方向に曲がるかを体感することができ、操作性を良好にすることができる。
以上のように、本実施形態のイレウスチューブ100は、誘導管部21の材質を本体管部10の材質と同一の材質とし、両者を一体に形成している。そして、誘導管部21の外径を本体管部10の外径よりも小さくすることによって誘導管部21を本体管部10に対して柔らかくして、張力付与装置50,60,70の操作により操作ワイヤ17に張力が付与されたときに誘導部20のみを曲げるようにしている。このため、能動的に誘導部20が曲がる構成を持つイレウスチューブを安価に作製できる。この場合、本体管部10の外径をAとし、誘導管部21の外径をBとした場合、両者の比率A/Bは、1/2程度とするとよりよい。上記比率とすれば、本体管部10と誘導管部21とで剛性の差が顕著に現れて、誘導部20のみを確実に曲げることができる。また、本体管部10および誘導管部21の材質を硬度の低いポリウレタン等とすると、上記A/Bをそれほど大きい値としなくても、十分に本体管部10と誘導管部21との剛性の差をつけることができるので、誘導管部21の外径が小さくなり過ぎることによる耐久性の低下を防止することができる。
また、誘導管部21の外周を覆うように複数の錘22を取り付けた構成としたので、錘22によっても誘導部20を誘導していくことができる。この場合、イレウスチューブ100を錘22によって主体的に誘導し、これに誘導部20を能動的に曲げる動作を補完的に加えることによって、より一層イレウスチューブ100を患部まで誘導し易くなるという効果を奏する。また、図3に示すように、誘導管部21の基端部分の外径D1は、誘導管部21の先端部分の外径D2よりも小さくされている。このため誘導管部21の基端部分でより曲がりやすくなる。よって、操作ワイヤの僅かな操作で十分に誘導部20を曲げることができる。さらに、誘導管部21の錘22が取り付けられている外周部分の外径D3も、誘導管部21の先端部分の外径D2よりも小さくされている。したがって、錘22の外径を小さくすることが可能となり、イレウスチューブが特に狭い内腔を進入する際に、錘22が内腔の内壁に当たって患者に負担をかけることを低減することができる。また、誘導管部21から本体管部10にかけて複数の操作ワイヤ用ルーメン16a,16b,16cが形成され、各操作ワイヤ用ルーメン16a,16b,16cに操作ワイヤ17a,17b,17cが挿通されているので、複数の操作ワイヤ17a,17b,17cのそれぞれに張力を付与して様々な方向に誘導管部を曲げることができる。
また、張力付与装置50は、複数の操作ワイヤ17a,17b,17cの他端が個別に3つの操作レバー54に接続される構成であるので、3つの操作レバー54を個別に操作することによって、対応する操作ワイヤに張力が付与されて、所望の方向に誘導管部21を曲げることができる。また、張力付与装置60,70においては、全ての操作ワイヤ17a,17b,17cの他端が一つの操作手段である操作スティック61または球体71に接続されるとともに、操作手段の操作状態(操作スティック61の傾倒状態、球体71の転動状態)に応じて所定の操作ワイヤに張力を付与して誘導管部21の曲げ方向を決定することができる。したがって、全ての操作ワイヤ17a,17b,17cへの張力の付与が一つの操作手段で操作でき、誘導管部21の曲げ操作をより簡単に行うことができる。
10…本体管部、11…吸入孔、12…イリゲーション側孔、13…吸引ルーメン(主ルーメン)、14…イリゲーションルーメン、15…バルーンルーメン、16…操作ワイヤ用ルーメン、16a…第一操作ワイヤ用ルーメン、16b…第二操作ワイヤ用ルーメン、16c…第三操作ワイヤ用ルーメン、17…操作ワイヤ、17a…第一操作ワイヤ、17b…第二操作ワイヤ、17c…第三操作ワイヤ、20…誘導部、21…誘導管部、22…錘、30…バルーン、50,60,70…張力付与装置(張力付与手段)、54…操作レバー(操作手段)、61…操作スティック(操作手段)、71…球体(操作手段)、100…イレウスチューブ(医療用チューブ)