以下、本発明を更に詳細に説明する。尚、本明細書では、各種化合物が有する「基」は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していてもよいことを示す。
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)
本発明に用いるA1成分の芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、「A1成分」と略記することがある。)は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカ−ボネ−ト前駆体とを、または、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物等を反応させてなる、直鎖または分岐の熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の方法によって製造することができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カ−ボネ−ト化合物の開環重合法、プレポリマ−の固相エステル交換法等を挙げることができる。
原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノ−ルA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノ−ルA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリ−ル)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリ−ル)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等で例示されるカルド構造含有ビスフェノ−ル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエ−テル等で例示されるジヒドロキシジアリ−ルエ−テル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリ−ルスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリ−ルスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリ−ルスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
これらの中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノ−ルA]が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカ−ボネ−ト前駆体としては、カルボニルハライド、カ−ボネ−トエステル、ハロホルメ−ト等が使用され、具体的にはホスゲン;ジフェニルカ−ボネ−ト、ジトリルカ−ボネ−ト等のジアリ−ルカ−ボネ−ト類;ジメチルカ−ボネ−ト、ジエチルカ−ボネ−ト等のジアルキルカ−ボネ−ト類;二価フェノ−ルのジハロホルメ−ト等が挙げられる。これらのカ−ボネ−ト前駆体もまた1種類単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で例示されるポリヒドロキシ化合物類、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリ−ル)オキシインド−ル(=イサチンビスフェノ−ル)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。
中でも1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができ、その使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%であることが好ましく、中でも0.1〜2モル%であることが好ましい。
次に本発明に用いるA1成分の製造方法について説明する。A1成分の製造方法は、界面重合法や、溶融エステル交換法等の、従来公知の任意の方法を使用できる。まず、界面重合法について説明する。この製造方法における重合反応は、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物、及び必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)や、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤の存在下、ホスゲンと反応させた後、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネートを得る。分子量調節剤の添加はホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されない。なお、反応温度は、例えば、0〜40℃で、反応時間は、例えば、数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
ここで反応に不活性な有機溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。またアルカリ水溶液に用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
分子量調節剤としては、一価のフェノ−ル性水酸基を有する化合物が挙げられる。一価のフェノ−ル性水酸基を有する化合物としては、m−メチルフェノ−ル、p−メチルフェノ−ル、m−プロピルフェノ−ル、p−プロピルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノ−ルおよびp−長鎖アルキル置換フェノ−ルなどが挙げられる。分子量調節剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、好ましくは50〜0.5モル、より好ましくは30〜1モルである。
重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類:トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
次に溶融エステル交換法について説明する。この製造方法における重合反応は、例えば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。炭酸ジエステルとしては、ジメチルカ−ボネ−ト、ジエチルカ−ボネ−ト、ジ−tert−ブチルカ−ボネ−ト等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカ−ボネ−トおよびジトリルカ−ボネ−ト等の置換ジフェニルカ−ボネ−ト等が例示される。炭酸ジエステルは、好ましくはジフェニルカ−ボネ−トまたは置換ジフェニルカ−ボネ−トであり、より好ましくはジフェニルカ−ボネ−トである。
この製造方法においては一般的に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の分子量および末端ヒドロキシル基量を有するポリカーボネートが得られる。より積極的な方法として、反応時に別途、末端停止剤を添加し調整してもよい。この際の末端停止剤としては、一価フェノ−ル類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。
末端ヒドロキシル基量は、A1成分であるポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。用途にもよるが、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。また、エステル交換法で製造するポリカーボネートでは、末端ヒドロキシル基量が100ppm以上であることが好ましい。このような末端ヒドロキシル基量とすることにより、分子量の低下が抑制でき、色調もより良好なものとすることができる。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いるのが好ましく、1.01〜1.30モルの量で用いるのがより好ましい。
溶融エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際には、通常エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に制限はないが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物またはアミン系化合物などの塩基性化合物を併用することも可能である。上記原料を用いたエステル交換反応としては、通常、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2mmHg以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。
溶融エステル交換法は、バッチ式または連続的に行うことができるが、本発明の樹脂組成物の安定性等を考慮すると、連続式で行うことが好ましい。溶融エステル交換法により得られたポリカーボネート中の触媒の失活剤としては、該触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが好ましい。このような触媒を中和する化合物は、該触媒が含有するアルカリ金属に対して、好ましくは0.5〜10当量、より好ましくは1〜5当量の範囲で添加する。さらに加えて、このような触媒を中和する化合物は、ポリカーボネートに対して、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]で、10000〜50000の範囲のものが好ましい。芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量を10000以上とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にあり、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。
一方、粘度平均分子量を、50000より以下とすることにより、流動性が低下するのをより改善できる傾向にあり、成形加工性容易の観点からより好ましい。粘度平均分子量は、より好ましくは12000〜40000であり、さらに好ましくは14000〜30000である。また、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。もちろん、粘度平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ここで粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベロ−デ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4M0.83、から算出される値を示す。極限粘度[η]は、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
本発明においては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性向上や、これを成形してなる成形品の外観向上を図るために、本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)が芳香族ポリカーボネートオリゴマ−を含有していてもよい。この芳香族ポリカーボネートオリゴマ−の粘度平均分子量[Mv]は、1500〜9500であることが好ましく、中でも2000〜9000であることが好ましい。芳香族ポリカーボネートオリゴマ−は、A1成分の30重量%以下とすることが好ましい。
さらに、本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、バ−ジン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂を用いてもよい。使用済みの製品としては、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防等の車両透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板等の建築部材等が挙げられる。
また製品の不適合品、スプル−、ランナ−等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、A1成分の80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下である。
[2]熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)
本発明に用いるA2成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、「A2成分」と略記することがある。)は、その製造方法は任意だが、通常、ジカルボン酸類またはその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオ−ル類またはそのエステル誘導体からなるジオ−ル成分とを主成分とする縮合反応により得られる重合体、または共重合体である。
本発明に用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)の製造は、例えば、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分とジオ−ル成分とを反応させ、副生する水または低級アルコ−ルを系外に排出することにより行われる。ここで、バッチ式、連続式のいずれの重合方法をとることも可能であり、固相重合により重合度を上げることも可能である。
ジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸のいずれでもよいが、耐熱性、寸法安定性等の点から芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルエ−テルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4'−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)等を用いることもできる。
これらのうち、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらのアルキルエステル誘導体がより好ましく、テレフタル酸およびそのアルキルエステル誘導体が特に好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、該芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等の1種以上併用することも可能である。
また、ジオ−ル類としては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、トリエチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、デカメチレングリコ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサンジオ−ル、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオ−ル等の脂環族ジオ−ル類;p−キシレンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2−ヒドロキシエチルエ−テル)等の芳香族ジオ−ル類等を挙げることができ、これらの置換体も使用することができる。
これらのうち、耐熱性、寸法安定性等の点から、エチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルがより好ましく、エチレングリコ−ルが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、ジオ−ル成分として、分子量400〜6,000の長鎖ジオ−ル類、すなわちポリエチレングリコ−ル、ポリ−1,3−プロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の1種以上を上記ジオ−ル類と併用して共重合させてもよい。
本発明に用いるA2成分の熱可塑性ポリエステル樹脂の好適な具体例として、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレ−ト樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレ−ト樹脂、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレ−ト樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレ−ト(PCC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレ−ト樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)が流動性、耐衝撃性の点から好ましく、特にポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)がA2成分100重量部中に10重量部以上含有していることが好ましい。
他の熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えばラクトンの開環重合によるポリピバロラクトン樹脂、ポリ(ε−カプロラクトン)樹脂等や、溶融状態で液晶を形成する液晶ポリマ−(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)等が挙げられる。具体的には、市販の液晶ポリエステル樹脂としてイ−ストマンコダック社のX7G、ダ−トコ社のXyday(ザイダ−)、住友化学社のエコノ−ル、セラニ−ズ社のベクトラ等が挙げられる。
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル樹脂は、少量の分岐剤を導入することにより分岐させることもできる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル等が挙げられる。
本発明に用いるA2成分として特に好適に用いられるポリエチレンテレフタレ−ト樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、且つ、ジオ−ル成分としてエチレングリコ−ルを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体または共重合体であり、繰り返し単位としてエチレンテレフタレ−ト単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含む熱可塑性ポリエステル樹脂である。
またポリエチレンテレフタレ−ト樹脂中には、重合時の副反応生成物であるジエチレングリコ−ルが共重合成分として含まれるが、このジエチレングリコ−ルの量は、重合反応に用いるジオ−ル成分の全量100モル%中、0.5モル%以上であることが好ましく、通常6モル%以下、中でも5モル%以下であることが好ましい。
本発明で用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)の固有粘度は、好ましくは0.4〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.5〜1.3dl/gである。ここで固有粘度は、フェノ−ル/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の溶媒中30℃で測定される。固有粘度が0.4未満であると得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下しやすく、1.5を超えると流動性が低下しやすい。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、好ましくは5〜50μeq/gであり、より好ましくは10〜30μeq/gである。末端カルボキシル基量が5μeq/g未満の場合は得られる樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性が低下しやすく、50μeq/gを超える場合には耐湿熱性、熱安定性が不十分となりやすい。
更に、本発明に用いるA2成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)としては、バ−ジン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された熱可塑性ポリエステル樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた熱可塑性ポリエステル樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、容器、フィルム、シ−ト、繊維等が主として挙げられるが、より好適なものはPETボトル等の容器である。また、再生熱可塑性ポリエステル樹脂としては、製品の不適合品、スプル−、ランナ−等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
[3]無機フィラ−(B成分);
本発明に用いるB成分である無機フィラ−(以下、「B成分」と略記することがある。)は、固形の無機化合物である。固体の形態(形状)は任意であって、例えば球状、板状、針状、繊維状、不定形等のいずれであってもよく、最終的に得られる樹脂組成物の寸法安定性、剛性を向上させるためには、中でも板状、針状、繊維状のものが好ましい。
尚、本発明に用いる無機フィラーの形状においては、以下の様に球状、板状、針状、繊維状を区別する。球状とは、真球状だけでなく、ある程度断面楕円状や略長円状のものも含み、好ましくはアスペクト比が1に近いものであり、具体的なアスペクト比としては、0.5を超えて2未満のものを示す。
板状とは、板状の形状を呈してアスペクト比(板状粉の板状面における最長辺の長さ/板状体の厚み)が2〜100の範囲のものを示す。針状とは、長さが100μm以下でアスペクト比(粒子長さ/粒子径)が2〜20の範囲のものを示し、そして繊維状とは、長さが100μmを超えるものを示す。そしてこれらの形状は電子顕微鏡写真等により、容易に判別することができる。
本発明に用いる無機フィラー(B成分)としては、具体的には例えば、板状無機フィラーとしてはタルク等の珪酸マグネシウム、カオリナイト、クレー、マイカ、黒鉛、セリサイト、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ、ガラスフレーク等が挙げられる。針状無機フィラーとしてはウォラストナイト等の珪酸カルシウム、モスハイジ、ゾノトライト、チタン酸カルシウム、硼酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状酸化チタン、テトラポット型酸化亜鉛等が挙げられ、また繊維状無機フィラーとしてはガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
本発明に用いる無機フィラー(B成分)が板状、針状無機フィラーの場合、その平均粒子径は、適宜選択して決定すればよいが、0.1〜25μmであることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると補強効果が不充分となり易く、逆に大きすぎても製品外観に悪影響を与えやすく、更に耐衝撃性も不十分となる場合がある。よって平均粒子径は、中でも0.3〜15μm、特に0.5〜10μmであることが好ましい。ここで平均粒子径とは、X線透過による液相沈降方式で測定されたD50をいう。このような測定ができる装置としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruments社製「モデル5100」)が挙げられる。
また、本発明に用いる無機フィラー(B成分)が繊維状無機フィラーの場合、その平均繊維径は、適宜選択して決定すればよいが、1〜20μmであることが好ましく、更には2〜17μm、特に3〜15μmであることが好ましい。繊維径が1μm未満では補強効果が不充分となり易く、15μmを超えると製品外観に悪影響を与えやすいのでいずれも好ましくない。なお、繊維状フィラーの繊維径は、電子顕微鏡写真により容易に測定することができる。
本発明に用いる無機フィラ−の中で、剛性、流動性、耐衝撃性、製品外観のバランスの点で好ましいのは珪酸塩化合物である。珪酸塩化合物とは、少なくとも金属酸化物成分とSiO2成分とからなるものであり、オルトシリケ−ト、ジシリケ−ト、環状シリケ−ト、鎖状シリケ−ト、層状シリケ−ト等のいずれの形態であってもよい。また、本発明の珪酸塩化合物は、結晶状態を取るものであり、該珪酸塩化合物が取り得るいずれの形態であってもよく、結晶の形状も繊維状や板状などの各種の形状から適宜選択して決定すればよい。
更に本発明に用いる珪酸塩化合物は、天然鉱物および人工合成物のいずれも使用することができ、人工合成物としては、従来公知の各種の方法から得られた珪酸塩化合物が利用できる。また、前期珪酸塩化合物は、粉砕および分級により、所望の粒径、繊維長にして使用することができる。
本発明のB成分として好ましく使用される珪酸塩化合物は、下記式で表される珪酸塩化合物である。
xMO・ySiO2・zH2O
(ここでxおよびyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MOは金属酸化物成分を表し、複数の金属酸化物成分であってもよい。)
上記金属酸化物MOにおける金属Mは、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどが挙げられ、金属酸化物MOとして好ましいものは、CaO、またはMgOのいずれかを実質的に含むものである。
本発明に用いるB成分として好ましく使用される珪酸塩化合物の具体例としては、ウォラストナイト、タルク、マイカ、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイト等を挙げることができ、剛性、耐衝撃性、外観の点からより好ましくはウォラストナイト、タルク、マイカであり、ウォラストナイトが耐衝撃性の点から特に好ましい。
ウォラストナイト
本発明において特に好適に用いられるウォラストナイトは、針状結晶をもつ白色鉱物であり、化学式はCaO・SiO2で表される。通常SiO2が約50重量%、CaOが約46重量%、その他Fe2O3、Al2O3等を含有しており、比重は2.9である。このようなウォラストナイトとしては例えば、川鉄鉱業からPH330、PH450として、ナイコミネラルズ社からナイグロス4、ナイグロス5、キンセイマテックからSH1250、SH1800が挙げられ、平均アスペクト比が3以上のものが好ましい。本発明において特に好適に用いられるウォラストナイトには、原料鉱物由来のFe2O3が含まれていてもよく、その含有量は、耐衝撃性の点からウォラストナイト中、0.3〜1.5重量%であることが好ましく、中でも0.51〜1重量%であることが好ましい。
タルク
本発明において特に好適に用いられるタルクは、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムであって、化学式は4SiO2・3MgO・H2Oで表され、通常SiO2を58〜66重量%、MgOを28〜35重量%、H2Oを約5重量%含んでいる。その他少量成分としてFe2O3が0.03〜1.2重量%、Al2O3が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2Oが0.2重量%以下、Na2Oが0.2重量%以下等、含有しており比重は約2.7である。タルクの平均粒子径としては、0.3〜15μmのものが好ましく、より好ましくは0.5〜10μmのものである。
マイカ
本発明において特に好適に用いられるマイカは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄、等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母(マスコバイト、K(AlSi3O10)(OH)2Al4(OH)2(AlSi3O10)K)、金雲母(フロゴパイト、K(AlSi3O10)(OH)2Mg6(OH)2(AlSi3O10)K)、黒雲母(バイオタイト、K(AlSi3O10)(OH)2(Mg,Fe)6(OH)2(AlSi3O10)K)、人造雲母(フッ素金雲母、K(AlSi3O10)(OH)2F2Mg6F2(AlSi3O10)K)等が挙げられる。
本発明に用いるマイカとしてはいずれのマイカも使用できるが、好ましくは白雲母である。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよいが、湿式粉砕法の方がマイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であり、その結果樹脂組成物の補強効果はより高くなるので好ましい。
[4]ゴム性重合体(C成分)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、該樹脂組成物の耐衝撃性を改良する目的で、更にC成分としてゴム性重合体(以下、「C成分」と略記することがある。)を含有することが好ましい。本発明に用いるゴム性重合体は、ガラス転移温度が0℃以下、中でも−20℃以下のものを示し、ゴム性重合体にこれと共重合可能な単量体成分とを共重合した重合体をも含む。本発明に用いるC成分は、一般にポリカーボネート樹脂組成物等に配合されて、その機械的特性を改良し得る、従来公知の任意のものを使用できる。
ゴム性重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレ−ト共重合体、エチレン・ブチルアクリレ−ト共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのタ−ポリマ−、アクリルゴム(ポリブチルアクリレ−ト、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレ−ト)、ブチルアクリレ−ト・2−エチルヘキシルアクリレ−ト共重合体等)、シリコ−ン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム;ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレ−トゴムとからなるIPN型複合ゴム等)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、「(メタ)アクリレ−ト」は「アクリレ−ト」と「メタクリレ−ト」を意味し、後述の「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」を意味する。
かかるゴム性重合体に必要に応じ共重合される単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジル(メタ)アクリレ−ト等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物およびそれらの無水物、例えば無水マレイン酸等を挙げることができる。これらの単量体成分についても、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性改良には、C成分のゴム性重合体としてコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものを用いることが好ましい。中でもブタジエン含有ゴム、ブチルアクリレ−ト含有ゴム、シリコ−ン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム性重合体のコア層とし、その周囲に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を共重合して形成されたシェル層からなるコア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
より具体的には、メチルメタクリレ−ト−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレ−ト−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレ−ト−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレ−ト−アクリルゴム重合体(MA)、メチルメタクリレ−ト−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレ−ト−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレ−ト−(アクリル・シリコ−ンIPN(interpenetrating polymer network)ゴム)重合体等を挙げることができ、スチレン成分を含まないゴム性重合体が耐衝撃性の点から好ましい。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
[5]アルキルシラン化合物(D成分)
本発明のD成分であるアルキルシラン化合物及び/またはその部分加水分解縮合物(以下、「D成分」と略記することがある。)は、下記一般式(I)で表されるアルキルシラン化合物及び/またはその部分加水分解縮合物であり、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(R1)n−Si−(OR2)4−n・・・(I)
(一般式(I)中、R1は炭素原子数4〜30のアルキル基を示し、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示し、R1および/またはR2が複数有る場合、R1およびR2においては、各々、同一であっても、異なっていてもよい。)
上記一般式(I)中、R1は、炭素原子数4〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数6〜23のアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数7〜14のアルキル基である。R1の炭素原子数が4以下のアルキル基では、耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性が十分ではなく、炭素原子数が30を超えるアルキル基では耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性が十分でないので好ましくない。また、R1は直鎖状、分岐状、および環状などの何れの構造も有することができるが、直鎖状または分岐状がより好ましく、直鎖状が更に好ましい。直鎖状アルキル基は、熱安定性に優れるため好適に使用される。
一方、上記一般式(I)中OR2は、水と反応しシラノ−ル基となってフィラ−表面のOH基と結合する。R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2の炭素原子数が4を超えるアルキル基の場合、フィラ−表面のOH基との反応に劣り、耐衝撃性が十分でないので好ましくない。尚、R1および/またはR2が複数有る場合には、R1およびR2においては、各々、同一であっても、異なっていてもよい。
本発明で特に好適に用いられるアルキルシラン化合物(D成分)は、下記一般式(II)で表されるアルキルシラン化合物である。
(R3)n−Si−(OR4)4−n・・・(II)
(一般式(II)中、R3は炭素原子数7〜14のアルキル基を示し、R4はメチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
本発明で特に好適に用いられるアルキルシラン化合物(D成分)としては、具体的には例えばヘプチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられ、アルキルシラン化合物のメトキシ基をエトキシ基に置換したものも同様に例示される。
[6]表面処理
本発明では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性の点から無機フィラ−(B成分)を樹脂成分と配合する前に、予めアルキルシラン化合物(D成分)を用いて表面処理されたものを用いるのが好ましい。
表面処理の方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法で行うことができる。例えば、ヘンシェルミキサ−、ボ−ルミル、アドマイザ−コロイドミル、バンバリ−ミキサ−などの各種機械的混合機を用いて、無機フィラ−(B成分)にアルキルシラン化合物(D成分)を噴霧、滴下、湿潤、浸漬などの方法によって接触させ、所定温度で所定時間混合攪拌することによって行う方法が挙げられる。この際、水、有機溶媒、水/有機溶媒混合溶媒などの各種溶媒を使用するこができ、無機フィラ−に混合する前に予め各種溶媒でアルキルシラン化合物を希釈する方法や別々に無機フィラ−に混合する方法などいずれの方法でもよく、混合攪拌処理を行った後、各種溶媒を脱揮処理および乾燥処理を行うことも可能である。
ここで、表面処理の際に用いることができる有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ジオキサン、THFなどのエ−テル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、MIBK、アセトンなどのケトン系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。また、アルキルシラン化合物が固体や粘調液体の場合、必要に応じて加熱することもできる。
表面処理におけるアルキルシラン化合物(D成分)の配合量は、無機フィラ−(B成分)100重量部に対し0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜4重量部であり、特に好ましくは0.2〜3重量部である。アルキルシラン化合物(D成分)の配合量が0.05重量部未満では、耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性が十分ではなく、5重量部を超えても耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性が十分ではなくいずれも好ましくない。
本発明において好適な表面処理の条件は、ヘンシェルミキサ−などの高速混合機を用いて攪拌混合し、80℃以上の温度になるまで攪拌混合するのが好ましく、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。攪拌混合時間は、所望の温度になるまで攪拌混合するのが好ましく、おおよそ0.3〜1.5時間程度である。
さらに本発明では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、滞留熱安定性の点から、無機フィラ−(B成分)が、水の存在下でアルキルシラン化合物(D成分)により予め表面処理し、アルキルシラン化合物及び/またはその部分加水分解縮合物とすることが好ましい。水の添加量としては、無機フィラ−(B成分)100重量部に対し、0.05〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
また、予めアルキルシラン化合物(D成分)と水を予備混合してから無機フィラ−(B成分)と攪拌混合するのも好ましい態様であり、その際に酸成分の存在下で予備混合してアルキルシラン化合物(D成分)のアルコキシ基を加水分解させシラノ−ル基にさせ、部分加水分解縮合物としておいてもよい。酸成分としては、乳酸、酢酸など公知の各種酸成分を用いることができ、その添加量は水溶液のPHが2〜6程度になるような添加量が好ましく、おおよそ水100重量%中に0.05〜2重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、これを構成するA成分〜D成分の配合比率は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)10〜90重量%と、熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)90〜10重量%の合計100重量%よりなる樹脂成分(A成分)40〜99重量部、(B)無機フィラ−(B成分)1〜60重量部、及び(C)ゴム性重合体(C成分)0〜35重量部の、A、B、C成分の合計100重量部に対して、(D)先述の一般式(I)で表されるアルキルシラン化合物(D成分)が0.01〜3重量部である。
A1成分とA2成分の含有比率は、A1成分及びA2成分の合計100重量%中、A1成分は10〜90重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは55〜80重量%であり、A2成分は90〜10重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜45重量%である。
A1成分が10重量%未満では耐衝撃性が十分ではなく、90重量%を超えると流動性や耐薬品性、滞留熱安定性に劣る。
B成分は、A、B、C成分の合計100重量部中、1〜60重量部であり、好ましくは5〜55重量部であり、より好ましくは10〜50重量部である。B成分が1重量部未満では剛性が十分でなく、60重量部を超えると耐衝撃性や滞留熱安定性に劣る。 また、C成分は、0〜35重量部であり、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは3〜25重量部である。C成分が1重量部以上配合することで耐衝撃性が良好になるので好ましく、35重量部を超えると剛性と耐衝撃性のバランスに劣る。
D成分の含有比率は、A、B、C成分の合計100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.03〜2.5重量部、より好ましくは0.05〜2重量部である。D成分が0.01重量部未満では耐衝撃性や流動性が十分でなく、D成分が3重量部を超えても耐衝撃性や滞留熱安定性が悪化する。
[7]リン系化合物(E成分)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において滞留熱安定性を向上するために、リン系化合物(以下、「E成分」と略記することがある。)を含有させることが好ましい。リン系化合物としては、各種公知のものを使用することができるが、下記一般式(III)で表されるリン酸エステル(E1成分)及び/又は下記一般式(IV)で表される亜リン酸エステル(E2成分)が好ましい。
O=P(OH)m(ORa)3−m ・・・(III)
(一般式(III)中、Raはアルキル基またはアリ−ル基であり、尚、Raが複数有る場合には、Raは各々、同一であっても、異なっていてもよく、mは0〜2の整数を示す。)
(式中、R'はアルキル基またはアリ−ル基を示し、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
E1成分ある上記一般式(III)中、Raは、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリ−ル基であり、より好ましくは、炭素原子数2〜25のアルキル基である。またmは好ましくは1又は2である。
E2成分である上記一般式(IV)中、R'は、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリ−ル基である。上記一般式(IV)で表される亜リン酸エステルの好ましい具体例としては、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイトを挙げることできる。
E成分であるリン系化合物の好ましい含有量としては、A〜C成分の合計100重量部に対して、0.005〜1重量部であり、より好ましくは0.01〜0.7重量部、さらに好ましくは0.03〜0.5重量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で上記A〜E成分以外に他の樹脂および各種樹脂添加剤を含有していてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエ−テル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレ−ト樹脂、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、各種樹脂添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、染顔料、熱安定剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤等が挙げられる。これらは、1種類単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、前記A〜E成分を規定量含んでいる限り特に定めるものではないため、その製造方法も、該樹脂組成物に応じて適宜定めることができる。例えば、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、前記A〜E成分および必要に応じて配合される添加成分を、タンブラ−やヘンシェルミキサ−などの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリ−ミキサ−、ロ−ル、ブラベンダ−、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニ−ダ−などで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
また、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみ予め混合してフィダ−を用いて押出機に供給して溶融混練して樹脂組成物を製造することもできる。さらに、B成分が溶融混練により破壊しやすい無機フィラ−であるときは、B成分以外を上流部分に一括投入し、中流以降でB成分を添加し樹脂成分と溶融混練する方法も、得られる樹脂組成物の機械物性の点から好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサ−ト成形、IMC(インモ−ルドコ−ティング成形)成形法、押出成形法、シ−ト成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができ、ホットランナ−方式を用いた成形法を選択することもできる。
以下に本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、配合量は重量部を意味する。
実施例および比較例の各樹脂組成物を得るに当たり、次に示す原料を準備した。
<A1成分>
PC−1:ビスフェノ−ルA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユ−ピロンS−3000FN、粘度平均分子量22500)
PC−2:ビスフェノ−ルA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユ−ピロンE−2000FN、粘度平均分子量28000)
PC−3:ビスフェノ−ルA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユ−ピロンH−4000FN、粘度平均分子量15500)
<A2成分>
PET−1:ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(三菱化学社製ノバペックスGG500、固有粘度0.76dl/g)
PET−2:ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(三菱レイヨン社製ダイヤナイトPA200D25、固有粘度1.09dl/g)
PBT−1:ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5020、固有粘度1.20dl/g)
PBT−2:ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5008、固有粘度0.85dl/g)
尚、A2成分の固有粘度は、温度30℃のフェノ−ルとテトラクロロエタンとの1対1(重量比)混合液に1重量%の濃度に溶解して測定した固有粘度である。
<B成分>
B−1:ウォラストナイト(ナイコミネラルズ社製ナイグロス4、平均粒子径3.4μm、Fe2O3含有量0.77重量%)
B−2:タルク(林化成社製ミクロンホワイト#5000A、平均粒子径4μm)
B−3:マイカ(コープケミカル社製ミクロマイカMK−100、平均粒子径4μm)
B−4:ウォラストナイト(ナイコミネラルズ社製ナイグロス8、平均粒子径7.3μm、Fe2O3含有量0.77重量%)
<C成分>
C−1: ポリブタジエン(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合物(シェル)からなるコア/シェル型グラフト共重合体(ロ−ム・アンド・ハ−ス・ジャパン社製 EXL2603)
C−2: ポリアクリル酸アルキル(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合物(シェル)からなるコア/シェル型グラフト共重合体(ロ−ム・アンド・ハ−ス・ジャパン社製 EXL2315)
<D成分>
D−1:デシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM3103)
D−2:オクタデシルトリエトキシシラン(信越化学工業社製 LS6970)
D−3:イソブチルトリメトキシシラン(東レ・ダウ・コ−ニング社製 AY43−048)
<D成分以外>
D−4:メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM13)
D−5:メチルシリケ−ト(多摩化学工業社製 Mシリケ−ト51)
D−6:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM403)
D−7:N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM602)
<B成分・D成分(表面処理品)>
BD−1:乳酸0.3重量%の水溶液1500gにD−1成分1000gを添加撹拌し、混合水溶液を得た。水はイオン交換水を、乳酸は試薬(湘南和光純薬)を用いた。次に300Lのヘンシェルミキサ−(ス−パ−ミキサ−Z−3SP)にB−1成分100kgを仕込み、400rpmで予備攪拌しながらD−1成分の混合水溶液を数分間かけて添加した。次いで750rpmで攪拌混合しながら、内部温度が120℃になるまで攪拌混合を続け、表面処理されたBD−1成分を得た。
BD−2:D−1成分を750gとした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−2成分を得た。
BD−3:D−1成分を500gとした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−3成分を得た。
BD−4:乳酸を用いなかった以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−4成分を得た。
BD−5:乳酸水溶液を用いずにD−1成分をそのまま添加した以外はBD−1成分の調整と同様に表面処理し、BD−5成分を得た。
BD−6:D−1成分をD−2成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−6成分を得た。
BD−7:D−1成分をD−3成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−7成分を得た。
BD−8:B−1成分をB−2成分とした以外は、BD−1成分の調製と同様にして、BD−8成分を得た。
BD−9:B−1成分をB−3成分とした以外は、BD−1成分の調製と同様にして、BD−9成分を得た。
BD−10:B−1成分をB−4成分とした以外は、BD−1成分の調製と同様にして、BD−10成分を得た。
<B成分・D成分以外(表面処理品)>
BD−11:D−1成分をD−4成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−11成分を得た。
BD−12:D−1成分をD−5成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−12成分を得た。
BD−13:D−1成分をD−6成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−13成分を得た。
BD−14:D−1成分をD−7成分とした以外はBD−1成分の調製と同様にB−1成分を処理し、BD−14成分を得た。
<E成分>
E−1:化学式O=P(OH)n'(OC18H37)3−n'(n'が1と2の混合物;旭電化工業社製 アデカスタブAX−71)
[樹脂組成物の調製]
実施例1〜9、12〜23及び比較例1〜7、10〜14
A1成分、A2成分、C成分(C成分以外)及びC成分、D成分、E成分を表1〜表5に示す割合にてタンブラ−ミキサ−で均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダ−温度270℃、スクリュ−回転数250rpmにてバレル1より押出機にフィ−ドし溶融混練し、更にバレル7よりB成分又は、B・D成分(表面処理品)又はB成分・D成分以外(表面処理品)を表1〜表5に示す割合にて押出機に途中フィ−ドして溶融混練することにより樹脂組成物のペレットを作製した。
実施例10、11及び比較例8、9
A1成分、A2成分を120℃で6時間乾燥後、B成分又はB成分・D成分(表面処理品)及びC成分、E成分を表2、3に示す割合にてタンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数250rpmにてバレル1より押出機にフィードし、溶融混練することにより樹脂組成物のペレットを作製した。
[試験片の作製]
上記の方法で得られたペレットを、120℃で4時間以上乾燥した後、名機製作所製のM150AII−SJ型射出成形機を用いて、シリンダ−温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル55秒の条件で、ASTM試験片および100mmφの円盤状成形品(厚さ3mmt)を作成した。また、滞留成形を1サイクル5分で成形を行い、それぞれ5ショット目以降の滞留成形品について評価を行った。
[評価方法]
(1)流動性(Q値)
高荷式フロ−テスタ−を用いて、280℃、荷重160kgf/cm2の条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:cc/s)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れている。
(2)剛性(曲げ弾性率)
ASTM D790に準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用いて、23℃において測定した。
(3)耐衝撃性(Izod衝撃強度)
ASTM D256に準拠して、厚み3.2mmのノッチ付き試験片を用いて、23℃においてIzod衝撃強度(単位:J/m)を測定した。
(4)滞留熱安定性
上記円盤状成形品(滞留成形品)の表面外観を目視にて観察し、シルバ−ストリ−クによる肌荒れの全くないものを◎、シルバ−ストリ−クによる肌荒れのほとんどないものを○、シルバ−ストリ−クによる肌荒れのあるものを×として評価した。
[実施例1〜23、比較例1〜14]
表1〜表5に用いた組成比と配合方法で樹脂組成物を製造し、上述の評価を行って、結果を表1〜表5に示した。
実施例および比較例から以下のことがわかる。実施例1、2の組成物は、剛性、流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性のバランスに優れており、比較例1の組成物は、D成分を含有していないため流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性に劣る。また、D成分で予めB成分を表面処理した実施例2の組成物は、実施例1の組成物より流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性が向上する。
実施例3〜20の組成物は、剛性、流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性のバランスに優れている。これに対し、比較例2、8〜11の組成物は、D成分を含有していないため流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性に劣り、比較例3の組成物は、A2成分の含有量が本特許規定の範囲外であり、流動性、滞留熱安定性に劣る。また、比較例4〜7の組成物は、D成分が本特許規定の範囲外であり、流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性に劣る。
実施例21〜23の組成物は、剛性、流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性のバランスに優れている。これに対し、比較例12の組成物は、D成分を含有していないため流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性に劣り、比較例13、14の組成物は、D成分が本特許規定の範囲外であり、流動性、耐衝撃性、滞留熱安定性に劣る。