JP2007237397A - 平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版 Download PDF

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Abstract

【課題】充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜を、アルミニウム板の上に高速かつ均一に形成することができる。
【解決手段】
アルミニウム板12に陽極酸化処理を含む表面処理を施して平版印刷版用支持体を製造する方法であって、陽極酸化処理が、低電流密度で定電流電解処理することにより皮膜厚さが10〜200nmの陽極酸化皮膜14を形成する第1の陽極酸化皮膜形成工程と、第1の陽極酸化皮膜形成工程後に電流密度を増加させて陽極酸化皮膜14’を形成する第2の陽極酸化皮膜形成工程と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、平版印刷版用支持体の製造方法に関し、特に、表面活性や耐摩耗性に優れた陽極酸化皮膜を、アルミニウム板上に均一かつ高速で形成することができる平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版に関する。
従来、感光性平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体としては、印刷性の面から親水性、保水性、感光層との接着性に優れることが要求され、これにより、一般に表面を砂目立てといわれる粗面化処理を施されたアルミニウム板が用いられている。このような粗面化処理としては、たとえば、各種研磨処理等の機械的粗面化法や、塩酸や硝酸等の酸性電解液中で支持体表面を電解処理する電気化学的粗面化法等が知られている。
このような方法で砂目立て処理したアルミニウム板はそのままでは印刷性、耐刷性(耐磨耗性)、保存安定性に劣るので、さらに陽極酸化処理を行って表面に陽極酸化被膜を形成させる。陽極酸化処理としては硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸等が従来から広く知られており、これらの酸を単独又は複数混合して用いる。
充分な厚さの陽極酸化皮膜を高速で形成させるために、高電流密度で処理すると、陽極酸化処理面での温度やイオン濃度の偏り等の影響による電流の一局集中がおこり、反応が局所的に進行したいわゆる「やけ」が発生し、連続的に生産する事が困難であった。
これらを解決する手段として、たとえば、特許文献1では、電流密度を数セクションに分け、初期セクションにおける電流密度を末期セクションよりも低くなるように制御する陽極酸化処理方法が開示されており、これによれば、電流の集中による「やけ」を防止できるとされている。また、特許文献2では、バリア型陽極酸化皮膜形成工程と、ポーラス型陽極酸化皮膜形成工程と、において電解液の種類を変えて陽極酸化皮膜を形成する方法が開示されており、これによれば、電流の集中による「やけ」を防止し、耐刷性、耐摩耗性に優れる平版印刷版用支持体が得られると記載されている。
特開2001−232965号公報 特開2000−147779号公報
しかしながら、特許文献1では、電気量(電解時間)を特に制御しないため、電気量の条件によって皮膜の厚さにムラが発生しやすく、印刷性や耐摩耗性に優れた平版印刷版原版を得られないといった問題があった。
また、特許文献2では、複数種類の電解液を用いなければならず、比較的環境負荷の高い電解液を使用する必要があるうえ、処理が複雑化するといった問題もあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板の上に高速かつ均一に形成した平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、低電流密度で定電流電解処理することにより皮膜厚さが10〜200nmの陽極酸化皮膜を形成する第1の陽極酸化皮膜形成工程と、該第1の陽極酸化皮膜形成工程後に電流密度を増加させて陽極酸化皮膜を形成する第2の陽極酸化皮膜形成工程と、を備えたことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法を提供する。
本発明者は、平版印刷版用支持体を製造する方法において、陽極酸化処理開始当初に電流密度だけでなく電解時間(電気量)を制御することにより、皮膜厚さが均一な陽極酸化皮膜を10〜200nm形成させることができ(第1の陽極酸化皮膜形成工程)、さらにその後に高電流密度へ切り換えることにより(第2の陽極酸化皮膜形成工程)、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に高速かつ均一に形成することができることを見出した。
このように、本発明によれば、平版印刷版用支持体を製造する方法において、第1の陽極酸化皮膜形成工程で皮膜厚さが10〜200nmである陽極酸化皮膜を形成した後、第2の陽極酸化皮膜形成工程において電流密度を増加させるように制御するので、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に高速かつ均一に形成することができ、これにより、耐刷性、印刷性に優れた平版印刷版原版を得るための平版印刷版用支持体を製造することが可能となった。
請求項2は請求項1において、前記第1の陽極酸化皮膜形成工程においては、1〜10A/dmの低電流密度かつ10〜300C/dmの電気量で電解処理するとともに、前記第2の陽極酸化皮膜形成工程においては、10〜70A/dmの電流密度で電解処理することを特徴とする。
請求項2によれば、1〜10A/dmの低電流密度かつ10〜300C/dmの電気量で電解処理するので、皮膜厚さの均一な陽極酸化皮膜を形成することができ(第1の陽極酸化皮膜形成工程)、その後10〜70A/dmの高電流密度で電解処理するので、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜を、高速かつ均一に形成することができる(第2の陽極酸化皮膜形成工程)。
なお、請求項2において、第1の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度は、3〜10A/dmであることが好ましく、第2の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度は、10〜40A/dmであることが好ましい。また、第1の陽極酸化皮膜形成工程における電気量は、10〜200C/dmであることが好ましく、10〜60C/dmであることがより好ましい。
請求項3は請求項1又は2において、前記第2の陽極酸化皮膜形成工程において、線形的、曲線的、又は段階的に前記電流密度を増加させることを特徴とする。
請求項3によれば、皮膜厚さが10〜200nmの陽極酸化皮膜を形成した後、徐々に電流密度を増加させるので、皮膜の形成にムラが生じにくい。したがって、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜を高速かつより均一に形成することができる。また、線形的とは、電解時間に対して電流密度を比例的に増加させることであり、曲線的とは、たとえば2次関数的、指数関数的に電流密度を増加させることを含む。
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記第1の陽極酸化皮膜形成工程及び前記第2の陽極酸化皮膜形成工程において、同一の電解液を使用することを特徴とする。
請求項4によれば、第1、及び第2の陽極酸化皮膜形成工程において、同一の電解液を使用するので、処理を簡素化することができるとともに充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に高速かつ均一に形成することができる。
請求項5の平版印刷版用支持体は、請求項1〜4の何れか1の平版印刷版用支持体の製造方法を適用して製造したことを特徴とする。
請求項6の平版印刷版原版は、請求項5の平版印刷版用支持体を用いて製造したことを特徴とする。
請求項5及び6によれば、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法を適用するので、耐磨耗性や表面活性に優れた平版印刷版用支持体が得られ、この平版印刷版用支持体上に感光層等を形成することにより、耐刷性や印刷性に優れた平版印刷版原版を得ることができる。
本発明によれば、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板の上に高速かつ均一に形成することができる。これにより、耐刷性や印刷性に優れた平版印刷版原版を得ることができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版の好ましい実施の形態について説明する。
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本実施形態の平版印刷版原版に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。 純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。更に、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いることもできる。
本実施形態に用いられるアルミニウム板の組成は、特に限定されないが、純アルミニウム板を用いるのが好適である。完全に純粋なアルミニウムは精練技術上、製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものを用いてもよい。例えば、アルミニウムハンドブック第4版(軽金属協会(1990))に記載の公知の素材のもの、具体的には、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A3003、JIS A3004、JIS A3005、国際登録合金3103A等のアルミニウム合金板を適宜利用することができる。また、アルミニウム含有量が、99.4〜95質量%であり、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、CrおよびTiからなる群から選ばれる3種以上を含むアルミニウム合金、スクラップアルミ材または二次地金を使用したアルミニウム板を使用することもできる。
また、アルミニウム合金板のアルミニウム含有率は、特に限定されないが、アルミニウム含有率が95〜99.4質量%であってもよく、さらにこのアルミニウム板が、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、CrおよびTiからなる群から選ばれる3種以上の異元素を以下の範囲で含有することが好ましい(Fe:0.20〜1.0質量%、Si:0.10〜1.0質量%、Cu:0.03〜1.0質量%、Mg:0.1〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.5質量%、Zn:0.03〜0.5質量%、Cr:0.005〜0.1質量%、Ti:0.01〜0.5質量%)。そのようにすると、アルミニウムの結晶粒が微細になるためである。
また、アルミニウム板は、Bi、Ni等の元素や不可避不純物を含有してもよい。
アルミニウム板の製造方法は、連続鋳造方式およびDC鋳造方式のいずれでもよく、DC鋳造方式の中間焼鈍や、均熱処理を省略したアルミニウム板も用いることができる。最終圧延においては、積層圧延や転写等により凹凸を付けたアルミニウム板を用いることもできる。本実施形態に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である、アルミニウムウエブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
本実施形態に用いられるアルミニウム板の厚さは、通常、0.05〜1mm程度であり、0.1mm〜0.5mmであるのが好ましい。この厚さは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザの希望により適宜変更することができる。
本実施形態における平版印刷版用支持体の製造方法においては、上記アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理、及び特定の封孔処理を含む表面処理を施して平版印刷版用支持体を得るが、この表面処理には、更に各種の処理が含まれていてもよい。なお、本実施形態の各種工程においては、その工程に用いられる処理液の中に使用するアルミニウム板の合金成分が溶出するので、処理液はアルミニウム板の合金成分を含有していてもよく、特に、処理前にそれらの合金成分を添加して処理液を定常状態にして用いるのが好ましい。
上記表面処理として、電解粗面化処理の前に、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、電解粗面化処理の後に、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、電解粗面化処理後のアルカリエッチング処理は、省略することもできる。また、これらの処理の前に機械的粗面化処理を施すのも好ましい。また、電解粗面化処理を2回以上行ってもよい。その後、陽極酸化処理、封孔処理、親水化処理等を施すのも好ましい。
本実施形態においては、表面処理が、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、デスマット処理、電解粗面化処理、アルカリエッチング処理および/またはデスマット処理、陽極酸化処理、封孔処理および/または親水化処理、をこの順に含むことが好ましく、この実施形態について説明する。
以下、機械的粗面化処理、第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、電解粗面化処理、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、陽極酸化処理、封孔処理および親水化処理のそれぞれについて、詳細に説明する。なお、本明細書においては、電解粗面化処理の前に行う処理に「第1」という序数をつけて呼び、電解粗面化処理の後に行う処理に「第2」という序数をつけて呼ぶ場合がある。
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電解粗面化処理の前に行うのが好ましい。機械的粗面化処理は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。ローラ状ブラシにおけるブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
本実施形態に用いられる研磨剤は公知の物が使用できる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤、またはこれらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましいが、特にケイ砂はパミストンに比べて硬く、壊れにくいので、粗面化効率が優れる点で好ましい。研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。研磨剤としてパミストンを用いる場合、平均粒径が40〜45μmであるのが特に好ましく、また、研磨剤としてケイ砂を用いる場合、平均粒径が20〜25μmであるのが特に好ましい。研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、研磨スラリー液として用いる。研磨スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。平均粒径とは、研磨スラリー液中に含有される全研磨剤の体積に対し、各粒径の研磨剤粒子の占める割合の累積分布をとったとき、累積割合が50%となる粒径をいう。また、機械的粗面化処理においては、まず、ブラシグレイニングを行うに先立ち、所望により、アルミニウム板の表面の圧延油を除去するための脱脂処理、例えば、界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われてもよい。
<第1アルカリエッチング処理>
第1アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。第1アルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜を除去することを目的として、また、機械的粗面化処理を行った場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、滑らかなうねりを持つ表面を得ることを目的として行われる。アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルカリ溶液を入れた槽の中にアルミニウム板を通過させる方法、アルカリ溶液を入れた槽の中にアルミニウム板を浸漬させる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴き付ける方法等が挙げられる。
エッチング量は、次の工程で電解粗面化処理を施す面については、1〜15g/m2 であるのが好ましく、電解粗面化処理を施さない面については、0.1〜5g/m2 (電解粗面化処理を施す面の約10〜40%)であるのが好ましい。エッチング量が上記の範囲であると、機械的粗面化処理を行っていない場合には、アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油(油脂類)、汚れ、自然酸化皮膜が完全に除去されるため、平版印刷版としたときに、非画像部における保水性に優れ、非画像部にインキが付着して起こる、いわゆるブラン汚れ(ブランケット汚れ)等が生じないので好ましい。また、機械的粗面化処理を行った場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分の溶解が十分となる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。
アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。エッチング処理の量は、1〜15g/m2溶解するのが好ましく、3〜12g/m2溶解するのがより好ましい。第1アルカリエッチング処理は、アルミニウム板のエッチング処理に通常用いられるエッチング槽を用いて行うことができる。エッチング槽としては、バッチ式および連続式のいずれも用いることができる。また、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかけて第1アルカリエッチング処理を行う場合は、スプレー装置を用いることができる。
<第1デスマット処理>
第1デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、酸性溶液を入れた槽の中にアルミニウム板を通過させる方法、酸性溶液を入れた槽の中にアルミニウム板を浸漬させる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴き付ける方法が挙げられる。第1デスマット処理においては、酸性溶液として、後述する電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いるのが好ましい。第1デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、第1デスマット処理の処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。第1デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<電解粗面化処理>
電解粗面化処理は、酸性水溶液中でアルミニウムを陽極として電解することにより、アルミニウム板の表面を粗面化する処理である。
本実施形態に使用される酸性水溶液としては、特に限定されないが、硝酸を主体とする水溶液および塩酸を主体とする水溶液が好ましい。硝酸を主体とする水溶液は、硝酸濃度が5〜15g/Lであるのが好ましく、7〜13g/Lであるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度が3〜15g/Lであるのが好ましく、3〜7g/Lであるのがより好ましい。硝酸を主体とする水溶液におけるアルミニウムイオンの濃度は、硝酸濃度の硝酸水溶液に硝酸アルミニウムを添加することにより調整することができる。塩酸を主体とする水溶液は、塩酸濃度が5〜15g/Lであるのが好ましく、5〜10g/Lであるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度が3〜15g/Lであるのが好ましく、3〜7g/Lであるのがより好ましい。塩酸を主体とする水溶液におけるアルミニウムイオンの濃度は、上記塩酸濃度の塩酸水溶液に塩化アルミニウムを添加することにより調整することができる。また、硝酸を主体とする水溶液および塩酸を主体とする水溶液は、いずれもFe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Ti、不可避的不純物等のイオンを含有することができる。硝酸を主体とする水溶液の液温は、30〜70℃であるのが好ましく、40〜60℃であるのがより好ましい。塩酸を主体とする水溶液の液温は、25〜50℃であるのが好ましく、30〜45℃であるのがより好ましい。
また、本実施形態においては、電解液中に腐食抑制剤を含有してもよい。上記腐食抑制剤としては、不動態皮膜形成型腐食抑制剤、皮膜形成型腐食抑制剤、吸着型腐食抑制剤、気化性腐食抑制剤、沈殿形成型腐食抑制剤等が使用できるが、不動態皮膜形成型腐食抑制剤を用いることが好ましい。また、腐食抑制剤の濃度は、0.001g/L〜100g/Lであることが好ましい。
電解粗面化処理方法としては、交流または直流を用いて行われるが、本発明においては、交流を用いるのが好ましい。電解粗面化処理に用いられる交流は、特に限定されず、例えば、正弦波(サイン波)電流、矩形波電流、三角波電流、台形波電流を用いることができる。中でも、正弦波電流および台形波電流が好ましい。本実施形態において、交流は、単相、二相、三相等のいずれでもよいが、二相以上とすると、粗面化効率に優れるので好ましい。また、交流と直流とを重畳した電流を用いることもできる。交流の周波数は、特に限定されないが、40〜120Hzであるのが好ましく、40〜80Hzであるのがより好ましく、50〜60Hzであるのが更に好ましい。
また、アルミニウム板が陽極になるときの電気量、即ち、陽極時電気量Qaと、陰極になるときの電気量、即ち、陰極時電気量Qcとの比Qc/Qaが0.9〜1であると、アルミニウム板の表面に均一なハニカムピットを形成することができるので好ましく、0.95〜0.99であることがより好ましい。電解租面化処理を、主極のアノード電流を分流する補助電極を有する交流電解槽を用いて行う場合には、補助電極に分流するアノード電流の電流値を制御することにより、Qc/Qaを制御することができる。
交流のdutyは、特に限定されないが、アルミニウム板の表面に均一に粗面化処理を施す点および電源装置の製作の点からは、0.33〜0.66であるのが好ましく、0.4〜0.6であるのがより好ましい。なお、本実施形態において「duty」とは、交流の周期をT、アルミニウム板が陽極反応する時間(アノード反応時間)をtaとしたときのta/Tをいう。アルミニウム板の表面には、カソード反応時に、水酸化アルミニウムを主体とする酸化皮膜が生成し、更に、酸化皮膜の溶解や破壊が生じることがある。そして、酸化皮膜の溶解や破壊が生じると、溶解や破壊が生じた部分は、次のアルミニウム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となる。したがって、交流のdutyの選択は均一な電解粗面化処理を行う点で、特に重要である。
交流における電流値がゼロから正または負のピークに達するまでの時間TPは、台形波電流である場合においては、0.5〜6msecであるのが好ましい。電解粗面化処理における開始時から終了時までの電気量は、アルミニウム板が陽極のときの総和で、10〜1000C/dm2であるのが好ましい。交流におけるアノードサイクル側のピーク時の電流Iap、およびカソードサイクル側のピーク時の電流Icpは、それぞれ20〜100A/dm2であるのが好ましい。また、Icp/Iapは、0.9〜1.5であるのが好ましい。
<第2アルカリエッチング処理>
第2アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。アルカリの種類、アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法およびそれに用いる装置は、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。エッチング量は、電解粗面化処理を施した面については、0.001〜1g/m2であるのが好ましい。アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、0.01〜80質量%であるのが好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜60秒であるのが好ましい。後述する第2デスマット処理において、硫酸を100g/L以上含有し、かつ、液温が60℃以上である酸性溶液を用いるときは、第2アルカリエッチング処理を省略することもできる。
<第2デスマット処理>
第2デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板をリン酸、塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法は、第1デスマット処理の場合と同様のものが挙げられる。第2デスマット処理においては、酸性溶液として、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸溶液の廃液を用いるのが好ましい。また、廃液の代わりに、硫酸濃度が100〜600g/L、アルミニウムイオン濃度が1〜10g/Lであり、液温が60〜90℃である硫酸溶液を用いることもできる。第2デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、第2デスマット処理の処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。第2デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
上記の如く処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施されるのが好ましい。以下、本発明に係る陽極酸化処理について説明する。
陽極酸化処理は、陽極酸化皮膜を形成することができる電解液の中で、アルミニウム板に直流、脈流または交流を流してアルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜(Al)を形成する処理である。
第1の陽極酸化皮膜形成工程では、比較的均一で緻密な陽極酸化アルミニウム皮膜が、皮膜厚さ10〜200nmに形成される。また、第2の陽極酸化皮膜形成工程では、陽極酸化処理の進行に伴って、皮膜表面に垂直で極微細なマイクロポアを有する比較的ポーラスな陽極酸化アルミニウム皮膜が形成される。
本実施形態に使用される電解液としては、ポーラスな陽極酸化皮膜を形成することができる電解液であれば、特に限定されないが、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液が挙げられ、特に、硫酸溶液を用いるのが好ましい。
上記電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸にアルミニウムを添加することにより調製することができる。
また、本実施形態において、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。また、硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理する場合には、アルミニウム板に直流を印加又は交流が印加される。
アルミニウム板に給電する電極としては、鉛、酸化イリジウム、白金、フェライト等により形成された電極を用いることができる。中でも、主に酸化イリジウムから形成された電極、および、基材の表面を酸化イリジウムで被覆した電極が好ましい。そのような基材としては、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等のいわゆるバルブ金属を用いるのが好ましく、バルブ金属の中でも、チタン、ニオブが好ましい。バルブ金属は、比較的電気抵抗が大きいため、銅からなる芯材の表面にバルブ金属をクラッドして基材を形成させてもよい。銅からなる芯材の表面にバルブ金属をクラッドする場合には、複雑な形状の基材を作製することは困難であるため、基材を部品毎に分割した形態の芯材にバルブ金属をクラッドし、その後、各部品を組み合わせて基材を組み立ててもよい。
平版印刷版の耐刷性の点から、陽極酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2であることが好ましく、1.5〜4.0g/m2であることがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下であることが好ましい。
次に、本発明に係る陽極酸化処理の条件及び方法について、図1を用いて説明する。図1は、陽極酸化膜の形成過程を説明する図である。なお、図1において、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)の順に陽極酸化皮膜が形成される様子を示す。
本発明に係る陽極酸化処理方法は、皮膜厚さ10〜200nmの陽極酸化皮膜が形成されるまで電流密度と電気量とを制御した後、電流密度を増加させることを特徴としている。
すなわち、図1(a)〜図1(b)に示されるように、陽極酸化処理開始当初においては、1〜10A/dm2の低電流密度かつ10〜300C/dm2の電気量で、アルミニウム板12上に、皮膜厚さが10〜200nmである陽極酸化皮膜14を形成させる(第1の陽極酸化皮膜形成工程)。
次いで、図1(b)に示されるように、陽極酸化が進行して陽極酸化皮膜14の皮膜厚さがある一定レベル形成されると、図1(c)に示されるように、皮膜表面に垂直であり個々が均一に分布した極微細なマイクロポア16が形成されるようになり、ポーラスな陽極酸化皮膜14’が形成される(第2の陽極酸化皮膜形成工程)。
この図1(c)〜図1(d)の段階で、電流密度を10〜70A/dm2に増加させることが本発明の特徴部分であり、重要なポイントである。
第1の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度は、3〜10A/dmであることが好ましく、第2の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度は、10〜40A/dmであることが好ましい。また、第1の陽極酸化皮膜形成工程における電気量は、10〜200C/dmであることが好ましく、10〜60C/dmであることがより好ましい。陽極酸化皮膜の厚さは、1〜6μmであることが好ましく、2〜4μmであることがより好ましい。
また、陽極酸化処理のその他の条件としては、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電圧1〜100V、の範囲であるのが適切である。
図2は、本発明に係る陽極酸化処理における電流密度の切り換え方法の一例を示す図である。図2において、点Aは、電流密度を増加させるタイミングを表す。
電流密度の切り換え方法としては、第1の陽極酸化皮膜形成工程から第2の陽極酸化皮膜形成工程へ移行する段階(点A付近)において、図2(a)に示されるように、パルス的に電流密度を急激に増加させる方法がある。また、図2(b)に示されるように線形的に電流密度を増加させる方法、図2(c)に示されるように、曲線的に電流密度を増加させる方法、又は図2(d)に示されるように、段階的に電流密度を増加させる方法、等もある。中でも、図2(b)〜(d)のように、徐々に電流密度を増加させる方法が、より均一な皮膜厚さの陽極酸化皮膜を形成できる上で好ましい。
次に、本発明に係る陽極酸化処理の作用について説明する。
まず、低電流密度で一定の電気量の範囲内で電解することにより、比較的緻密で均一な陽極酸化皮膜が形成される。
次いで、一定レベルの皮膜厚さの陽極酸化皮膜が形成されると、この陽極酸化皮膜にマイクロポアが発生しはじめる。ここで、10〜200nmの陽極酸化皮膜が形成された段階で電流密度を増加させることにより、皮膜の形成と溶解が同時にかつ高速で進行するようになる。そして、皮膜表面に垂直であり個々が均一に分布した極微細なマイクロポアを有するポーラスな陽極酸化皮膜が形成される。
このように、陽極酸化処理開始当初において、電流密度だけでなく電気量をも制御することにより、比較的緻密で均一な皮膜厚さの陽極酸化皮膜を形成させることができる。その後、高電流密度で陽極酸化処理することにより、充分な皮膜厚さを有し、均一でポーラスな(表面活性の高い)陽極酸化皮膜を形成することができる。
次に、陽極酸化処理を行う陽極酸化処理装置20について説明する。
図3は、陽極酸化処理装置20の一例を示す概略図である。なお、以下では、電流密度を段階的に増加させる図2(d)の切り換え方法について説明する。
図3の陽極酸化処理装置20は、主に、給電電極20が備えられた給電槽22と、酸化皮膜を段階的に形成する電解電極40−1、40−2、40−3が備えられた電解処理槽14と、を備えている。
給電槽22は、給電電極30によってアルミニウム板12を(+)に荷電させる装置である。電解処理槽14は、電解電極30によってアルミニウム板(12)を(−)に荷電させて陽極酸化皮膜を形成させる装置である。給電電極30と電解電極40とは、直流電源44−1〜44−3に接続されている。
本実施形態においては、電極処理槽24において、3つの電解電極40−1、40−2、40−3を用意する。このうち、電解電極40−1は、低電流密度かつ一定の電気量の条件で、比較的均一で緻密な陽極酸化皮膜を皮膜厚さ10〜200nmに形成させる。また、電解電極40−2、40−3は、高電流密度でポーラスな陽極酸化皮膜を形成させる。
低電流密度下における電気量の制御は、たとえば、電解電極40−1の搬送方向の長さやアルミニウム板12の搬送速度を変えることによって行ってもよいが、これらに限定されない。高電流密度下における電気量の制御についても同様である。
次に、陽極酸化処理装置20を用いた本発明に係る陽極酸化処理の流れについて説明する。
まず、アルミニウム板12は、図中矢印で示すように搬送される。電解液28が貯溜された給電槽22にてアルミニウム板12は給電電極30によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板12は、給電槽22においてローラ32によって上方に搬送され、ニップローラ34によって下方に方向変換された後、電解処理槽24に向けて搬送され、ローラ38によって水平方向に方向転換される。
次いで、アルミニウム板12は、電解電極40によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽24を出たアルミニウム板12は後工程に搬送される。陽極酸化処理装置20において、ローラ32、ニップローラ34及びローラ38によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板12は、給電槽22と電解処理槽24との槽間部において、ローラ32、34、38により山型及び逆U字型に搬送される。
また、流速をコントロールする吹出しノズル45は、陽極酸化皮膜を生成する槽24内の流速をコントロールする。
上記陽極酸化皮膜生成工程において、陽極酸化皮膜を生成する槽24内の流速をコントロールすることは、界面の冷却を行い、均一な皮膜を生成する上で重要である。したがって、流速は1〜250cm/secに調節することが好ましく、5〜100cm/secに調節することがより好ましい。
また、陽極酸化皮膜を生成する槽24の電流密度をコントロールするために、少なくとも2段階以上に分けて電流密度及び電気量を制御することが好ましい。たとえば、第一段階(電解電極40−1)において、1〜10A/dm2の低電流密度かつ10〜300C/dm2の電気量を満たす電解条件で制御することが好ましく、第二段階(電解電極40−2)、第三段階(電解電極40−3)において、10〜70A/dm2の範囲で電流密度を段階的に増加させることが好ましい。
電解液28の温度、または硫酸等の濃度の制御は、オンラインでの直接測定が難しいため、電導度、比重で制御する。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/lで、アルミニウム濃度5重量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化膜を形成することができる。
<封孔処理>
本発明においては、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を、沸騰水、熱水または水蒸気に接触させて陽極酸化処理に存在する小孔(マイクロポア)を封じる封孔処理を行ってもよい。これらは、公知の方法に従って行うことができる。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗り層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホン酸基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
<感光層>
本実施形態により得られる平版印刷版用支持体に、感光層を設けて、平版印刷版原版が得られる。感光層は、特に限定されないが、例えば、通常の可視光で露光する可視光露光型製版層、赤外線レーザ光等のレーザ光で露光するレーザ露光型製版層が挙げられる。以下、可視光露光型製版層およびレーザ露光型製版層について説明する。
1)可視光露光型製版層
可視光露光型製版層は、感光性樹脂および必要に応じて着色剤等を含有する組成物により形成することができる。感光性樹脂としては、光が当たると現像液に溶けるようになるボジ型感光性樹脂、光が当たると現像液に溶解しなくなるネガ型感光性樹脂が挙げられる。
ポジ型感光性樹脂としては、例えば、キノンジアジド化合物、ナフトキノンジアジド化合物等のジアジド化合物と、フェノールノボラック樹脂、クレゾール−ノボラック樹脂等のフェノール樹脂との組み合わせが挙げられる。
ネガ型感光性樹脂としては、例えば、ジアゾ樹脂(例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等のアルデヒド類との縮合物)、前記ジアゾ樹脂の無機酸塩、前記ジアゾ樹脂の有機酸塩等のジアゾ化合物と、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の結合剤との組み合わせ、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂等のビニルポリマーと、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のビニル重合性化合物と、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等の光重合開始剤との組み合わせが挙げられる。
上記着色剤としては、通常の色素のほか、露光により発色する露光発色色素、露光によりほとんどまたは完全に無色になる露光消色色素等を用いることができる。露光発色色素としては、例えば、ロイコ色素が挙げられる。露光消色色素としては、例えば、トリフェニルメタン系色素、ジフェニルメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、アントラキノン系色素が挙げられる。
可視光露光型製版層は、例えば、上記感光性樹脂と上記着色剤とを溶剤に配合した感光性樹脂溶液を塗布し、その後、乾燥させることにより形成することができる。感光性樹脂溶液に用いられる溶剤としては、上記感光性樹脂を溶解することができ、かつ、室温である程度の揮発性を有する溶剤が挙げられる。具体的には、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、炭酸エステル系溶剤が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトンが挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチルが挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブが挙げられる。アミド系溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが挙げられる。炭酸エステル系溶剤としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸ジブチルが挙げられる。
感光性樹脂溶液の塗布方法は、特に限定されず、回転塗布法、ワイヤーバー塗布法、ディップ塗布法、エアーナイフ塗布法、ロール塗布法、ブレード塗布法等の従来公知の方法を用いることができる。
2)レーザ露光型製版層
レーザ露光型製版層としては、例えば、レーザ光を照射した部分が残存するネガ型レーザ製版層、レーザ光を照射した部分が除去されるポジ型レーザ製版層、レーザ光を照射すると光重合する光重合型レーザ製版層が主なものとして挙げられる。
ネガ型レーザ製版層は、(A)熱または光により分解して酸を発生させる酸前駆体、(B)酸前駆体(A)が分解して発生した酸により架橋する酸架橋性化合物、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、および(E)フェノール性水酸基含有化合物を適当な溶剤に溶解させ、または懸濁させたネガ型レーザ製版層形成液を用いて形成することができる。
酸前駆体(A)としては、例えば、イミノフォスフェート化合物のように、紫外光、可視光または熱により分解してスルホン酸を発生させる化合物が挙げられる。ほかには、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、光変色剤等として一般に使用されている化合物も、酸前駆体(A)として用いることができる。酸架橋性化合物(B)としては、例えば、アルコキシメチル基およびヒドロキシル基のうち少なくとも一方を有する芳香族化合物、N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、エポキシ化合物が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂(C)としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリ(ヒドロシスチレン)等の側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
赤外線吸収剤(D)としては、例えば、波長760〜1200nmの赤外線を吸収する染料および顔料が挙げられる。具体的には、例えば、黒色顔料、赤色顔料、金属粉顔料、フタロシアニン系顔料;前記波長の赤外線を吸収するアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン色素が挙げられる。フェノール性水酸基含有化合物(E)としては、例えば、一般式(R1−X)n−Ar−(OH)m(式中、R1は、炭素数6〜32のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは、単結合、O、S、COOまたはCONHであり、Arは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基または複素環基であり、nおよびmは、それぞれ1〜8の自然数である。)で表される化合物が挙げられる。そのような化合物としては、例えば、ノニルフェノール等のアルキルフェノール類が挙げられる。ネガ型レーザ製版層形成液には、上記各成分のほかに、可塑剤等を配合することもできる。
ボジ型レーザ製版層は、(F)アルカリ可溶性高分子、(G)アルカリ溶解阻害剤、および(H)赤外線吸収剤を適当な溶剤に溶解させ、または懸濁させたポジ型レーザ製版層形成液を用いて形成することができる。アルカリ可溶性高分子(F)としては、例えば、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール樹脂、ポリ(ヒドロキシスチレン)等のフェノール性水酸基を有するフェノール系ポリマー;少なくとも一部のモノマー単位がスルホンアミド基を有するポリマーであるスルホンアミド基含有ポリマー;N−(p−トルエンスルホニル)(メタ)アクリルアミド基等の活性イミド基を有するモノマーの単独重合または共重合により得られる活性イミド基含有ポリマーが挙げられる。
アルカリ溶解阻害剤(G)としては、例えば、加熱等によりアルカリ可溶性高分子(F)と反応してアルカリ可溶性高分子(F)のアルカリ溶解性を低下させる化合物が挙げられる。具体的には、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、アミド化合物が挙げられる。アルカリ可溶性高分子(F)とアルカリ溶解阻害剤(G)の組み合わせとしては、アルカリ可溶性高分子(F)としてノボラック樹脂、アルカリ溶解阻害剤(G)としてスルホン化合物の一種であるシアニン色素の組み合わせが好適に挙げられる。赤外線吸収剤(H)としては、例えば、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、カーボンブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料等の波長750〜1200nmの赤外域に吸収領域があり、光/熱変換能を有する色素、染料および顔料が挙げられる。
光重合型レーザ製版層は、(I)分子末端にエチレン性不飽和結合を有するビニル重合性化合物を含有する光重合型レーザ製版層形成液を用いて形成することができる。光重合型レーザ製版層形成液には、必要に応じて、(J)光重合開始剤、(K)増感剤等を配合することができる。ビニル重合性化合物(I)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであるエチレン性不飽和カルボン酸多価エステル;前記エチレン性不飽和カルボン酸と多価アミンとからなるメチレンビス(メタ)アクリルアミド;キシリレン(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸多価アミドが挙げられる。ビニル重合性化合物(I)としては、ほかに、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルが挙げられる。光重合開始剤(J)としては、ビニル系モノマーの光重合に通常使用される光重合開始剤を用いることができる。増感剤(K)としては、例えば、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、キサンテン色素、クマリン色素が挙げられる。
上述したネガ型レーザ製版層形成液、ポジ型レーザ製版層形成液および光重合型レーザ製版層形成液に使用される溶剤、ならびに、ネガ型レーザ製版層形成液、ポジ型レーザ製版層形成液および光重合型レーザ製版層形成液の塗布方法については、上記感光性樹脂溶液について挙げた溶剤および塗布方法を用いることができる。なお、光重合型レーザ製版層を形成させる場合においては、シラン化合物を水、アルコールまたはカルボン酸で部分分解して得られる部分分解型シラン化合物等の反応性官能基を有するシリコーン化合物を用いて、平版印刷版用支持体の粗面化処理面をあらかじめ処理しておくと、支持体と光重合型レーザ製版層との接着性が向上するため好ましい。
<マット層>
上記のようにして設けられた感光層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、かつ、焼きボケを防止するため、マット層が設けられてもよい。具体的には、マット層を設ける方法、固体粉末を熱蒸着させる方法等が挙げられる。
<バックコート層>
上述したようにして得られる平版印刷版原版には、重ねても感光層が傷付かないように、裏面(感光層が設けられない側の面)に、有機高分子化合物からなる被覆層(以下「バックコート層」ともいう。)を必要に応じて設けてもよい。バックコート層の主成分としては、ガラス転移点が20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いるのが好ましい。
飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。ジカルボン酸ユニットとしては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
バックコート層は、更に、着色のための染料や顔料、支持体との密着性を向上させるためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸、カチオン性ポリマー、滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンからなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜含有することができる。
バックコート層の厚さは、基本的には合紙がなくても、感光層を傷付けにくい程度であればよく、0.01〜8μmであるのが好ましい。厚さが0.01μm未満であると、平版印刷版原版を重ねて取り扱った場合の感光層の擦れ傷を防ぐことが困難である。また、厚さが8μmを超えると、印刷中、平版印刷版周辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させることがある。
バックコート層を平版印刷版原版の裏面に設ける方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、上記バックコート層用成分を適当な溶媒に溶解させ溶液にして塗布し、または、乳化分散液して塗布し、乾燥する方法;あらかじめフイルム状に成形したものを接着剤や熱での平版印刷版原版に貼り合わせる方法;溶融押出機で溶融被膜を形成し、平版印刷版原版に貼り合わせる方法が挙げられる。好適な厚さを確保するうえで最も好ましいのは、バックコート層用成分を適当な溶媒に溶解させ溶液にして塗布し、乾燥する方法である。
平版印刷版原版の製造においては、裏面のバックコート層と表面の感光層のどちらを先に支持体上に設けてもよく、また、両者を同時に設けてもよい。
このようにして得られた平版印刷版原版を、必要に応じて、適当な大きさに裁断して、露光し現像して製版することにより、平版印刷版が得られる。可視光露光型製版層(感光性製版層)を設けた平版印刷版原版の場合には、印刷画像が形成された透明フイルムを重ねて通常の可視光を照射することにより露光し、その後、現像を行うことにより製版することができる。レーザ露光型製版層を設けた平版印刷版原版の場合には、各種レーザ光を照射して印刷画像を直接書き込むことにより露光し、その後、現像することにより製版することができる。
以上のように、本発明に係る平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版を採用することにより、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に高速かつ均一に形成することができる。これにより、耐刷性や印刷性に優れた平版印刷版原版を得ることができる。
以上、本発明に係る平版印刷版用支持体の製造方法、並びにその平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明を適用した平版印刷版用支持体の陽極酸化皮膜形状について、以下の手順で評価した。
アルミニウム板は、厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A1050)を使用した。このアルミニウム板に後述の各表面処理を施して、陽極酸化処理を行った。なお、本実施例において、表面処理は、1)機械的粗面化処理→2)第1アルカリエッチング処理→3)第1デスマット処理→4)電解粗面化処理→5)第2アルカリエッチング処理→6)第2デスマット処理→7)陽極酸化処理の順に行った。各処理の詳細について、以下に示す。なお、各処理の後には、スプレーによる水洗を行い、また、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
1)機械的粗面化処理
図4に示されるブラシグレイニング工程50を使って、平均粒径20μmの研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液(比重1.12)として、スプレー管でアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。
図4の機械粗面化処理装置50において、52および54はローラ状ブラシ、53は研磨スラリー液、55、56、57および58は支持ローラである。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は60mm、毛の直径は0.295mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して管理し、その差は1.5kWであった。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は250rpmであった。機械的粗面化処理後の算術平均粗さ(JIS B0601−1994に準拠してカットオフ値0.3mm、評価長さ3mmで測定した。)は、いずれも0.5μmの範囲の値であった。
2)第1アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダを27質量%、アルミニウムイオンを6.5質量%含有する水溶液に液温70℃で浸せきさせて、第1アルカリエッチング処理を行い、アルミニウム板の処理面を表2に示す量で溶解させた。
3)第1デスマット処理
液温35℃の酸性水溶液の中にアルミニウム板を20秒間浸漬させて、第1デスマット処理を行った。なお、酸性水溶液としては、次の電解粗面化処理で用いる酸性水溶液の廃液を用いた。
4)電解粗面化処理
水1Lあたり、35質量%塩酸を20g、塩化アルミニウム6水和物を40gに調整した酸性水溶液50Lを用いて、液温35℃で電解粗面化処理を行った。電解粗面化処理は、周波数60Hz、duty0.5の台形波の交流電流を用い、交流における電流値がゼロから正または負のピークに達するまでの時間TPを0.8msecとし、交流におけるアノードサイクル側のピーク時の電流密度Iapを35A/dm2、カソードサイクル側のピーク時の電流密度Icpを35A/dm2とし、陽極時電気量Qaと陰極時電気量Qcとの比Qc/Qaを0.95として行った。
5)第2アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダを5質量%、アルミニウムイオンを0.5質量%含有する水溶液に液温30℃で浸漬させて、第2アルカリエッチング処理を行い、アルミニウム板の処理面を溶解させた。
6)第2デスマット処理
硫酸濃度170g/Lの水溶液の中にアルミニウム板を温度60℃に5秒間浸漬させて、第2デスマット処理を行った。
7)陽極酸化処理
図3において、電解電極40−3を除いた陽極酸化処理装置20により、陽極酸化処理を行った。電解液28としては、硫酸濃度170g/Lの硫酸に、硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度が5g/Lとなるように調製した酸性水溶液を用いた。
また、直流電流を用いて、液温45℃で、陽極酸化皮膜量がトータルで2.4g/mになるように陽極酸化処理を行った。
また、第1の陽極酸化皮膜形成工程においては、図3の電解電極40−1により電解処理し、第2の陽極酸化皮膜形成工程においては、同図の電解電極40−2により電解処理した(実施例1、及び比較例1〜3)。
また、上記の如く得られた平版印刷版用支持体の表面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150000倍で観察し、表面に生成した陽極酸化皮膜の皮膜厚さの均一性を評価した。
先ず、実施例1として、第1の陽極酸化皮膜形成工程では電流密度3A/dm、電気量10C/dmで電解して、陽極酸化皮膜を皮膜厚さで10〜200nmに形成した後、第2の陽極酸化皮膜形成工程において電流密度を30A/dmの高電流密度に増加させた。
一方、比較例1として、第1の陽極酸化皮膜形成工程開始から第2の陽極酸化皮膜形成工程終了まで、電流密度を30A/dmの一定の高電流密度で電解処理した。
また、比較例2として、第1の陽極酸化皮膜形成工程では電流密度3A/dmで電解処理して皮膜厚さが10nm未満の陽極酸化皮膜を形成し、第1の陽極酸化皮膜形成工程の途中から電流密度を30A/dmの高電流密度に増加させ、そのまま第2の陽極酸化皮膜形成工程終了まで電解処理した。
また、比較例3として、第1の陽極酸化皮膜形成工程開始から第2の陽極酸化皮膜形成工程の途中まで、電流密度3A/dmで電解処理し、第2の陽極酸化皮膜形成工程の途中から電流密度を30A/dmの高電流密度で電解処理した。
その結果、実施例1では、皮膜厚さが極めて均一な陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に形成することができたが、比較例1、2では、いずれも皮膜厚さが不均一であった。また、比較例3では、陽極酸化皮膜は均一に形成されたが、低電流密度の時間が長く、生産性が低かった。
以上から、第1の陽極酸化皮膜形成工程後、第2の陽極酸化皮膜形成工程において電流密度を増加させることにより、充分な皮膜厚さの陽極酸化皮膜をアルミニウム板上に高速かつ均一に形成することができることが解った。
次に、本発明に係る陽極酸化処理の条件(電流密度、電気量)の適正化を行った。
第1の陽極酸化皮膜形成工程においては、図3の電解電極40−1により、表1に示される電流密度及び電気量で電解処理し、第2の陽極酸化皮膜形成工程においては、同図の電解電極40−2により、表1に示される電流密度及び電気量で電解処理した(試験1〜23)。なお、前述の場合と同様に、直流電流を用いて、液温45℃で陽極酸化処理を行った。
陽極酸化皮膜厚さの均一性の評価も前述と同様に行った。このときの、評価結果を表1に示す。なお、表1において、皮膜厚さが極めて均一であったものを○、均一性が良好であったものを△、不均一であったものを×で表した。さらに、図5において、陽極酸化皮膜の均一性の分布を表した。このうち、図5(B)は、図5(A)における電気量が0〜20C/dm2の範囲(領域P)を拡大したグラフである。また、均一性の評価は、皮膜のムラがあるものを×、皮膜のムラがないものを○とした。
Figure 2007237397
まず、表1に示されるように、第1の陽極酸化皮膜形成工程において、電流密度を1〜10A/dm2の範囲とし、かつ、電気量を10〜300C/dm2の範囲とすれば、均一で緻密な陽極酸化皮膜を形成することができ、さらに、第2の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度を10〜70A/dm2の範囲とすれば、上記第1の陽極酸化皮膜形成工程で形成された陽極酸化皮膜をベースとして、充分な皮膜厚さかつ皮膜厚さのムラがないポーラスな陽極酸化皮膜を形成することができた(試験10、18〜23)。
また、図5において、充分な厚さで、均一な陽極酸化皮膜が得られる電解条件は、右下の領域に該当することが解った。
さらに、第1の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度が3〜10A/dm2の範囲とし、かつ電気量が10〜60C/dm2の範囲とし、さらに第2の陽極酸化皮膜形成工程における電流密度が1〜40A/dm2の範囲とすると、生産性が高く、極めて均一で緻密な陽極酸化皮膜をベースとした表面活性の高い(表面積の高い)陽極酸化皮膜を形成することができた。
本発明に係る陽極酸化膜の形成過程を説明する図である。 本発明に係る陽極酸化処理の電流密度の切り換え方法を説明する図である。 本実施形態における陽極酸化処理装置を説明する側面図である。 本実施形態において機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニング工程の概念を示す側面図である。 本実施例のグラフである。
符号の説明
10…アルミニウム板(陽極酸化皮膜処理)、12…アルミニウム板(未処理)、14…陽極酸化皮膜(第1の陽極酸化皮膜形成工程)、14’…陽極酸化皮膜(第2の陽極酸化皮膜形成工程)、16…マイクロポア、20…陽極酸化処理装置、22…給電槽、24…電解処理槽、28…電解液、30…給電電極、40…電解電極、50…ブラシグレイニング工程(機械的粗面化処理工程)

Claims (6)

  1. アルミニウム板に陽極酸化処理を含む表面処理を施して平版印刷版用支持体を製造する方法であって、前記陽極酸化処理が、低電流密度で定電流電解処理することにより皮膜厚さが10〜200nmの陽極酸化皮膜を形成する第1の陽極酸化皮膜形成工程と、該第1の陽極酸化皮膜形成工程後に電流密度を増加させて陽極酸化皮膜を形成する第2の陽極酸化皮膜形成工程と、を備えたことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
  2. 前記第1の陽極酸化皮膜形成工程においては、1〜10A/dmの低電流密度かつ10〜300C/dmの電気量で電解処理するとともに、前記第2の陽極酸化皮膜形成工程においては、10〜70A/dmの電流密度で電解処理することを特徴とする請求項1の平版印刷版用支持体の製造方法。
  3. 前記第2の陽極酸化皮膜形成工程において、線形的、曲線的、又は段階的に前記電流密度を増加させることを特徴とする請求項1又は2の平版印刷版用支持体の製造方法。
  4. 前記第1の陽極酸化皮膜形成工程及び前記第2の陽極酸化皮膜形成工程において、同一の電解液を使用することを特徴とする請求項1〜3の何れか1の平版印刷版用支持体の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1の平版印刷版用支持体の製造方法を適用して製造したことを特徴とする平版印刷版用支持体。
  6. 請求項5の平版印刷版用支持体を用いて製造したことを特徴とする平版印刷版原版。
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