JP2007237274A - 歯車の製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明は、所定形状の凹凸歯のみを所望の歯幅で確保できるとともに、軸部の長さを短縮することが可能な歯車の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の歯車の製造方法は、軸心周りに所定形状の凹凸歯を備えた歯車の製造方法であって、歯車加工により所定形状の凹凸歯に軸方向に隣接して生じる歯先円の径が所定形状の凹凸歯の歯先円径以下である(すなわち、断面積が所定形状の凹凸歯の断面積よりも小さい)不完全凹凸歯に塑性加工を施すことで平滑化するとともに所望の歯幅を確保することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、歯車の製造方法に関し、より詳細には転造加工法による歯車の製造方法に関する。
ヘリカルギヤは軸心周りに螺旋溝を有する円筒形状の歯車であり、平行軸間で大きな減速比を得る歯車伝達機構に好適である。例えば、自動車のシートの背もたれの傾き調整や位置調整、あるいはウィンドーの開閉など、限られたスペース内でアクチュエータの出力動力を変換して低速の大きなトルクを得る用途に多用されている。ウォームギヤを用いても大きな減速比が得られるが、駆動側と従動側の軸が直交するため平行軸間には適さず、また伝達効率が低いという欠点をもつ。ヘリカルギヤは螺旋溝により形成されるねじれ凹凸歯をもつため、直歯歯車より少ない歯数でも安定して動力を伝達することができ、また伝達効率も高い。
ヘリカルギヤの製造では、円筒状の被加工素材に螺旋溝を加工する必要があり、ホブ加工法のほかに、生産性に優れた転造加工法が用いられている。転造加工法では、被加工素材に対して複数の転造用ダイスを対向配設し、ダイスの加工歯を被加工素材の外周面に食い込ませながら、被加工素材を軸心周りに回転させて、螺旋溝を加工している。転造用ダイスとしては、平ダイス、丸ダイス、プラネタリダイス(プラネタリセグメント及びプラネタリ丸ダイス)などが広く用いられている。
転造加工の際、転造用ダイスの端部によって加工される部分は螺旋溝の形状が不完全となるため、一般的に次工程でこの不完全部分の除去加工が行われている(特許文献1など参照)。この除去範囲は軸方向ピッチの小さなねじ類ではあまり問題にならないが、ねじれ角が小さく軸方向ピッチの大きなヘリカルギヤでは被加工素材の歩留まり低下や除去加工作業工数の増加などの点で優れているとは言えない。
また、図5の部分断面模式図に示すように、所定形状のねじれ凹凸歯112に隣接する点線アで示す不完全部分(不完全ねじれ凹凸歯)114を切削加工で除去した軸付きヘリカルギヤの場合、実線イで示す切削加工後には部分的に溝部118が残ることがある。このため、切削加工後の不完全部分114を軸受部とすることができず、例えば、軸受部に相当する分だけ軸部116を長くしなければならないために、このようなヘリカルギヤを用いた減速機付きモータなどの小型化を阻害するという問題を生じる。
特開昭59−94545号公報
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、所定形状の凹凸歯のみを所望の歯幅で確保できるとともに、軸部の長さを短縮することが可能な歯車の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の歯車の製造方法は、軸心周りに所定形状の凹凸歯を備えた歯車の製造方法であって、歯車加工により所定形状の凹凸歯に軸方向において隣接して生じ歯先円の径が所定形状の凹凸歯の歯先円径以下である(すなわち、断面積が所定形状の凹凸歯の断面積よりも小さい)不完全凹凸歯に塑性加工を施すことで平滑化するとともに所望の歯幅を確保することを特徴とする。
本発明の製造方法では、所定形状の凹凸歯の歯車加工及び不完全凹凸歯の塑性加工は転造加工であることが望ましく、転造加工における転造ダイスは、所定形状の凹凸歯を形成する歯車加工部と、この歯車加工部に連続して不完全凹凸歯を塑性加工する不完全凹凸歯平滑加工部と、所定形状の凹凸歯を維持して通過させる逃がし部とを備えることが望ましい。
本発明の歯車の製造方法は、転造加工工程だけで不完全凹凸歯を除去することが可能であり、従来技術のように後工程で不完全凹凸歯を除去するための切削加工を必要としない。従って、加工設備を削減できるとともに、加工工数の低減を図ることができる。
また、不完全凹凸歯の溝部が転造加工による塑性流動で平滑化された平滑軸部となるため、軸方向長さに不要な部分が生じない。従って、この平滑軸部を軸受部などとして有効に活用することができ、軸方向長さが短いコンパクトな製品設計が可能となる。
まず、本発明に好適な実施形態の転造ダイス(平ダイス)の構成とこれを用いた歯車の製造方法とを図1を参照しながら説明する。本実施形態において歯車はねじれ凹凸歯を有するヘリカルギヤである。
周知のように、転造ダイスは固定平ダイスと可動平ダイス、もしくは一対の可動平ダイスとからなり、これら転造ダイスのダイス面を対向配置させた状態で並行に相対移動させることで被加工素材を転造加工することができる。
図1は転造ダイスの固定平ダイス20の構成を説明する概要図であり、(a)は平面図、(b)はS視側面図である。なお、可動平ダイスも固定平ダイス20とほぼ同様の構成であるのでその説明は省略する。
平ダイス20のダイス面22には、ねじれ凹凸歯12(凹凸歯)を形成する歯車加工部24と、この歯車加工部24に連続して不完全ねじれ凹凸歯(不完全凹凸歯)(図示せず)を塑性加工する平滑加工部26と、平滑加工部26に平行して平ダイスの後端Bに向かって下降する傾斜面を有する逃がし部28が配設されている。
平ダイス22の進行方向先端Aから後端B側へ延伸する歯車加工部24には、加工方向に向かって傾斜した成形条溝24aが形成されている。ここで、転造ダイスの滑りを防止するために、成形条溝24aに粗面化を施してもよい。
平滑加工部26は、歯車加工部24の終端部Cからダイス20の後端Bに向かって延伸する平滑な水平面26aである。この水平面26aには、ねじれ凹凸歯を形成するための成形条溝は形成されておらず、加工中に所定形状のねじれ凹凸歯12に隣接する軸部16に当接して、不完全ねじれ凹凸歯を平滑軸部14に塑性加工する。不完全ねじれ凹凸歯を確実に平滑化するために、歯車加工部24の終端部Cからダイス20の後端Bまでの長さを軸部16の外周の2倍以上とするとよい。
なお、水平面26aにセレーション26b(図2(a))や粗面化などを施して、転造ダイスの滑りを防止するようにしてもよい。また、平滑加工部26は、水平面ではなく歯車加工部24の終端部Cからダイス20の後端Bに向かって徐々に高くなるように延伸する緩斜面としてもよい。また、加工方向に向かって登り勾配の緩斜面イと水平面ロと下り勾配の緩斜面ハとを連続して形成した平滑加工部26’としてもよい。また、図2(c)に示すように、勾配の異なる登り勾配の緩斜面ニ、ホと水平面ヘとを加工方向に向かって傾斜するように連続して形成してもよい。ここで緩斜面ニの勾配θ1は緩斜面ホの勾配θ2よりも大きい(θ2<θ1)。このように勾配を有する面を加工方向に対して傾斜して設けることで、平滑軸部14の平滑面を段階的に形成することができる。
逃がし部28は、上記のように歯車加工部24の終端部Cからダイス20の後端Bに向かって下降する傾斜面で構成されているので、成形された所定形状のねじれ凹凸歯12に接することなく、徐々に離間してゆく。
なお、逃がし部28の幅Wを所望の歯幅とすることが望ましい。また、逃がし部28は上記のような傾斜面ではなく、平滑加工部26の緩斜面26aよりdだけ下がった段差部28’(図2(d))としてもよい。さらに、図2(a)に破線で示すように、段差部28’の段差面28’aに歯車加工部24で創成した歯車部12と噛合いする噛合条溝28’bを形成し、歯車部12と噛合条溝28’bとが噛み合うことでヘリカルギヤが転動して平滑加工部26における滑りを確実に防止するようにしてもよい。
このように構成されたダイス面22を持つ一対の転造平ダイス20に棒体などの被加工素材Dを噛込ませて、転造ダイスを相対的に矢印Y方向へ移動させることで、転造されたヘリカルギヤ10を得ることができる。
図3に、転造されたヘリカルギヤ10の部分断面模式図を示す。完成したヘリカルギヤ10は、所定形状のねじれ凹凸歯部分12と、その回転を他の部材へ伝達する運動伝達部分(軸部)16とからなる。歯車加工直後には所定形状のねじれ凹凸歯12に隣接して破線アで示す溝部18を有する不完全ねじれ凹凸歯が形成されている。しかし、平滑加工部26で塑性加工することで実線イで示すように平滑化され平滑軸部14となる。この平滑軸部14は軸部16に含まれる。
本発明のヘリカルギヤ10は、図4に示す減速機付き小型モータ(ギヤードモータ組付体)30におけるモータ32のコア34に圧入固定した状態で用いることができる。ここで、ヘリカルギヤ10の軸部16にはナール加工を施し、コア34に対する圧入固定を強固なものとしている。
モータ32はねじを介してギヤケース36に固定されており、ヘリカルギヤ10は、モータ32内において軸受38a、38bにより回転自在に支持されている。ヘリカルギヤ10のねじれ凹凸歯部分12は、ギヤケース36内にて回転自在に取り付けられた他のヘリカルギヤ40に噛合いしている。
この減速機付き小型モータ30においては、モータ32から出力された駆動トルクがヘリカルギヤ10に伝達され、減速機部においてヘリカルギヤ10から他のヘリカルギヤ40に伝達され、出力軸42から外部に取り出される。
このように、ヘリカルギヤ10を用いることにより、大きな減速比をコンパクトな装置で実現することができる。特に、ヘリカルギヤ10の不完全ねじれ凹凸歯を平滑化し、平滑軸部14として軸受38aを配置することができるので、ギヤケース36の高さHを切りつめることができる。
本発明のヘリカルギヤの製造方法によれば、転造加工工程のみで必要な歯幅を有する所定形状のねじれ凹凸歯の加工と、不完全ねじれ凹凸歯部分の平滑化とを一挙に実施することができるので、被加工素材の材料歩留まりや生産効率を向上することができる。また、組み付け時の軸方向長さを短縮することが可能になる。従って、上述のような減速機付き小型モータに適用すれば、そのモータの軽量化と厚さ方向のコンパクト化を実現することができる。
なお、本発明の歯車の製造方法は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えうることは勿論のことである。例えば、転造ダイスとしては、図1に示す平ダイスに限らず丸ダイス、プラネタリダイスなどにも適用することができる。また、転造工程としては、ねじれ凹凸歯を創成する工程と不完全ねじれ凹凸歯を塑性加工する平滑化工程とを切り離して別工程としてもよい。なお、上記の転造加工と同様にホブ加工により発生する切れ上がり部についても別工程とした平滑化工程で平滑化することができる。
本発明の歯車の製造方法は、ヘリカルギヤのみならず、スパーギヤ、ウォームギヤなど全ての歯車の製造に適用して極めて有用である。
本実施形態に適用した転造ダイスの構成を示す概要図であり、(a)は平面図、(b)はS視側面図である。 転造ダイスの他の形態を説明する概要図である。(a)は平滑加工部にセレーションを設け、逃げ部に噛合条溝を設けた概念図であり、(b)と(c)は平滑加工部の加工面の形状の変更例であり、(d)は逃げ部を段差部とした概念図である。 転造加工で平滑化したヘリカルギヤの断面を示す部分模式図である。 本発明により製造されたヘリカルギヤを適用したギヤードモータ組付け体を説明する図である。 切削加工で平滑化したヘリカルギヤの断面を示す部分模式図である。
符号の説明
10:ヘリカルギヤ 12:所定形状のねじれ凹凸歯 14:平滑軸部 16:軸部 20:転造平ダイス 24:歯車加工部 26:平滑加工部 28:逃がし部 28’:段差部 28’b:噛合条溝 30:減速機付き小型モータ 34:モータコア 38:軸受 40:他のヘリカルギヤ42:出力軸 D:被加工素材

Claims (3)

  1. 軸心周りに所定形状の凹凸歯を所望する軸方向長さだけ備えた歯車の製造方法であって、
    歯車加工により前記所定形状の凹凸歯に軸方向において隣接して生じ歯先円の径が該所定形状の凹凸歯の歯先円径以下である不完全凹凸歯に、塑性加工を施すことで平滑化するとともに所望の歯幅を確保することを特徴とする歯車の製造方法。
  2. 前記所定形状の凹凸歯の歯車加工及び前記不完全凹凸歯の塑性加工は転造加工である請求項1に記載の歯車の製造方法。
  3. 前記転造加工における転造ダイスは、前記所定形状の凹凸歯を形成する歯車加工部と、前記不完全凹凸歯を塑性加工する不完全凹凸歯平滑加工部と、前記所定形状の凹凸歯を通過させる逃がし部とを備える請求項2に記載の歯車の製造方法。
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