JP2007231409A - 熱延コイル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】同一コイル内及び異なるコイル間のいずれにおいても強度のばらつきが少ない熱延コイル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.3%、Si:0.003〜3%、Mn:0.1〜3%、P:0%を超え0.1%以下、S:0%を超え0.03%以下、Al:0.001〜3%、N:0%を超え0.01%以下、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.2%を含有すると共に、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式により表されるPCMとTieff.との比を1.2〜3とする。
Figure 2007231409

【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、家電、容器、産業機械及び建材等の素材として使用される熱延コイル及びその製造方法に関し、特に、自動車用高強度薄鋼板として好適な熱延コイル及びその製造方法に関する。
自動車、家電、容器、産業機械及び建材等の素材として広範囲に使用される薄鋼板は、その製品形状を得るために様々な加工が施される。この加工の際に発生する割れ及び形状不良等の不具合は、歩留まりの低下及び手入れによる工程数の増加等を引き起こして生産性の低下を招くため、好ましくない。従って、これらの不具合の解消に対する需要家の要求は厳しく、素材面からの改善策として、従来、打抜き、曲げ、張出し、絞り、伸びフランジ等に代表される加工性の指標となる均一伸び、局部伸び及びランクフォード値等の向上が検討され、実行されている。
一方、近年の地球温暖化問題を背景とした環境対策の必要性から、自動車産業をはじめとする幅広い分野で、温室効果ガス等の削減を目的として更なる省エネルギー化が要求されている。例えば、自動車の燃費改善施策の1つとして、車体を軽量化するため、自動車用鋼板の薄肉化が可能な高強度鋼板の適用が進められている。しかしながら、その生産現場においては、高強度鋼板の適用拡大に伴い加工割れ及び形状不良等の不具合が多発しており、その対策として金型調整及びプレス条件の変更等が頻繁に行われている。このような不具合は、素材である鋼板における同一コイル内での強度のばらつき、及び異なるコイル間での強度のバラツキに起因するものであると考えられている。このため、高強度鋼板における加工割れ及び形状不良の発生を防止するためには、前述したような均一伸び、局部伸び及びランクフォード値等の加工性の指標となる特性の向上だけでは十分ではなく、更に新しい対策が必要とされている。
そこで、従来、形状不良を改善する技術として、冷延鋼板における板厚最表面における板面と平行な{100}面の反射X線強度比を3.0以上とすると共に、板厚中心層における板面と平行な{111}面の反射X線強度比を4.5以上とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、特許文献1に記載の高強度冷延鋼板においては、曲げ性及び深絞り性が向上し、スプリングバック及び壁そりを低減することができる。
また、前述したようにコイルにおける特性のばらつきには、同一コイル内でのばらつきと異なるコイル間でのばらつきとがある。これらのばらつきのうち、コイル内でのばらつきに関しては、仕上圧延直前又は仕上圧延中に被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、仕上圧延後0.1秒超え1.0秒未満の時間内に、120℃/秒を超える速度で500〜800℃の温度まで冷却する一次冷却を開始し、コイルの幅方向及び長手方向の温度の最高値と最低値との差を60℃以内にする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の薄鋼板の製造方法では、コイル内における幅方向及び長手方向の引張強さの変動を、コイル内の引張り強さの平均値の±8%以内にすることができる。
更に、従来、ブレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板を製造するために、熱間圧延条件、並びにその後の冷却及び巻き取りの条件を最適化することが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3には、熱間圧延工程において、仕上圧延機最終スタンドにおける材料温度が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr〜Ar+50℃の範囲になるように、粗圧延バー全体又は幅方向エッジ部を誘導加熱装置等で加熱することが開示されている。
特開2001−64750号公報 特開2001−164322号公報 特開2001−115213号公報
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。前述の特許文献1に記載の技術は、スプリングバック及び壁そりを低減することはできるが、これは製品出荷単位であるコイルの平均値としてしか見ておらず、コイルの長手方向及び幅方向の幅方向における面全体として評価した場合、均質な材料特性が得られているとは限らない。更に、特許文献1では、コイルの特性のバラツキに起因すると思われる形状不良については検討がなされていないため、ある頻度で割れ及び形状不良等の不具合が発生する虞がある。
また、特許文献2に記載の技術は、同一コイル内における引張強さの変動を小さくすることはできるが、同じユーザーで同じ用途で使用するものではあるものの、製鋼工程や圧延工程が異なるタイミングで製造された異なるコイル間の引張強さの変動については検討されていない。更に、特許文献3に記載の技術は、圧延方向及び幅方向の温度分布を調整し、コイル内における材質を均質化して加工性の改善を図っているが、前述の特許文献2に記載の技術と同様に、異なるコイル間の引張強さの変動については検討されていない。従って、特許文献2及び3に記載の技術では、同一コイル内のばらつきは低減することができるが、異なるコイル間のばらつきは低減することができないため、このコイル間の特性のばらつきにより、割れ及び形状不良等の不具合が発生する虞がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、同一コイル内及び異なるコイル間のいずれにおいても強度のばらつきが少ない熱延コイル及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る熱延コイルは、質量%で、C:0.01〜0.3%、Si:0.003〜3%、Mn:0.1〜3%、P:0%を超え0.1%以下、S:0%を超え0.03%以下、Al:0.001〜3%、N:0%を超え0.01%以下、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.2%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式(1)により表されるPCMと下記数式(2)により表されるTieff.との比(PCM/Tieff.)が1.2〜3である組成を有し、ミクロ組織がNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれらの混合組織であり、かつ引張強度の標準偏差σTSが12MPa以下であることを特徴とする。なお、下記数式(1)及び数式(2)における[ ]は、かっこ内の元素の質量%を示す。但し、数式(1)及び数式(2)共に、含有しない成分については0質量%とする。
Figure 2007231409
Figure 2007231409
本発明においては、組織強化に寄与する元素の含有量と析出強化に寄与する元素の含有量とのバランスを最適化すると共に、ミクロ組織をNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれら混合組織とすることにより、引張強度の標準偏差σTSを12MPa以下にしているため、コイルでの幅方向及び長さ方向におけるばらつきを低減することができ、更には異なるコイル間でのばらつきも低減することができる。
この熱延コイルは、更に、質量%で、B:0.0002〜0.01%を含有することができる。これにより、焼き入れ性を向上させ、連続冷却変態組織を生成しやすくすることができる。
また、質量%で、Cu:0.02〜1.2%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.01〜1%、V:0.02〜0.2%及びCr:0.01〜1%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これにより、析出強化又は固溶強化により、強度を高めることができる。
更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%及びREM:0.0005〜0.02%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することもできる。これにより、破壊の起点となり、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化することができる。
更にまた、本発明の熱延コイルは、表面に亜鉛めっきが施されていてもよい。
本発明に係る熱延コイルの製造方法は、質量%で、C:0.01〜0.3%、Si:0.003〜3%、Mn:0.1〜3%、P:0%を超え0.1%以下、S:0%を超え0.03%以下、Al:0.001〜3%、N:0%を超え0.01%以下、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.2%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、上記数式(1)により表されるPCMと上記数式(2)により表されるTieff.との比(PCM/Tieff.)が1.2〜3である組成の鋼片を、NbCの溶体化温度以上にして、粗圧延して粗圧延バーを得る工程と、前記粗圧延バーを、仕上圧延完了温度の目標値αFTを下記数式(3)に示す範囲とし、更に仕上圧延完了温度の標準偏差σFTが15℃以下となる条件で仕上圧延した後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、巻取温度を400〜600℃の範囲にして巻き取る工程とを有することを特徴とする。
Figure 2007231409
本発明においては、組織強化に寄与する元素の含有量と析出強化に寄与する元素の含有量とのバランスを最適化した鋼片を使用し、NbCの溶体化温度以上の温度で粗圧延した粗圧延バーを、仕上圧延完了温度の目標値αFTが上記数式(3)に示す範囲でかつ仕上圧延完了温度の標準偏差σFTが15℃以下の条件で仕上圧延した後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、巻取温度を400〜600℃の範囲にして巻き取っているため、鋼のミクロ組織をNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれら混合組織にすることができると共に、熱延コイルの引張強度の標準偏差σTSを12MPa以下にすることができる。その結果、コイルの幅方向及び長さ方向における強度のばらつきを低減することができると共に、異なるコイル間での強度のばらつきも低減することができる。また、本発明の熱延コイルの製造方法では、強度のばらつきが少ない熱延コイルを、安価に安定して製造することができるため、工業的価値が高い。
この熱延コイルの製造方法では、前記鋼片が、更に、質量%で、B:0.0002〜0.01%を含有していてもよく、また、質量%で、Cu:0.02〜1.2%、Ni:0.1〜1%、Mo:0.01〜1%、V:0.02〜0.2%及びCr:0.01〜1%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することもできる。更に、前記鋼片に、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%及びREM:0.0005〜0.02%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を添加してもよい。
また、本発明の熱延コイルの製造方法においては、粗圧延前の前記鋼片の温度SRT(℃)と含有成分量とから下記数式(4)により求められる固溶Ti濃度[Sol.Ti]、用途に応じて設定される狙い強度TS、巻取温度CT(℃)及び含有成分量に基づき、下記数式(5)により、仕上圧延完了温度の目標値αFTを設定することもできる。なお、下記数式(4)及び数式(5)における[ ]は、かっこ内の元素の質量%を示す。
Figure 2007231409
Figure 2007231409
更に、本発明の熱延コイルの製造方法においては、表面に亜鉛めっきを施す工程を有していてもよい。
本発明によれば、組織強化に寄与する元素の含有量と析出強化に寄与する元素の含有量とのバランスを最適化すると共に、ミクロ組織をNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれら混合組織とすることにより、引張強度の標準偏差σTSを12MPa以下にしているため、同一コイル内及び異なるコイル間のいずれにおいても強度のばらつきが少ない熱延コイルを得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。本願発明者は、工業的規模で生産可能な製造プロセスを念頭におき、熱延コイルにおける強度ばらつきを低減するべく鋭意研究を重ねた結果、特定成分元素をある比率で含有する鋼片を、特定の仕上温度でかつそのばらつき(温度偏差)を小さくして圧延すると、巻取工程で、巻取温度を目標温度一定としかつそのばらつき(温度偏差)を小さくしなくても、巻取温度を400〜600℃と十分に広い温度範囲に制御すれば、巻取温度に起因する強度の変動を抑制できることを見出した。
熱延コイルの強度は、主に、スラブ(鋼片)の成分、熱間圧延時の仕上圧延完了温度FT及び仕上圧延後の巻取温度CTの各要因により決まる。しかしながら、スラブ成分は熱間圧延前のスラブ製造の段階で決定されるため、熱間圧延時に調整することができない。このため、スラブの実績成分に応じて、熱間圧延条件(スラブ加熱温度SRT、仕上圧延完了温度FT及び巻取温度CT)を制御する必要がある。一方、熱間圧延時の仕上圧延完了温度FT及び仕上圧延後の巻取温度CTの両方を、スラブ成分に応じて精度良く細かく制御すれば、製造される熱延コイルにおける強度ばらつきを小さくすることは可能であるが、熱間圧延工程は、最終的には数百m/分以上の高速で圧延し、冷却した後、巻き取られるプロセスであるため、コイル内の強度ばらつきを小さくするためにはこれらの温度を非常に複雑に制御する必要がある。このため、従来、圧延完了温度FT及び巻取温度CTの制御により、コイル内の強度ばらつきを小さくすることは、工業的には難しいとされていた。
また、仕上圧延後の巻取温度は、材質によってその目標温度が大きく変化し、また板厚が薄くなる分だけ搬送速度も高速となり、更にランナウトテーブルでの板上水の存在による冷却むらが存在し、膜沸騰領域及び核沸騰遷移領域での高度な冷却制御が必要であるため、仕上圧延温度に比べて制御が難しく、コイル内においてその長手方向及び幅方向で強度にばらつきが生じる主な原因の1つとなっている。そこで、本願発明者は、仕上圧延完了温度よりも巻取温度の条件を緩和させることでコイル内の強度ばらつきを小さくする方法について鋭意検討を行った。その結果、組織強化に寄与する元素の添加量と析出強化に寄与する元素の添加量とのバランス、厳密には、熱間圧延前の加熱段階において固溶状態となっている元素の有効析出量で決定される特定の仕上圧延完了温度を目標として、その温度ばらつき(温度偏差σ)を小さくすれば、巻取温度条件を緩和させてもコイル内の強度ばらつきを小さくできることを知見した。
更に、本願発明者は、同一コイル内におけるばらつきだけでなく、異なるコイル間でのばらつき低減にも取り組み、圧延単位であるスラブの成分実績及び鋼片加熱温度実績から目的強度を得るための仕上圧延完了温度及び巻取温度等を予測する計算式を利用し、目標仕上圧延完了温度及び巻取温度等を制御する方法を見出した。そして、本願発明者は、上述した各知見に基づき、本発明を完成するに至った。
先ず、本発明の熱延コイルにおける鋼組成の数値限定理由について説明する。なお、以下の説明においては、鋼組成における質量%は、単に%と記載する。本発明に係る熱延コイルは、C:0.01〜0.3%、Si:0.003〜3%、Mn:0.1〜3%、P:0%を超え0.1%以下、S:0%を超え0.03%以下、Al:0.001〜3%、N:0%を超え0.01%以下、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.2%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式(4)により表されるPCMと下記数式(5)により表されるTieff.との比(PCM/Tieff.)が1.2〜3である組成を有する。なお、下記数式(4)及び数式(5)における[C]はC含有量(%)、[Si]はSi含有量(%)、[Mn]はMn含有量(%)、[Cu]はCu含有量(%)、[Ni]はNi含有量(%)、[Cr]はCr含有量(%)、[Mo]はMo含有量(%)、[B]はB含有量(%)、[N]はN含有量(%)、[Nb]はNb含有量(%)、[Ti]はTi含有量(%)である。また、下記数式(4)及び数式(5)共に、含有しない成分については0質量%とする。
Figure 2007231409
Figure 2007231409
C:0.01〜0.3%
Cは、後述するNb及びTiと結合して炭化物を形成し、高強度化を達成するために極めて有効な元素であり、本発明の熱延鋼板において最も重要な元素の1つである。しかしながら、C含有量が0.3%を超えると、バーリング割れの起点となる炭化物が増加し、穴拡げ値が劣化するだけでなく、強度が高くなりすぎて加工性が劣化する。一方、C含有量が0.01未満の場合、目的とする強度が得られない。よって、C含有量は0.01〜0.3%とする。なお、延性を考慮すると、C含有量は0.2%以下とすることが望ましい。更に、ウロコ状スケール欠陥抑制の観点からは、C含有量は0.1%以下とすることが望ましい。
Si:0.003〜3%
Siは、冷却中にバーリング割れの起点となる鉄炭化物の析出を抑制する効果があるが、Si含有量が0.003%未満の場合、その効果が得られない。一方、Si含有量が3%を超えると、炭化物析出抑制効果は飽和する。即ち、3%を超えてSiを添加してもそれ以上の効果は見込めない。よって、Si含有量は0.003〜3%とする。なお、ウロコ状スケール欠陥抑制の観点からは、Si含有量は0.01%以上とすることが望ましい。また、Si含有量が1%を超えると、タイガーストライプ状のスケール模様が発生して表面の美観が損なわれると共に、化成処理性が劣化する虞があるため、Si含有量の上限値は1%とすることが望ましい。
Mn:0.1〜3%
Mnは、オーステナイト域温度を低温側に拡大させ、仕上圧延後の冷却中に、本発明の熱延コイルにおけるミクロ組織の構成要件の1つである連続冷却変態組織を生成しやすくする効果がある。しかしながら、Mn含有量が0.1%未満の場合、その効果が得られない。一方、Mn含有量が3%を超えると、前述した効果は飽和する。よって、Mn含有量は0.1〜3%とする。また、MnはSに起因する熱間割れの発生を抑制する効果もあるが、Mn以外にこの効果を有する元素が十分に添加されない場合は、Mn含有量(%)[Mn]とS含有量(%)[S]との比([Mn]/[S])が20以上となるように、即ち、S含有量の20倍以上の量のMnを添加することが望ましい。
P:0%を超え0.1%以下
Pは、不純物であり、その含有量は低いほど望ましい。特に、P含有量が0.1%を超えると、加工性及び溶接性が劣化する。よって、P含有量は0.1%以下に規制する。なお、穴拡げ性及び溶接性を考慮すると、P含有量は0.02%以下とすることが望ましい。
S:0%を超え0.03%以下
Sは、熱間圧延時に割れを引き起こすばかりでなく、多量に含有していると穴拡げ性を劣化させるA系介在物が生成するため、極力低減させるべきである。具体的には、S含有量は0.03%を超えると、割れ及び穴拡げ性への影響が許容できる範囲を超えてしまう。よって、S含有量は0.03%以下に規制する。なお、ある程度の穴拡げ性を必要とする場合は、S含有量を0.01%以下に規制することが望ましく、更に高い穴拡げが要求される場合は、S含有量を0.003%以下に規制することが望ましい。
Al:0.001〜3%
Alは、溶鋼を脱酸する効果がある元素である。しかしながら、Al含有量が0.001%未満の場合、十分な脱酸効果が得られない。一方、Al含有量が3%を超えると、コストの上昇を招く。よって、Al含有量は0.001〜3%とする。なお、Alを多量に添加すると、非金属介在物が増加し、熱延コイルの伸びが劣化することがあるため、Al含有量は0.06%以下とすることが望ましい。
N:0%を超え0.01%以下
Nは、Ti及びNb等と結合して窒化物を形成する元素である。これらの窒化物は比較的高温で析出するため、粗大化してバーリング割れの起点となる虞がある。また、後述するようにNb及びTiを有効活用するためには、N含有量は少ない方が好ましい。具体的には、N含有量が0.01%を超えると窒化物の生成量が増加し、割れの発生、並びにNb及びTiの添加効果の低下が生じる。よって、N含有量は0.01%以下に規制する。なお、本発明の熱延コイルを時効劣化が問題となる部品に適用する場合、0.006%を超えてNを添加すると時効劣化が激しくなる。従って、このような用途に使用する場合には、N含有量を0.006%以下にすることが望ましい。また、製造後2週間以上室温で放置した後、加工に供すること前提とする場合は、耐時効性の観点から、N含有量を0.005%以下にすることが望ましい。更に、夏季の高温での放置及び船舶での輸送時に赤道を越えるような輸出を考慮すると、N含有量を0.003%未満にすることが望ましい。
Nb:0.001〜0.1%
Nbは、微細な炭化物を形成して熱延コイルの強度上昇に寄与するだけでなく、γ/α変態においてフェライトの核生成を抑制し、連続冷却変態組織の生成を促進する効果があり、本発明の熱延コイルにおいて最も重要な元素の1つである。しかしながら、Nb含有量が0.001%未満の場合、これらの効果が得られない。一方、Nb含有量が0.1%を超えると、強度上昇及び連続冷却変態組織生成促進の効果はいずれも飽和する。よって、Nb含有量は0.001%〜0.1%とする。なお、Nb含有量は0.01%以上であることが望ましく、これにより、制御圧延効果によって結晶粒が微細化するため、靭性を向上させることができる。
Ti:0.001〜0.2%
Tiは、Nbと同様に、微細な炭化物を形成して熱延コイルの強度上昇に寄与するだけでなく、γ/α変態においてフェライトの核生成を抑制し、連続冷却変態組織の生成を促進する効果があり、本発明の熱延コイルにおいて最も重要な元素の1つである。しかしながら、Ti含有量が0.001%未満の場合、これらの効果が得られない。一方、Tiを有効活用するためには、熱延工程でのスラブ加熱において鋳造時に形成された炭窒化物を溶解させる必要があるが、Ti含有量が0.2%を超えると、その温度が高温化して事実上操業範囲を逸脱する。よって、Ti含有量は0.001〜0.2%とする。なお、Ti含有量は0.005%以上とすることが望ましく、これにより、AlN及びNbNのγ粒界析出を抑制することができるため、連続鋳造における曲げ割れを防止する効果が得られる。
また、本発明の熱延コイルは、上記各成分に加えて、更にB:0.0002%〜0.01%を添加してもよい。Bは、焼き入れ性を向上させ、連続冷却変態組織を生成しやすくする効果があるため、必要に応じて添加することができる。しかしながら、B含有量が0.0002%未満の場合、その効果が十分に得られない。一方、B含有量が0.01%を超えると、スラブ割れが発生する。よって、Bを添加する場合は、その含有量が0.0002〜0.01%になるようにする。
更に、本発明の熱延コイルは、強度を付与するため、上記各成分に加えて、Cu、Ni、Mo、V及びCrからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を添加することもできる。これらの元素は析出強化又は固溶強化に有効な元素である。しかしながら、Cu含有量が0.02%未満、Ni含有量が0.01%未満、Mo含有量が0.01%未満、V含有量が0.02%未満及びCr含有量が0.01%未満の場合、各元素を添加しても析出強化効果又は固溶強化効果が得られない。また、1.2質量%を超えてCuを、1%を超えてNiを、1%を超えてMoを、0.2%を超えてVを、又は1%超えてCrを、夫々添加しても、析出強化効果及び固溶強化効果は飽和し、これ以上の改善は見込めない。よって、Cu、Ni、Mo、V及び/又はCrを添加する場合は、夫々Cu:0.02〜1.2%、Ni:0.1〜1%、Mo:0.01〜1%、V:0.02〜0.2%、Cr:0.01〜1%とする。
更にまた、本発明の熱延コイルは、Ca及び/又はREM(希土類元素)を添加することもできる。Ca及びREMは、破壊の起点となり、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化する元素である。しかしながら、Ca含有量が0.0005%未満又はREM含有量が総量で0.0005%未満の場合、その効果が得られない。また、Ca含有量が0.01%を超えるか、又はREM総含有量が0.02%を超えると、非金属介在物を無害化する効果は飽和する。よって、Ca及び/又はREMを添加する場合は、夫々Ca:0.0005〜0.01%、REM:0.0005〜0.02%とする。
更にまた、本発明の熱延コイルは、上記各成分に加えて、更に、Zr、Sn、Co、Zn、W及びMgからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有しても差し支えない。Zr、Sn、Co、Zn、W及びMgは、いずれも鋼中で酸化物及び/又は窒化物を形成する元素であり、Zr、Sn、Co、Zn、W及び/又はMgを添加する場合は、これらに起因する表面欠陥の発生を回避するために、これらの元素とTi及びNbとの総含有量、即ち、Ti、Ni、Zr、Sn、Co、Zn、W及びMgの総含有量が1%以下になるようにする。特に、Snを添加すると、熱間圧延時に疵が発生する虞があるため、Sn含有量は0.05%以下とすることが望ましい。
次に、上記数式(4)により表されるPCMと、上記数式(5)により表されるTieff.について説明する。PCMは、C、Si及びMn等の含有量に関係しており、一般に溶接割れ感受性を表す指標として利用されているが、本発明においては組織強化能を表す指標として利用する。一方、Tieff.は、Ti及びNb等の含有量に関係しており、析出強化能を表す指標として利用する。
上述したように、コイル内の強度ばらつきを小さくするために、仕上圧延完了温度よりも巻取温度の条件を緩和させることが工業的に優位である。そこで、本願発明者は、組織強化に寄与する元素の添加量と析出強化に寄与する元素の添加量とのバランスPCM/Tieff.が巻取温度に及ぼす影響について実験室的手法を用いて調査した。具体的には、下記表1に示す組成の鋼片を溶製し、この鋼片を加熱炉抽出温度を1250℃、仕上圧延完了温度FTを890℃とし、巻取温度CT(℃)を変えて、板厚2.6mmの鋼板に圧延した。なお、下記表1における残部はFe及び不可避的不純物である。そして、各鋼板からJIS Z 2201に規定されている5号試験片を切り出し、JIS Z 2241に規定されている引張試験を行い、各鋼板の強度TSを求めた。図1は横軸に巻取温度CT(℃)をとり、縦軸に強度TS(MPa)をとって、巻取温度CTと引張強度TSとの関係に対してPCM/Tieff.が及ぼす影響を示すグラフ図である。
Figure 2007231409
その結果、上記表1及び図1に示すように、鋼種C、鋼種Dおよび鋼種FのようにPCM/Tieff.が1.2〜3の範囲内であれば、巻取温度CTが400〜600℃の範囲で、巻取温度CTに対する引張強度TSの変動が極めて小さくなる現象を発見した。即ち、強度鋼板の適用における加工割れ及び形状不良の発生を防止するために必要とされている値で、需要家からの強度TSばらつき要求レベルでもある標準偏差σTSが12MPa以下になる可能性が示された。そこで、本願発明者は、これらの指標の比、即ち、PCM/Tieff.が1.2〜3になるように、関係する各成分の含有量を調節した鋼片を熱間圧延することにより、巻取温度CTが400〜600℃と比較的広い温度域において析出強化と組織強化とのバランスを良好にすることができるため、強度の巻取温度依存性が極小となり、コイル内における強度のばらつきが需要家からの強度TSばらつき要求レベルでもある標準偏差σTS12MPa以下にできる。これにより、コイル内におけるばらつきが少ない熱延コイルが得られる。
次に、ミクロ組織について説明する。本願発明者は、前述のPCM/Tieff.が巻取温度に及ぼす影響の調査に使用した鋼板を使用してミクロ組織について調査した。具体的には、各鋼板の板幅Wの1/4又は3/4の位置から試料を切出し、その圧延方向に直交する断面を研磨し、更にナイタール試薬を使用してエッチングした。その後、この断面を、光学顕微鏡により200〜500倍の倍率で観察し、板厚tの1/4の範囲を写真撮影した。その結果、PCM/Tieff.が1.2〜3の範囲内であり、強度TSがばらつき要求のレベルである12MPa以下である鋼種C及び鋼種Dのコイルのミクロ組織は、Nb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織(Zw)又はこれらの混合組織であった。従って、PCM/Tieff.が1.2〜3となるような鋼組成にすると共に、ミクロ組織をこのような組織で構成することにより、析出強化と組織強化をバランスさせ、強度ばらつきを低減するとともに優れた強度−伸びフランジ性バランスが得られるものと考えられる。
なお、ここでいう連続冷却変態組織(Zw)とは、「低炭素鋼のベイナイト組織と変態挙動に関する最近の研究,社団法人日本鉄鋼協会基礎研究会ベイナイト調査研究部会,1994年」に記載されているように、拡散的機構により生成するポリゴナルフェライト及びパーライトを含むミクロ組織と無拡散でせん断的機構により生成するマルテンサイトの中間段階にある変態組織と定義されるミクロ組織である。即ち、連続冷却変態組織(Zw)とは、光学顕微鏡観察組織として上記文献のp.125〜127に記載されているように、そのミクロ組織は主にBainitic ferrite(α°)、Granular bainitic ferrite(α)、Quasi−polygonal ferrite(α)から構成され、更に少量の残留オーステナイト(γ)、Martensite−austenite(MA)を含むミクロ組織であると定義されている。αは、ポリゴナルフェライト(PF)と同様に、エッチングにより内部構造が現出しないが、形状がアシュキュラーでありPFとは明確に区別される。ここで、対象とする結晶粒の周囲長さlqとし、その円相当径をdqとすると、それらの比(lq/dq)が3.5以上となる粒がαである。本発明における連続冷却変態組織(Zw)とは、このうちα°、α、α、γ及びMAのうち、1種又は2種以上野組織を含むミクロ組織であると定義される。但し、少量のγ及びMAはその総量が3%以下になるようにする。
本発明の熱延コイルにおいては、組織強化能の指標であるPCMと、析出強化能の指標であるTieff.との比(PCM/Tieff.)を1.2〜3になるようにして、組織強化に寄与する元素の含有量と析出強化に寄与する元素の含有量とのバランスを最適化すると共に、ミクロ組織をNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれら混合組織としているため、強度の巻取温度依存性が極小となり、コイル内における強度のばらつきを示す標準偏差σTSを12MPa以下にすることができる。更に、コイルでの幅方向及び長さ方向におけるばらつきを低減することができると共に、異なるコイル間でのばらつきも低減することができる。
上述の如く構成された本発明の熱延コイルは、熱間圧延後冷却ままでもよく、又は用途に応じて熱間圧延後、若しくは熱延コイルを溶融めっきラインにて熱処理を施したままでもよく、更にはこれらの鋼板に別途亜鉛めっき等の表面処理が施されていてもよい。
以下、本発明の熱延コイルの製造方法について説明する。本発明の熱延コイルを製造する場合は、先ず、連続鋳造によって得た鋼片(スラブ)を、NbCの溶体化温度以上にして粗圧延する。
このとき、連続鋳造よって得たスラブを加熱炉に挿入して再加熱する場合には、その温度を下記数式(8)で表されるスラブ再加熱温度SRT(℃)以上とすることが必要である。ここで、下記数式(8)における[Nb]はNb含有量(%)であり、[C]はC含有量(%)である。なお、スラブを下記数式(8)で表されるSRT(℃)以上に維持した状態で、連続鋳造機から熱間圧延機に搬送できる場合は、加熱炉で再加熱せずに高温鋳片のまま熱間圧延機に直送し、圧延してもよい。
Figure 2007231409
スラブ再加熱温度が上記数式(8)で表されるSRT(℃)未満であると、Nbの炭窒化物が十分に溶解せず、その後の圧延工程においてNbによるオーステナイトの回復・再結晶、粒成長の抑制又はオーステナイトからフェライトへの変態の遅延による結晶粒の細粒化効果が得られない。また、スラブ再加熱温度は1000〜1400℃であることが好ましい。スラブ再加熱温度が1400℃以上であると、スケールオフ量が多量になり歩留まりが低下することがあり、また、スラブ再加熱温度が1000℃未満の場合、スケジュール上操業効率を著しく損なうことがある。更に、スラブ再加熱温度は1100℃以上とすることがより好ましい。スラブ再加熱温度が1100℃未満の場合、スケールオフ量が少なくなり、後に行うデスケーリングによって、スラブ表層の介在物をスケールと共に除去することができないことがある。
なお、スラブ加熱時間については、特に限定する必要はないが、Nbの炭窒化物の溶解を十分に進行させるためには、上記数式(8)で表されるSRT(℃)以上の温度で30分以上保持することが望ましい。
次に、前述の粗圧延により得た粗圧延バーを仕上圧延する。前述したように、本願発明者は、引張強度の巻取温度依存性は鋼組成により変化し、特に、組織強化能の指標であるPCMと、析出強化能の指標であるTieff.との比(PCM/Tieff.)と強い相関関係があり、この値が特定の範囲内であると、巻取温度が400〜600℃の範囲であれば、引張強度の巻取温度依存性が極めて小さくなることを知見した(図1参照)。そこで、本願発明者は、仕上圧延完了温度の適正温度について検討を行った。具体的には、上記表1に示す鋼種Cの組成で鋳片を工業的規模で溶製し、この鋳片を加熱炉抽出温度を1250℃、仕上完了温度FT(℃)及び巻取温度CT(℃)を変えて、板厚2.6mmの鋼板に圧延した。そして、各鋼板からJIS Z 2201に規定されている5号試験片を切り出し、JIS Z 2241に規定されている引張試験を行い、各鋼板の強度TSを求めた。
図2は横軸に巻取温度CT(℃)をとり、縦軸に引張強度TS(MPa)をとって、巻取温度CTと引張強度TSとの関係に対して仕上圧延完了温度FTが及ぼす影響を示すグラフ図である。その結果、図2に示すように、PCM/Tieff.を1.2〜3の範囲内にしても、目標(設定)仕上圧延完了温度FTを適正値にしないと、巻取温度CTの温度依存性が小さくならないことがわかった。
上述した現象のメカニズムは必ずしも明らかではないが、巻き取り温度が400〜600℃の範囲では、析出強化及び組織強化における巻取り温度依存性がトレードオフの関係になっており、ある特定の成分範囲においては、その足合わせである引張強度がバランスして、強度の巻取り温度依存性が小さくなったのではないかと推定される。また、例え成分範囲が本発明の範囲内であっても、仕上温度により強度の巻取り温度依存性が著しく変化するが、これは、仕上圧延後のランナウトテーブルでの冷却中に起こる変態と析出現象とが密接に関係しているためと考えられ、仕上圧延温度により、γ→α変態温度とTiC又はNbCのγ相及びα相での析出ノーズの相対的な関係により変化するためと推測される。
即ち、Ti及びNb等の固溶限が小さいAr変態点温度直上のγ相低温域で仕上げ圧延を終了した場合は、その圧延ひずみにより誘起させるγ→α変態とTiC又はNbC等の析出が同時に進行する相界面析出が起こりやすくなり、また、この相界面析出で生成したTiC又はNbC等の析出物は比較的粗大であるために析出強化能がほとんどなく、強度のCT依存性は組織強化型鋼のそれに近いものとなる。一方、Ti及びNb等の固溶限が大きいγ相の高温域で仕上げ圧延を終了した場合は、これとは逆にCT依存性は析出強化型鋼の傾向が強くなりすぎて、600℃前後で強度に強いピークをもつようになる。従って、その効果がバランスする温度で仕上げ圧延を終了すると、強度のCT依存性が極小化する。
以上の知見から、本願発明者は、仕上圧延完了温度FTの目標温度(仕上完了目標温度)αFTについて、析出強化と組織強度とがバランスする好ましい範囲を見出した。仕上完了目標温度αFTを、下記数式(9)式に示す実績成分(PCM/Tieff.)に応じた範囲内に制御することにより、強度ばらつきが小さい鋼板が得られる。
Figure 2007231409
上述の如く、本願発明者は、熱延コイルの強度TSが、成分、仕上圧延完了温度FT及び巻取温度CTの影響を受けることを知見しており、これらの関係から、ばらつきの小さい鋼板を得るためには、PCM/Tieff.が1.2〜3の範囲内になるように鋼成分を制御するだけではなく、仕上圧延完了温度FTの狭レンジの目標温度を上記数式(9)に示す仕上完了目標温度αFTの範囲内に設定して制御しなければならない。即ち、仕上完了目標温度αFTを、上記数式(9)式に示す実績成分(PCM/Tieff.)に応じた範囲内に制御することにより、コイル内のばらつきが小さいコイルを得ることができる。
次に、スラブ成分実績が異なるコイル間、即ち、製鋼工程での転炉チャージが異なるコイル間でのばらつきを低減し、コイル群としてばらつきの小さい鋼板を得る場合について説明する。異なるコイル間でのばらつきを低減するためには、上述した仕上完了目標温度αFTを上記数式(9)式に示す実績成分(PCM/Tieff.)に応じた範囲内に制御することに加えて、実績成分の違いによる強度の絶対値のばらつきをなくすための狙い強度を設定する必要がある。そして、強度予測式を使用して成分及び熱間圧延条件をフィードフォワード制御し、各コイルの強度を設定した狙い強度(平均強度)にすることにより、更に製品としてのばらつき小さくすることができる。この場合の関係式は、冶金モデル式を使用してもよく、また、成分と共に強度TS、仕上圧延完了温度FT及び巻取温度CTの夫々の実績値から単純な重回帰式、又は他の最適化手法により算出した式を使用してもよいが、本願発明者は以下の手法で行った。
本願発明者は実験的に、590MPa級の鋼板グレードにおいては、強度TSが、C、Si、Mn及びNbの含有量、並びに加熱での固溶Tiの含有量、仕上げ圧延完了温度FT及び巻取温度CTに基づき、下記数式(10)により求められることを見出した。ここで、下記数式(10)における[ ]は、かっこ内の元素の質量%を示し、[Sol.Ti]は固溶Tiの質量%を示す。
Figure 2007231409
なお、固溶Ti含有量([Sol.Ti])は、予めNbCの溶体化温度以上になるように設定して加熱した鋼片のSRT(スラブ加熱温度実績)及び実績成分に基づき、下記数式(11)により求められる。
Figure 2007231409
図3はコイル間ばらつきを低減するための仕上完了目標温度αFTの制御ロジックを示すフローチャート図である。図3に示すように、仕上完了目標温度αFTを制御する際は、先ず、上記数式(11)により、実績成分及び上記数式(9)により表されるスラブ加熱温度SRTに基づき、固溶Ti量[Sol.Ti]を算出する。次に、上記数式(10)により、目標用途に応じて狙い強度TSを決め、強度ばらつき変動が小さくなる巻取温度CTの範囲(400〜600℃)の中央値500℃を狙いの巻取温度CTとし、更に、上記数式(11)から得られた固溶Ti量[Sol.Ti]に基づき、仕上完了目標温度αFTを決める。
上述の如く、仕上完了目標温度αFTを、上記数式(8)により表されるスラブ加熱温度SRTの範囲内よりも狭く設定して制御することにより、強度TSのばらつきを小さくできるのである。なお、上記数式(10)は、590MPa級の鋼板グレードを対象としているが、これに限定されるものではなく、他の鋼板グレードでも適用可能である。この場合は鋼板グレードに応じて強度TS、成分(C、Si、Mn及びNbの含有量)、加熱での固溶Ti量、仕上げ圧延完了温度FT及び巻取温度CTの関係式を使用することが好ましい。
但し、前述したように、巻取温度の温度依存性を小さくするトレードオフとしては、仕上完了目標温度αFTを設定するだけでなく、温度のばらつきを小さくする必要がある。そこで、本願発明者は、仕上圧延完了温度FTのばらつきの影響について調査した。具体的には、上記表1に示す鋼A〜Fの組成で鋳片を溶製し、この鋳片を加熱炉抽出温度を1250℃、巻取温度CT(℃)を500℃として、板厚2.6mmの鋼板を作製した。その際、狙い強度TSを590MPa、巻取温度CTを500℃とし、仕上完了目標温度αFTは上記数式(9)式に基づき上述の方法で算出した温度とした。そして、各鋼板からコイルの幅方向及び長手方向について統計的傾向が判別できるに足る数のサンプルを採取し、JIS Z 2201に規定されている5号試験片を切り出し、JIS Z 2241に規定されている引張試験を行い、各鋼板の強度TSを求めた。
図4は横軸にPCM/Tieffをとり、縦軸に引張強度TS(MPa)の標準偏差σTSをとって、PCM/Tieffと標準偏差σTSとの関係に対して仕上圧延完了の温度偏差σFTが及ぼす影響を示すグラフ図である。その結果、図4に示すように、仕上圧延完了温度FTの温度偏差σFTが15℃以下であれば、コイルの内における強度のばらつきを示す標準偏差σTSを、需要家からの強度ばらつきの許容値である12MP以下にすることができる。さらに望ましくは、仕上圧延完了温度FTの温度偏差σFTが7℃以下であれば、コイルの内における強度のばらつきを示す標準偏差σTSを、需要家からのさらに望ましい要求範囲である強度ばらつきの許容値である6MP以下にすることができる。
以上から、仕上完了目標温度αFTを適正温度にすると共に、仕上圧延完了温度FTの温度偏差σFTを15℃以下、好ましくは7℃以下にすれば、必ずしも狙い巻取温度CT(=500℃)を一定にコントロールする必要はなく、400〜600℃の範囲を超えるような大きな温度のばらつきがなければ、狙いの強度TSが一定となるコイルが得られる。しかしながら、実績の仕上圧延完了温度FTの温度偏差σFTが15℃を超えてしまった場合には、狙いCT(=500℃)をばらつきなく一定にコントロールしなければ、狙いの強度TSが一定のコイルは得られず、狙いのCTに対して温度偏差が生じた分だけ狙いの強度TSのばらつきも大きくなってしまう。
また、仕上圧延完了温度を圧延方向、板幅方向、板厚方向において温度ばらつきを小さく制御することためには、粗圧延機と仕上圧延機の間、もしくは仕上圧延機のスタンド間で圧延方向、板幅方向、板厚方向に温度制御できる加熱装置を設置することが好ましい。その加熱装置の方式としては、ガス加熱、通電加熱、誘導加熱等の様々な加熱手段が考えられるが、圧延方向、板幅方向に温度のばらつきを小さく制御可能であれば手段は限定する必要はないが、特に、工業的に温度の制御応答性が良いソレノイド型及びトランスバース型等の誘導加熱方式が好ましい。ソレノイド型誘導加熱は、板厚方向の加熱量が一定で、板幅方向全体を加熱することが可能であり、鋼板長手方向の平均温度制御に優れているが、その構造上、板幅方向の加熱量を制御することが困難である。一方、トランスバース型誘導加熱は、板幅以下でも加熱することができ、更に板幅方向にその位置をシフト可能である。このため、複数個のトランスバース型誘導加熱装置を設置し、板幅方向の温度分布に応じて板幅方向に各加熱装置を移動させ、夫々独立して加熱量を制御すると、ソレノイド型誘導加熱よりも板幅方向における温度均一性に優れるため、より好ましい。また、トランスバース型誘導加熱は、その磁束密度の分布の違いにより、ソレノイド型誘電加熱よりも板厚方向の温度均一性に優れるという利点もある。更に、このトランスバース誘導加熱と板厚端部のエッジヒータとの組み合わせが最も好ましい。
このような加熱装置を使用して温度制御する場合には、加熱装置による加熱量の制御が必要であるが、粗圧延バー内部の温度は実測できないため、予め加熱炉に装入スラブ温度、スラブ在炉時間、加熱炉雰囲気温度、加熱炉抽出温度、更にテーブルローラーの搬送時間、加熱前の表面温度等の実績データを利用して、粗圧延バーが加熱装置に到着時の圧延方向、板幅方向、板厚方向の温度分布を推定して加熱装置による加熱量を制御すれば良い。
具体的には、例えば、以下のように制御することができる。誘導加熱装置(トランスバース型誘導加熱装置)の特性として、コイルに交流電流を通じると、その内側に鋼板磁場を生ずる。そして、この中に置かれている導電体には、電磁誘導作用により磁束と直角の円周方向にコイル電流と反対の向きの渦電流が起こり、そのジュール熱によって導電体は加熱される。渦電流はコイル内側の表面に最も強く発生し、内側に向かって指数関数的に低減する(この現象を表皮効果という)。従って、周波数が小さいほど電流浸透深さが大きくなり、厚み方向に均一な加熱パターンが得られ、逆に、周波数が大きいほど電流浸透深さが小さくなり、厚み方向に表層をピークとした過加熱の小さな加熱パターンが得られることが知られている。
よって、トランスバース型誘導加熱装置によって、粗圧延バーの圧延方向、板幅方向の加熱は従来と同様に行なうことができ、また、板厚方向の加熱は、トランスバース型誘導加熱装置の周波数変更によって浸透深さを可変化して板厚方向の加熱温度パターンを操作することでその温度分布の均一化を行なうことができる。なお、この場合、周波数変更可変型の誘導加熱装置を使用することが好ましいが、コンデンサーの調整によって周波数変更を行ってもよい。また、周波数の異なるインダクターを複数配置して必要な厚み方向加熱パターンが得られるように夫々の加熱量の配分を変更してもよい。又は、被加熱材とのエアーギャップを変更すると周波数が変動するためエアーギャップを変更して所望の周波数および加熱パターンを得てもよい。
なお、仕上圧延工程において、板厚方向により均一な組織単位を得るためには、仕上圧延開始温度を1000℃以上とすることが望ましく、1050℃以上とすることがより望ましい。
次に、仕上圧延した後、20℃/秒以上の冷却速度で400〜600℃の温度域まで冷却して巻き取る。冷却速度が20℃/秒未満であるとパーライト又はベイナイトが生成してしまい、目的とするフェライト及び/又は連続冷却変態組織が得られない。また、冷却速度の上限は特に限定する必要はないが、冷却速度を500℃/秒以上にすると、降伏比が上昇する虞があるため、仕上圧延後の冷却速度は500℃/秒以下とすることが望ましい。更に、熱歪による板そりが懸念される場合には、冷却速度を250℃/秒以下とすることがより望ましい。更にまた、バーリング加工性を向上させるためには、ミクロ組織をより均一にすることが望ましく、そのようなミクロ組織を得るためには冷却速度を80℃/秒以上とすることが望ましい。
また、600℃を超える温度で冷却を停止すると、組織強化による強度上昇と析出強化による強度上昇の効果が共に得られず、強度が低下するばかりでなく、加工性に好ましくないパーライト等の粗大炭化物を含む相が生成する虞がある。従って、冷却を実施する温度域は600℃までとする。一方、冷却停止温度を400℃未満とすると、TiC等の析出強化が発現せず、組織強化による強度上昇のみが大きく発現することになるので、目的とした強度が得られない虞がある。
本発明の熱延コイルの製造方法においては、仕上圧延温度の温度偏差を小さくすることにより、強度の巻取り温度依存性を小さくし、同一コイル内及び異なるコイル間での強度ばらつきの低減を図っている。このため、巻取り温度の許容範囲は400〜600℃と広いが、この範囲では当然のことながら鋼のミクロ組織は大きく変化する。例えば、巻取り温度が低い場合は、主に組織強化により鋼板強度が担保されるため、ミクロ組織は連続冷却変態組織となる。一方、巻取り温度が高いときは、析出強化が支配的となるため、ミクロ組織はフェライト主体の組織となる。また、巻取り温度が高いときに生成するフェライトには、析出強化を発現する極めて微細なTiC及びNbC析出物が高い密度で存在する。更に、これらの中間の温度域では、Nb炭窒化物及びTi炭窒化物を含むフェライトと、連続冷却変態組織とが比率で存在する混合組織となる。このように、本発明の方法で製造される熱延コイルは、そのミクロ組織が、Nb炭窒化物及びTi炭窒化物を含むフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれらの混合組織となり、これらの体積分率は、巻取り温度により変化する。
本発明の熱延コイルの製造方法においては、粗圧延工程よりも前の工程について特に限定するものではない。即ち、高炉、転炉及び電炉等による溶製に引き続き、各種の2次精練で目的の成分含有量になるように成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造又はインゴット法等による鋳造の他、薄スラブ鋳造等の方法で鋳造すればよい。その際、鋼片の原料には、スクラップを使用することもできる。
また、粗圧延と仕上圧延との間にシートバーを接合し、連続的に仕上圧延をしてもよい。その際、粗圧延バーを一旦コイル状に巻き、必要に応じて保温機能を有するカバーに格納し、再度巻き戻してから接合を行ってもよい。
更に、本発明の熱延コイルの製造方法においては、仕上圧延工程後に、必要に応じて酸洗し、インライン若しくはオフラインで圧下率10%以下のスキンパス又は圧下率40%程度までの冷間圧延を施すこともできる。特に、鋼板形状の矯正及び可動転位導入による延性の向上のためには、0.1〜2%のスキンパス圧延を施すことが望ましい。
更にまた、本発明の熱延コイルの製造方法においては、酸洗い後の熱延コイルに亜鉛めっき等の表面処理を施すことができる。その場合、熱延コイルを亜鉛めっき浴中に浸積し、必要に応じて合金化処理すればよい。
上述の如く、本発明の熱延コイルの製造方法においては、組織強化に寄与する元素の含有量と析出強化に寄与する元素の含有量とのバランスを最適化した鋼片を使用し、NbCの溶体化温度以上に加熱した後粗圧延し、20℃/秒以上の冷却速度で冷却して巻取り温度を400〜600℃の範囲にして巻き取っているため、鋼のミクロ組織をNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれら混合組織にすることができると共に、熱延コイルの引張強度の標準偏差σTSを12MPa以下、好ましくは6MPaにすることができる。これにより、コイルの幅方向及び長さ方向における強度のばらつきを低減することができると共に、異なるコイル間での強度のばらつきも低減することができる。
なお、前述の特許文献2に記載の技術では、1次冷却後の温度(巻取り温度)を制御しているだけであり、また、特許文献3に記載の技術は、組織強化と析出強化とのバランスを最適化していないため、いずれも、本発明のように、同一コイル内でのばらつき及び異なるコイル間でのばらつきの両方を低減することはできない。
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例においては、下記表2に示す鋼種A〜Kの組成の鋼を転炉にて溶製し後に連続鋳造した鋼片を、直送又は再加熱後に粗圧延及び仕上圧延をこの順に行って1.2〜5.5mmの板厚とした後、巻取って実施例A−1、A−3、A−6、A−9、A−10、B、C、D、E、I及びKの熱延コイル、並びに比較例A−2、A−4、A−5、A−7、A−8、A−11、A−12、F〜H及びJの熱延コイルを作製した。その際、粗圧延機と仕上圧延機との間に板幅方向にシフト可能な3台のトランスバース型誘電加熱装置及びエッジヒータを配置し、これらを使用して必要に応じて粗圧延バーの加熱を行った。また、No.A−6の熱延コイルについては、亜鉛めっき浴中に浸漬して常法通りの亜鉛めっきを施した。なお、下記表2に示す化学組成における%は質量%であり、残部はFe及び不可避的不純物である。
Figure 2007231409
各熱延コイルの製造条件を下記表3に示す。なお、下記表3における「NbC溶体化温度」は、上記数式(8)により算出したNbCの溶解に必要な加熱温度、即ち、スラブ再加熱温度SRT(℃)である。ただし、Nbが実質無添加の場合は「−」とした。また、下記表3における「加熱温度実績」は、スラブ加熱抽出温度の実績値であり、αFTの「下限値」及び「上限値」は、夫々上記数式(9)により算出した仕上完了目標温度αFTの下限値及び上限値であり、「算出αFT」は、上記式(10)により算出した狙い仕上完了目標温度αFTであり、「実績Ave.FT」は、コイルの幅方向及び長手方向における平均仕上げ圧延完了温度FTの実績値である。更に、粗圧延バー加熱制御における「(a)コイル長手方向」は、長手方向の平均温度のばらつきをなくすために、3台の加熱装置の制御を実施したかどうかを示し、また「(b)コイル幅方向」は、長手方向の平均温度及び板厚方向の平均温度の両方のばらつきをなくすために、3台の加熱装置を夫々板幅方向にシフトさせながら加熱制御を実施したかどうかを示し、更に「(c)エッジ」は、加熱装置としてエッジヒータを使用し、板幅端部の温度低下を補償するために端部加熱を実施したかどうかを示す。また、「σFT」は、コイルの幅方向及び長手方向における仕上圧延完了温度FTの標準偏差であり、「冷却速度」は、仕上圧延完了後に巻き取るまでのランアウトテ−ブル(ROT)での冷却速度を示し、「CT」は巻取温度を示している。
Figure 2007231409
本実施例においては、トランスバース型誘導加熱装置の加熱条件は、周波数の異なる加熱装置を複数配置して可能な範囲で必要な厚み方向加熱パターンが得られるように各々の加熱配分を変更した。当然のことながら、加熱装置によるコイルの長手方向及び幅方向における温度均一化制御は、例えば長手のみの制御よりも、それに幅方向の制御を加えた方が圧延完了温度の標準偏差「σFT」を小さくすることができ、更にエッジヒータにより、コイル最エッジ温度低下を補償すれば圧延完了温度の標準偏差「σFT」はより小さくすることができる。
次に、上述の方法で作製した各熱延コイルの機械的性質を評価した。具体的には、コイルの幅方向及び長手方向について統計的傾向が判別できるに足る数のサンプルを採取し、JIS Z 2201記載の5号試験片に加工し、JIS Z 2241記載の試験方法に従って行った。また、前述した方法で各熱延コイルのミクロ組織についても評価した。その結果を下記表4にまとめて示す。なお、下記表4に示す機械的性質における「Ave.YP」、「Ave.TS」及び「Ave.El」は、夫々降伏強度、引張強度及び破断伸びの算術平均値であり、「σTS」はTSの標準偏差である。また、下記表4に示すミクロ組織におけるZwは連続冷却変態組織、PFはポリゴナルフェライト(Nb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織)、Pはパーライト、Bはベイナイト、Mはマルテンサイト、γRは残留オーステナイトである。
Figure 2007231409
上記表4に示すように、本発明の範囲内で作製した実施例No.A−1、A−3、A−6、A−9、A−10、B、C、D、E、I及びKの11種の熱延コイルは、所定の量の鋼成分を含有し、そのミクロ組織がポリゴナルフェライト、連続冷却変態組織又はこれらの混合組織であり、かつ引張強度の標準偏差σTSが12MPa以下となっていた。
これら実施例の各熱延コイルは、仕上圧延完了温度FTの標準偏差σFTを小さくするために、「(a)粗バーコイル長手方向加熱制御」、「(b)粗バーコイル幅方向加熱制御」及び「(c)粗バーエッジ加熱制御」を組み合わせて適用したが、(a)+(b)+(c)を実施したNo.A−3、A−6及びKの熱延コイルが最も大きな効果が得られた。なお、No.A−6の熱延コイルについては、「実績Ave.FT」が「算出αFT」と同じ値になるように、前述した加熱装置による制御だけでなく、搬送用テーブルローラーの速度もコントロールすることによって、仕上圧延完了温度FTをも制御した。
一方、上述した実施例の各熱延コイル以外のコイルは、本発明の範囲から外れる比較例である。具体的には、No.A−2の熱延コイルは、「加熱温度実績」が本発明の範囲よりも低いため、引張強度TSの標準偏差σTSが12MPaを超えていた。No.A−4の熱延コイルは、「実績Ave.FT」が本発明の範囲を超えているため、標準偏差σTSが12MPaを超えていた。一方、No.A−5の熱延コイルは、「実績Ave.FT」が本発明の範囲よりも低いため、標準偏差σTSが12MPaを超えていた。No.A−7の熱延コイルは、「σFT」が本発明の範囲を超えているため、標準偏差σTSが12MPaを超えていた。
No.A−8の熱延コイルは、「冷却速度」が本発明の範囲よりも遅いため、ミクロ組織がポリゴナルフェライトとパーライトとの混合組織となり、標準偏差σTSも12MPaを超えていた。No.A−11の熱延コイルは、「巻取温度CT」が本発明の範囲を超えているため、ミクロ組織がポリゴナルフェライトとパーライトとの混合組織となり、更に標準偏差σTSも12MPaを超えていた。一方、No.A−12の熱延コイルは、「巻取温度CT」が本発明の範囲よりも低いため、ミクロ組織がポリゴナルフェライト、ベイナイト及びマルテンサイトの混合組織となり、標準偏差σTSも12MPaを超えていた。No.Fの熱延コイルは、Nb及びTiの含有量並びにPCM/Tieff.が本発明の範囲から外れているため、ミクロ組織がポリゴナルフェライト、ベイナイト及び残留オーステナイトの混合組織となり、標準偏差σTSも12MPaを超えていた。即ち、No.A−8、No.A−11、No.A−12、No.Fの熱延コイルでは、Nb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれらの混合組織からなるミクロ組織は得られなかった。
No.Gの熱延コイルは、Cの含有量及びPCM/Tieff.が本発明の範囲から外れているため、引張強度TSの標準偏差σTSが12MPaを超えていた。No.Hの熱延コイルは、Tiの含有量が本発明の範囲から外れているため、ミクロ組織がポリゴナルフェライト、ベイナイト及び残留オーステナイトの混合組織となり、標準偏差σTSも12MPaを超えていた。No.Jの熱延コイルは、Cの含有量、Nbの含有量、Tiの含有量及びPCM/Tieff.が本発明の範囲から外れているため、ミクロ組織がポリゴナルフェライト及びパーライトの混合組織となり、更に標準偏差σTSも12MPaを超えていた。
横軸に巻取温度CT(℃)をとり、縦軸に引張強度TS(MPa)をとって、巻取温度CTと引張強度TSとの関係に対してPCM/Tieff.が及ぼす影響を示すグラフ図である。 横軸に巻取温度CT(℃)をとり、縦軸に引張強度TS(MPa)をとって、巻取温度CTと引張強度TSとの関係に対して仕上完了温度FTが及ぼす影響を示すグラフ図である。 コイル間ばらつきを低減するための仕上完了目標温度αFTの制御ロジックを示すフローチャート図である。 横軸にPCM/Tieffをとり、縦軸に引張強度TS(MPa)の標準偏差σTSをとって、PCM/Tieffと標準偏差σTSとの関係に対して仕上圧延完了の温度偏差σFTが及ぼす影響を示すグラフ図である。

Claims (11)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.3%、
    Si:0.003〜3%、
    Mn:0.1〜3%、
    P:0%を超え0.1%以下、
    S:0%を超え0.03%以下、
    Al:0.001〜3%、
    N:0%を超え0.01%以下、
    Nb:0.001〜0.1%及び
    Ti:0.001〜0.2%を含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記数式(A)により表されるPCMと下記数式(B)により表されるTieff.との比(PCM/Tieff.)が1.2〜3である組成を有し、
    Figure 2007231409
    ミクロ組織がNb炭窒化物及びTi炭窒化物を含有するフェライト組織、連続冷却変態組織又はこれらの混合組織であり、
    かつ引張強度の標準偏差σTSが12MPa以下であることを特徴とする熱延コイル。
  2. 更に、質量%で、B:0.0002〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱延コイル。
  3. 更に、質量%で、Cu:0.02〜1.2%、Ni:0.01〜1%、Mo:0.01〜1%、V:0.02〜0.2%及びCr:0.01〜1%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱延コイル。
  4. 更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%及びREM:0.0005〜0.02%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延コイル。
  5. 表面に亜鉛めっきが施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱延コイル。
  6. 質量%で、C:0.01〜0.3%、Si:0.003〜3%、Mn:0.1〜3%、P:0%を超え0.1%以下、S:0%を超え0.03%以下、Al:0.001〜3%、N:0%を超え0.01%以下、Nb:0.001〜0.1%及びTi:0.001〜0.2%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式(A)により表されるPCMと下記数式(B)により表されるTieff.との比(PCM/Tieff.)が1.2〜3である組成の鋼片を、NbCの溶体化温度以上にして、粗圧延して粗圧延バーを得る工程と、
    Figure 2007231409
    前記粗圧延バーを、仕上圧延完了温度の目標値αFTを下記数式(C)に示す範囲とし、更に仕上圧延完了温度の標準偏差σFTが15℃以下となる条件で仕上圧延した後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、巻取温度を400〜600℃の範囲にして巻き取る工程と
    Figure 2007231409
    を有することを特徴とする熱延コイルの製造方法。
  7. 前記鋼片は、更に、質量%で、B:0.0002〜0.01%を含有することを特徴とする請求項6に記載の熱延コイルの製造方法。
  8. 前記鋼片は、更に、質量%で、Cu:0.02〜1.2%、Ni:0.1〜1%、Mo:0.01〜1%、V:0.02〜0.2%及びCr:0.01〜1%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の熱延コイルの製造方法。
  9. 前記鋼片は、更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%及びREM:0.0005〜0.02%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱延コイルの製造方法。
  10. 粗圧延前の前記鋼片の温度SRT(℃)と含有成分量とから下記数式(D)により求められる固溶Ti濃度[Sol.Ti]、用途に応じて設定される狙い強度TS、巻取温度CT(℃)及び含有成分量に基づき、下記数式(E)により、仕上圧延完了温度の目標値αFTを設定することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱延コイルの製造方法。
    Figure 2007231409
  11. 更に、表面に亜鉛めっきを施す工程を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の熱延コイルの製造方法。
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