JP2007224927A - 圧縮比変更機構の故障を検知して制御を行う内燃機関 - Google Patents

圧縮比変更機構の故障を検知して制御を行う内燃機関 Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関の圧縮比変更に故障が生じた場合でも内燃機関を安定して運転する。
【解決手段】圧縮比を変更可能な機構を備えた内燃機関において、圧縮比の切換機構における故障の発生を検知した場合には、混合気の燃焼安定性を低下させる所定の制御の実行を抑制する。燃焼の安定性を低下させる制御としては、暖機遅角制御や、リーンバーン制御、EGR制御などがある。こうすれば、例え圧縮比が低い値に固着した場合であっても、混合気を安定して燃焼させることが可能となる。
【選択図】図2

Description

この発明は、内燃機関の圧縮比を変更する技術に関し、詳しくは圧縮比の変更機能が故障したことを検知して内燃機関を制御する技術に関する。
内燃機関は、小型でありながら比較的大きな動力を出力可能という優れた特性を備えていることから、自動車や船舶、飛行機など各種の輸送機関の動力源として、あるいは定置式の各種機器の動力源として広く使用されている。これら内燃機関は、燃焼室内で圧縮した混合気を燃焼させ、このときに発生する燃焼圧力を機械的な仕事に変換して、動力として取り出すことを動作原理としている。
こうした内燃機関では、機械的仕事への変換効率(熱効率)の向上と、最大出力の増加とを両立させるべく、運転条件に応じて混合気の圧縮比を変更可能とする技術が提案されている。圧縮比を運転条件に応じて変更してやれば、高負荷条件では低圧縮比に設定することで充分な最大出力を確保しつつ、低中負荷条件では高圧縮比に設定することで熱効率を向上させることが可能となる。また、一般に、点火時期の最適値は圧縮比によって異なっており、圧縮比が低くなるほど進角気味に、すなわち最適な点火時期が早くなる傾向にある。このため、圧縮比の切り換えに併せて、点火時期も切り換えながら運転するのが通常である。
こうした圧縮比の変更可能な内燃機関においては、圧縮比の切り換えに異常が発生した場合に、点火時期を高圧縮比時の設定に固定してしまう技術が提案されている(特許文献1)。提案の技術によれば、圧縮比が高圧縮比状態で固着した場合に、点火時期も高圧縮比時の設定に固定される。このため、何らかの理由で圧縮比が固着したまま運転した場合でも、点火時期だけが低圧縮比用に進角してしまい、その結果ノッキングと呼ばれる異常燃焼が生じることを回避することが可能である。
特開平1−35047号公報
しかし、従来の技術によれば、圧縮比の変更に異常が生じた場合でもノッキングの発生を回避することが可能ではあるが、内燃機関を安定して運転することが困難な場合があるという問題があった。すなわち、圧縮比が低圧縮比状態で固着した場合にも点火時期が高圧縮比時の設定に固定されてしまうので、内燃機関を安定して運転することが困難となる。特に、燃焼室内で混合気を速やかに且つ安定して燃焼させるという観点からは、圧縮比が低くなることは不利に作用する。従って、圧縮比が低くなった場合には、それに併せて点火時期も最適な値に変更しなければ、混合気を安定して燃焼させることは困難である。また、内燃機関では、熱効率の向上や、排出ガス量の低減などを目的として種々の制御が行われるが、こうした制御の中には燃焼の安定性を犠牲にする制御も存在しており、低圧縮比に固着しているときにこうした制御を行うと、燃焼が不安定となって、内燃機関を安定して運転することが困難となる場合が生じ得る。
本発明は、従来技術におけるこうした課題を解決するためになされたものであり、圧縮比を変更可能な内燃機関において、圧縮比の変更に異常が生じた場合でも、内燃機関を安定して運転することを可能とする技術の提供を目的とする。
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の内燃機関は次の構成を採用した。すなわち、
燃料および空気の混合気を燃焼室内で圧縮し、該圧縮した混合気を燃焼させることによって動力を出力する内燃機関であって、
前記混合気の圧縮の程度を表す指標たる圧縮比を変更可能な圧縮比変更機構と、
前記圧縮比変更機構の動作を制御することにより、前記圧縮比を前記内燃機関の運転条件に応じて制御する圧縮比制御手段と、
前記圧縮比変更機構における故障の発生を検知する故障検知手段と、
前記故障の発生が検知された場合に、前記混合気の燃焼の安定性を低下させる所定の制御の実行を抑制する所定制御抑制手段と
を備えることを要旨とする。
また、上記の内燃機関に対応する本発明の内燃機関の制御方法は、
燃料および空気の混合気を燃焼室内で圧縮し、該圧縮した混合気を燃焼させることによって動力を出力する内燃機関の制御方法であって、
前記混合気の圧縮の程度を表す指標たる圧縮比を変更可能な圧縮比変更機構を、前記内燃機関の運転条件に応じて制御することにより、該内燃機関の圧縮比を制御する第1の工程と、
前記圧縮比変更機構における故障の発生を検知する第2の工程と、
前記故障の発生が検知された場合に、前記混合気の燃焼の安定性を低下させる所定の制御の実行を抑制する第3の工程と
を備えることを要旨とする。
かかる本発明の内燃機関および内燃機関の制御方法においては、圧縮比を変更するための機構に故障が発生した場合には、混合気の燃焼の安定性を低下させるような制御は、実行が抑制される。このため、故障が発生した場合でも混合気を安定して燃焼させることができ、延いては、内燃機関を安定して運転することが可能となる。
こうした内燃機関においては、圧縮比変更機構が、第1の圧縮比および第2の圧縮比の少なくとも2段階に変更可能な場合には、最も高い圧縮比である第2の圧縮比に変更できないことが検知された場合に、故障が発生していると判断することとしても良い。
圧縮比が高くなるほど混合気は燃焼し易くなる傾向があり、こうした傾向を前提として、高い圧縮比では燃焼の安定性を低下させる制御が盛り込まれ易い傾向にある。逆に言えば、圧縮比変更機構が故障して、こうした高い圧縮比に変更できなくなっているにも関わらず、依然として圧縮比が高いことを前提とした制御が行われると、燃焼状態が大きく悪化するおそれが高いと言える。従って、圧縮比が第2の圧縮比に変更できなくなった場合に、故障の発生が検知されるようにしておけば、こうした場合の燃焼の悪化を確実に回避して、内燃機関を安定して運転することが可能となるので好ましい。
こうした内燃機関において、圧縮比切換機構が固着した圧縮比を検出することが可能な場合には、固着した圧縮比が第2の圧縮比ではない場合に、故障が発生したことを検知するものとしても良い。
圧縮比が第2の圧縮比に固着した場合は、燃焼の安定性を低下させる種々の制御を行った場合でも、混合気を安定して燃焼させることが可能であると考えられる。従って、この様な場合は、こうした制御を行って熱効率の向上や、排出ガス量の低減などを図りながら、内燃機関を安定して運転させることが可能となる。
また、空燃比を理論空燃比と希薄空燃比とに制御可能な内燃機関においては、圧縮比変更機構の故障が検知された場合には、希薄空燃比に設定する制御を抑制することとしても良い。ここで、希薄空燃比に設定する制御を抑制するとは、希薄空燃比に設定する運転条件を狭くしても良く、空燃比を希薄にする程度を小さくしてもよく、あるいはこれらを組み合わせて行っても良い。もちろん、希薄空燃比に設定することを禁止することも可能である。
混合気の空燃比を希薄にすると、燃焼の安定性が低下し易くなることが知られている。従って、圧縮比切換機構の故障が検知された場合には、希薄空燃比に設定する制御を抑制してやれば、混合気の燃焼が不安定となることを回避することが可能となるので好ましい。
また、内燃機関が冷態状態にある場合に、点火時期を遅角させる制御を行う内燃機関においては、圧縮比切換機構の故障が検知された場合に、かかる制御を抑制することとしても良い。尚、遅角制御を抑制するとは、点火時期を遅角する条件を狭くしても良いし、遅角量を少なくしても、更にはこれらを組み合わせて行うこととしても良い。もちろん、遅角制御を禁止することも可能である。
内燃機関が冷態状態にあるときは、燃焼状態が最も良好となる点火時期よりも遅角する制御が行われることがあるが、この場合、遅角するほど燃焼の安定性が低下する傾向にある。従って、圧縮比切換機構の故障が検知された場合には、点火時期を遅角する制御を抑制してやれば、混合気の燃焼が不安定となることを回避することが可能となるので好ましい。
また、混合気が燃焼することによって生じた燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に還流させるEGR制御を行う内燃機関においては、圧縮比切換機構の故障が検知された場合に、EGR制御を抑制することとしても良い。尚、EGR制御を抑制するとは、EGRを行う運転条件を狭くするものであっても良いし、燃焼室内に還流させる燃焼ガス量(EGRガス量)を少なくするものであっても、更にはこれらを組み合わせて行うものであっても良い。もちろん、EGR制御を禁止することも可能である。また、燃焼ガスを燃焼室内に還流させるに際しては、燃焼室内から排出された燃焼ガスの一部を排気通路から取り出して、吸気通路側に戻しても良いし、あるいは燃焼室から燃焼ガスの一部を吸気通路内に噴き戻し、これを空気とともに再び吸入することとしても良い。
EGR制御を行って、燃焼ガスを還流させるほど混合気の燃焼状態が不安定になる傾向がある。従って、圧縮比切換機構の故障が検知された場合には、EGR制御を抑制してやれば、混合気の燃焼が不安定となることを回避することが可能となる。
また、上述した内燃機関においては、圧縮比変更機構が固着していることを検出して、燃焼の安定性を低下させる制御については、固着した圧縮比毎に許容される範囲に、制御内容を抑制することとしても良い。
圧縮比変更機構の故障が検知された場合でも、燃焼の安定性を低下させる制御を、許容された範囲内で実行することで、燃焼の安定性を低下させることなく内燃機関を運転することが可能となるので好適である。
あるいは、燃焼室内に吸入される空気を導入する吸気通路と、該吸気通路内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、燃焼室内に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁とを備え、運転条件に応じて、該第1の燃料噴射弁および該第2の燃料噴射弁の少なくとも一方から燃料を噴射する内燃機関においては、次のようにしても良い。すなわち、圧縮比変更機構の故障の発生が検知された場合には、第1の燃料噴射弁から燃料を噴射する制御を抑制することとしてもよい。
詳細には後述するが、圧縮比変更機構が故障している場合に、吸気通路内に燃料を噴射した場合には、いわゆるバックファイアと呼ばれる現象が発生して、運転者に違和感を与えることがある。従って、第1の燃料噴射弁からの燃料噴射を抑制し、主に第2の燃料噴射弁から燃料を噴射することとすれば、バックファイアの発生を確実に回避することが可能となるので好適である。
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次の順序に従って、本発明の実施例について説明する。
A.装置構成:
B.第1実施例:
B−1.冷態状態における制御内容:
B−2.暖機状態における制御内容:
C.第2実施例:
A.装置構成:
図1は、圧縮比可変機構を備えた本実施例のエンジン10の構成を概念的に示した説明図である。図示されているように、エンジン10は、大きくはシリンダヘッド20と、シリンダブロックASSY30と、メインムービングASSY40と、吸気通路50と、排気通路58と、EGR通路70と、エンジン制御用ユニット(以下、ECU)60などから構成されている。
シリンダブロックASSY30は、シリンダヘッド20が取り付けられるアッパーブロック31と、メインムービングASSY40が収納されているロアブロック32とから構成されている。また、アッパーブロック31とロアブロック32との間にはアクチュエータ33が設けられており、アクチュエータ33を駆動することで、アッパーブロック31をロアブロック32に対して上下方向に移動させることが可能となっている。また、アッパーブロック31の内部には円筒形のシリンダ34が形成されている。
メインムービングASSY40は、シリンダ34の内部に設けられたピストン41と、ロアブロック32の内部で回転するクランクシャフト43と、ピストン41をクランクシャフト43に接続するコネクティングロッド42などから構成されている。これらピストン41、コネクティングロッド42、クランクシャフト43はいわゆるクランク機構を構成しており、クランクシャフト43が回転するとそれにつれてピストン41がシリンダ34内で上下方向に摺動し、逆に、ピストン41が上下に摺動すればクランクシャフト43がロアブロック32内で回転するようになっている。
シリンダブロックASSY30にシリンダヘッド20を取り付けると、シリンダヘッド20の下面側(アッパーブロック31に接する側)とシリンダ34とピストン41とで囲まれた部分に燃焼室が形成される。従って、アクチュエータ33を用いてアッパーブロック31を上方に移動させれば、これに伴ってシリンダヘッド20も上方に移動して燃焼室内の容積が増加するので、圧縮比を低くすることができる。逆に、アッパーブロック31とともにシリンダヘッド20を下方に動かせば、燃焼室内の容積が減少して圧縮比を高くすることができる。
また、圧縮比は、ロアブロック32に設けられた圧縮比センサ63を用いて検出することが可能となっている。本実施例では、圧縮比センサ63としてストロークセンサが用いられており、ロアブロック32に対するアッパーブロック31の相対位置を検出することによって圧縮比を検出する。もちろん圧縮比は、こうした方式に限らず他の方法で検出することも可能である。例えば、シリンダヘッド20に圧力センサを設けておき、燃焼室内の圧力に基づいて圧縮比を検出することとしても良い。
シリンダヘッド20には、燃焼室内に空気を取り入れるための吸気ポート23と、燃焼室内から排気ガスを排出するための排気ポート24とが形成されており、吸気ポート23が燃焼室に開口する部分には吸気バルブ21が、また、排気ポート24が燃焼室に開口する部分には排気バルブ22が設けられている。吸気バルブ21および排気バルブ22は、ピストン41の上下動に合わせて、それぞれカム機構によって駆動される。こうしてピストンの動きに同期させて吸気バルブ21および排気バルブ22を、それぞれ適切なタイミングで開閉すれば、燃焼室内に空気を吸入したり、あるいは燃焼室内から排気ガスを排出することができる。また、シリンダヘッド20には、燃焼室内に形成された混合気に火花を飛ばして点火するための点火プラグ27も設けられている。
シリンダヘッド20の吸気ポート23には、外気をシリンダヘッド20まで導くための吸気通路50が接続されており、吸気通路50の上流側端部にはエアクリーナ51が設けられている。また、本実施例のエンジン10は、いわゆる4気筒エンジンであって燃焼室を4つ備えており、それぞれの燃焼室の吸気通路50はサージタンク54で合流している。燃焼室内に吸入される空気は、エアクリーナ51でゴミなどの異物を取り除かれた後、サージタンク54で各燃焼室の吸気通路50に分配され、吸気ポート23を経由してそれぞれの燃焼室に流入する。サージタンク54の上流側の吸気通路50には、スロットルバルブ52が設けられており、電動アクチュエータ53を用いてスロットルバルブ52の開度を制御することにより、燃焼室内に流入する空気量を制御することができる。また、各燃焼室には、2つの燃料噴射弁26,55が設けられている。シリンダヘッド20に設けられた燃料噴射弁26は、燃焼室内に燃料を直接噴射し、吸気通路50に設けられた燃料噴射弁55は、それぞれの吸気通路50内から吸気ポート23に向かって燃料を噴射する。こうして燃料噴射弁26、あるいは燃料噴射弁55から噴射された燃料は、それぞれの燃焼室内で気化しながら、燃料および空気の混合気を燃焼室内に形成する。
各燃焼室の排気ポート24には排気通路58が接続されており、燃焼室から排出された排気ガスは、排気通路58によって外部に導かれて放出される。また、排気通路58と吸気通路50とは、EGR通路70によって接続されており、排気通路58を流れる排気ガスの一部はEGR通路70を介して吸気通路50内に還流して、吸入された空気とともに燃焼室内に流入するようになっている。EGR通路70の途中には、EGR弁72が設けられており、EGR弁の開度を調整すれば、還流する排気ガス(EGRガス)の流量を制御することが可能である。
ECU60は、中央処理装置(以下、CPU)を中心として、ROM、RAM、入出力回路などが、バスで相互に接続されたマイクロコンピュータである。ECU60は、クランクシャフト43に設けられたクランク角センサ61や、アクセルペダルに内蔵されたアクセル開度センサ62などから必要な情報を読み込んで、燃料噴射弁26,55、点火プラグ27などを適切なタイミングで駆動することにより、燃焼室内で混合気を燃焼させて動力を発生させる。吸入空気量を調整するために電動アクチュエータ53の駆動を制御したり、圧縮比を切り換えるためにアクチュエータ33を駆動する制御も、ECU60が司っている。また、ECU60は、アッパーブロック31に設けられた水温センサ64の出力に基づいて、エンジン10の暖機状態を検出することも可能となっている。
上述した構成を有するエンジン10では、アクチュエータ33を初めとする圧縮比を切り換えるための機構に何らかの障害が発生して、圧縮比が変更できなくなる場合が生じ得る。例えば、アクチュエータ33が固着してしまい、低圧縮比の状態から切り換わらなくなることが起こり得る。あるいは、圧縮比を高くしようとすると、いつも途中で止まってしまい、それ以上の高圧縮比には切り換えられないといったことが生じ得る。前述したように、圧縮比が低くなることは燃焼の安定性という観点からは不利に作用するから、こうした障害が発生すると、燃焼状態が悪化してエンジン10を安定して運転できなくなる場合がある。本実施例のエンジン10では、圧縮比を切り換えるための機構に何らかの障害が発生した場合でも、エンジン10を安定して運転するべく、次のような制御を行う。
B.第1実施例:
図2および図3は、第1実施例においてエンジン10の動作を制御する流れを示したフローチャートである。以下、フローチャートに従って説明する。
ECU60は、エンジン制御ルーチンを開始すると先ず初めに、エンジンの運転条件を検出する(ステップS100)。運転条件としては、エンジンの回転速度Ne およびアクセル開度θacを検出する。エンジン回転速度Ne は、クランク角センサ61の出力から算出し、また、アクセル開度θacは、アクセル開度センサ62を用いて検出することができる。
次いで、エンジンが冷態状態か否かを判断する(ステップS102)。ECU60は、水温センサ64の出力に基づいて、アッパーブロック31内の冷却水温度を検出し、冷却水温度が所定温度以下であれば、エンジンが冷態状態にあり(ステップS102:yes)、所定温度を超えていれば冷態状態にない(ステップS102:no)と判断して、それぞれの制御を行う。エンジンの制御内容は、冷態状態であるか否かによって異なっているので、以下では、初めに冷態状態における制御内容について説明し、次に冷態状態にない(すなわち暖機状態における)場合の制御内容について説明する。
B−1.冷態状態における制御内容:
ECU60は、エンジンが冷態状態にあると判断すると(ステップS102:yes)、エンジン10の圧縮比を運転条件に応じて設定する(ステップS104)。ECU60のROM内には、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacをパラメータとするマップの形式で、運転条件に応じた適切な圧縮比が予め記憶されている。図4は、ROM内に適切な圧縮比がマップの形式で記憶されている様子を概念的に表した説明図である。また、ECU60のROMには、図4に示した冷態状態用のマップに加えて、暖機状態用の圧縮比のマップも記憶されている。エンジンが冷態状態にあるときは混合気の燃焼が不安定となり易いので、燃焼を安定化させるために、冷態状態のマップには、暖機状態よりも高めの圧縮比が設定されている。ステップS104では、こうしたマップを参照することによって、運転条件に応じて設定されている圧縮比を読み出した後、アクチュエータ33を駆動してエンジン10の圧縮比を設定する。
圧縮比の設定に続いて空燃比の設定を行う(ステップS106)。空燃比とは、混合気中の燃料濃度を示す指標であり、混合気に含まれる空気重量を燃料重量で除算した値によって定義されている。本実施例では、エンジンが冷態状態にあるときは、運転状態によらず理論空燃比(ストイキオメトリックな空燃比、あるいは簡略化してストイキ空燃比)に設定される。理論空燃比(ストイキ)とは、空気と燃料とが過不足無く燃焼する割合で混合している空燃比をいう。エンジンが冷態状態にあるときは、混合気が安定して燃焼するように、空燃比を理論空燃比に設定する。尚、理論空燃比より燃料濃度が低い空燃比は、希薄空燃比あるいはリーン空燃比と呼ばれ、逆に理論空燃比より燃料濃度が高い空燃比は、過濃空燃比あるいはリッチ空燃比と呼ばれる。
空燃比の設定に続いて、燃料の噴射方式を設定する(ステップS106)。図1に示したように、本実施例のエンジン10には、2つの燃料噴射弁26,55が取り付けられている。シリンダヘッド20に取り付けられた燃料噴射弁26を駆動すれば燃料を燃焼室内に直接噴射することができるので、燃料を燃焼室内に偏在させて燃料濃度の濃い(空燃比の小さい)部分と、燃料濃度の薄い(空燃比の大きい)部分とを形成することができる。燃焼室内に適切な空燃比分布の混合気を形成してやれば、全体としての燃料量を節約してエンジンの熱効率を向上させることが可能となる。尚、燃焼室内に直接燃料を噴射する方式は、筒内噴射と呼ばれることがある。
一方、吸気通路50に取り付けられた燃料噴射弁55を駆動すれば、燃料は吸気通路内に噴射され、ここで気化しながら空気と混合しつつ燃焼室内に吸入される。従って、この場合は、燃料と空気とが充分に混合した均一な混合気が燃焼室内に形成されることになる。こうして燃焼室内に均一な混合気を形成する場合、空燃比を理論空燃比前後に設定しておけば、混合気を最も安定して燃焼させることができる。また、理論空燃比よりも小さめの(燃料濃度が高めの)空燃比に設定してやれば、最も大きな出力を発生させることができる。尚、吸気通路内に燃料を噴射する方式は、ポート噴射と呼ばれることがある。
もちろん筒内噴射とポート噴射とを併用して、一部の燃料は吸気通路50内に噴射するとともに、残りの燃料は燃焼室内に噴射してやることも可能である。こうすれば、燃焼室内の一部の領域には燃料が高い濃度で分布するとともに、他の領域には燃料が低い濃度で均一に分布しているような混合気を形成することができる。運転条件に応じて、2つの燃料噴射弁の噴射量および噴射時期を変更し、燃焼室内に適切な空燃比分布の混合気を形成することで、エンジンの更なる性能向上を図ることも可能である。
ステップS108では、エンジン10が冷態状態にあるので、混合気を安定して燃焼させるべく、燃料噴射方式としてポート噴射を設定する。空燃比は、ステップS106において理論空燃比に設定されているので、燃焼室内には理論空燃比の均一な混合気が形成されることになり、エンジンが冷態状態にある場合でも混合気を安定して燃焼させることが可能となる。
次いで、点火時期を設定する(ステップS110)。点火時期も、圧縮比と同様にマップを参照することによって設定する。すなわち、ECU60のROM内には、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacをパラメータとするマップの形式で、点火時期のマップが圧縮比毎に記憶されている。図5は、圧縮比毎に点火時期のマップが設定されている様子を概念的に示した説明図である。ステップS110では、ステップS104で設定された現在の圧縮比に対応するマップを参照することにより、運転条件に応じた点火時期を設定する。
こうして点火時期を設定したら、圧縮比を切り換えるための機構が故障していないかどうかを判断する(ステップS112)。本実施例では、故障の発生を次のようにして検知する。前述したように、エンジン10はアッパーブロック31をロアブロック32に対して上下方向に移動させることによって圧縮比を変更する。すなわち、ロアブロック32に対するアッパーブロック31の相対位置から、直ちにエンジンの圧縮比を知ることができる。このことから、ロアブロック32に設けた圧縮比センサ63によりアッパーブロック31の相対位置を検出し、エンジンの圧縮比を求める。こうして求めた圧縮比が、エンジン制御ルーチンのステップS104で設定された圧縮比と一致すれば、圧縮比を切り換える機構は正常に動作していると判断し、逆に圧縮比が一致しなければ、何らかの故障が発生したものと判断することができる。
圧縮比を切り換える機構が正常に動作していると判断された場合は(ステップS112:no)、暖機遅角量を設定する処理を行う(ステップS114)。暖機遅角とは、エンジンが冷態状態で運転される場合に、点火時期を正規の時期から遅らせて(遅角して)、エンジンが早く暖機するような運転を行うことを言う。点火時期を正規の時期から遅角させると、エンジンの熱効率が低下して、すなわち、燃焼によって生じた熱エネルギーが機械的な仕事に変換される割合が低下して、その分だけ熱として排気ガスとともに放出されるエネルギーが増加するので、エンジンあるいは浄化触媒を速やかに暖機することができる。とは言え、点火時期をあまりに遅角したのでは、混合気の燃焼が不安定となってしまうので、遅角量にはエンジンの温度に応じて適切な値が存在する。本実施例では、エンジンの冷却水温度に対して適切な遅角量が予め実験的に求められて、図6に示すようなマップの形式でECU60のROMに記憶されている。図2のステップS114では、アッパーブロック31に設けた水温センサ64でエンジン冷却水温度を検出し、図6に示すマップを参照して、点火時期の遅角量を設定する。
こうして暖機遅角量を設定したら、今度はEGR弁開度を設定する処理を行う(ステップS116)。EGRとは、前述したように排気ガスの一部を燃焼室内に還流させて、混合気とともに燃焼させる処理を言う。EGRを行えば、混合気の燃焼温度が低下するので、排気ガス中に含まれるいわゆるNOxと呼ばれる窒素酸化物の濃度を低下させることができる。本実施例では、図1に示すように、排気通路58から排気ガスの一部をEGR通路70を介して吸気通路50内に還流させることによってEGRを行っている。排気ガスの還流量(EGRガス量)は、EGR通路70に設けたEGR弁72の開度を調整することで制御することができる。また、EGRガス量の最適値すなわちEGR弁の適切な開度は、当然、エンジンの運転条件によって異なってくる。本実施例では、エンジンが冷態状態にあるときの、運転条件に対する適切なEGR弁開度が予め求められて、図7に示すようなマップの形式でECU60のROMに記憶されている。ステップS116では、このマップを参照することによって適切な開度を読み出して、EGR弁72の開度を設定する処理を行う。
以上のようにして、運転条件に応じて圧縮比、空燃比、燃料噴射方式、点火時期、暖機遅角量、EGR弁開度を設定したら、設定に従って燃料噴射量を計算し、適切なタイミングで燃料を噴射する処理を行い(ステップS120)、続いて、暖機遅角が考慮された適切なタイミングで点火プラグ27から火花を飛ばすことにより、燃焼室内の混合気に点火する処理を行う(ステップS122)。この結果、燃焼室内に形成された混合気が燃焼して動力が発生する。
ここで、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生したと判断された場合は(ステップS112:yes)、ステップS114の暖機遅角量を設定する処理や、ステップS116のEGR弁開度を設定する処理はスキップして、代わりにEGRを停止する処理を行う(ステップS118)。これは、次のような理由によるものである。
エンジン10を冷態状態で運転する場合は、暖機遅角を行うことでエンジンの暖機を促進させることができるが、その一方で暖機遅角は、適切な点火時期から遅角させている分だけ、混合気の燃焼を不安定にする方向に作用する。もちろん、暖機遅角量は燃焼が不安定とならない範囲で設定されているが、圧縮比を切り換えるための機構が故障している場合は、暖機遅角を行うことで燃焼が不安定となってしまうことが起こり得る。例えば、圧縮比が低い圧縮比で固着して切り換えられなくなった場合、圧縮比を高くできないことによる影響と、暖機遅角による影響とが相まって燃焼が不安定になる場合が起こり得る。あるいは、例えば圧縮比10と圧縮比13とには切り換わるものの、圧縮比15には切り換わらないように、圧縮比が低い範囲でしか切り換わらず、高い圧縮比には切り換わらない場合にも同様のことが生じ得る。
また、EGRも、燃焼を不安定にする方向に作用する点では暖機遅角と同様である。すなわち、混合気が燃焼した後に残った排気ガスは、基本的には、それ以上は燃焼することのない不活性なガスであるため、こうした不活性なガスを混合気とともに燃焼室に供給するEGRは、燃焼を不安定にする方向に作用する。従って、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生した場合には、暖機遅角と同様な理由により、EGRを行うことで燃焼が不安定になってしまうことが起こり得る。
こうした理由から、本実施例では、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生した場合は、暖機遅角量およびEGR弁開度を設定する処理をスキップして、代わりにステップS118において、EGRを停止、すなわちEGR弁開度を全閉状態とする処理を行うのである。その結果、暖機遅角もEGRも行わない状態で、続く燃料噴射制御(ステップS120)および点火時期制御(ステップS122)が実施されることになるので、エンジン10がどのような圧縮比になっている場合でも、燃焼室内の混合気を安定して燃焼させることが可能となるのである。
次いで、ECU60は、運転者によってエンジン10を停止する旨が指示されたか否かを判断し(ステップS124)、運転者によってエンジン10を停止する旨が指示されていると判断された場合は(ステップS124:yes)、図2に示したエンジン制御ルーチンを終了する。逆に、エンジン10を停止する旨が指示されていない場合は(ステップS124:no)、ステップS100に戻って上述した一連の処理を繰り返す。こうした処理を続けている中に、エンジン10の冷却水温度が次第に上昇して暖機状態となり、次のような制御内容に移行する。
B−2.暖機状態における制御内容:
以下では、エンジン10が暖機状態にある場合、すなわち、ステップS102で「no」と判断された場合に行う制御について説明する。図3は、エンジンが暖機状態にあるときに実行される制御の一部を示したフローチャートである。図3に示す制御を開始すると、先ず初めに、圧縮比を設定する処理を行う(ステップS140)。かかる処理は、冷態状態で行う図2中のステップS104の処理とほぼ同様である。すなわち、ECU60のROMに記憶されている圧縮比マップを参照して、運転条件に応じて設定されている圧縮比を読み出した後、アクチュエータ33を駆動することにより、エンジン10の圧縮比を設定する処理を行う。尚、エンジンが暖機状態にあるときに参照する圧縮比マップは、図4に示した冷態状態の時に参照するマップよりも、全体的に圧縮比が低めの値に設定されている。
次いで、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生したか否かを判断する(ステップS142)。故障の発生有無は、前述したように、圧縮比センサ63で検出した圧縮比が、ステップS140で運転条件に応じて設定した圧縮比と一致しているか否かに基づいて判断する。検出した圧縮比が設定した圧縮比に一致していれば、故障は発生していないと判断し(ステップS142:no)、圧縮比が一致していなければ、故障が発生していると判断する(ステップS142:yes)。
ステップS142において「no」と判断され場合、すなわち故障が発生していないと判断された場合は、空燃比を設定する処理を行う(ステップS144)。すなわち、エンジン10が冷態状態にあるときは、空燃比は理論空燃比に設定したが、暖機状態にあるときは運転条件に応じて適切な空燃比を設定するのである。ECU60のROMには、エンジン回転速度Neとアクセル開度θacとをパラメータとするマップの形式で、適切な空燃比が予め設定されている。図8は、圧縮比に応じてROMに記憶されている空燃比のマップを概念的に示した説明図である。ステップS144では、設定された圧縮比に対応するマップを参照することにより、運転条件に応じた適切な空燃比を設定する処理を行う。
空燃比の設定に続いて、燃料の噴射方式を設定する処理を行う(ステップS146)。図1を用いて前述したように、本実施例のエンジン10は、燃料噴射弁を2箇所に備えており、燃焼室内に直接燃焼を噴射(筒内噴射)することも、あるいは吸気通路内に燃料を噴射(ポート噴射)して空気とともに燃焼室内に供給することも可能となっている。筒内噴射は燃料の噴射時期を適切に設定することで、燃焼室内に燃料が密な領域と粗な領域とを形成することができる。こうした性質を利用して、点火プラグ27の周辺の燃料濃度を高く、他の部分の燃料濃度を低くしてやれば、希薄な空燃比の混合気を安定して燃焼させることが可能となる。またポート噴射は、燃料を一旦、吸気通路内に噴射して、空気とともに燃焼室内に吸入するために、燃焼室内には燃料と空気とが充分に混ざり合った均一な混合気を形成することができる。従って、燃料と空気とを速やかに燃焼させて大きな出力を得るためには、ポート噴射を行うことが好ましい。エンジン10では、2箇所に燃料噴射弁を備えていることを活かして、燃料噴射方式を使い分けることが可能である。そこで、ECU60はステップS146において、運転条件に応じて燃料噴射方式を設定する処理を行う。
図9は、ECU60のROM内に記憶されている燃料噴射方式のマップを概念的に示した説明図である。図示されているように、エンジン回転速度Neが高く、あるいはアクセル開度θacが大きく、高い出力が必要とされる運転条件では、燃料噴射方式としてポート噴射が設定されており、それ以外の運転条件では燃料噴射方式として筒内噴射が設定されている。ECU60は、かかるマップを参照することにより、運転条件に応じた適切な燃料噴射方式を選択する。
こうして、圧縮比および燃料噴射方式を設定したら、今度は点火時期およびEGR弁開度を設定する処理を行う(ステップS148およびS150)。これらの処理は、前述した冷態時における処理(図2のステップS110およびS116)とほぼ同様であり、ここでは概要のみを説明する。ECU60のROM内には、図5に示すような点火時期のマップと、図7に示すようなEGR弁開度のマップとが予め記憶されている。ステップS148では暖機状態用に記憶されている点火時期のマップを参照して点火時期を設定し、また、ステップS150では暖機状態用に記憶されているEGR弁開度のマップを参照してEGR弁開度を設定する。エンジン10が暖機状態にあり、圧縮比を切り換えるための機構にも故障が発生していないと判断された場合は、こうして設定した空燃比、燃料噴射方式、点火時期に従って、燃料噴射制御(ステップS120)および点火時期制御(ステップS122)を行うことにより、エンジン10を適切に運転することが可能となる。
一方、ステップS142において故障が発生していると判断された場合は(ステップS142:yes)、空燃比を理論空燃比に設定する(ステップS152)。これは、前述したように、どのような圧縮比に設定されている場合でも、混合気を安定して燃焼させることを可能とするためである。次いで、燃料噴射方式を筒内噴射に設定する(ステップS154)。これは、いわゆるバックファイアを発生を回避するためである。すなわち、通常は、混合気は速やかに燃焼して燃焼室内の圧力が高くなり、ピストン41を押し下げることによって動力を発生させる。ところが、圧縮比が低い値で固着した場合などには、混合気の燃焼状態が悪化して、ピストン41の降下中もダラダラと燃焼が続くことがある。特に、次の吸気行程に入っても燃焼が続くような場合は、燃料を吸気通路内に噴射していると、燃焼室内で燃え残った火種が吸気バルブ21から吸気通路50内に逆流することがある。バックファイアとは、この様な現象を言う。
バックファイアは、希薄空燃比よりは濃いめの空燃比で運転している場合に生じ易い傾向がある。これは、バックファイアは、ピストン41の降下中も燃焼が続いている場合に生じる現象であるところ、混合気の空燃比が希薄な場合はピストン41の降下中に火が消えてしまい、バックファイアに至らないことが多いことによる。本実施例では、混合気を安定して燃焼させるために、ステップS152で理論空燃比に設定しており、この点ではバックファイアが起き易い条件となっている。ひとたびバックファイアが発生すると、大きな騒音が発生して運転者に違和感を与えるだけでなく、場合によってはサージタンク54の破損に至るおそれもある。ステップS154では、こうしたことを考慮して、燃料噴射方式を筒内噴射に設定するのである。筒内噴射を行えば、吸気通路50内には燃料は存在していないので、バックファイアの発生を確実に回避することが可能となる。
次いで、ECU60のROMに設定されているマップを参照することにより点火時期を設定する(ステップS156)。ここでは、図5に示した冷態状態に用いた点火時期マップを流用して点火時期を設定するものとする。前述したように、冷態状態時は設定した点火時期から暖機遅角を行うが、ここでは暖機遅角を行わないものとして、図5のマップを流用してもほぼ適切な点火時期を設定することができる。もちろん、ECU60のROM内に、暖機状態で理論空燃比用の点火時期のマップを予め記憶しておき、このマップを参照して点火時期を設定することとしても良い。
点火時期を設定したら、EGRを停止する(ステップS158)。すなわち、EGRは混合気の燃焼を悪化させる方向に作用するから、混合気を確実に燃焼させるべく、EGR弁の開度を全閉状態としてEGRを停止するのである。
こうして空燃比、燃料噴射方式、点火時期、EGR弁開度を設定したら、燃料噴射制御(ステップS120)および点火時期制御(ステップS122)を行う。こうした制御を行う結果、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生した場合には、EGRを行うことなく理論空燃比の混合気が形成されることになり、混合気を安定して燃焼させることが可能となる。また、燃焼室内に直接燃料を噴射することで、バックファイアの発生も確実に回避することが可能となる。
次いで、ECU60は、運転者によってエンジン10を停止する旨が指示されたか否かを判断し(ステップS124)、エンジン10を停止する旨が指示されていない場合は(ステップS124:no)、ステップS100に戻って上述した一連の処理を繰り返す。逆に、エンジン10を停止する旨が指示されていると判断された場合は(ステップS124:yes)、図2に示したエンジン制御ルーチンを終了する。
尚、以上に説明した第1実施例では、圧縮比を切り換えるための機構に故障が発生した場合には、エンジンを安定した運転状態を確保するべく、希薄空燃比に設定したり、点火時期を遅角させたり、あるいはEGRを行うといった混合気の燃焼を悪化させる方向に作用する種々の制御を行わないこととした。しかし、圧縮比が低い値に固着してしまった場合、あるいは、高い圧縮比へ切り換えられなくなってしまった場合にだけ、混合気の燃焼を悪化させる制御を行わないこととしても良い。こうすれば、例えば高い圧縮比に固着した場合のように、燃焼状態の悪化が懸念されない場合には、こうした制御を抑制せずに済むので好ましい。
C.第2実施例:
上述した第1実施例では、圧縮比の切換機構に故障が発生した場合には、混合気の燃焼を不安定にする制御は行わないものとした。しかし、故障が発生した場合には、これら制御の内容を、設定可能な圧縮比で許容される範囲に制限することとしても良い。以下では、こうした第2実施例について説明する。
図10は、第2実施例のエンジン制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。以下、図示したフローチャートに従って説明する。
第2実施例においても、ECU60はエンジン制御ルーチンを開始すると、先ず初めに運転条件を検出する(ステップS200)。運転条件としては、エンジンの回転速度Ne およびアクセル開度θacを検出する。
次いで、エンジン10の圧縮比を設定する(ステップS202)。圧縮比は、前述した第1実施例と同様に、ECU60のROMに運転条件に応じて記憶されているマップ(図4参照)を参照することによって設定する。続いて、圧縮比センサ63の出力に基づいて、エンジン10に設定されている実際の圧縮比を検出して(ステップS204)、設定した圧縮比と検出した圧縮比とを比較することにより、故障の発生有無を検出する(ステップS206)。2つの圧縮比が一致している場合は故障は発生していないと判断して(ステップS206:no)、運転条件に応じた空燃比および点火時期を設定する処理を行う(ステップS208)。すなわち、前述した第1実施例と同様に、ECU60のROMには、運転条件をパラメータとする空燃比のマップ(図8参照)および点火時期のマップ(図5参照)が予め記憶されていて、これらマップを参照することにより、運転条件および圧縮比に応じた適切な空燃比および点火時期を設定する。
こうして設定した空燃比に基づいて、燃料の噴射量を算出し、適切なタイミングで燃料噴射弁26を駆動する(ステップS212)。こうすることで、燃焼室内には設定した空燃比の混合気が形成される。続いて、ステップS208で設定したタイミングで点火プラグ27を点火することにより、混合気に点火する(ステップS214)。その結果、燃焼室内で混合気が速やかに燃焼して動力を発生させる。
一方、設定した圧縮比と検出した圧縮比とが一致しておらず、従って、圧縮比を切り換えるための機構に何らかの故障が発生したと判断された場合は(ステップS206:yes)、検出した圧縮比に応じて、空燃比および点火時期の設定を行う(ステップS210)。すなわち、ECU60のROMには、図8に示すように、圧縮比に応じて適切な空燃比のマップが記憶されている。点火時期についても同様に、図5に示すように、圧縮比に応じて適切なマップが記憶されている。そこで、検出した圧縮比に応じたマップを参照しながら、空燃比および点火時期を設定するのである。例えば、ステップS202で設定した圧縮比がε=15であっても、検出した圧縮比がε=10である場合は、ε=10のマップを参照しながら空燃比および点火時期を設定する。また、例えば、検出した圧縮比がε=11の場合は、ε=10のマップとε=13のマップとを補間することで、ε=11の値を算出すればよい。ステップS210では、こうして検出した圧縮比に応じて空燃比および点火時期を設定する処理を行う。
こうして検出した圧縮比に応じて空燃比および点火時期を設定した後、燃料噴射制御(ステップS212)および点火制御(ステップS214)を行う。こうすれば、圧縮比を切り換えるための機構に何らかの故障が生じた場合でも、実際に設定されている圧縮比を検出し、検出された圧縮比に応じて許容された範囲で空燃比および点火時期を設定することができる。その結果、圧縮比の切換機構の故障が生じた場合でも、混合気の燃焼を悪化させることなく、エンジンを安定して運転することが可能となるので好ましい。
尚、上述した第2実施例では、説明が煩雑となることを避けるために、EGR制御や暖機遅角制御などは行わないものとして説明したが、もちろん、第1実施例と同様に、これらの制御を併せて行うこととしても構わないことは言うまでもない。
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
本実施例のエンジンの構成を概念的に示した説明図である。 第1実施例のエンジン運転制御ルーチンにおいて冷態時に行われる制御の流れを示すフローチャートである。 第1実施例のエンジン運転制御ルーチンにおいて暖機時に行われる制御の部分を示したフローチャートである。 運転条件に応じて圧縮比が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 圧縮比毎に運転条件に応じた点火時期が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 冷却水温度に応じて暖機遅角量が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 運転条件に応じてEGR弁開度が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 圧縮比毎に運転条件に応じた空燃比が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 運転条件に応じて燃料噴射方式が設定されているマップを概念的に示した説明図である。 第2実施例のエンジン運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
符号の説明
10…エンジン
20…シリンダヘッド
21…吸気バルブ
22…排気バルブ
23…吸気ポート
24…排気ポート
26…燃料噴射弁
27…点火プラグ
30…シリンダブロックASSY
31…アッパーブロック
32…ロアブロック
33…アクチュエータ
34…シリンダ
40…メインムービングASSY
41…ピストン
42…コネクティングロッド
43…クランクシャフト
50…吸気通路
51…エアクリーナ
52…スロットルバルブ
53…電動アクチュエータ
54…サージタンク
55…燃料噴射弁
58…排気通路
60…ECU
61…クランク角センサ
62…アクセル開度センサ
63…圧縮比センサ
64…水温センサ
70…EGR通路
72…EGR弁

Claims (9)

  1. 燃料および空気の混合気を燃焼室内で圧縮し、該圧縮した混合気を燃焼させることによって動力を出力する内燃機関であって、
    前記混合気の圧縮の程度を表す指標たる圧縮比を変更可能な圧縮比変更機構と、
    前記圧縮比変更機構の動作を制御することにより、前記圧縮比を前記内燃機関の運転条件に応じて制御する圧縮比制御手段と、
    前記圧縮比変更機構における故障の発生を検知する故障検知手段と、
    前記故障の発生が検知された場合に、前記混合気の燃焼の安定性を低下させる所定の制御の実行を抑制する所定制御抑制手段と
    を備える内燃機関。
  2. 請求項1記載の内燃機関であって、
    前記圧縮比変更機構は、前記圧縮比を、最も低い設定の第1の圧縮比および最も高い設定の第2の圧縮比の、少なくとも2段階に変更可能な機構であり、
    前記故障検知手段は、前記圧縮比が、少なくとも前記第2の圧縮比には変更できないことを検知する手段である内燃機関。
  3. 請求項2記載の内燃機関であって、
    前記故障検知手段は、前記圧縮比変更機構が前記第2の圧縮比以外の圧縮比で固着していることを検知する手段である内燃機関。
  4. 請求項1記載の内燃機関であって、
    前記混合気中の燃料に対する空気の比率を表す空燃比を、空気と燃料とが過不足なく燃焼する比率たる理論空燃比、または空気に対して燃料が不足する比率たる希薄空燃比の少なくともいずれかに、前記運転条件に応じて制御する空燃比制御手段を備え、
    前記所定制御抑制手段は、前記故障の発生が検知された場合には、前記混合気を前記希薄空燃比に設定する制御を抑制する手段である内燃機関。
  5. 請求項1記載の内燃機関であって、
    前記燃焼室内に所定のタイミングで火花を飛ばすことにより、前記圧縮された混合気の燃焼を開始する点火手段と、
    前記内燃機関が冷態状態にあることを検知する冷態状態検知手段と、
    前記内燃機関が冷態状態にある場合に、前記点火手段を制御して、前記火花を飛ばすタイミングを前記所定のタイミングから遅らせる遅角制御を行う冷態時遅角制御手段と
    を備え、
    前記所定制御抑制手段は、前記故障の発生が検知された場合には、前記遅角制御の実行を抑制する手段である内燃機関。
  6. 請求項1記載の内燃機関であって、
    前記混合気が燃焼することによって生じた燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に還流させるEGR制御を行うEGR制御手段を備え、
    前記所定制御抑制手段は、前記故障の発生が検知された場合には、前記EGR制御の実行を抑制する手段である内燃機関。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の内燃機関であって、
    前記故障検知手段は、前記圧縮比変更機構が固着していることを検出する手段であり、
    所定制御抑制手段は、
    前記所定の制御について、固着した圧縮比毎に許容される制御内容を記憶した許容制御内容記憶手段を備えるとともに、
    前記所定の制御の実行を、固着した圧縮比で許容されている制御内容に抑制する手段である内燃機関。
  8. 請求項1記載の内燃機関であって、
    前記燃焼室内に吸入される空気を導入する吸気通路と、
    前記吸気通路内に燃料を噴射する第1の燃料噴射弁と、
    前記燃焼室内に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁と、
    前記運転条件に応じて、前記第1の燃料噴射弁および前記第2の燃料噴射弁の少なくとも一方から燃料を噴射する燃料噴射制御手段と
    を備え、
    前記所定制御抑制手段は、前記故障の発生が検知された場合には、前記第1の燃料噴射弁から燃料を噴射する制御を抑制する手段である内燃機関。
  9. 燃料および空気の混合気を燃焼室内で圧縮し、該圧縮した混合気を燃焼させることによって動力を出力する内燃機関の制御方法であって、
    前記混合気の圧縮の程度を表す指標たる圧縮比を変更可能な圧縮比変更機構を、前記内燃機関の運転条件に応じて制御することにより、該内燃機関の圧縮比を制御する第1の工程と、
    前記圧縮比変更機構における故障の発生を検知する第2の工程と、
    前記故障の発生が検知された場合に、前記混合気の燃焼の安定性を低下させる所定の制御の実行を抑制する第3の工程と
    を備える制御方法。
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