JP2007224320A - 薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】不純ガス放出源となる電磁誘導にて加熱される基板固定部材を不要にし、高真空状態において基板を効率的に加熱することができる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を実現することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る薄膜形成装置は、蒸着物4が蒸着される基板1が、少なくとも表面層または内部に導電性を具備する導電性の基板1であり、基板1を電磁誘導により加熱するために基板1に対向配置された電磁誘導手段5と、基板1を保持する基板保持手段2と、電磁誘導手段5、基板保持手段2及び基板1を内包する真空チャンバー7とを備えたものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関するものであり、特に、薄膜形成における基板加熱に関するものである。
従来から行われている代表的な薄膜形成装置として真空蒸着装置がある。真空蒸着装置においては、薄膜が形成される基板を加熱する加熱装置を備えている。従来より広く産業界で用いられている真空蒸着装置における基板加熱は、基板を保持する基板ドームの上側に配置されたシースヒータ(渦巻状ヒータ)もしくは基板ドームの下側に配置されたハロゲンランプ、あるいはこれらの組み合わせにより行われる。
しかしながら、従来の基板加熱の方法では、薄膜が形成される基板のみならず、基板ドームやチャンバー壁、基板保持具等、チャンバー内部全体が加熱される。チャンバー全体が加熱されると、加熱された部材の表面に吸着された水分等が不純ガスとなりチャンバー内に放出される。基板加熱は蒸着膜形成時に行われることから、加熱により放出された不純ガスは、蒸着膜中に取り込まれ、高純度膜の形成を阻害する要因となる。また、従来の方法は赤外線の輻射による加熱であるため、赤外線の吸収率が小さい素材、例えば、鏡面研磨されたGe基板のようなものにおいては加熱に時間がかかり、効率的な加熱が困難であった。
これらの問題点を解決するため、基板を固定する基板固定部材を電磁誘導により加熱すし、チャンバー壁等からの不純ガスの発生を抑制した蒸着装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−2112号公報(第2―3頁、図1)
しかしながら、上記特許文献1に開示された蒸着装置では、基板固定部材を電磁誘導により加熱するため、基板固定部材が高温となり、不純ガスの放出源となることの他、基板が直接加熱されるわけではないため、真空蒸着装置のような高真空状態においては基板を効率的に加熱することが困難であるという問題を有していた。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、不純ガス放出源となる電磁誘導にて加熱される基板固定部材を不要にし、高真空状態において基板を効率的に加熱することができる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を実現することを目的とする。
本発明に係る薄膜形成装置は、蒸着物が蒸着される基板が、少なくとも表面層または内部に導電性を具備する導電性の基板であり、
上記基板を電磁誘導により加熱するために上記基板に対向配置された電磁誘導手段と、
上記基板を保持する基板保持手段と、
上記電磁誘導手段、上記基板保持手段及び上記基板を内包する真空チャンバーとを備えたものである。
本発明に係る薄膜形成方法は、真空チャンバー内に設けられた基板保持手段に、少なくとも表面層または内部に導電性を具備する導電性の基板を設置した後、
上記真空チャンバー内を真空排気し、
上記基板に対向配置された、上記基板を加熱するための電磁誘導手段により上記基板を電磁誘導加熱し、
上記基板に蒸着物を蒸着するものである。
本発明に係る薄膜形成装置及び薄膜形成方法によれば、基板に対向配置された電磁誘導手段により基板を加熱するため、基板保持手段や真空チャンバー壁の加熱を抑制することができる。このため、これらの部材からの不純ガスの発生が抑制され、高純度な薄膜を得ることができる。
また、基板を直接加熱できるため、基板加熱を効率的かつ迅速に行うことができる。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態1を示す断面図である。基板1は、例えば、ステンレス鋼(SUS)製の基板保持手段2に設けられた窪み部分に嵌合するように設置される。ここで、本発明にかかる薄膜形成装置においては基板1に電磁誘導が生じることが前提であり、基板1は導電体であるか、あるいは、少なくとも表層もしくは内部に導電性を備えているものであることが必要となる。基板保持手段2は真空チャンバー7と一体で形成しても良いし、真空チャンバー7とは別部材としてもよい。なお、基板1は、基板保持手段2に設けられた窪み部分に嵌合されると蒸着源3に対峙する様に構成される。蒸着源3としては、例えば、Cu製のルツボが用いられる。蒸着源3には蒸着物4が充填されている。蒸着物4は形成する薄膜に対応するもので、例えば、SiO膜を形成する場合には蒸着物4として粒状もしくはペレット状のSiOが用いられ、Au薄膜を形成する場合には蒸着物4として粒状のAuが用いられる。
電磁誘導手段5は、基板1と相対するように隣接配置されている。電磁誘導手段5は、例えば、電磁誘導コイルより構成されるが、基板1に電磁誘導を生じさせうるものであれば、特に電磁誘導コイルに制限されるものではない。以下においては、電磁誘導手段5として電磁誘導コイルを用いた場合について説明する。
蒸着源3の側方には加熱源である電子ビーム加熱装置6が設けられている。電子ビーム加熱装置6は通常、外部に設置された電源によりコントロールされる。真空チャンバー7は、図示しない排気系にて真空排気される。排気系は目的に合わせ、RP(ロータリーポンプ)、DP(拡散ポンプ)、CP(クライオポンプ)、MB(メカニカルブースター)などのポンプの単独、あるいは組み合わせにより構成される。
真空蒸着は以下の手順で行われる。真空チャンバー7が大気開放された状態で、例えば、鉄製の基板1が基板保持手段2に設けられた窪み部分に嵌合するように設置される。蒸着源3に所望の薄膜に対応する蒸着物4がセットされ、真空チャンバー7が図示しない排気系により真空引きされる。真空チャンバー7が真空引きされると、電磁誘導コイル5が通電され、基板1に渦電流が生じ、基板1は電磁誘導加熱される。基板1の加熱温度は対象となる薄膜に応じて異なるが、例えば、Ge膜の場合で約150℃、酸化物膜やフッ化物膜で300℃〜400℃に加熱される場合が多い。真空チャンバーが10−2Pa〜10−3Pa程度に排気され、基板1が所望の温度まで加熱されると電子ビーム加熱装置6が通電され、電子ビームにより蒸着源3に充填された蒸着物4を加熱する。加熱された蒸着物4が蒸着温度に達すると、蒸着源3から基板1に向かって蒸着物4が飛散する。飛散した蒸着物4が基板1に到達すると、基板1上に蒸着物4の薄膜が形成される。
上記特許文献1のように基板1を基板固定部材上に置くだけでは、基板1を効率的に加熱することは困難である。すなわち、基板1を基板固定部材上に置く場合、基板固定部材と基板とはミクロ的には複数の点(究極は3点)にて接触しているだけで面接触している訳ではないため、基板固定部材と基板との相対する面での大半の加熱機構は、基板固定部材からの熱輻射となる。仮に基板保持部材がアルミニウム(Al)製であった場合、Alの熱伝導率は228(W/mK)であるが、大気の熱伝導率は100℃において約0.0313(W/mK)と約5桁小さい。このように、点接触していない部分の熱伝導率は非常に小さく、効率的な熱伝導が困難である。
さらに、チャンバー内を高真空状態にすると、チャンバーは魔法瓶状態となり、熱伝達が抑制され輻射での熱伝導率はさらに約2桁〜3桁低下する。すなわち、気体の熱伝導率は、超低圧および超高圧を除いては圧力にほぼ無関係であるが、圧力が0.005mmHg(約6.7×10−1Pa)以下の超低圧状態になると圧力に正比例して低下するようになると言われている。高純度な膜を形成する場合、真空蒸着は、通常は10−2Pa〜10−3Pa程度の真空で行われるため、大気中における熱伝導に比して、約2桁〜3桁、熱伝導率が低下することになる。よって、高真空状態においては、相対する基板と基板固定部材の大部分においては、輻射での熱伝導率はさらに低下し、Alの熱伝導率よりも約7桁から8桁熱伝導率が小さくなる。
本実施の形態1の薄膜形成装置によれば、基板1を電磁誘導加熱により直接加熱することができるため、基板保持手段やチャンバー壁がほとんど加熱されず、これら部材表面からの不純ガスの発生が抑制され、蒸着源3から基板1に対し飛散する蒸着物4が不純ガスを取り込むことがなく、基板1上には高純度な蒸着物4の薄膜が形成される。
また、基板を直接加熱することができるので、基板加熱を効率的かつ迅速に行える薄膜形成装置および薄膜形成方法が実現される。
なお、本実施の形態1においては、基板1が鉄である場合について説明したが、基板1の材料は鉄に制限されるものではなく、例えば、CuやAlのような鉄に比して導電率の高い材料を用いることもできる。一般に、CuやAlは鉄に比べ、電磁誘導により加熱することがやや困難であるが、電磁誘導に用いる電流をより高周波とすることで渦電流を表層の浅い部分に生じさせることができ、効率的な加熱が実現される。
また、本実施の形態1においては、薄膜形成装置及び薄膜形成方法として代表的な真空蒸着装置の場合について説明したが、本実施の形態1の薄膜形成装置及び薄膜形成方法は真空蒸着に限定されるものではなく、スパッタリングやイオンプレーティング等、蒸着時に基板加熱を必要とする薄膜形成装置及び薄膜形成方法に適用することが可能であることは言うまでもない。
実施の形態2.
図2は、本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態2を示す断面図であり、本実施の形態2は、基板固定部材に関するものである。
図2に示したように、本実施の形態2では、基板1が取り付けられる基板固定部材8を備えており、基板1はチャンバー外で基板固定部材8に取り付けられ、基板1が取り付けられた基板固定部材8は真空チャンバー7内の基板保持具2に固着される。
通常、真空蒸着装置においては、基板に傷等を付けないように、蒸着のための基板保持具への取り付けには細心の注意をはらうことが必要になる。一般に真空蒸着装置の作業空間は狭く、基板に傷をつけないように細心の注意をはらいながら作業するのは困難で、作業性を著しく阻害する。
本実施の形態2によれば、基板固定部材8を用い、余裕のある作業空間で基板1を基板固定部材8に取り付け、基板1を取り付けた基板固定部材8を基板保持具2に取り付けるようにしたので、基板をチャンバー内に設置する際に基板1表面に傷等の損傷を生じる心配がほとんどなく、真空チャンバー内での作業性がよくなる。
また、電磁誘導コイル5は基板の薄膜形成部分に対応した形状としているので、基板固定部材8や基板保持具2が電磁誘導により加熱されることはほとんどなく、従って、基板固定部材8は導電体であっても誘電体であってもよく、上記特許文献1のように、基板固定部材8を電磁誘導を生じうる材質により構成する必要があるという制約は生じない。
なお、真空蒸着の手順は、上記実施の形態1と同様である。
実施の形態3.
上記実施の形態1及び2においては、基板1が導電体である場合について説明したが、本発明に係る薄膜形成装置において用いることができる基板は導電体のみならず、ゲルマニウム(Ge)のような半導体でもよい。この場合は、Geにドーピングを行うことにより表面層にのみ導電性を付与する。
図3は、基板1として、例えば、半導体であるGeを用いた本実施の形態3を説明する断面図である。
Ge自体の導電率は約1.5Ω・cmであるが、このGeにB、P等のドーパントを適量注入して表面層1aのみ10−4〜10−6Ω・cmとすることにより、基板1の表面層1aに金属並みの導電性が得られ、電磁誘導による加熱が可能となる。電磁誘導加熱されるのはGe基板1の表面層1aのみであるが、Geの熱伝導率は59.9(W/mK)であるため表面層1aを直接加熱することにより、基板1全体を効率的に加熱することができる。
本実施の形態3によれば、赤外線の吸収が小さく、通常のシースヒータまたはハロゲンヒータにては効率的に加熱できないGe基板を電磁誘導にて効率的かつ迅速に直接加熱することができる。
なお、この他、各種ガラス基板やZnS、ZnSe、BaF、YOのような各種硫化物、フッ化物、酸化物等であっても、裏面にFe等の金属膜を蒸着することで電磁誘導による加熱を行うことも可能である。この場合、蒸着された金属層のみが加熱されるが、加熱された金属層と基板材料とは点接触ではなく面接触であるため、基板は熱輻射に比較して迅速に加熱される。
また、導電体の周囲を誘電体で覆ったような複合材料、例えば、鉄板の周りをガラスで覆ったようなものを基板として用いることも可能である。この場合は、基板内部の鉄板が電磁誘導にて加熱されるため、基板全体が効率的かつ迅速に加熱される。
なお、真空蒸着の手順は、上記実施の形態1と同様である。
実施の形態4.
実施の形態1乃至3においては、基板1が静止状態の場合について説明したが、実際の真空蒸着は、回転可能な基板保持ドームに複数枚の基板が設置され、この基板保持ドームを回転しながら蒸着物を加熱することにより行われることが多い。本実施の形態4に係る薄膜成形装置は、このような回転可能な基板保持ドームに設置された基板の加熱及び蒸着を目的としたものである。
図4は、本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態2を示す断面図である。図4に示したように、基板保持具2は回転可能なドーム型になっている。また、電磁誘導コイル5は、ドーム型の基板保持具2の上方に近接配置される。
以下に、蒸着手順を説明する。
まず、ドーム型の基板保持具2に複数個の基板1を設置した後、真空チャンバー7の真空引きを行う。
次に、真空チャンバー7の真空引きが行われると、ドーム型の基板保持具2が回転され、同時に電磁誘導コイル5が通電される。基板1はドーム型基板保持具2と共に回転するため、1つの基板1が、常時、電磁誘導加熱される訳ではないが、基板1が電磁誘導コイル5と相対する位置に来ると、基板1は電磁誘導により渦電流を生じ、電磁誘導加熱される。ドーム型基板保持具2が1回転する間に、基板1が電磁誘導により生じた熱を100%放出されなければ、基板1は徐々に昇温し、所定の温度に到達する。図4では、電磁誘導コイル5が1つ配置された構成を示したが、電磁誘導コイル5は必要に応じてドーム型基板保持具2の周囲に複数個配置することが可能で、基板1の昇温時間を短縮することが可能となる。
真空チャンバーが10−2Pa〜10−3Pa程度に排気され、基板1が所望の温度まで加熱されると電子ビーム加熱装置6が通電され、電子ビームにより蒸着源3に充填された蒸着物4を加熱する。加熱された蒸着物4が蒸着温度に達すると、蒸着源3から基板1に向かって蒸着物4が飛散する。飛散した蒸着物4が基板1に到達すると、基板1上に蒸着物4の薄膜が形成される。
本実施の形態4の薄膜形成装置によれば、基板回転ドームに保持された基板の加熱が容易に行えると共に、実施の形態1〜3にて述べた効果を得ることができる。
なお、ドーム型基板保持具2に変えて円盤形にしてもよい。また、真空蒸着の手順は、上記実施の形態1と同様である。
本発明に係る薄膜形成装置及び薄膜形成方法は、高純度な薄膜を得るための薄膜形成装置及び薄膜形成方法として有効に利用することができる。
本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態1を示す断面図である。 本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態2を示す断面図である。 基板として、半導体であるGeを用いた実施の形態3について説明する断面図である。 本発明に係る薄膜形成装置の実施の形態2を示す断面図である。
符号の説明
1 基板、1a 基板の表面層、2 基板保持手段、3 蒸着源、4 蒸着物、
5 電磁誘導手段、6 加熱手段、7 真空チャンバー、8 基板固定部材。

Claims (6)

  1. 蒸着物が蒸着される基板が、少なくとも表面層または内部に導電性を具備する導電性の基板であり、
    上記基板を電磁誘導により加熱するために上記基板に対向配置された電磁誘導手段と、
    上記基板を保持する基板保持手段と、
    上記電磁誘導手段、上記基板保持手段及び上記基板を内包する真空チャンバーとを備えたことを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 上記基板が載置される基板固定部材を備え、
    上記基板固定部材が上記基板保持手段に嵌合されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  3. 上記基板保持手段は、上記基板を複数個保持して回転する基板回転ドームであることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  4. 真空チャンバー内に設けられた基板保持手段に、少なくとも表面層または内部に導電性を具備する導電性の基板を設置した後、
    上記真空チャンバー内を真空排気し、
    上記基板に対向配置された、上記基板を加熱するための電磁誘導手段により上記基板を電磁誘導加熱し、
    上記基板に蒸着物を蒸着することを特徴とする薄膜形成方法。
  5. 上記基板を上記真空チャンバーの外で基板固定部材に載置し、
    上記基板固定部材を上記真空チャンバー内の上記基板保持手段に嵌合することを特徴とする請求項4記載の薄膜形成方法。
  6. 上記基板がゲルマニウムであり、上記ゲルマニウムの表面にドーピングにより導電性を付与することを特徴とする請求項4または5記載の薄膜形成方法。
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