JP2007223913A - コイヘルペスウイルス病ワクチン - Google Patents
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Abstract
【課題】コイヘルペスウイルス病を予防する注射ワクチンを提供する。
【解決手段】不活化後濃縮したコイヘルペスウイルスを抗原とするワクチンおよび不活化したコイヘルペスウイルス感染細胞を抗原とするワクチンを作製し、それらを適切な方法でコイに接種することで、コイにおけるコイヘルペスウイルス病を予防する。
【選択図】なし
【解決手段】不活化後濃縮したコイヘルペスウイルスを抗原とするワクチンおよび不活化したコイヘルペスウイルス感染細胞を抗原とするワクチンを作製し、それらを適切な方法でコイに接種することで、コイにおけるコイヘルペスウイルス病を予防する。
【選択図】なし
Description
本発明は、コイにおけるコイヘルペスウイルス病を予防する不活化および濃縮したコイヘルペスウイルスを抗原とする注射ワクチン、および不活化したコイヘルペスウイルス感染細胞を抗原とする注射ワクチンに関する。
コイヘルペスウイルス(koi herpesvirus:以下、KHVと略す)は、魚由来のヘルペスウイルスで(Hedrick R. P. et al. 2000. A herpesvirus associated with mass mortality of juvenile and adult koi, a strain of a common carp. J. Aquat. Anim. Health 12: 44-57.)、近年、日本やインドネシアで、また、古くは1990年代後半に西ヨーロッパでコイにコイヘルペスウイルス病(koi herpesevirus disease)を大量発生させた病原ウイルスである。KHVについては、日本、アメリカおよびイスラエルのコイから分離されたウイルスのゲノムDNAの全塩基配列が決定されている。一方、このウイルスは、コイ科魚類から分離されたヘルペスウイルスとしては3番目のウイルスということから、Cyprinid herpesvirus 3(CyHV-3)とも言われている(Waltzek T. B. et al. 2005. Koi herpesvirus represents a third cyprinid herpesvirus (CyHV-3) in the family Herpesviridae. J. Gen. Virol. 86: 1659-1667.)。
KHVは、ウイルス粒子の直径が180〜230 nmで、外被を有し、感染細胞の核内で増殖する(Hedrick R. P. et al. 2000. A herpesvirus associated with mass mortality of juvenile and adult koi, a strain of a common carp. J. Aquat. Anim. Health 12: 44-57.)。
KHVは、水を介して伝播し、感染したコイでの死亡率が極めて高いことから、KHV病が発生したコイ養殖場において多大な経済的損失を与えている。加えて、養殖以外のコイ、すなわち河川などに生息するコイでの感染が多数確認されていることから、自然界のコイに対する本ウイルス感染症の影響も懸念されている。
KHV病の予防・防御策として、弱毒生ウイルスワクチンが有効であるとの報告があるが、ワクチン処理したコイがワクチンウイルスそのもののキャリアーになる可能性が指摘され、実用的ではないと判断されている。一方、不活化KHVワクチンについては、KHV病に対する予防効果がなかったと報告されている(Ronen A. A. et al. 2003. Efficient vaccine against the virus causing a lethal disease in cultured Cyprinus carpio. Vaccine 21: 4677-4684.; Perelberg A. et al. 2005. Protection of cultured Cyprinus carpio against a lethal viral disease by an attenuated virus vaccine. Vaccine 23: 3396-3403.)。
KHVを実験感染させたコイを、KHVの増殖に適した水温(10〜28℃)より高い30℃以上で飼育すると、KHV感染したコイがKHV病から回復すると考えられているが、一方では、このKHV病から回復したコイをKHVの増殖に適した水温(10〜28℃)で飼育したところKHV病が発症したとの知見もあり、野外におけるKHV病の予防・防御策としては実践的な方法ではないと判断されている(Iida T. and Sano M., 2005. Koi herpesvirus disease. Virus 55: 145-152.)。
一方、近年、日本において、不活化したKHV(cell-free virus)をリポソーム化して餌に混合してコイに経口投与すると、コイはKHVによるウイルス攻撃を防御したとの試験結果が報告されている(特開2003−306427号公報参照)が、実践面での検討は一切なされていない。すなわち、リポソーム化ワクチンという特殊な剤型のワクチンを、リポソーム化という特殊な機器を用いた特殊な製造工程で、無菌的に、均一な品質で、しかも市販に供するに十分な量のワクチンを市販用ワクチンの価格に見合う製造コストで製造できるかという点で、このワクチンは実践的なワクチンとしては問題がある。
これまでに、濃縮した不活化KHVを抗原としたKHV病の予防に有効な注射ワクチンおよび不活化KHV感染細胞を抗原としたKHV病の予防に有効な注射ワクチンは開発されていない。
以上のように、適正な価格で市販用に供給できる、実践的なKHV病予防注射ワクチンは開発されてなく、その早急な開発が強く望まれている。
一方、本発明者らは、不活化・濃縮したKHVおよび不活化したKHV感染細胞を抗原としたKHV病注射ワクチンがコイのKHV病に対して予防効果があることを見出し、本発明の実践的なKHV病予防注射ワクチンを開発するに至った。
特開2003−306427号公報
一方、本発明者らは、不活化・濃縮したKHVおよび不活化したKHV感染細胞を抗原としたKHV病注射ワクチンがコイのKHV病に対して予防効果があることを見出し、本発明の実践的なKHV病予防注射ワクチンを開発するに至った。
本発明は、上述の背景技術において記載した欠点を克服すべくなされたものであって、現状では有効な注射ワクチンが開発されていない、コイにおける致死的なウイルス感染症であるKHV病を予防する注射ワクチンを提供することを目的とする。
本発明のワクチンは、コイにおけるKHV病を予防することが可能な注射ワクチンで、濃縮した不活化KHVを抗原として含有することを特徴とする。
本発明の別のワクチンは、コイにおけるKHV病を予防することが可能な注射ワクチンで、不活化したKHV感染細胞を抗原として含有することを特徴とする。本発明のワクチンはまた、コイヘルペスウイルスを感染させたCF-1細胞またはCCB細胞を不活化した細胞を抗原として含有することを特徴とする。
本発明のワクチンは、これまで予防できなかったコイの致死的な感染症であるKHV病を予防することができる。これにより、食用に供する養殖コイのみならず、観賞用および自然界に生息するコイをKHV病から救うことができることから、その経済的効果は大きく、また、社会的貢献度は非常に高い。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンにおいて、抗原とするKHVやKHV感染細胞の不活化方法としてはホリマリン処理法を用いることができるが、抗原性を損わない方法であればホリマリン処理法に限られず、例えば、バイナリーエチレンイミン(binary ethylenimine)処理法、紫外線照射法、グルタルアルデヒド処理法、加熱処理法などであっても良い。また、本発明においてKHVおよびKHV感染細胞を不活化するのに用いることができるホルマリン濃度は0.1および0.3 vol%であるが、抗原性を損わず、KHVの不活化が十分に行える濃度であれば、0.1および0.3 vol%以外の濃度であっても良い。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンにおいて、抗原とするKHVを濃縮する方法としては、限外ろ過法を用いることができるが、抗原性を損わない方法であれば、限外ろ過法に限られない。KHVの濃縮倍率は、濃縮したときの抗原量が最小有効抗原量以上になるように決定される。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンの有効性は、ワクチン注射したコイに対するウイルス攻撃試験で確認することができる。すなわち、当該ワクチンを腹腔に注射するワクチン接種群のコイとリン酸緩衝食塩水を注射する対照群のコイとを病原性KHV液に浸すという浸漬法で攻撃し、その後、両群におけるコイの生残率を統計学的に比較解析し、ワクチン接種群でのコイの生残率が対照群での生残率に比較して有意に高い時、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞がKHV病の予防に有効であることが確認できる。
下記実施例において示すように、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化感染細胞ワクチンのどちらかを注射したコイおよび注射しなかったコイについて、上記の病原性KHVを用いた浸漬法でウイルス攻撃した結果、ワクチン接種群と未接種の対照群の生残率に統計学的有意差が認められ、ワクチン接種群における生残率が高かったことから、不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンのKHV病予防効果が確認された。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンがKHV感染またはKHV病の発症を防御するためのウイルス量(不活化前ウイルス力価)としては、それぞれcell-freeのKHVの不活化前ウイルス力価として105.8 TCID50/ドース(0.1 ml)およびKHV感染細胞数として約5×105 cells/ドース(0.1 ml)を用いることができるが、KHV感染もしくはKHV病の発症を防御できるウイルス量(KHVのウイルス力価およびKHV感染細胞数)であれば良い。
一般に、培養上清中に放出されたウイルス粒子を抗原とするワクチンについては、その抗原量をウイルス力価で示すが、KHVの場合、ウイルス粒子は感染細胞核内に多く蓄積されるため、感染細胞を抗原とする場合の抗原量はKHV感染細胞数として示すことが好ましい。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンはコイに注射接種するワクチンであるが、感染を予防するための接種方法としては、注射に限らず、餌にしみ込ませる経口法やワクチン液にコイを浸す浸漬法であっても良い。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンには、接種対象とするコイに対して安全であれば、アジュバントを含有させることができる。使用可能なアジュバントとしては、ISA-763AVG(Seppic社製)やISA-708VG(Seppic社製)などのサケやマス用のワクチンに配合されているオイルアジュバントが例として挙げられる。
本発明において、不活化・濃縮KHVワクチンの抗原とするKHVを増殖させる株化細胞としてCCB細胞を用いることができるが、CCB細胞に限るものではなく、例えば、CF-1細胞(コイ鰭由来株化細胞)、KF-1細胞(ニシキゴイ鰭由来株化細胞)など、CCB細胞以外のKHV感受性の株化細胞であっても良い。
本発明の不活化KHV感染細胞ワクチンを抗原とするKHV感染細胞としてはKHVを感染させたCF-1細胞を用いることができるが、KHVを感染させる株化細胞はCF-1細胞に限られるものではなく、例えば、KF-1細胞、CCB細胞など、CF-1細胞以外のKHV感受性株化細胞であっても良い。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンの抗原とするKHVはKHV0301株であるが、KHV0301株に限られるものでなく、KHV病の予防に十分な免疫をコイに賦与できる抗原性を示すKHVであればKHV0301株以外のKHV株を用いることができる。
本発明の不活化KHV感染細胞ワクチンの抗原とするKHV感染細胞は、株化細胞にKHV0301株を感染させた細胞であるが、株化細胞に感染させるKHVはKHV0301株に限られるものでなく、KHV病の予防に十分な免疫をコイに賦与できる抗原性を示すKHVであればKHV0301株以外のKHV株を用いることができる。
本発明の不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンの有効性を判定するウイルス攻撃試験において、当該ワクチンを注射してからウイルス攻撃するまでの期間は、通常、ワクチン接種後免疫を付与できる期間である接種後7〜14日から開始することができ、免疫持続期間内であれば例えば21日後などであってもよい。下記の実施例においては、当該ワクチンの有効性および安全性の両方を同一の試験において確認するために、不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンについて、当該ワクチンを注射してからウイルス攻撃するまでの期間をそれぞれ14日間および21日間とした。また、ワクチン接種魚へのウイルス攻撃後の観察期間についても、本発明で実施した30日間や32日間に限るものではなく、攻撃したKHVによってKHV病の発症が認められる、ウイルス攻撃後7〜14日間であっても良い。
以上のように、コイにKHV病に対する十分な防御免疫を賦与できる不活化・濃縮KHVワクチンおよび不活化KHV感染細胞ワクチンを作出し、その有効性を証明した例はこれまでにはなく、本発明が最初である。また、本発明における不活化KHVワクチンの製造方法は、不活化KHVをリポソーム化するといった特殊な製造工程を必要とせず、KHVを不活化・濃縮するという簡便な製造工程から成り立っていることから、市販に供するKHVワクチンをより安価に製造できる優れた方法であり、これまでに見出されていない、より実践的で新規な製造方法である。
不活化・濃縮KHVワクチンの調製法
<KHVの調製、不活化および濃縮>
KHV0301株(独立行政法人 水産総合研究センター 養殖研究所から分与)をCF-1細胞(コイ鰭由来株化細胞)で1代継代して調製したワーキング用シードウイルスR1(105.0 TCID50/ml)をM.O.I.(multiplicity of infection、感染価)=0.001でCCB細胞に感染後、10%の牛胎児血清(FBS、fetal bovine serum)を含有するMEM (minimum essential medium、日水製薬株式会社製)培地中、20℃で感染細胞を培養した。21日間培養後、すべての細胞でKHV感染によるCPE (cytopathic effects、細胞変性効果)が起こっていることを確認し、遠心分離により培養上清を回収した。次に、培養上清に終濃度0.1vol%のホルマリンを添加し、4℃で10日間、培養上清中のKHVを不活化したのち、培養上清の液量をCentricon-Plus 100kMW限外濾過フィルター(MILLIPORE社製)を用いて約59倍濃縮した。このようにして得られた濃縮ウイルス液を不活化・濃縮KHVワクチン(106.8 TCID50/mL)とした。
<KHVの調製、不活化および濃縮>
KHV0301株(独立行政法人 水産総合研究センター 養殖研究所から分与)をCF-1細胞(コイ鰭由来株化細胞)で1代継代して調製したワーキング用シードウイルスR1(105.0 TCID50/ml)をM.O.I.(multiplicity of infection、感染価)=0.001でCCB細胞に感染後、10%の牛胎児血清(FBS、fetal bovine serum)を含有するMEM (minimum essential medium、日水製薬株式会社製)培地中、20℃で感染細胞を培養した。21日間培養後、すべての細胞でKHV感染によるCPE (cytopathic effects、細胞変性効果)が起こっていることを確認し、遠心分離により培養上清を回収した。次に、培養上清に終濃度0.1vol%のホルマリンを添加し、4℃で10日間、培養上清中のKHVを不活化したのち、培養上清の液量をCentricon-Plus 100kMW限外濾過フィルター(MILLIPORE社製)を用いて約59倍濃縮した。このようにして得られた濃縮ウイルス液を不活化・濃縮KHVワクチン(106.8 TCID50/mL)とした。
不活化・濃縮KHVワクチンの有効性試験方法
平均体重約13.9gのコイを用い、不活化・濃縮KHVワクチンを腹腔注射するワクチン接種群(30尾)とPBS(phosphate buffered saline、リン酸緩衝食塩水)を腹腔接種する対照群(31尾)とを設けた。ワクチン接種群においては1尾あたり1ドース(105.8 TCID50/ドース(0.1 ml))の不活化・濃縮KHVワクチンを、また、対照群においては1尾あたり0.1 mlのPBSをそれぞれ被験魚の腹腔に注射した。なお、不活化・濃縮KHVワクチンを注射した後14日間、水温23℃で被験魚を飼育し、当該ワクチンの安全性を確認した。
不活化・濃縮KHVワクチンおよびPBSを注射後14日に、ワクチン接種群および対照群のコイを感染ウイルス量(10-0.3 TCID50/mL)で浸漬感染攻撃し、その後30日間観察して当該ワクチンの有効性を判定した。
平均体重約13.9gのコイを用い、不活化・濃縮KHVワクチンを腹腔注射するワクチン接種群(30尾)とPBS(phosphate buffered saline、リン酸緩衝食塩水)を腹腔接種する対照群(31尾)とを設けた。ワクチン接種群においては1尾あたり1ドース(105.8 TCID50/ドース(0.1 ml))の不活化・濃縮KHVワクチンを、また、対照群においては1尾あたり0.1 mlのPBSをそれぞれ被験魚の腹腔に注射した。なお、不活化・濃縮KHVワクチンを注射した後14日間、水温23℃で被験魚を飼育し、当該ワクチンの安全性を確認した。
不活化・濃縮KHVワクチンおよびPBSを注射後14日に、ワクチン接種群および対照群のコイを感染ウイルス量(10-0.3 TCID50/mL)で浸漬感染攻撃し、その後30日間観察して当該ワクチンの有効性を判定した。
不活化・濃縮KHVワクチンの有効性試験結果
攻撃試験後30日までに、対照群においては31尾中28尾のコイがKHV病で死亡し、その生残率は9.7%であったが、ワクチン接種群においては30尾中15尾が死亡するにとどまり、その生残率は50%であった。これら対照群とワクチン接種群の生残率においては、Fisherの直接確率計算法で統計学的有意差(p<0.05)が認められ、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンにKHV感染もしくはKHV病の発症に対する防御効果があることが明らかになった。また、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンを注射後14日の間に、ワクチン注射コイに何ら臨床観察上の異常は認められず、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンがコイに対して安全なワクチンであることも立証された。
攻撃試験後30日までに、対照群においては31尾中28尾のコイがKHV病で死亡し、その生残率は9.7%であったが、ワクチン接種群においては30尾中15尾が死亡するにとどまり、その生残率は50%であった。これら対照群とワクチン接種群の生残率においては、Fisherの直接確率計算法で統計学的有意差(p<0.05)が認められ、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンにKHV感染もしくはKHV病の発症に対する防御効果があることが明らかになった。また、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンを注射後14日の間に、ワクチン注射コイに何ら臨床観察上の異常は認められず、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンがコイに対して安全なワクチンであることも立証された。
不活化KHV感染細胞ワクチンの調製法
<KHV感染細胞の調製および不活化>
KHV0301株のワーキング用シードウイルスR1(105.0TCID50/ml)をM.O.I. =0.001でCF-1細胞に感染後、10%のFBSを含有するMEM培地中、20℃で感染細胞を培養した。15日間培養後、すべての細胞でKHV感染によるCPEが起こっていることを確認し、遠心分離によって培養上清を除去した後、KHV感染細胞をセル・スクレイパーで掻き取って回収した。次に、KHV感染細胞をPBS中で再浮遊させ、-80℃で凍結後に融解するという凍結融解操作を3回繰り返して細胞を破砕した。次いで、細胞破砕液に終濃度0.3 vol%のホルマリンを添加し、4℃で14日間感作してKHVを不活化した。このようにして得られた細胞を不活化KHV感染細胞ワクチンとした。なお、不活化KHV感染細胞ワクチン1ドース(0.1 ml)あたりに含有されるKHV感染細胞の数は約5×105個である。
<KHV感染細胞の調製および不活化>
KHV0301株のワーキング用シードウイルスR1(105.0TCID50/ml)をM.O.I. =0.001でCF-1細胞に感染後、10%のFBSを含有するMEM培地中、20℃で感染細胞を培養した。15日間培養後、すべての細胞でKHV感染によるCPEが起こっていることを確認し、遠心分離によって培養上清を除去した後、KHV感染細胞をセル・スクレイパーで掻き取って回収した。次に、KHV感染細胞をPBS中で再浮遊させ、-80℃で凍結後に融解するという凍結融解操作を3回繰り返して細胞を破砕した。次いで、細胞破砕液に終濃度0.3 vol%のホルマリンを添加し、4℃で14日間感作してKHVを不活化した。このようにして得られた細胞を不活化KHV感染細胞ワクチンとした。なお、不活化KHV感染細胞ワクチン1ドース(0.1 ml)あたりに含有されるKHV感染細胞の数は約5×105個である。
不活化KHV感染細胞ワクチンの有効性試験方法
平均体重約8.7gのコイを用い、不活化KHV感染細胞ワクチンを腹腔注射するワクチン接種群(13尾)とPBSを腹腔接種する対照群(15尾)とを設けた。ワクチン接種群においては1尾あたり1ドース(0.1 ml)の不活化KHV感染細胞ワクチンを、また、対照群においては1尾あたり0.1 mlのPBSをそれぞれ被験魚の腹腔に注射した。なお、本不活化KHV感染細胞ワクチンを注射した後21日間、水温23℃で被験魚を飼育し、当該ワクチンの安全性を確認した。
不活化KHV感染細胞ワクチンおよびPBSを注射後21日に、ワクチン接種群および対照群のコイを感染ウイルス量(10-0.3 TCID50/mL)で浸漬感染攻撃し、その後32日間観察して当該ワクチンの有効性を判定した。
平均体重約8.7gのコイを用い、不活化KHV感染細胞ワクチンを腹腔注射するワクチン接種群(13尾)とPBSを腹腔接種する対照群(15尾)とを設けた。ワクチン接種群においては1尾あたり1ドース(0.1 ml)の不活化KHV感染細胞ワクチンを、また、対照群においては1尾あたり0.1 mlのPBSをそれぞれ被験魚の腹腔に注射した。なお、本不活化KHV感染細胞ワクチンを注射した後21日間、水温23℃で被験魚を飼育し、当該ワクチンの安全性を確認した。
不活化KHV感染細胞ワクチンおよびPBSを注射後21日に、ワクチン接種群および対照群のコイを感染ウイルス量(10-0.3 TCID50/mL)で浸漬感染攻撃し、その後32日間観察して当該ワクチンの有効性を判定した。
不活化KHV感染細胞ワクチンの有効性試験結果
攻撃試験後32日までに、対照群おいては15尾中14尾のコイがKHV病で死亡し、その生残率6.7%であったが、ワクチン接種群においては13尾中6尾が死亡するにとどまり、その生残率は53.8%であった。これら対照群とワクチン接種群の生残率においては、Fisherの直接確率計算法で統計学的有意差(p<0.05)が認められ、不活化KHV感染細胞ワクチンにKHV感染またはKHV病の発症に対する防御効果があることが明らかになった。また、本不活化KHV感染細胞ワクチンを注射後21日の間に、ワクチン注射コイに何ら臨床観察上の異常は認められず、本不活化KHV感染細胞ワクチンがコイに対して安全なワクチンであることも立証された。
攻撃試験後32日までに、対照群おいては15尾中14尾のコイがKHV病で死亡し、その生残率6.7%であったが、ワクチン接種群においては13尾中6尾が死亡するにとどまり、その生残率は53.8%であった。これら対照群とワクチン接種群の生残率においては、Fisherの直接確率計算法で統計学的有意差(p<0.05)が認められ、不活化KHV感染細胞ワクチンにKHV感染またはKHV病の発症に対する防御効果があることが明らかになった。また、本不活化KHV感染細胞ワクチンを注射後21日の間に、ワクチン注射コイに何ら臨床観察上の異常は認められず、本不活化KHV感染細胞ワクチンがコイに対して安全なワクチンであることも立証された。
なお、本発明の不活化・濃縮KHVワクチンの抗原とするKHV0301株は、平成18年1月25日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託したが、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターによって、ウイルスであることを受託拒否の事由となる事項として受託拒否され、その旨証明されている(平成18年2月2日通知、通知番号:4135)。したがって、共立製薬株式会社が保管しており分譲することができる。一方、本発明の不活化KHV感染細胞ワクチンの抗原とするKHV感染細胞は、持続感染細胞ではないため、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託することはできないが、共立製薬株式会社において調製することが可能である。
Claims (3)
- 濃縮した不活化コイヘルペスウイルスを抗原として含有するコイヘルペスウイルス病予防注射ワクチン。
- 不活化したコイヘルペスウイルス感染細胞を抗原として含有するコイヘルペスウイルス病予防注射ワクチン。
- 前記抗原がコイヘルペスウイルスを感染させたCF-1細胞またはCCB細胞を不活化した細胞である請求項2のコイヘルペスウイルス病予防注射ワクチン。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2006-02-21 JP JP2006044247A patent/JP2007223913A/ja active Pending
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JPWO2014185439A1 (ja) * | 2013-05-15 | 2017-02-23 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 | コイ科ヘルペスウイルス−2(Cyprinidherpesvirus−2:CyHV−2)感染症用ワクチンおよびその製造方法、ならびにCyHV−2ウイルス製造方法 |
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