JP2007222728A - 吸油材とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多くの油を素早く吸収することができ、また水よりも油を優先的に吸収できる吸油材を提供することを目的とする。
【解決手段】吸油材1は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合して湿潤ゲルを形成し、この湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化するとともに除水および乾燥し、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有するものである。これによって、細い骨格で小さな孔を有する空隙率が70%以上99.5%以下の多孔質体を作製することができるため、多くの油を素早く吸収することができ、また表面を疎水化しているため、油を優先的に吸収することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、廃油や非水溶性の溶剤などを吸収させる吸油材とその製造方法に関するものである。
従来、この種の吸油材としては、紙、植物繊維、オガクズや綿、布、不織布、ガラス繊維あるいはスポンジ、ウレタンフォームなどの多孔質材料が用いられていた。また、嵩密度の小さな炭粒子に、油を分解する微生物を担持させた処理材で油を吸収させているものもある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−61643号公報
しかしながら、前記従来の多孔質材料および特許文献1参照の処理材のいずれも、油の吸収量および吸収力もそれほど多くないという課題があった。これは、通常、吸収量と吸収力とがトレードオフの関係にあり、吸収力を大きくするためには孔の径を小さくし毛管力を上げる必要があるが、孔の径を小さくすると空隙率がそれほど大きくすることができないため、吸収量が多くならないからである。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、多くの油を素早く吸収することができ、また水よりも油を優先的に吸収できる吸油材とその製造方法を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の吸油材は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合して湿潤ゲルを形成し、この湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化するとともに除水および乾燥し、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有するものである。
これによって、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質体を作製することができるため、多くの油を素早く吸収することができ、また表面を疎水化しているため、油を優先的に吸収することができる。
また、本発明の吸油材の製造方法は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前記疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除く乾燥工程とから作製され、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有し、空隙率が70%以上99.5%以下としたものである。
これによって、空隙率が70%以上99.5%以下の空隙率の大きな多孔質体を作製することができる。
本発明の吸油材とその製造方法は、多くの油を強力に素早く吸収することができ、また水よりも油を優先的に吸収することができる吸油材とすることができるとともに、空隙率が70%以上99.5%以下の空隙率の大きな多孔質体を作製することができる。
第1の発明は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合して湿潤ゲルを形成し、この湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化するとともに除水および乾燥し、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有する吸油材とすることにより、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質体を作製することができるため、多くの油を素早く吸収することができ、また表面を疎水化しているため、油を優先的に吸収することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、少なくともシリカを含むことにより、空隙率が90%以上99.5%以下の吸油材とすることができ、例えば、海洋で流出した重油を回収する場合、材質がシリカで空隙率が90%以上であれば重油を完全に吸収しても海に浮くことができるため、吸油後に回収しやすい吸油材を実現することができる。
第3の発明は、特に、第1の発明において、ゲル原料がアルキルアルコキシシランであり、少なくとも溶媒には水とアルコールとゲル化を促進させる触媒とを含むことにより、アルキルアルコキシシランを原料とすると比較的ゲル化を制御しやすく、また原料のコストも安いため、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質体を作製することができ、多くの油を強力に吸収できる吸油材を安いコストで実現することができる。
第4の発明は、特に、第3の発明において、アルキルアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのモノマー、オリゴマー、またはそれらを混合したものであることにより、炭素数の小さいアルキルアルコキシシランとすることで、さらにコストが安くゲル化の制御が容易である。特に、3〜5量体程度のオリゴマーを含有させておくことで、さらにゲル化が容易に起こりやすくなり、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質体を作製することができ、多くの油を強力に吸収できる吸油材を安いコストで実現することができる。
第5の発明は、特に、第1の発明において、湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点以上の温度かつ圧力条件で行うことにより、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥では孔を潰してしまうが、この乾燥方法では孔を潰すことがなく、容易に多孔質構造体を得ることができるため、多くの油を強力に吸収できる吸油材を実現することができる。
第6の発明は、特に、第1の発明において、湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の全部または一部を二酸化炭素に置換後、二酸化炭素の臨界点以上の温度かつ圧力条件で行うことにより、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥では孔を潰してしまうが、この乾燥方法では孔を潰すことがなく、また比較的安いコストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、多くの油を強力に吸収できる吸油材を実現することができる。
第7の発明は、特に、第1、第3、第4のいずれか1つの発明において、湿潤ゲルの疎水化において、アルキルアルコキシシランを用い、かつ湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点未満の温度かつ圧力条件で行うことにより、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥では孔を潰してしまうが、この乾燥方法では孔を潰すことがなく、低コストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、多くの油を強力に吸収できる吸油材を実現することができる。
第8の発明は、特に、第7の発明において、アルキルアルコキシシランは、2官能のアルキルアルコキシシランであることにより、孔を乾燥時に潰すことがなく、比較的安いコストで容易に多孔質構造体を得ることができるため、多くの油を強力に吸収できる吸油材を実現することができる。特に、ジメチルジメトキシシランとすることにより、安価で疎水化速度が速く、確実に疎水化することができる。
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、通油性材質の袋に詰めたことにより、取り扱いが容易で多くの油を強力に吸収できる吸油材を実現することができる。
第10の発明は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前記疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除く乾燥工程とから作製され、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有し、空隙率が70%以上99.5%以下である吸油材の製造方法とすることにより、空隙率が70%以上99.5%以下の空隙率の大きな多孔質体を作製することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における吸油材を示すものである。
図に示すように、本実施の形態における吸油材1は、少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合して湿潤ゲルを形成し、この湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化するとともに除水および乾燥し、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有するものである。
すなわち、吸油材1は、多孔質構造体であり、その固体部分2は、1〜100nm程度の粒子が数珠状につながった骨格3からなり、骨格間距離4の径で多数の孔を形成し、それが空間部分5を形成している。
固体部分2を形成する骨格3同士間の骨格間距離4は、ミクロ孔(2nm以下)またはメソ孔(2〜50nm)を多く含み、また骨格3も非常に細いため、吸油材1の空間部分5を大きくすることができ(空隙率が大きくなり)、大量の油を吸収することができる。なお、吸油材1の空隙率は70%以上99.5%以下としている。
ここで、吸収する油の量に加え、吸収力の大きな吸油材1を作製する場合、孔の径を小さくし毛管力を上げる必要がある。通常、ミクロ孔やメソ孔を有する多孔質な吸油材1を作製する場合、ゾル−ゲル法を用いることになるが、ミクロ孔やメソ孔を多く含むものを作製する場合は骨格も細いものとなり、乾燥時に収縮してしまうため、空隙率の大きな吸油材を作製することができない。しかしながら、本実施の形態では、湿潤ゲルの表面の疎水化、除水、および乾燥において、収縮を抑えた条件とすることにより、径の小さな孔を有し、かつ高い空隙率の吸油材を実現することができた。また、作製工程上、孔は互いが連通しており、また吸油材1の外部と連通しており、さらには表面が疎水化(親油化)されているため、水を弾き、油を優先的にかつ速やかに吸収することが可能である。
湿潤ゲルを疎水化処理などの特別な処理をせずに熱風乾燥を行ったり、常温で徐々に乾燥させたりすると、空隙率が70%を越える多孔質構造体は作製することができず、空隙率の比較的大きなシリカゲルで60%程度である。また、ゲル原料と溶媒の量、必要に応じて添加するゲル化触媒の種類や量によって、骨格や孔の大きさ、空隙率などを調整できるが、空隙率が99.5%を越える多孔質構造体を作製しようとした場合、骨格を形成する固形分が少なすぎるため骨格を形成できず、湿潤ゲルを得ることができない。
また、空隙率が90%の吸油材では、骨格3をシリカ(真密度2.0g/cc)で作製すると嵩密度が0.2g/ccの吸油材ができる。この空隙率90%の吸油材が海水に浮かぶ密度0.9g/ccの重油を吸収すると、1.01g/ccとなり1.03g/ccの密度の海水に浮かぶことができる。したがって、吸油後に回収しやすくなるというメリットがある。またこの場合、吸収油量は吸油材の自重の約4倍が可能であり、さらに空隙率を上げることでより多くの油を吸収することができる。
骨格3の材質は特に限定するものではないが、低コストであること、環境に対して無害であることなどから、少なくともシリカを含み、空隙率は70%以上99.5%以下であることが望ましい。また、骨格3を形成する粒子の形状は球状に限定されるものではない。
吸油材1のバルク体は比較的脆いため、100μm程度までは容易に破砕することができる。しかしながら、吸油材は非常に軽い(自重が小さい)ため、1μm以下に破砕することは難しく、ミキサーなどを用いた通常の破砕法では40μm程度のところにピークを持ち、1〜100μm程度の粒度分布を有している。これを通油性材質の袋に詰めて吸油材として使用すると非常に取り扱いやすいものとなる。なお、吸油材1の形状は直方体に限定されるものではない。
このような吸油材1は、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質構造体であるため、多くの油を強力に素早く吸収することができ、また表面を疎水化しているため油を優先的に吸収できる吸油材を実現することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における吸油材について説明する。
吸油材1の作製工程は主に以下の4つの工程からなる。
(1)ゲル化工程(湿潤ゲルの形成)
(2)疎水化工程(湿潤ゲル表面の疎水化)
(3)水工程(湿潤ゲル中の水の除去)
(4)乾燥工程(湿潤ゲル中の溶媒除去)
以下、各工程について説明する。
(1)ゲル化工程(湿潤ゲルの形成)
本実施の形態では、ゾル−ゲル法により湿潤ゲルを作製する。具体的には、アルキルアルコキシシランをゲル原料とし、水やアルコールなどの溶媒と、必要に応じてゲル化触媒とを混合することで、溶媒中でゲル原料の重合をすすめて湿潤ゲルを形成する。
また、ゲル原料として水ガラスを用い、必要に応じてゲル化触媒とを混合することによっても、湿潤ゲルを作製することもできる。
ここで用いられるゲル原料としては、ゾル−ゲル法で一般的に用いられる、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどのアルコキシドなどがある。この中でも金属としてケイ素を含有する化合物が、入手の容易性、安価なコストなどから好ましい。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのモノマー、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランなどのケイ素アルコキシド、オリゴマー、およびそれらの混合物が用いられる。
アルキルアルコキシシランは炭素数の小さいものとすることで、さらにコストが安くゲル化の制御が容易である。特に、3〜5量体程度のオリゴマーを含有させておくことで、さらにゲル化が容易に起こりやすくなり、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質体を作製することができ、多くの油を強力に吸収できる吸油材を安いコストで実現することができる。
なお、テトラメトキシシランは、シリカ含有分が多く、また安価で容易に入手でき、反応も速いため、最適であり、次にテトラエトキシシランが適する。
ゲル化触媒としては、一般的な有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基が用いられる。有機酸として、酢酸、クエン酸、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸、有機塩基として、ピペリジン、無機塩基として、アンモニア、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどがある。
湿潤ゲルの形成には、アルコキシシランと、溶媒としてのアルコールと、ゲル化触媒としての酸あるいは塩基および水を加えることで、アルコキシシランの加水分解、縮重合を経て、湿潤ゲルを形成する。湿潤ゲルは、珪素原子と酸素原子が交互に結合した3次元網目構造のシリカ粒子を作り、それらシリカ粒子が重合して数珠状となり骨格を形成し、それら骨格同士の隙間すなわち孔に水などの溶媒が入り込む構造となっている。
ゲル化後、形成された湿潤ゲルを必要に応じて、加温雰囲気に置き、ゲル中の未反応のシラノール基を縮合させてゲルを熟成させることが、ゲル強度を増して、乾燥時の収縮を抑制することに有効である。
(2)疎水化工程(湿潤ゲル表面の疎水化)
この工程は、湿潤ゲルの表面のシラノール基を、例えば、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジメトキシシランなどで疎水性かつ親油性のメチル基に代える工程である。これは、乾燥工程前の予備工程という意味合いと、吸油材を親油性にするという二つの目的がある。
乾燥は、湿潤ゲル中の溶媒(水も含む)を乾燥除去させる工程であるが、湿潤ゲルを普通に熱風乾燥させたものは、溶媒が乾燥するときの表面張力により、収縮してしまい孔を潰してしまうので、空隙率が小さくなってしまう。この孔に掛かる力ΔPは一般に(数1)により表される。
ΔPは毛管力、γは溶媒の表面張力、θは溶媒と骨格との接触角、dは孔の径
したがって、毛管力を小さくするためには、接触角θを大きくする、あるいは表面張力γを小さくする必要がある。疎水基を導入することで、接触角θを大きくすることができるので、乾燥時に発生する毛管力を下げることができる。なお、表面張力γを小さくすることについては、次の除水工程で説明する。
また、疎水化はメチル基に限定されるものではなく、エチル基、プロピル基やフッ素系官能基やフェニル基などでもほぼ同様の効果が得られるが、反応性やコストを考慮するとメチル基が望ましい。しかしながら、吸油材により強い親油性を求める場合、炭素数の多いアルキル基やフッ素系官能基を使用することが望ましい。
さらには、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンなどを用いると、塩化水素やアンモニアなどのガスを発生させ、これらが触媒となり湿潤ゲルが異常な反応をしてしまう可能性がある。また、これらの疎水化剤を用いる場合、予め水を取り除いておく必要があり、工程が一つ増えてしまう。そこで、本実施の形態では、アルキルアルコキシシランを用いて疎水化を行った。用いるアルキルアルコキシシランとして、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシランなどの単官能アルキルアルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシランなどの2官能アルキルアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの3官能アルキルアルコキシシラン化合物がある。これらのうち一つもしくは混合物を疎水化処理液となる溶媒に溶解させておき、湿潤ゲルとその溶媒に接触させることで反応させる。疎水化剤とシラノール基との反応は加水分解を伴うため、必ず水が必要となる。そこで、疎水化処理液となる溶媒は水溶性溶媒が望ましく、水溶性溶媒としては、水溶性のアルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノールおよびターシャリ−ブタノール、エチレングリコール、グリセロールなどの低級アルコール類、その他、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどのケトンやエーテルや、これらの混合物も用いることができる。
アルキルアルコキシシランを疎水化剤として用いるためには、加水分解のために水を必要とするが、ゲル化工程で作製した湿潤ゲルは水を含んでいるため、新たに水を添加する必要がなく、また脱水しておく必要もないので、非常に望ましい。また、ゲル化時の触媒にアンモニア水を用い、溶媒に水とメタノールを用いることにより、湿潤ゲルに直接アルキルアルコキシシランを添加し、疎水化することができる。
さらに、アルキルアルコキシシランの中でも、2官能のアルキルアルコキシシランが疎水化効率に優れることも見出した。これは、単官能では3つのアルキル基の立体障害により反応性が低下し、3官能では加水分解の結果生じる3つのシラノール基が全て、ゲル表面のシラノール基と反応することが難しく、シラノール基がゲル表面に残存するためではないかと考えられる。したがって、疎水化効率に優れる2官能アルキルアルコキシシラン、特に、ジメチルジメトキシシランは反応性が高く、非常に望ましい。
このように、疎水化工程において、R(R’O)4−xSiで表されるアルキルアルコキシシランを用いている(ただし、RとR’はアルキル基)。
また、上記において、RとR’はいずれもメチル基で、かつx=2であるアルキルアルコキシシランは、ジメチルジメトキシシランと称され、反応性が高いものである。
(3)除水工程(湿潤ゲル中の水の除去)
この工程では、湿潤ゲル内にある水および未反応の疎水化剤を除去し、その分を表面張力の小さな溶媒に置換する工程である。この工程も乾燥工程の予備工程の意味合いがある。(数1)によると表面張力γを小さくすることも毛管力の低減には効果がある。水の表面張力は、0.072N/m(25℃)であり、他の液体、例えば、汎用的な有機溶媒であるトルエン0.027N/m(30℃)、エタノール0.021N/m(25℃)などに比較して格段に大きい。したがって、乾燥前に湿潤ゲル中の水の割合を低減させ、代わりに表面張力が小さい溶媒に置換することが非常に重要である。
除水方法としては、溶媒置換または加熱留去のいずれかの方法が望ましい。まず、溶媒置換について説明する。一般的な溶媒置換は、形成された湿潤ゲルを、水溶性溶媒の中に浸漬させて、前記溶媒をゲル内の溶媒と入れ替えることで行う。この時に用いる溶媒としては、水溶性の溶媒であれば特に制限されない。例えば、水溶性のアルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノールおよびターシャリ−ブタノール、エチレングリコール、グリセロールなどの低級アルコール、その他に、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどのケトン類やエーテル類、ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド類、さらに蟻酸、酢酸およびプロピオン酸などの低級カルボン酸や、これらの混合物を用いることができる。この中でも、低価格で、入手が容易なメタノールやエタノールなどのアルコール類の使用が望ましい。
また、溶媒置換は、上記水溶性溶媒だけではなく、上記水溶性溶媒と他の非水溶性溶媒との混合溶媒によっても可能である。具体的には、n−ヘキサン、デカン、ノナン、オクタン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレンなどと水溶性溶媒の混合溶媒である。安全面や入手の容易性など、工業用として特に好ましいものは、オクタン、トルエン、キシレンなどである。
次に、加熱留去に関して説明する。加熱留去により水を除く場合、一般的に水の沸点付近より高い沸点を有する非水溶性の溶媒を加えて加熱することで、水を優先的に留去することが可能である。非水溶性の溶媒を用いることで、加熱留去後に有機溶媒と水が自然に分離するため、溶媒の再利用が容易になる効果がある。また、非水溶性溶媒の沸点は、水の沸点より低くても、過剰に加えれば、水を除去することが可能であるが、さらに溶媒の沸点を高くすることで、水留去の選択性を高めることができる。このため、溶媒置換により水を除去する場合に比較して、使用する溶媒量も大幅に低減できる効果が得られる。
また、水と加えた溶媒が、共沸混合物を形成する場合は、水と溶媒が一定の割合で留去されていくため、水の除去の制御が容易になる効果がある。さらに、通常の有機溶媒の乾燥で行われるように、減圧条件下で加熱留去を行うことで、効率的な水除去が可能になる。特に、ゲル化触媒などが存在する場合、水を含む状態で温度を上げて加熱乾燥すると、ゲル骨格中の結合の切断などが生じる可能性がある。このような場合は、減圧で水を加熱留去することで、温度上昇を防ぐことが効果的である。
(4)乾燥工程(湿潤ゲル中の溶媒除去)
次に、乾燥方法に関して説明する。乾燥は、除水工程において水除去時に代わりに湿潤ゲル内に入り込む溶媒を除去する工程である。
疎水化工程と除水工程により、毛管力は著しく低下しているため、この状態で熱風乾燥を行ってもある程度の収縮は抑えられ、空隙率の大きな吸油材を得ることができる。このとき、乾燥時の圧力は大気圧以上の加圧下で行うことが、より空隙率の大きな吸油材を得られやすい。加圧下で乾燥を行えば、孔の中に保持される溶媒の沸点が上昇する。このとき、昇温により表面張力γが下がるため、毛管力が低減されて収縮が効果的に抑制され、望ましい。例えば、アセトンを加圧下で乾燥させる場合、沸点を45℃程度上昇させて100℃程度まで上げれば、表面張力が0.005N/m程度下がり、0.015N/m程度まで減少することから、加圧下での乾燥は十分収縮抑制に効果的であるといえる。
しかしながら、より大きな空隙率の吸油材を得るためには、溶媒の超臨界乾燥を用いることが望ましい。表面張力γを0に限りなく近づけることができるため、孔をほとんど潰すことがなく空隙率の大きな吸油材を実現できる。但し、高温高圧に耐えうる装置が必要なため、コストは非常に高いものとなる。具体的には、湿潤ゲルを耐圧容器に入れ、圧力を臨界点圧力以上に上げ、その後、温度を臨界点温度以上に上げて、溶媒を超臨界状態とする。その後、例えば、二酸化炭素のような超臨界状態で湿潤ゲル内部の溶媒と相溶性のある物質を流通させることにより、溶媒を抽出し二酸化炭素に置換し、圧力を大気圧まで下げた後、温度を下げる。これにより、高い空隙率の吸油材を得ることができる。また、湿潤ゲル中の溶媒の全部または一部を二酸化炭素に置換後、圧力を二酸化炭素の臨界点圧力以上に上げ、その後、温度を臨界点温度以上に上げて、二酸化炭素を超臨界状態で流通を行う。その後、流通を止め、圧力を大気圧まで下げた後、温度を下げる。これにより、溶媒の超臨界乾燥よりも低コストで高い空隙率の吸油材を得ることができる。
また、油を吸収した吸油材を上述した乾燥法により乾燥させることでリサイクルすることもできるが、吸収した油の物性(表面張力や蒸気圧など)によっては乾燥がうまくいかず吸油材が収縮してしまう場合もある。
なお、湿潤ゲルの疎水化において、R(R’O)4−xSiで表されるアルキルアルコキシシランを用い(ただし、RとR’はアルキル基、またはメチル基でx=2)、かつ湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点未満の温度かつ圧力条件で行うことにより、骨格が細い湿潤ゲルを乾燥させる場合、通常の乾燥では孔を潰してしまうが、疎水化工程を行った後に乾燥させる方法では、孔を潰すことがなく、低コストで容易に多孔質構造体を得ることができる。
このように、ゲル化工程と、疎水化工程と、除水工程と、乾燥工程とから作製され、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有し、空隙率が70%以上99.5%以下である吸油材の製造方法とすることにより、空隙率が70%以上99.5%以下の空隙率の大きな多孔質体を作製することができる。作製された吸油材は、細い骨格で小さな孔を有する空隙率の大きな多孔質構造体であるため、多くの油を強力に吸収することができ、また表面を疎水化しているため油を優先的に吸収できる吸油材を実現することができる。
以上のように、本発明にかかる吸油材は、多くの油を強力に素早く吸収することができ、また水よりも油を優先的に吸収することができる吸油材とすることができるので、工場や飲食店、家庭などからでる廃油や、水域へ流出した油、工場や実験室などで扱う非水溶性の溶剤などを吸収させる吸油材としてはもちろんのこと、吸油材を不織布や織布などに担持して汗をすばやく大量に吸収できるタオルや、紙などに担持して顔の油取り紙などにも利用できる。さらには、吸油材に油や溶剤を吸収させて貯蔵、運搬などに利用することもできる。
(a)本発明の実施の形態1における吸油材の断面模式図(b)同吸油材の固体部分の一部分を拡大した模式図
符号の説明
1 吸油材
2 固体部分
3 骨格
4 骨格間距離
5 空間部分

Claims (10)

  1. 少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合して湿潤ゲルを形成し、この湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化するとともに除水および乾燥し、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有する吸油材。
  2. 少なくともシリカを含む請求項1に記載の吸油材。
  3. ゲル原料がアルキルアルコキシシランであり、少なくとも溶媒には水とアルコールとゲル化を促進させる触媒とを含む請求項1に記載の吸油材。
  4. アルキルアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのモノマー、オリゴマー、またはそれらを混合したものである請求項3に記載の吸油材。
  5. 湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点以上の温度かつ圧力条件で行う請求項1に記載の吸油材。
  6. 湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の全部または一部を二酸化炭素に置換後、二酸化炭素の臨界点以上の温度かつ圧力条件で行う請求項1に記載の吸油材。
  7. 湿潤ゲルの疎水化において、アルキルアルコキシシランを用い、かつ湿潤ゲルの乾燥は、湿潤ゲル内に含まれる溶媒の臨界点未満の温度かつ圧力条件で行う請求項1、3、4のいずれか1項に記載の吸油材。
  8. アルキルアルコキシシランは、2官能のアルキルアルコキシシランである請求項7に記載の吸油材。
  9. 通油性材質の袋に詰めた請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸油材。
  10. 少なくとも水を含む溶媒とゲル原料とを混合することで湿潤ゲルを形成するゲル化工程と、前記湿潤ゲルの表面の少なくとも一部を疎水化する疎水化工程と、前記疎水化工程で表面を疎水化された湿潤ゲル内の水を除く除水工程と、前記除水工程で除水された湿潤ゲル内に残存した溶媒を除く乾燥工程とから作製され、少なくとも連続するミクロ孔またはメソ孔を有し、空隙率が70%以上99.5%以下である吸油材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011021856A3 (ko) * 2009-08-18 2011-08-25 Kim Young-Il 기름제거제 및 이의 제조 방법과 제조장치
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CN111466810A (zh) * 2013-10-18 2020-07-31 赛尔格有限责任公司 多孔膜擦拭件及其制造与使用方法

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