JP2007221702A - 色変換装置、色変換方法および色変換プログラム - Google Patents

色変換装置、色変換方法および色変換プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 注目領域の見えを正確に再現する。
【解決手段】 第一色変換工程においてはディスプレイ60に表示された画像の色を、その観察環境下においてどのように知覚されるかを推定することができる。そして、第二色変換工程においては印刷結果の観察環境において、第一色変換工程にて推定された知覚色と同様に知覚される色が印刷できるCMYK値を特定することができる。観察環境下においてどのように知覚されるかを推定するにあたっては各環境における環境パラメータXwww,LA,c,Nc,Fと背景輝度Ybを変換プロファイルに代入する。背景輝度Ybを加味して色順応が予測されるため、背景における注目物の色を正確に再現することができる。
【選択図】 図12

Description

本発明は、色変換装置、色変換方法および色変換プログラムに関する。
モニターを見ながらレタッチした写真画像データや、モニターを見ながら作成したCG画像データを、印刷用紙に印刷することが一般的に行われている。この場合、モニターに映し出された画像データを見たときに感じる色と、印刷用紙に印刷された画像データを見たときに感じる色とが一致していることが望ましい。人が感じる色は周囲の照明等によって変動するため、この変動を抑えるために周囲光に基づき色補正を行う画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1、参照。)。
かかる構成において、測光装置によって周囲光情報を取得し、その周囲光情報に基づいて色の補正を行うことができるため、周囲光による色の見えの変動を抑制することが可能であった。
特開平9−214787号公報
ところで、出力される画像においては注目されるべき注目領域と、注目されない背景領域とが存在する場合がある。例えば、ポートレートなどの写真画像においては注目領域と背景領域をはっきりと区別することができる。このような画像の場合、注目領域については、特に色の見えを正確に再現する必要がある。しかしながら、注目領域の見えには同注目領域の周辺の背景領域の色による色順応が影響するため、注目領域の見えを正確に再現することは困難であった。さらに、画像によって、注目領域がある場合もない場合もあり、さらに注目領域がある場合でもどこにどの大きさで存在しているかを特定することが困難であった。そのため、背景領域を特定することができず、同背景領域の色に応じた色順応を予測することができないという問題があった。
本発明は、注目領域の見えを正確に再現することができる色変換装置、色変換方法および色変換プログラムの提供を目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記課題を解決するため請求項1にかかる発明では、色変換装置において元画像データが色変換画像データに変換される。上記元画像データは各画素の色が第一出力デバイスに入力可能な第一表色系で表現された画像データであり、上記色変換画像データは各画素の色が第二出力デバイスに入力可能な第二表色系で表現された画像データである。このような色変換を行うことにより、第一出力デバイスに入力されている元画像データと同等の色変換画像データを得ることができ、同色変換画像データを上記第二出力デバイスに入力し、出力させることができる。
環境パラメータ取得手段は、上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの環境パラメータを取得する。背景領域特定手段は、上記元画像データにおける背景領域を特定する。すなわち、画像においてどの領域が背景となるかを特定する。背景輝度算出手段は、上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記背景領域についての平均輝度を背景輝度として算出する。以上により、上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときのそれぞれについて上記環境パラメータと上記背景輝度を取得することができる。第一色変換手段は、所定の変換プロファイルを利用して、上記元画像データを各画素の色が第三表色系で表現された画像データに変換する。この変換プロファイルは、上記環境パラメータと上記背景輝度を代入し、これらを変換結果に反映させることができるため、同環境パラメータと同背景輝度を考慮した画像データを得ることができる。すなわち、上記環境パラメータによって表される観察環境のもとで、上記第一出力デバイスにて出力したときにおける上記元画像データの見えを上記第三表色系にて予測することができる。さらに、上記背景輝度のもとで、同背景領域とともに視覚される注目物の見えを上記第三表色系にて予測することができる。
第二色変換手段は、所定の変換プロファイルを利用して、上記第一色変換手段にて得られた画像データを上記色変換画像データに変換する。すなわち、各画素の色が上記第三表色系で表現された画像データを、各画素の色が上記第二表色系で表現された上記色変換画像データに変換する。上記変換プロファイルは、上記環境パラメータと上記背景輝度を変数として有するため、これらを変換結果に反映させることができる。従って、上記環境パラメータと上記背景輝度を考慮した色変換画像データを得ることができる。すなわち、上記環境パラメータによって表される観察環境のもとで上記色変換画像データを上記第二出力デバイスにて出力したときの見えが、上記第三表色系において上記第一色変換手段にて得られた画像データと一致するような色変換を行うことができる。さらに、上記背景輝度のもとで、同背景領域とともに視覚される注目物の見えが、上記第三表色系において上記第一色変換手段にて得られた画像データと一致するような色変換を行うことができる。このようにすることにより、それぞれの観察環境が異なっていても上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスによる出力結果における注目物の見えを同じとすることができる。
さらに、請求項2にかかる発明では、上記元画像データを画像解析することにより上記元画像データにおける注目領域を特定するとともに、当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定する。すなわち、上記元画像データにおいて注目領域は何らかの特徴を有しているため、同元画像データの特徴を解析することにより、同注目領域を特定することができる。
また、請求項3にかかる発明のように、上記元画像データに添付された同画像データの付帯情報に基づいて、上記元画像データにおける注目領域を特定するようにしてもよい。例えば、上記元画像データがEXIF規格に準拠していれば、そのタグ情報に基づいて注目領域を特定することができる。EXIF規格のタグ情報にはデジタルカメラにおける撮影モード等が格納されるため、これらの情報に基づいて被写体がどのようなものであったかを推測することができる。例えば、ポートレートモードで撮影された場合には画像の中央付近に注目領域が存在していることが推測できるし、風景モードで撮影された場合には注目領域が存在していないことが推測できる。
さらに、請求項4にかかる発明のように、ユーザーの領域指定によって上記元画像データにおける注目領域を特定するようにしてもよい。この場合も、特定した注目領域以外の領域を上記背景領域として特定することができる。例えば、ディスプレイにて上記元画像データを表示させ、ポインティングデバイスにて注目領域を選択させるようにしてもよい。
また、請求項5にかかる発明では、上記注目領域が、顔画像が占める領域とされる。顔の色は忠実に再現されることが望ましく、顔を上記注目領域とすることにより顔の見えを一致させることができる。また、請求項2の発明において顔認識技術を適用することができ、正確な領域特定を実現することができる。
さらに、請求項6にかかる発明では、上記元画像データにおいて上記注目領域がある場合には当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定するが、同注目領域がない場合には当該元画像データ全体を上記背景領域として特定する。例えば、風景画像の場合、特定の部分を背景とすることができないため、全体を背景として取り扱う。
また、請求項7にかかる発明では、上記環境パラメータ取得手段がテストパターンを印刷媒体に出力する。そして、同テストパターンの視覚結果に基づいて、上記環境パラメータが取得される。これにより、観察環境を測定するための測定装置を用意しなくても済む。
むろん、以上の発明は、装置のみならず、請求項8のような色変換方法によって実現することも可能であるし、請求項9のように上記方法に従った処理を実行する色変換プログラムによって実現することも可能である。また、本発明にかかる装置、方法、プログラムは単独で実施される場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で他の装置、方法、プログラムとともに実施されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものであり、適宜、変更可能である。
さらに、本発明のプログラムを記録した記録媒体として提供することも可能である。このプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。また、必ずしも全部の機能を単独のプログラムで実現するのではなく、複数のプログラムにて実現させるようなものであってもよい。この場合、各機能を複数のコンピュータに実現させるものであればよい。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施形態について説明する。
(1)コンピュータの構成:
(2)環境パラメータ取得処理の流れ:
(3)背景輝度取得処理の流れ:
(4)ガマットマッピングについて:
(5)色変換処理の流れ:
(6)変換プロファイル(CIECAM02)について:
(7)まとめと変形例:
(1)コンピュータの構成:
図1は、本発明の色変換装置としてのコンピュータの概略構成を示している。同図において、コンピュータ10には、内部バス10aによって接続されたCPU11とRAM12とHDD13とUSBインターフェイス(I/F)14と入力機器インターフェイス(I/F)15とビデオインターフェイス(I/F)16とが備えられており、HDD13には各種プログラムデータ13aと複数の画像データ13bとテストパターンデータ13cと色変換LUT13dとガマットデータ13eと環境パラメータ13fとガマット補正テーブル13gと分光分布データ13hと背景輝度データ13iが記憶されている。CPU11は、このプログラムデータ13aを読み出して、同プログラムデータ13aに基づいた処理をRAM12をワークエリアとして利用しながら実行する。USBI/F14にはプリンタ20が接続されており、入力機器インターフェイス15にはマウス40およびキーボード50が接続されている。さらに、ビデオI/F16にはディスプレイ60が接続されている。
図2は、コンピュータ10にて実行されるプログラムのソフトウェア構成を示している。同図において、プリンタドライバPが図示しないオペレーティングシステム(O/S)上にて実行されている。プリンタドライバPは、画像データ取得部P1と環境パラメータ取得部P2と背景輝度取得部P3と第一色変換部P4とガマット補正部P5と第二色変換部P6とハーフトーン処理部P7と印刷データ生成部P8とから構成されている。画像データ取得部P1は、印刷すべき画像データ13bの指定を受け付けるとともに、指定された画像データ13bをHDD13から取得する。画像データ13bは、他のアプリケーションで作成しされたり、デジタルスチルカメラ等の画像入力機器から入力されたりして予め用意されている。
画像データ13bは、ドットマトリクス状に配列する複数の画素で構成されており、各画素の色がsRGB表色系のデジタル階調によって表現されている。sRGB表色系の画像データ13bは、ビデオI/F16が入力可能な形式であり、同画像データ13bを入力した画像データ13bをディスプレイ60にて出力することが可能となっている。例えば、画質調整アプリケーション等によって画像データ13bの色調を調整する場合には、ユーザーはディスプレイ60にて出力した画像データ13bを見ながら色調を補正することとなる。色調を補正した画像データ13bはHDD13にて更新され、その後、プリンタ20にて印刷するように指示されることとなる。
環境パラメータ取得部P2は、HDD13に記憶されたテストパターンデータ13cを取得し、プリンタ20において印刷用紙にテストパターンを印刷する。テストパターンデータ13cは、プリンタ20が印刷に使用するインク色の表色系で各画素の色が表現された画像データであり、同テストパターンデータ13cをそのままハーフトーン処理等することによりプリンタ20にてテストパターンを印刷することができる。なお、本実施形態においてプリンタ20はインクジェット方式を採用しており、インク色としてC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)を使用している。従って、テストパターンデータ13cでは各画素の色がCMYKの各階調によって表現されている。なお、本実施形態においてディスプレイ60が本発明の第一出力デバイスに相当し、sRGB表色系が本発明の第一表色系に相当する。一方、プリンタ20が本発明の第二出力デバイスに相当し、CMYK表色系が本発明の第二表色系に相当する。
環境パラメータ取得部P2はテストパターンを印刷すると、マウス40やキーボード50の入力を受け付ける。環境パラメータ取得部P2はユーザーによるテストパターンの視覚結果として照度と照明光の分光分布を取得する。環境パラメータ取得部P2は、取得した照度および照明光の分光分布を指標として、ディスプレイ60での画像出力結果を観察する際の環境パラメータと、プリンタ20によって印刷用紙上に出力した画像出力結果を観察する際の環境パラメータを算出する。算出した環境パラメータは、HDDに環境パラメータ13fとして記憶される。背景輝度取得部P3は、属性判定部P3aと背景領域特定部P3bと輝度算出部P3cとから構成されている。
属性判定部P3aは、画像データ13bを取得するとともに、同画像データ13bに対する空間周波数解析を行う。本実施形態においては属性判定部P3aが画像データ13b1をフーリエ変換することにより、画像データ13bの輝度に関する空間周波数のスペクトルを得ることができる。これにより、画像データ13bにおいて輝度が変動する周期が高周波となっているか低周波となっているかを特定することができる。一般的に、風景写真の画像データ13bにおいては空間的に短い周期のノイズが多く含まれるため、高周波成分が多く含まれている画像データ13bが風景画であると判定することができる。反対に、ポートレートやCGのように注目物が含まれる画像においては、ある程度大きく、はっきりとした注目物が含まれるため、低周波成分が多く含まれている画像データ13bが注目物を含む画像であると判定することができる。
背景領域特定部P3bは、画像データ13bが風景画像である場合には、全領域が背景領域であると特定する。一方、画像データ13bが注目物を含む画像である場合には、注目物以外の領域が背景領域であると特定する。注目物以外の背景領域を特定するにあたっては、まず注目領域を特定する。具体的には、ユーザーから注目領域の指定を受け付けることにより、注目領域を特定する。そして、注目領域であると指定された部分以外の領域を背景領域であると特定する。輝度算出部P3cは、背景領域に属する画素のRGB値の平均値Rbbbを算出し、同Rbbb値に基づいて背景輝度Ybを算出する。
第一色変換部P4は、環境パラメータ取得部P2が取得・記憶したディスプレイ60に関する環境パラメータと、背景輝度取得部P3が取得した背景輝度Ybと、画像データ取得部P1が取得した画像データ13bをHDD13から入力し、同画像データ13bを各画素がXYZ表色系で表現された画像データに変換し、さらに画像データ13bを各画素が非機器依存色空間のJCh表色系で表現された画像データに変換する。
後者の変換においては、CIECAM02という変換手法を用いる。CIECAM02の詳細については後述するが、CIECAM02では環境パラメータと背景輝度Ybを変数として使用することができ、環境パラメータおよび背景輝度Ybに応じた変換結果を得ることができる。具体的には、与えられた画像データの色が、入力された環境パラメータのもとで、どのように知覚されるかをJCh表色系にて特定するための変換を行うことができる。これにより、画像データ13bにおける注目物がディスプレイ60にて実際にどのように見えているかを特定することができる。
ガマット補正部P5は、第一色変換部P4が変換したJCh表色系の画像データをディスプレイ60のガマットとプリンタ20のガマットとの比較結果に基づいて作成されたガマット補正テーブル13gを参照して補正する。ディスプレイ60が出力可能なディスプレイガマットは予め調査されており、同ディスプレイガマットをXYZ表色系にて特定するためのデータがガマットデータ13eに格納されている。同様に、プリンタ20が出力可能なプリンタガマットも予め調査されており、同プリンタガマットをXYZ表色系にて特定するためのデータもガマットデータ13eに格納されている。
そして、ディスプレイガマットとプリンタガマットをそれぞれの環境パラメータを使用して第一色変換部P4がCIECAM02によって変換することにより、ディスプレイガマットとプリンタガマットがそれぞれの環境下でどのような範囲となるかを特定する。すなわち、観察環境によってディスプレイ60とプリンタ20のガマットも変動するため、それぞれの環境パラメータに応じたガマットを取得する。双方のガマットを取得すると、両ガマットの比較を行い、その比較結果に基づいた補正を行う。具体的には、プリンタ20のみが再現できる色域があればその色域も使用されるように色伸長する補正や、プリンタ20のみが再現できない色域があれば色域が使用されないように色圧縮する補正を行う。
第二色変換部P6は、環境パラメータ取得部P2が取得したプリンタ20に関する環境パラメータと背景輝度Ybを使用したCIECAM02によって、ガマット補正部P5が補正を行った画像データを各画素の色がXYZ表色系で表現される画像データに色変換する。ここでは、JCh表色系の画像データをXYZ表色系に色変換しているため、第一色変換部P4の逆変換を行っていることになる。なお、CIECAM02は可逆性を有する変換プロファイルであるため、逆変換を行うことが可能である。さらに、第二色変換部P6は、予め作成されている色変換LUT13dを参照することによりXYZ表色系に色変換された画像データを各画素の色がCMYK表色系で表現される画像データに色変換する。色変換LUT13dは、CMYKとXYZとの等色対応関係が予め行われた測色結果に基づいて定義されたテーブルである。
ハーフトーン処理部P7は、第二色変換部P6にて色変換されたCMYK表色系の画像データを入力し、ディザ法や誤差拡散法等によって同画像データをハーフトーンデータに変換する。これにより、各画素において、CMYKインクを吐出させるか吐出させないかを特定できる画像データを得ることができる。印刷データ生成部P8は、ハーフトーンデータを入力し、ラスター化等の処理を行い、プリンタ20に出力可能な印刷データを生成する。印刷データ生成部P8が生成した画像データは、プリンタ20に出力され、同プリンタ20にて印刷媒体としての印刷用紙に印刷される。
(2)環境パラメータ取得処理の流れ:
図3は、環境パラメータ取得部P2が環境パラメータを取得する処理の流れを示している。ステップS100にて環境パラメータを設定する旨の指示をマウス40やキーボード50を介して受け付ける。ステップS110においては、環境パラメータ取得部P2がテストパターンデータ13cをHDD13から取得し、同テストパターンデータ13cをプリンタ20にて印刷用紙上に出力する。テストパターンデータ13cはプリンタ20が採用するCMYK表色系によって各画素の色が表現されているため、そのままハーフトーン処理部P7と印刷データ生成部P8にて変換を行い、プリンタ20に出力することができる。
図4は、テストパターンの一例を示している。同図において、テストパターンは印刷媒体としての印刷用紙上に形成されており、照明光の波長分布を評価するための色度エリアS1と、照度を評価するための照度エリアS2とから構成されている。色度エリアS1と照度エリアS2はそれぞれ略矩形状に形成されており、印刷用紙上にて互いに独立して形成されている。プリンタ20はCMYKインクを吐出可能なインクジェットプリンタであり、テストパターンは印刷用紙上にインクを被覆させることにより形成されている。
図5は、色度エリアS1を拡大して示している。同図において、色度エリアS1は、それぞれ矩形状に形成された基準カラーパッチE1〜E4とカラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4の組から構成されている。基準カラーパッチE1〜E4とカラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4では、それぞれ略無彩色が再現されており、1〜4行目になるほど明度(L*=80,60,40,20相当)が低くなるようなグラデーションパターンとなっている。基準カラーパッチE1〜E4は、印刷用紙上にKインクのみを吐出させることにより形成されている。基準カラーパッチE1〜E4においては、Kインクによる被覆率を徐々に高くしていくことにより、次第に明度が低くなるグラデーションパターンが再現されている。
カラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4は、Kインクによるドットの他に有彩色のCMYインクによるドットも使用して形成された、いわゆる有彩色インクによるコンポジットグレーとされている。ただし、カラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4は、無彩色に近い色ではあるが、無彩色となるCMYインクのドット構成比率から意図的にずらしたCMYインクのドット構成比率で形成されており、厳密な無彩色ではない。ただし、カラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4は観察する照明光によっては、無彩色に知覚されるように各色インクドットの構成比率が設定されている。
例えば、各明度に対応するカラーパッチG1〜G4の組は太陽光(CIE−D50光)の下で無彩色に知覚されるように各色インクドットの構成比率が設定されており、各明度に対応するカラーパッチH1〜H4の組は白熱灯(CIE−A光)の下で無彩色に知覚されるように各色インクドットの構成比率が設定されている。また、各明度に対応するカラーパッチI1〜I4の組はCIE−D60光の下で無彩色に知覚されるように各色インクドットの構成比率が設定されており、各明度に対応するカラーパッチJ1〜J4の組はF2光の下で無彩色に知覚されるように各色インクドットの構成比率が設定されている。
実際に印刷物を観察する照明光の下で、色度エリアS1を観察したユーザーは、各明度において最も基準カラーパッチE1〜E4と似た色に知覚されるカラーパッチG1〜G4,H1〜H4,I1〜I4,J1〜J4をマウス40やキーボード50によって選択し、この選択を環境パラメータ取得部P2がステップS120にて受け付ける。これにより、テストパターンがどのような照明光の下で観察されているかを判断することができる。環境パラメータ取得部P2は各照明光の分光分布を、HDD13に記憶された分光分布データ13hから取得する。
図6は、照明光(D50光,A光)の分光分布と等色関数をグラフに示している。同図に示すように、各波長λのエネルギー分布(分光分布)が照明光(D50光,A光)によって大きく異なっていることが分かる。D50光には各波長のエネルギーが均等に含まれ、A光には長波長のエネルギーが多く含まれている。このような分光分布は、照明光ごとに分光分布データ13hに格納されている。分光分布データ13hにおいては各照明光の分光分布の値がテーブルに記述されていてもよいし、対応関係が関数等によって定義されていてもよい。各照明光の分光分布はCIE規格等に定められているため、入手することができる。一方、等色関数x(λ),y(λ),z(λ)は、波長毎に赤・緑・青の3刺激をどれくらい感じるかを示す関数であり、実験・経験的に得られている。また、照明光を観察物に反射させた場合に知覚される色の3刺激値XYZは下記式(1)によって表すことができる。
なお、上記式(1)においてR(λ)は観察物の分光反射率であり、P(λ)は照明光の分光分布を示している。ステップS120にて照明光が特定できると、ステップS130ではその分光分布P(λ)を取得し、上記式(3)に代入することにより、その照明光における白色点の色を3刺激値のXYZ値として算出する。なお、本実施形態においては白色点の色は完全白色板における色を想定しており、同完全白色板は全波長領域において分光反射率R(λ)=1となる。全可視光領域において分光分布P(λ)と分光反射率R(λ)とが与えられるため、上記式(1)にて白色点の色を算出することができる。
白色点の色は本発明における照明光の分光分布を指標とした環境パラメータに相当し、それぞれ3刺激値をXW,YW,ZWと表記するものとする。なお、ディスプレイ60上の白色点の色をXW1W1W1と表すものとし、印刷用紙上の白色点の色をXW2W2W2と表すものとする。また、照明光と印刷用紙上の白色点の色XW2W2W2との間には一義的な対応関係があるため、この対応関係を規定したテーブルを記憶しておき、環境パラメータ取得部P2が同テーブルを参照して照明光に対応する白色点の色XW2W2W2を取得するようにしてもよい。さらに、完全白色板の分光反射率R(λ)を全波長領域において1としたが、印刷媒体に応じて白色点の分光反射率R(λ)を設定してもよい。ところで、上記式(1)では、分光分布P(λ)と分光反射率R(λ)とを相乗しており、XYZ値が観察物の分光反射率R(λ)に依存することが分かる。
図7は、Kインクドットのみを使用した所定明度のグレーと、CMYインクドットも併用した所定明度のコンポジットグレーの分光反射率R(λ)を示している。Kインクドットによるグレーにおいては分光反射率R(λ)が各波長領域においてほぼ均一である。一方、コンポジットグレーは、個々の分光反射率が不均一であるCMYインクの合成であるため、全体としての分光反射率R(λ)が不均一となっている。このように、分光反射率R(λ)が不均一なコンポジットグレーにおいては、上記式(1)によるXYZ値は照明光の差によって大きく変動することとなる。一方、各波長領域において分光反射率R(λ)がほぼ均一なKインクドットのグレーにおいては照明光の差によるXYZ値の変動は小さい。このことは、Kインクドットのグレーは照明光の変動に応じた知覚色の変動が少なく、常に色味を帯びることがなく無彩色に感じられることを意味する。
上述したとおり基準カラーパッチE1〜E4はKインクドットのみを使用して再現されており、基準カラーパッチE1〜E4の分光反射率R(λ)が各波長領域においてほぼ均一であるということができる。従って、コンポジットグレーのカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4は照明光に応じて色味を帯びるのに対して、基準カラーパッチE1〜E4は常に無彩色に感じられることとなる。従って、基準カラーパッチE1〜E4と最も近い色に知覚されるカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4の組を選択することにより、その照明光において最も無彩色に近い色に知覚されるカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4の組を容易に選択することができる。
以上のように無彩色からの変動が少ない基準カラーパッチE1〜E4をカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4と各明度において並列させておくことにより、ユーザーは正確に無彩色に近いカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4の組を選択することができる。また、基準カラーパッチE1〜E4とカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4を明度のグラデーションとすることにより、いずれの明度においてもバランスよく無彩色に見えるカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4の組を選択することができる。これにより、環境パラメータ取得部P2は正確に現在の照明光の分光分布P(λ)を取得することができ、正確に印刷用紙上の白色点の色XW2W2W2を算出することができる。
ただし、無彩色は人間が最もよく記憶している記憶色であり、人間は無彩色に付近における色差には敏感である。従って、ユーザーは自己の記憶に基づく絶対的な基準によって無彩色に近いカラーパッチF1〜F4,G1〜G4,H1〜H4,I1〜I4を選択することも可能である。そのため、必ずしも基準カラーパッチE1〜E4が形成されている必要はなく、基準カラーパッチE1〜E4を省略してもよい。従って、例えばKインクを使用しないプリンタにおいても本発明を適用することは可能である。なお、以上において算出した印刷用紙上の白色点の色XW2W2W2は、実際に印刷物を観察する照明光の下でテストパターンを観察した結果得られたものであり、ディスプレイ60上の白色点の色XW1W1W1は別途取得しておく必要がある。
ただし、ディスプレイ60は自発光デバイスであるため、ディスプレイ60に関する白色点の色XW1W1W1は照明光に依存することなく、ディスプレイの仕様から得ることができる。すなわち、ディスプレイ60に関しては、ディスプレイ60の観察環境下における照明光による白色点の色XW1W1W1の依存度が0であるため、ディスプレイ60が発光する仕様上の白色の色度そのものをディスプレイの観察環境下における白色点の色XW1W1W1とすることができる。従って、ステップS130にてディスプレイ60の白色仕様の指定入力を受け付けることにより、環境パラメータ取得部P2がディスプレイの観察環境下における白色点の色XWWWを取得することができる。以上のようにして環境パラメータ取得部P2が各環境下における白色点の色度を示す環境パラメータXW1W1W1を取得すると、次にパラメータ取得部P2は照度に関する環境パラメータを取得する。
図8は、照度エリアS2を拡大して示している。照度エリアS2はA〜D行×1〜5列のパッチA1,A2・・,B1,B2・・,C1,C2・・,C1,C2・・,D1,D2・・から構成されている。A行のパッチA1,A2・・は、それぞれ略矩形状の黒帯と白帯を交互に配列させた模様となっている。A行のパッチA1,A2・・において黒帯と白帯が配列する空間周波数は、A1>A2>A3>A4>A5となっている。B行のパッチB1,B2・・は、それぞれ略矩形状の黒帯と灰帯を交互に配列させた模様となっており、交互に配列する帯の空間周波数はB1>B2>B3>B4>B5となっている。
C行,D行についても同様の空間周波数とされており、C行,D行については順に灰帯が濃くなっている。すなわち、A〜D行のいずれにおいても異色の帯が交互に配列する模様となっており、その明度コントラストがA>B>C>Dとなっている。同図の下段においては、各パッチA1,A2・・・の濃度の変動を示しており、各パッチA1,A2・・・の濃度が矩形波状に変動し、空間周波数が徐々に変化させられていることが分かる。なお、同図においては図示の都合上、各帯間に明度コントラストを付けたテストパターンを例示したが、各帯間に色相や彩度等のコントラストを有するテストパターンを用意してもよい。
図9は、一定の照度における人間の視覚の空間周波数特性をグラフにして示している。同図において、縦軸に知覚レベルを示しており、横軸に空間周波数[cycle/mm]を示している。同図から空間周波数が大きいほど知覚レベルが低下することが分かる。図5に示した照度エリアS2では、各パッチの黒帯と白帯が配列する空間周波数は、1>2>3>4>5列目となっているため、1>2>3>4>5列目の順に知覚しづらいこととなる。また、隣接する異色の明度を異ならせた場合と、色相(黄−青,赤−緑)を異ならせた場合とでは、明度を異ならせた場合の方が知覚レベルの空間周波数依存性が高く、色相差は明度差ほど知覚できないことが分かる。図5に示した照度エリアS2では、隣接する帯間で明度コントラストを異ならせており、その明度差がA>B>C>D行目となっているため、A>B>C>Dの順に境界が知覚しやすくなっている。このように、一定の照度においては、視覚の空間周波数特性に図9のような傾向が見られるが、照度が変動すると視覚の空間周波数も変動することが分かっている。
図10は、実験によって得られた照度と分解限界周波数との関係を示している。また、分解限界周波数とは、与えられた条件下で交互に配列する帯の境界を認識できる最大の空間周波数を意味し、具体的には図8の照度エリアS2と同様にいくつかの配列周波数を有するパッチを用意しておき、各照度において帯間の色の差異が視覚できる限界のパッチの配列周波数を分解限界周波数として特定する。なお、同図において、縦軸が分解限界周波数を示し、横軸は照度を示している。同図において、A〜D行のパッチと同様の明度コントラストとなる帯についての各照度における分解限界周波数の傾向をそれぞれ線で結んでいる。また、各パッチA1,A2・・・の帯が配列する周波数と、実験で得られた分解限界周波数とが一致する点をプロットしている。いずれの明度コントラストにおいても、照度が低下すると、分解限界周波数が低下することが分かる。すなわち、いずれの明度コントラストにおいても、分解限界周波数を特定することにより、一義的に照度を特定することができる。
図8の照度エリアS2を観察し、帯間の色の差を視覚できる限界のパッチA1,A2・・・を特定することにより、そのときの照度を特定することができる。例えば、パッチA2の帯間の色の差が視認でき、パッチA1の帯間の色の差が視認できない場合には、分解限界周波数がパッチA2の配列周波数となり、照度がパッチA2に対応するIAであると特定することができる。この照度において、B行のパッチB1〜B5を観察すると、パッチB4の帯間の色の差が視認でき、パッチB3の帯間の色の差が視認できず、パッチB4に対応する照度IBを特定することができる。さらに、C行のパッチC1〜C5を観察すると、パッチC5の帯間の色の差が視認でき、パッチC4の帯間の色の差が視認できず、パッチC5に対応する照度ICを特定することができる。
従って、ステップ140にて視覚できた限界のパッチA1,A2・・・の指定を受け付けることにより、環境パラメータ取得部P2は、照度IA,IB,ICを特定することができる。環境パラメータ取得部P2は図10の対応関係をテーブルとして記憶しており、同テーブルを参照することにより、照度IA,IB,ICを特定することができる。各パッチA1,A2・・・の周辺に対応する照度IA,IB,ICを示す文字を印刷しておき、ユーザーから知覚できたパッチA1,A2・・・に対応する照度IA,IB,ICの入力を受け付けるようにしてもよい。
また、図8においては、パッチA1,A2・・・の帯間に明度コントラストを設けるテストパターンを例示したが、色相や彩度のコントラストを各パッチの帯間に設けるようにしてもよい。例えば、L***表色系においてa**成分を変動させてもよい。図9に示すように、色相コントラストは明度コントラストよりも知覚されにくい。従って、コントラストが知覚されやすい高照度環境において微妙な照度を特定するために色相コントラストのテストパターンを使用してもよい。さらに、図8の例では、明度が矩形波状に変動するものを例示したが、明度、色相、彩度をサイン波状に変動させたり、のこぎり波状に変動させたりしてもよい。この場合、色の変動が緩やかとなるため、コントラストが知覚されにくくなる。従って、高照度環境において微妙な照度を特定するために好適であるということができる。
ステップS140では、ディスプレイ60を観察する周囲照明の環境下でテストパターンを視認した結果が入力される。これにより、ディスプレイ60を観察する差異の照度IA,IB,ICを特定することができる。ステップS150においては、ステップS140にて特定した照度IA,IB,ICの平均値を照度Iとして算出する。例えば、下記式(2)のように、相加平均によって照度Iを算出する。

I=(IA,IB,IC)/3 ・・・(2)
A〜D行のいずれかについて視覚できる限界のパッチを特定すれば照度を得ることができるが、各明度コントラストにおいてそれぞれ照度IA,IB,ICを特定し、平均を照度Iとして特定することにより、照度Iの精度を向上させることができる。以上のようにして照度Iが特定できると、ステップS160にて環境パラメータ取得部P2が照度Iを指標として、環境パラメータを算出する。以下、ステップS160にて算出される環境パラメータについて説明する。
まず、下記式(3)によってディスプレイ観察環境における白色点の輝度Lsw[cd/m2]を算出する。
sw=I/π ・・・(3)
例えば、照度I=500[lux]であった場合には、白色点輝度Lsw≒159[cd/m2]であると算出される。次に、ディスプレイ60が白色を表示させたときのデバイス輝度Ldwを取得する。ディスプレイ60は自発光デバイスであるため、デバイス輝度Ldwはディスプレイ60の仕様に依存する。従って、ディスプレイ60のデバイス輝度Ldwはディスプレイ60の仕様書等から得ることができる。ここでは、ディスプレイ60の仕様上のデバイス輝度Ldwが80[cd/m2]であったものとして説明する。次に、順応輝度LAを下記式(4)によって算出する。なお、順応輝度LAは本発明の色変換プロファイルに使用される環境パラメータの1つを構成する。
A=Ldw/5 ・・・(4)
白色輝度が80[cd/m2]であった場合には、順応輝度LA=16[cd/m2]となる。さらに、下記式(5)によって周囲比Srを算出する。
Sr=Lsw/Ldw ・・・(5)
上記式(5)において、周囲比Srはディスプレイ観察環境における完全白色板輝度Lswとディスプレイ60の仕様上の白色輝度Ldwとの比として算出される。上記の例では、周囲比Sr≒2となる。以上のようにして周囲比Srを算出すると、周囲比Srの値に応じて環境パラメータc,Nc,Fを特定する。
図11は、周囲比Srの値と、環境パラメータc,Nc,Fの値との対応関係を示すテーブルである。周囲比Srの値に応じて、観察環境が、暗黒の周囲環境と、薄暗い周囲環境と、平均的な周囲環境とに分類され、各周囲環境に応じてc,Nc,Fが決められている。周囲比Srを算出した環境パラメータ取得部P2は、このテーブルを参照して、環境パラメータc,Nc,Fを特定する。上記の例では、周囲比Sr≒2となっているため、環境パラメータc,Nc,Fは、それぞれ平均的な周囲環境の0.69,1.0,1.0であると特定される。例えば、同一仕様のディスプレイ60においてテストパターンの観察結果によって得られる照度I=38[lux]であった場合には、周囲比Sr≒0.15となり、環境パラメータc,Nc,Fは、それぞれ薄暗い周囲環境の0.59,0.9,0.9であると特定される。
以上の手順によって環境パラメータ取得部P2が環境パラメータとしてのLA,c,Nc,Fを取得すると、ステップS170にて印刷結果を観察する環境下でのテストパターンの観察結果の入力を受け付ける。すなわち、ステップS140ではディスプレイ60の観察環境におけるテストパターンの観察結果を受け付けるのに対して、ステップS170ではプリンタ20にて印刷した印刷物の観察環境におけるテストパターンの観察結果を受け付ける。例えば、プリンタ20にて店頭POP用のポスターを印刷したい場合には、店頭の照明環境のもとでステップS110にて印刷したテストパターンの観察を行い、その観察結果をステップS170では受け付ける。具体的には、ステップS140と同様に、視覚できた限界のパッチA1,A2・・・の指定を受け付ける。
ステップS180においては、ステップS150と同様に上記式(2)によって平均の照度Iを算出する。さらに、ステップS190においては、ステップS160と同様に上記式(3)〜(5)によって印刷物の観察環境に関しての環境パラメータLA,c,Nc,Fを取得する。ただし、印刷物はディスプレイ60のような自発光デバイスではないため、デバイス輝度Ldwは印刷物の観察環境における白色点輝度Lswと一致すると考えることができる。印刷用紙は完全白色板であると考えることができ、印刷物にて白色を表現する場合には、印刷用紙には何ら色材が付着されないからである。
例えば、ステップS170にて取得した照度Iが1000[lux]であった場合には、Lsw=Ldw=318,LA=63.7,Sr=1.0となり、図11のテーブルからc,Nc,Fはそれぞれ0.69,1.0,1.0であると特定される。印刷物においては常にLsw=Ldwが成り立つため、c,Nc,Fも常に0.69,1.0,1.0となる。このようにステップS140,S170を行うことにより、ディスプレイ60の観察環境に関する環境パラメータLA,c,Nc,Fと、プリンタ20(印刷用紙)の観察環境に関する環境パラメータLA,c,Nc,Fをそれぞれ環境パラメータ取得部P2が取得することができる。環境パラメータ取得部P2は、ステップS195にてディスプレイ60の観察環境に関する環境パラメータ(XW1W1W1,LA,c,Nc,F)と、印刷物の観察環境に関する環境パラメータ(XW2W2W2,LA,c,Nc,F)をそれぞれHDD13に環境パラメータ13fとして更新記憶させる。なお、環境パラメータYW1,YW2はそれぞれディスプレイ60と印刷用紙の白色点の輝度をそれぞれ意味している。
(3)背景輝度取得処理の流れ:
図12は、背景輝度取得処理の流れを示している。同図において、ステップS200では属性判定部P3aが画像データ13bに対してフーリエ変換を行う。画像データ13bの各画素のRGBに基づいて各画素の輝度を算出し、この輝度について空間に関するフーリエ変換を行う。なお、フーリエ変換における空間軸方向は画像データ13bの縦方向または横方向のいずれかにしてもよいし、2次元フーリエ変換を行ってもよい。このようにフーリエ変換を行うことにより、各空間周波数のごとの輝度強度のスペクトルを得ることができる。従って、画像データ13bにおいてどの空間周波数成分が多く含まれるかを特定することができる。
ステップS210においては、画像データ13bが風景画であるか注目物を含む画像であるかを判定する。各空間周波数のごとの輝度強度に応じたペクトルが得られており、このスペクトルが高周波側に偏っていれば風景画であると判定する。例えば、ある平均的な空間周波数を設定しておき、この空間周波数よりも高周波側のスペクトル強度の積算値と、この空間周波数よりも低周波側のスペクトル強度の積算値とを比較し、前者の方が大きければ風景画であると判定するようにしてもよい。なお、風景画でない場合には、注目物が含まれる画像データ13bであると判定する。
ステップS210において画像データ13bが風景画であると判定されると、ステップS220にて背景領域特定部P3bは画像データ13b全体が背景領域であると特定する。すなわち、風景画像である場合には、一部の領域が特に注目されることはないため、全ての領域が背景領域であるとする。一方、ステップS210において画像データ13bが風景画でないと判定されると、ステップS230にてユーザーから注目領域の指定を受け付ける処理を行う。具体的には、ユーザーが注目領域を指定するためのUI表示を行うことにより、ユーザーから注目領域の指定を受け付ける。
図13は、ステップS230にてディスプレイ60に表示されるUI表示の一例を示している。同図において、画像データ13bのサムネイルが表示されたプレビュー領域が設けられており、同プレビュー領域にて楕円形状の選択カーソルが波線で示されている。この選択カーソルはマウス40でドラッグすることにより、拡大縮小することができるとともに、位置を移動させることができる。これにより、ユーザーは所望する注目領域を選択カーソルによって囲むことができる。そして、ユーザーが注目領域を選択カーソルによって囲んだ状態で決定ボタンをクリックすることにより、選択カーソルによって囲まれた領域を注目領域として確定させることができる。背景領域特定部P3bはサムネイルにおける選択カーソルの位置および大きさから画像データ13bにおける注目領域を特定する。そして、ステップS235においては、背景領域特定部P3bが画像データ13bにおける注目領域の外側の領域を背景領域として特定する。
ステップS240においては、ステップS220またはステップS235にて特定された背景領域に属する画素数と、同背景領域に属する画素のRGB値の平均値Rbbbを算出する。そして、下記式(6)に平均値Rbbbを代入することにより背景輝度Ybを算出する。
b=0.263×Rb+0.655×Gb+0.081×Bb ・・・(6)
以上によって画像データ13bにおける背景領域の平均的な輝度である背景輝度Yb(0〜255階調)を算出することができる。ステップS240にて算出された背景輝度Ybは、ステップS250にてHDD13に背景輝度データ13iとして記憶される。後述するように背景輝度Ybは、CIECAM02の変数であり、第一色変換部P4と第二色変換部P6によってそれぞれ所定の変換式に代入される。
(4)ガマットマッピングについて:
図14は、ガマットマッピングの流れを示している。同図において、ステップS310には第一色変換部P4がHDD13に記憶されたガマットデータ13eからディスプレイ60のガマットを取得する。ディスプレイガマットは、ディスプレイ60の表示状態を測色機によって測色することにより得られており、ガマットの外縁等がXYZ表色系によって表されている。ステップS320では、第一色変換部P4が環境パラメータ13fからディスプレイ60に関する環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fを取得する。また、背景輝度データ13iから背景輝度Ybも取得する。そして、ステップS330においては、第一色変換部P4がステップS310にて取得したディスプレイガマットをCIECAM02によってJCh表色系で表されるガマットに変換する。このとき、ステップS320にて取得した環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度YbをCIECAM02に代入することにより、実際に知覚されるディスプレイガマットをディスプレイ60の観察環境に応じてJCh表色系にて特定することができる。なお、CIECAM02は、環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybが代入可能な色変換プロファイルであり詳細については後述する。
次に、ステップS340〜S360を同様に実行することにより、プリンタ20にて出力した印刷物の観察環境に応じたプリンタガマットをJCh表色系にて特定することができる。ディスプレイ60と同様に、印刷物を観察する際の環境パラメータXW2W2W2,A,c,Nc,Fと背景輝度YbをCIECAM02に代入して逆変換することができるため、実際に知覚されるディスプレイガマットを印刷物の観察環境に応じてJCh表色系にて特定することができる。
以上のようにしてディスプレイガマットとプリンタガマットがJCh表色系にて特定できると、ステップS370にて両ガマットを比較する(ガマット比較工程)。ディスプレイガマットとプリンタガマットは、本来、ハードウェアの特性によって表現可能な色域(ガマット)が異なっているし、また観察環境も異なるため観察環境に起因して実際に人の目に見える視覚上の色域(ガマット)も異なることとなる。そのため、CIECAM02を使用して各環境下の環境パラメータXWWW,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybを考慮した、実際に知覚されるガマットを予測し、そのガマットを比較することにより、より人間の知覚に適応したガマット比較を行うことができる。
ステップS370において両ガマットの比較を行うと、ステップS380にてガマット補正テーブル13gを作成する。具体的には、ディスプレイガマットがプリンタガマットよりもはみ出た領域については、その領域について色圧縮を行うことにより、はみ出た領域のJCh座標をプリンタガマットに収まるJ’C’h’座標に対応させる。また、プリンタガマットがディスプレイガマットよりも広い領域については、その領域について色伸長を行うことにより、その領域のJCh座標をディスプレイガマットの外側のJ’C’h’座標に対応させる。以上のようにして作成されたJCh→J’C’h’の対応関係はガマット補正テーブル13gとしてHDD13に記憶される。
(5)色変換処理の流れ:
図15は色変換処理の流れをフローチャートにより示し、図16は色変換処理の流れを模式的に示している。ステップS400においては、画像データ取得部P1がHDD13から画像データ13bを取得する。この時点で画像データ13bは、各画素の色が本発明の第一表色系のsRGB表色系で表現されており、元画像データに相当する。ディスプレイ60は、sRGB表色系の画像データ13bを入力することが可能であり、sRGB表色系の画像データ13bに基づく表示を行っている。ステップS410においては、画像データ13bから一つの画素を選択し、同画素のsRGB階調を取得する。ステップS420においては、公知の等色変換式により、sRGB表色系で表された当該画素の色を、XYZ表色系に変換する。
ステップS430においては、第一色変換部P4がXYZ値を取得するとともに、環境パラメータ取得部P2と背景輝度取得部P3を介してディスプレイ60に関する環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybを取得する。上述したとおりディスプレイ60に関する環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybは、予めHDD13の環境パラメータ13fおよび背景輝度データ13iに格納されているため、CPU11がこれを読み出して使用することができる。さらに、第一色変換部P4が、ディスプレイ60に関する環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度YbをCIECAM02に代入しつつ、CIECAM02を用いてXYZ値をJCh値に変換する。
CIECAM02は可逆変換プロファイルであり、順方向の変換においてXYZ値をJCh値に変換することができる。その際に、環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybを変換式に代入することが可能であり、ディスプレイ60の観察環境に応じた変換結果をJCh表色系にて得ることができる。CIECAM02モデルによれば、環境パラメータXW1W1W1,A,c,Nc,Fで表されるディスプレイ60の観察環境下において、sRGB値に基づいてディスプレイ60が表示した色が、どのような色で人間に知覚されるかをJCh表色系にて特定することができる。また、その際に、ディスプレイ60における背景輝度Ybによる色順応が考慮されるため、背景輝度Ybの背景において注目物の色がどのような色で人間に知覚されるかをJCh表色系にて特定することができる。なお、JCh表色系は本発明の第三表色系に相当し、ステップS420〜S430が本発明の第一色変換工程に相当することとなる。
以上のようにしてJCh値を算出すると、ステップS440にてガマット補正が行われる。ステップS440では、ガマット補正部P5がガマット補正テーブル13gを取得し、同ガマット補正テーブル13gを参照して、JCh値に対応するガマット補正後のJ’C’h’値を特定する。ガマット補正テーブル13gは、上述したガマットマッピング処理によって作成されており、ステップS330とステップS430においては同一の環境パラメータLA,c,Nc,FがCIECAM02に代入されている。
ガマット補正部P5がガマット補正後のJ’C’h’値を特定すると、ステップS450において、第二色変換部P6が環境パラメータ取得部P2と背景輝度取得部P3を介してプリンタ20(印刷物)に関する環境パラメータXW2W2W2,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybを取得する。上述したとおりプリンタ20に関する環境パラメータXW2W2W2,A,c,Nc,Fと背景輝度Ybは、予めHDD13の環境パラメータ13fと背景輝度データ13iに格納されているため、CPU11がこれを読み出して使用することができる。さらに、第二色変換部P6が、プリンタ20(印刷物)に関する環境パラメータXW2W2W2,A,c,Nc,Fと背景輝度YbをCIECAM02に代入しつつ、CIECAM02を用いてJCh値をXYZ値に変換する。CIECAM02は可逆変換プロファイルであるため、逆方向の変換においてJCh値をXYZ値に変換することができる。
ステップS460では、第二色変換部P6が予めHDD13に記憶された色変換LUT13dを取得し、同取得した色変換LUT13dを参照してXYZ値に対応するCMYK値を特定する。色変換LUT13dは、XYZ表色系とCMYK表色系との等色関係を規定したテーブルであり、プリンタ20にて印刷した際のCMYK値が測色的にどのXYZ値に対応しているかを検証していくことにより予め作成されている。なお、CMYK表色系は本発明の第二表色系に相当し、ステップS450〜S460が本発明の第二色変換工程に相当することとなる。
ステップS470においては画像データ13bの全画素についてステップS410にて選択が完了したかどうかが判断され、全て選択していない場合にはステップS410に戻り次の画素が選択される。すなわち、ステップS410〜S470を繰り返すことにより、順に画素をシフトさせていき、最終的には全画素について対応するCMYK値を特定していくことができる。そして、ステップS470にて全画素についてCMYK値の特定が完了したことが確認されると、各画素の色がCMYK値で表現された色変換画像データを次の工程に出力する。なお、次の工程においては、色変換データがハーフトーン処理部P7と印刷データ生成部P8にて変換され、プリンタ20に出力可能な印刷データが生成される。
このように、第一色変換工程においてはディスプレイ60に表示された画像の色を、その観察環境下においてどのように知覚されるかを推定することができる。そして、第二色変換工程においてはプリンタ20(印刷物)の観察環境において、第一色変換工程にて推定された知覚色と同様に知覚される色が印刷できるCMYK値を特定することができる。すなわち、本発明の色変換を行うことにより、ディスプレイ60を観察しているときに知覚する色と、印刷結果を観察しているときに知覚する色とを同じにすることができ、ディスプレイ60を見ながら作成した画像データをイメージどおりに出力することができる。
観察環境下においてどのように知覚されるかを推定するにあたってはCIECAM02モデルが使用され、CIECAM02では環境パラメータXWWW,LA,c,Nc,Fと背景輝度Ybを変換式に代入することができる。このうち環境パラメータXWWW,LA,c,Nc,Fは、照明光の分光分布P(λ)および照度Iから得ることができ、分光分布P(λ)および照度Iはテストパターンの視覚結果に基づいて特定することが可能となっている。従って、環境パラメータXWWW,LA,c,Nc,Fを得るために分光光度計や照度計を用意する必要はなく、一般のユーザーにおいても容易に本発明を利用することができる。
なお、本実施形態の色変換処理においてはsRGB値をCMYK値に変換する第一色変換処理および第二色変換処理を画素ごとに一貫して行うようにしたが、sRGB表色系の元画像データの全画素について第一色変換部P4がsRGB値をJCh値に変換することにより、一旦、JCh表色系の画像データに変換し、さらにJCh表色系の画像データの全画素を第二色変換部P6がCMYK値に変換することにより最終的にCMYK表色系の色変換画像データを得るようにしてもよい。両者の差異は、第一色変換および第二色変換を画素単位で行うか画像データ単位で行うかという便宜的な事象に過ぎず、実質的には同じ処理を行っているということができる。さらに、一画素を画像データと捉えれば、本実施形態においても、sRGB表色系の元画像データを、一度、JCh表色系の画像データに変換し、さらにJCh表色系の画像データをCMYK表色系の色変換画像データに変換しているということができる。
(6)変換プロファイル(CIECAM02)について:
次に、CIECAM02について説明する。上述したとおりCIECAM02は環境パラメータLA,c,Nc,Fを代入することにより、その観察環境にて知覚される色変換結果を得ることが可能なXYZ−JCh可逆変換プロファイルである。具体的には、下記に説明する手順によってXYZ値をJCh値に変換する。
まず、下記式(7)の行列変換によって、XYZ表色系をRGB表色系に変換する。
次に、等エネルギー白色からデバイス白色への順応の度合いとなる順応ファクタDを下記式(8)によって算出する。
ここで、環境パラメータ取得部P2が予め取得した環境パラメータLA,Fが代入されることとなる。順応ファクタDは、0〜1の値となり、1となる場合には完全順応となる。次に、上記式(7)によって算出したRGB値を下記式(9)の色順応式に代入する。
上記式(9)によって、順応ファクタDにおける色順応を考慮したRGB値(Rccc)を算出することができる。なお、上記式(9)におけるYwは白色点のY値を意味し、Rwwwは白色点のRGB値をそれぞれ意味している。ここで、上述したように環境パラメータ取得部P2が取得した白色点の色XwwwがHDD13から読み出されて上記式(9)に代入される。なお、Rwwwは上記式(7)によってXwwwから変換することができる。なお、ステップS330におけるCIECAM02の順変換においてはディスプレイに関する環境パラメータXW1W1W1が代入され、ステップS350におけるCIECAM02の逆変換においてはプリンタ20(印刷物)に関する環境パラメータXW2W2W2が代入される。
次に、下記式(10)RGB表色系で表されたRccc値をHunt-Pointer-Estevezの錐体刺激空間の座標値R’G’B’に変換する。
さらに、下記式(11)〜(17)に基づいて後の計算に使用するパラメータk,FL,n,Nbb,Ncb,zを算出する。
ステップS330におけるCIECAM02の順変換においてはディスプレイ60に関する白色点輝度YW1と背景輝度Ybが代入されるため、ディスプレイ60に関する白色点と背景の輝度の相対比としてnを算出することができる。一方、ステップS350におけるCIECAM02の逆変換においてはプリンタ20(印刷物)に関する白色点の輝度YW2と背景輝度Ybが代入されるため、プリンタ20(印刷物)に関する白色点と背景の輝度の相対比としてnを算出することができる。
上記式(12)においては、環境パラメータ取得部P2が予め取得した環境パラメータLAが代入されることとなる。
そして、上記式(10)によって算出したR’G’B’値を下記式(16)に代入することにより、順応後の非線形圧縮をする変換を行う。これにより、錐体応答の入出力特性を考慮したR’G’B’値(R’aG’aB’a)を算出することができる。
なお、上記式(16)に代入するR’G’B’値が負の値である場合には、その絶対値を上記式(16)に代入する。以上によりの環境パラメータLA,c,Nc,Fおよび背景輝度Ybによる色順応を考慮したR’aG’aB’a値を特定することができる。
次に、ここまでで得られたR’aG’aB’a値からJCh表色系の座標値を特定する計算を行う。まず、R’aG’aB’a値を下記式(17),(20)に代入することにより座標変換を行いa,bを算出する。
さらに、a,bを下記式(19)に代入することより色相角hを算出する。
色相角hが算出できると、次に下記式(20)により離心率etを算出する。
図17は、代表的なユニーク色についての離心率eiと色相角hiと色相成分(hue quadrature)Hiとの対応関係を示している。この対応関係に基づいて、上記式(16)によって得られたR’aG’aB’a値に対応する色相成分Hを直線補間により算出する。具体的には、下記式(21)によってR’aG’aB’a値に対応する色相成分Hを算出する。
なお、上記式(21)における色相角h’は、原則的に上記式(19)によって算出した色相角hと同じ値とし、赤の色相角hi(i=1)よりも色相角hが小さい場合に限りh’=(h+360)とする。これにより、補間に使用する色相角h’が必ずいずれかのユニーク色の色相角hiの間の値を取ることとなり、補間が可能となる。なお、補間に使用するユニーク色は、hi≦h’<hiとなるiが選択される。
次に、上記式(16)によって得られたR’aG’aB’a値についての無彩色応答Aを下記式(22)によって算出する。
R’aG’aB’a値の無彩色応答Aが得られたら、次に明度Jを下記式(23)によって算出する。
上記式(23)においては、R’aG’aB’a値の無彩色応答Aと、刺激の無彩色応答Awとの比を算出し、この比を環境パラメータcと上記式(15)で得られたzの積算値で累乗することにより明度Jを算出している。
次に、クロマCを算出する。まず、クロマCを算出するために必要な係数tを下記式(24)によって算出する。
上記式(24)では、環境パラメータ取得部P2が予め取得した環境パラメータNcが代入されることとなる。係数tが得られると、下記式(25)に係数tを代入して、クロマCを算出する。
上記式(25)によりクロマCが算出できると、JCh表色系の各座標値J,C,hがそれぞれ算出できたこととなる。これにより、元画像データ13bにおいて各画素の色を表現するsRGB値を、環境パラメータXwww,LA,c,Nc,Fおよび背景輝度Ybを代入可能な変換プロファイル(CIECAM02)を用いてJCh値に変換できたこととなる。
(7)まとめと変形例:
本発明では、第一色変換工程においてはディスプレイ60に表示された画像の色を、その観察環境下においてどのように知覚されるかを推定することができる。そして、第二色変換工程においては印刷結果の観察環境において、第一色変換工程にて推定された知覚色と同様に知覚される色が印刷できるCMYK値を特定することができる。観察環境下においてどのように知覚されるかを推定するにあたっては各環境における環境パラメータXwww,LA,c,Nc,Fと背景輝度Ybを変換プロファイルに代入する。背景輝度Ybを加味して色順応が予測されるため、背景における注目物の色を正確に再現することができる。
上述した実施形態においては、属性判定部P3aが画像データ13bを空間周波数解析することにより画像データ13bの属性を判定していたが、他の画像解析手法によって属性を判定してもよい。例えば、ポートレート写真においてはある注目物にフォーカスが合っており、エッジが鋭くなる。従って、エッジ検出の有無によってポートレートか否かを特定してもよい。さらに、エッジをトレースし、エッジに囲まれた領域が所定の大きさを占めていれば、ポートレートであると判断してもよい。
むろん、画像データ13bにおいて顔画像を検出し、顔画像が検出された場合には、注目物が含まれるポートレートであると判定するようにしてもよい。顔画像を検出するにあたっては種々の顔認識技術を採用することができる。例えば、テンプレートマッチングやサポートベクタマシン等を利用してもよいし、特開2005−346663号公報に開示されている手法を適用してもよい。いずれの手法を適用しても、顔画像が検出された時点で、当該画像データ13bには注目画像が含まれていることが特定できるため、次に注目領域の大きさや位置を特定する処理を行えばよい。また、顔画像が精度よく検出できれば、検出された顔画像をそのまま注目領域として特定し、それ以外を背景領域として特定するも可能である。すなわち、前実施形態のステップS230のようにユーザーに注目領域の位置や大きさを指定させなくても済む。むろん、ユーザーによる領域指定によれば、自動判別では反映できないユーザーの意向も反映できるため、顔認識による自動判別とユーザーによる領域指定を併用してもよい。また、顔の見えを忠実に再現することができるため、不本意な顔色に印刷されることが防止できる。
属性判定部P3aが画像データ13bを画像解析することにより画像データ13bの属性を特定するものに限られず、他の手法によって画像データ13bの属性を特定することも可能である。例えば、ユーザーが属性を指定によって属性を特定してもよい。具体的には、図12のステップS200にて所定のUI表示を表示させ、同UI表示における選択操作に応じて属性を特定するようにしてもよい。
図18は、ユーザーが属性を指定するためのUI表示の一例を示している。同図において、風景画像であるかポートレートであるかCGであるかのいずれかを選択することができるチェックボックスが設けられている。これにより、ユーザーが画像の属性を指定することができるとともに、属性判定部P3aがマウス40等の操作を受け付けて画像データ13bの属性を特定することができる。また、このUI表示において画像データ13bのプレビュー画像を表示しておけば、ユーザーが視覚的に属性を判断することができ、便利である。
また、画像データ13bの属性を特定する他の手法として画像データの添付情報を利用してもよい。EXIF規格(JEITA ver.2.2)の画像データにおいては、ビットマップデータに対して、種々の添付情報をタグ形式で記述したヘッダを添付することができる。添付情報は画像データを生成した画像入力機器や画像管理プログラムによって添付される。例えば、デジタルスチルカメラで画像データを生成した場合、その撮影条件を添付情報に格納することができる。撮影条件として撮影時の露出プログラムを記憶することでき、露出プログラムがポートレートモードであったか風景モードであったかを特定することができる。従って、図12のステップS200にて属性判定部P3aが画像データ13bの添付情報を取得し、その露出プログラムを判別することにより、当該画像データ13bの属性を特定することができる。
さらに、EXIF規格の添付情報には被写体情報を記憶しておくことができる。この被写体情報にはビットマップにおける被写体の中央の座標と形状が特定され、形状が円であればその径が特定されている。また、被写体の形状が矩形であればその高さと幅が特定されている。以上のような被写体情報によれば画像データにおける注目物の有無のみならず、注目物(被写体)の位置および大きさも特定することができ、被写体以外の領域を背景領域と特定することもできる。従って、前実施形態のステップS230のようにユーザーに注目領域の位置や大きさを指定させなくても済む。
コンピュータのハードウェア構成図である。 プログラムのソフトウェア構成図である。 環境パラメータ取得処理のフローチャートである。 テストパターンの一例を示す図である。 色度エリアの一例を示す図である。 照明光の分光分布を示すグラフである。 グレーの分光反射率を示すグラフである。 照度エリアの一例を示す図である。 知覚レベルと空間周波数の関係を示すグラフである。 分解限界周波数の照度依存性を示すグラフである。 周囲比と環境パラメータとの対応関係を示す表である。 背景輝度取得処理の流れを示すフローチャートである。 領域指定を受け付けるUI表示を示す図である。 ガマットマッピング処理の流れを示すフローチャートである。 色変換処理の流れを示すフローチャートである。 色変換処理の流れを示す模式図である。 ユニーク色の色相角と色相成分と離心率を示す表である。 属性指定を受け付けるUI表示を示す図である。
符号の説明
10…コンピュータ,10a…バス,11…CPU,12…RAM,13…HDD,13a…プログラムデータ,13b…画像データ,13c…テストパターンデータ,13d…色変換LUT,13e…ガマットデータ,13f…環境パラメータ,13g…ガマット補正テーブル,13h…分光分布データ,13i…背景輝度データ,14…USBI/F,15…入力機器I/F,16…ビデオI/F,20…プリンタ,40…マウス,50…キーボード,60…ディスプレイ,P…プリンタドライバ,P1…画像データ取得部,P2…環境パラメータ取得部,P3…背景輝度取得部,P3a…属性判定部,P3b…背景領域特定部,P3c…輝度算出部,P4…第一色変換部,P5…ガマット補正部,P6…第二色変換部,P7…ハーフトーン処理部,P8…印刷データ生成部,S1…色度エリア,S2…照度エリア


Claims (9)

  1. 第一出力デバイスに入力可能な第一表色系で各画素の色が表現された元画像データを、第二出力デバイスに入力可能な第二表色系で各画素の色が表現された色変換画像データに変換する色変換装置において、
    上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの環境パラメータを取得する環境パラメータ取得手段と、
    上記元画像データにおける背景領域を特定する背景領域特定手段と、
    上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記背景領域についての平均輝度を背景輝度として算出する背景輝度算出手段と、
    上記第一出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記元画像データを各画素の色が第三表色系で表現された画像データに変換する第一色変換手段と、
    上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記第一色変換手段にて得られた画像データを上記色変換画像データに変換する第二色変換手段とを具備することを特徴とする色変換装置。
  2. 上記背景領域特定手段は、上記元画像データを画像解析することにより上記元画像データにおける注目領域を特定するとともに、当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定することを特徴とする請求項1に記載の色変換装置。
  3. 上記背景領域特定手段は、上記元画像データに添付された同画像データの付帯情報に基づいて、上記元画像データにおける注目領域を特定するとともに、当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定することを特徴とする請求項1に記載の色変換装置。
  4. 上記背景領域特定手段は、ユーザーの領域指定によって上記元画像データにおける注目領域を特定するとともに、当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定することを特徴とする請求項1に記載の色変換装置。
  5. 上記注目領域は顔画像が占める領域であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の色変換装置。
  6. 上記背景領域特定手段は上記元画像データにおける注目領域の有無を判定するとともに、
    同注目領域がある場合には当該注目領域以外の領域を上記背景領域として特定し、同注目領域がない場合には当該元画像データ全体を上記背景領域として特定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の色変換装置。
  7. 上記環境パラメータ取得手段は、テストパターンを印刷媒体に出力し、その視覚結果に基づいて、上記環境パラメータを取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の色変換装置。
  8. 第一出力デバイスに入力可能な第一表色系で各画素の色が表現された元画像データを、第二出力デバイスに入力可能な第二表色系で各画素の色が表現された色変換画像データに変換する色変換方法において、
    上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの環境パラメータを取得し、
    上記元画像データにおける背景領域を、上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスにて観察するときの平均輝度を背景輝度として算出し、
    上記第一出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記元画像データを各画素の色が第三表色系で表現された画像データに変換し、
    上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記第三表色系に変換された上記画像データを上記色変換画像データに変換することを特徴とする色変換方法。
  9. 第一出力デバイスに入力可能な第一表色系で各画素の色が表現された元画像データを、第二出力デバイスに入力可能な第二表色系で各画素の色が表現された色変換画像データに変換する機能をコンピュータ上にて実現させる色変換プログラムにおいて、
    上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの環境パラメータを取得する環境パラメータ取得機能と、
    上記元画像データにおける背景領域を特定する背景領域特定機能と、
    上記第一出力デバイスおよび上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記背景領域についての平均輝度を背景輝度として算出する背景輝度算出機能と、
    上記第一出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記元画像データを各画素の色が第三表色系で表現された画像データに変換する第一色変換機能と、
    上記第二出力デバイスの出力結果を観察するときの上記環境パラメータと上記背景輝度を代入した変換プロファイルを利用して、上記第一色変換機能にて得られた画像データを上記色変換画像データに変換する第二色変換機能とをコンピュータ上にて実現させることを特徴とする色変換プログラム。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113497858A (zh) * 2020-04-03 2021-10-12 佳能株式会社 信息处理装置及其控制方法

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