JP2007217740A - 焼結部品用サイジング金型の設計方法 - Google Patents

焼結部品用サイジング金型の設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サイジング金型で矯正して仕上げる焼結部品の寸法精度を向上させるために、適切な矯正面を有するサイジング金型を作ることができるサイジング金型の設計方法を提供する。
【解決手段】中心から被サイジング面の各部までの距離が変化している焼結部品、例えば焼結歯車1の製造において、歯2の歯先3、歯面4、歯底5を被サイジング面にしてそれらの面をサイジング加工するときの被サイジング面のスプリングバック量xをサイジング領域の全域において一定とし、その一定のスプリングバック量x分を製品の歯形6から製品の中心方向に小さくしてサイジング金型の歯形7を設計するようにした。
【選択図】図2

Description

この発明は、焼結部品の寸法矯正に用いるサイジング金型の設計方法、詳しくは、焼結歯車などの寸法精度を向上させる設計方法と、その方法で設計されたサイジング金型と、そのサイジング金型を使用する焼結部品の製造方法と、その方法で製造された焼結部品に関する。
焼結部品は、原料秤量、原料粉末の混合、成形、焼結、サイジングなどの後処理の各工程を経て製造される。サイジングは、焼結してできた焼結体をサイジング代(しごき代)を有するサイジング金型でしごいて製品の寸法を矯正する作業であり、寸法精度が要求される焼結部品を製造するときに実施されている。
焼結部品のサイジング代は、加工される焼結体のスプリングバック量を考慮して設定される。スプリングバック量は、しごいた焼結体を金型から抜き出した後の焼結体の寸法増加量であり、このスプリングバックについては、下記非特許文献1に粉末成形時の圧粉体のスプリングバック量の計算式が示されている。その計算式は、
SB=(g−d)/d×100 ここに、SB:スプリングバック量(%)
d:金型寸法
g:圧粉体寸法
焼結体をサイジングするときのスプリングバック量も、この式を参考にして設定されている(図6参照。同図の11は焼結体の被サイジング面、12はサイジング金型の矯正面、Aはサイジング代、xはサイジング時のスプリングバック量)。従来法によるスプリングバック量の計算は、焼結体の中心から被サイジング面までの距離に一定比率を掛けて求めている。焼結体が焼結歯車である場合を例に挙げてさらに説明する。今、図8において、
製品の歯先径:a
製品の歯底径:b
歯先と歯底の平均径:c=(a+b)/2
サイジング時スプリングバック量:x
製品の歯丈:(a−b)/2
とし、さらに、
サイジング金型の歯先矯正面と歯底矯正面の平均径:c−x
スプリングバック量算出の比率:(c−x)/c=1−x/c
とする。この場合、
サイジング金型の歯先矯正面径:a×比率=a−a×(x/c)
サイジング金型の歯底矯正面径:b×比率=b−b×(x/c)
サイジング金型の歯丈:(サイジング金型の歯先矯正面径−歯底矯正面径)/2
=(a−b)×(1−x/c)/2
=(a−b)/2−(a−b)×(x/c)/2
上式の(x/c)/2にc=(a+b)/2を代入して、
=(a−b)/2−(a−b)×{x*2/(a+b)}/2
=(a−b)/2−(a−b)/(a+b)×x
この方法で設計したサイジング金型の形状(矯正面の形状)と製品形状を図7に示す。この図は、理解し易くするために形状の違いを誇張して表している。図中実線は製品形状、一点鎖線は計算したスプリングバック量を製品形状に加算して求めた金型形状である。これからわかるように、従来の設計法では、歯車の中心から歯の各部までの距離に一定比率を掛ける方法でサイジング時のスプリングバック量を求めているので、歯先3と歯面4と歯底5の各部のスプリングバック量に差が生じる。
従来は、スプリングバック量が中心からの距離に応じて変動すると考えて上記の設計を行っており、そのために、加工対象が歯車の場合、中心からの距離が大きくなる歯先側ほど製品の輪郭からサイジング金型の矯正面までの離反量が大きくなっていたが、この考え方に基づく設計が原因で製品の寸法精度、形状精度が低下している。この傾向は特に、粉末を原料とする焼結部品において大きいことがわかった。
ここで、焼結部品のサイジングについて触れた文献として、例えば、下記特許文献1、2がある。特許文献1はサイジングなどの後処理で修正しきれない寸法変化量を見込んで型の寸法を予め補正して型を製作することを開示している。また、特許文献2は、熱間サイジングでの寸法精度向上策として、焼結体の必要収縮量に応じたサイジング温度を求め、求めた温度に焼結体を加熱してサイジングを行うことを開示している。
しかしながら、これらの特許文献に開示された技術では、サイジング金型の設計が適切でないために起こる製品の寸法精度、形状精度の低下を無くすことができない。なお、焼結部品の形状精度、寸法精度は、その部品を採用した装置の性能にも影響を及ぼすので、サイジング金型の設計を適正化することは極めて重要である。
特開平5−105906号公報 特許第2874432号公報 日本粉末冶金工業会規格 JPMA P 12−1992(日本粉末冶金工業会発行)
この発明は、サイジング金型で矯正して仕上げる焼結部品の寸法精度を向上させるために、適切な矯正面を有するサイジング金型を作ることができる金型設計方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、焼結体をサイジング加工するときの前記焼結体の被サイジング面のスプリングバック量をサイジング領域の全域において一定とし、その一定のスプリングバック量を金型設計に反映させてサイジング金型を設計する。具体的には、一定のスプリングバック量を製品形状に付加してサイジング金型の矯正面の寸法、形状を求める。
なお、サイジング金型を設計するときのスプリングバック量の不適切な設定に起因した製品の寸法精度低下の問題は、被サイジング面に凹凸が形成されて平面視において中心から被サイジング面の各部までの距離が変化している焼結部品、又は曲面を含んだ被サイジング面を有し、平面視において中心からその被サイジング面の各部までの距離が変化している焼結部品を製造するときに起こる。従って、この発明の方法は、この種の焼結部品を加工するサイジング金型の設計に適用する。
焼結部品の中心から被サイジング面の各部までの距離の変化は、規則的であってもよいし、不規則であってもよい。その変化が規則的に起こる焼結部品の代表的なものとして、焼結歯車、タイミングベルト車、焼結スプロケット、車両のトランスミッションに採用されるクラッチハブなどが挙げられる。また、中心から被サイジング面までの距離の変化が不規則に生じる焼結部品としては、焼結カムなどが考えられる。
この発明の方法で設計されたサイジング金型は、製品(サイジングして仕上げられた製品)の平面視輪郭に対し製品中心方向に一定量の変位をもつ矯正面を有し、その矯正面の輪郭が製品の輪郭よりも一定量(想定したスプリングバック量相当量)小さくなっている。
原料秤量、原料粉末の混合、成形、焼結の工程を経て作られた焼結体を、上記の方法で設計されたサイジング金型を用いてサイジング加工を行うと、寸法誤差の小さい、所望形状の製品(焼結部品)に仕上がる。この発明は、かかる焼結部品の製造方法と、その方法で製造された焼結部品、焼結歯車も併せて提供する。
焼結体をサイジングしたときのスプリングバック量は中心からの距離に左右され、例えば歯車の場合、歯先部と歯底部のスプリングバック量に差が生じ、その差によりサイジング後に歯丈が長くなると従来は考えていたが、実際のスプリングバック量は、サイジング代を一定にしたときには、被サイジング面の表面に対して垂直方向に絶対値で定量変化することがわかった。この発明は焼結体の被サイジング面のスプリングバック量をサイジング領域の全域において一定とし、その一定のスプリングバック量を製品形状に付加してサイジング金型の矯正面を設計するので、サイジング時のスプリングバック量の設定の狂いが小さく抑えられ、製品の寸法精度が向上する。
以下、添付図面の図1〜図5に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。ここでの説明は、先ず、図1に示す焼結歯車(図のそれは外歯の平歯車)1の製造を例に挙げて行う。図1の焼結歯車1は、原料秤量、原料粉末の混合、成形、焼結、サイジングの各工程を経て製造される。焼結歯車の製造では焼結工程とサイジング工程の間に熱処理工程が加わるが、熱処理をせずにサイジングを行う焼結部品もあるので、熱処理工程はこの発明の必須の要件とはならない。
図1の焼結歯車1のサイジングは、中心からの距離が周方向に規則的に変化した外周の歯2についてなされる。その歯2の少なくとも歯先3と歯面4については寸法矯正を行って形状精度、寸法精度を要求範囲に納める必要がある。ここでは歯底5の矯正も併せて行うと考える。
焼結歯車1の製品形状(歯形6の輪郭)の一部を図2に実線で示す。今、サイジング加工でのスプリングバック量をxとする。このスプリングバック量xは、実加工のデータから求めることができる。図2の歯形6よりもスプリングバック量x相当分製品中心O方向に小さい歯形7を画き、その歯形7を、設計しようとするサイジング金型の矯正面となす。求めようとする歯形7は、図3に示すように、歯形7の各部の位置を極座標系で表し、その座標から表面に対して動径方向にx小さい座標を計算して図の歯形7を求めることもできる。
サイジング時のスプリングバック量を一定としてこの発明の方法で設計したサイジング金型は、例えば、焼結歯車用金型の場合、金型の歯丈と製品の歯丈が同じになる。それを以下に式で示す。今、図8において、
製品の歯先径:a
製品の歯底径:b
歯先と歯底の平均径:c=(a+b)/2
サイジング時スプリングバック量:x
製品の歯丈:(a−b)/2
とすると、
サイジング金型の歯先矯正面と歯底矯正面の平均径:c−x
サイジング金型の歯先矯正面径:a−x
サイジング金型の歯底矯正面径:b−x
サイジング金型の歯丈:(サイジング金型の歯先矯正面径−歯底矯正面径)/2
=(a−b)/2
従来法での金型設計によると、サイジング金型の歯丈は、先に述べたとおり、
(a−b)/2−(a−b)/(a+b)×xの式で求まるので、サイジング金型の歯丈が(a−b)/2となるこの発明の方法による金型設計方法によれば、
{(a−b)/(a+b)×x}相当分製品寸法の仕上げ寸法が向上することになる。今、下記の仕様の製品(焼結歯車)を例に挙げると、
製品の歯先径a=60(単位はmm、以下も同じ)
製品の歯底径b=50
歯先と歯底の平均径c=(a+b)/2=55
サイジング時スプリングバック量:x=0.05
製品の歯丈:(a−b)/2=5
精度向上値=(a−b)/(a+b)×x≒0.0045
となり、歯先の寸法精度が約5μm向上する。
また、製品の歯先径a=60
製品の歯底径b=40
歯先と歯底の平均径c=(a+b)/2=50
サイジング時スプリングバック量:x=0.05
製品の歯丈:(a−b)/2=10
の場合には、精度向上値=(a−b)/(a+b)×x=0.010となり、歯先の寸法精度が10μm向上する。つまり、中心から被サイジング面までの距離の変化量(即ち被サイジング面の径差)が大きくなるほど、精度向上の効果が高まる。
−実施例−
従来法で設計したサイジング金型とこの発明の方法で設計したサイジング金型を使用して歯車の歯部のサイジングを行った。サイジング後の歯形の輪郭度の良し悪しを図4に対比して示す。ここで言う輪郭度とは、設計上の歯形6に対する実際の歯形のずれを言う。図4(a)は従来法のサイジング金型で矯正した歯形、図4(b)はこの発明の方法のサイジング金型で矯正した歯形であり、歯の輪郭に沿って描いた斜線枠部分がずれの度合いを表している。この図4にも、この発明の方法による精度向上の効果がよく現れている。
なお、この発明は、被サイジング面を外周に備える焼結部品、内周に備える焼結部品、内外周の双方に備える焼結部品のいずれにも適用できる。外歯歯車、内歯歯車、内径面と外径面の双方にスプラインを有する変速機用のクラッチハブなどは、相手との円滑な噛み合いのために高精度が要求され、このような部品に適用すると特に大きな効果を期待できる。また、この発明は、中心から被サイジング面の各部までの距離が不規則に変化した部品の製造においてもその有効性が発揮される。
図5に、この発明を適用する部品の他の例を示す。図5の焼結部品は焼結カム8であり、中心からサイジングするカム面9(被サイジング面)の各部までの距離が不規則に変化している。その距離変化があるために、従来は、カム面9の各部のスプリングバック量をカムの中心からカム面9(図のそれは内径面と外径面の双方)までの距離に一定比率を掛けて求めていた。これに対し、この発明では、サイジングによるスプリングバック量はカム面9の全域において一定と考え、製品のカム面形状に一定のスプリングバック量を加算してサイジング金型の矯正面の形状と寸法を求める。このようにして設計したサイジング金型で焼結カムをサイジングして仕上げると、カム面の形状精度、位置精度が従来よりもよくなる。また、この発明の製造方法によるサイジングにより、緻密化された層の幅(厚み)が、従来のサイジングによって緻密化された層の幅に比べてサイジング領域の全域において一定化された焼結部品が得られる。
この発明の方法を適用して製造する焼結部品の一例を示す側面図 製品の歯形とこの発明によるサイジング金型の歯形(矯正面の形状)の一部を拡大して示す図 サイジング金型の歯形設計の一例を示す図 (a)従来法のサイジング金型で矯正した歯形の輪郭度を示す図、(b)この発明の方法のサイジング金型で矯正した歯形の輪郭度を示す図 この発明の方法を適用して製造する焼結部品の他の例を示す側面図 サイジング代とスプリングバック量の説明図 製品の歯形と従来法によるサイジング金型の歯形(矯正面の形状)の一部を拡大して示す図 歯車の歯先径と歯底径と歯先と歯底の平均径の説明図
符号の説明
1 焼結歯車
2 歯
3 歯先
4 歯面
5 歯底
6 製品の歯形
7 サイジング金型の歯形
8 焼結カム
9 カム面
11 被サイジング面
12 矯正面

Claims (5)

  1. 被サイジング面に凹凸が形成されて平面視において中心から被サイジング面の各部までの距離が変化している焼結部品、又は曲面を含んだ被サイジング面を有し、平面視において中心からその被サイジング面の各部までの距離が変化している焼結部品の製造において、圧粉体を焼結して得られる焼結体をサイジング加工するときの前記焼結体の被サイジング面のスプリングバック量をサイジング領域の全域において一定とし、その一定のスプリングバック量を製品形状に付加してサイジング金型を設計する焼結部品用サイジング金型の設計方法。
  2. 請求項1に記載の方法で設計されたサイジング金型であって、製品の平面視輪郭に対して製品中心方向に一定量の変位をもつ矯正面を有し、その矯正面の輪郭が製品の平面視輪郭よりも一定量小さいサイジング金型。
  3. 原料秤量、原料粉末の混合、成形、焼結の工程を経て作られた焼結体を請求項2に記載のサイジング金型でサイジング加工して所望形状の製品に仕上げる焼結部品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の方法で製造された焼結部品。
  5. 請求項3に記載の方法で製造された焼結歯車。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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