JP2007216181A - バラスト水処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置5と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留槽7と、該滞留槽7の下流側に設けられて滞留槽7にて所定時間滞留した海水に過酸化水素を供給する過酸化水素供給装置8と、を備えた。
【選択図】 図1
Description
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によりバラスト水の注排水が行われると、バラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
そして、特許文献1に記載の方法においては、バラスト水を排出する際に曝気装置によりバラスト水に空気を吹き込んで残留塩素を無害化するようにしている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法のうち塩素系殺菌剤を添加する方法では、バラスト水に塩素系殺菌剤を添加して有害藻類のシストを死滅させとしてもその後、残留塩素がバラスト水中の有機物と反応して有害なトリハロメタンが生成する。ところが、特許文献1においてはこのトリハロメタンに関しては何らの考慮もされていない。トリハロメタンは曝気装置によりバラスト水に空気を吹き込んでも、極一部は気相に移行するものの大部分は残留して無害化されないため、バラスト水とともに排出され環境に悪影響を与えるという問題がある。
また、過酸化水素を添加する方法の場合には、過酸化水素によってバラスト水中の細菌類をIMOバラスト水処理基準を充足する程度まで死滅させることは困難であるという問題がある。
図2に示すグラフにおいては、塩素殺菌剤を有効塩素の重量濃度が5mg/l、10mg/l、50mg/l、100mg/lとなるように注入した4つの場合について測定したものが示されているが、図2から分かるようにトリハロメタンの生成量は塩素殺菌剤の供給量が異なってもほとんど差がない。
他方、塩素殺菌剤によって細菌類と50μm未満のプランクトンを短時間でほとんど死滅させることができるが、50μm以上のプランクトンも死滅させるためには、有効塩素をある程度の時間海水中に残留させなければならない。しかし、50μm以上のプランクトンを死滅させるために、有効塩素を長時間海水中に残留させると、トリハロメタンの生成量が増加してしまう。
すなわち、海水に塩素殺菌剤を供給後、細菌類を死滅させるのに十分な時間で、かつトリハロメタン生成を抑制できるような時間、有効塩素を残留させた海水を滞留させて、その後、残留塩素を還元処理するために過酸化水素を供給して、残留塩素を還元し失効させてトリハロメタンの生成を抑制する。
Cl2 +2e- → 2Cl-
H2O2 → 2H+ + O2 +2e-
Cl2 + H2O2 →2H+ + 2Cl- + O2
残留遊離塩素に対して、残留遊離塩素の重量濃度の0.5倍量の過酸化水素が反応して還元して失効させて、トリハロメタンの生成を抑制する。
過酸化水素の細菌類の殺菌作用は塩素殺菌剤に比べて穏和であるが、トリハロメタン生成を抑制できる条件で塩素殺菌剤による細菌類の殺菌を行い、塩素殺菌剤処理だけでは残存する50μm以上のプランクトンを過酸化水素により死滅させるというように、塩素殺菌剤処理の後に過酸化水素処理を行うという複合処理によって細菌類とプランクトンの死滅処理を行うことにより、IMOバラスト水処理基準を充足できる処理が可能となり、トリハロメタンの生成も抑制できる。
さらに、死滅処理を行った海水をバラストタンクに送水して、バラスト水中に過酸化水素を残存させて貯留することにより、IMOバラスト水処理基準を充足するように維持することができる。
なお、塩素殺菌剤としては次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素ガスが用いられ、いずれも海水中で次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの形態で有効塩素として存在する。
また、過酸化水素としては、過酸化水素水が用いられる。
この点、図2のグラフに示されるように、塩素殺菌剤を供給した後の経過時間を10分以下にすれば、すなわち滞留時間を10分以下にすれば、生成されるトリハロメタン濃度は日本の飲料水基準である0.1mg/l以下である。よって、トリハロメタン生成を抑制するという観点からは、滞留時間を10分以下にするのが好ましい。
IMOのバラスト水処理基準では、細菌残存数は、コレラ菌については100ml中に1cfu未満、大腸菌については100ml中に250cfu未満、腸球菌については100ml中に100cfu未満となることが求められている。
そこで、この基準を満たすために必要な海水中の残留塩素濃度と、残留有効塩素の接触時間との関係を求めた。
また、目標細菌残存率が10-5の場合、残留塩素濃度を100mg/lとすれば、接触時間は0.05分で足りる。なお、接触時間を10分とすると、必要な残留塩素濃度は0.4mg/lとなる。
以上のように、接触時間を0.05〜10分とすれば、処理対象とする海水に応じて塩素殺菌剤の残留有効塩素濃度を0.1〜100mg/lの範囲で適宜調整して、トリハロメタンの発生を抑制して細菌類を死滅させることができる。
したがって、接触時間を0.05〜10分とすることが可能になるように、塩素殺菌剤を供給してから過酸化水素を供給するまでの時間、すなわち滞留時間を0.05〜10分とする滞留が可能である滞留器を備えることにより、細菌類を処理基準にまで死滅させることができる。
ろ過装置を設けることによって、ろ過装置によって海水中の動物性プランクトン等比較的大型の水生生物を捕捉して除去できるため、ろ過装置を設けない場合に比べて塩素殺菌剤の供給量を低減でき、また過酸化水素の供給量を低減でき、さらに滞留器を小さくすることができる。
なお、ろ過装置としては、目開きが10〜200μmのものを用いるのが好ましく、特に目開き20〜35μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、特に好ましい。
ここに言う滞留時間とは、海水に塩素殺菌剤を供給してから過酸化水素を供給するまでの時間をいう。
なお、塩素殺菌剤を供給して海水中の有効塩素量の重量濃度が0.1mg/lより小さいと有効塩素が水中の還元性物質、有機物と反応して残留せず、細菌類やプランクトンを死滅できないし、100mg/lより大きいと腐食の問題や塩素殺菌剤の費用や塩素殺菌剤貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じる。
なお、海水中の過酸化水素の重量濃度が0.1mg/lより小さいと残留有効塩素を十分に還元することができず、またプランクトンを死滅できないし、200mg/lより大きいとバラスト水を排出する際に供給する過酸化水素分解剤量が多くなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じる。
以下、図面を用いて、本発明に係るバラスト水処理装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係るバラスト水の処理装置を示す図である。本実施の形態に係るバラスト水処理装置は、図1に示すように、海水を船内に取り込むための海水取水ライン1、海水取水ライン1によって取水された海水中の粗大物を除去する粗ろ過装置2、海水を取り込むため、あるいは後述のバラストタンク11のバラスト水を海洋に排出するためのポンプ3、粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するろ過装置4、ろ過装置4でろ過された海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置5、ろ過装置4でろ過されたろ過水と塩素殺菌剤供給装置5から供給される塩素殺菌剤の供給を受けてろ過水に塩素殺菌剤を拡散させる第1の拡散器6、塩素殺菌剤を添加された海水を所定時間滞留させる滞留槽7、滞留槽7から導出された海水に過酸化水素を供給する過酸化水素供給装置8、滞留槽7から導出された海水と過酸化水素供給装置8から供給される過酸化水素の供給を受けて前記海水に過酸化水素を拡散させる第2の拡散器9、過酸化水素が添加された処理水を後述のバラストタンク11に送水する処理水送水管10、処理水送水管10から送水される処理水を貯留するバラストタンク11、バラストタンク11に貯留されたバラスト水に対してその排水時に過酸化水素分解剤を供給する過酸化水素分解剤供給装置13、排水されるバラスト水と過酸化水素分解剤の供給を受けて前記バラスト水に過酸化水素分解剤を拡散させる第3の拡散器15、を備えている。
また、配管17には開閉弁25が、配管19には開閉弁27が、配管21には開閉弁29が、配管23には開閉弁31が、それぞれ設けられている。そして、これら開閉弁25、27、29、31の開閉操作によって、海水をバラストタンク11へ給水する給水ラインとバラストタンク11のバラスト水を海に排水する排水ラインが構成される。
以下、各装置をさらに詳細に説明する。
粗ろ過装置2は、船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から取水され、ポンプ3によって海水取水ライン1を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。
粗ろ過装置2としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
ろ過装置4は粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、目開き10〜200μmのものを用いる。
目開きを10〜200μmにしたのは動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆流洗浄頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。逆に言えば、目開きが200μmより大きいと動物プランクトン、植物プランクトンの捕捉率が著しく低くなるし、目開きが10μmより小さいと逆流洗浄頻度が多くなり寄港地でのバラスト水処理時間が長くなるので好ましくない。特に目開き20〜35μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
また、ろ過装置4は、ろ過面積1m2あたり1日200m3以上のろ過速度が得られることが望ましい。ただし、ろ過モジュールの集積によって、より小型化が可能な場合には特に限定しない。
ノッチワイヤフィルタとは、ノッチ(突起)を設けたワイヤを枠体に巻きつけてノッチによりワイヤ同士の間隔を保持してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このノッチワイヤフィルタの具体例としては、神奈川機器工業製ノッチワイヤフィルタがある。
このノッチワイヤフィルタをろ過エレメントとして複数備え、逆洗手段を備えたものが特開2001−170416に開示されている。ろ過エレメント集合基板や、それぞれのろ過エレメントに小型超音波振動子を取り付け、逆洗時に超音波振動を付加することにより、逆洗浄効果を増大させ、逆洗浄の間隔を延ばしてろ過効率を高めることができる。
ウェッジワイヤフィルタとは、断面が三角形のワイヤを枠体に巻きつけてワイヤ同士の間隔を調整してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このウェッジワイヤフィルタの具体一例としては、東洋スクリーン工業製ウェッジワイヤフィルタがある。
なお、積層ディスク型ろ過器においては、逆洗時にはディスクの圧締を解除して、間隙を大きくしてろ過残渣を除去する。この積層ディスク型ろ過器の具体例としては、Arkal Filtration Systems製のSpin Klin Filter Systemsがる。
塩素殺菌剤供給装置5はろ過装置4によってろ過されて第1の拡散器6に供給される海水に細菌類を死滅させる塩素殺菌剤を供給するものである。供給する塩素殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素ガスが使用できる。
その理由は、塩素殺菌剤を供給して海水中の有効塩素量の重量濃度が0.1mg/lより小さいと有効塩素が水中の還元性物質、有機物と反応して残留せず、細菌類やプランクトンを死滅できないし、100mg/lより大きいとトリハロメタン生成量が増大し、また腐食の問題や塩素殺菌剤の費用や塩素殺菌剤貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じるからである。
塩素殺菌剤は第1の拡散器6の上流側および/または第1の拡散器6に供給される。
第1の拡散器6は、ろ過装置4でろ過されたろ過水と塩素殺菌剤供給装置5から供給される塩素殺菌剤の供給を受けて海水(ろ過水)に塩素殺菌剤を拡散させる。
第1の拡散器6として、ベンチュリ管を用いることが好ましい。
第1の拡散器6としてベンチュリ管を用いた場合には、ベンチュリ管は塩素殺菌剤を海水中に拡散させると共に、ろ過装置4を通過したプランクトンに対してキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅する作用を発揮することができる。
ベンチュリ管は、管路断面積が徐々に小さくなる絞り部、最小断面積部であるのど部、徐々に管路断面積が広がる広がり部(ディフューザ部)からなる。のど部での流速の急上昇に伴う静圧の急激な低下によりキャビテーション気泡が発生し、広がり部での流速の低下に伴う急激な圧力上昇により成長したキャビテーション気泡が急激に崩壊するようなキャビテーションが発生する。
また、海水中の水生生物はキャビテーション気泡が崩壊することによる衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルの作用などにより、損傷を与えられるか破壊されて殺滅される。このベンチュリ管のキャビテーションによれば、特に、比較的固い殻を有する原虫類、動物プランクトンの外殻を破壊し、塩素殺菌剤や滞留槽7から導出された海水に供給する過酸化水素の浸透を促進して死滅させることができる。
この理由は以下の通りである。海水を取水してバラストタンクに通水する配管の途中にバラスト水処理装置を設置した場合、配管内の海水の流速がベンチュリ管入り口では通常2〜3m/sであるが、ベンチュリ管のど部の流速が10m/secより小さいと、のど部での流速の上昇比率が十分でなくこれに伴う静圧の急激な低下が十分でないため、大気圧下においてもキャビテーションが発生しない。
一方、ベンチュリ管のど部の流速が40m/sより大きいとキャビテーション現象が過剰に発生しベンチュリ管通過に伴う圧力損失が過大となり送水のために消費されるエネルギーが過大となるため、ポンプ動力が過大となり高コストとなる。
この理由は、損失水頭が5mより小さいとキャビテーションを発生させる事が出来ず、40mより大きいと船舶に備えられているバラスト水ポンプとして用いられている大流量ポンプでは対応できなくなり不具合が生じるからである。
塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給する利点としては以下の点が挙げられる。塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給した場合、塩素殺菌剤がキャビテーションが発生するベンチュリ管ののど部に達するまでに塩素殺菌剤を流路内において海水にある程度拡散させておくことができる。そして、ある程度拡散した塩素殺菌剤がベンチュリ管ののど部に達したときにキャビテーションにより塩素殺菌剤の拡散、混合をさらに進めることができる。このため、塩素殺菌剤の細菌類への浸透をより促進することが可能となり、塩素殺菌剤の殺滅効果をより促進できる。
塩素殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給するためには、ベンチュリ管よりも上流側の流路内に塩素殺菌剤の注入口を設けておけばよい。
なお、塩素殺菌剤をベンチュリ管ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管のエジェクタ作用により自吸されるので塩素殺菌剤の供給ポンプが不要となる。
滞留槽7は、塩素殺菌剤から発生する塩素を、細菌類に所定時間接触させるために、塩素殺菌剤が添加され拡散された海水を滞留させるものである。所定時間とは、細菌類が死滅するのに十分な時間で、かつ、トリハロメタンの生成を抑制できる時間である。このように、過酸化水素供給までの所定時間海水が滞留するようにするために、滞留槽7の寸法や形状を定め、また所定の速度で海水を流すようにする。
例えば、槽内に複数の仕切りを設けることによって長流路を形成して槽内での滞留時間を確保するようにしてもよい。
あるいは、滞留槽7は単なる貯留槽から構成し、海水を貯留後所定時間が経過すると排出ゲートを開ける若しくは排水ポンプを稼動させて排出するようなものでもよい。また、海水を送水する配管を滞留槽として用いることができるように送水を制御してもよい。
また、滞留槽7はバラストタンク11の一部を改造したものであってもよい。バラストタンク11の一部を滞留槽7として用いることにより、滞留槽7を新たに設ける必要がなく、既存船舶への適用が容易であり、設備費を低減できる。
過酸化水素供給装置8は、塩素殺菌剤が添加され滞留槽7で所定時間滞留した海水に過酸化水素を供給して海水中に残存する有効塩素を還元して失効させ、トリハロメタンの発生を抑制するものである。
過酸化水素を供給するために、図1に示すように、滞留槽7から海水を排出する流路内に第2の拡散器9を設けてこれに供給するようにするのが好ましい。第2の拡散器9は、滞留槽7から導出された海水と過酸化水素供給装置8から供給される過酸化水素の供給を受けて前記海水に過酸化水素を拡散させる。
第2の拡散器9としては、前述した第1の拡散器6と同様のものを用いると拡散効果が大きく、またキャビテーションによるプランクトンの殺滅効果もあるため好ましい。
なお、供給する過酸化水素としては過酸化水素水を用いる。
過酸化水素分解剤供給装置13は、バラストタンク11に貯留されたバラスト水に対してその排水時に過酸化水素分解剤を供給するものである。
バラスト水に対して過酸化水素分解剤を供給することにより、バラストタンク11に貯留された海水中に残留する過酸化水素を分解し、海洋に排出しても影響を及ぼさないようにする。過酸化水素分解剤としては、カタラーゼ、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど過酸化水素を還元分解するものが用いられる。
過酸化水素分解剤を供給するために、図1に示すように、バラストタンク11から海水を排出する流路内に第3の拡散器15を設けてこれに供給するようにするのが好ましい。第3の拡散器15は、バラストタンク11から導出された海水と過酸化水素分解剤供給装置13から供給される過酸化水素分解剤の供給を受けて前記海水に過酸化水素分解剤を拡散させる。
第3の拡散器15としては、前述した第1の拡散器6と同様のものを用いると拡散効果が大きく好ましい。
開閉弁25、27を開、開閉弁29、31を閉にする。この状態で、ポンプ3を稼動することによって、海水取水ライン1から海水が船内に取りこまれる。その際、まず粗ろ過装置2によって海水中に存在する大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物が除去される。
粗大物が除去された海水はろ過装置4に供給され、ろ過装置4の目開きに応じた大きさの動物性プランクトン、植物性プランクトン等が除去される。
粗ろ過装置2及びろ過装置4で捕捉された水生生物等は、粗ろ過装置2及びろ過装置4のフィルタ等を逆洗することにより洗い流されて海に戻される。ろ過装置4で捕捉された水生生物等を海に戻しても同一の海域なので生態系に悪影響はない。つまり、この例ではバラスト水を積み込む際に処理をしているので、粗ろ過装置2及びろ過装置4の逆洗水をそのまま放流できるのである。
ベンチュリ管において、上述したメカニズムによりキャビテーションが発生して、塩素殺菌剤の海水中への拡散が促進され細菌類の殺滅効果が増進される。さらに、キャビテーションにより海水中の水生生物に衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルが作用し、プランクトンに損傷を与えるかあるいはプランクトンを破壊して殺滅する。
その後、海水は処理水送水管10を通じてバラストタンク11に貯留される。バラストタンク11内に貯留されたバラスト水中には過酸化水素が残留しており、IMOバラスト水処理基準が維持される。
開閉弁25、27を閉、開閉弁29、31を開にする。この状態で、ポンプ3を稼動することによって、バラストタンク11に貯留されていたバラスト水が配管21、17、19、23を介して海に排出される。
バラストタンク11から排出されるバラスト水には過酸化水素分解剤供給装置13から過酸化水素分解剤が供給され、第3の拡散器15によって過酸化水素分解剤が拡散混合され、バラスト水中に残留する過酸化水素が分解され、海に排出される。
ベンチュリ管の下流側にも塩素殺菌剤を供給する場合には以下の効果がある。すなわち、キャビテーションによりプランクトン等に付着している細菌類が剥されるため、ベンチュリ管の下流側で塩素殺菌剤を供給することで、この剥された細菌類に塩素殺菌剤を作用させることで細菌類の殺滅効果を促進できる。
また、キャビテーションにより外殻に損傷を負いながら死滅しないプランクトンの体内に塩素殺菌剤を浸透させることができ塩素殺菌剤の殺滅効果を促進できる。このため、塩素殺菌剤耐性の強い種類に対しても殺滅することができ、塩素殺菌剤を単独で使用する場合と比較して少ない塩素殺菌剤添加量で殺滅することが可能である。
また、過酸化水素を供給するときにも、ベンチュリ管の下流側にも供給することにより同様の効果を奏することができる。
海水をバラストタンク11に積み込む際には処理をしないで、バラストタンク11から排出する際に処理する場合には以下のようにすればよい。
バラストタンクから未処理のバラスト水をろ過装置4に供給して、以降は上記説明と同様に塩素殺菌剤の供給から過酸化水素の供給までの処理を行い、さらに過酸化水素分解剤を供給する処理を行う。もっとも、この場合には、過酸化水素を残留させてバラストタンク内のバラスト水が処理基準を維持するようにする必要がないので、過酸化水素の供給量は、残留塩素を還元しプランクトンを死滅させるのに十分な供給量でよい。
そこで、塩素殺菌剤供給装置5から供給する塩素殺菌剤の量を制御する塩素殺菌剤供給量制御手段を設けてもよい。塩素殺菌剤供給量制御手段の一例として、塩素殺菌剤が供給された海水の酸化還元電位を測定して、該酸化還元電位の測定値に基づいて塩素殺菌剤供給量を調整する塩素殺菌剤供給量制御装置を備えるようにする。
このように、海水または海水中の還元性物質の量に応じて塩素殺菌剤供給量を調整することにより細菌類を確実に死滅させることができると共に過剰な塩素殺菌剤供給を防止できる。
これにより、次亜塩素酸ナトリウムの分解を防止でき、次亜塩素酸ナトリウムの消費量を抑制してバラスト水の処理費用を抑制することができる。
温度上昇防止手段の具体例として、例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液の貯留槽を断熱して航行中に貯留槽内の次亜塩素酸ナトリウムの温度が上昇するのを防止する貯留槽断熱装置がある。
また、温度上昇防止手段の他の例として、貯留槽に設けられて貯留槽内の次亜塩素酸ナトリウム溶液を冷却する冷却熱交換器が挙げられる。冷却熱交換器には冷媒として冷却水を用いることもできるが、冷媒として海水を用いるようにすれば、冷却のための運転費を抑制できる。
塩素殺菌剤が供給される海水に酸を供給して海水のpHを5〜7にすると、塩素殺菌剤を供給した海水中の遊離残留塩素の形態が次亜塩素酸(HOCl)がほとんどとなり、殺菌効力が高いため好ましい。海水のpHが5より低いと遊離残留塩素の形態は次亜塩素酸とCl2となり、pHが7より高いと遊離残留塩素の形態は次亜塩素酸と次亜塩素酸イオン(OCl-)となり、いずれも殺菌効力が他にくらべて100倍高い次亜塩素酸の割合が低くなり、殺菌効力が低下する。また、海水のpHを5〜7にすると、トリハロメタンの生成を抑制する効果もある。
なお、供給する酸としては塩酸または硫酸を用いる。
処理前の海水原水中には50μm以上の動物プランクトンが1.7×105個/m3、大腸菌が1.2×105cfu/100ml生息しているが、上記の処理後には動物プランクトンが4個/m3に、大腸菌が検出限界の1cfu/100ml未満に減少し、IMOバラスト水基準を満たす処理が行えた。
また、トリハロメタン濃度は滞留槽出口の海水中では0.002mg/l程度と極めて低濃度であり、過酸化水素供給後5時間経過した海水中では0.002mg/lと極めて低濃度のまま維持されており、環境への影響が問題ないことを確認できた。
Claims (8)
- 船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留器と、該滞留器の下流側に設けられて滞留器にて所定時間滞留した海水に過酸化水素を供給する過酸化水素供給装置と、過酸化水素が供給された海水をバラストタンクに送水する送水装置と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理装置。
- 過酸化水素が供給されバラストタンクに貯留された海水を海洋に排出する前に又は排出するときに、前記海水に過酸化水素分解剤を供給する過酸化水素分解剤供給装置と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
- 滞留器は、塩素殺菌剤を供給してから過酸化水素を供給するまでの時間を0.05〜10分とする滞留が可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のバラスト水処理装置。
- 滞留器は、バラストタンク内に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバラスト水処理装置。
- 船舶のバラストタンクに注水する海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給工程と、塩素殺菌剤が供給された海水を所定時間滞留させる滞留工程と、所定時間滞留された海水に過酸化水素を供給する過酸化水素供給工程と、を備えたことを特徴とするバラスト水処理方法。
- 滞留工程における滞留時間を0.05〜10分に設定したことを特徴とする請求項5に記載のバラスト水処理方法。
- 海水中の有効塩素量の重量濃度を0.1〜100mg/lの範囲内で適宜調整して塩素殺菌剤を供給することを特徴とする請求項5または6に記載のバラスト水処理方法。
- 海水中の過酸化水素の重量濃度を0.1〜200mg/lとするように過酸化水素を供給することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のバラスト水処理方法。
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