JP2007214509A - 積層型電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】素体の方向を識別するためのマークを備える場合でも、誘導係数の低下を抑制することができる積層型電子部品を提供すること。
【解決手段】サージ吸収素子は、複数の機能層(インダクタ層、バリスタ層及び保護層)が積層された素体1と、素体1内に配された第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13と、素体1内に配される方向識別マーク55とを備えている。第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、そのコイル軸心がインダクタ層の積層方向に対して平行となるように、素体1内に配されている。方向識別マーク55は、複数の機能層(インダクタ層及び保護層)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置している。
【選択図】図3
【解決手段】サージ吸収素子は、複数の機能層(インダクタ層、バリスタ層及び保護層)が積層された素体1と、素体1内に配された第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13と、素体1内に配される方向識別マーク55とを備えている。第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、そのコイル軸心がインダクタ層の積層方向に対して平行となるように、素体1内に配されている。方向識別マーク55は、複数の機能層(インダクタ層及び保護層)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置している。
【選択図】図3
Description
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
この種の積層型電子部品として、複数の機能層が積層された素体と、素体内に配されたコイル導体と、素体に配された方向認識マークと、を備えるものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−353620号公報
しかしながら、特許文献1に記載された積層型電子部品には、次のような問題があった。すなわち、方向認識マークが、機能層の積層方向から見てコイル導体を跨ぐように位置していることから、コイル導体に生じる磁束を遮ることとなり、誘導係数(インダクタンス)が低下してしまう。
本発明は、素体の方向を識別するためのマークを備える場合でも、誘導係数の低下を抑制することができる積層型電子部品を提供することを課題とする。
本発明に係る積層型電子部品は、複数の機能層が積層された素体と、素体内に、軸心が複数の機能層の積層方向に対して平行となるように配されたコイル導体と、素体に配された、素体の方向を識別するためのマークと、を備え、マークが、複数の機能層の積層方向から見てコイル導体の内側に位置していることを特徴とする。
本発明に係る積層型電子部品では、素体の方向を識別するためのマークが、複数の機能層の積層方向から見てコイル導体の内側に位置しているので、コイル導体に生じる磁束を遮るのが抑制されることとなる。この結果、誘導係数の低下を抑制することができる。
また、本発明に係る積層型電子部品は、複数の機能層が積層された素体と、素体内に、軸心が複数の機能層の積層方向に対して平行となるように配されたコイル導体と、素体内に、複数の機能層の積層方向に対向するように配された複数の内部電極と、素体に配された、素体の方向を識別するためのマークと、を備え、素体が、コイル導体が配される第1の領域と複数の内部電極が配される第2の領域とを、複数の機能層の積層方向に沿って有しており、第1の領域が、素体の複数の外表面のうち複数の機能層の積層方向に対して垂直な一つの外表面を含み、マークが、第1の領域に配されると共に、複数の機能層の積層方向から見てコイル導体の内側に位置していることを特徴とする。
本発明に係る積層型電子部品では、素体の方向を識別するためのマークが、複数の機能層の積層方向から見てコイル導体の内側に位置しているので、コイル導体に生じる磁束を遮るのが抑制されることとなる。この結果、誘導係数の低下を抑制することができる。
ところで、この種の積層型電子部品は、特許文献1にも記載されているように、素体の方向を識別するためのマークを認識することにより基板に実装されるため、本発明に係る積層型電子部品では、基板に実装した状態では、マークが配された第1の領域は基板から比較的離れて位置することとなる。このため、基板に設けられているグランドパターン等によりコイル導体に生じる磁束を妨げられるのが抑制されることとなり、実装状態において誘導係数が低下するのを抑制することができる。
好ましくは、複数の機能層のうち第2の領域となる機能層が、電圧非直線特性を発現する材料からなる。
好ましくは、上記マークが、素体内に配されている。この場合、マークを保護することができる。
好ましくは、マークとコイル導体との間隔が、複数の機能層の積層方向から見て、80μm以上に設定されている。この場合、素体の方向を識別するためのマークがコイル導体に生じる磁束を遮るのを確実に抑制することができる。
好ましくは、マークとコイル導体との間隔が、複数の機能層の積層方向に垂直な方向から見て、80μm以上に設定されている。この場合、素体の方向を識別するためのマークがコイル導体に生じる磁束を遮るのを確実に抑制することができる。
好ましくは、マークとコイル導体との間の最短の間隔が、80μm以上に設定されている。この場合、素体の方向を識別するためのマークがコイル導体に生じる磁束を遮るのを確実に抑制することができる。
好ましくは、複数の機能層が、ZnOを主成分とする材料からなる。
好ましくは、マークが、Pd、Ag−Pd合金、Ag、あるいはPtからなる。この場合、マークの光反射率が高くなり、マークの認識が容易となる。
本発明によれば、素体の方向を識別するためのマークを備える場合でも、誘導係数の低下を抑制することができる積層型電子部品を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2に基づいて、第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは各図の上下方向に対応したものである。
まず、図1及び図2に基づいて、第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは各図の上下方向に対応したものである。
サージ吸収素子SA1は、図1に示されるように、素体1、第1の端子電極3、第2の
端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9を備えている。素体1は、直方体形状を
呈しており、6つの外表面を有している。6つの外表面は、相対向する一対の主面と、相対向する一対の端面と、相対向する一対の側面とからなる。一対の端面と一対の側面とは、一対の主面間を連結するように伸びている。素体1は、例えば、長さが1mm程度に設定され、幅が0.5mm程度に設定され、高さが0.3mm程度に設定されている。
端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9を備えている。素体1は、直方体形状を
呈しており、6つの外表面を有している。6つの外表面は、相対向する一対の主面と、相対向する一対の端面と、相対向する一対の側面とからなる。一対の端面と一対の側面とは、一対の主面間を連結するように伸びている。素体1は、例えば、長さが1mm程度に設定され、幅が0.5mm程度に設定され、高さが0.3mm程度に設定されている。
第1の端子電極3と第2の端子電極5とは、素体1の長手方向の端部にそれぞれ形成されている。第3の端子電極7と外部導体9とは、素体1の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成されている。第1の端子電極3は、サージ吸収素子SA1の入力端子電極として機能する。第2の端子電極5は、サージ吸収素子SA1の出力端子電極として機能する。第3の端子電極7は、サージ吸収素子SA1のグランド端子電極として機能する。
素体1は、インダクタ領域1aと、サージ吸収領域1bとを有し、これらは積層されている。素体1は、インダクタ領域1aとサージ吸収領域1bとを、後述するインダクタ層15,17及びバリスタ層25,27の積層方向に沿って有することとなる。
インダクタ領域1aは、図2に示されるように、インダクタ部10を有している。インダクタ部10は、相互に極性反転結合される第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13を含んでいる。インダクタ部10は、第1のコイル導体11が形成されたインダクタ層15と第2のコイル導体13が形成されたインダクタ層17とが積層されることにより構成されている。
第1のコイル導体11の一端は、素体1の一方の端面(第1の端子電極3が形成された端面)に露出するように、インダクタ層15の一辺に引き出されている。第1のコイル導体11の一端は、第1の端子電極3に接続されている。第1のコイル導体11の他端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように、インダクタ層15の一辺にそれぞれ引き出されている。
第2のコイル導体13の一端は、素体1の他方の端面(第2の端子電極5が形成された端面)に露出するように、インダクタ層17の一辺に引き出されている。第2のコイル導体13の一端は、第2の端子電極5に接続されている。第2の端子電極5の他端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)、すなわち第1のコイル導体11の他端が露出する側面に露出するように、インダクタ層17の一辺にそれぞれ引き出されている。
第1のコイル導体11の他端と第2のコイル導体13の他端とは、素体1の側面に形成された外部導体9に接続されている。第1のコイル導体11の他端と第2のコイル導体13の他端とは外部導体9を通して電気的に接続されることとなる。
第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、インダクタ層15,17上に位置しており、インダクタ層15,17に平行な面内に位置することとなる。したがって、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、そのコイル軸心がインダクタ層15,17の積層方向に対して平行となるように、素体1内に配されることとなる。
第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aをそれぞれ含んでいる。第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、領域11a,13aにおいて容量結合している。第1のコイル導体11と第2のコイル導体13は、上記のような外部導体9ではなく、素体1内部に形成されたスルーホール導体等によって接続されてもよい。第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13に含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金からなることが好ましい。
各インダクタ層15,17は、電気絶縁性を有する機能層であって、ZnOを主成分とするセラミック材料から構成されている。インダクタ層15,17を構成するセラミック材料は、ZnOのほか、添加物として希土類(例えば、Pr)、K、Na、Cs、Rb等の金属元素を含有していてもよい。なかでも、希土類を添加すると特に好ましい。希土類の添加により、インダクタ層15,17と後述するバリスタ層25,27との体積変化率の差を容易に低減することができる。本実施形態では、インダクタ層15,17は、希土類としてPrを含有している。
インダクタ層15,17には、後述するサージ吸収部20との接合性の向上を目的として、Cr、CaやSiが更に含まれていてもよい。インダクタ層15,17中に含まれるこれらの金属元素は、金属単体や酸化物等の種々の形態で存在することができる。インダクタ層15,17に含まれる添加物の好適な含有量は、当該インダクタ層15,17に含まれるZnOの総量中、0.02mol%以上2mol%以下であると好ましい。これらの金属元素の含有量は、例えば、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置(ICP)を用いて測定することができる。
各インダクタ層15,17は、後述するバリスタ層25,27に含まれるCoを実質的に含有していない。ここで、「実質的に含有していない」状態とは、これらの元素を、インダクタ層15,17を形成する際に原料として意図的に含有させなかった場合の状態をいうものとする。例えば、サージ吸収部20からインダクタ部10への拡散等によって意図せずにこれらの元素が含まれる場合は、「実質的に含有していない」状態に該当する。なお、インダクタ層15,17は、上述した条件を満たす限り、更なる特性の向上等を目的として、その他の金属元素等を更に含んでいてもよい。
サージ吸収領域1bは、サージ吸収部20を有している。サージ吸収部20は、第1の内部電極21と第2の内部電極23とを含んでいる。サージ吸収部20は、第1の内部電極21が配されたバリスタ層25と第2の内部電極23が配されたバリスタ層27とが積層されることにより構成されている。
第1の内部電極21は、ストレートライン型のパターンを有しており、バリスタ層25の短手方向に沿って伸びている。第1の内部電極21の一端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように、バリスタ層25の一辺に引き出されている。第1の内部電極21の他端は、素体1の側面(第3の端子電極7が形成された側面)に露出しておらず、当該側面から引き込まれた位置にある。第1の内部電極21の一端は、素体1の側面に形成された外部導体9に接続されている。第1のコイル導体11の他端、第2のコイル導体13の他端及び第1の内部電極21の一端は外部導体9を通して電気的に接続されることとなる。
第2の内部電極23は、ストレートライン型のパターンを有しており、バリスタ層27の短手方向に沿って伸びている。第2の内部電極23の一端は、素体1の側面(第3の端子電極7が形成された側面)に露出するように、バリスタ層27の一辺に引き出されている。第2の内部電極23の他端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出しておらず、当該側面から引き込まれた位置にある。第2の内部電極23の一端は、素体1の側面に形成された第3の端子電極7に接続されている。
第1の内部電極21と第2の内部電極23とは、バリスタ層25,27の積層方向から見て相互に重なり合う領域21a,23aをそれぞれ含んでいる。したがって、バリスタ層25,27における第1の内部電極21と第2の内部電極23とに重なる領域21a,23aがバリスタ特性を発現する領域として機能する。第1の内部電極21及び第2の内部電極23に含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金からなることが好ましい。
各バリスタ層25,27は、電圧非直線特性(バリスタ特性)を発現する機能層であって、ZnOを主成分とするセラミック材料(半導体セラミック)から構成されている。このセラミック材料中には、添加物として、希土類及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Coが更に含まれている。
バリスタ層25,27は、希土類に加えてCoを含むことから、優れた電圧非直線特性、すなわちバリスタ特性を有するものとなるほか、高い誘電率(ε)を有するものとなる。逆に言えば、上述したインダクタ層15,17は、Coを含まないことから、バリスタ特性を有さず、また誘電率が小さく、しかも抵抗率が高いため、インダクタ部10の構成材料として極めて好適な特性を有している。バリスタ層25,27を構成するセラミック材料は、添加物としてAlを更に含んでいてもよい。Alを含む場合、バリスタ層25,27におけるZnO粒子は低抵抗となる。添加物として含まれる希土類は、Prが好ましく、本実施形態では、バリスタ層25,27は、希土類としてPrを含有している。
これらの添加物としての金属元素は、バリスタ層25,27において、金属単体や酸化物等の形態で存在することができる。なお、バリスタ層25,27は、更なる特性の向上を目的として、添加物として上述したもの以外の金属元素等(例えば、Cr、Ca、Si、K等)を更に含有していてもよい。
インダクタ領域1aは、複数の保護層51,53を更に有している。各保護層51,53は、電気絶縁性を有すると共に保護機能を有する機能層であって、それぞれセラミック材料からなる層であり、インダクタ部10を保護する。保護層51は、素体1の外表面(一方の主面)を構成する。したがって、インダクタ領域1aは、複数の機能層(インダクタ層15,17及び保護層51,53)の積層方向に対して垂直な一つの外表面を含むこととなる。
保護層51と保護層53との間には、サージ吸収素子SA1の上下方向を識別するための方向識別マーク55が配されている。すなわち、方向識別マーク55は、素体1のインダクタ領域1a内に配されている。方向識別マーク55は、保護層51にて覆われており、素体1の外表面には露出していない。方向識別マーク55は、長方形であって、素体1の長手方向に伸びる細長い形状となっている。方向識別マーク55は、保護層53に対して略中央に位置している。方向識別マーク55は、Pd、Ag−Pd合金、Ag、あるいはPtからなり、素体1の焼成(後述)によって形成される。本実施形態では、方向識別マーク55の短辺の長さは、60μmに設定され、方向識別マーク55の長辺の長さは、600μmに設定されている。
保護層51,53の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する及び方向識別マーク55を認識する観点からは、ZnOを主成分として含む材料が好ましい。ZnOを主成分とするセラミック材料は白色を呈しており、素体1内に配された方向識別マーク55が素体1の外側から透視できることから、方向識別マーク55の認識を容易に行うことができる。ここでは、素体1において保護層51により構成される外表面が、実装すべき回路基板(図示せず)に対して上面となる。
素体1は、上述したインダクタ層15,17、バリスタ層25,27、及び保護層51,53が積層されている。実際のサージ吸収素子SA1の素体1では、インダクタ層15,17、バリスタ層25,27、及び保護層51,53は、互いの間の境界がほとんど視認できない程度に一体化されている。
方向識別マーク55は、図3に示されるように、複数の機能層(インダクタ層15,17及び保護層51,53)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置している。本実施形態では、図3における(a)に示されるように、方向識別マーク55と第1及び第2のコイル導体11,13との間隔D1,D2が、上記積層方向から見て、80μm以上に設定されている。また、図3における(b)に示されるように、方向識別マーク55と第1のコイル導体11との間隔D3は、上記積層方向に垂直な方向から見て、80μm以上に設定されている。すなわち、方向識別マーク55と第1のコイル導体11との間の最短の間隔は、80μm以上に設定されている。
第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7及び外部導体9は、コイル導体11,13や内部電極21,23を構成しているPd等の金属と電気的に良好に接続できる金属材料からなるものであると好ましい。例えば、Agは、Pdからなるコイル導体11,13や内部電極21,23との電気的な接続性が良好であり、しかも素体1の端面に対する接着性が良好であることから、外部電極用の材料として好適である。
第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7及び外部導体9の表面には、Niめっき層(図示省略)及びSnめっき層(図示省略)等が順に形成されている。これらのめっき層は、主としてサージ吸収素子SA1をはんだリフローにより基板等に搭載する際の、はんだ耐熱性やはんだ濡れ性を向上することを目的として形成されるものである。
次に、図4及び図5に基づいて、上述した構成を有するサージ吸収素子SA1の回路構成を説明する。図4は、第1実施形態に係るサージ吸収素子の回路構成を説明するための図である。図5は、図4に示された回路構成の等価回路を示す図である。
第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、上述したように、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aをそれぞれ含んでおり、当該領域11a,13aにおいて容量結合している。このため、サージ吸収素子SA1は、図4に示されるように、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とにより形成される容量成分61を有する。容量成分61は、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に接続されることとなる。
ここで、「極性反転結合」とは、図4に示されるように、第1のコイル導体11に相当するインダクタンス成分の巻き始めを第1の端子電極3側とし、第2のコイル導体13に相当するインダクタンス成分の巻き始めを第1のコイル導体11と接続する側(本実施形態においては、外部導体9側)とした場合に、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13との結合が「正」であることを意味する。すなわち、「極性反転結合」とは、第1のコイル導体11に第1の端子電極3側から電流が流れ込み、第2のコイル導体13に第1のコイル導体11と接続する側(本実施形態においては、外部導体9側)から電流が流れ込み、第1のコイル導体11に生じる磁束と第2のコイル導体13に生じる磁束を互いに強めあうことを意味する。
サージ吸収素子SA1においては、第1の内部電極21と、第2の内部電極23と、バリスタ層25,27における第1の内部電極21及び第2の内部電極23に重なる領域21a,23aとにより、一つのバリスタ63が構成されることとなる。バリスタ63は、図4に示されるように、第1のコイル導体11と前記第2のコイル導体13との接続点(外部導体9)と前記第3の端子電極7との間に接続される。
相互に極性反転結合される第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13は、図5に示されるように、第1のインダクタンス成分65、第2のインダクタンス成分67及び第3のインダクタンス成分69に変換することができる。第1のインダクタンス成分65と第2のインダクタンス成分67とは、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に直列に接続される。第3のインダクタンス成分69は、直列に接続された第1のインダクタンス成分65と第2のインダクタンス成分67との接続点とバリスタ63との間に接続される。各コイル導体11,13の誘導係数をLzとし、コイル導体11,13間の結合係数をKzとすると、第1のインダクタンス成分65及び第2のインダクタンス成分67の誘導係数は(1+Kz)Lzとなり、第3のインダクタンス成分69の誘導係数は−KzLzとなる。
バリスタ63は、図5に示されるように、第3のインダクタンス成分69と第3の端子電極7との間に並列接続される可変抵抗71及び浮遊容量成分73に変換することができる。可変抵抗71は、通常は抵抗値が大きく、高圧サージが印加されると抵抗値が小さくなる。バリスタ63において、小振幅の高速信号に対しては、浮遊容量成分73のみで近似することができる。
(1)式において、下記(2)式を満たすように容量成分61の容量Csを設定すれば、入力インピーダンスZinは周波数特性に依存しなくなる。容量成分61の容量Csを下記(2)式に設定した上で、下記(3)式に示すように各コイル導体の誘導係数Lzを設定すれば、入力インピーダンスZinは特性インピーダンスZoに整合させることができる。
上記(2)式及び(3)式からも分かるように、コイル導体11,13間の結合係数Kzを任意に選べるため、柔軟性の高い回路設計が可能となる。
上記(2)式及び(3)式からも分かるように、コイル導体11,13間の結合係数Kzを任意に選べるため、柔軟性の高い回路設計が可能となる。
したがって、本実施形態によれば、サージ吸収素子SA1を、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護しつつ、高速信号に対してもインピーダンス整合に優れたサージ吸収素子とすることができる。
ところで、バリスタ63は、図6に示されるように、浮遊インダクタンス成分75も含んでいる。通常は、可変抵抗71の抵抗値が大きく、高圧サージが印加されると抵抗値が小さくなる。しかし、浮遊容量成分73及び浮遊インダクタンス成分75が存在する。このために、入力信号として高速信号を扱う半導体デバイスの入力側にサージ吸収素子SA1を付加すると、高速信号の劣化の原因となる。高速信号を扱う回路にサージ吸収素子SA1を適用するためには、浮遊容量成分73だけでなく浮遊インダクタンス成分75の影響も小さくする方が好ましい。
図5に示される等価回路からも分かるように、負性誘導係数を持つ第3のインダクタンス成分69を利用すると、バリスタ63の浮遊インダクタンス成分75をキャンセルすることができる。ただし、見かけ上、結合が小さくなった状態と同じになるため、結合係数Kzと誘導係数Lzはそのままで、容量成分61の容量Csを下記(4)式とする。ここで、浮遊インダクタンス成分75の誘導係数をLeとしている。
ただし、KzLz≧Leである。このように設計すると、サージ吸収素子SA1に浮遊容量成分73と浮遊インダクタンス成分75が含まれていても、入力インピーダンスZinを特性インピーダンスZoに整合させることができる。
ただし、KzLz≧Leである。このように設計すると、サージ吸収素子SA1に浮遊容量成分73と浮遊インダクタンス成分75が含まれていても、入力インピーダンスZinを特性インピーダンスZoに整合させることができる。
次に、図7を参照して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1を製造する方法について説明する。図7は、第1実施形態に係るサージ吸収素子を製造する工程を説明するためのフロー図である。
サージ吸収素子SA1の製造においては、まず、インダクタ層15,17、及び、バリスタ層25,27の原料となるセラミック材料を含むペーストを製造する(ステップS101)。具体的には、バリスタ層25,27形成用のペーストは、主成分であるZnOに対し、添加物として、希土類(例えば、Pr)及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Coのほか、必要に応じてAl、Cr、Ca、Si、K等を、焼成後に所望の含有量となるように加え、これらのバインダー等を添加して混合することにより調製することができる。この場合の金属元素は、例えば、酸化物として添加することができる。
インダクタ層15,17形成用のペーストは、主成分であるZnOに対し、必要に応じて、添加物として希土類、Bi等の金属元素を加え、更にこれらにバインダー等を添加して混合することによって調製可能である。インダクタ層15,17形成用のペーストには、バリスタ層25,27形成用のペーストとは異なり、Coは添加しない。上記金属元素は、例えば、酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩等の化合物の形態で添加することができる。これらの添加量は、後述するような焼成を行った後の素体1において、金属元素が上述したような所望の含有量となるように調整する。
これらのペーストを、プラスチックフィルム等の上にドクターブレード法等により塗布した後に乾燥させ、セラミック材料からなるグリーンシートを形成する(ステップS102)。これにより、インダクタ層15,17形成用のグリーンシート(以下、「インダクタシート」という)、及び、バリスタ層25,27形成用のグリーンシート(以下、「バリスタシート」という)を、それぞれ所要の枚数ずつ得る。上記グリーンシートの形成において、プラスチックフィルム等は、塗布・乾燥後すぐに各シートから剥離してもよく、後述する積層の直前に剥離してもよい。また、このグリーンシートの形成工程においては、これらのシートとともに、上記と同様の方法でZnOを含む保護層51,53形成用のグリーンシートを形成する。
次に、インダクタシート又はバリスタシートの上に、第1及び第2のコイル導体11,13又は第1及び第2の内部電極21,23を形成するための導体ペーストを、それぞれのシートに対して所望のパターンとなるようにスクリーン印刷する(ステップS103)。また、保護層53形成用のグリーンシートの上に、方向識別マーク55を形成するための導体ペーストを、所望のパターンとなるようにスクリーン印刷する(ステップS103)。これにより、所望のパターンを有する導体ペースト層が設けられた各シートを得る。例えば、導体ペーストとしては、PdやAg−Pd合金を主成分として含む導体ペーストが挙げられる。
続いて、第1及び第2の内部電極21,23にそれぞれ対応する導体ペースト層が設けられたバリスタシートを順次積層する(ステップS104)。続いて、この上に、第1及び第2のコイル導体11,13にそれぞれ対応する導体ペースト層が設けられたインダクタシートを順次積層する(ステップS105)。さらに、これらの積層構造の上に、方向識別マーク55に対応する導体ペースト層が設けられた保護層53形成用のグリーンシートと、保護層51形成用のグリーンシートとを更に重ね、これらを圧着することにより、素体1の前駆体である積層体を得る。
その後、得られた積層体を、所望のサイズとなるようにチップ単位に切断した後、このチップを、所定温度(例えば、1000〜1400℃)で焼成して、素体1を得る(ステップS106)。方向識別マーク55は、素体1と同時焼成により得られる。
続いて、得られた素体1の表面からその内部にLiを拡散させる。ここでは、得られた素体1の表面にLi化合物を付着させた後、熱処理等を行う。Li化合物の付着には、密閉回転ポットを用いることができる。Li化合物としては、特に限定されないが、熱処理することによりLiが素体1の表面から第1及び第2のコイル導体11,13や第1及び第2の内部電極21,23の近傍にまで拡散できる化合物であり、例えば、Liの酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩及びシュウ酸塩等が挙げられる。なお、サージ吸収素子SA1の製造において、このLi拡散の工程は必ずしも必須ではない。
そして、このLi拡散された素体1の側面に、銀を主成分とするペーストを転写した後に焼き付けた後、更にめっきを施すことによって、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9をそれぞれ形成し、サージ吸収素子SA1を得る(ステップS107)。めっきは、電気めっきにより行うことができ、例えば、CuとNiとSn、NiとSn、NiとAu、NiとPdとAu、NiとPdとAg、又は、NiとAg等を用いることができる。
以上のように、本第1実施形態では、方向識別マーク55が、複数の機能層(インダクタ層15,17及び保護層51,53)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置しているので、第1及び第2のコイル導体11,13に生じる磁束を遮るのが抑制されることとなる。この結果、第1及び第2のコイル導体11,13の誘導係数の低下を抑制することができる。
方向識別マーク55が配されたインダクタ領域1aは、サージ吸収素子SA1が基板に実装された状態では、基板から比較的離れて位置することとなる。このため、基板に設けられているグランドパターン等により第1及び第2のコイル導体11,13に生じる磁束を妨げられるのが抑制されることとなる。この結果、実装状態においても第1及び第2のコイル導体11,13の誘導係数が低下するのを抑制することができる。
本第1実施形態において、方向識別マーク55と第1及び第2のコイル導体11,13との間隔が、上記積層方向から見て、80μm以上に設定されている。また、方向識別マーク55と第1及び第2のコイル導体11,13との間隔は、上記積層方向に垂直な方向から見て、80μm以上に設定されている。すなわち、方向識別マーク55と第1のコイル導体11との間の最短の間隔は、80μm以上に設定されている。これにより、方向識別マーク55が第1及び第2のコイル導体11,13に生じる磁束を遮るのを確実に抑制することができる。
本第1実施形態において、方向識別マーク55が、Pd、Ag−Pd合金、Ag、あるいはPtからなる。これにより、方向識別マーク55の光反射率が高くなり、方向識別マーク55の認識が容易となる。
保護層51,53は、ZnOを主成分とする材料からなる。保護層51,53が、ZnOのほか、添加物として希土類やBi等を含有している場合、方向識別マーク55を構成する材料が、保護層51,53が含有する金属元素と反応する懼れがある。しかしながら、方向識別マーク55が、Pd、Ag−Pd合金、Ag、あるいはPtからなる場合、保護層51,53が含有する金属元素と反応することはない。この結果、方向識別マーク55の形状が所望の形状(本実施形態では、長方形)に保たれることとなり、方向識別マーク55を適切に認識することができる。
方向識別マーク55は、ZrO2、TiO2、MgO、Al2O3等の金属酸化物からなっていてもよい。この場合、第1及び第2のコイル導体11,13の誘導係数の低下をより一層抑制することができる。
本第1実施形態において、方向識別マーク55は、素体1内に配されている。これにより、方向識別マーク55を保護することができ、マークの傷つきや剥がれ等を防ぐことができる。この結果、方向識別マーク55を適切に認識することができる。
そして、本第1実施形態では、インダクタ部10が相互に極性反転結合される第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13を有している。このため、サージ吸収部20の浮遊容量成分73に対してインダクタ部10の誘導係数を適切に設定することにより、浮遊容量成分73の影響をキャンセルすることが可能となる。この結果、広帯域にわたって周波数特性の平坦な入力インピーダンスを実現することができる。
本第1実施形態では、容量成分61を有するキャパシタ部を更に備えることとなる。これにより、サージ吸収部20の浮遊容量成分73に対してインダクタ部10の誘導係数とキャパシタ部の容量成分61の容量とを柔軟に設定することができる。
本第1実施形態のサージ吸収素子SA1は、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護しつつ、高速信号に対してもより一層インピーダンス整合に優れたサージ吸収素子SA1とすることができる。
本第1実施形態において、キャパシタ部が有する容量成分61は、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とにより形成されている。これにより、キャパシタ部を構成するための内部電極等を別途設ける必要がなく、素子の構成が簡素化されると共に、素子の小型化を図ることができる。
本第1実施形態において、インダクタ部10は、第1のコイル導体11が形成されたインダクタ層15と第2のコイル導体13が形成されたインダクタ層17とが積層されることにより構成され、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とは、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aを含んでいる。これにより、第1のコイル導体11と第2のコイル導体13とにおける、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13a同士が容量結合し、当該領域11a,13a同士により上述した容量成分61が形成されることとなる。これにより、キャパシタ部を構成するための内部電極等を別途設ける必要がなく、サージ吸収素子SA1の構成が簡素化されると共に、サージ吸収素子SA1の小型化を図ることができる。
本第1実施形態において、サージ吸収部20は、第1の内部電極21が形成されたバリスタ層25と第2の内部電極23が形成されたバリスタ層27とが積層されることにより構成され、第1の内部電極21と第2の内部電極23とは、バリスタ層25,27の積層方向から見て相互に重なり合う領域を含んでいる。これにより、サージ吸収部20をバリスタ63により構成することができる。
本第1実施形態において、インダクタ部10を構成するインダクタ層15,17及びサージ吸収部20を構成するバリスタ層25,27が、ともにZnOを主成分とするセラミック材料から形成されている。このため、インダクタ部10とサージ吸収部20とでは、焼成時に生じる体積変化の差が極めて小さい。したがって、これらを同時に焼成したとしても、両者の間にひずみや応力等が発生し難い。その結果、得られたサージ吸収素子SA1は、インダクタ部10とサージ吸収部20とが異なる材料により形成された従来のサージ吸収素子SA1と比較して、両者の剥離が極めて生じ難いものとなる。
インダクタ層15,17は、上述の如く、ZnOを主成分とし、添加物としてCoを実質的に含有しないセラミック材料から構成される。このような材料は、インダクタの構成材料として十分な程度に高い抵抗率を有している。具体的には、インダクタ材料として好適な1MΩを超える抵抗率を有するものとなり易い。このため、インダクタ部10は、単独では抵抗率の点で特性が不十分であったZnOを主成分として含んでいるにもかかわらず、優れたインダクタ特性を発揮し得るものとなる。
本第1実施形態において、第1のコイル導体11の他端、第2のコイル導体13の他端、及び第1の内部電極21は、外部導体9を通して接続されている。これにより、第1のコイル導体11の他端、第2のコイル導体13の他端、及び第1の内部電極21を容易且つ確実に接続することができる。
(第2実施形態)
次に、図8及び図9に基づいて、第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2の構成を説明する。図8は、第2実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図9は、第2実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2は、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1のコイル導体11、第2のコイル導体13、第1の内部電極21、第2の内部電極23、及び外部導体9の数に関して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1と相違する。
次に、図8及び図9に基づいて、第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2の構成を説明する。図8は、第2実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図9は、第2実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2は、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1のコイル導体11、第2のコイル導体13、第1の内部電極21、第2の内部電極23、及び外部導体9の数に関して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1と相違する。
サージ吸収素子SA2は、図8に示されるように、素体1を備えている。素体1は、直方体形状を呈しており、例えば、長さが1.6mm程度に設定され、幅が0.8mm程度に設定され、高さが0.5mm程度に設定されている。サージ吸収素子SA2は、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)備えている。第1の端子電極3と第2の端子電極5と第3の端子電極7とは、素体1の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成されている。外部導体9は、素体1の長手方向の端部にそれぞれ形成されている。
インダクタ部10は、図9に示されるように、相互に極性反転結合される第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)含んでいる。インダクタ部10は、第1のコイル導体11が形成されたインダクタ層15と第2のコイル導体13が形成されたインダクタ層17とが一層ずつ対になるように積層されることにより構成されている。第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13は、一端を開放した略矩形の環状部分を有している。
インダクタ部10は、コイル導体が形成されていない複数(本実施形態においては、2層)の絶縁体層(ダミー層)19を備えている。絶縁体層19は、インダクタ層15及びインダクタ層17により構成される第1のインダクタ層対と、インダクタ層15及びインダクタ層17により構成される第2のインダクタ層対との間に位置する。絶縁体層19は、第1のインダクタ層対を構成するインダクタ層17に形成された第2のコイル導体13と、第2のインダクタ層対を構成するインダクタ層15に形成された第1のコイル導体11との極性反転結合を抑制するための機能層である。絶縁体層19の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、インダクタ層15,17と、同様にZnOを主成分として含む材料が好ましい。
インダクタ部10の下にも、コイル導体が形成されていない複数(本実施形態においては、2層)の絶縁体層(ダミー層)19が位置している。第1のインダクタ層対を構成するインダクタ層15とインダクタ層17との間に、コイル導体が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。また、第2のインダクタ層対を構成するインダクタ層15とインダクタ層17との間に、コイル導体が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。
サージ吸収部20は、図9に示されるように、第1の内部電極21及び第2の内部電極23をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)含んでいる。インダクタ部10とサージ吸収部20との間には、内部電極等が形成されていない複数の絶縁体層(ダミー層)が位置している。また、サージ吸収部20の上下には、サージ吸収部20を挟むように、内部電極が形成されていない複数の絶縁体層(ダミー層)28,29がそれぞれ位置している。絶縁体層28,29の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、バリスタ層25,27と、同様にZnOを主成分として含む材料が好ましい。バリスタ層25とバリスタ層27との間に、内部電極等が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。これらの絶縁体層(ダミー層)は、電気絶縁性を有する機能層である。
第1の内部電極21同士は、バリスタ層25上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。各第1の内部電極21は、第1の電極部分31と、第2の電極部分33とを含んでいる。第1の電極部分31は、バリスタ層25,27の積層方向から見て、後述する第2の内部電極23の第1の電極部分35と互いに重なり合う。第1の電極部分31は、略矩形状を呈している。第2の電極部分33は、第1の電極部分31から素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように引き出されており、引き出し導体として機能する。各第1の電極部分31は、第2の電極部分33を通して外部導体9に電気的に接続されている。第2の電極部分33は、第1の電極部分31と一体に形成されている。第1の電極部分31は、略台形状をそれぞれ呈している。
各第2の内部電極23は、第1の電極部分35と、第2の電極部分37とを含んでいる。第1の電極部分35は、バリスタ層25,27の積層方向から見て第1の内部電極21の第1の電極部分31と互いに重なるように形成される。第1の電極部分35は、略矩形状をそれぞれ呈している。第2の電極部分37は、各第1の電極部分35から素体1の両側面(第3の端子電極7が形成された両側面)に露出するようにそれぞれ引き出されており、引き出し導体として機能する。各第1の電極部分35は、第2の電極部分37を通して第2の端子電極5に電気的に接続されている。第2の電極部分37は、第1の電極部分35と一体に形成されている。第1の電極部分35は、略台形状をそれぞれ呈している。
第2の内部電極23同士は、接続導体39にて、電気的に接続されている。接続導体39は、2つの第2の内部電極23と一体に形成されている。これにより、各第2の内部電極23が電気的に接続される第3の端子電極7に電気めっき層(例えば、Niめっき層及びSnめっき層)を形成する際に、2つの第2の内部電極23が同電位となる。この結果、各第3の端子電極7に形成される電気めっき層の厚みが略均一となる。
サージ吸収部20においては、第1の電極部分31と、第1の電極部分35と、バリスタ層25,27における第1の電極部分31及び第1の電極部分35に重なる領域とにより、一つのバリスタが構成されることとなる。
保護層51と保護層53との間には、サージ吸収素子SA2の上下方向を識別するための方向識別マーク55が配されている。本実施形態では、方向識別マーク55の短辺の長さは、80μmに設定され、方向識別マーク55の長辺の長さは、600μmに設定されている。
方向識別マーク55は、図10に示されるように、複数の機能層(インダクタ層15,17及び保護層51,53)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置している。本実施形態では、図10における(a)に示されるように、方向識別マーク55と第1及び第2のコイル導体11,13との間隔D1,D2が、上記積層方向から見て、80μm以上に設定されている。また、図3における(b)に示されるように、方向識別マーク55と第2のコイル導体13との間隔D3は、上記積層方向に垂直な方向から見て、80μm以上に設定されている。すなわち、方向識別マーク55と第2のコイル導体13との間の最短の間隔は、80μm以上に設定されている。
素体1は、上述したインダクタ層15,17、絶縁体層19、バリスタ層25,27、絶縁体層28,29、及び保護層51,53が積層されている。実際のサージ吸収素子SA2の素体1では、インダクタ層15,17、絶縁体層19、バリスタ層25,27、絶縁体層28,29は、互いの間の境界がほとんど視認できない程度に一体化されている。
サージ吸収素子SA2では、第1のコイル導体11及び第2のコイル導体13によるコイル面積を比較的大きく設定することが可能となる。この結果、サージ吸収素子SA2では、誘導係数を大きくすることができる。
サージ吸収素子SA2では、第1の電極部分31と第1の電極部分35とが互いに重なり合う部分の面積が比較的大きく設定されている。これにより、等価直列抵抗(ESR)化及び等価直列インダクタンス(ESL)化を図ることができる。第1の内部電極21同士の上記所定の間隔は、第1の内部電極21同士間のクロストークを考慮し、当該クロストークの発生を抑制し得る値に設定される。第2の内部電極23同士の上記所定の間隔も、第2の内部電極23同士間のクロストークを考慮し、当該クロストークの発生を抑制し得る値に設定される。
以上のように、本第2実施形態では、第1実施形態と同様に、方向識別マーク55が、複数の機能層(インダクタ層15,17及び保護層51,53)の積層方向から見て第1及び第2のコイル導体11,13の内側に位置しているので、第1及び第2のコイル導体11,13に生じる磁束を遮るのが抑制されることとなる。この結果、第1及び第2のコイル導体11,13の誘導係数の低下を抑制することができる。
そして、本第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護することができると共に、高速信号に対するインピーダンス整合がより一層優れることとなる。
本第2実施形態においては、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1のコイル導体11、第2のコイル導体13、第1の内部電極21、及び第2の内部電極23をそれぞれ複数有している。これにより、アレイ状とされたサージ吸収素子を実現することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
本実施形態では、積層型電子部品としてインダクタ部10とサージ吸収部20とを備えるサージ吸収素子SA1,SA2に本発明を適用した例を示しているが、これに限られない。例えば、積層型インダクタ、積層型フィルタ等のコイル導体を備える積層型電子部品であれば、本発明を適用できる。
本実施形態では、方向識別マーク55を素体1内に配しているが、素体1の外表面上に配してもよい。しかしながら、素体1の外表面に方向識別マーク55を配する場合、素体1に含まれる材料及び方向識別マーク55を構成する材料に応じて、以下の問題が生じる。
素体1がPrを含有する場合、素体1と同時焼成によりPdやZrO2等からなる方向識別マーク55を形成すると、Prが酸化物として方向識別マーク55の縁部に偏析し、凹凸を形成することがある。このように方向識別マーク55の縁部に酸化プラセオジムの凹凸が形成されると、端子電極3,5,7や外部導体9に電気めっきを施す際に、上記凹凸がめっき付着の基点となり、方向識別マーク55の近傍に不要なめっき膜が形成されてしまう。このため、方向識別マーク55の形状が変わり、方向識別マーク55の認識性が低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、方向識別マーク55が素体1内に配されているので、上述した問題は生じない。
方向識別マーク55は、素体1の外側から認識可能であれば、インダクタ領域1aのどの層に配置されていてもよい。また、方向識別マーク55は、複数であってもよい。
1…素体、3…第1の端子電極、5…第2の端子電極、7…第3の端子電極、9…外部導体、10…インダクタ部、11…第1のコイル導体、13…第2のコイル導体、15,17…インダクタ層、19…絶縁体層、20…サージ吸収部、21…第1の内部電極、23…第2の内部電極、25,27…バリスタ層、28,29…絶縁体層、51,53…保護層、55…方向識別マーク、SA1,SA2…サージ吸収素子。
Claims (9)
- 複数の機能層が積層された素体と、
前記素体内に、軸心が前記複数の機能層の積層方向に対して平行となるように配されたコイル導体と、
前記素体に配された、前記素体の方向を識別するためのマークと、を備え、
前記マークが、前記複数の機能層の積層方向から見て前記コイル導体の内側に位置していることを特徴とする積層型電子部品。 - 複数の機能層が積層された素体と、
前記素体内に、軸心が前記複数の機能層の積層方向に対して平行となるように配されたコイル導体と、
前記素体内に、前記複数の機能層の積層方向に対向するように配された複数の内部電極と、
前記素体に配された、前記素体の方向を識別するためのマークと、を備え、
前記素体が、前記コイル導体が配される第1の領域と前記複数の内部電極が配される第2の領域とを、前記複数の機能層の積層方向に沿って有しており、
前記第1の領域が、前記素体の複数の外表面のうち前記複数の機能層の積層方向に対して垂直な一つの外表面を含み、
前記マークが、前記第1の領域に配されると共に、前記複数の機能層の積層方向から見て前記コイル導体の内側に位置していることを特徴とする積層型電子部品。 - 前記複数の機能層のうち前記第2の領域となる機能層が、電圧非直線特性を発現する材料からなることを特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
- 前記マークが、前記素体内に配されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記マークと前記コイル導体との間隔が、前記複数の機能層の積層方向から見て、80μm以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記マークと前記コイル導体との間隔が、前記複数の機能層の積層方向に垂直な方向から見て、80μm以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記マークと前記コイル導体との間の最短の間隔が、80μm以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記複数の機能層が、ZnOを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記マークが、Pd、Ag−Pd合金、Ag、あるいはPtからなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
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