JP2007209748A - 創傷治癒用高分子組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】より高い創傷治癒促進作用を有する創傷治癒用高分子組成物を提供する。
【解決手段】高分子組成物に下記式〔I〕で示されるアスコルビン酸誘導体が含有されているアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物(式中R1は、アスコルビン酸分子の2位の炭素に結合し、R2は3位の炭素に、R3は5位の炭素に、R4は6位の炭素にそれぞれ結合する。R1、R2、R3およびR4は各々水酸基、リン酸基、ピロリン酸基、トリリン酸基、ポリリン酸基、O−グルコシル基、硫酸基、分岐および不飽和結合を含んでも良いアシルオキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシアルキルオキシ基であり、R1とR2、およびR3とR4は、アセタールまたはケタールとして酸素原子を介し同一炭素原子に結合しても良い。)。及び生分解性の高分子である上記アスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
[化1]
【選択図】なし
Description
さらに、例えば、縫合糸にL−アスコルビン酸やポリペプチド等の創傷治癒促進効果のある薬剤を含有させることにより創傷治癒効果を高めることが考えられるが、アスコルビン酸等の抗酸化剤やペプチド、創傷治癒効果のある生理活性物質は酸化分解されやすく、縫合糸等の医薬材料としては滅菌工程での酸化分解の問題で安定に配合することが困難であった。また、L−アスコルビン酸の単純な縫合糸や生分解性糸やプラスチックへの配合は、L−アスコルビン酸の自然酸化に伴うアスコルビン酸ラジカルの発生により炎症を誘発激化させるという問題も発生させた。さらに、生分解性プラスチック等も滅菌工程での熱耐性や薬剤耐性が極めて弱く、L−アスコルビン酸を生分解性プラスチックに配合して滅菌しその後も安定に効果を保つことはできなかった。さらに、たとえ分解せずに糸や樹脂に配合したとしても、糸や樹脂表面にそれらの分子が付着しているのみであり脱落しやすく、容易に代謝分解され有効な効果を発揮できないという問題があった。即ち、アスコルビン酸等の抗酸化剤やペプチド、創傷治癒効果のある生理活性物質の酸化分解の問題を解決し、医薬材料として必要な滅菌工程での酸化分解の問題を解決し安定に配合することができなければならない。また、生分解性プラスチック等の耐熱性や薬剤耐性も高め、生分解性プラスチックに配合した創傷治癒促進剤の効果を、滅菌した後も安定に保たなくてはならない。さらに、これらの薬剤は糸や樹脂表面から長時間持続して生体内に供給され効果を発揮し続けなければならない。本発明は、これらの問題を解決するものである。
[請求項3]前記生分解性高分子が以下の高分子化合物の一種又は二種以上の複合組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)系高分子、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)系高分子、 ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリアルキレンアルカノエート、ポリエステル系高分子、ポリプロピレン系高分子、ポリアミド系高分子、ポリテトラフルオロエチレン系高分子、PGA−PLA系高分子 、ポリジオキサノン系高分子 、キチン・キトサン系高分子、ポリアミノ酸系高分子、ポリ糖鎖系高分子、ポリ核酸系高分子、ハイドロキシアパタイト系高分子、リン酸カルシウム系高分子、ゼラチン、スターチ(でんぷん)、アルギン酸ソーダ、寒天、セルロース、ポリグルタミン酸、キチンキトサン、こんにゃく、アミノ酸系高分子、ペプチド系高分子、多糖類系高分子、天然脂質系高分子、核酸系高分子。
[請求項4]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする線維。
[請求項5]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする縫合用糸。
[請求項6]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする織布。
[請求項7]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする不織布。
[請求項8]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とするフィルム。
[請求項9]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする成型物。
[請求項10]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とするガーゼ。
[請求項11]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする絆創膏。
[請求項12]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする包帯。
[請求項13]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする骨折補強材料。
[請求項14]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体インプラント。
[請求項15]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体用接着剤。
[請求項16]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体用接着フィルム。
[請求項17]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする細胞培養用容器。
[請求項18]請求項1〜3のいずれか一項に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする多孔質構造体。
[請求項19]請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする中空繊維構造体。
[請求項20]生分解性の高分子と生分解性でない高分子の2種の高分子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
[請求項21]さらに、創傷治癒促進剤、抗炎症剤、抗感染症剤、および活性酸素消去剤からなる群から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
式〔I〕中R1は、アスコルビン酸分子の2位の炭素に結合し、R2は3位の炭素に、R3は5位の炭素に、R4は6位の炭素にそれぞれ結合する。R1、R2、R3およびR4は各々水酸基、リン酸基、ピロリン酸基、トリリン酸基、ポリリン酸基、O−グルコシル基、硫酸基、分岐および不飽和結合を含んでも良いアシルオキシ基、アルキルオキシ基またはヒドロキシアルキルオキシ基であり、R1とR2、およびR3とR4は、アセタールまたはケタールとして酸素原子を介し同一炭素原子に結合しても良い。
昭和電工製
1)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム
2)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム
3)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル亜鉛
4)L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテートナトリウム
アイティーオー製
5)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム亜鉛
和光純薬製
6)L−アスコルビン酸−2−グルコシド
販売元:ケミコスクリエーション
7)L−アスコルビン酸エチル
千寿製薬製
8)L−アスコルビン酸−2−リン酸トコフェロール
9)L−アスコルビン酸−2−マレイン酸トコフェロール
和光純薬製
10)L−アスコルビン酸−6−パルミテート
11)L−アスコルビン酸−2,6−ジパルミテート
東洋ビューティー社製
12)イソステアリル2−0−L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム
日光ケミカル製
13)L−アスコルビル−2,3,5,6−テトライソパルミテート
生体組織用創傷治癒用高分子組成物が生分解性高分子である場合には、創傷の癒合後に吸収されるため、体内異物として残存せず炎症反応を誘導しにくいことが生体にとって好ましいため特に適している。このためには、術後1年以内には完全に生体から消滅する高分子が良く、好ましくは一ヶ月以内に生体内から消滅するものが特に良い。また、本発明の高分子組成物は、市販の細菌除去用のメンブランフィルターのような直径1nmから1mmの細かな穴又は空間が存在する多孔質な構造を取ることにより、より多くのアスコルビン酸誘導体分子を取り込むことができるために有効である。本発明が繊維の場合は中空繊維構造のものがより多くのアスコルビン酸誘導体分子を取り込むことができるために有効である。
さらに本発明で得られた成形物に、創傷治癒促進剤、抗炎症剤、抗感染症剤、および活性酸素消去剤(アスコルビン酸又はその誘導体を除く)からなる群から選ばれる一種以上を同時に配合することにより、炎症が発生しにくい本発明の構造物を作成することができる。本発明で使用できる創傷治癒促進剤、抗炎症剤、抗感染症剤、アスコルビン酸又はその誘導体以外の活性酸素消去剤としては、EGF、TGF−β1、TGF−α、FGF、VEGF、PDGF−BB、TGF−β1、PDGF−AB、IGF、KGF、PDGF、TGF−β2、TGF−β3、FGF−2、U−PA、t−PA、インテグリン、接着因子、dl−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール酢酸エステル、dl−α−トコフェロールリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩若しくはカルシウム塩、dl−α−トコフェロール酢酸エステル、ビタミンEニコチネート等のビタミンE若しくはその誘導体、ユビキノン、エリソルビン酸、茶抽出物、ポリフェノール類、エトキシキシ等の酸化防止剤、アスタキサンチン等のカロチノイド類、クエン酸、リン酸、メタリン酸、グリシン、システイン等の有機酸類、カテキン等のポリフェノール等またはこれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩から適宜選択されるが、中でもカロチン、アスタキサンチン、ルテイン、dl−α−トコフェロール酢酸エステル、α−トコフェロール、SOD、グルタチオン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、カテキン類またはこれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩から選択される一種以上の物質、及びアクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、イソプロパノール、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸化フェノール、オキシドール、過マンガン酸カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール石鹸、次亜塩素酸Na、チオ硫酸Naグラニオール変性アルコール、チメロサール、フェノール、ブロノポール、ポビドンヨード、ホルマリン、マーキュロクロム、ヨウ素、ヨードチンキ、ヨードホルム、レゾルシン、アルミニュームクロロヒドロキシアラントイネート、酸化亜鉛、白色ワセリン、豚皮、エリスロマイシン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン硫酸ポリミキシンB、塩酸グラミシジンS硫酸ストレプトマイシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸デメチルクロルテトラサイクリン、グラマイコーチゾン、クロマイ−P、クロラムフェニコール、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルフィソミジン、テトラサイクリン、ナジフロキサシン、パシトラシン硫酸フラジオマイシン、フシジン酸ナトリウム、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸コリスチン硫酸フラジオマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸フラジオマイシントリプシン、硫酸ポリミキシンB、アクリノールチンク油、アズレン、アミノ安息香酸エチル、アムシノニド、アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、アンモニア水、インドメタシン、ウフェナマート、エキザルベ、塩酸イソチペンシル、塩酸オキシテトラシクリンヒドロコルチゾン、塩酸テトラサイクリン酢酸ヒドロコルチゾン、オイリッチ、外皮用消炎鎮痛配合剤、カラミン、カルバゾクロム塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、カンフル、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン硫酸ゲンタマイシン、強力レスタミンコーチゾン、グリチルレチン酸、クロタミトン、ケトプロフェン、ケナコルト−A、ケナコルト−AG、酢酸ジフロラゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸鉛、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、サリチル酸メチル、塩化亜鉛、紫雲膏、ジフェンヒドラミン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、次没食子酸ビスマス、水酸化カルシウム、スプロフェン、セイヨウトチノキ種子エキス、脱脂大豆乾留タール、脱脂大豆乾留タールジフェンヒドラミン、タンニン酸、デキサメタゾン、デキサメタゾン脱脂大豆乾留タール、トウガラシチンキ、トコフェロールビタミンA油、トリアムシフロンアセトニド、ハルシノニド、ビタミンA、ヒドロコルチゾンクロタミトン、ピバル酸フフメタゾン、ピリドレチン、ピロキシカム、フェノール亜鉛華リニメント、フェルビナク、プデソニド、ブフェニキサマク、フランカルボン酸モメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセエトニド、フルドロキシコルチド、フルルビプロフェン、プレドニゾロン、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ヘパリン類似物質、ベンダザッグ、モビラート、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、硫酸アルミニウムカリウム、硫安フラジオマイシン吉草酸ベタメタゾン、硫安フラジオマイシンフルオシノロンアセトニド、硫安フラジオマイシンプレドニゾロン、イオウ、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、ウンデシレン酸ウンデシレン酸亜鉛、ウンデシレン酸サリチル酸、塩酸アモロルフィン、塩酸クロコナゾール、塩酸テルビナフィン、塩酸ネチコナゾール、塩酸ブテナフィン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、サリチル酸シクロピロクスオラミン、シッカニン、硝酸イナコゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、水銀軟膏、チオコナゾール、トリコマイシン、トリシクラート、トルナフタート、トルナフタート塩酸クロルヘキシジン、ナイスタチン、バリオチン、ビホナゾール、フェニルヨードウンデシノエート、ミコナゾール、モクタール、ラフコナゾール、イオウカンフル、カリ石鹸、カンタリス、グリセリンカリ、酢酸、サリチル酸、硝酸銀、尿素、塩酸カプロニウム、アルプロルタジル、ジアフェニルスルホン、精製白糖ポンピドンヨード、タカルシトール、トリチノイントコフェリル、ブクラデシンナトリウム、ヘパリンナトリウム、メトキサレン、メラジニン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、幼生血液抽出物、ヨウ素等の成分を挙げることができる。それらの成分は、1ppm〜5質量%の範囲で併用添加することが好ましい。
アスコルビン酸誘導体と、上記のアスコルビン酸又はその誘導体を除く活性酸素消去剤との併用により、生分解性樹脂の耐熱性、耐薬剤性、耐強度性能を格段に向上させることができる。
上記の薬剤は、必要に応じて直接あるいはゼラチン、油脂類等の被膜剤で被膜したもの、あるいはマイクロカプセル、デキストリン等で包摂したものを本発明の高分子組成物やその構造体に混入することもできる。マイクロカプセルとしては、通常の製法で作られた公知のリポソーム製剤や、公知の製法により調製されたリポソームなどをいずれも好適に使用することができ、具体的には、特開平7−316079号公報、特開平8−151334号公報、特開平9−278726号公報などに記載されたリポソームなどを使用することができる。
さらに、本発明の構造物、生体組織用創傷治癒用高分子組成物が多孔質構造や中空繊維構造である構造物であれば、前記の創傷治癒促進剤、抗炎症剤、抗感染症剤、活性酸素消去剤(アスコルビン酸又はその誘導体を除く)を同時に配合した際に、これらの薬品が多孔質構造内や中空繊維構造内に取り込まれて除放効果を発揮でき、これらの薬剤の効果発揮時間を延長でき、さらに、線維芽細胞などが多孔質構造の中に入り込みやすくなり、本発明による創傷治癒効果が促進される。細胞の入植を考慮すると、多孔質又は中空構造の直径が1mmから0.1ミクロンの範囲であることが望ましい。薬剤の序徐放性を考慮すると多孔質又は中空構造の直径が1ミクロンから10nmの範囲であることが望ましい。そして、これらの大きさの異なるサイズが混在するものでもよい。
本発明の以下の参考例及び実施例で使用したアスコルビン酸誘導体を以下に示すが特にこれに限定されない。
昭和電工製
1)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム
2)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム
3)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル亜鉛
4)L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテートナトリウム
アイティーオー製
5)L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム亜鉛
和光純薬製
6)L−アスコルビン酸−2−グルコシド
販売元:ケミコスクリエーション
7)L−アスコルビン酸エチル
千寿製薬製
8)L−アスコルビン酸−2−リン酸トコフェロール
9)L−アスコルビン酸−2−マレイン酸トコフェロール
和光純薬製
10)L−アスコルビン酸−6−パルミテート
11)L−アスコルビン酸−2,6−ジパルミテート
東洋ビューティー社製
12)イソステアリル2−0−L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム
日光ケミカル製
13)L−アスコルビル−2,3,5,6−テトライソパルミテート
参考例1の1)のアスコルビン酸誘導体5gを精製水50mlに溶解した。PGA系高分子からなる縫合糸であるDavis&Greck社製、商品名「Dexon」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸を得た。この糸の重量増加は4.9mgであった。
(実施例2)
参考例1の13)のアスコルビン酸誘導体5gをそれぞれエタノール(ナカライテスク社製)50mlに溶解した。PGA系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「Vicryl」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸を得た。この糸の重量増加はそれぞれ5mgであった。
(実施例3)
参考例1の6)のアスコルビン酸誘導体5gを精製水50mlに溶解した。ポリジオキサノン系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「PDS」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸を得た。この糸の重量増加は4mgであった。
(実施例4)
参考例1の10)から13)までのアスコルビン酸誘導体5gをそれぞれエタノール(ナカライテスク社製)50mlに溶解した。PGA系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「Vicryl」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸を得た。この糸の重量増加はそれぞれ5mgであった。
(実施例5)
参考例1の1)から9)のアスコルビン酸誘導体5gをそれぞれ精製水50mlに溶解した。ポリジオキサノン系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「PDS」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸を得た。この糸の重量増加はそれぞれ4mgであった。
なお、上記実施例1〜5の縫合糸については、さらに、その1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
(実施例6〜10)
上記実施例1から5の糸を原料に常法により布を織りガーゼを作成した。このガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例であるガーゼとした。
(実施例11〜15)
上記実施例1から5の糸を原料に常法により不織布を作成しガーゼを作成した。このガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である不織布ガーゼとした(実施例11〜15)。
さらに、上記の構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
(比較例1)
PGA系高分子からなる縫合糸であるDavis&Greck社製、商品名「Dexon」。
(比較例2)
PGA系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「Vicryl」。
(比較例3)
ポリジオキサノン系高分子からなる縫合糸であるEthicon社製、商品名「PDS」。
(比較例4)
L−アスコルビン酸5gを精製水50mlに溶解し、上記Davis&Greck社製、商品名「Dexon」の1.0gをこの溶液に浸漬した後取り出した。風乾後、この糸の重量増加は4.8mgであった。
(比較例5)
L−アスコルビン酸5gを精製水50mlに溶解し、上記Ethicon社製、商品名「Vicryl」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、L−アスコルビン酸含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の比較例である縫合糸を得た。この糸の重量増加は5mgであった。
(比較例6)
L−アスコルビン酸5gを精製水50mlに溶解し、上記Ethicon社製、商品名「PDS」の1.0gをこの溶液に浸漬した後、取り出した。風乾後、L−アスコルビン酸含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の比較例である縫合糸を得た。この糸の重量増加は4mgであった。
(比較例7〜12)
上記比較例1〜6の糸を原料に常法により布を織りガーゼを作成した。このガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、比較例であるガーゼとした。
(比較例13〜18)
上記比較例1〜6の糸を原料に常法により不織布を作成しガーゼを作成した。このガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、比較例である不織布ガーゼとした。
性能評価上記実施例1〜3のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用縫合糸および比較例1〜6の縫合糸について、以下の方法により性能評価した。
10週齢のモルモットの背部を毛刈りし、背部正中線に垂直な方向にメスで長さ2cmの切創を作成した。各実施例、比較例の糸を用いて、この切創部を等間隔で5ケ所縫合して傷を修復させた。この処置の1週間後にモルモットをエーテル麻酔下で、切創中央部から左右に1cm幅の短冊状の皮膚組織を切除しレオメーターを用いて切創部の耐抗張力(g/cm)を測定した。それぞれの実施例および比較例について10匹のモルモットを用いて行い、耐抗張力(g/cm)はこれらモルモットについて得られた値の平均値を取った。結果を表1に示した。
さらに、本発明の縫合糸を使用した区では、特別な炎症反応や組織異常は認められなかったが、比較例では、縫合糸周辺の組織が盛り上がり赤みを帯び軽度の炎症が見られた。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも、結果が比較例より格段に良好であった。
性能評価上記実施例11〜13のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用不織布ガーゼおよび比較例13〜18の不織布ガーゼについて、以下の方法により性能評価した。
10週齢のモルモットの背部を毛刈りし、背部正中線に垂直な方向にメスで長さ2cmの切創を作成した。この切創部を比較例1の縫合糸で等間隔で5ケ所縫合し、その切創部の中心から半径3cmの範囲を、上記記載のガーゼを0.1g/平方cmの割合で使用して覆い傷を修復させた。この処置の1週間後にモルモットをエーテル麻酔下で、切創中央部から左右に1cm幅の短冊状の皮膚組織を切除しレオメーターを用いて切創部の耐抗張力(g/cm)を測定した。それぞれの実施例および比較例について10匹のモルモットを用いて行い、耐抗張力(g/cm)はこれらモルモットについて得られた値の平均値を取った。結果を表2に示した。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
参考例1の1)のアスコルビン酸リン酸マグネシウムと和光純薬のL−アスコルビン酸5gをそれぞれ精製水50mlに溶解した。合成吸収性縫合糸ラクトマーコーティッドブレイド4−0、POLYSORBの1.0gをこれら溶液にそれぞれ浸漬した後、取り出した。また、コントロールとして精製水のみに浸漬したものも作成し取り出した。風乾後、本発明のアスコルビン酸リン酸マグネシウム含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である縫合糸(実施例22)を得た。この糸の重量増加は5mgであった。一方、コントロールのL−アスコルビン酸含有縫合糸(比較例35)の重量増加は4.9mgであり、精製水のみのコントロールの縫合糸(比較例36)の重量増加は無かった。
さらに、実施例22の縫合糸については、その1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
上記実施例22、比較例35〜36の糸を原料に、常法により布を織りガーゼを作成した。これらのガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例であるガーゼ、および比較例であるガーゼとした(実施例23、比較例37〜38)。
さらに、実施例23のガーゼについては、その1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
さらに、上記ガーゼを適当な長さに切断し、同様に滅菌し包帯、絆創膏を作成した。絆創膏は、この布1cm×1cmに幅1cm長さ3cmの接着テープを組み合わせて作成した。これらは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である包帯、絆創膏、および比較例である包帯、絆創膏とした。
上記実施例22、比較例35〜36の糸を原料に、不織布を作成しガーゼを作成した。これらのガーゼは常法によりエチレンオキサイトガスで滅菌し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である不織布ガーゼ、および比較例である不織布ガーゼとした。
さらに、実施例24の不織布ガーゼについては、その1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
生後8週のウイスターラット雄を使用し、腹壁皮膚を切開し皮膚切開創より両縁の皮下を1cm剥離した後、剥離した部位を5mm間隔で上記実施例22、比較例35〜36の3種の縫合糸にてそれぞれマットレス縫合した。術後1週間後に縫合部を中心に幅1.5cmの皮膚を皮下の脂肪層を切除して摘出し、縫合皮膚より残存糸を抜去し、縫合創の引張剪断強度をUS Surgical社製のtensile meterにて測定し、引張剪断強度の平均値を求めたところ、表3に示す結果が得られた。
さらに、本発明の縫合糸を使用した区では特別な炎症反応や組織異常は認められなかったが、比較例では、縫合糸周辺の組織が盛り上がり赤みを帯び軽度の炎症が見られた。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
上記実施例23〜24、比較例37〜40のガーゼの効果を以下の実験より確認した。10週齢のモルモットの背部を毛刈りし、背部正中線に垂直な方向にメスで長さ2cmの切創を作成した。この切創部を比較例1の縫合糸で等間隔で5ケ所縫合し、その切創部の中心から半径3cmの範囲を、上記記載のガーゼを0.1g/平方cmの割合で使用して覆い、傷を修復させた。この処置の1週間後にモルモットをエーテル麻酔下で、切創中央部から左右に1cm幅の短冊状の皮膚組織を切除しレオメーターを用いて切創部の耐抗張力(g/cm)を測定した。それぞれの実施例および比較例について10匹のモルモットを用いて行い、耐抗張力(g/cm)はこれらモルモットについて得られた値の平均値を取った。結果を表4に示した。
さらに、本発明のガーゼを使用した区では特別な炎症反応や組織異常は認められなかった。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
ポリブチレンサクシネートPBS(ビオノーレ1001、昭和高分子製)84質量部、ポリエチレンテレフタレートPET(ダイヤナイトPA−500、三菱レイヨン製)10質量部、及びエチレングリシジルメタクリレート共重合体E−GMA(反応性相溶化剤、ボンドファーストE、住友化学製)1質量部、L−アスコルビル−2,3,5,6−テトライソパルミテート(日光ケミカル製)5質量部を、2軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて、240℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、樹脂チップを得た。
さらに、別途溶融時に、このペースト中に窒素からなるマイクロバブルを吹き込み中空構造体も作成した。
さらに、これら構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
同様に、上記の構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものを作成した。
1wt%のアルギン酸ナトリウム水溶液に、スプレードライにより粒径50μm程度に調製した水酸アパタイト(HA)を10wt%になるように混合し、均一なスラリーとした。このスラリーを、1wt%の塩化カルシウム水溶液に3μlずつ滴下することにより、球状に成形した。上記のように成型した球状HAを60℃で12時間乾燥した後、1250℃で1時間焼結することにより、直径0.8±0.2の多孔質球状骨材粒子を得た。この多孔質球状骨材粒子を真空減圧し超純水にL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテート(昭和電工製)を10%重量で溶解した水溶液を0.2μmのメンブランフィルターで滅菌ろ過したものを1:1で添加した後、凍結乾燥し、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテートが取り込まれた本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である骨修復用の多孔質球状骨材粒子を得た。
一方、第四リン酸カルシウム(TeCP)と第二リン酸カルシウム(DCP)を等モルずつ混合したものに10%重量のL−アスコルビン酸−2−グルコシド(和光純薬製)を含む超純水で練和することにより本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である骨修復用の自己硬化型リン酸カルシウムセメントペーストを調製した。モルモット骨欠損モデルで試験したところ、従来のアスコルビン酸誘導体を含まない同素材及びアスコルビン酸誘導体の代わりにL−アスコルビン酸を同量添加した区と比較して、本発明の上記ペーストを用いた場合、無添加区の従来物より約3.5倍、L−アスコルビン酸を同量添加した区より約2.4倍速い骨形修復スピードで骨欠損が治癒した。
さらに、上記ペースト1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。
上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したもの、及び前記多孔質球状骨材粒子も、結果が比較例より格段に良好であった。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
1wt%のアルギン酸ナトリウム水溶液に、粒径50μm以下に調製した水酸アパタイト(HA)を10wt%になるように混合し、均一なスラリーとした。このスラリーを、1wt%の塩化カルシウム水溶液に4μlずつ滴下することにより、球状に成形した。上記のように成型した球状HAを60℃で12時間乾燥した後、1250℃で1時間焼結することにより、直径1±0.2の球状骨材粒子を得た。この骨材粒子を、市販の自己硬化型リン酸カルシウムセメント粉に約55vol%及び1wt%のL−アスコルビン酸−2−グルコシド(和光純薬製)になるように混合し、ネジ口を持つラミネートチューブに充填し、ネジ口をシーリングし本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である骨修復用の高分子組成物を得た。さらに、上記の構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも別途作成した。そして、セメント練和液を、注射器を用いてシーリング部分から上記ラミネートチューブ内に注入し、ラミネートチューブ内においてセメントをペースト状にし、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である骨修復用のチューブ充填物とした。上記のように調製したチューブ充填物のネジ口に16Gの注射針を装着し、注入器とした。上記セメント注入器においては、チューブを圧迫することにより、内包する骨材複合セメントペーストを容易に吐出することができた。また、チューブ充填物をシリンジ内に装填し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である骨修復用の高分子組成物注入器とした。上記セメント注入器においては、通常のシリンジと同様の方法で、内包する骨材複合セメントペーストを吐出することができた。さらにこのペースト中に窒素からなるマイクロバブルを吹き込み中空構造体が形成できるようにした。
モルモット骨折モデルで本発明の骨材複合セメントペーストを骨折部の中心から1cmの円筒形の範囲に0.5g/平方cmの割合で塗布し試験した。その結果、従来のアスコルビン酸誘導体を含まない同素材及びアスコルビン酸誘導体の代わりにL−アスコルビン酸を同量添加した区と比較して、無添加区の従来物より約3.2倍、L−アスコルビン酸を同量添加した区より約2.1倍速い骨折修復スピードで骨折が治癒した。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したもの及び中空構造体を有するものも結果が比較例より格段に良好であった。
市販のゼラチン、スターチ(でんぷん)、アルギン酸ソーダ、寒天、セルロース、ポリグルタミン酸、キチンキトサン、こんにゃく、紙、綿織布、シルク織布からそれぞれ作られている厚さ0.1から1mmの一辺5cmの正方形のそれぞれのシートをL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウム(昭和電工製)10%水溶液に24時間浸漬したのち、凍結乾燥し、本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である組織保護用シートを作成した。又、別にL−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸ナトリウムに代わり、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル亜鉛、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム亜鉛、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、L−アスコルビン酸エチル、L−アスコルビン酸−2−リン酸トコフェロール、L−アスコルビン酸−2−マレイン酸トコフェロール、L−アスコルビン酸−6−パルミテート、L−アスコルビン酸−2,6−ジパルミテート、イソステアリル2−0−L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、L−アスコルビル−2,3,5,6−テトライソパルミテートのそれぞれの誘導体を用いて、同様な方法で本発明の組織保護用シートを作成した。上記の誘導体の内で水に溶けないものについては、その10%質量をオリーブオイルに分散させたものを10%水溶液の代わりに使用した。さらにこれらのシートに、コラーゲン又はベンジルアルコール、ひまし油、酢酸エチル、エタノールからなる接着成分を塗布して、生体接着用フィルムとした。さらに、上記の構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものを作成した。
さらに、上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
市販のゼラチン、スターチ(でんぷん)、アルギン酸ソーダ、寒天、セルロース、ポリグルタミン酸、キチンキトサン、こんにゃく、紙、綿織布、シルク織布、セロファンからそれぞれ作られている厚さ0.1から1mmの一辺5cmの正方形のそれぞれのシートを、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテートNa(昭和電工製)10%水溶液に24時間浸漬したのち、凍結乾燥し本発明のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物の実施例である組織保護用シートを作成した。
さらに、上記の構造物1g中に、線維芽細胞増殖因子(FGF)10μg、グリチルリチン酸2K10mg、塩化ベンザルコニウム1mg、dl−α―トコフェリルリン酸Na10mgを均一に分散したものも作成した。
モルモットの肝臓切除モデル(肝臓の1/3重量をレーザーメスで切除)に対して、本発明の皮膚保護用シートを用い、肝臓切除部位を含む肝臓全体を0.5g/平方cmの割合で完全に覆い、肝臓が完全再生するまでの期間を測定し、従来のアスコルビン酸誘導体を含まない同素材及びアスコルビン酸誘導体の代わりにL−アスコルビン酸を同量添加した区と比較した。その結果、無添加区の従来物より約2.5倍、L−アスコルビン酸を同量添加した区より約1.5倍速いスピードで肝臓が完全再生した。
さらに上記結果には数値が記載されていないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリチルリチン酸2K、塩化ベンザルコニウム、dl−α―トコフェリルリン酸Naを均一に分散したものも結果が比較例より格段に良好であった。
Claims (21)
- 生分解性高分子組成物に下記式〔I〕で示されるアスコルビン酸誘導体が含有されていることを特徴とするアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
- アスコルビン酸誘導体がL−アスコルビン酸―2−リン酸及びその塩類、アスコルビン酸−2−リン酸−6−脂肪酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−(2’−ヘキシルデカン酸)エステル、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−(2’−ブチルヘキサン酸)エステル、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−(2’−ヘプチルウンデカン酸)エステル、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミチン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−ステアリン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド−6−パルミチン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド−6−ステアリン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド−6−脂肪酸、アスコルビン酸−2,6−ジステアリン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル亜鉛、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−パルミテートナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム亜鉛、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、L−アスコルビン酸エチル、L−アスコルビン酸−2−リン酸トコフェロール、L−アスコルビン酸−2−マレイン酸トコフェロール、L−アスコルビン酸−6−パルミテート、L−アスコルビン酸−2,6−ジパルミテート、イソステアリル2−0−L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、L−アスコルビル−2,3,5,6−テトライソパルミテートから選択される単体又は2種以上の複合物から選択されるアスコルビン酸誘導体及びその塩類又はその複合塩から選択されるアスコルビン酸誘導体である請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
- 前記生分解性高分子が以下の高分子化合物の一種又は二種以上の複合組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)系高分子、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)系高分子、 ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリアルキレンアルカノエート、ポリエステル系高分子、ポリプロピレン系高分子、ポリアミド系高分子、ポリテトラフルオロエチレン系高分子、PGA−PLA系高分子 、ポリジオキサノン系高分子 、キチン・キトサン系高分子、ポリアミノ酸系高分子、ポリ糖鎖系高分子、ポリ核酸系高分子、ハイドロキシアパタイト系高分子、リン酸カルシウム系高分子、ゼラチン、スターチ(でんぷん)、アルギン酸ソーダ、寒天、セルロース、ポリグルタミン酸、キチンキトサン、こんにゃく、アミノ酸系高分子、ペプチド系高分子、多糖類系高分子、天然脂質系高分子、核酸系高分子。 - 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする線維。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする縫合用糸。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする織布。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする不織布。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とするフィルム。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする成型物。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とするガーゼ。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする絆創膏。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする包帯。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする骨折補強材料。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体インプラント。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体用接着剤。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする生体用接着フィルム。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする細胞培養用容器。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする多孔質構造体。
- 請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物を含有することを特徴とする中空繊維構造体。
- 生分解性の高分子と生分解性でない高分子の2種の高分子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
- さらに、創傷治癒促進剤、抗炎症剤、抗感染症剤、および活性酸素消去剤からなる群から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のアスコルビン酸誘導体含有生体組織用創傷治癒用高分子組成物。
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