JP2004161684A - 生理活性物質含有創傷治癒用フィルム製剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を水溶性高分子の基質に配合することを特徴とする創傷治癒用フィルム製剤。
【効果】本発明の創傷治癒用フィルム製剤は、皮膚に対して柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着可能であり、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができる。
【選択図】 なし
【効果】本発明の創傷治癒用フィルム製剤は、皮膚に対して柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着可能であり、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性高分子の基質に生理活性物質を含有することを特徴とする、創傷治癒製剤に関するものである。さらに詳しくは、本発明は水溶性高分子の基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含有し、さらに必要に応じて多価アルコール及び/又は界面活性剤から選ばれる可塑剤等を配合した製剤であって、創傷に貼付あるいは塗布することにより、創傷治癒促進有効量の生理活性物質を局所的に放出する創傷治癒用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質を創傷の治癒に利用することは既に行われている。しかし、これらの生理活性物質は酸、アルカリ、熱等、物理化学的に非常に不安定であり、また特に水分の存在下では極めて不安定であるため、生理活性がすぐに失活してしまうという重大な欠点がある。このようなことからこれらの生理活性物質は優れた生理活性を有するにもかかわらず、医薬品として製剤化することは容易ではない。そのため、生理活性物質配合製剤の安定化の試みとして、細胞成長因子をゼラチンフォームに含浸する方法(特許文献1)、細胞成長因子をヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に配合し凍結乾燥フォームにする方法(特許文献2)、熱可塑性ポリマーを有機溶媒で溶融し細胞成長因子を配合した液体組成物にする方法(特許文献3)、等が知られている。しかしながら、いずれもゲル状組成物、粉末組成物あるいは液状組成物中での細胞成長因子の安定化に限られている。また、水溶性ポリマー及び不溶性ポリマーを有機溶媒で溶解し細胞成長因子を配合後、加熱により乾燥しシート状組成物にする方法(特許文献4)が知られているが、この方法を用いた場合、生理活性物質が加熱により失活してしまうおそれがある。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第93/21908号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第94/05341号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第95/27481号パンフレット
【特許文献4】
国際公開第96/23488号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に熱傷、褥瘡、糖尿病性潰瘍等の難治性皮膚潰瘍には、強力な創傷治癒促進作用のある各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質の投与が有効であると考えられている。上記従来の安定化された生理活性物質のゲル状組成物、粉末組成物あるいは液状組成物も、通常の手法で、液、軟膏、クリーム、ゲル等の剤形の外用剤に調製して潰瘍部位に直接投与することも可能ではある。しかしながら、液剤の場合、ガーゼ等に含浸させて使うために傷口にガーゼ等が固着し、ガーゼ交換時に新生上皮を損なうおそれがあり、軟膏、クリーム、ゲルの場合、傷口に薬剤を手で塗り込まなくてはならず、生理活性物質のような微量で活性の強い物質を扱うのには好ましくない。さらに損傷部位は当然痛みを伴うことが考えられ、塗擦時の物理的刺激は痛みの閾値の低い患者にとって過度の刺激となる可能性がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、創傷治癒促進作用を有する各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質を前記の如き難治性皮膚潰瘍の治療に用いるために、従来製剤が有する欠点を克服し、かつ生理活性物質の安定化をはかる方法を鋭意研究したところ、創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を水溶性高分子の基質に配合したフィルム製剤が、患部のサイズに合わせて裁断し、創傷部位に置くだけという簡便な方法で生理活性物質を患部に投与でき、しかも患部への適用後、フィルムが溶解することによって生理活性物質が深部へと浸透可能なため、深部潰瘍にも適用可能であることを見いだした。また、水溶性高分子のフィルム製剤は薄くて柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着し、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができ、また生理食塩水等の液体で簡単に洗い流すことができるので傷の処置及び管理がしやすいという、潰瘍部位に適用する製剤として満足すべき特徴を具備している。加えて水溶液中といった水の存在下では極めて不安定である細胞成長因子が、含水率の少ないフィルム製剤中では特に安定剤を用いずとも安定であることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は水溶性高分子の基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含有し、さらに必要に応じて多価アルコール及び/又は界面活性剤から選ばれる可塑剤等を配合したフィルム製剤であって、創傷に貼付することにより、有効量の生理活性物質を局所的に放出する創傷治癒用製剤を提供する。すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を、ゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる水溶性高分子の基質に配合することを特徴とする創傷治癒用フィルム製剤。
〔2〕生理活性物質が上皮増殖因子(EGF)又は神経細胞成長因子(NGF)である上記〔1〕に記載の製剤。
〔3〕製剤の含水率が、35重量%以下である上記〔1〕に記載の製剤。
〔4〕多価アルコール及び/又は界面活性剤を配合した上記〔1〕に記載の製剤。
〔5〕多価アルコール及び/又は界面活性剤の配合量がフィルム製剤重量の5〜40重量%の範囲である上記〔4〕に記載の製剤。
〔6〕上記〔1〕記載のフィルム製剤を感圧性粘着剤層に一層以上積層してなる製剤。
〔7〕電離性放射線を上記〔1〕又は〔6〕に記載の製剤に照射してなる創傷治癒用製剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる創傷治癒促進活性を有する生理活性物質としては創傷治癒促進活性を有する物質であれば特に限定されない。該創傷治癒促進活性としては、例えば、創傷部の組織細胞の生育を積極的に助長する効果、線維芽細胞の増殖効果、コラーゲンIIIの生成効果、新生血管の早期生成効果、神経細胞の再生を促進する効果などが挙げられる。例えば、そのような創傷治癒促進活性を有する生理活性物質の例としては、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、変換成長因子α及びβ(TGFα、TGFβ)、角化細胞増殖因子(ケラチノサイト成長因子;KGF)、インスリン様成長因子1及び2(IGF1、IGF2)並びに腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1及び6(IL−1、IL−6)といった各種成長因子が挙げられる。本発明で特に好ましい生理活性物質としては、天然由来、合成、半合成、又は遺伝子組換えにより製造した、ヒト上皮増殖因子(Epidermal Growth Factor、以下EGF)、神経細胞成長因子(Nerve Growth Factor、以下NGF)が挙げられるが、遺伝子操作技術によりクローン化し、微生物や動物細胞中で発現させた組換え型のEGF及びNGFが、大量で効率的に得られる点から好ましい。その配合量は製剤中に0.01〜20重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%が望ましい。生理活性物質が0.01重量%未満の場合、所望の創傷治癒促進効果が得られず表皮形成が遅れるために治癒に過度の時間を要する。また20重量%を超える場合、生理活性物質の添加量増加による有意な効果は期待しがたく、添加量増加による副作用の発生を伴う危険性が大きくなる。
【0008】
本発明のフィルム製剤は、水溶性高分子からなる基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に用いる水溶性高分子としては、ゼラチンなどの天然タンパク質;ペクチンなどの天然多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドなどの合成高分子;など水溶性の天然又は合成高分子が挙げられる。上記水溶性高分子のうち、25℃以下の保存下で安定であるという点からゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムが好適に用いられ、40℃以下の保存下で安定であり、さらに生体適合性が良く、刺激性の少ないこと、また体温程度の比較的低い融点を有するという点からゼラチンが最も好適に用いられる。
【0010】
本発明の製剤には、製剤の柔軟性を改善する目的でグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等の界面活性剤などの可塑剤を添加することができる。その添加量は全製剤重量の2〜30重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量%が望ましい。添加剤が2重量%未満では、添加による可塑化効果がフィルム全体の物性に大きな影響を及ぼさず、柔軟性向上という期待する効果を十分に得ることができない。また添加量が30重量%を超えると、過度の可塑化によりフィルム強度が極端に低下し、実用性に乏しくなる。
【0011】
本発明の製剤の含水率は、生理活性物質の安定化の点から重要であり、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。35重量%を超える含水率は、フィルム強度が極端に低下し実用性に乏しくなることや、生理活性物質の生理活性が不安定となることから好ましくない。
【0012】
上記含水率の測定方法としては、加熱乾燥法、乾燥助剤法、カールフィッシャー法などが挙げられ、当該方法を用いて測定される含水率が35重量%以下であればよい。測定方法の具体例として、以下の例が挙げられる。
フィルム製剤から約0.1gのフィルムを採取し、重量(W1)を精秤する。次いで、精秤したフィルムを110℃で1日乾燥して乾燥後の重量(W2)を精秤する。含水率を以下の式にて算出する。
含水率[%]=[(W1−W2)/W1]×100
【0013】
本発明の製剤の厚みとしては、5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。製剤の厚みが5μm未満の場合は、フィルム強度が弱くなり、破損が生じやすく、取扱いが難しいため好ましくない。逆に200μmを超えると、柔軟性に欠け、傷口への密着性が悪くなるため好ましくない。
【0014】
本発明のフィルム製剤を使用するにあたって、本発明のフィルム製剤を長期間創傷部に置いた場合、そのままでは創傷からの浸出液等が皮膚表面から蒸発可能なため、通常使用される被覆材、たとえばフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等で被覆し、その蒸発を防ぐことによって、さらに創傷治癒を促進することができる。更に、よりよい方法は、本発明のフィルム製剤を製造工程でフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等に使用されているような感圧性粘着剤層に常法により積層し、本発明のフィルム製剤を一層以上の層からなる積層構造の製剤とすることもできる。
【0015】
感圧性粘着剤層に使用される粘着剤は、特に限定されないが、粘着力が強く、皮膚との密着性が良く、皮膚に湿疹等を生じさせないものが好ましい。粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、ハイドロコロイド系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。これらのうち、粘着力が強く、皮膚との密着性が良く、皮膚に湿疹等を生じさせないものが好ましいことから、アクリル系粘着剤や吸収性のあるハイドロコロイド系粘着剤が好ましく用いられる。
【0016】
上記アクリル系粘着剤とは、アクリル酸アルキルエステル単量体とアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体とを必須成分として含有するものである。
【0017】
アクリル酸アルキルエステル単量体は、接着剤層に粘着性、皮膚接着性を付与する成分であり、特にアルキル基の炭素数が6以上、特に6〜18の長鎖アルキルエステルを用いると効果的である。また、アクリル酸アルキルエステル単量体は、皮膚に対する刺激性が比較的少なく、長時間の使用によっても粘着性の低下が起こりにくいという利点を有するものである。このようなアクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸のブチルエステル、プロピルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ドデシルエステル、ラウリルエステルなどを一種もしくは二種以上併用して用いることができるが、これらに限定されない。なお、これらのアルキルエステル鎖は直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0018】
上記アクリル酸アルキルエステルと共重合するアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体は、得られる共重合体に水蒸気透過性を付与する成分である。このような不飽和単量体としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアルキルアクリレートを用いることが好ましい。
【0019】
また、上記アルコキシ基含有不飽和単量体と共にカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することが好ましい。該カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することによって、得られる共重合体の凝集力が向上するので、感圧性接着剤を調製する上では重要な単量体となる。このような単量体の代表例としては、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、共重合性や取扱い性などの点で好ましい単量体としては、アクリル酸が挙げられる。
【0020】
なお、接着剤中に含有させる共重合体としては、上記各単量体の共重合体を用いることができるが、親水性の付与などの各種改質を行うための改質用単量体として、スチレンや酢酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドンなどの単量体を必要に応じて適宜共重合してもよい。
【0021】
上記シリコーン系接着剤とは、オルガノシロキサン系のゴム成分と、シリコーン系樹脂を縮合溶媒の存在下でシラノール基を脱水縮合させたポリマーを主成分として用いたものである。オルガノシロキサン系のゴム成分としては平均分子量が15〜150万、好ましくは20〜100万のジメチルポリシロキサンを用いることができる。シリコーン系樹脂としては、一官能性シロキサン単位と四官能性シロキサン単位からなる三次元構造体を好ましく用いることができ、粘着性を付与するために、通常平均分子量1000〜3万、好ましくは3000〜1万のものを使用する。
【0022】
上記ハイドロコロイド系粘着剤とは、下記ゴム系接着剤とハイドロコロイド粉末を必須成分とし、しかもこのハイドロコロイド粉末が吸水性及び/又は水膨潤性を有し、しかも造塩能及び/又は配位能をもつ官能基を有するポリマーからなるものであり、この接着性組成物中に、更に水に対して易溶性のアルミニウム塩が粒子状態で混合分散されている粘着剤である。
【0023】
上記ゴム系接着剤としては、乾燥時に接着性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、その例としては、天然又は合成の粘性ゴム状物質、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリルゴムなどから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、粘度平均分子量(Flory法による。以下同じ。)が、約30000〜120000の中分子量ポリイソブチレンゴムが優れた粘着性を有するので、特に望ましい。
【0024】
また、上記に用いることのできる吸水性及び/又は水膨張性のポリマーからなるハイドロコロイド粉末としては、造塩能及び/又は配位能を持つ官能性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、濡れた際に接着性を発揮するものが好ましく、特に生理食塩水に浸した場合、浸透性が速く、且つ吸液能の大きいポリマーが望ましい。例えば、ポリアクリル酸及び/又はその塩、アクリル酸/ビニルアルコールポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、メチルビニルエーテル/マレイン酸の長鎖ポリマー、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、澱粉−アクリル酸塩グラフトポリマー、アクリル酸−アクリルアミドコポリマー、アルギン酸及び/又はそのナトリウム塩、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選ばれた少なくとも1種が用いられ、あるいは1種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
また、上記のアルミニウム塩としては、水に対して易溶性のものであれば、特に限定されるものではなく、無機系アルミニウム塩又は有機系アルミニウム塩あるいはこれらの混合物が挙げられる。具体的には、例えば、易溶性のアルミニウム塩としてミョウバン、焼ミョウバン、硫酸アルミニウム(無水物、水和物)、硝酸アルミニウム水和物、乳酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム等が挙げられ、これらから選ばれた1種若しくは2種以上のアルミニウム塩が用いられる。
【0026】
さらに、アルミニウム塩に比べて水に対して難溶性の金属塩及び/又は難溶性の金属酸化物を混合するのが望ましい。この金属塩及び/又は金属酸化物は、アルミニウム塩に比べて水に対して難溶性であって、イオン架橋可能であれば特に限定されるものではない。この具体的な例として、例えば、安息香酸亜鉛(無水物、1水和物)、クエン酸亜鉛、炭酸亜鉛、乳酸亜鉛(3水和物、2水和物のD型)、酸化亜鉛(亜鉛華)、サリチル酸亜鉛3水和物、硫化亜鉛、亜硫酸亜鉛水和物、安息香酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム4水和物、ふっ化カルシウム、グリセリン酸カルシウム(無水物、2水和物)、リン酸二水素カルシウム1水和物、リン酸三カルシウム、亜リン酸カルシウム水和物、硫酸カルシウム(2水和物、無水物)、亜硫酸カルシウム水和物、酒石酸カルシウム4水和物、チオシアン酸カルシウム等が挙げられる。
【0027】
また、必要に応じて、上記のハイドロコロイド系粘着剤の凝集性や接着性を改善する目的で、他のゴムエラストマーをさらに配合することが可能である。このゴムエラストマーとしては、具体的には、高分子量(粘度平均分子量約100万〜200万)のポリイソブチレン、ポリイソプレン、ブチルゴムや、スチレン−ブタジエン−スチレン(S−B−S)及びスチレン−イソプレン−スチレン(S−I−S)及びスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(S−E/B−S)などの各種スチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0028】
また所望により、上記ハイドロコロイド系接着剤層に、可塑剤又は溶剤、例えば鉱油又はペトロラタム、鉱油やテルペン樹脂等の粘着性付与剤を配合することが可能である。
【0029】
また所望により、上記ハイドロコロイド系接着剤層中に他の吸水性及び/又は水膨潤性のポリマーを含有させることもできる。このポリマーとしては、吸水性及び/又は水膨潤性のポリマーであれば特に限定されるものではないが、傷浸出液等で濡れた際に接着性を発現できるものが好ましく、例えば、カラヤゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、水不溶性澱粉−アクリロニトリルグラフトポリマー、水不溶性架橋デキストリン等が挙げられる。
【0030】
また、本発明においては電離性放射線を照射することによって、所謂滅菌処理を施すことができるので、本発明のような創傷治癒用製剤においては極めて好都合である。本発明に用いる電離性放射線としては、一般的な放射線として、γ線、電子線、X線などを用いることができ、これらのうち安全性や取扱い性の点から、γ線、電子線を用いることが好ましい。また、エチレンオキサイドガスなどを用いたガス滅菌も適用可能であるが、残留ガスの点から電離性放射線を用いた滅菌処理の方が好ましい。
【0031】
本発明のフィルム製剤の一般的な製法としては、まず水又は緩衝液に必要に応じて可塑剤を加え、ついで水溶性高分子を添加し、溶解させた後、生理活性物質を含有する水又は緩衝液を添加し、攪拌して均一な溶液にする。この配合溶液を脱気した後、この溶液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥して生理活性物質含有フィルム製剤とする。乾燥温度としては、一般的に乾燥温度の上昇に伴って所要時間は短縮され、1〜60℃で乾燥は可能であるが、乾燥温度が高すぎると生理活性物質が失活するおそれがあるので、乾燥温度は1〜10℃程度のなるべく低い温度が好ましい。また、フィルム製剤の保存温度としては、4〜40℃での保存も可能であるが、生理活性物質の失活を防ぐためには4℃以下の低温保存が好ましい。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
精製水95gにゼラチン5gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、ヒトEGFの代わりにマウスNGFを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、ゼラチンの代わりにペクチンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリビニルピロリドンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリビニルアルコールを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリアクリル酸ナトリウムを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0039】
(実施例7)
精製水90gにグリセリン0.5gを加え、ゼラチン4.5gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0040】
(比較例1)
実施例1において、ヒトEGFを配合しない他は、実施例1と同様にしてフィルム製剤を得た。
【0041】
(比較例2)
実施例1において、ゼラチンの代わりにカルボキシメチルセルロースを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0042】
(比較例3)
実施例1において、ゼラチンの代わりに寒天を用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0043】
(比較例4)
実施例1において、ゼラチンの代わりにデンプンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0044】
(比較例5)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリエチレンオキサイドを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0045】
(比較例6)
精製水90gにグリセリン3.0gを加え、ゼラチン2.0gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0046】
上記実施例及び比較例にて得られたフィルム製剤について以下の試験をおこなった。
【0047】
試験例1<含水率>
各フィルム製剤から約0.1gのフィルムを採取し、重量(W1)を精秤した。次いで、精秤したフィルムを110℃で1日乾燥して乾燥後の重量(W2)を精秤した。含水率を以下の式にて算出した。結果を表1に示す。
含水率[%]=[(W1−W2)/W1]×100
【0048】
試験例2<フィルム製膜性>
配合液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布する際の塗布性と、塗布後のフィルムの製膜状態を目視にて判定した。結果を表1に示す。
○:全く問題なくフィルム製膜できる。
×:ポリエステルフィルム上に塗布できない、又は塗布後のフィルムの成形ができていない。
【0049】
試験例3<操作性>
各フィルム製剤を30mm×30mmに切断し、離型処理したポリエステルフィルムからフィルム製剤をはがし、創傷部位に貼付あるいは塗布する時の操作性を評価した。結果を表1に示す。
○:全く問題なく操作でき、貼付あるいは塗布できる。
×:操作しづらい又は全く操作できず、貼付あるいは塗布できない。
【0050】
【表1】
【0051】
試験例4<安定性の評価>
実施例1及び3〜6、また比較例5の製剤を4℃の低温室及び25℃、40℃の恒温室に保存した。その後ELISA法によってEGFの残存量を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
試験例5<生理活性の評価>
・EGF含有フィルム製剤の場合
EGFの生理活性は、NIH3T3 cellに対する増殖活性をMTT法によって測定することにより確認した。
実施例1及び比較例1で調製したフィルム製剤を5mm×10mmに裁断し、0.1%BSA含有α−MEM溶液に入れ、37℃10分で溶解させる。次に、10%FCS−α−MEM溶液中37℃でインキュベートしたNIH3T3 cell(東京大学医科学研究所)にこの溶液を加え、37℃で20時間インキュベートした。次にMTTを加え4時間インキュベートした。10%SDS−0.01N HClで反応を停止させ、577nmで吸光度を測定した。結果を図1に示す。
・NGF含有フィルム製剤の場合
実施例2で調製したフィルム製剤を5mm×10mmに裁断し、0.1%BSA含有α−MEM溶液に入れ、37℃10分で溶解させる。次に、PC12 cell(ATCC)にこの溶液を加えインキュベートし、光学顕微鏡下にて樹状突起の伸展している細胞をカウントした。樹状突起は細胞体の3倍以上伸展している細胞を陽性とし、データは全細胞数に占める樹状突起伸展細胞の割合、すなわち(%)として表した。結果を図2に示す。
(結果)
図1、図2に示す結果から、本発明のフィルム製剤は生理活性物質の生理活性を安定に維持することがわかった。
【0054】
試験例6<創傷治癒に及ぼす影響>
実施例1及び比較例1で調製したフィルム製剤の創傷治癒に及ぼす影響を、ヘアレスドックの皮膚分層採皮創モデルを用いて検討した。ヘアレスドックをアトロピン(0.04mg/kg)とキシラジン(0.5mg/kg)で前処置したのち、サイアミラール(10mg/kg)で導入し、挿管後、2%イソフルランで維持し、背部皮膚を消毒用エタノールにて清拭後、外科用カンナを用いて皮膚分層採皮創(3×3cm)を作成した。皮膚切除後、サンプルを1日1回15日間(計15回)貼付し、創面をパーミエイドS(日東電工株式会社製)により被覆した。創面を3日間隔で写真をとり、画像解析装置により創傷面積を測定し、切除後直後の面積に対する比率を算出して創傷治癒効果を求めた。結果を図3に示す。
(結果)
比較例1のフィルム製剤の創傷面積は徐々に縮小し、切除後15日目の創傷面積は36%であった。一方、実施例1のフィルム製剤の創傷面積は、比較例1のフィルム製剤と比較して、投与6日目より急速にかつ有意に縮小し、切除後15日目の創傷面積は22%で明らかな創傷治癒促進作用を示した。また、血管新生及び肉芽形成の程度において、実施例1は比較例1と比較していずれも早期に強く認められ、創傷治癒促進に寄与したものと考えられた。以上の結果から、本発明の生理活性物質含有フィルム製剤は創傷治癒剤として有効であることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の製剤は上記構成からなるようにフィルム状の剤形をしているので、皮膚に対して柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着し、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができ、液体で簡単に洗い流すことができるので傷の処置及び管理がしやすいという、潰瘍部位に適用する製剤として満足すべき特徴を具備している。また加えて水溶液中で極めて不安定である生理活性物質が、含有水分の少ない製剤中では特定の安定剤を用いずとも安定である。また、本製剤を使用するにあたって、通常使用される被覆材、たとえばフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等で覆うこともできる。更に、このような被覆材に使用されている粘着剤組成物やハイドロコロイド組成物に対し、本製剤を同一又は異なる二層又はそれ以上の層からなる積層構造の製剤とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEGF含有フィルム製剤のEGF生理活性維持能を示すグラフである。
【図2】本発明のNGF含有フィルム製剤の神経成長に対する効果を示すグラフである。
【図3】実施例1及び比較例1で調製したEGF含有フィルム製剤の創傷治癒に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性高分子の基質に生理活性物質を含有することを特徴とする、創傷治癒製剤に関するものである。さらに詳しくは、本発明は水溶性高分子の基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含有し、さらに必要に応じて多価アルコール及び/又は界面活性剤から選ばれる可塑剤等を配合した製剤であって、創傷に貼付あるいは塗布することにより、創傷治癒促進有効量の生理活性物質を局所的に放出する創傷治癒用製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質を創傷の治癒に利用することは既に行われている。しかし、これらの生理活性物質は酸、アルカリ、熱等、物理化学的に非常に不安定であり、また特に水分の存在下では極めて不安定であるため、生理活性がすぐに失活してしまうという重大な欠点がある。このようなことからこれらの生理活性物質は優れた生理活性を有するにもかかわらず、医薬品として製剤化することは容易ではない。そのため、生理活性物質配合製剤の安定化の試みとして、細胞成長因子をゼラチンフォームに含浸する方法(特許文献1)、細胞成長因子をヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に配合し凍結乾燥フォームにする方法(特許文献2)、熱可塑性ポリマーを有機溶媒で溶融し細胞成長因子を配合した液体組成物にする方法(特許文献3)、等が知られている。しかしながら、いずれもゲル状組成物、粉末組成物あるいは液状組成物中での細胞成長因子の安定化に限られている。また、水溶性ポリマー及び不溶性ポリマーを有機溶媒で溶解し細胞成長因子を配合後、加熱により乾燥しシート状組成物にする方法(特許文献4)が知られているが、この方法を用いた場合、生理活性物質が加熱により失活してしまうおそれがある。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第93/21908号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第94/05341号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第95/27481号パンフレット
【特許文献4】
国際公開第96/23488号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に熱傷、褥瘡、糖尿病性潰瘍等の難治性皮膚潰瘍には、強力な創傷治癒促進作用のある各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質の投与が有効であると考えられている。上記従来の安定化された生理活性物質のゲル状組成物、粉末組成物あるいは液状組成物も、通常の手法で、液、軟膏、クリーム、ゲル等の剤形の外用剤に調製して潰瘍部位に直接投与することも可能ではある。しかしながら、液剤の場合、ガーゼ等に含浸させて使うために傷口にガーゼ等が固着し、ガーゼ交換時に新生上皮を損なうおそれがあり、軟膏、クリーム、ゲルの場合、傷口に薬剤を手で塗り込まなくてはならず、生理活性物質のような微量で活性の強い物質を扱うのには好ましくない。さらに損傷部位は当然痛みを伴うことが考えられ、塗擦時の物理的刺激は痛みの閾値の低い患者にとって過度の刺激となる可能性がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、創傷治癒促進作用を有する各種成長因子、細胞増殖因子などの生理活性物質を前記の如き難治性皮膚潰瘍の治療に用いるために、従来製剤が有する欠点を克服し、かつ生理活性物質の安定化をはかる方法を鋭意研究したところ、創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を水溶性高分子の基質に配合したフィルム製剤が、患部のサイズに合わせて裁断し、創傷部位に置くだけという簡便な方法で生理活性物質を患部に投与でき、しかも患部への適用後、フィルムが溶解することによって生理活性物質が深部へと浸透可能なため、深部潰瘍にも適用可能であることを見いだした。また、水溶性高分子のフィルム製剤は薄くて柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着し、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができ、また生理食塩水等の液体で簡単に洗い流すことができるので傷の処置及び管理がしやすいという、潰瘍部位に適用する製剤として満足すべき特徴を具備している。加えて水溶液中といった水の存在下では極めて不安定である細胞成長因子が、含水率の少ないフィルム製剤中では特に安定剤を用いずとも安定であることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は水溶性高分子の基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含有し、さらに必要に応じて多価アルコール及び/又は界面活性剤から選ばれる可塑剤等を配合したフィルム製剤であって、創傷に貼付することにより、有効量の生理活性物質を局所的に放出する創傷治癒用製剤を提供する。すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を、ゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる水溶性高分子の基質に配合することを特徴とする創傷治癒用フィルム製剤。
〔2〕生理活性物質が上皮増殖因子(EGF)又は神経細胞成長因子(NGF)である上記〔1〕に記載の製剤。
〔3〕製剤の含水率が、35重量%以下である上記〔1〕に記載の製剤。
〔4〕多価アルコール及び/又は界面活性剤を配合した上記〔1〕に記載の製剤。
〔5〕多価アルコール及び/又は界面活性剤の配合量がフィルム製剤重量の5〜40重量%の範囲である上記〔4〕に記載の製剤。
〔6〕上記〔1〕記載のフィルム製剤を感圧性粘着剤層に一層以上積層してなる製剤。
〔7〕電離性放射線を上記〔1〕又は〔6〕に記載の製剤に照射してなる創傷治癒用製剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる創傷治癒促進活性を有する生理活性物質としては創傷治癒促進活性を有する物質であれば特に限定されない。該創傷治癒促進活性としては、例えば、創傷部の組織細胞の生育を積極的に助長する効果、線維芽細胞の増殖効果、コラーゲンIIIの生成効果、新生血管の早期生成効果、神経細胞の再生を促進する効果などが挙げられる。例えば、そのような創傷治癒促進活性を有する生理活性物質の例としては、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、変換成長因子α及びβ(TGFα、TGFβ)、角化細胞増殖因子(ケラチノサイト成長因子;KGF)、インスリン様成長因子1及び2(IGF1、IGF2)並びに腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1及び6(IL−1、IL−6)といった各種成長因子が挙げられる。本発明で特に好ましい生理活性物質としては、天然由来、合成、半合成、又は遺伝子組換えにより製造した、ヒト上皮増殖因子(Epidermal Growth Factor、以下EGF)、神経細胞成長因子(Nerve Growth Factor、以下NGF)が挙げられるが、遺伝子操作技術によりクローン化し、微生物や動物細胞中で発現させた組換え型のEGF及びNGFが、大量で効率的に得られる点から好ましい。その配合量は製剤中に0.01〜20重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%が望ましい。生理活性物質が0.01重量%未満の場合、所望の創傷治癒促進効果が得られず表皮形成が遅れるために治癒に過度の時間を要する。また20重量%を超える場合、生理活性物質の添加量増加による有意な効果は期待しがたく、添加量増加による副作用の発生を伴う危険性が大きくなる。
【0008】
本発明のフィルム製剤は、水溶性高分子からなる基質に創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に用いる水溶性高分子としては、ゼラチンなどの天然タンパク質;ペクチンなどの天然多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドなどの合成高分子;など水溶性の天然又は合成高分子が挙げられる。上記水溶性高分子のうち、25℃以下の保存下で安定であるという点からゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムが好適に用いられ、40℃以下の保存下で安定であり、さらに生体適合性が良く、刺激性の少ないこと、また体温程度の比較的低い融点を有するという点からゼラチンが最も好適に用いられる。
【0010】
本発明の製剤には、製剤の柔軟性を改善する目的でグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等の界面活性剤などの可塑剤を添加することができる。その添加量は全製剤重量の2〜30重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量%が望ましい。添加剤が2重量%未満では、添加による可塑化効果がフィルム全体の物性に大きな影響を及ぼさず、柔軟性向上という期待する効果を十分に得ることができない。また添加量が30重量%を超えると、過度の可塑化によりフィルム強度が極端に低下し、実用性に乏しくなる。
【0011】
本発明の製剤の含水率は、生理活性物質の安定化の点から重要であり、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。35重量%を超える含水率は、フィルム強度が極端に低下し実用性に乏しくなることや、生理活性物質の生理活性が不安定となることから好ましくない。
【0012】
上記含水率の測定方法としては、加熱乾燥法、乾燥助剤法、カールフィッシャー法などが挙げられ、当該方法を用いて測定される含水率が35重量%以下であればよい。測定方法の具体例として、以下の例が挙げられる。
フィルム製剤から約0.1gのフィルムを採取し、重量(W1)を精秤する。次いで、精秤したフィルムを110℃で1日乾燥して乾燥後の重量(W2)を精秤する。含水率を以下の式にて算出する。
含水率[%]=[(W1−W2)/W1]×100
【0013】
本発明の製剤の厚みとしては、5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。製剤の厚みが5μm未満の場合は、フィルム強度が弱くなり、破損が生じやすく、取扱いが難しいため好ましくない。逆に200μmを超えると、柔軟性に欠け、傷口への密着性が悪くなるため好ましくない。
【0014】
本発明のフィルム製剤を使用するにあたって、本発明のフィルム製剤を長期間創傷部に置いた場合、そのままでは創傷からの浸出液等が皮膚表面から蒸発可能なため、通常使用される被覆材、たとえばフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等で被覆し、その蒸発を防ぐことによって、さらに創傷治癒を促進することができる。更に、よりよい方法は、本発明のフィルム製剤を製造工程でフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等に使用されているような感圧性粘着剤層に常法により積層し、本発明のフィルム製剤を一層以上の層からなる積層構造の製剤とすることもできる。
【0015】
感圧性粘着剤層に使用される粘着剤は、特に限定されないが、粘着力が強く、皮膚との密着性が良く、皮膚に湿疹等を生じさせないものが好ましい。粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、ハイドロコロイド系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。これらのうち、粘着力が強く、皮膚との密着性が良く、皮膚に湿疹等を生じさせないものが好ましいことから、アクリル系粘着剤や吸収性のあるハイドロコロイド系粘着剤が好ましく用いられる。
【0016】
上記アクリル系粘着剤とは、アクリル酸アルキルエステル単量体とアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体とを必須成分として含有するものである。
【0017】
アクリル酸アルキルエステル単量体は、接着剤層に粘着性、皮膚接着性を付与する成分であり、特にアルキル基の炭素数が6以上、特に6〜18の長鎖アルキルエステルを用いると効果的である。また、アクリル酸アルキルエステル単量体は、皮膚に対する刺激性が比較的少なく、長時間の使用によっても粘着性の低下が起こりにくいという利点を有するものである。このようなアクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸のブチルエステル、プロピルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ドデシルエステル、ラウリルエステルなどを一種もしくは二種以上併用して用いることができるが、これらに限定されない。なお、これらのアルキルエステル鎖は直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0018】
上記アクリル酸アルキルエステルと共重合するアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体は、得られる共重合体に水蒸気透過性を付与する成分である。このような不飽和単量体としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアルキルアクリレートを用いることが好ましい。
【0019】
また、上記アルコキシ基含有不飽和単量体と共にカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することが好ましい。該カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することによって、得られる共重合体の凝集力が向上するので、感圧性接着剤を調製する上では重要な単量体となる。このような単量体の代表例としては、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、共重合性や取扱い性などの点で好ましい単量体としては、アクリル酸が挙げられる。
【0020】
なお、接着剤中に含有させる共重合体としては、上記各単量体の共重合体を用いることができるが、親水性の付与などの各種改質を行うための改質用単量体として、スチレンや酢酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドンなどの単量体を必要に応じて適宜共重合してもよい。
【0021】
上記シリコーン系接着剤とは、オルガノシロキサン系のゴム成分と、シリコーン系樹脂を縮合溶媒の存在下でシラノール基を脱水縮合させたポリマーを主成分として用いたものである。オルガノシロキサン系のゴム成分としては平均分子量が15〜150万、好ましくは20〜100万のジメチルポリシロキサンを用いることができる。シリコーン系樹脂としては、一官能性シロキサン単位と四官能性シロキサン単位からなる三次元構造体を好ましく用いることができ、粘着性を付与するために、通常平均分子量1000〜3万、好ましくは3000〜1万のものを使用する。
【0022】
上記ハイドロコロイド系粘着剤とは、下記ゴム系接着剤とハイドロコロイド粉末を必須成分とし、しかもこのハイドロコロイド粉末が吸水性及び/又は水膨潤性を有し、しかも造塩能及び/又は配位能をもつ官能基を有するポリマーからなるものであり、この接着性組成物中に、更に水に対して易溶性のアルミニウム塩が粒子状態で混合分散されている粘着剤である。
【0023】
上記ゴム系接着剤としては、乾燥時に接着性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、その例としては、天然又は合成の粘性ゴム状物質、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリルゴムなどから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、粘度平均分子量(Flory法による。以下同じ。)が、約30000〜120000の中分子量ポリイソブチレンゴムが優れた粘着性を有するので、特に望ましい。
【0024】
また、上記に用いることのできる吸水性及び/又は水膨張性のポリマーからなるハイドロコロイド粉末としては、造塩能及び/又は配位能を持つ官能性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、濡れた際に接着性を発揮するものが好ましく、特に生理食塩水に浸した場合、浸透性が速く、且つ吸液能の大きいポリマーが望ましい。例えば、ポリアクリル酸及び/又はその塩、アクリル酸/ビニルアルコールポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、メチルビニルエーテル/マレイン酸の長鎖ポリマー、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、澱粉−アクリル酸塩グラフトポリマー、アクリル酸−アクリルアミドコポリマー、アルギン酸及び/又はそのナトリウム塩、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選ばれた少なくとも1種が用いられ、あるいは1種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
また、上記のアルミニウム塩としては、水に対して易溶性のものであれば、特に限定されるものではなく、無機系アルミニウム塩又は有機系アルミニウム塩あるいはこれらの混合物が挙げられる。具体的には、例えば、易溶性のアルミニウム塩としてミョウバン、焼ミョウバン、硫酸アルミニウム(無水物、水和物)、硝酸アルミニウム水和物、乳酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム等が挙げられ、これらから選ばれた1種若しくは2種以上のアルミニウム塩が用いられる。
【0026】
さらに、アルミニウム塩に比べて水に対して難溶性の金属塩及び/又は難溶性の金属酸化物を混合するのが望ましい。この金属塩及び/又は金属酸化物は、アルミニウム塩に比べて水に対して難溶性であって、イオン架橋可能であれば特に限定されるものではない。この具体的な例として、例えば、安息香酸亜鉛(無水物、1水和物)、クエン酸亜鉛、炭酸亜鉛、乳酸亜鉛(3水和物、2水和物のD型)、酸化亜鉛(亜鉛華)、サリチル酸亜鉛3水和物、硫化亜鉛、亜硫酸亜鉛水和物、安息香酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム4水和物、ふっ化カルシウム、グリセリン酸カルシウム(無水物、2水和物)、リン酸二水素カルシウム1水和物、リン酸三カルシウム、亜リン酸カルシウム水和物、硫酸カルシウム(2水和物、無水物)、亜硫酸カルシウム水和物、酒石酸カルシウム4水和物、チオシアン酸カルシウム等が挙げられる。
【0027】
また、必要に応じて、上記のハイドロコロイド系粘着剤の凝集性や接着性を改善する目的で、他のゴムエラストマーをさらに配合することが可能である。このゴムエラストマーとしては、具体的には、高分子量(粘度平均分子量約100万〜200万)のポリイソブチレン、ポリイソプレン、ブチルゴムや、スチレン−ブタジエン−スチレン(S−B−S)及びスチレン−イソプレン−スチレン(S−I−S)及びスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(S−E/B−S)などの各種スチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0028】
また所望により、上記ハイドロコロイド系接着剤層に、可塑剤又は溶剤、例えば鉱油又はペトロラタム、鉱油やテルペン樹脂等の粘着性付与剤を配合することが可能である。
【0029】
また所望により、上記ハイドロコロイド系接着剤層中に他の吸水性及び/又は水膨潤性のポリマーを含有させることもできる。このポリマーとしては、吸水性及び/又は水膨潤性のポリマーであれば特に限定されるものではないが、傷浸出液等で濡れた際に接着性を発現できるものが好ましく、例えば、カラヤゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、水不溶性澱粉−アクリロニトリルグラフトポリマー、水不溶性架橋デキストリン等が挙げられる。
【0030】
また、本発明においては電離性放射線を照射することによって、所謂滅菌処理を施すことができるので、本発明のような創傷治癒用製剤においては極めて好都合である。本発明に用いる電離性放射線としては、一般的な放射線として、γ線、電子線、X線などを用いることができ、これらのうち安全性や取扱い性の点から、γ線、電子線を用いることが好ましい。また、エチレンオキサイドガスなどを用いたガス滅菌も適用可能であるが、残留ガスの点から電離性放射線を用いた滅菌処理の方が好ましい。
【0031】
本発明のフィルム製剤の一般的な製法としては、まず水又は緩衝液に必要に応じて可塑剤を加え、ついで水溶性高分子を添加し、溶解させた後、生理活性物質を含有する水又は緩衝液を添加し、攪拌して均一な溶液にする。この配合溶液を脱気した後、この溶液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥して生理活性物質含有フィルム製剤とする。乾燥温度としては、一般的に乾燥温度の上昇に伴って所要時間は短縮され、1〜60℃で乾燥は可能であるが、乾燥温度が高すぎると生理活性物質が失活するおそれがあるので、乾燥温度は1〜10℃程度のなるべく低い温度が好ましい。また、フィルム製剤の保存温度としては、4〜40℃での保存も可能であるが、生理活性物質の失活を防ぐためには4℃以下の低温保存が好ましい。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
精製水95gにゼラチン5gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、ヒトEGFの代わりにマウスNGFを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、ゼラチンの代わりにペクチンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリビニルピロリドンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリビニルアルコールを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリアクリル酸ナトリウムを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0039】
(実施例7)
精製水90gにグリセリン0.5gを加え、ゼラチン4.5gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0040】
(比較例1)
実施例1において、ヒトEGFを配合しない他は、実施例1と同様にしてフィルム製剤を得た。
【0041】
(比較例2)
実施例1において、ゼラチンの代わりにカルボキシメチルセルロースを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0042】
(比較例3)
実施例1において、ゼラチンの代わりに寒天を用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0043】
(比較例4)
実施例1において、ゼラチンの代わりにデンプンを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0044】
(比較例5)
実施例1において、ゼラチンの代わりにポリエチレンオキサイドを用いた他は、実施例1と同様にして本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0045】
(比較例6)
精製水90gにグリセリン3.0gを加え、ゼラチン2.0gを配合し、40℃で加温しながら溶解するまで攪拌する。溶解後、30℃まで冷却し、10mg/mLのヒトEGFを含有する精製水1mLを添加し、均一になるまで攪拌する。脱気した後、この配合液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるよう離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、4℃で3日間乾燥した。さらに25kGyのγ線を照射して、本発明の創傷治癒用フィルム製剤を得た。
【0046】
上記実施例及び比較例にて得られたフィルム製剤について以下の試験をおこなった。
【0047】
試験例1<含水率>
各フィルム製剤から約0.1gのフィルムを採取し、重量(W1)を精秤した。次いで、精秤したフィルムを110℃で1日乾燥して乾燥後の重量(W2)を精秤した。含水率を以下の式にて算出した。結果を表1に示す。
含水率[%]=[(W1−W2)/W1]×100
【0048】
試験例2<フィルム製膜性>
配合液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布する際の塗布性と、塗布後のフィルムの製膜状態を目視にて判定した。結果を表1に示す。
○:全く問題なくフィルム製膜できる。
×:ポリエステルフィルム上に塗布できない、又は塗布後のフィルムの成形ができていない。
【0049】
試験例3<操作性>
各フィルム製剤を30mm×30mmに切断し、離型処理したポリエステルフィルムからフィルム製剤をはがし、創傷部位に貼付あるいは塗布する時の操作性を評価した。結果を表1に示す。
○:全く問題なく操作でき、貼付あるいは塗布できる。
×:操作しづらい又は全く操作できず、貼付あるいは塗布できない。
【0050】
【表1】
【0051】
試験例4<安定性の評価>
実施例1及び3〜6、また比較例5の製剤を4℃の低温室及び25℃、40℃の恒温室に保存した。その後ELISA法によってEGFの残存量を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
試験例5<生理活性の評価>
・EGF含有フィルム製剤の場合
EGFの生理活性は、NIH3T3 cellに対する増殖活性をMTT法によって測定することにより確認した。
実施例1及び比較例1で調製したフィルム製剤を5mm×10mmに裁断し、0.1%BSA含有α−MEM溶液に入れ、37℃10分で溶解させる。次に、10%FCS−α−MEM溶液中37℃でインキュベートしたNIH3T3 cell(東京大学医科学研究所)にこの溶液を加え、37℃で20時間インキュベートした。次にMTTを加え4時間インキュベートした。10%SDS−0.01N HClで反応を停止させ、577nmで吸光度を測定した。結果を図1に示す。
・NGF含有フィルム製剤の場合
実施例2で調製したフィルム製剤を5mm×10mmに裁断し、0.1%BSA含有α−MEM溶液に入れ、37℃10分で溶解させる。次に、PC12 cell(ATCC)にこの溶液を加えインキュベートし、光学顕微鏡下にて樹状突起の伸展している細胞をカウントした。樹状突起は細胞体の3倍以上伸展している細胞を陽性とし、データは全細胞数に占める樹状突起伸展細胞の割合、すなわち(%)として表した。結果を図2に示す。
(結果)
図1、図2に示す結果から、本発明のフィルム製剤は生理活性物質の生理活性を安定に維持することがわかった。
【0054】
試験例6<創傷治癒に及ぼす影響>
実施例1及び比較例1で調製したフィルム製剤の創傷治癒に及ぼす影響を、ヘアレスドックの皮膚分層採皮創モデルを用いて検討した。ヘアレスドックをアトロピン(0.04mg/kg)とキシラジン(0.5mg/kg)で前処置したのち、サイアミラール(10mg/kg)で導入し、挿管後、2%イソフルランで維持し、背部皮膚を消毒用エタノールにて清拭後、外科用カンナを用いて皮膚分層採皮創(3×3cm)を作成した。皮膚切除後、サンプルを1日1回15日間(計15回)貼付し、創面をパーミエイドS(日東電工株式会社製)により被覆した。創面を3日間隔で写真をとり、画像解析装置により創傷面積を測定し、切除後直後の面積に対する比率を算出して創傷治癒効果を求めた。結果を図3に示す。
(結果)
比較例1のフィルム製剤の創傷面積は徐々に縮小し、切除後15日目の創傷面積は36%であった。一方、実施例1のフィルム製剤の創傷面積は、比較例1のフィルム製剤と比較して、投与6日目より急速にかつ有意に縮小し、切除後15日目の創傷面積は22%で明らかな創傷治癒促進作用を示した。また、血管新生及び肉芽形成の程度において、実施例1は比較例1と比較していずれも早期に強く認められ、創傷治癒促進に寄与したものと考えられた。以上の結果から、本発明の生理活性物質含有フィルム製剤は創傷治癒剤として有効であることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の製剤は上記構成からなるようにフィルム状の剤形をしているので、皮膚に対して柔軟性があるため物理化学的刺激が少なく、追随性があるため凹凸のある傷口にも密着し、微量の活性物質を正確かつ有効に投与することができ、液体で簡単に洗い流すことができるので傷の処置及び管理がしやすいという、潰瘍部位に適用する製剤として満足すべき特徴を具備している。また加えて水溶液中で極めて不安定である生理活性物質が、含有水分の少ない製剤中では特定の安定剤を用いずとも安定である。また、本製剤を使用するにあたって、通常使用される被覆材、たとえばフィルムドレッシングやハイドロコロイドドレッシング等で覆うこともできる。更に、このような被覆材に使用されている粘着剤組成物やハイドロコロイド組成物に対し、本製剤を同一又は異なる二層又はそれ以上の層からなる積層構造の製剤とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEGF含有フィルム製剤のEGF生理活性維持能を示すグラフである。
【図2】本発明のNGF含有フィルム製剤の神経成長に対する効果を示すグラフである。
【図3】実施例1及び比較例1で調製したEGF含有フィルム製剤の創傷治癒に及ぼす影響を示すグラフである。
Claims (7)
- 創傷治癒促進活性を有する生理活性物質を、ゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる水溶性高分子の基質に配合することを特徴とする創傷治癒用フィルム製剤。
- 生理活性物質が上皮増殖因子(EGF)又は神経細胞成長因子(NGF)である請求項1に記載の製剤。
- 製剤の含水率が、35重量%以下である請求項1に記載の製剤。
- 多価アルコール及び/又は界面活性剤を配合した請求項1に記載の製剤。
- 多価アルコール及び/又は界面活性剤の配合量がフィルム製剤重量の5〜40重量%の範囲である請求項4に記載の製剤。
- 請求項1記載のフィルム製剤を感圧性粘着剤層に一層以上積層してなる製剤。
- 電離性放射線を請求項1又は6に記載の製剤に照射してなる創傷治癒用製剤。
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