JP2007206679A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 液晶層界面のチャージアップを抑制し、フリッカや焼きつきといった現象を抑制しつつ、長期間な信頼性を保つことができる液晶パネルを持つ液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶表示装置は、第1電極と、液晶層と、第2電極とを含む液晶変調素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する電位差付与手段と、光源からの光を用いて前記液晶変調素子を照明する照明光学系とを備え、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して駆動周期ごとに正と負とが入れ替わる電圧を印加する第1モードと、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して前記駆動周期より長い時間直流電圧を印加する第2モードとを有する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、液晶変調素子(液晶パネル、液晶表示素子)を用いて光を変調し、その変調された光を用いて画像を表示する画像表示装置に関するものである。特に、変調された光を拡大投影するプロジェクタ表示装置に関するものである。
従来から、投射型表示装置の画像変調手段として2次元画素光学スイッチとして液晶変調素子を用いた液晶プロジェクタがあった。液晶プロジェクタに用いる液晶変調素子としては、主にTN(Twisted Nematic)型液晶変調素子や、VAN(Vertical Arrangement Nematic)型液晶変調素子が用いられている。
これらの液晶変調素子は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)効果を利用し、液晶層を通過する光波動にリタデーションを与えて、光波動の偏光状態を変化させて画像光を形成している。
しかし、このECB効果を用いて光強度を変調する液晶変調素子においては、液晶層に電圧(電界、電位差)を印加するため、液晶層に存在するイオン性物質が移動する。もし直流電圧を液晶層に与え続けると、イオン性物質が対向する2つの電極のどちらかに引き寄せられてしまう。そうすると、液晶層に与えられた電圧の一部が移動したイオン性物質によって形成される電圧によって相殺されてしまい、所望の強度の電圧を液晶層に与えられなくなってしまう。
この問題を避けるために、一般的には以下のような方法が用いられる。例えば、配列画素のラインごとに印加する電圧の正負極性を反転して且つ60ヘルツで切り替えるライン反転ドライブ方法、配列画素の全てに印加する電圧の正負極性を120ヘルツで反転するフィールド反転ドライブ方法等である。このように液晶層にかかる電圧が一定の極性にならないようにして、イオン性物質の偏在(液晶層内のイオン性物質による電圧の発生)を防止している。
しかしながら、液晶層へ印加する実効電圧(以後液晶層へ印加される実質的な電圧を実効電圧と称する)が変動する要因としては、上記のイオン性物質の移動だけは無い。例えば、絶縁体の非導電性膜(液晶配向膜、反射増強膜、金属溶出防止用の無機パッシベーション膜等)において、電子やホールの電荷そのものがトラッピングされることがある。電子やホールがトラップされてしまうと、膜の界面がチャージアップを引き起こし、この静電帯電によって液晶層への実効電圧が変化してしまうことがある。このように静電帯電が発生してしまった場合、前述の反転ドライブ方法で液晶変調素子を駆動すると、正の電位差(電圧)の絶対値と負の電位差(電圧)の絶対値との間の差が大きくなってしまい、フリッカーが発生してしまう。つまり、正の電位差を付与した時の明るさと負の電位差を付与した時の明るさとが互いに異なるようになってしまい、60Hzまたは120Hzの周波数で明るい画像と暗い画像とが交互に表示されるという現象(フリッカー)が発生する。この現象(フリッカー)は、一般的には、正の電位差の絶対値と負の電位差の絶対値との差が200mV以上になると人の目で視認できると言われている。
この帯電の問題は、液晶層を挟む2つの電極を同じ材質で形成する場合(主に透過型液晶変調素子)にも発生するが、対向する2つの電極の材質が異なる場合(主に反射型液晶変調素子)において顕著に発生する。
特開2005−049817号公報(米国特許7038748号公報)
この帯電問題に対する解決策は、例えば、特開2005−049817号公報に提案されている。この中では、反射画素電極上に仕事関数調整膜層を形成し、反射電極の仕事関数(フェルミ準位)を対抗する透明電極(ITO膜電極)の仕事関数(フェルミ準位)に対して±2%以内になるようにしている。このように構成することによって、液晶層界面のチャージアップを抑制しフリッカーや焼きつきが発生を抑制している。
詳細に説明すると、電荷がトラップされるためには、絶縁膜(液晶層と電極との間の絶縁体の膜)のエネルギーポテンシャルを励起ホッピングする必要がある。特開2005−049817号公報は対向するミラー電極とITO電極から励起ホッピングする確率を近づけることによって、液晶層の両端に同量の電荷をトラップしている。こうすれば、フィールド反転ドライブによって液晶に印加される電圧は電位としてはシフトするが、電圧の大きさは変わらなくなる。これによって、液晶が受ける電圧は対向電極間での相対値によって反応ECB動作し、液晶の動作は変化しないこととなるものである。
しかしながら、まだ前述の特開2005−049817号公報で提案された対策だけでは、ミラー電極とITO電極から励起ホッピングする確率を近づけることはできても、その両者の量(励起ホッピングする電荷の量)を完全に同じにすることは難しい。従って、液晶界面層のチャージアップが液晶変調素子の動作時間に応じて徐々に蓄積されてしまう。特に、液晶変調素子の長期的信頼性の点において、つまり液晶変調素子の駆動時間が長くなればなるほど、対向するミラー電極とITO透明電極間で電位差が数百ミリボルトに達してしまう。この現象は液晶変調素子に入力するフォトンエネルギーが高いほど、且つ光量総エネルギーが多いほど顕著に発生する。
また、液晶界面層のチャージアップが生じて、対向するミラー電極とITO透明電極間で電位差が生じると、さらに以下の問題が発生する。液晶層界面のチャージアップによって液晶層に一定の直流電圧が印加され続けられると、液晶層内の微量に存在するイオン性物質が対向電極の一方または両方の界面に引き寄せられる。そして、電極界面に張り付いたイオンはフィールド反転ドライブ電位の振幅電位幅に応じて揺り動かされるため、ドライブ電位の振幅電位の強弱によってイオンの張り付き状態が異なってしまう。すなわち液晶層にかかる実効電圧が表示エリアの位置によって異なる状態が形成される。この特性によって生じるのが焼きつきという現象で、長時間同一画像を表示し続けた後に異なる画像を表示した場合、前の画像が残像として残ってしまうといった不具合が生じる。
上記課題を解決するための、本発明の液晶表示装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む液晶変調素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する電位差付与手段と、光源からの光を用いて前記液晶変調素子を照明する照明光学系とを備える液晶表示装置であって、前記液晶表示装置が、前記液晶変調素子内に存在する電荷によって前記液晶層内に発生する電界の強度を低減する電荷調整モードを有することを特徴としている。
また、本発明の別の側面の液晶表示装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む液晶変調素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する電位差付与手段と、光源からの光を用いて前記液晶変調素子を照明する照明光学系とを備える液晶表示装置であって、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して駆動周期ごとに正と負とが入れ替わる電圧を印加する第1モードと、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して前記駆動周期より長い時間直流電圧を印加する第2モードとで動作することを特徴としている。
また、本発明の更なる別の側面の液晶表示装置は、第1色、第2色、第3色各々に対応しており、各々が第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む第1、2、3液晶変調素子と、前記第1、2、3液晶変調素子の、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する第1、2、3電位差付与手段と、光源からの光で前記第1、2、3液晶変調素子を照明する照明光学系と、前記第1、2、3液晶変調素子からの画像光を投影する投影光学系とを備える液晶表示装置であって、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記第1、2、3液晶変調素子の前記液晶層に対して駆動周期ごとに正と負とが入れ替わる電圧を印加する第1モードと、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記第1、2、3液晶変調素子の前記液晶層に対して前記液晶層に対して前記駆動周期より長い時間直流電圧を印加する第2モードとで動作することを特徴としている。
本発明の液晶表示装置によれば、フリッカを抑制し、長期間において信頼性が保てる液晶表示素子を持つ液晶表示装置を提供することができる。
本実施例は、液晶変調素子の液晶層に対しての有効な実効電圧(液晶層へ印加される実質的な電圧のことを意味する)が、電極に印加する電圧に対して常に同じ値になることを志向しているものである。すなわち、液晶層を挟む両電極間の電位差(電圧)と、液晶層の両端の電位差(電圧)とがほぼ等しくなる(400mV以内、好ましくは300mV以内、より好ましくは200mV以内)ように、液晶表示装置を制御する。そのために、液晶層界面に蓄積される電子やホールを除去する、或いはその量を減らす手法を開示している。このような手法を採ることによって、フリッカー量を低減し、液晶変調素子、液晶表示装置の寿命を長くすることができる。尚、ここで言うフリッカーとは、人の目に見えるフリッカーのみではなく、人の目には見えない程度の小さな輝度の変化も含めるものとする。
本実施例の液晶表示装置について以下で図面を用いて詳細に説明する。
図1には、VAN型液晶配向タイプの反射型液晶変調素子(反射型液晶パネル、反射型液晶表示素子)400と、その反射型液晶変調素子と隣接して配置された偏光ビームスプリッター(PBS)401を示している。図1を用いて、偏光ビームスプリッターとこのVAN型反射型液晶変調素子の動作について簡単に説明する。
図1のように、光源からの光は矢印IW方向から偏光ビームスプリッタ401に入射し、偏光ビームスプリッターの偏光分離膜によってP偏光成分が矢印IWB方向に通過し、S偏光成分が矢印IWA方向に反射される。ここで、矢印IWAで示す光の偏光方向は紙面と垂直な方向(偏光分離膜と平行な偏光方向)である。
反射型液晶素子400の液晶のプレチルト配向方向は矢印IWAの直線偏光方向に対して45°に傾いており、入射光の1/2波長分のリタデーションが与えられるように液晶層には電圧が印加されている。矢印IWAの方向から反射型液晶素子400に入射した光は反射型液晶素子400の液晶層を2つの固有モードに分かれて伝播する。そして、矢印OW方向に反射出射するときには2つのモードの間に次式(1)で表わされる位相差δ(λ)を与えて矢印OW方向に出射する。
δ(λ)=2π(2d△n)/λ (1)
このとき、λは入射光の波長、dは液晶層の厚さ、△nは液晶層に所定電圧が印加された状態での屈折率異方性△nである。そこで、矢印OW方向に出射する光の偏光方向のうち紙面垂直方向成分(偏光ビームスプリッタ401に対してS偏光成分)は偏光分離面によって矢印BW方向に反射され光源側へ戻る。そして、紙面平行方向成分(偏光ビームスプリッタ401に対してP偏光成分)は、矢印MW方向に向かって偏光分離膜を透過する。ここで、反射型液晶素子400の反射率R(λ)、偏光ビームスプリッタ401のS偏光の反射率及びP偏光の透過率が100%だとすると、矢印MW方向に出射する光転送率R(λ)は次式(2)で表わされる。
R(λ)=0.5(1−cos(δ(λ)) (2)
尚、液晶層内の液晶分子にはプレチルト角(液晶層への電圧無印加時において、液晶層の挟み込み基板に対して液晶分子がなす角度)が与えられている。この液晶層に対して電圧を印加すると、液晶分子の挟み込み基板に対するチルト角度は、略垂直から略水平まで変化し、その結果見掛け上△nが変化する。このため位相差δ(λ)は減少変調され、δ≒0度からδ≒90度となるものである。
次に、反射型液晶変調素子の内部基本構造の概略図を図2に示す。
図2に示したように、反射型液晶変調素子は、光入射側から順に、ガラス基板、透明電極(ITO電極)、配向膜(絶縁性の薄膜)、液晶層、配向膜、ミラー電極(Al等)、Si基板を有している。ここで、配向膜(絶縁性の薄膜)は酸化ケイ素等で形成されているが、その他絶縁体の材料であれば他の材料でも良い。また、ミラー電極は白色光に対して85%(好ましくは90%)以上の反射率を持つ材料であれば別の材料でも構わない。また、赤、緑、青用の反射型液晶変調素子各々に対応して、赤色光に対して高い反射率を有する膜を施したミラー電極や、同じく緑色光、青色光に対して高い反射率を有する膜を施したミラー電極を用いても良い。ここでは、赤色光とは主に波長600〜660nmの光、緑色光とは主に波長500〜560nmの光、青色光とは主に波長430〜490nmの光のことである。
次に図3を用いて、ミラー電極側に印加する電位と透明電極側に印加する電位について説明する。ここでは、縦軸の電位としては、液晶層のミラー電極側の端部と液晶層の透明電極側の端部に印加される電位の相対値を示しており、横軸は時間を示している。またこの図3においては、画像信号が一定の信号であることを前提として描いた図面であるが、勿論本実施例は画像信号が変化している場合でも実施可能である。
図3(a)は、正常な状態、すなわちフリッカーが発生していない状態である。ここでは、液晶層の透明電極側の端部の電位を一点鎖線で示し、液晶層のミラー電極側の端部の電位を実線で示している。この図3(a)では、正の電位差(電圧)と負の電位差(電圧)と所定の駆動周期で(1/120秒ごとに)入れ換えており、この正の電位差の絶対値と負の電位差の絶対値とは略等しくなっている。この駆動周期は1/60秒以下であれば良く、できれば1/120秒以下であることが望ましい。この図3(a)のようなフリッカーが発生しない正常な状態では、正の電位差と負の電位差との差は、400mV以下、好ましくは300mV以下、より好ましくは200mV以下である。ここでは、画像信号は60Hzで入力されており、1、3、5・・・と言う奇数番目の信号に基づいて液晶層に正の電位差を印加、2、4、6・・・と言う偶数番目の信号に基づいて液晶層に負の電位差を印加している。それによって、60Hzで入力される画像信号に対応した液晶表示を達成している。この画像信号の入力周期(受信周期)のことを、所定の駆動周期と称している。
ここで、本実施例の液晶表示装置における液晶変調素子の駆動方法について簡単に説明する。本実施例の液晶表示装置においては、1フレーム(1/60秒周期)ごとの画像信号に対応して、同じ大きさの正の電圧と負の電圧を1/120秒周期で液晶層に印加して2フィールドの画像を表示している。本実施例においては、上述のように、1フレーム(1/60秒周期)は2フィールド(1/120秒周期ごとに2フィールドが画像を表示する)に対応している。このような場合においては、1フレーム内において液晶層に印加される正の電位差の絶対値と、同じフレーム内において液晶層に印加される負の電位差の絶対値とが、ほぼ等しいことが望ましい(400mV以内)。ほぼ等しい場合には、液晶変調素子におけるフリッカーの発生量が小さくなり、フリッカーが人の目にとっては認識しづらくなる(人が不快に感じなくなる)。この両者の差が大きい(250mV以上になる)と、人の目で認識しやすい程度の大きなフリッカが発生してしまう。
また、1フレームが1フィールドに対応するような駆動、すなわち画像信号の1フレームが1/60秒に対応しており、その画像信号に対応して正(又は負)の電圧を液晶層に印加して1フィールドの画像を表示しても良い。このような1フレームが1フィールドに対応する場合には、前述したように画像信号が一定の信号のままの場合に、液晶層に印加される正の電圧の絶対値と負の電圧の絶対値とがほぼ等しいことが望ましい。本実施例においては、1フレームに対応する周期(1/60秒)よりも1フィールドに対応する周期(1/120秒)よりも長いことが望ましい。
図3(b)は、フリッカーが発生している状態を示している。ここでは、液晶層の透明電極側の端部の電位を二点鎖線で示し、液晶層のミラー電極側の端部の電位を破線で示している。ここでは、図3(a)と比較して、液晶層の透明電極側の端部の電位が、液晶層のミラー電極側の端部の電位に対して相対的にシフトし、正の電位差と負の電位差とが明らかに異なっている(差は400mVより大きい)。つまり、電子やホールの励起ホッピングが、透明電極側とミラー電極側とで偏って生じており、液晶層の両端にトラップされた電子やホールによって液晶層に電圧が発生してしまっている状態である。言い換えると、電極内の電子やホール等の電荷が高い強度の光を照射されることによって励起された結果、液晶層へ飛び出してしまい、液晶変調素子内でトラップされてしまうことがある。そのような場合、液晶変調素子内でトラップされた電子やホール等の電荷によって、或いはその電荷の飛び出しにより液晶層が帯電することによって、電極間に電圧を印加しない状態において液晶層内に電界が発生する。
このように正の電位差と負の電位差との差が大きくなり、その差が400mVより大きくなってしまうと、明るさの違いが大きくなってしまう。そうなると、60Hzのフリッカーの光強度波形の低周波成分に揺らぎが発生し、人の目でもフリッカー(ちらつき)が視認しやすい状態になってしまう。
次に、反射型液晶変調素子内のエネルギーポテンシャル構成と画像表示状態(画像表示時、つまり第1モード)の電子やホールの動きについて図4を用いて説明する。ここで画像表示状態とは、画像信号入力手段によって入力された(読み取った)画像信号に基づいて液晶変調素子を駆動し、画像を表示している状態のことである。ここで、前述した液晶層の両端に印加される正の電圧と負の電圧との差は、400mV以下(好ましくは300mV以下より望ましくは200mV以下)となるように液晶変調素子を駆動している。ここで、画像信号入力手段とは、コンピュータ、画像記憶装置(カメラ、ビデオカメラ等)、メモリー等の記憶装置、TV放送受信用のアンテナ等の画像受信機等、或いはそれらから画像信号を入力された画像信号受信部である。
この反射型液晶変調素子の電極は、光入射かつ光出射側のITO透明電極102と、ミラー面としての機能を共有する主にアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成される金属ミラー電極103とである。この図4において、100は液晶層、101は液晶をVAN配向させるための酸化ケイ素を主成分とするポーラス状の斜方蒸着液晶配向膜である。また、104はアルミニウムより仕事関数の大きいニッケル、ロジウム、鉛、白金またはこれらの酸化物からなる仕事関数調整膜層である。勿論、この仕事関数調整膜層の材料は、アルミニウム(ミラー電極側の主材料)よりもITO材料に仕事関数が近い(仕事関数の差が5%未満)材料であれば、他の材料を用いても構わない。
また、図4中のENI、ENMは電子の励起、EPI、EPMはホールの励起、またENI、EPIは透明電極102側からの励起、ENM、EPMは金属ミラー電極103側からの励起を示している。また、hνは液晶変調素子に入力されるフォトンエネルギーを示している。また、図中VPPは金属ミラー電極に印加される電位を示している。このVPPは、液晶層に対してフィールド変転ドライブ電位(AC成分)として印加されている。
ここで、変調動作させる液晶層100は無機非導電性材料である酸化ケイ素からなる液晶配向膜101と仕事関数調整膜層104に挟まれて配置されている。そして、それらの外側に透明電極102と金属ミラー電極103が接触している基本構造を有している。この図4中に記載されている透明電極、金属ミラー電極、仕事関数調整膜層の紙面上下方向の位置はエネルギーポテンシャル(フェルミ準位)の高さを示しており、真空準位は上方に存在するものである。
ここで、ITO透明電極102と、アルミニウム金属ミラー電極103の真空準位からの仕事関数エネルギーは、それぞれ約5.0eV、約4.2eVである(つまり、フェルミ準位は約−5.0eV、約−4.2eV)。ここで、仕事関数とは物質表面から1個の電子を真空中(表面のすぐ外側)に取出すのに必要な最小エネルギーのことを指し、物質固有の値である。つまり、この両者の間には、使っている材料に依存して、0.8eVのエネルギーポテンシャルの差が生じている。そこで、前述の特開2005−049817号公報で用いられている上述の仕事関数調整膜層104をアルミニウム金属ミラー電極103と配向膜101との間に設け、両電極間のエネルギーポテンシャルの差を低減している。このように、仕事関数調整膜(薄膜層)104を形成し、対向する透明電極102であるITOの仕事関数と近似させることで、両電極から励起する電子、ホールの励起確率をほぼ同等になるように形成している。
ここでは、両者のエネルギーポテンシャルの差を0とすることが理想であるが、仕事関数調整膜層を用いたとしても両者の差は0より大きく0.2eVより小さい範囲内であると考えられる。それは、仕事関数調整膜104の材質制限と製造条件や製法処方のばらつき等によって、現実的には完全に一致させることが至難であるためである。
図6には、仕事関数調整膜を有する4つの液晶変調素子の長期動作テストを行った場合の対向電極間の電位差の経時変化の推移をグラフで示したものである。個々の製法ばらつき上の膜特性に差異によって変化特性が多少ばらついているが、約2000時間程度動作させた時点で対向電極間電位差が200mVを超えるものが発生している。さらに、3000時間ではテストサンプルの全てにおいて対向電極間電位差が200mVを超えてしまっている。対向電極間電位差が200mVを超えると、フリッカが視認できてしまう。それに伴って、当然ながら焼きつき特性においても、初期性能に対して激しく劣化してしまう。尚、焼きつきとは、前のフレームの画像を表示するための電界が残留し、その残留電界によって今表示すべきフレームの画像に対して前の画像が残像となって重なって表示されてしまうような現象である。フリッカが大きくなると、プラス方向或いはマイナス方向に強い電圧がかかり、その逆方向の電圧が弱くなってしまうため、焼きつきが起こりやすくなり、焼きつき特性が劣化する(焼きつきが起こりやすくなる)。
ここで言う「対向電極間電位差」とは、両電極間に電圧をかけない(或いは0Vの電圧をかける)状態において、ミラー電極の電位に対するITO透明電極の相対的な電位を示している。ここでの200mVは、図3で示した正の電圧と負の電圧の差で表現すると2倍の400mVとなる。そのことは、図3Aの状態(フリッカーが無い状態)に対して、ITO透明電極の電位を200mVプラス側(或いはマイナス側)に変化させたことを想定すれば容易に理解できる。従って、人間の目でフリッカーを視認しやすい程度を、正の電圧と負の電圧の差として表現すれば400mVよりも大きいと表現したが、対向電極間電位差で表現すれば200mVよりも大きいと表現できる。よって、ここでは対向電極間電位差が200mVを超えたら、液晶変調素子が寿命に達したものと見なす。
そこで、本実施例では、液晶変調素子を以下のように駆動することによって、視認可能なフリッカーの発生を抑制する(視認可能なフリッカーの発生をさらに遅らせる)。その方法を模式的に示した図5を用いて具体的に説明する。
構成は図4で説明したものと全く同様である。この図5中の矢印で示したように、液晶層に(対向電極間に)対して、駆動周期(駆動周波数が60Hzの場合は1/60秒)より長い時間、直流電圧VDCを印加している。また、直流電圧(直流電圧)は常に一定の強さの電圧である必要は無く、電圧の強さ(電圧の値、電位差の値)が変化したとしても符号が変化しなければ、それを直流電圧と称することとする。尚、ここでは液晶層に印加される実効電圧を直流電圧としている。また、ここで直流電圧を印加する時間は、駆動周期(1/60秒)の10倍、好ましくは1000倍、さらに好ましくは10000倍以上であることが望ましい。
つまり、液晶層の両端に対して、(駆動周波数よりも長い時間の間)いずれか一方が常に正、又は常に負となる電圧を印加するように、対向電極間に電位を付与している。こうすることによって、図5に示すように電子(ホール)が移動しやすくなり、電子は紙面左下方向(つまり透明電極102側)に移動しやすくなり、ホールは紙面右上方向(ミラー電極103側)に移動しやすくなる。その結果、液晶層の両端にトラップされていた電子やホールを除去する(減らす)ことができるため、トラップされていた電子やホールによる電圧を除去(電位を低減)することができる。つまり、液晶層と両電極との間に蓄積された電子やホールの量を調整し(減らし)、液晶層と両電極との間に蓄積された電子やホールによる液晶層両端の電位の差を低減している。
もう少し詳細に説明する。この直流電圧VDCを印加した状態を保持したまま光hνを入射させ続けると以下のようなことが生じる。RNIのように、液晶層100と液晶配向膜101の界面付近にトラップされていた電子が光により強制励起され、電圧印加によるエネルギー準位の傾きのため、透明電極102側へ除去される。またRPMのように、液晶層100、液晶配向膜101の界面付近にトラップされていたホールが光により強制励起され、電圧印加によるエネルギー準位の傾きのため、金属ミラー電極103側へ除去される。述べるまでも無いが、直流電圧印加方向を逆転させれば、対向電極間の電位差は逆方向へ変化することになる。
以上の手法を用いて行った長期動作テストの結果を図7に示す。ここでは、液晶変調素子を50℃で動作させ、4時間液晶変調素子を動作させたインターバルに対して、所定光量(青色光で約3W/cm)を液晶変調素子に入力した状態で5分間所定電圧(対向電極間電位差3V)を与えた。この図7の縦軸は液晶変調素子の対向電極間の電位差を示し、横軸は時間を示している。この図7に示したように、約4000時間程度動作させた時点でも対向電極間電位差が200mVを超えることは無く、±100mV以内で収まっている。つまり、本実施例によれば、フリッカや焼きつきといった現象の発生を長期的に抑制することができることが立証された。
この図7に示した長期動作テストにおいては、4時間の画像表示状態(第1モード)での駆動に対して、5分間の電荷除去モード(第2モード、電荷調整モード)での駆動を行った。ここでの電荷除去モードでは、5分間(駆動周期よりも長い時間)連続して液晶層に直流電圧を印加し続ける(正の電圧を印加し続ける、或いは負の電圧を印加し続ける)。ここで、電荷除去モードとは、液晶層の両端にトラップされた電子やホールを除去(或いは両端の電荷のバランスを取り液晶層に印加される電圧を除去)するモードであり、画像を表示していても構わない。また、上述の電荷除去モードでは、液晶層の両端に3Vの電圧を与えたが、液晶層に対して200mV以上(好ましくは500mV以上より好ましくは1V以上)の電圧を与えれば良い。また、その時間は5分間(駆動周期1/120秒の72000倍)としたが、駆動周期の120倍の1秒以上(好ましくは10秒以上より好ましくは1分以上)であれば時間は変化させても構わない。その電荷除去モード(第2モード)の継続時間は画像表示モード(第1モード)の継続時間の1/500以上、好ましくは1/100以上、より好ましくは1/50以上であることが望ましい。しかしながら、この液晶層100と液晶配向膜101との境界近傍にトラップされた電子やホール(の電荷)を除去する電荷除去モードの継続時間は、以下の因子に基づいて決定することが望ましい。その因子とは、例えば、液晶変調素子の動作状況である、第1モードでの動作累積時間、第1モードでの動作環境(温度、湿度等)、第1モードで動作中の照射積算光量及び照射光波長等である。これらの因子、又はこれらの因子のうち少なくとも1つに基づいたパラメータ(負荷パラメータ)の値に応じて電荷を除去する電荷除去モードの継続時間を決定することが望ましい。この負荷パラメータは、後述する電荷除去モード必要継続時間Teのように時間として表しても良いし、その他のものを用いても構わない。ここで、予め経験的に電荷除去モードの継続時間が分かっている場合は、その継続時間を記憶しておき、画像表示状態ではない時に、電荷除去モードの駆動を適宜行っても構わない。尚、画像表示状態ではない時とは、画像表示装置に電力が供給されているが画像表示機能が動作していない状態、つまり待機状態の時のことである。
また、電荷除去モードの継続時間は、センサー(光センサー)による検出結果を用いて決定しても構わない。例えば、後述する図8中の符号50の位置に光センサーを設けておき、その光センサーに入射する光の光量の変化に応じて継続時間を決定しても良い。この位置に光センサーを設置すると、3色の液晶変調素子2R、2G、2Bすべてから出射する光の一部を検出することができるため、一個の光センサーで3色分の光量を検出することが可能になる。
このように光センサーを用いれば、実際に蓄積されている電子やホールの量に伴う光量変化を測定することができるため、より正確な電荷除去を行うことができる。尚、このセンサー50は赤、緑、青すべての色光の光量を検出すれば良いが、好ましくはそれぞれの色光の変調を別々に(時間差)制御して各々の液晶変調素子の光量変化を別々に測定できることが望ましい。そうすれば、それぞれの液晶変調素子の蓄積電子量(ホール量)を知ることができるため、それぞれの液晶変調素子に対して適切な電荷除去モードの継続時間を決定することが可能となる。また、それぞれの液晶変調素子の電荷除去モードの継続時間を決定した上で、比視感度の最も高い緑色用の液晶変調素子の電荷除去モードの継続時間を以って全液晶変調素子の電荷除去モードの継続時間としても良い。当然ながら、それぞれの液晶変調素子に対して互いに異なる時間の電荷除去モードを実施しても構わない。また、上述のセンサーの出力に基づいて、警告を発する手段を設け、使用者に注意を喚起するように構成しても良い。
尚、光センサーは、液晶表示装置内に設けることが望ましいが、装置外に設けた光センサーを用いてその検出結果を用いて、電荷除去モードの継続時間を決定しても構わない。また、光センサーの配置位置は、前述の図8の符号50の位置に限らず、投影光学系の壁面に設けても構わないし、光センサーを移動可能とし、電荷除去モードの実施に伴って光路上に移動するように構成しても良い。
このように光センサーを用いると、人の目には視認できないフリッカー(具体的には液晶層の両端に蓄積されている電荷による電位差が200mV未満の場合)を測定できるため、電荷の除去を適切且つ正確に行うことができる。
この電荷除去モードの実施シーケンスとしては、液晶表示装置が起動する過程、或いは液晶表示装置が停止する過程において、電荷除去モードを実施する。勿論、その他操作者のボタン操作等による入力に従って、電荷除去モードを実施しても構わない。
また、この電荷除去モードによる駆動を長時間必要とする場合には、その時間を分割して数回に分けて電荷除去モードを実行しても良い。例えば、電荷除去モードによる駆動を1時間程度必要とする場合には、それを装置の起動時や停止時の時間を利用して3分ずつ20回に分けて行っても良い。また、操作者の入力に関しても、電荷除去モードの開始ボタン(画像表示停止ボタン)と、電荷除去モード停止ボタン(画像表示再開ボタン)との入力を可能にし、その間の時間だけ電荷除去モードを実施しても良い。
ここで、電荷除去モード(第2モード)における、直流電圧のかけ方について説明する。
ITO透明電極の電位を一定に保ち、画素電極の中心電位をITO透明電極の電位に合わせた状態で、画像表示を継続した場合、フリッカが最小となる理想的なITO透明電極の電位がプラス側に単調に変化する場合を想定する。ここで、単調とは、逆方向に変化しなければそれで足りる。すなわちここではマイナス側に変化しなければそれで構わない。その場合、前述の電荷除去モードにおいては、ITO透明電極側の電位を画素電極の中心電位に対してマイナス側に設定した状態で液晶層に電圧を印加すれば良い。逆に、ITO透明電極の電位を一定に保ち、画素電極の中心電位をITO透明電極の電位に合わせた状態で、画像表示を継続した場合、フリッカが最小となる理想的なITO透明電極の電位がマイナス側に単調に変化する場合を想定する。その場合は前述と逆、すなわち電荷除去モードにおいて、ITO透明電極側の電位を画素電極の中心電位に対してプラス側に設定した状態で液晶層に電圧を印加すれば良い。このような電荷除去モードを実行すれば、液晶層が、液晶表示素子内でトラップされた電荷(電子やホール等)から受ける影響を軽減することができ、フリッカーの発生量を小さくすることができる。
ここで、装置(画像表示装置)の起動動作(起動シーケンス)時における電荷除去モードの実施手順について図9を用いて説明する。ここで、起動動作(起動シーケンス)とは、装置の電源が入れられてから、実際に画像が表示される(投射される)までの間の動作のことである。また、停止動作(停止シーケンス)とは、その逆で、装置の電源が切られてから、実際に装置内の冷却ファン等が停止するまでの間の動作のことである。
まず、装置の電源が入れられる(STEP101)とすぐに起動動作(STEP102)が実施されて、その起動動作の所要時間Tn時間後に、起動動作は終了(STEP103)する。その起動動作と並行して電荷除去モードが実施される。装置の電源投入後(起動スイッチがONされた後)、起動動作が実施されると共に以下の動作を実施する。まず、予め液晶変調素子の動作状況に基づいて得られた電荷除去モードを継続すべき必要時間(電荷除去モード必要継続時間)Teをメモリーから読み出して、そのTeが0より大であるか否かを判定する。もし”No”(Te=0、もしくはマイナス)であれば、電荷除去モードは終了する。もしSTEP103で”YES”であれば、次はそのTeが起動動作に必要な時間(起動動作所要時間)Tnよりも大きいか否かを判断する。このSTEP104で”Yes”であればTn時間の間電化除去モードを実施した後、Tn時間経過後、Te−Tnを演算し、この結果を新たなTe(電荷除去モード必要継続時間)としてメモリーに記憶する。次にSTEP104にて”No”であれば、電荷除去モードをTe時間だけ継続し、その後にTeを0に更新した上でTeとしてメモリーに記憶する。このような動作を行った上で、電荷除去モードを終了(STEP110)する。
尚、このフローは一例であり、他の方法で実施しても構わない。例えば、起動動作を行っている間、並行して電荷除去モードを実施させる。その際に、電荷除去モード実施時間がTeを上回ったことを示す信号、或いは、起動動作終了(或いは終了直前)である旨の信号を受けて、電荷除去モードを終了させる。その際、この電荷除去モードの際の電荷除去モード実施時間Texを用いてTe−Texの演算結果を新たなTeとしてメモリーに記憶する。起動時間が通常の起動時間よりも長引いてしまった場合等においては、この方法の方が効果的に電荷を除去することができる。
図9の電荷除去モードは、「装置電源ON(起動動作開始)」によって開始されているがその限りではない。例えば電荷除去モードは、装置停止(停止シーケンス)時でも良いし、所定のボタン(電荷除去モード開始ボタン、或いはフリッカー除去ボタン等)を押したら開始するようにしても良い。さらには、装置の動作状況に基づいて得られる電荷除去モード必要継続時間Te(時間では無く単に負荷パラメータでも良い)が所定値(例えば30分や1時間等)以上になった時に、強制的に電荷除去モードを開始しても良い。勿論その前、すなわちTeが前述の所定値よりも小さい値に達した段階で、もう少し装置を(画像表示モードのまま)動作させ続けたら、電荷除去モードを強制的に動作させる旨の警告を発するようにしても良い。また、電荷除去モードを実施しなかった場合に、寿命に達する(フリッカーが発生する)までの残り時間を表示できるようにしても良い。
また、電荷除去モードを実施する(電荷を除去する制御過程)際には、液晶表示装置から、光が装置外へ漏れ出さないようにするためのシャッター等の遮光手段を機械的または電気的に配しても構わない。また、それぞれの液晶変調素子に対して異なる時間の電荷除去モードを実施する場合には、各色光をそれぞれ独立して遮光する遮光手段を照明光学系に設ければ良い。勿論、各液晶変調素子に対して、電荷除去モード用に別光源を設け、電荷除去モード実施時にそれらの光源を用いて液晶変調素子を照明しても構わない。このような構成にすれば、前述の照明光学系に設ける遮光手段は不要となる。
次に、本発明の投写型表示装置の実施形態を図8に基づいて説明する。図8は投写型表示装置の実施形態を構成する主要な光学系の断面図である。
不図示の画像信号入力手段からの画像信号を光変調パネル駆動信号に変換する光変調パネルドライバー3(制御手段、電位差付与手段)からの駆動信号を用いて、3つの反射型液晶素子2R(22)、2G(24)、2B(28)をそれぞれ独立制御している。
照明手段(照明光学系)1(側面図を横に記している)からの紙面垂直方向に直線偏光偏波した照明光を、ダイクロイックミラー30を用いて赤色光、青色光を反射し、緑色光を透過することにより、色分離している。尚、この照明手段は、光源からの光を紙面垂直断面(照明光学系の光軸を含む断面)と、紙面平行断面とで、光学的な配置が互いに異なっている。つまり、前述のダイクロイックミラー30に入射する照明光束は、紙面垂直断面においてはインテグレートされており、紙面水平断面においてはインテグレートされていない。勿論、本実施例は、この両断面においてインテグレートしている照明手段に対しても適用可能である。
次に、赤色光と青色光との共通光路に配置された、青色光に対して半波長のリタデーションを与え、赤色光に対しては実質的にリタデーションを与えないブルークロスカラー偏光子34を透過する。ここで言うブルークロスカラー偏光子34とは波長選択性λ/2板であって、青色光に対してλ/2板として機能し、赤色光や緑色光に対しては位相差を与えない光学素子のことである。その結果、青色光の偏光方向は紙面平行方向となり、赤色光の偏光方向は紙面垂直方向のままとなり、その状態で偏光ビームスプリッタ33に入射する。そして、紙面水平方向に直線偏光偏波した青色光は偏光分離膜に対してP偏光であるため偏光分離膜を透過し、青色光用光変調パネル2Bに導かれる。また、赤色光は偏光分離膜に対してS偏光であるため偏光分離膜で反射され、赤色光用光変調パネル2Rに導かれる。そして、画像光となる光に関しては、それぞれの光変調パネルで半波長のリタデーションを与えられて、光変調パネルから出射し、再び偏光ビームスプリッタ33に入射する。その結果、それぞれの光変調パネルから出射した画像光(P偏光の赤色光、S偏光の青色光)は紙面下方向に導かれ、赤色光に半波長のリタデーションを与え、青色光には作用しないレッドクロスカラー偏光子35に入射する。ここで、レッドクロスカラー偏光子とは前述のブルークロスカラー偏光子と同様に波長選択性λ/2板のことで、赤色光に対してのみλ/2板として機能し、他の色光に対しては位相差を与えない。このようにして、赤色光、青色光の画像光はすべてS偏光に変換された状態で偏光ビームスプリッタ32に入射し、その偏光分離面で反射されて、投影光学系4に導かれ、スクリーン(被投影面)5に投影される。
一方、ダイクロイックミラー30を透過した緑色光は、光路長を合わせるためのダミーガラス36(これは偏光状態を整えるためのS偏光のみを透過する偏光板としても構わない)を透過して偏光ビームスプリッタ31に入射する。緑色光は偏光分離面に対してS偏光であるため反射されて緑色用光変調パネル2Gに入射し、そのうち画像光となる光には半波長のリタデーションが与えられる。その結果緑色光の画像光となる光はP偏光となって出射し、偏光ビームスプリッタ31と、光路長を合わせるためのダミーガラス27(これは偏光状態を整えるためのP偏光のみを透過する偏光板としても構わない)を通過する。そのダミーガラスから出射した緑色の画像光は、偏光ビームスプリッタ32を透過し、投影光学系4によってスクリーン(光拡散スクリーン)5に投影される。
本実施例においては、一例として液晶層を透明電極とミラー電極とで挟む構成の反射型液晶変調素子を挙げたが、その限りではなく、透過型液晶変調素子に用いても構わない。透過型液晶変調素子においては、電極の形状等の要因において本発明と同様の課題が起きるため、本実施例は適用可能である。また、液晶変調素子をVAN型液晶変調素子を用いているが、勿論TN型液晶変調素子を用いた場合にも適用可能であるし、その他のタイプの液晶変調素子に用いても構わない。
また、本実施例においては、光変調パネルドライバー(電位差付与手段)3を用いて、透明電極に一定の電位を、ミラー電極に上下動する(交流のような成分を持つ)電位を与えることによって液晶層に(略)交流電圧を与える液晶ECB駆動の例を示したが、その逆でも構わない。
また、本実施例においては、画像信号に基づいて画像を表示している時には、通常通り(特に電子の除去やホールの除去等は行わずに)液晶変調素子を駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。具体的には、画像信号に基づいて画像を表示している最中において、電子やホールを除去するために、フリッカーが発生しない範囲で透明電極及び/又はミラー電極の電位を調整しても良い。すなわち、画像を表示しつつ、透明電極及び/又はミラー電極に一定の電位を与えても(液晶層に微弱なバイアス電圧をかけても)構わない。そうすれば、画像を表示しつつトラップされた電子やホールを除去できる(又はさらにトラップされる電子やホールの量を減らすことができる)。
また、本実施例においては、液晶層と電極との間に配向膜しか存在しないように記載しているが、勿論その他の膜が存在していても構わない。
また、本実施例において、「液晶層の透明電極側の端部」或いは「液晶層のミラー電極側の端部」と記載したのは、透明電極とミラー電極とに与えた電圧と、液晶層に付与される電圧とが必ずしも等しくないからである。それは液晶層と電極との間にある膜(配向膜)あるいはその近辺に電荷がトラップされることによって、電圧が降下してしまうことが多いからである。従って、本実施例においては、両電極間の電位差とは記載せず、前述のように記載した。勿論、液晶層の透明電極側の端部と液晶層のミラー電極(画素電極)側の端部との間の電圧、すなわち実効電圧と、両電極間に印加される電圧(印加電圧)とは、前述の電荷によって、互いに異なる電圧となる。勿論、液晶層と電極との間に配向膜等の部材を配置しなくても良い場合には、液晶層の透明電極側の端部の電位は透明電極の電位と読み替え、液晶層のミラー電極側の端部の電位はミラー電極の電位と読み替えるべきである。
また、本実施例においては、投射型画像表示装置(プロジェクター)を例に挙げて説明を行ったが、それに限らず直視型の液晶表示装置に本実施例を適用しても構わない。
上述のような本実施例によれば、液晶層の両端付近に蓄積された電荷を調整することができるため、フリッカの発生を抑制しやすくなり、長期信頼性の高い液晶変調素子を有する液晶表示装置を提供することができる。
反射型液晶素子の動作を説明するための概略図である。 液晶変調素子の概略図である。 正常時とフリッカ発生時における液晶層の両端の電位を説明するための図である。 反射型液晶変調素子の液晶界面層へのチャージアップ現象を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る反射型液晶変調素子の液晶界面層へのチャージアップ量を制御するための手法を説明するための図である。 反射型液晶変調素子の液晶界面層へのチャージアップ現象を説明する実験データグラフである。 本発明の実施形態に係るチャージアップ量を制御するための手法を実施した場合の反射型液晶変調素子の液晶界面層へのチャージアップ現象を説明する実験データグラフである。 本発明の実施形態に係る反射型液晶素子を用いた投射型表示装置の要部の概略図である。 本発明の実施形態に係る電荷除去モードの動作方法を示すフローチャートである。
符号の説明
1 照明手段
2R レッド用光変調パネル
2G グリーン用光変調パネル
2B ブルー用光変調パネル
3 光変調パネルドライバー
4 投影レンズ
5 光拡散スクリーン
30 マゼンタグリーン波長帯域分離ダイクロイックミラー
31 偏光ビームスプリッタ
32 偏光ビームスプリッタ
33 偏光ビームスプリッタ
34 ブルークロスカラー偏光子
35 レッドクロスカラー偏光子
36 ダミーガラス
37 ダミーガラス
40 光センサー
100 液晶層
101 液晶配向膜
102 透明電極
103 金属ミラー電極
104 仕事関数調整膜
400 反射型液晶素子
401 偏光ビームスプリッタ

Claims (17)

  1. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む液晶変調素子と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する電位差付与手段と、
    光源からの光を用いて前記液晶変調素子を照明する照明光学系と、
    を備える液晶表示装置であって、
    前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して駆動周期ごとに正と負とが入れ替わる電圧を印加する第1モードと、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記液晶層に対して前記駆動周期より長い時間直流電圧を印加する第2モードとで動作することを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記第2モードにおいて、前記液晶層に印加する直流電圧が200mVより大きいことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
  3. 前記第1モードにおいて、前記液晶層に印加する正の電圧の絶対値と負の電圧の絶対値との差が、150mV以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示装置。
  4. 前記液晶表示装置を起動する起動シーケンス中及び/又は前記液晶表示装置を停止する停止シーケンス中に、前記第2モードが実行されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の液晶表示装置。
  5. 前記第2モードの継続時間は、前記液晶変調素子の動作累積時間、動作環境や、前記液晶変調素子に照射される光の波長の少なくとも1つに基づいて決定されることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の液晶表示装置。
  6. 前記液晶変調素子の動作累積時間、動作温度環境、前記液晶変調素子に照射される光の光量や波長のうち少なくとも1つに基づいて決定される負荷パラメータに基づいて警告を発する警告手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の液晶表示装置。
  7. 前記第2モードを継続する時間は、1秒以上であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の液晶表示装置。
  8. 前記第1電極の材質と、前記第2電極の材質とが互いに異なることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の液晶表示装置。
  9. 前記第1電極のフェルミ準位と前記第2電極のフェルミ準位とが互いに異なることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の液晶表示装置。
  10. 前記第1電極と前記液晶層との間、及び前記第2電極と前記液晶層との間には、それぞれ絶縁体材料で構成された薄膜が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の液晶表示装置。
  11. 前記液晶変調素子が反射型液晶変調素子であって、前記第1電極が透明電極、前記第2電極がミラー電極であることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の液晶表示装置。
  12. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む液晶変調素子と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する電位差付与手段と、
    光源からの光を用いて前記液晶変調素子を照明する照明光学系と、
    を備える液晶表示装置であって、
    前記液晶表示装置が、前記液晶変調素子内に存在する電荷によって前記液晶層内に発生する電界の強度を低減する電荷調整モードを有することを特徴とする液晶表示装置。
  13. 第1色、第2色、第3色各々に対応しており、各々が第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された液晶層とを含む第1、2、3液晶変調素子と、
    前記第1、2、3液晶変調素子の、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差を付与する第1、2、3電位差付与手段と、
    光源からの光で前記第1、2、3液晶変調素子を照明する照明光学系と、
    前記第1、2、3液晶変調素子からの画像光を投影する投影光学系と、
    を備える液晶表示装置であって、
    前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記第1、2、3液晶変調素子の前記液晶層に対して駆動周期ごとに正と負とが入れ替わる電圧を印加する第1モードと、前記照明光学系を用いて前記光源からの光を前記液晶変調素子に照射しつつ、前記電位差付与手段を用いて前記第1、2、3液晶変調素子の前記液晶層に対して前記液晶層に対して前記駆動周期より長い時間直流電圧を印加する第2モードとで動作することを特徴とする液晶表示装置。
  14. 前記第1、2、3液晶変調素子に対する前記第2モードの継続時間は、前記第1液晶変調素子の動作累積時間、動作温度環境、前記液晶変調素子に照射される光の光量や波長のうち少なくとも1つに基づいて決定されることを特徴とする請求項13記載の液晶表示装置。
  15. 前記第1液晶変調素子の動作累積時間、動作環境や、前記液晶変調素子に照射される光の波長の少なくとも1つに基づいて決定される負荷パラメータに基づいて警告を発する警告手段を備えることを特徴とする請求項13又は14いずれかに記載の液晶表示装置。
  16. 前記第1液晶変調素子から出射する光の少なくとも一部を受光するセンサーからの出力に基づいて、警告を発する警告手段を備えることを特徴とする請求項13乃至15いずれかに記載の液晶表示装置。
  17. 前記第1液晶変調素子に対する前記第2モードの継続時間と、前記第2液晶変調素子に対する前記第2モードの継続時間とが互いに異なることを特徴とする請求項13乃至16いずれかに記載の液晶表示装置。
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