JP2007206241A - ハイブリッド配向した位相差制御層の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水平配向膜13を形成した基材12に、紫外線重合型のネマチック液晶モノマー14および重合開始剤を含有する重合性液晶組成物を塗工し、前記ネマチック液晶モノマー14を液晶相温度または等方相温度に加熱して、プレチルト角5乃至15度、空気界面側チルト角20乃至90度のハイブリッド配向をさせ、前記ハイブリッド配向したネマチック液晶モノマー14を紫外線露光により重合させて固定化することを特徴とする位相差制御層15の形成方法。
【選択図】図1
Description
しかし、かかる方法によって視野角拡大フィルムを得る場合、該文献の実施例に記載の主鎖型液晶性ポリエステルはいずれも分子量が10000を超え、ベンゼン環構造が100個程度も直列に連結してなる高分子材料であることから、基材界面側から空気界面側にかけて膜厚方向にチルト角を連続的に変化させるハイブリッド配向を均質かつ十分に得ることができない。すなわち、かかる大きな分子量および分子長を有する高分子材料は分子間ポテンシャルが大きく、表面自由エネルギーによる自己配向能が十分ではないため、空気界面側のチルト角を大きくすることはできず、視野角拡大フィルムとしての性能を十分に得ることが困難である。
(1)基材に、重合性のネマチック液晶モノマーおよび重合開始剤を含有する重合性液晶組成物を塗工し、前記ネマチック液晶モノマーを液晶相温度にてハイブリッド配向させ、前記ハイブリッド配向したネマチック液晶モノマーを重合させて固定化することを特徴とする位相差制御層の形成方法;
(2)重合性のネマチック液晶モノマーが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする上記(1)に記載の位相差制御層の形成方法
(3)ネマチック液晶モノマーのハイブリッド配向が、
重合性液晶組成物を塗工する基材の上面に形成した水平配向膜と前記ネマチック液晶モノマーとのアンカリングエネルギーと、空気界面における前記ネマチック液晶モノマーの表面自由エネルギーとによってなされることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の位相差制御層の形成方法;
(4)重合型のネマチック液晶モノマーが、紫外線重合型のサーモトロピック型液晶モノマーである上記(1)から(3)のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法;
(5)ネマチック液晶モノマーの重合を、液晶相温度における紫外線露光により行うことを特徴とする上記(4)に記載の位相差制御層の形成方法;
(6)基材に塗工した重合性液晶組成物を液晶相温度または等方相温度に加熱し、基材界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と基材界面とのなすチルト角を5乃至15度とすることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法;
(7)重合性液晶組成物に、ネマチック液晶モノマーの重量に対しレベリング剤を0.01〜1重量%添加し、かつ、基材に塗工した前記重合性液晶組成物を等方相転移温度以上重合温度以下の温度に加熱し、空気界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角を20乃至80度とすることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法;
(8)基材に塗工した前記重合性液晶組成物を等方相転移温度以上重合温度以下の温度に加熱し、空気界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角を80乃至90度とすることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法;
を要旨とする。
(9)重合して固定化されたネマチック液晶モノマーを、さらに等方相転移温度以上の熱重合温度にて焼成することを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法;
(10)熱重合温度が、170℃以上260℃以下である上記(9)に記載の位相差制御層の形成方法;
によっても上記の目的を達成する位相差制御層の形成方法が提供される。
位相差制御層15のネマチック液晶モノマー14は、図中下方がプレチルト角αBの基材界面側、上方がチルト角αAの空気界面側であり、その光軸はいずれも紙面前後方向に伸びる立面と平行である。
一方、駆動用液晶分子24は図中上下方向に電圧を負荷され、立ち上がる方向に駆動された状態にある。駆動用液晶分子24の光軸はいずれも紙面と平行である。駆動用液晶層22の厚さ方向の中央近傍においては、駆動用液晶分子24は水平配向膜13に対して垂直に立ち上がっている。これに対し、水平配向膜13の近傍では、配向膜とのアンカリングエネルギーにより、駆動用液晶分子24は十分に立ち上がることができない。すなわち、電圧負荷時の駆動用液晶分子24は、基材界面側では水平に近い状態に寝て、厚さ方向の中央部に向かって次第に立ち上がるハイブリッド配向状態となる。このハイブリッド配向状態が、視野角をゼロ度から変化させた場合にリターデーションを発生させる原因となる。
また、上下二枚の水平配向膜13の間に駆動用液晶分子24を封入してなる駆動用液晶層22では、両配向膜の近傍においてそれぞれ駆動用液晶分子24の立ち上がりの不足が発生する。したがって、ハイブリッドネマチック配向型のLCDに対しては、液晶セルの上下両面に位相差制御層15を設けることが好適である。
位相差制御層15を構成する液晶材料は、電離放射線照射により液晶状態が固定化されたものであり、詳しくは分子構造中に不飽和結合基を有する液晶分子を、液晶状態で三次元重合させ、その液晶構造の配向特性を保持したまま、該液晶構造を紫外線等の照射により固定化してなる高分子である。本発明においては、液晶分子の配向がより均質に得ることができ、またハイブリッド配向のチルト角や、基材界面側のプレチルト角を容易に調整可能であるという点から、低分子量の重合性液晶モノマーを用いることが好適である。
また、本発明にかかる位相差制御層15をLCDの光学補償に用いた場合に、視野角に対するグレースケールの表示安定性に優れ、カラー表示の色味の変化が少ないという利点を得るため、ネマチック型の液晶モノマーを用いることが好適である。
X1およびX2は、直接結合のほか、エーテル基、エステル基もしくはカーボネート基、またはこれらの少なくとも一つを含む基であり、互いに同一でも相違してもよい。
また、一般式(1)の中央部のメソゲンを構成する各ベンゼン環には、3個以下の同一または相違する以下の置換基を有していてもよい。該置換基としては、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、C1〜C20のアルコキシカルボニル基、C1〜C20のモノアルキルアミノカルボニル基、C1〜C20のアルキルカルボニル基、C1〜C20のアルキルカルボニルオキシ基、C1〜C20のアルキルカルボニルアミノ基、ホルミル基、フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基、ヒドロキシ基またはニトロ基を挙げることができる。
上記の重合性ネマチック液晶モノマーは、溶媒に溶解させた紫外線重合型の重合性液晶組成物の状態で基材12に塗工するとよい。基材12の上面には、液晶モノマー14の水平方向の配向を促す水平配向膜13を形成し、該水平配向膜の上面に重合性液晶組成物を塗工して液晶相温度に加熱し、該液晶モノマーのハイブリッド配向を促す。
本実施の形態にて好適に用いられる有機溶媒、光重合開始剤および重合禁止剤については後述する。
ここで、上記化合物(I)乃至(III)に例示される液晶モノマーを水平配向させてAプレートを得る場合は、重合性液晶組成物に陰イオン性界面活性剤やシリコーン系界面活性剤などのレベリング剤を混合することで液晶モノマーを均一に水平配向させることが一般的であるが、本発明においては、かかるレベリング剤の添加をしない、または添加をする場合もこれを微量に調整することにより、空気界面側においては液晶モノマーの表面自由エネルギーによってこれを十分に立ち上がらせることができ、全体に均質にハイブリッド配向した位相差制御層15を得ることができる。
また空気界面側チルト角を20度乃至90度とすることにより、ハイブリッドネマチック配向型LCDの駆動液晶分子の立ち上がりの不足に起因する光漏れを実用的なレベルで十分に光学補償することができる。
ハイブリッド配向した位相差制御層15のプレチルト角を上記5乃至15度の範囲で任意に調整するにあたっては、水平配向膜13の配向特性や液晶モノマーに対するアンカリングエネルギーを変化させるか、または水平配向膜13に紫外線重合型の液晶モノマーを塗布した後に所定の温度および時間にてプリベイクすることでこれを好適に行うことができる。
すなわち水平配向膜13のアンカリングエネルギーを小さくすることにより、配向膜界面側の液晶モノマーの一端が表面自由エネルギーによって液晶層内に引き込まれ、より大きなプレチルト角にて立ち上がろうとする。また、液晶モノマーを常温以上に加熱することでその分子運動が活性化されるため、アンカリングエネルギーに抗ってより大きなプレチルト角にて分子が立ち上がることを可能にする。
またプリベイクを行う温度については、液晶相温度または等方相温度の中から選択可能である。プレチルト角を5乃至15度の範囲内でより大きなものとする場合、等方相転移温度以上かつ重合温度以下の温度、さらに具体的には90℃乃至150℃にてプリベイクするとよい。一方、プレチルト角を上記範囲内で小さくする場合は、液晶相温度、さらに具体的には50℃乃至90℃でプリベイクするとよい。
またプリベイクを行う時間を十分に長くとることにより、配向膜界面側の表面自由エネルギーによって液晶層内に引き込まれる液晶モノマーの立ち上がりを十分に促すことができ、液晶モノマーのプレチルト角をより大きくすることができる。したがって同一温度に加熱してプリベイクする場合も、その時間を調整することでプレチルト角を所定の範囲内で増減させることができる。
この他、樹脂の塗膜に対する光配向処理や基材への酸化ケイ素の蒸着によって水平配向膜13を得る場合は、照射光の角度や蒸着の角度を調整することにより、液晶モノマーのプレチルト角を増減させることができる。
ハイブリッド配向した位相差制御層15の空気界面側チルト角を20乃至90度の範囲で任意に調整するにあたっては、重合性液晶組成物に対する後述のレベリング剤の添加量(添加しない場合を含む)、または、重合性液晶組成物を基材に塗工した後に、これを液晶モノマーの液晶相温度乃至等方相温度でプリベイクする時間(プリベイクしない場合を含む)によってこれを行うことができる。さらに、上記に例示する重合性ネマチック液晶モノマーのうち、分子量のより低いものを選択することにより、空気界面側チルト角をより大きなものとすることができる。
なお、一般に紫外線重合型の液晶モノマーの反応性不飽和二重結合は、熱によっても重合する。したがって、プリベイクを行う際は液晶モノマーの重合温度以下で行うことが好ましい。
本発明においては、プリベイク温度を等方相転移温度プラス40℃乃至プラス80℃、かつ重合温度マイナス70℃乃至マイナス10℃の範囲から選択することで、特に大きな空気界面側チルト角を得ることができる。
かかるチルト角αをもつk番目の層では、下記[数1]にて表されるSchefferの式に基づき、位相差Rek(nm)が発生する。位相差Rekは上記αと、入射角ψ(rad)の関数である。
(基材について)
本発明にかかる位相差制御層を形成するための基材には様々なものを選択することができる。位相差制御層を視野角拡大フィルムとして用いる場合は、基材には透明有機材料により形成されたフィルム材を用いることができる。
透明有機材料としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、若しくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、若しくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロへキセン、若しくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、若しくは熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。特に、フィルムとしては、1軸延伸または2軸延伸したフィルムや、面内にリターデーションを有さないTACフィルム等を用いることができる。
有機溶媒としては、上記の重合性液晶モノマーを溶解可能であり、基材の配向性能を阻害しない材料であれば特に限定せずに用いることができる。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリンなどの炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶剤;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類、などが1種、または2種以上を混合して使用可能である。
紫外線重合型の液晶モノマーを紫外線照射により固定化するに際しては、液晶の配向を大きく損なわない範囲で光重合開始剤を添加するとよい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を使用することができる。ラジカル重合性開始剤は、たとえば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントンまたはチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物またはクロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれもチバスペシャリティケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)などのケトン類またはビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。
これらの開始剤を1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするとよい。なお、光重合開始剤のほかに増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的に液晶モノマーの重量に対して0.01〜15重量%(wt%)、好ましくは0.1〜12wt%、より好ましくは0.5〜10wt%の範囲で添加することができる。
重合禁止剤には、例えばp−ベンゾキノン、ナフトキノン、パラ−キシロキノン、パラ−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアエロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル・パラクレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、アセトアニジンアセテートなどを用いることができる。
重合禁止剤の添加量は、液晶モノマーの重量に対して好ましくは0.001〜3wt%、より好ましくは0.01〜2wt%である。上記範囲を下回ると、光散乱等による低い露光量でも硬化してしまい、またこれを超えると紫外線露光感度が低下する。
水平配向膜は、ポリアミド樹脂もしくはポリイミド樹脂等の樹脂を溶解した溶液を基材上に塗布し、これを乾燥させて塗膜形成し、次いで上記塗膜の上面から布を巻き付けたローラ等により所定の方向に摩擦するラビング処理を行うことにより形成することができる。このほか、基材に塗工した樹脂表面を光配向処理する方法や、基板に酸化ケイ素を斜め蒸着する方法などによっても配向膜を得ることができる。水平配向膜の厚さは特に限定されるものではないが、0.01μm〜0.08μmとすることが一般的である。
具体的には、例えば日産化学(株)製の配向膜材料(サンエバー)、日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)製の配向膜材料(QL,LXシリーズ)、JSR(株)製の配向膜材料(ALシリーズ)、チッソ(株)製の配向剤(リクソンアライナー)などを用いることができる。
空気界面側チルト角の小さなハイブリッド配向状態を得るために微量添加するレベリング剤には、非イオン性またはイオン性の界面活性剤を用いることができる。具体的には、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤、または脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボンサン型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
所望のプレチルト角および空気界面側チルト角をもつハイブリッド配向をさせた液晶モノマーを、次いで紫外線等の活性放射線を照射するか、または加熱することによって光重合または熱重合する。また活性放射線の照射と加熱とを併用してもよい。これにより、液晶モノマーを基材に対して所望のハイブリッド配向をさせた状態でこれを固定してなる位相差制御層15を得ることができる。
一方、加熱温度が高いほど液晶モノマーの重合反応速度は速くなるが、260℃を超える領域では液晶モノマー自身の分解反応が生じ、位相差層自体の劣化が顕著となる。特に両端に反応性不飽和二重結合を有する液晶モノマーの場合、260℃を超える温度に加熱すると、重合した液晶モノマーが熱摂動により配向変化して位相差量が変動し、また重合した位相差制御層15が分解する虞がある。このため本発明においては、ポストベイクの温度は液晶モノマーの種類によらず170℃以上260℃以下の範囲で設定することが好ましい。
図4は、位相差制御層15を備えるインセルタイプのカラーフィルタ18の分解斜視図である。12はガラス基材、17は赤色(R),緑色(G),青色(B)のマイクロカラーフィルタをストライプ状にパターニングした着色層である。着色層17の上には、ラビング処理16を施した水平配向膜13を塗膜し、その上に、ハイブリッド配向したネマチック液晶モノマーを重合固定した位相差制御層15を形成している。
なお、かかるインセルタイプのカラーフィルタ18によれば、視野角拡大フィルムをガラス基材12の外側(図4における下側)に貼着する場合に比べ、貼着のための接着層が不要になるという利点がある。これによりLCDを全体に薄型化することが可能になるとともに、接着層にて生じる透過光の散乱を抑えることができる。
すなわち、図5に示すように、水平配向膜上のネマチック液晶モノマーのもつプレチルト角が0度の場合、該モノマーの光軸は基材に対して完全に水平となるため、液晶分子の両端のいずれを上にして空気界面側にかけて立ち上がるかはランダムとなる。このため、立ち上がり方の逆転する液晶モノマー同士の間には、位相差制御機能の不十分なディスクリネーションライン50が形成される。これに対し、上述のように配向膜の材料の選択やフッ素原子の導入等によるアンカリングエネルギーの調整や、ラビング時のラビングロールの回転速度またはラビングロールと基板とのギャップの制御、および/または塗工後の液晶モノマーに対する所定のプリベイク処理などによってプレチルト角を5度以上に調整することにより、水平配向膜上に塗工された液晶モノマーはあらかじめ一端が立ち上がった状態にあることから、均一な向きで空気界面にかけて立ち上がることとなる。
プレチルト角を5度以上と設定することによりリバースドメインの発生を劇的に抑えることができるという上記効果は、以下の実施例および参考例を対比することにより明らかとなろう。
(1)基板の前処理
適当な洗浄処理を施し、清浄とした基板として、100mm四方、0.7mm厚さのガラス基板(1737材、コーニング社製)を用意した。
Oプレートを構成する重合性ネマチック液晶モノマー(メルク社製:商品名「RMM34」)を49重量部、光重合開始剤としてイルガキュアIrg184(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1重量部、溶剤としてトルエン50重量部を混合して重合性液晶組成物を調製した。
上記基板上に、配向膜材料としてSE−5291(日産化学社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で15分、さらに180℃で60分加熱し、厚さ700Åの配向膜を形成した。次いでこの配向膜にラビング処理を施して水平配向膜を得た。次に、上記配向膜上面に、上記調整した重合性液晶組成物をスピンコート法により厚さ2.4μmとなるように塗布した。続いて、重合性液晶組成物が塗布された基板をホットプレート上で100℃、5分間加熱し、残存溶剤を除去するとともに重合性液晶組成物に含有される液晶モノマーをハイブリッド配向させた。かかる条件で得られる液晶モノマーのハイブリッド配向は、プレチルト角が5度、空気界面側チルト角が40度であった。
続いて、10J/cm2、365nmの条件で紫外線照射を行い、上記ハイブリッド配向した液晶モノマーを重合固定した。さらに180℃のホットプレート上で60分間加熱して完全に硬化反応を終了させ、本実施例にかかる位相差制御層(Oプレート)を作製した。
上記実施例にて用いた配向膜材料をSE−7992(日産化学社製)に替え、同一の条件によりOプレートを得た。かかる条件で得られる液晶モノマーのハイブリッド配向は、プレチルト角が4.5度、空気界面側チルト角が40度であった。かかるOプレートをクロスニコル下にて顕微鏡で観察した結果を図6(b)に示す。
これにより、0.5度というわずかなプレチルト角の相違によりリバースドメインの発生が劇的に抑えられ、プレチルト角を5度とする本実施例にかかるOプレートでは、参考例に比してさらに高い光学補償機能が得られることがわかる。
12 基材
13 水平配向膜
14 ネマチック液晶モノマー
15 位相差制御層
16 ラビング処理
17 着色層
18 カラーフィルタ
22 駆動用液晶層
24 駆動用液晶分子
50 ディスクリネーションライン
Claims (8)
- 基材に、重合性のネマチック液晶モノマーおよび重合開始剤を含有する重合性液晶組成物を塗工し、前記ネマチック液晶モノマーを液晶相温度にてハイブリッド配向させ、前記ハイブリッド配向したネマチック液晶モノマーを重合させて固定化することを特徴とする位相差制御層の形成方法。
- ネマチック液晶モノマーのハイブリッド配向が、
重合性液晶組成物を塗工する基材の上面に形成した水平配向膜と前記ネマチック液晶モノマーとのアンカリングエネルギーと、空気界面における前記ネマチック液晶モノマーの表面自由エネルギーとによってなされることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差制御層の形成方法。 - 重合性のネマチック液晶モノマーが、紫外線重合型のサーモトロピック型液晶モノマーである請求項1から3のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法。
- ネマチック液晶モノマーの重合を、液晶相温度における紫外線露光により行うことを特徴とする請求項4に記載の位相差制御層の形成方法。
- 基材に塗工した重合性液晶組成物を液晶相温度または等方相温度に加熱し、基材界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と基材界面とのなすチルト角を5乃至15度とすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法。
- 重合性液晶組成物に、ネマチック液晶モノマーの重量に対しレベリング剤を0.01〜1重量%添加し、かつ、基材に塗工した前記重合性液晶組成物を等方相転移温度以上重合温度以下の温度に加熱し、空気界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角を20乃至80度とすることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法。
- 基材に塗工した前記重合性液晶組成物を等方相転移温度以上重合温度以下の温度に加熱し、空気界面側のネマチック液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角を80乃至90度とすることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の位相差制御層の形成方法。
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