JP2007204565A - 難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的物理特性の低下を防ぎ、環境負荷の少ない難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品の提供。
【解決手段】マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有する難燃性樹脂組成物及びそれを用いたUL−94試験による難燃性がHB以上である難燃性樹脂成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂に難燃剤を混合した難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品に関するものであり、より具体的には、家電及びOA製品の筐体、電線、ケーブル、自動車車両、船舶、航空機、鉄道車両、建築材料、電子機器やプリント基板等に、火災などの熱による災害から保護する目的で使用されるものである。
樹脂材料の難燃化のために難燃剤が当該樹脂材料に混合される。難燃剤としては、例えば、金属水和物、ハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤等が挙げられるが、環境負荷低減、樹脂リサイクルの観点より、難燃剤として金属水和物を用いることが好ましい。
代表的な金属水和物としては、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムが挙げられる。水酸化アルミニウムは脱水開始温度が300℃であり、樹脂に配合する場合に溶融混練温度または射出成形温度を300℃以下にしなければ脱水による樹脂発泡が生じるため使用できない。
一方、水酸化マグネシウムは400℃付近で脱水が始まるため、成形温度には勝るが、水酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物は、水酸化マグネシウムが空気中の炭酸と反応し、炭酸マグネシウムを形成するため、それが白く樹脂表面に浮き出る白化現象が生じる外観不良を起こすことがある。それを解決するためには、水酸化マグネシウムを表面処理する必要があり、技術的にも難しく、またコストアップにもなる。
また、金属水和物はハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤に比して難燃性能が劣るため、必要とされる難燃性を発現させるためには、樹脂材料に多量配合させることが必要である。しかしながら、金属水和物を樹脂材料に多量に配合すると、樹脂の持つ力学性能などの低下、成形性の悪化などの機械的物理特性が低下する問題が生ずることがある(例えば、特許文献1又は2参照。)。
特開2000−191844号公報 特開2000−264935号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、機械的物理特性の低下を防ぎ、環境負荷の少ない難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、
<1> マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有する難燃性樹脂組成物である。
<2> 難燃助剤をさらに含有する<1>に記載の難燃性樹脂組成物である。
<3> 前記チューブ状ケイ酸塩化合物が、Mg、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を構成元素として含む<1>又は<2>に記載の難燃性樹脂組成物である。
<4> 前記チューブ状ケイ酸塩化合物の表面が、Mg、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は前記金属を含む化合物により被覆された<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の難燃性樹脂組成物である。
<5> 前記チューブ状ケイ酸塩化合物の表面に、有機化合物又はポリシリコーンを含む被覆層が形成された<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の難燃性樹脂組成物である。
<6> 前記難燃助剤が、ホウ酸系難燃助剤である<1>乃至<5>のいずれか1つに記載の難燃性樹脂組成物である。
<7> マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有し、UL−94試験による難燃性がHB以上である難燃性樹脂成形品である。
<8> 前記マトリックス樹脂からなる成型品と比較して、ISO5660のコーンカロリメータ測定による発熱速度が3分の1以下である<7>に記載の難燃性樹脂成型品である。
本発明によれば、機械的物理特性の低下を防ぎ、環境負荷の少ない難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品を提供することができる。
以下、本発明の難燃性樹脂組成物及びそれを用いた難燃性樹脂成型品について詳細に説明する。
<難燃性樹脂組成物>
本発明の難燃性樹脂組成物は、マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有する。
前述のように、従来難燃剤として使用されている金属水和物などの難燃性の粒子では、その他の有機系難燃化合物と比較して同等の難燃性を得るために多量にマトリックス樹脂中に配合させなければならず、これによりポリマー物性が著しく低下する。このため、ポリマー物性の低下を防ぐためには、難燃剤の低充填化が必要である。また、ハロゲン系難燃剤やリン酸系難燃剤は難燃効果に優れるものの、焼却によるダイオキシンの発生や流出によるリン扶養分などの環境負荷が発生する。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、難燃剤としてチューブ状ケイ酸塩化合物を用いるため、ハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤に比べて環境負荷を小さくでき、リサイクル性の高い難燃性樹脂組成物を得ることができる。
チューブ状のケイ酸塩化合物は比表面積が大きく表面活性が高いためマトリックス樹脂中に添加した場合、少量の配合でも高い難燃性能を発現することができる。また、チューブ状のケイ酸塩化合物は異方性を有するので、マトリックス樹脂の強度など有用な物性を損なうことがない。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物を用いた本発明の難燃性樹脂成型品のせん断方向に対する熱収縮率を小さくすることができる。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物としては、分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物が好ましい。このような化合物としてイモゴライトが挙げられる。イモゴライトは、チューブ状の構造を示しその表面に複数の水酸基を有する。
分子中に水酸基を少なくとも1つ有する化合物には、燃焼時に熱分解して水を放出することで燃焼時の熱量を低下させる効果と、燃焼時にポリマーから発する燃焼ガスを希釈する効果との二つの効果がある。
本発明者等は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物を用いることで熱量を低下させる効果と燃焼時にポリマーから発する燃焼ガスを希釈する効果とをより緻密に、かつ効果的に働かせることができることを見出した。
一方、ポリマーへの難燃剤添加による樹脂難燃化においては、難燃剤を一つではなくいくつか併用して用いる場合がほとんどあり、その場合に樹脂に対する配合量の多いものが主たる難燃剤であり、その主たる難燃剤の難燃効果をさらに高めるため少量添加されるものとして難燃助剤がある。
例えば、臭素系難燃剤に対する難燃助剤が酸化アンチモン化合物であり、主たる臭素系難燃剤に対し、燃焼時に臭素と反応性を持つ酸化アンチモン化合物がさらに難燃性能を高める。この場合、難燃助剤は臭素系難燃剤と反応し、吸熱効果を持つとされており、難燃剤と組合せることでさらなる相乗効果を得るために使用されるものである。
一方、難燃助剤の中には、積極的に炭化し、燃焼時にポリマー表面を覆い酸素を遮断する効果と、ポリマーから発せられる可燃物を遮断する二つの効果とを持つものがある。このような化合物をチャー形成化合物といい、その難燃効果は、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物の持つ難燃効果と異なるものである。
本発明においては、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物とチャー形成化合物(難燃助剤)との異なる二つの効果を組合せることにより、さらなる難燃効果の向上が見出された。
さらに本発明においては、難燃剤として分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物とチャーを形成し得る難燃助剤とを使用することで、前記のような両者の複合効果により、燃焼時に有害なガスが発生せず、且つ低発煙性であり、しかも、リサイクル時の環境付加の小さな難燃性樹脂組成物を得ることができることも明らかとなった。
以下、本発明の難燃性樹脂組成物の構成等について説明する。
−チューブ状ケイ酸塩化合物−
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物は特に限定されるものではないが、Mg、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を構成元素として含むケイ酸塩化合物が好ましく、Al、Mgを構成元素として含むケイ酸塩化合物がさらに好ましく、特にAlを構成元素として含むケイ酸塩化合物が好ましい。Alを構成元素として含むケイ酸塩化合物の具体例としては、イモゴライトを挙げることができる。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物は、例えば、特許第3146360号に示されるような合成法もしくは、天然鉱物より抽出する方法(V.C.Farmer, A.R.Fraser, J.M.Tait, J.C.S.Chem.Comm., 1977, 462.)により入手可能である。
チューブ状ケイ酸塩化合物は、特有のX線回折パターンを有しており、例えば、チューブ状アルミニウムケイ酸塩は、粉末X線回折において2θ=4,9.5,14,27,40°付近にピークを有する。上述の合成法又は抽出法により得られた物質がチューブ状ケイ酸塩化合物であるか否かは、粉末X線回折により確認することができる。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物の内径は1〜100nmが好ましく、1〜80nmがさらに好ましく、1.5〜50nmが特に好ましい。チューブ状ケイ酸塩化合物の内径が1〜100nmであると下記効果が得られる。
比表面積が増大し、かつ、チューブ状ケイ酸塩化合物内にマトリックス樹脂の分子鎖が進入できる大きさとすることで、マトリックス樹脂とチューブ状ケイ酸塩化合物との密着力が増し、得られる難燃性樹脂組成物の機械的特性が向上する。
また、本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物の外径は1.1〜200nmが好ましく、1.1〜100nmがさらに好ましく、1.1〜60nmが特に好ましい。なお、当然のことながらこの外径は前記内径よりも大きいものでなければならない。チューブ状ケイ酸塩化合物の外径が1.1〜200nmであると下記効果が得られる。
チューブ状ケイ酸塩化合物の比表面積が増大し、かつ、チューブ状ケイ酸塩化合物のチューブ壁の厚みが薄いため活性に優れて反応性が向上し、難燃性が向上する。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物の内径は、下記方法により得られる細孔分布曲線から求めることができる。
細孔径分布曲線は、ガスの吸着量測定により得られる吸着等温線から種々の計算式で導かれる。この方法において最も好適に用いられるガスは窒素である。まず、吸着材である多孔材料を、液体窒素温度(−196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法あるいは重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。この吸着等温線から、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算式により、細孔径分布曲線を求める。得られた細孔径分布曲線のピーク位置からチューブ状ケイ酸塩化合物の内径が求まる。
例えば、合成されたイモゴライトに係る細孔分布曲線では、約1.5nmと3nmおよび5nmにピークを有しており、約1.5nmの細孔はチューブ内径に、約3nmおよび5nmの細孔はチューブとチューブの隙間に由来するものである。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物のアスペクト比(チューブ長さ/チューブの外径)は、5〜1000が好ましく、5〜500がさらに好ましく、10〜200が特に好ましい。アスペクト比が5〜1000であると、下記効果が得られる。
マトリックス樹脂の分子鎖との絡み合いにより密着力が増し、得られる難燃性樹脂組成物の機械的特性が向上する。また、チューブ状ケイ酸塩化合物がマトリックス樹脂中で網目構造のようにアトランダムな3次元的に配向しやすく、燃焼時のドリップ防止性を向上させる。上記範囲内において、イモゴライトのアスペクト比が大きいものの方が、アスペクト比の小さなものよりもこれらの効果が大きい。
なお、チューブ長さ及び外径は透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定できる。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により適宜拡大倍率を調整して得られた写真、例えば、図1に示すようなチューブ状ケイ酸塩化合物(ここではイモゴライト)のTEM画像から、1つのチューブ状ケイ酸塩化合物の長さ及び外径を直接測定する。この操作を複数個(例えば300個)のチューブ状ケイ酸塩化合物について行い、長さ及び外径の平均値からアスペクト比を計算することができる。長さ及び外径の平均値の測定には画像解析装置を用いても良い。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物の表面は、Mg、Ca、Al、Fe、Zn、Ba、Cu及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は前記金属を含む化合物により被覆されていてもよい。前記所定の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属又は前記金属を含む化合物によりチューブ状ケイ酸塩化合物の表面を被覆することで、下記効果が得られる。
チューブ状ケイ酸塩化合物の表面は、ケイ酸基や水酸基の存在により、前記金属が直接表面に出現することは少ない。そこで、チャー形成作用を持つことが知られている上記金属又は前記金属を含む化合物を直接チューブ状ケイ酸塩化合物の表面に被覆することにより、チャー形成作用が高まる。それにより、従来チューブ状ケイ酸塩化合物の持つ水放出による難燃効果のみではなく、チャー形成による難燃効果の効果をも得ることができる。
チューブ状ケイ酸塩化合物の表面を所定の金属又は該金属を含む化合物で被覆する方法としては、下記方法が挙げられる。
固溶体処理、プラズマ処理、及び、化学処理等が挙げられるが、特には表面の水酸基を利用した化学処理が望ましい。
また、チューブ状ケイ酸塩化合物の表面には、本発明のマトリックス樹脂が燃焼する際に炭化を促進可能な触媒を担持させることもできる。このような触媒の具体例としては、例えば、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅等が挙げられる。触媒担持方法としては、下記方法が挙げられる。
固溶体処理、プラズマ処理、及び、化学処理等が挙げられるが、特には表面の水酸基を利用した化学処理が望ましい。
チューブ状ケイ酸塩化合物としてアルミニウムケイ酸塩水和物を用いる場合、表面をシュウ酸で処理することにより、該アルミニウムケイ酸塩水和物の分解温度を350℃から400℃に向上させることができる。これにより、本発明の難燃性樹脂組成物を用いて成型品を製造する際の形成温度の上限を上げることができる。
本発明に係るチューブ状ケイ酸塩化合物の表面(所定の金属又は該金属を含む化合物により表面が被覆されている場合には、所定の金属又は該金属を含む化合物の表面)には、有機化合物又はポリシリコーンを含む被覆層が形成されていることが好ましい。被覆層を設けることにより、マトリックス樹脂中におけるチューブ状ケイ酸塩化合物の分散性を向上することができる。
前記有機化合物としては、特に制限されないが、前記難燃性粒子と結合可能な有機基を有するものであることが好ましい。このような有機基を難燃性粒子に結合させることにより、チューブ状ケイ酸塩化合物表面に薄層の有機層を均一に形成することができる。
前記有機化合物としては、前記有機基の末端にチューブ状ケイ酸塩化合物と結合を形成するための結合性基を有したものが好ましい。
上記結合性基としては、例えば、ヒドロキシル基、リン酸基、ホスホニウム塩基、アミノ基、硫酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、親水性複素環基、多糖基(ソルビトール、ソルビット、ソルビタン、ショ糖エステル、ソルビタンエステル残基など)、ポリエーテル基(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン基などのアルキレンの炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン基など)、加水分解性基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ基などの炭素数が1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(臭素、塩素原子など)などが挙げられる。
なお、結合性基がアニオン性基(硫酸基、スルホン酸基、カルボキシル基など)の場合、種々の塩基と塩を形成していてもよい。該塩基としては、無機塩基(例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニアなど)、有機塩基(例えば、アミン類など)が挙げられる。また、結合性基がカチオン性基(例えば、アミノ基)の場合には、酸、例えば無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(酢酸など)と塩を形成してもよい。さらに、上記カチオン性基は、アニオン性基(特に、カルボキシル基、硫酸基)と塩を形成してもよい。また、結合性基として、カチオン性基及びアニオン性基の両方を有していてもよい。
このように、好ましい結合性基には、イオン性基(アニオン性基、カチオン性基)、加水分解性基が含まれ、チューブ状ケイ酸塩化合物と形成される結合は、イオン結合であっても共有結合であってもよい。
前記有機化合物の有機基としては、界面活性剤の疎水性基等として作用する基(例えば、高級脂肪酸残基、高級アルコール残基、アルキル−アリール基など)等が挙げられる。
上記高級脂肪酸残基としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ダチュリン酸、ステアリン酸、モンタン酸、メリシン酸などの炭素数8〜30の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数10〜28の飽和脂肪酸、さらに好ましくは12〜26の飽和脂肪酸);エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リンデル酸、マッコウ酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸などの炭素数が12〜30の不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数が14〜28の不飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数が14〜26の不飽和脂肪酸)などの残基が挙げられる。
また、前記高級アルコール残基としては、例えば、オクチル、ノニル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル(セチル)、オクタデシルなどの炭素数が8〜24の高級脂肪アルコール残基、好ましくは炭素数が10〜22の高級アルコール残基、さらに好ましくは炭素数が12〜20の高級アルコール残基などが挙げられる。
また、前記アルキル−アリール基としては、例えば、ヘキシルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ドデシルフェニル、イソプロピルフェニル、ブチルフェニル、アミルフェニル、テトラデシルフェニルなどのアルキル−アリール基(好ましくは炭素数が1〜20のアルキル−炭素数が6〜18のアリール基、さらに好ましくは炭素数が6〜18のアルキル−炭素数が6〜12のアリール基、特に炭素数が6〜16のアルキル−フェニル基)などが挙げられる。
これらの疎水性基には、種々の置換基(例えば、炭素数が1〜4のアルキル基など)が置換していてもよい。
また、前記ポリシリコーンとしては、シロキサン結合を有するものであれば特に限定されないが、下記一般式(2)で示されるような環状オルガノシロキサン化合物の重合体を用いることが好ましい。
上記式中、nは3〜8の整数を表す。nの数が小さいほど沸点が低く、揮発して難燃性粒子に吸着する量が多くなり、nが7を超えると揮発しにくくなり被覆処理が不充分となるため好ましくない。また特にn=4、5又は6であるとその立体的な性質から重合しやすく最も適している。
本発明においては、前記一般式(2)で示される環状オルガノシロキサン化合物(a)、(b)のうちのいずれか、または2種を組み合わせて用いることができる。重合体の重合度(繰り返し単位数)は10〜1000の範囲であることが好ましく10〜100の範囲がより好ましい。また、被覆層としては、上記重合体と前記有機化合物とを組み合わせて用いてもよい。
被覆層として、上記のような低表面エネルギーのシリコーンを用いることにより、チューブ状ケイ酸塩化合物をマトリックス樹脂と混合した場合に樹脂の可塑化が起こりにくくなる。
また、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物を用いた場合、難燃性樹脂組成物としたときに、燃焼時に表面のポリシリコーン層が熱バリア層を形成するが、チューブ状ケイ酸塩化合物表面にポリシリコーン層を形成することで、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するチューブ状ケイ酸塩化合物より放出される水分が熱バリア層を発泡させるため、熱バリア層の断熱性を高め難燃効果を向上させることができる。
有機化合物による表面被覆量は、チューブ状ケイ酸塩化合物に対して1〜200質量%の範囲であることが好ましく、20〜100質量%の範囲であることがより好ましく、30〜80質量%の範囲であることがさらに好ましい。被覆量が1質量%に満たないと、マトリックス樹脂中で凝集物が生成し、分散が不均一になってしまう場合がある。また、200質量%を超えると、マトリックス樹脂に分散したとき樹脂が可塑化してしまう場合がある。
ポリシリコーンによる表面被覆量は、チューブ状ケイ酸塩化合物に対して20〜200質量%の範囲であることが好ましく、20〜80質量%の範囲であることがより好ましい。被覆量が20質量%に満たないと、マトリックス樹脂中で凝集物が生成し、分散が不均一になってしまう場合がある。また、200質量%を超えると、マトリックス樹脂に分散したとき樹脂が可塑化してしまう場合がある。
なお、被覆層の均一性は、チューブ状ケイ酸塩化合物を透過型電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物におけるチューブ状ケイ酸塩化合物の配合量は、マトリックス樹脂100質量部に対して5〜50質量部の範囲であることが好ましく、5〜30質量部の範囲であることがより好ましい。
−マトリックス樹脂−
本発明の難燃性樹脂組成物のマトリックス樹脂としては、ゴム・プラスチックなどの高分子化合物であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ポリ乳酸(PLA)などのバイオマス由来の生分解性樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)などの石油由来の生分解性樹脂、ABS樹脂、ACS樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ASA樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、エルロールプラスチック樹脂、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、FRP、アイオノマー、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、ニトリル樹脂、ポリエステル、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアリルスルフォン、ポリベンゾイミダゾール、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリスチレン(PS)、SAN樹脂、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、キシレン樹脂、熱可塑性エラストマー、EPDM、CR、BR、ニトリルゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等が挙げられる。
これらの中では、ABS樹脂が成形後の成形体の表面性に優れ、ポリスチレンが成形後の成形体の透明性に優れる点で好ましい。また、これらは、単独もしくは2つ以上で複合して使用することができる。
特にABS樹脂に関しては、フェノール、カーボネート、重質油類またはピッチ類及びホルムアルデヒド化合物を酸触媒の存在下で重縮合して得られる縮合多環芳香族樹脂にて変性した変性ABS樹脂が、上記のようにチャーを形成すべき物質が付加され難燃性が向上しており、チューブ状ケイ酸塩化合物と併用することによりさらに相乗効果が生ずるため好ましい。
また、例えば上記ABS樹脂とチューブ状ケイ酸塩化合物等とを配合したABS樹脂コンパウンドを、他の樹脂とポリマーブレンドしてもよい。該他の樹脂としては、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドを始めとする様々なエンジニアリングプラスチックに混合して用いてもよい。
−難燃助剤−
本発明に用いられる難燃助剤は特に限定されるものではなく例えば、ホウ酸系難燃助剤、アンモン系難燃助剤、無機系難燃助剤、窒素系難燃助剤、有機系難燃助剤又はコロイド系難燃助剤等が挙げられる。
ホウ酸系難燃助剤の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛水和物、メタホウ酸バリウム、ほう砂などのホウ酸を含有する化合物が挙げられる。
アンモン系難燃助剤としては、例えば、硫酸アンモニウム等のアンモニア化合物が挙げられる。
無機系難燃助剤としては、例えば、フェロセンなどの酸化鉄系燃焼触媒、酸化チタンなどのチタンを含有する化合物、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン系化合物、さらに、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、錫系化合物、炭酸カリウムなどの炭酸塩化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物及びその変性物が挙げられる。
窒素系難燃助剤としては、例えば、トリアジン環を有するシアヌレート化合物が挙げられる。
有機系難燃助剤としては、例えば、無水クロレンド酸、無水フタル酸、ビスフェノールAを含有する化合物、グリシジルエーテルなどのグリシジル化合物、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、変性カルバミド、シリコーンオイル、オルガノシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
コロイド系難燃助剤としては、例えば、従来から使用されている難燃性を持つ水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水和物、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレーなどの水和物、硝酸ナトリウムなどの硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、ドーソナイト、プロゴパイトなどの難燃性化合物のコロイドが挙げられる。
以上の各種難燃助剤の多くは、水溶性又は親水性のものであり、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記難燃助剤は、比較的少ない量で優れた難燃効果が得られる点などから、ホウ酸系難燃助剤が好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物中における難燃助剤の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であることが好ましく、1〜35質量部の範囲であることがより好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物には、通常配合される安定剤などを配合させることができる。これらは特に限定されるものではないが、例えば、橋掛け剤、橋掛け促進剤、橋掛け促進助剤、活性剤、橋掛け抑制剤、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、補強剤、強化剤、発砲剤、発泡助剤、安定剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、変性剤、着色剤、カップリング剤、防腐剤、防カビ剤、改質剤、接着剤、付香剤、重合触媒、重合開始剤、重合禁止剤、重合抑制剤、重合調整剤、結晶核剤、相溶化剤、分散剤、消泡剤などが挙げられる。
これらは、単独もしくは2つ以上で複合して使用することができる。
また、本発明の難燃性樹脂組成物には、チューブ状ケイ酸塩化合物、難燃助剤だけではなく、さらに粒子径の大きい難燃剤を併用することができる。これにより、ポリマーマトリックス中において大きな粒子同志の隙間を小さなチューブ状ケイ酸塩化合物が埋める石垣のような効果により、隙間なくマトリックス樹脂中に難燃性物質を行き渡らせることができる。そのため、難燃性はさらに向上する。
前記難燃剤としては、体積平均粒子径が0.5μmよりも大きく50μm以下であるものが好ましく、0.5μmよりも大きく30μm以下であるものがより好ましい。体積粒子径が0.5μm以下であると、粒子が小さすぎて前記石垣のような構造を採ることができない場合がある。50μmより大きいと、ポリマーの機械的特性を低下させる原因となる場合がある。
前記難燃剤としては、特に制限されないが、水和金属化合物、無機水和物、窒素含有化合物、及び珪素含有無機充填剤から選択される1種以上を用いることが好ましい。
前記水和金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムのうちから選択されるいずれかであることが好ましい。また、前記無機水和物としては、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、及びカオリンクレーのうちから選択されるいずれかであることが好ましい。また、前記窒素含有化合物は硝酸ナトリウムであることが好ましい。さらに、前記珪素含有無機充填剤は、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、ドーソナイト、プロゴパイト、及びスメクタイト等から選択されるいずれかであることが好ましい。
上記難燃剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
前記難燃剤の含有量は、チューブ状ケイ酸塩化合物100質量部に対し、0.1〜200質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜50質量部の範囲であることがより好ましい。含有量が0.1質量部に満たないと、含有量が少なすぎ前記石垣のような構造を採ることができない場合がある。200質量部を超えると、難燃剤の量が多くなりすぎポリマーの機械的特性が低下する場合がある。
また、本発明の難燃性樹脂組成物には、チューブ状ケイ酸塩化合物、難燃助剤だけではなく、有機化処理したスメクタイト類を併用することができる。これにより、マトリックス樹脂中において大きなアスペクト比のスメクタイト類粒子同志の隙間を小さなチューブ状ケイ酸塩化合物が埋める点と線のような効果により、隙間なくマトリックス樹脂中に難燃性物質を行き渡らせることができる。そのため、難燃性はさらに向上する。
本発明の難燃性樹脂組成物は、以上述べたチューブ状ケイ酸塩化合物、難燃助剤、マトリックス樹脂及び必要に応じて難燃剤、安定剤などを混合し、これを混練機で混練することにより得ることができる。
上記混練機としては、特に制限されないが、3本ロールや2本ロールを用い、せん断応力と位置交換の繰り返しによって、難燃性微粒子を分散させる方法、及びニーダー、バンバリーミキサー、インターミックス、1軸押出機、2軸押出機を用い、分散機壁面の衝突力やせん断力によって分散させる方法が、高い分散性を得る観点から好ましく用いられる。
混練温度は用いるマトリックス樹脂、チューブ状ケイ酸塩化合物などの添加量等によって異なるが、50〜450℃の範囲が好ましく、60〜380℃の範囲がより好ましい。
チューブ状ケイ酸塩化合物が表面に被覆層を有している場合、前記ニーダー、2軸押出機及びロールなどの機械的混合のみならず、マトリックス樹脂が溶解する、もしくは膨潤する溶液中において樹脂と均一分散させることができる。
また、重合過程における樹脂製造の過程において、重合溶媒とともにチューブ状ケイ酸塩化合物を混合することも可能である。このように樹脂への分散において大きな自由度を持つことは、配合量が少なくても難燃性が出現し、機械的強度を損なわないことにより、加工性が向上していると考えられる。よって、ペレット、繊維、フィルム、シート、構造物など、幅広い形状の加工品を得る加工方法への適用が可能となる。
その際の有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、メタノール、エチルホルムアミド、ニトロメタン、エタノール、アクリル酸、アセトニトリル、アニリン、シクロヘキサノール、n−ブタノール、メチルアミン、n−アミルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、トルエン、ジエチルケトン、四塩化炭素、ベンゾニトリル、シクロヘキサン、イソブチルクロリド、ジエチルアミン、メチルシクロヘキサン、酢酸イソアミル、n−オクタン、n−ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、メチルイソプロピルケトン、酢酸ブチル、メチルプロピルケトン、エチルベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ピリジン、n−ヘキサノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、エチレングリコール、グリセロールホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
これらは単独もしくは2つ以上で複合して使用することができる。
また、その際の混合温度は0〜200℃の範囲、好ましくは室温から150℃の範囲、特に好ましくは10〜100℃の範囲であり、場合によっては、圧力をかけてもよいし、かけなくてもよい。
混練または上記溶液分散後の難燃性樹脂組成物中には、チューブ状ケイ酸塩化合物が一次粒子として均一に分散していることが好ましい。この分散状態については、難燃性樹脂組成物のシートについて紫外、可視光による透過率を測定することにより、簡易に測定することができる。
測定法は、チューブ状ケイ酸塩化合物が含有された難燃性樹脂組成物又はその成形体から、ダイヤモンドナイフを取り付けたマイクロトームなどにより厚み20μmのフィルムを作製し、これを試料として、紫外・可視光分光光度計にて透過率を測定するものである。マイクロトームとしてはReichert社製ウルトラカットN等が挙げられる。
上記測定法により求めた透過率は、550nmの測定において、40〜90%の範囲であることが好ましく、60〜90%の範囲であることがより好ましい。
本発明におけるチューブ状ケイ酸塩化合物は、表面に被覆層(有機化合物、ポリシリコーン)を有することで、樹脂中にさらに均一に分散させることができ、その難燃効果は向上する。
しかも、本発明の難燃性樹脂組成物は、チューブ状ケイ酸塩化合物の少量添加で高難燃性であるため、機械的特性に優れるだけでなく、従来のハロゲン系やリン酸エステル系の難燃剤に比べて環境負荷が小さく、チューブ状ケイ酸塩化合物が熱履歴で劣化することがないためリサイクル性も高い。
<難燃性樹脂成形品>
本発明の難燃性樹脂成形品は、既述した本発明の難燃性樹脂組成物を成形機により成形したものである。
上記成形機としては、プレス成形機、インジェクション成形機、モールド成形機、ブロー成形機、押出成形機、及び紡糸成形機のうちから選択される1以上の成形機を用いることができる。したがって、これらの1つにより成形を行ってもよいし、1つの成形機により成形を行った後、他の成形機により続けて成形を行ってもよい。
成形された本発明の難燃性樹脂成形品の形状は、シート状、棒状、糸状など特に限定されるものではない。また、その大きさも制限されるものではない。
本発明の難燃性樹脂成形品は、例えばシート状成形物として包装及び建材などに、また構造物状成形物として複写機及びプリンターなどの筐体、内部部品等のOA機器部品などに用いることができる。
以下、上記OA機器部品として、下記に例示する各々に用いた場合のメリットについて簡単に説明する。
(筐体)
本発明においては、難燃剤としてチューブ状ケイ酸塩化合物を使用するので、燃焼時にハロゲン系ガス、ダイオキシン、シアン等の有毒ガスが発生せず、高度な難燃性を有する。そして、その高度な難燃性、高曲げ弾性率及び良好な成形加工性より従来の成形品と比較して、薄肉化が可能であるため筐体の構成材料としてとして好ましい。また、表面処理したチューブ状ケイ酸塩化合物を樹脂組成物に含有させることにより、樹脂組成物の表面抵抗を低減できることから、筐体表面の帯電防止性能にも優れる。
また、従来ノンハロゲン難燃樹脂組成物で使用されているのは、無機系及び有機系リンであるが、これは加水分解性があるため、大気中の水分の影響を受けて配合された樹脂組成物の寿命が縮まる。一方、本発明の難燃性樹脂組成物は加水分解及び熱による安定性が良好であることから、リン系難燃剤を配合した従来ノンハロゲン難燃樹脂組成物と比較しても長寿命及びリサイクル性に優れる。さらに、使用中の変色(黄変)、耐擦傷性の低下も抑制でき、耐トナー性(耐油性)にも優れるため好ましい。
(内部用樹脂成形品)
本発明の難燃性樹脂成形品を内部樹脂成形品に用いる場合には、難燃性能の維持性と成形品の寸法精度に優れるため好ましい。OA機器の内部は、例えば、トナーを溶融し定着させるための発熱部等を有しているため、使用される樹脂にも耐熱性が要求される。特に、湿度が高い地域で使用される場合は、樹脂成形品の耐熱性及び耐加水分解性がより要求される。チューブ状ケイ酸塩化合物は、熱分解性に強いため、これを混合した樹脂の難燃性の耐熱維持性は、他の難燃剤と比較して高い。なお、従来ノンハロゲン系難燃樹脂組成物で使用されているのは、無機系及び有機系リンであるが、前記のようにこれは加水分解性があり、その樹脂組成物の寿命を縮めてしまう欠点がある。一方、本発明の難燃性樹脂組成物は耐熱性及び耐加水分解性が良好であることから、従来のノンハロゲン難燃樹脂組成物と比較して、寸法制度に優れ、内部用樹脂成形品として使用するのに適している。
(ROSフレーム)
ROSフレームとして用いる場合には、成形品の寸法精度に優れるため好ましい。寸法精度に優れる理由は、前記内部用樹脂成形品の場合と同様である。また、チューブ状ケイ酸塩化合物は異方性があり、これを配合した成型品はせん断方向に対する熱収縮率が小さい。
(軸受け・ギアー)
この場合は、成形品の摺動性と寸法精度とに優れるため好ましい。寸法精度に優れる理由は、前記内部用樹脂成形品の場合と同様である。
以上のように、本発明の難燃性樹脂成形品は難燃性に優れるが、具体的には、本発明の難燃性樹脂成形品では、ISO5660のコーンカロリメータ測定による発熱速度が、難燃性粒子等を含む前のマトリックス樹脂からなる成形品と比較して、3分の1以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[チューブ状ケイ酸塩化合物]
チューブ状ケイ酸塩化合物として、外径25nm、内径10nm、アスペクト比が75のアルミニウムケイ酸塩水和物(イモゴライト)を用いた。アルミニウムケイ酸塩水和物の外径及び長さの測定は、透過型電子顕微鏡として、FEI社製TecnaiG2を用い、Media Cybernetics社の画像解析装置Image Pro Plusを用いて、前述の方法によりアルミニウムケイ酸塩水和物300個についての画像解析を行った。
このイモゴライト200gと、環状オルガノシロキサン化合物としてオクタメチルシクロテトラシロキサン200gとを、それぞれ別のガラス容器に秤量した。これらを容器ごと、減圧・密閉できるデシケーター中に設置した。次いで、真空ポンプにてデシケーター内圧を80mmHgまで減圧した後密閉した。その後、デシケーター容器ごと60℃環境下にて12時間放置し処理を行った。処理後、ガラス容器より表面処理の施されたイモゴライト(シリコーン処理イモゴライト)を取り出した。
得られたシリコーン処理イモゴライトを精秤して表面被覆量を算出したところ25質量%であり、透過型電子顕微鏡(FEI Company TecnaiG2)による観察でも均一に被覆されていることが確認された。
上述のイモゴライトを用いて下記方法により表面に触媒担持処理を施したイモゴライト(触媒担持イモゴライト)を得た。
500mlの三口フラスコに水60と硫酸ニッケル七水和物18gを溶解させた溶液中に、イモゴライト36gを添加し、70℃にて2時間マグネチックスターラーにて攪拌した。その後、90分かけて水60gに炭酸ナトリウム16gの溶解液を滴下し、さらに70℃3時間マグネチックスターラーにて攪拌した。その後、12時間静置し、ろ過し、水洗浄の後、100℃にて5時間乾燥した。乾燥後の質量は、48.2gであった。
上述の触媒担持イモゴライト200gと、環状オルガノシロキサン化合物としてオクタメチルシクロテトラシロキサン200gとを、それぞれ別のガラス容器に秤量した。これらを容器ごと、減圧・密閉できるデシケーター中に設置した。次いで、真空ポンプにてデシケーター内圧を80mmHgまで減圧した後密閉した。その後、デシケーター容器ごと60℃環境下にて12時間放置し処理を行った。処理後、ガラス容器より表面処理の施された触媒担持イモゴライト(シリコーン処理触媒担持イモゴライト)を取り出した。
得られたシリコーン処理触媒担持イモゴライトを精秤して表面被覆量を算出したところ25質量%であり、透過型電子顕微鏡(FEI Company TecnaiG2)による観察でも均一に被覆されていることが確認された。
<実施例1>
上述のイモゴライトと、ポリ乳酸(Biomax(登録商標) WB100F;dupont製)とを、表1に示すように所定量秤量・混合した後、2軸押出機を用いて混練してストランドをホットカットすることで、難燃性樹脂組成物のチップを得た。得られたチップを加熱プレス(120℃×10分間)にて成形することによって、2mm厚のシート状成形体(難燃性樹脂成形品)を得た。
(難燃性樹脂成形品の評価)
上記の如く作製したシート状成形体について、下記の評価を行った。
・難燃性試験(UL−94)
難燃性試験(UL−94)としては、JIS Z 2391(1999)に従い垂直燃焼試験を行った。その試料厚みは、2mmにて試験を実施した。難燃性試験合格品について、最も難燃効果の高いレベルをV0とし、次いでV1、V2、HBとした。一方、これらに達しないものを不合格とした。
・難燃性試験(コーンカロリメータ)
難燃性試験(コーンカロリメータ)としては、コーンカロリメータ((株)東洋精機製作所製、コーンカロリメータIIIC3)を用い、ISO5660に準拠して、輻射熱量を50kW/m2として、燃焼時間と発熱速度との関係を調べた。
・機械的強度試験
機械的強度試験としては、オートグラフ((株)東洋精機製作所製、V1−C)を用い、JIS K 7161(1994)に準拠して、常温にて引張速度を50mm/minとして、降伏応力、曲げ弾性率を測定した。
・外観
目視により、外観(色)について確認した。
評価結果を表1にまとめて示す。
<実施例2〜18、比較例1〜6>
表1〜3に記載の組成とした以外は実施例1と同様にして難燃性樹脂組成物を作成し、実施例と同様にして評価した。評価結果を表1〜3にまとめて示す。
表1乃至3から、チューブ状ケイ酸塩化合物(イモゴライト)を配合することで、樹脂成型品にUL−94がHB以上の難燃性を付与できることがわかる。さらに、チューブ状ケイ酸塩化合物(イモゴライト)に表面処理を施すことで、少量のチューブ状ケイ酸塩化合物(イモゴライト)を配合することにより十分な難燃性が得られ、且つ樹脂成型品の機械的特性を向上できることがわかる。
イモゴライトのTEM画像である。

Claims (2)

  1. マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有する難燃性樹脂組成物。
  2. マトリックス樹脂と、チューブ状ケイ酸塩化合物と、を含有し、UL−94試験による難燃性がHB以上である難燃性樹脂成形品。
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