以下、添付図面を参照して、本発明に係る可変容量回路および電圧測定装置の最良の形態について説明する。
最初に、本発明に係る電圧測定装置1について、図面を参照して説明する。
電圧測定装置1は、図1に示すように、プローブユニット2および本体ユニット3を備え、測定対象体4の電圧V1を非接触で測定可能に構成されている。
プローブユニット2は、図1に示すように、ケース11、検出電極12、可変容量回路13、電流検出器15、およびプリアンプ16を備えている。ケース11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて構成されている。検出電極12は、例えば、平板状に形成されると共に、その一方の面側がケース11の外表面に露出し、かつ他方の面側がケース11の内部に露出するようにして、ケース11に電気的に絶縁された状態で固定されている。
可変容量回路13は、図1に示すように、2つの第1電気的要素31a,31b、2つの第2電気的要素32a,32b、およびトランス33を少なくとも有している。この場合、第1電気的要素31aは、 一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ他端が一端に対して高電位のときに容量体として機能する第1素子41a,41b(以下、特に区別しないときには「第1素子41」ともいう)を有している。本例では、一例として、各第1素子41は、電気的特性の同じ1つの可変容量ダイオードでそれぞれ構成されている。第1電気的要素31aは、各第1素子41を、各々の一端同士または他端同士(図1では一例として一端(アノード端子)同士)を接続することによって直列接続して(つまり互いに逆向きに直列接続して)構成されている。また、第1電気的要素31aは、各第1素子41が逆向きに直列接続されることにより、直流信号(具体的には直流電流)の通過を阻止し、かつ交流信号のみが通過し得るように構成されている。第2電気的要素31bも、第1素子41a,41bを有して、第1電気的要素31aと同一に構成されている。
各第2電気的要素32a,32bは、一例として、図2に示すように1つのコンデンサ42で構成されている。トランス33は、図1に示すように、一例として、1つのコア33aと、このコア33aに巻回された1つの一次巻線33bおよび2つの二次巻線33c,33dとを備えて構成されている。本例では、二次巻線33c,33dは、一次巻線33bに対する巻数比が互いに等しくなるように同じ巻数でそれぞれ巻回されて、本発明における交流電圧発生部として機能する。また、二次巻線33c,33dは、各々の一端側が共通の引き出し線33eに接続されて引き出され、各々の他端側は独立して引き出されている。なお、二次巻線33c,33dは、各々の一端側および他端側をそれぞれ独立した状態で引き出してもよい。この構成により、トランス33は、一次巻線33bに本体ユニット3からの駆動信号S1を入力したときに、同一振幅の駆動信号S2a,S2b(本発明における交流電圧。以下、特に区別しないときには「駆動信号S2」ともいう)を各二次巻線33c,33dに駆動信号S1と電気的に絶縁された状態で発生させる。なお、トランス33を駆動するための駆動回路(図示せず)を設け、この駆動回路が、本体ユニット3からの駆動信号S1を入力して、トランス33の一次巻線33bを励磁する構成を採用してもよい。また、本例では、2つの二次巻線33c,33dが形成された1つのトランス33を使用しているが、一次巻線に対する二次巻線の巻数比が互いに等しい2つのトランスを使用し、各トランスの一次巻線に駆動信号S1を入力する構成を採用することもできる。
また、図1に示すように、第1電気的要素31a,31bのうちの一方の第1電気的要素31a、各第2電気的要素32a,32bのうちの一方の第2電気的要素32a、および各二次巻線33c,33dのうちの一方の二次巻線33cがこの順で環状に接続され(1つの環状経路LP1内に配設され)、また、他方の第1電気的要素31b、他方の第2電気的要素32b、および他方の二次巻線33dもこの順で環状に接続され(他の1つの環状経路LP2内に配設され)ている。また、第1電気的要素31a,31bは、それぞれの一端側が引き出し線33eに接続されている。これにより、第1電気的要素31a,31bは、互いに直列接続された状態になっている。また、各二次巻線33c,33dは、第1電気的要素31aに印加される駆動信号S2aと、第1電気的要素31bに印加される駆動信号S2bとが逆極性(位相が反転した状態)となるようにそれぞれの環状経路LP1,LP2内に配設されている。
なお、図1に示す各第1電気的要素31a,31bでは、各第1素子41としての可変容量ダイオードのアノード端子同士を接続することによって一対の第1素子41を逆向きに直列接続する構成を採用しているが、図3に示すように、カソード端子同士を接続して一対の第1素子41を逆向きに直列接続することによっても各第1電気的要素31a,31bを構成することができる。また、可変容量ダイオードは、電圧を逆方向に印加したときにダイオードのPN接合における空乏層の厚みが変化することによる静電容量(接合容量)の変化を利用したものであり、この静電容量の変化を大きくしたものをいう。他方、PN接合で構成される一般的なダイオード(シリコンダイオード)においても、可変容量ダイオードと比べて少ないものの、上記した静電容量(接合容量)の変化は発生する。このため、図4,5に示すように、各第1素子41を一般的なダイオードで構成して、第1電気的要素31a,31bを構成することもできる。
また、可変容量回路13は、参照電位となる部位(本例ではケース11)と検出電極12との間に、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体における一端部A(第1電気的要素31aの他端側)が可変容量回路13の一方の接続点(以下、接続点Aともいう)として検出電極12に接続され、かつ2つの第1電気的要素31a,31b全体における他端部B(第1電気的要素31bの他端側)が可変容量回路13の他方の接続点(以下、接続点Bともいう)として電流検出器15に接続された状態で配設されている。また、第2電気的要素32aおよび二次巻線33cの直列回路と、二次巻線33dおよび第2電気的要素32bの直列回路とは、前者が第1電気的要素31aに並列に接続され、かつ後者が第1電気的要素31bに並列に接続された状態で、参照電位となる部位(本例ではケース11)と検出電極12との間に配設されている。また、この構成により、各直列回路も、互いに直列に接続された状態ともなっている。なお、各第2電気的要素32a,32bは、検出電極12とケース11とが直流的に短絡するのを防止する機能を有しているため、図1に示すように、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体における一端部Aと二次巻線33cとの間、および他端部Bと二次巻線33dとの間にそれぞれ配置されている。
また、可変容量回路13では、トランス33が第1電気的要素31aに駆動信号S2aを印加したときに、後述するように、第1電気的要素31aは、この駆動信号S2aの周期T1(周波数f1)に同期して、かつ駆動信号S2aの二分の一の周期T2(2倍の周波数f2)で、その静電容量を連続的に変化させるように動作する。また、トランス33が第1電気的要素31bに駆動信号S2bを印加したときに、後述するように、第1電気的要素31bは、この駆動信号S2bの周期T1(周波数f1)に同期して、かつ駆動信号S2bの二分の一の周期T2(2倍の周波数f2)で、その静電容量を連続的に変化させるように動作する。このため、各第1電気的要素31a,31bの合成容量(直列合成容量)も、駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T2で連続的に変化する。したがって、各第2電気的要素32a,32bの静電容量も含めた可変容量回路13全体の静電容量C1(各接続点A,B間の静電容量)も、駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T2で連続的に変化する。
電流検出器15は、一例として抵抗で構成されて、可変容量回路13とケース11との間に接続されている。これにより、電流検出器15は、可変容量回路13と直列に接続された状態で検出電極12とケース11との間に配設されて、可変容量回路13に流れている電流i(物理量)を検出すると共に、この電流iの電流値に比例した値で、かつ電流iの向きに対応した極性の電圧V2をその両端間に発生させる。また、電流検出器15は、インピーダンス素子であれば、抵抗に限らず、コンデンサやコイルで構成することもできるし、これらを組み合わせて構成することもできる。また、インピーダンス素子に代えて、セラミック共振器や水晶振動子などの各種共振体を含む共振回路、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路または並列共振回路)のいずれかを用いて、電流検出器15を構成することもできる。
プリアンプ16は、不図示の直流遮断用の一対のコンデンサ、不図示の増幅回路(演算増幅器など)、および不図示の絶縁用電子部品(トランスおよびフォトカプラなど)を備えて構成されている。また、プリアンプ16は、コンデンサを介して入力した電圧V2を増幅回路で増幅すると共に、増幅した電圧を絶縁用電子部品によって増幅回路(さらにはケース11)に対して電気的に絶縁された検出信号S3に変換して出力する。この場合、電圧V2は電流iの値に比例して変化するため、この電圧V2を増幅して生成された検出信号S3も電流iの値に比例して変化する。また、上記した可変容量回路13、電流検出器15およびプリアンプ16は、ケース11内部にそれぞれ配設されている。
なお、本例では、プリアンプ16において、トランス等の絶縁用電子部品を使用して、ケース11に対して電気的に絶縁された状態で、検出信号S3を本体ユニット3に出力しているが、例えば、電流検出器15自体を、一巻線と二次巻線とを備えた検出トランスで構成して、検出信号S3をケース11に対して絶縁する構成を採用することもできる。
本体ユニット3は、図1に示すように、発振回路21、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24、電圧生成回路25、電圧計26およびフィルタ回路27を備えて構成されている。発振回路21は、一定の周期T1(周波数f1)の駆動信号S1を生成してプローブユニット2に出力すると共に、周期T1の二分の一の周期T2の検波用信号S11(周波数f2)を駆動信号S1に同期させて生成して同期検波回路23に出力する。この場合、本例では、発振回路21は、駆動信号S1および検波用信号S11として正弦波信号を生成する。
フィルタ回路27は、プローブユニット2から入力した検出信号S3に含まれている可変容量回路13の容量変調周波数と同じ周波数の信号S3aを選択的に通過させる。増幅回路22は、フィルタ回路27から入力した信号S3aを予め設定された電圧レベルまで増幅して、検出信号S4として出力する。本例では、可変容量回路13の容量変調周波数は、駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数f2になる。このため、この静電容量C1の変化によって生じる電流iの周波数も駆動信号S1の周波数f1の2倍の周波数f2となり、増幅回路22から出力される検出信号S4の周波数はフィルタ回路27のフィルタリングによって周波数f2となる。同期検波回路23は、検出信号S4を検波用信号S11で同期検波することにより、パルス信号S5を生成するように構成されている。この場合、パルス信号S5は、その振幅が可変容量回路13を流れる電流iの値に比例して変化し、かつその極性が可変容量回路13を流れる電流iの向きに応じて変化する。
積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。本例では、一例として、積分器24は、積分動作を開始した後に、最初のパルス信号S5が入力されるまでの間、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するように設定されている。これらのフィルタ回路27、増幅回路22、同期検波回路23および積分器24は、制御部CNTを構成して、電圧生成回路25を制御する。電圧生成回路25は、制御部CNTの制御下で、フィードバック電圧V4を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。具体的には、電圧生成回路25は、入力した直流電圧V3を増幅することにより、フィードバック電圧V4を生成する。これにより、参照電位であるケース11の電圧は、フィードバック電圧V4と等しく維持される。電圧計26は、フィードバック電圧V4を測定して、その電圧値を表示する。
次いで、電圧測定装置1を使用した測定対象体4の電圧V1の測定方法と共に、電圧測定装置1の測定動作について説明する。なお、発明の理解を容易にするため、一例として、電圧V1が正の定電圧であるとして説明するが、電圧V1が負の定電圧であるときにも、対応する信号や電圧の極性が逆になる以外は、正の定電圧のときと同様にして測定される。また、電圧V1が交流のときにも、原理的には正の定電圧や負の定電圧のときと同様にして測定される。
まず、電圧V1の測定に際して、検出電極12が非接触な状態で測定対象体4に対向するように、プローブユニット2を測定対象体4の近傍に配設する。これにより、図1に示すように、検出電極12と測定対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と測定対象体4の距離に反比例して変化するが、プローブユニット2を一旦配設した後は、一定の(変動しない)値となる。
次いで、電圧測定装置1の起動状態において、本体ユニット3では、発振回路21が駆動信号S1および検波用信号S11の生成を開始して、駆動信号S1をプローブユニット2に、また検波用信号S11を同期検波回路23に出力する。プローブユニット2では、可変容量回路13のトランス33が、入力した駆動信号S1に基づいて各二次巻線33c,33dに駆動信号S2a,S2bをそれぞれ発生させて、各第2電気的要素32a,32bを介して各第1電気的要素31a,31bに印加(出力)する。
可変容量回路13の各第1電気的要素31a,31bでは、印加された各駆動信号S2が分圧されて、各第1素子41にそれぞれ印加される。この場合における各第1電気的要素31a,31bの静電容量の変化の様子について、第1電気的要素31aを例に挙げて説明する。図6に示すように、駆動信号S2(具体的には駆動信号S2a)の1周期T1のうちの期間Ta(第1電気的要素31aの他端側(一端部A)を基準として一端側(第1電気的要素31bとの接続端側)の電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、2つの第1素子41a,41bのうちの逆電圧が印加されて(逆バイアスされて)コンデンサとして機能する他端側の第1素子41bの静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tb(第1電気的要素31aの他端側を基準として一端側の電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆電圧が印加されてコンデンサとして機能する第1素子41bの静電容量が徐々に増加する。
また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tc(第1電気的要素31aの他端側を基準として一端側の電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、2つの第1素子41a,41bのうちの逆電圧が印加されてコンデンサとして機能する一端部A側の第1素子41aの静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Td(第1電気的要素31aの他端側を基準として一端側の電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆電圧が印加されてコンデンサとして機能する第1素子41aの静電容量が徐々に増加する。なお、各第1素子41のうちの順電圧が印加されている(順バイアスされている)第1素子41は等価的に抵抗として機能している。このため、第1電気的要素31aの静電容量は、駆動信号S2の1周期T1内において、減少および増加を2回繰り返す。
また、他の第1電気的要素31bにも、第1電気的要素31aに印加される駆動信号S2aと位相が反転している駆動信号S2bが印加される。このため、第1電気的要素31bの静電容量も、上記した第1電気的要素31aの静電容量と同じタイミングで、減少および増加を2回繰り返す。
したがって、各第1電気的要素31a,31bの静電容量と各第2電気的要素32a,32bの静電容量(一定)との合成容量となる可変容量回路13全体としての静電容量C1も減少および増加を、上記した各第1電気的要素31a,31bの静電容量と同じタイミングで、2回繰り返す。つまり、可変容量回路13は、入力した駆動信号S1の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2)でその静電容量C1を連続的(本例では周期的)に変化させる動作を実行する。
この場合、上記したように、可変容量回路13は、電流検出器15を介在させた状態でケース11と検出電極12との間に直列に接続されているため、その静電容量C1と、測定対象体4および検出電極12の間に形成される静電容量C0とは、測定対象体4とケース11との間に直列に接続された状態になっている。このため、静電容量C1が周波数f2(容量変調周波数)で周期的に変化することにより、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2(各静電容量C0,C1の直列合成容量)も、図6に示すように、駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2)で変化する。
また、上記のように、直列に接続された各第1電気的要素31a,31bに、トランス33の各二次巻線33c,33dから、同一振幅で、かつ位相の反転した駆動信号S2a,S2bが印加されるため、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体としてみたときに、駆動信号S2a,S2bの電圧成分が打ち消される結果、2つの第1電気的要素31a,31b全体としての一端部Aと他端部Bとの間における駆動信号S2a,S2bの発生が阻止される。
また、本体ユニット3の積分器24は、電圧測定装置1の動作開始直後において、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するため、電圧生成回路25は、所定電圧のフィードバック電圧V4(一例として、電圧V1よりも低電圧であって、ほぼゼロボルトとする)を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。このため、測定対象体4とケース11との間には電位差(V1−V4)が生じた状態になっている。したがって、上記したように、静電容量C1の周期T2での周期的な変化に基づいて測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期T2で周期的に変化することにより、可変容量回路13には、電流値を周期T2で変化させつつ電流iが流れる。
この場合、電流iは、電位差(V1−V4)が大きいときにはその電流値が大きくなり、電位差(V1−V4)が小さいときにはその電流値が小さくなる。また、電流iは、電位差(V1−V4)の極性が正のときには検出電極12から電流検出器15に向かって流れ、電位差(V1−V4)の極性が負のときには逆向きに流れる。本例では、電圧V1は正の定電圧であり、フィードバック電圧V4がゼロボルトからスタートするため、電位差(V1−V4)は常にゼロボルト以上の電圧となる。したがって、電流iは、本例では、常に検出電極12から電流検出器15に向かって、その電流値を周期T2で変化させつつ流れる。プリアンプ16は、この電流iに起因して電流検出器15の両端に発生する電圧V2を増幅することにより、正極性の検出信号S3を本体ユニット3に出力する。
本体ユニット3の制御部CNTでは、フィルタ回路27が、検出信号S3に含まれている周波数f2の信号成分を信号S3aとして選択的に出力し、増幅回路22は、この信号S3aを増幅して検出信号S4を生成して同期検波回路23に出力する。次いで、同期検波回路23は、入力した検出信号S4を検波用信号S11で同期検波することにより、パルス信号S5を生成して、積分器24に出力する。続いて、積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。
この場合、上記したように、本例では、検出信号S3が常に正極性の信号となり、同様にして検出信号S4も正極性の信号となるため、パルス信号S5は、常に正極性のパルス信号となる。この結果、積分器24、つまり制御部CNTから出力される直流電圧V3は徐々にその電圧値が上昇する。したがって、電圧生成回路25で生成されるフィードバック電圧V4も、図7に示すように、その電圧値が徐々に上昇する。この結果、電流検出器15、プリアンプ16、フィルタ回路27、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24および電圧生成回路25で構成されるフィードバックループ内で、測定対象体4とケース11との間の電位差(V1−V4)が徐々に低下(減少)するように負のフィードバックが行われる。したがって、電流iは、電流値が徐々に低下(減少)していく。
その後、フィードバック電圧V4が電圧V1に達したときには、電位差(V1−V4)がゼロボルトになる。この状態では、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期的に変化していたとしても、電流iが流れない。また、電流iが流れないため、電流検出器15において電圧V2が発生しない(電圧V2がゼロボルトになる)結果、プリアンプ16から検出信号S3が出力されなくなる。また、検出信号S3が出力されないため、増幅回路22からも検出信号S4が出力されない状態となり、同期検波回路23からのパルス信号S5の出力も停止し、この結果、積分器24から出力される直流電圧V3の上昇も停止して一定の電圧に維持される。
このため、電圧生成回路25から出力されるフィードバック電圧V4の上昇が停止して、図7に示すように、フィードバック電圧V4が一定の電圧に維持される。したがって、電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を継続して観察し、その電圧値の上昇が停止して一定になったとき(すなわち、電流iがゼロアンペアになったときに)、そのときの電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を測定対象体4の電圧V1として測定する。以上により、測定対象体4の電圧V1が完了する。
このように、この可変容量回路13では、互いに逆向きに直列接続された2つの第1素子41を備えて各第1電気的要素31a,31bが構成されている。このため、この可変容量回路13によれば、トランス33の各二次巻線33c,33dからの駆動信号S2a,S2bの印加によって各第1電気的要素31a,31bの静電容量を駆動信号S2a,S2bの周波数f1の2倍の周波数f2で変化させることができる。つまり、印加される駆動信号S2a,S2bとは異なる周波数で容量変調が可能となる。しかも、この可変容量回路13では、互いに直列に接続された2つの第1電気的要素31a,31bにトランス33の二次巻線33c,33dから、互いの位相が反転し、かつ同一振幅の駆動信号S2a,S2bが印加されるため、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体としては、各駆動信号S2a,S2bの電圧成分同士が打ち消される。このため、この可変容量回路13によれば、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体において、その両端間(一端部Aと他端部Bとの間)における駆動信号S2a,S2bの電圧成分の発生を回避(阻止)することができるため、静電容量変化時において可変容量回路13に発生する電流iへの駆動信号S2a,S2bの影響を排除することができる結果、可変容量回路13に発生する電流iを正確に検出することができる。したがって、この可変容量回路13を備えた電圧測定装置1によれば、測定対象体4の電圧V1を正確に測定することができる。
また、可変容量回路13では、第1素子41a,41bとして可変容量ダイオード(または一般的なダイオード)を使用して各第1電気的要素31a,31bを構成したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。また、さらに、各第2電気的要素32a,32bをコンデンサ42で構成したことにより、より簡易、かつより安価に可変容量回路13を構成することができる。したがって、この可変容量回路13を使用した電圧測定装置1によれば、装置コストを十分に低減することができる。
また、電圧測定装置1では、可変容量回路13が静電容量C1を周期的に変化させているときに、制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4の電圧を変化させている。したがって、この電圧測定装置1によれば、可変容量回路13の周期的な容量変化時において可変容量回路13に発生する(流れる)電流iを検出しつつ、この電流iがゼロアンペアとなったときのこのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定することで、測定対象体4の電圧V1を高い精度で測定することができる。さらに、この電圧測定装置1によれば、制御部CNTが、検出した電流iが減少するように電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4の電圧を変化させることにより、フィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1に短時間で、しかも確実に一致させることができる。この結果、高い測定精度を維持しつつ、短時間で、しかも確実に測定対象体4の電圧V1を測定することができる。
特に、この電圧測定装置1によれば、上述したような高い周波数で測定対象体4とケース11との間の静電容量C2を変化させることができるため、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を高速化できる結果、一層短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。このため、この電圧測定装置1によれば、測定対象体4の電圧V1が時間的に変動するときや、測定対象体4の電圧V1が周期的に変化する交流電圧のときにも、その電圧V1を正確に測定することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記した電圧測定装置1では、I(比例)制御でフィードバック電圧V4を制御しているが、PI(比例・積分)制御、PD(比例・微分)制御およびPID(比例・積分・微分)制御のいずれかでフィードバック電圧V4を制御することもできる。
また、第2電気的要素32a,32bをコンデンサ42で構成した例について上記したが、図1、図3〜図5に示す第1電気的要素31a(31b)で構成することもできる。このように、ダイオードからなる第1電気的要素31a(31b)で第2電気的要素32a,32bを構成することにより、コンデンサ42を用いたときと同様にして、簡易、かつ安価に可変容量回路13を構成することができる。また、この可変容量回路13においても、第1電気的要素31a,31bおよび第2電気的要素32a,32bが、駆動信号S1に同期して各駆動信号S2a,S2bの2倍の周波数f2でそれぞれの静電容量を変化させるため、可変容量回路13の容量変調周波数を周波数f2に高めることができる。
また、図4に示す第1電気的要素31a,31bでは、各第1素子41は、一般的なダイオードで構成され、かつこれらのダイオードの各アノード端子同士が接続されることにより、互いに逆向きに直列接続されている。すなわち、2つの第1素子41全体としては、P型半導体とN型半導体とが、N−P−P−Nというように配列されて構成されている。このため、図4に示す第1電気的要素31a,31bにおいて各第1素子41を構成する2つのダイオードを、図8に示すように1つのNPN型バイポーラトランジスタTR1で置き換えて第1電気的要素31a、31bを構成することもできる。
この場合、トランジスタTR1は、その入力端子(コレクタ端子cおよびエミッタ端子eの一方)および出力端子(コレクタ端子cおよびエミッタ端子eの他方)がそれぞれ接続されて(それぞれ接続点となって)、各環状経路LP1,LP2内に配設される。なお、トランジスタTR1のベース端子bは未接続となる(接続点とはならない)。同様にして、図5に示す第1電気的要素31a,31bでは、2つの第1素子41全体として、P型半導体とN型半導体とが、P−N−N−Pというように配列されている。このため、図5に示す第1電気的要素31a,31bにおいて各第1素子41を構成する2つのダイオードを、図9に示すように1つのPNP型バイポーラトランジスタTR2で置き換えて第1電気的要素31a,31bを構成することもできる。この場合も、トランジスタTR1と同様にして、トランジスタTR2は、その入力端子(コレクタ端子cおよびエミッタ端子eの一方)および出力端子(コレクタ端子cおよびエミッタ端子eの他方)がそれぞれ接続されて(それぞれ接続点となって)、各環状経路LP1,LP2内に配設される。なお、トランジスタTR2のベース端子bは未接続となる(接続点とはならない)。
また、トランジスタとして、バイポーラトランジスタを使用する例について説明したが、NPN型バイポーラトランジスタに代えて同型のMOSFET(電界効果型トランジスタ)を使用してもよいし、またはPNP型バイポーラトランジスタに代えて同型のMOSFET(電界効果型トランジスタ)を使用してもよいのは勿論である。この場合、MOSFETについては、その入力端子はドレイン端子およびソース端子の一方となり、出力端子はドレイン端子およびソース端子の他方となる。このようにトランジスタTR1(TR2)を用いて各第1電気的要素31a、31bを構成することにより、より少ない部品点数で、簡易、かつ安価に可変容量回路13を構成することができる。
また、図10に示す電圧測定装置1Aのように、電流検出器15を配設せずに、可変容量回路13の両端間電圧V5をプリアンプ16で検出して検出信号S3として出力するプローブユニット2Aを使用し、両端間電圧V5に比例して変化する検出信号S3に基づいて制御部CNTが電圧生成回路25を制御して、測定対象体4の電圧V1を測定する構成を採用することもできる。ここで、可変容量回路13の両端間電圧V5とは、可変容量回路13における検出電極12側の端部(同図では、2つの第1電気的要素31a,31b全体における一端部A)と可変容量回路13におけるケース11側の端部(同図では、2つの第1電気的要素31a,31b全体における他端部B)との間に発生する電圧をいう。この場合、プリアンプ16における一対の入力端子のうちの一方の入力端子は、図10に示すように、コンデンサ17を介して可変容量回路13における検出電極12側の端部に接続され、他方の入力端子は、可変容量回路13におけるケース11側の端部に接続されている。なお、この構成以外の構成については、電圧測定装置1Aは電圧測定装置1と同一のため、図10では、電圧測定装置1の各構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
この電圧測定装置1Aにおいても、上記の可変容量回路13を使用したことにより、電圧測定装置1と同様にして、直列接続された2つの第1電気的要素31a,31b全体において、その両端間(一端部Aと他端部Bとの間)における駆動信号S2a,S2bの電圧成分の発生を回避(阻止)することができるため、静電容量変化時において可変容量回路13の両端間電圧への駆動信号S2a,S2bの影響を排除することができる結果、可変容量回路13の両端間電圧V5を正確に検出することができる。したがって、この電圧測定装置1Aにおいても、電圧測定装置1と同様にして、測定対象体4の電圧V1を正確に測定することができる。また、電圧測定装置1Aにおいても、電圧測定装置1と同様にして、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を高速化できる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができると共に、測定対象体4の電圧V1が時間的に変動するときや、測定対象体4の電圧V1が周期的に変化する交流電圧のときにも、その電圧V1を正確に測定することができる。また、電圧測定装置1Aによれば、信頼性の高い可変容量回路13を使用したことにより、装置自体の信頼性を一層向上させることができる。
また、電圧測定装置1,1Aの可変容量回路13では、トランス33の各二次巻線33c,33dを交流電圧発生部として用いているが、これに限定されるものではなく、トランス33に代えて圧電トランスを交流電圧発生部として用いることできる。また、電圧測定装置1,1Aの可変容量回路13では、トランス33を用いることにより、駆動信号S1に対して電気的に絶縁された各駆動信号S2を交流電圧発生部としての各二次巻線33c,33dで発生させているが、フォトカプラを含む交流電圧発生部(図示せず)を採用したとしても、駆動信号S1に対して電気的に絶縁された各駆動信号S2を発生させることができる。この構成においては、プローブユニット2内に、各種電池(太陽電池、一次電池または二次電池など)のような本体ユニット3から独立して絶縁された電源を配設して、この電源からの電力でフォトカプラの二次側回路(各駆動信号S2の生成回路側)を作動させることができる。また、電圧測定装置1,1Aでは、同期検波回路23を用いて検出信号S4に含まれている周波数f2を含む所定の帯域の周波数成分を抽出する構成を採用しているが、これに限定されるものではなく、図示はしないが、同期検波方式に代えて、公知の包絡線検波方式を採用することもできる。また、図示はしないが、電圧測定装置1,1Aと共に、検出電極12Aと可変容量回路13との間に電流検出器15を配設することもできる。
また、電圧測定装置1,1Aでは、可変容量回路13が静電容量C1を変化させているときに、制御部CNTが電圧生成回路25に対して参照電位となる部位(本例ではケース11)の電圧(フィードバック電圧V4)を変化させるフィードバック制御方式を採用し、フィードバック電圧V4が測定対象体4の電圧V1に一致したときに、可変容量回路13に流れる電流i、または可変容量回路13の両端間電圧V5がほぼゼロになることを利用して、測定対象体4の電圧V1を測定したが、測定対象体4の電圧V1の存在範囲が予め判明している場合には、フィードバック制御方式に代えて、オープン制御方式を採用して本体ユニットを構成することもできる。具体的には、可変容量回路13が静電容量C1を変化させているときに、制御部が電圧生成回路に対してその出力電圧を、この電圧V1の存在範囲の下限値から上限値まで(または上限値から下限値まで)変化(スキャン)させつつ、可変容量回路13に流れる電流i、または可変容量回路13の両端間電圧V5がほぼゼロになったときの電圧生成回路の出力電圧を検出し、この出力電圧を測定対象体4の電圧V1として特定するように本体ユニットを構成することもできる。
また、可変容量回路13を測定対象体4の電圧測定に適用した例について上記したが、測定対象体4と参照電位となる部位(本例ではケース11)との間に電位差が生じているときには、可変容量回路13が静電容量C1を変化させているときに、可変容量回路13に必ず電流iが流れ、また可変容量回路13の両端間電圧V5がゼロになっていないことを利用することにより、可変容量回路13を検電器に適用することもできる。また、測定対象体4に流れる電流を測定する電流測定装置の構成と、電圧測定装置1,1Aのいずれかの構成とを組み合わせることにより、可変容量回路13を使用して電力計を構成することもできる。
また、上記した可変容量回路13の第1電気的要素31a,31bについては、図1、図3〜図5に示すように、互いに逆向きに直列接続された2つのダイオードだけで構成した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図1に示す第1電気的要素31aを例に挙げて説明すると、第1電気的要素31aの他端側(2つの第1電気的要素31a,31b全体における一端部A)と第1素子41aとの間、各第1素子41a,41b間、および第1電気的要素31aの一端側(第1電気的要素31bとの接続端側)と第1素子41bとの間の少なくとも1つに、抵抗、コンデンサおよびインダクタンスの少なくとも1つを配設することもできるし、また他のダイオードを配設することもできる。また、第1素子41a,41bの各々、および第1素子41a,41b全体の少なくとも1つに対してコンデンサを並列に接続することもできる。また、可変容量ダイオードも一般的な(通常の)ダイオードも基本的な構成が同じであるため、例えば第1電気的要素31aにおいて、一方の第1素子41aを通常のダイオードを使用して構成するなど、可変容量ダイオードと一般的なダイオードとを混在して使用することもできる。
また、コンデンサ、およびダイオード(具体的には第1電気的要素31a(31b))で第2電気的要素32a,32bを構成した可変容量回路13について上記したが、例えば、セラミック共振器、水晶振動子、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路)などの各種共振体を用いて構成してもよい。このように共振体、具体的には駆動信号S1と同一の周波数f1のときにインピーダンスが最小となり、かつそれ以外の周波数のときに十分に高いインピーダンスとなる共振体を用いたときには、第1電気的要素31a,31bを変調する周波数f1では共振体のインピーダンスが低くなる結果、駆動信号S2a,S2bを第1電気的要素31a,31bに十分に印加することができ、他方、直流電圧や駆動信号S1の周波数f1の2倍の周波数f2では、各第1電気的要素31a,31bに並列に接続されている共振体のインピーダンスが十分に高くなる結果、第1電気的要素31a,31bに十分な電流を流すことができるため、例えば電流検出器15を用いた電流iの検出精度を高めることができ、ひいては測定対象体4の電圧検出を一層高めることができる。
また、第1電気的要素31a,31bおよび第2電気的要素32a,32bを1個ずつ含んで各環状経路LP1,LP2を構成した可変容量回路13について上記したが、第1電気的要素31a,31bおよび第2電気的要素32a,32bの少なくとも一方を2個以上含んで構成することもできる。