JP2007198446A - 動力伝達装置およびそれを備える車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型車両に搭載するために十分な小型化、コンパクト化および軽量化が実現された動力伝達装置およびそれを備える車両を提供する。
【解決手段】動力伝達装置300において、動力伝達経路の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。エンジンのクランクシャフト71と並列に、アイドル機構30のアイドル軸31、動力入力軸41およびドライブシャフト26が配置される。動力入力軸41に無段変速機500が設けられる。動力入力軸41とドライブシャフト26との間では、固定変速系ドライブギア43、アイドルギア62および固定変速系ドリブンギア61からなる減速機構が設けられる。エンジンの動力は、アイドル軸31、動力入力軸41、ドライブシャフト26および無段変速機500を含む可変変速経路、またはアイドル軸31、動力入力軸41、ドライブシャフト26および減速機構を含む固定変速経路を通じて後輪を含む駆動機構に伝達される。
【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンの動力を伝達する動力伝達装置およびそれを備える車両に関する。
従来より、自動車等の車両に用いられる無段変速機( Continuously Variable Transmission )として、ハーフトロイダル無段変速機が注目されている。以下、無段変速機をCVTと略記する。動力伝達装置にハーフトロイダルCVTを用いることにより、ベルトを用いて減速比の変更を行う無段変速機に比べて動力伝達装置における動力伝達の信頼性が高くなる。また、動力伝達装置は、大きなトルク(回転力)を伝達することが可能となる。
このようなハーフトロイダルCVTを自動二輪車および四輪バギー等の小型車両に用いることが提案されている。
ハーフトロイダルCVTには、ダブルキャビティ型のハーフトロイダルCVTと、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTとがある。同じ容量のトルクを伝達する場合、ダブルキャビティ型のハーフトロイダルCVTは、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTに比べてトルクの伝達方向に沿う大きさが大きくなる。このため、ダブルキャビティ型のハーフトロイダルCVTを小型車両に用いることは困難である。したがって、小型車両には、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTを用いることが好ましい。
シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTは、例えば、エンジン等の駆動源からの動力を受ける入力軸と、入力軸の軸心に沿って設けられる出力軸と、入力軸および出力軸にそれぞれ設けられる入力ディスクおよび出力ディスクと、入力ディスクおよび出力ディスクの間でそれぞれに接触するように配置された一対のパワーローラとを備える。
駆動源から発生される動力により入力軸が回転する。これにより、入力ディスクが回転し、一対のパワーローラも回転する。それにより、入力ディスクのトルクが出力ディスクに伝達され、出力軸から出力される。
駆動源から出力軸への動力の伝達時に、一対のパワーローラを傾斜させることにより、その傾斜方向およびその傾斜の度合いに応じて減速比が変更される。このような、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTの一構成例が特許文献1に記載されている。
上記のような構成を有するCVTと、予め複数の減速比が設定されている歯車式変速機とを比較する。
以下の説明において、動力伝達効率とは、歯車式変速機またはCVTに入力される動力(入力動力)をそれらの変速機から出力される動力(出力動力)で除して得られる値をいう。また、エネルギー効率とは、エンジンに供給される熱量と、その熱量に基づいて実際に駆動機構を駆動する動力との比率をいう。このエネルギー効率は、エンジンの正味熱効率に動力伝達効率を乗じて得られる。
歯車式変速機の特定の減速比における動力伝達効率は、同一の減速比に調整されたCVTの動力伝達効率に比べて高い。
また、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTの動力伝達効率は、ダブルキャビティ型のハーフトロイダルCVTの動力伝達効率よりも低くなることが知られている。動力伝達効率が低いと、燃費が悪化する。したがって、動力伝達効率のみを考慮すると、歯車式変速機を用いることが望ましい。
しかしながら、上記のように、エネルギー効率は、動力伝達効率とエンジンの正味熱効率との積により決定される。歯車式変速機では、減速比を任意の値に調整することができない。そのため、エンジンの正味熱効率が最も高くなるように、減速比を調整することはできない。一方、CVTでは、エンジンの正味熱効率が最も高くなるように、減速比を調整することができる。
上記より、速度がほぼ一定に保たれる高速道路等での走行時においては、歯車式変速機を用いたときのエネルギー効率が、CVTを用いたときのエネルギー効率よりも高くなる。その結果、歯車式変速機を備える車両の燃費は、CVTを備える車両の燃費に比べて良好となる。
これに対して、加速および減速が頻繁に繰り返される市街地での走行時においては、CVTを用いたときのエネルギー効率が、歯車式変速機を用いたときのエネルギー効率よりも高くなる。その結果、CVTを備える車両の燃費が、歯車式変速機を備える車両の燃費に比べて良好となる。
特開平5−180292号公報 特開平11−257457号公報
ところで、四輪自動車用の変速機として、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTと遊星歯車機構(歯車式変速機)とを備えるトロイダル型無段変速装置が特許文献2に開示されている。
上記のように、CVTと歯車式変速機とを組み合わせることによりエネルギー効率を高く維持することができると考えられる。
しかしながら、特許文献2のトロイダル型無段変速装置の構成を小型車両に用いることは以下の点で非常に困難である。
特許文献2のトロイダル型無段変速装置では、バリエータと遊星歯車機構と出力軸とが並列に配置されている。
この場合、各構成部材の占有スペースが比較的大きいため、これらの構成部材間で動力を伝達するためのギアの直径を大きくする必要がある。ギアを大きくすると、トロイダル型無段変速装置が大型化するとともに、その重量も増加する。
また、バリエータの入力軸と同軸にエンジンの出力軸が配置されている。すなわち、クランク軸とトロイダル型無段変速装置とが一直線に配置される。
しかしながら、各構成部材の占有スペースが制限される小型車両では、エンジンおよびトロイダル型無段変速装置のレイアウトが制限される。したがって、上記のトロイダル型無段変速装置を小型車両に搭載することは、非常に困難である。
本発明の目的は、小型車両に搭載するために十分な小型化、コンパクト化および軽量化が実現された動力伝達装置およびそれを備える車両を提供することである。
(1)第1の発明に係る動力伝達装置は、クランクシャフトを備えるエンジンの動力を駆動機構に伝達する動力伝達装置であって、エンジンの動力を受ける中継機構と、中継機構から駆動機構へ動力を伝達する第1の動力伝達機構と、中継機構から駆動機構へ動力を伝達する第2の動力伝達機構と、エンジンの動力の伝達経路を、第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える切替装置とを備え、第1の動力伝達機構は、クランクシャフトと並列に配置され、中継機構からの動力を受ける第1の動力伝達軸と、第1の動力伝達軸に設けられ、第1の動力伝達軸が受けた動力を可変の変速比で駆動機構に伝達する無段変速機とを含み、第2の動力伝達機構は、クランクシャフトと並列に配置され、中継機構からの動力を受ける第2の動力伝達軸と、第2の動力伝達軸に設けられ、第2の動力伝達軸が受けた動力を一定の変速比で駆動機構に伝達する固定変速機とを含むものである。
この発明に係る動力伝達装置において、エンジンの動力は中継機構に与えられる。中継機構に与えられた動力は、第1または第2の動力伝達機構により駆動機構に伝達される。
ここで、切替装置はエンジンの動力の伝達経路を第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える。
第1の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第1の動力伝達軸に与えられ、第1の動力伝達軸に与えられた動力が無段変速機により可変の変速比で駆動機構に伝達される。
第2の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第2の動力伝達軸に与えられ、第2の動力伝達軸に与えられた動力が固定変速機により一定の変速比で駆動機構に伝達される。
このように、エンジンのクランクシャフトと並列に第1または第2の動力伝達軸が配置されるので、無段変速機および固定変速機がエンジンのクランクシャフトと並列に配置される。それにより、クランクシャフトの長さ方向における動力伝達装置の寸法を小さくすることが可能となる。その結果、動力伝達装置の小型化およびコンパクト化が実現される。
また、無段変速機および固定変速機が所定の大きさを有する場合でも、中継機構を設けることにより、無段変速機および固定変速機とクランクシャフトとの間で小型の構成部材を用いてエンジンの動力の伝達経路を形成することができ、大型の構成部材を設ける必要がなくなる。その結果、動力伝達装置の小型化および軽量化が実現される。
(2)無段変速機は、シングルキャビティ型のハーフトロイダル無段変速機であり、シングルキャビティ型のハーフトロイダル無段変速機は、中継機構からの動力により回転可能に第1の動力伝達軸に設けられる入力ディスクと、入力ディスクと対向するように第1の動力伝達軸に設けられ、かつ駆動機構にトルクを出力する出力ディスクと、入力ディスクと出力ディスクとに接触しつつ移動可能かつ傾斜可能に設けられ、入力ディスクと出力ディスクとの間でトルクを伝達する第1および第2のパワーローラとを含んでもよい。
この場合、シングルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機は、その軸に沿う方向においてダブルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機よりも小さく、軽量である。したがって、ダブルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機を用いる場合に比べて、動力伝達装置の小型化および軽量化が実現される。
それにより、クランクシャフトの軸に沿う方向において配置スペースが制限された小型のエンジンに動力伝達装置を搭載することが可能となる。
シングルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機においては、第1の動力伝達軸に設けられた入力ディスクが中継機構からの動力により回転する。入力ディスクが回転することにより、第1および第2のパワーローラが回転する。これにより、第1および第2のパワーローラが、入力ディスクのトルクを出力ディスクに伝達する。出力ディスクは、伝達されたトルクを駆動機構に出力する。
ここで、第1および第2のパワーローラが移動および傾斜することにより、第1および第2のパワーローラと入力ディスクとの接触状態が連続的に変化する。また、第1および第2のパワーローラと出力ディスクとの接触状態が連続的に変化する。
これにより、入力ディスクから出力ディスクへ伝達されるトルクの比率が連続的に変化する。それにより、無段変速機による変速比の連続的な変更が行われる。
このように、本無段変速機では、第1および第2のパワーローラの移動により変速比の変更を行うことができる。
(3)中継機構は、クランクシャフトと並列に配置された中継軸と、クランクシャフトの動力を中継軸に伝達するとともに、中継軸に伝達された動力を第1および第2の動力伝達機構へ伝達する中継伝達機構とを含んでもよい。この場合、クランクシャフトの動力が中継伝達機構により中継軸に伝達されるとともに、中継軸に伝達された動力が第1および第2の動力伝達機構へ伝達される。
これにより、無段変速機および固定変速機が所定の大きさを有する場合でも、中継機構を設けることにより、無段変速機および固定変速機とクランクシャフトとの間で小型の構成部材を用いてエンジンの動力の伝達経路を形成することができ、大型の構成部材を設ける必要がなくなる。その結果、動力伝達装置の小型化および軽量化が実現される。
(4)第1の動力伝達軸は、中継伝達機構からの動力を受けかつ入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、入力ディスクに固定されるとともに出力ディスクに対して相対的に回転可能であり、第2の動力伝達軸は、第1の動力伝達軸と一体的に設けられてもよい。
この場合、中継伝達機構からの動力を受ける第1の動力伝達軸は、入力ディスクに固定されている。これにより、第1の動力伝達軸の回転に応じて入力ディスクが回転する。このとき、第1の動力伝達軸は、出力ディスクに対して相対的に回転可能となっている。それにより、入力ディスクのトルクが出力ディスクに伝達され、可変の変速比で出力ディスクから出力される。
また、第2の動力伝達軸は第1の動力伝達軸と一体的に設けられている。これにより、中継伝達機構から第1の動力伝達軸に伝達された動力が、第2の動力伝達軸の動力として固定変速機に伝達される。それにより、固定変速機に与えられた動力が一定の減速比で出力される。
(5)第1の動力伝達軸は、入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、中継伝達機構からの動力を受けかつ入力ディスクに固定される第1の中空軸と、出力ディスクに固定される第2の中空軸とを含み、第2の動力伝達軸は、中継伝達機構からの動力を受けかつ第1および第2の中空軸内を通るように設けられてもよい。
この場合、中継伝達機構からの動力が入力ディスクに固定された第1の中空軸に伝達される。これにより、第1の中空軸が回転し、入力ディスクが回転する。それにより、入力ディスクのトルクが出力ディスクに伝達される。出力ディスクの回転とともに、第2の中空軸が回転する。このように、中継伝達機構から第1の中空軸に伝達された動力が、可変の変速比で第2の中空軸から出力される。
第2の動力伝達軸が、第1の動力伝達軸の第1および第2の中空軸内を通るように設けられている。これにより、動力伝達装置のさらなる小型化およびコンパクト化が可能となる。
(6)中継軸は中空軸を含み、第1の動力伝達軸は、入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、中継伝達機構からの動力を受けかつ入力ディスクに固定される第1の回転軸と、出力ディスクに固定される第2の回転軸とを含み、第2の動力伝達軸は、中空軸内を通るように設けられてもよい。
この場合、クランクシャフトの動力が中継伝達機構により中空軸に伝達される。中空軸に伝達された動力は、中継伝達機構から第1の動力伝達軸に伝達される。
中継伝達機構からの動力が入力ディスクに固定された第1の回転軸に伝達される。これにより、第1の回転軸および入力ディスクが回転する。それにより、入力ディスクのトルクが出力ディスクに伝達され、出力ディスクおよび第2の回転軸が回転する。このように、中継伝達機構からの動力が、可変の変速比で第1の動力伝達軸から出力される。
第2の動力伝達軸が、中継軸の中空軸内を通るように設けられている。これにより、動力伝達装置のさらなる小型化およびコンパクト化が可能となる。
(7)第1の動力伝達軸は、入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、中継伝達機構からの動力を受けかつ入力ディスクに固定される第1の回転軸と、出力ディスクに固定される第2の回転軸とを含み、第2の動力伝達軸は、中継軸と一体的に設けられてもよい。
この場合、中継伝達機構からの動力が入力ディスクに固定された第1の回転軸に伝達される。これにより、第1の中空軸および入力ディスクが回転する。それにより、入力ディスクのトルクが出力ディスクに伝達され、出力ディスクおよび第2の回転軸が回転する。このように、中継伝達機構からの動力が、可変の変速比で第1の動力伝達軸から出力される。
第2の動力伝達軸が、中継軸と一体的に設けられている。これにより、動力伝達装置のさらなる小型化およびコンパクト化が可能となる。
(8)中継伝達機構は、クランクシャフトのトルクを受ける第1の円盤状部材と、第1の円盤状部材が受ける動力を第1の動力伝達機構に伝達する第2の円盤状部材とを含み、第1の動力伝達機構は、第1の動力伝達軸に設けられかつ第2の円盤状部材のトルクを無段変速機へ伝達する第3の円盤状部材をさらに含んでもよい。
この場合、第1の円盤状部材にクランクシャフトのトルクが伝達され、第1の円盤状部材が回転する。第1の円盤状部材のトルクは、第2の円盤状部材を通じて第1の動力伝達機構へ伝達される。
第2の円盤状部材により伝達された動力は、第3の円盤状部材に伝達され、第3の円盤状部材が回転する。第3の円盤状部材のトルクは無段変速機に伝達される。
(9)中継伝達機構は、第1の円盤状部材が受ける動力を第2の動力伝達機構に伝達する第4の円盤状部材をさらに含み、第2の動力伝達機構は、第2の動力伝達軸に設けられかつ第4の円盤状部材のトルクを固定変速機へ伝達する第5の円盤状部材をさらに含んでもよい。
この場合、第1の円盤状部材にクランクシャフトのトルクが伝達され、第1の円盤状部材が回転する。第1の円盤状部材のトルクは、第4の円盤状部材を通じて第2の動力伝達機構へ伝達される。
第4の円盤状部材により伝達された動力が、第5の円盤状部材に伝達され、第5の円盤状部材が回転する。第5の円盤状部材のトルクは、固定変速機に伝達される。
(10)切替装置は、第1の動力伝達機構における動力の伝達経路を接続および切断する第1のクラッチを含んでもよい。
この場合、第1の動力伝達機構における動力の伝達経路が第1のクラッチにより接続および切断される。これにより、エンジンの動力の伝達経路を容易に第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替えることが可能となる。
(11)第1の動力伝達機構は、無段変速機から出力される動力を一定の減速比で第1のクラッチに伝達する減速装置をさらに備えてもよい。
この場合、無段変速機から出力される動力が、減速装置により一定の減速比で第1のクラッチに伝達される。これにより、第1のクラッチの入力回転数をその許容回転数まで低くすることができる。
(12)減速装置は、遊星減速機構を含み、遊星減速機構は、無段変速機から出力される動力により回転する太陽歯車と、太陽歯車の周囲に設けられ、太陽歯車の回転に応じて自転および公転する複数の遊星歯車と、複数の遊星歯車に接続され、複数の遊星歯車の公転を規制するキャリアと、複数の遊星歯車を取り囲むように設けられ、複数の遊星歯車の自転に応じて回転する内歯車とを含んでもよい。
この遊星減速機構においては、無段変速機から出力される動力により太陽歯車が回転する。太陽歯車の回転により、動力が太陽歯車の周囲に設けられた複数の遊星歯車に伝達される。ここで、複数の遊星歯車は、キャリアによりその公転が規制されている。
これにより、複数の遊星歯車が自転する。複数の遊星歯車の自転により内歯車が回転する。これにより、無段変速機から出力される動力が、遊星減速機構により一定の減速比で第1のクラッチに伝達される。
遊星減速機構において、太陽歯車および内歯車の回転中心は一致している。これにより、太陽歯車の回転中心を第1の動力伝達軸と同軸上に配置することにより、第1のクラッチを第1の動力伝達軸の軸上に設けることが可能となる。
それにより、クランクシャフトに直交する方向に第1のクラッチを設ける必要がないので、クランクシャフトに直交する方向における動力伝達装置の寸法を小さくすることが可能となる。その結果、動力伝達装置のさらなる小型化およびコンパクト化が可能となる。
また、この遊星減速機構においては、太陽歯車に与えられる動力の回転方向が、内歯車で逆転される。これにより、第1の動力伝達機構において、中継機構から与えられる動力の回転方向が無段変速機により逆転された場合でも、無段変速機から出力される動力が遊星減速機構によりさらに逆転される。
このように、この遊星減速機構によれば、同軸上で動力の回転方向が逆転するので、無段変速機から出力される動力の回転方向を逆転させたい場合に、第1の動力伝達機構に回転方向を逆転させるための新たなギアを設ける必要がなくなる。それにより、第1の動力伝達機構の構成の簡素化および小型化が実現される。
さらに、この遊星減速機構によれば、第1のクラッチに入力される動力の入力回転数を低くすることができるので、第1のクラッチのアンバランスによる不具合が防止される。
(13)減速装置は、遊星減速機構を含み、遊星減速機構は、無段変速機から出力される動力により回転する内歯車と、内歯車の内部に設けられ、内歯車の回転に応じて自転および公転する複数の遊星歯車と、複数の遊星歯車に接続され、複数の遊星歯車の公転とともに回転するキャリアと、内歯車の内部で、複数の遊星歯車に取り囲まれるように設けられ、かつ複数の遊星歯車の回転態様を規制可能に設けられた太陽歯車と、太陽歯車の回転を規制するための固定部材とを含み、第1のクラッチは、太陽歯車と固定部材との接続状態を切り替えてもよい。
この遊星減速機構においては、無段変速機から出力される動力により内歯車が回転する。内歯車の回転により、動力が内歯車の内部に設けられた複数の遊星歯車に伝達される。
第1のクラッチが太陽歯車と固定部材とを接続する。この状態で、太陽歯車は、固定部材によりその回転が規制される。太陽歯車の回転が規制されることにより、複数の遊星歯車の回転態様が規制される。なお、この回転態様は、複数の遊星歯車の自転状態および公転状態を含む。
この場合、複数の遊星歯車に動力が伝達されると、複数の遊星歯車が公転する。複数の遊星歯車が公転することによりキャリアが回転する。このように、複数の遊星歯車に伝達された動力はキャリアに伝達される。キャリアから出力される動力は、駆動機構に出力される。
一方、第1のクラッチが太陽歯車と固定部材とを接続しない場合、太陽歯車の回転は規制されない。それにより、複数の遊星歯車の自転が許容される。この場合、複数の遊星歯車に動力が伝達されると、複数の遊星歯車は自転する。複数の遊星歯車の自転にともない、太陽歯車が空転する。したがって、無段変速機から出力される動力は駆動機構に伝達されない。
このように、太陽歯車の回転を規制して動力を伝達する遊星減速機構は、一般にソーラ型と呼ばれる。この構成を有する遊星減速機構においては、太陽歯車に伝達されるトルクが小さくなる。すなわち、太陽歯車の回転を規制するための負荷を、内歯車の回転を規制するために必要な負荷に比べて非常に小さくすることができる。
したがって、第1のクラッチの負荷トルクを小さくすることができるので、第1のクラッチの構成を小型化することが可能となる。
さらに、例えば第1のクラッチを油圧により駆動する場合には、第1のクラッチを油圧制御するために必要な油圧が低減される。
(14)第1のクラッチは、多板クラッチを含んでもよい。この場合、第1の動力伝達機構における動力の伝達経路が多板クラッチにより接続および切断される。
このように、多板クラッチを用いることにより、単板クラッチを用いる場合に比べて、その軸心と直交する方向における小型化(小径化)が実現される。また、伝達経路に大きい動力が伝達される場合でも、その接続および切断を容易に行うことができる。
(15)切替装置は、第2の動力伝達機構における動力の伝達経路を接続および切断する第2のクラッチを含んでもよい。
この場合、第2の動力伝達機構における動力の伝達経路が第2のクラッチにより接続および切断される。これにより、エンジンの動力の伝達経路を容易に第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替えることが可能となる。
(16)第2のクラッチは、多板クラッチまたはドグクラッチを含んでもよい。この場合、第2の動力伝達機構における動力の伝達経路が多板クラッチまたはドグクラッチにより接続および切断される。
多板クラッチを用いる場合には、単板クラッチを用いる場合に比べて、その軸心と直交する方向における小型化(小径化)が実現される。また、伝達経路に大きい動力が伝達される場合でも、その接続および切断を容易に行うことができる。
(17)中継機構は、クランクシャフトからの動力の回転変動を除去するトルクダンパをさらに含んでもよい。この場合、中継機構において、クランクシャフトからの動力の回転変動がトルクダンパにより除去される。それにより、動力伝達装置に動力の回転変動が伝達されないので、動力伝達装置の円滑な動作が可能となる。その結果、駆動機構の動作も円滑となる。
(18)クランクシャフトは、第1の作動油が充填された第1の作動油領域内に設けられ、無段変速機は、第2の作動油が充填された第2の作動油領域内に設けられ、中継機構は、第1の作動油領域および第2の作動油領域とを分離するための漏洩防止部材をさらに含んでもよい。
この場合、漏洩防止部材により、第1の作動油領域と第2の作動油領域とが分離されるので、第1の作動油が第2の作動油領域に漏洩することが防止され、第2の作動油が第1の作動油領域に漏洩することが防止される。
このように、中継機構が漏洩防止部材を含むことにより、1つのケーシング内にクランクシャフトおよび無段変速機を収容することが可能となる。その結果、動力伝達装置を内蔵するエンジンを容易に作製することができ、エンジンの小型化が実現される。
(19)固定変速機は、歯車機構を有し、歯車機構は、第2の動力伝達軸に設けられ、中継機構からの動力を受ける第1の歯車と、第1の歯車の動力を駆動機構へ出力する第2の歯車とを含んでもよい。
この場合、歯車機構においては、中継機構からの動力が第2の動力伝達軸に設けられた第1の歯車に伝達される。第1の歯車に伝達された動力は、第2の歯車に伝達され、一定の変速比で駆動機構に出力される。
このように、歯車機構によれば、簡単な構成で動力を一定の変速比で駆動機構に伝達することができるので、動力伝達装置の作製が容易となる。
(20)第2の発明に係る車両は、クランクシャフトを備えるエンジンと、駆動機構と、エンジンの動力を駆動機構に伝達する動力伝達装置とを備え、動力伝達装置は、エンジンの動力を受ける中継機構と、中継機構から駆動機構へ動力を伝達する第1の動力伝達機構と、中継機構から駆動機構へ動力を伝達する第2の動力伝達機構と、エンジンの動力の伝達経路を、第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える切替装置とを備え、第1の動力伝達機構は、クランクシャフトと並列に配置され、中継機構からの動力を受ける第1の動力伝達軸と、第1の動力伝達軸に設けられ、第1の動力伝達軸が受けた動力を可変の変速比で駆動機構に伝達する無段変速機とを含み、第2の動力伝達機構は、クランクシャフトと並列に配置され、中継機構からの動力を受ける第2の動力伝達軸と、第2の動力伝達軸に設けられ、第2の動力伝達軸が受けた動力を一定の変速比で駆動機構に伝達する固定変速機とを含むものである。
この発明に係る車両においては、クランクシャフトを備えるエンジンの動力が、動力伝達装置により駆動機構に伝達される。これにより、駆動機構がエンジンの動力により駆動される。
動力伝達装置において、エンジンの動力は中継機構に与えられる。中継機構に与えられた動力は、第1または第2の動力伝達機構により駆動機構に伝達される。
ここで、切替装置はエンジンの動力の伝達経路を第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える。
第1の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第1の動力伝達軸に与えられ、第1の動力伝達軸に与えられた動力が無段変速機により可変の変速比で駆動機構に伝達される。
第2の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第2の動力伝達軸に与えられ、第2の動力伝達軸に与えられた動力が固定変速機により一定の変速比で駆動機構に伝達される。
このように、エンジンのクランクシャフトと並列に第1または第2の動力伝達軸が配置されるので、無段変速機および固定変速機がエンジンのクランクシャフトと並列に配置される。それにより、クランクシャフトの長さ方向における動力伝達装置の寸法を小さくすることが可能となる。その結果、動力伝達装置の小型化およびコンパクト化が実現される。
また、無段変速機および固定変速機が所定の大きさを有する場合でも、中継機構を設けることにより、無段変速機および固定変速機とクランクシャフトとの間で小型の構成部材を用いてエンジンの動力の伝達経路を形成することができ、大型の構成部材を設ける必要がなくなる。したがって、動力伝達装置の小型化および軽量化が実現される。その結果、車両の小型化および軽量化が可能となる。
本発明に係る動力伝達装置およびそれを備える車両において、エンジンの動力は中継機構に与えられる。中継機構に与えられた動力は、第1または第2の動力伝達機構により駆動機構に伝達される。
ここで、切替装置はエンジンの動力の伝達経路を第1の動力伝達機構と第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える。
第1の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第1の動力伝達軸に与えられ、第1の動力伝達軸に与えられた動力が無段変速機により可変の変速比で駆動機構に伝達される。
第2の動力伝達機構においては、中継機構からの動力がクランクシャフトと並列に配置された第2の動力伝達軸に与えられ、第2の動力伝達軸に与えられた動力が固定変速機により一定の変速比で駆動機構に伝達される。
このように、エンジンのクランクシャフトと並列に第1または第2の動力伝達軸が配置されるので、無段変速機および固定変速機がエンジンのクランクシャフトと並列に配置される。それにより、クランクシャフトの長さ方向における動力伝達装置の寸法を小さくすることが可能となる。その結果、動力伝達装置の小型化およびコンパクト化が実現される。
また、無段変速機および固定変速機が所定の大きさを有する場合でも、中継機構を設けることにより、無段変速機および固定変速機とクランクシャフトとの間で小型の構成部材を用いてエンジンの動力の伝達経路を形成することができ、大型の構成部材を設ける必要がなくなる。その結果、動力伝達装置の小型化および軽量化が実現される。
以下、本発明の一実施の形態に係る動力伝達装置およびそれを備える車両について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態においては、車両の一例として小型の自動二輪車を説明する。
背景技術における説明と同様に、以下の説明においても、動力伝達効率とは、歯車式変速機またはCVTに入力される動力(入力動力)をそれらの変速機から出力される動力(出力動力)で除して得られる値をいう。また、エネルギー効率とは、エンジンに供給される熱量と、その熱量に基づいて実際に駆動機構を駆動する動力との比率をいう。このエネルギー効率は、エンジンの正味熱効率に動力伝達効率を乗じて得られる。
1.第1の実施の形態
(1)自動二輪車の構造
図1は、第1の実施の形態に係る自動二輪車の模式図である。
この自動二輪車100においては、本体フレーム6の前端にヘッドパイプ3が設けられている。ヘッドパイプ3にフロントフォーク2が左右方向に揺動可能に設けられている。フロントフォーク2の下端に前輪1が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ3の上端にはハンドル4が取り付けられている。
本体フレーム6の中央部にはエンジン7が保持されている。エンジン7の上部には燃料タンク8が設けられ、燃料タンク8の後方にはシート9が設けられている。
エンジン7の後方に延びるように、本体フレーム6にリアアーム10が接続されている。リアアーム10は、後輪11および後輪ドリブンスプロケット12を回転可能に保持する。エンジン7の排気ポートには排気管13が接続されている。排気管13の後端にマフラー14が取り付けられている。
エンジン7のドライブシャフト26に後輪ドライブスプロケット15が取り付けられている。後輪ドライブスプロケット15は、チェーン16を介して後輪11の後輪ドリブンスプロケット12に連結されている。
図1の破線で示すように、自動二輪車100の内部には電子制御装置( electronic control unit :以下、ECUと呼ぶ。)800が設けられている。ECU800は、自動二輪車100の各構成部材の動作を制御する。詳細は後述する。
また、太い一点鎖線で示すように、自動二輪車100のエンジン7は、動力伝達装置300を含む。以下、本実施の形態に係る動力伝達装置300を説明する。
(2)動力伝達装置の構成およびレイアウト
図2は、第1の実施の形態に係る動力伝達装置300の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図2に示すように、エンジン7(図1)のクランクシャフト71に動力源ドライブギア72が設けられている。本実施の形態に係る動力伝達装置300においては、動力源ドライブギア72により伝達される動力(トルク)が、図1のドライブシャフト26に伝達される。それにより、図1の後輪ドライブスプロケット15が回転し、その動力がチェーン16を介して後輪11の後輪ドリブンスプロケット12に伝達される。その結果、後輪11が回転する。
動力伝達装置300において、動力伝達経路の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。図2の例において、アイドル機構30はアイドル軸31、ドリブンギア32、ドライブギア33、オイルシールOSおよびトルクダンパTDを含む。
ドリブンギア32およびドライブギア33は、それぞれアイドル軸31に取り付けられている。アイドル軸31は、クランクシャフト71の回転軸と平行となるように設けられる。
ドリブンギア32は、動力源ドライブギア72と係合する。これにより、動力源ドライブギア72が回転することによりドリブンギア32が回転する。ドリブンギア32の回転に伴いアイドル軸31およびドライブギア33が回転する。
アイドル軸31にはトルクダンパTDが設けられている。トルクダンパTDは、動力源ドライブギア72からドリブンギア32に伝達される動力の変動を除去する。すなわち、トルクダンパTDは、クランクシャフト71に発生するトルクの変動(高周波成分)を除去するために用いられる。
アイドル機構30のドライブギア33に係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられる。変速系ドリブンギア42は動力入力軸41の一端に取り付けられている。動力入力軸41は、クランクシャフト71の回転軸と平行に設けられる。
動力入力軸41の略中央部に無段変速機( Continuously Variable Transmission :以下、CVTと呼ぶ。)500が取り付けられ、動力入力軸41の他端に固定変速系ドライブギア43が取り付けられている。本実施の形態において、CVT500はシングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTである。
変速系ドリブンギア42の回転に伴い動力入力軸41が回転する。それにより、固定変速系ドライブギア43が回転する。
ここで、CVT500の構成の概略を説明する。CVT500は、入力ディスク510、出力ディスク520、一対のパワーローラ530a,530b、中空出力軸540およびCVT出力用ドライブギア541を備える。
動力入力軸41の一端側(変速系ドリブンギア42側)に出力ディスク520が配置され、他端側(固定変速系ドライブギア43側)に入力ディスク510が配置される。
入力ディスク510および出力ディスク520はそれぞれ略円錐台形状を有し、互いに対向する。入力ディスク510および出力ディスク520の対向面は凹状に湾曲している。
入力ディスク510と出力ディスク520との間には、それぞれに接触するように略円盤形状を有する一対のパワーローラ530a,530bが設けられている。これらの一対のパワーローラ530a,530bは傾斜および回転可能に保持される。
動力入力軸41には、入力ディスク510が取り付けられている。これにより、動力入力軸41が回転する場合には、固定変速系ドライブギア43が回転するとともに入力ディスク510も回転する。
中空出力軸540内の中空部には動力入力軸41が中空出力軸540に対して相対的に回転可能に挿通されている。
入力ディスク510が回転することにより一対のパワーローラ530a,530bも回転する。それにより、入力ディスク510のトルクが出力ディスク520に伝達され、中空出力軸540から出力される。
中空出力軸540にCVT出力用ドライブギア541が取り付けられている。それにより、中空出力軸540が回転することによりCVT出力用ドライブギア541も回転する。このように、CVT500に入力されたエンジン7の動力は、CVT出力用ドライブギア541から後述するCVT出力用ドリブンギア53に伝達される。
CVT出力用ドライブギア541および後述するCVT出力用ドリブンギア53の大きさ(歯数)は、予め定められた減速比に応じて決定される。それにより、CVT500により可変の減速比で伝達される動力は、さらに一定の減速比で後述するドライブシャフト26に伝達される。
上記のCVT500においては、動力の伝達時に一対のパワーローラ530a,530bを傾斜させることにより、その傾斜方向およびその傾斜の度合いに応じて減速比が変更される。
クランクシャフト71の回転軸、ならびにアイドル軸31および動力入力軸41と平行にドライブシャフト26が配置されている。
ドライブシャフト26の一端に図1の後輪ドライブスプロケット15が取り付けられている。ドライブシャフト26の他端にドグクラッチ51が設けられている。ドライブシャフト26の略中央部に湿式の多板クラッチ52が設けられている。
多板クラッチ52にはCVT出力用ドリブンギア53が一体的に取り付けられている。CVT出力用ドリブンギア53は、CVT500のCVT出力用ドライブギア541と係合している。これにより、CVT出力用ドライブギア541のトルクがCVT出力用ドリブンギア53に伝達される。
エンジン7の作動時に多板クラッチ52が接続されると、CVT出力用ドリブンギア53のトルクがドライブシャフト26に伝達される。それにより、後輪ドライブスプロケット15が回転する。その結果、エンジン7の動力が、可変の減速比で図1のチェーン16および後輪ドリブンスプロケット12を介して後輪11に伝達される。
ドライブシャフト26の他端には、ドグクラッチ51を介して固定変速系ドリブンギア61が設けられている。この固定変速系ドリブンギア61は、固定変速系ドライブギア43と共通の面内に設けられる。固定変速系ドライブギア43と固定変速系ドリブンギア61との間にアイドルギア62が設けられている。
アイドルギア62は、固定変速系ドライブギア43に係合するとともに、固定変速系ドリブンギア61に係合する。それにより、固定変速系ドライブギア43のトルクが、アイドルギア62を介して固定変速系ドリブンギア61に伝達される。
固定変速系ドライブギア43および固定変速系ドリブンギア61の大きさ(歯数)は、予め定められた減速比に応じて決定される。それにより、固定変速系ドライブギア43に伝達される動力は、一定の減速比で固定変速系ドリブンギア61からドライブシャフト26に伝達される。
ここで、エンジン7の作動時にドグクラッチ51が切断されていると、固定変速系ドリブンギア61は空転する。一方、エンジン7の作動時にドグクラッチ51が接続されていると、固定変速系ドリブンギア61のトルクがドライブシャフト26に伝達される。それにより、後輪ドライブスプロケット15が回転する。その結果、エンジン7の動力が、一定の減速比で図1のチェーン16および後輪ドリブンスプロケット12を介して後輪11に伝達される。
動力伝達装置300において、多板クラッチ52の接続時には、ドグクラッチ51が切断される。また、ドグクラッチ51の接続時には、多板クラッチ52が切断される。
以下の説明では、可変の減速比でエンジン7の動力が後輪ドライブスプロケット15に伝達されるときの動力伝達経路を可変変速経路と呼び、一定の減速比でエンジン7の動力が後輪ドライブスプロケット15に伝達されるときの動力の伝達経路を固定変速経路と呼ぶ。
本実施の形態では、多板クラッチ52の接続時でかつドグクラッチ51が切断される場合に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、動力入力軸41、CVT500、CVT出力用ドリブンギア53、多板クラッチ52およびドライブシャフト26が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ52の切断時でかつドグクラッチ51が接続される場合に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、動力入力軸41、固定変速系ドライブギア43、アイドルギア62、固定変速系ドリブンギア61、ドグクラッチ51およびドライブシャフト26が固定変速経路を構成する。
ドグクラッチ51および多板クラッチ52の接続および切断、すなわち動力伝達経路の切替動作は、例えば図1のECU800により制御される。なお、ECU800は、例えば中央演算処理装置(CPU)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等を備え、図示しないスロットルの開度およびエンジン7の作動状態等に応じて動力伝達装置300の各構成部材の動作を制御している。
上記のように、エンジン7の動力源ドライブギア72に係合するアイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。これにより、図2に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構造で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
(3)動力伝達経路の切替動作
以下、動力伝達装置300における動力伝達経路の切替動作の一例を説明する。上記のように、以下に示す切替動作は図1のECU800により制御される。
初めに、エンジン7の始動時およびエンジン7のアイドリング時において、動力伝達装置300では、ドグクラッチ51および多板クラッチ52の両方が切断状態となっている。これにより、エンジン7の動力は後輪ドライブスプロケット15に伝達されない。
自動二輪車100の乗り手が図示しないスロットルを開く。この場合、ECU800は多板クラッチ52のクラッチ圧を徐々に上昇させる。これにより、多板クラッチ52が接続状態となり、エンジン7の動力がCVT500を含む可変変速経路を通じて後輪ドライブスプロケット15に伝達される。それにより、後輪11が回転し、自動二輪車100が走行状態となる。
この場合、CVT500により自動二輪車100の走行状態(エンジン7の回転数、エンジン7の負荷、自動二輪車100の速度、加速度等)に応じて減速比が連続的に変化する。それにより、自動二輪車100の速度および加速度等が連続的に変化する場合には、歯車変速機に比べてエンジン7の正味熱効率が最もよくなるように、減速比を調整することができる。
この場合、CVT500を用いるときのエンジン7のエネルギー効率が、歯車変速機を用いるときのエンジン7のエネルギー効率よりも高くなる。その結果、CVT500を用いるときの燃費が、歯車変速機を用いるときの燃費よりも向上する。
なお、自動二輪車100の速度および加速度等が連続的に変化する場合としては、市街地での走行時等がある。
自動二輪車100の走行時において、ECU800はエンジン7の回転数、エンジン7の負荷、およびスロットルの開度等を監視している。そこで、ECU800は、例えばエンジン7の回転数が所定のしきい値を超えた状態で所定の期間継続している場合に動力伝達経路の切替を行う。
なお、動力伝達経路の切替は上記に限定されず、例えば、図1の後輪11の回転数を監視し、その回転数が所定のしきい値を超えた状態で所定の期間継続している場合に動力伝達経路の切替を行ってもよい。また、監視する対象もエンジン7の回転数および後輪11の回転数に限定されず、エンジン7内部の各種ギアの回転数を監視してもよい。
この場合、ECU800は多板クラッチ52を切断し、ドグクラッチ51を接続する。これにより、エンジン7の動力が、固定変速系ドライブギア43、アイドルギア62および固定変速系ドリブンギア61を含む固定変速経路を通じて後輪ドライブスプロケット15に伝達される。それにより、減速比が所定の値に固定される。
背景技術において説明したように、速度がほぼ一定に保たれる高速道路等での走行時においては、固定変速経路(歯車式変速機)を用いたときのエネルギー効率が、可変変速経路(CVT500)を用いるときのエネルギー効率よりも高くなる。その結果、歯車式変速機をを用いるときの燃費は、CVT500を用いるときの燃費に比べて良好となる。
これに対して、速度の加速および減速が頻繁に繰り返される市街地での走行時においては、可変変速経路(CVT500)を用いるときのエネルギー効率が、固定変速経路(歯車式変速機)を用いるときのエネルギー効率よりも高くなる。その結果、CVT500を用いるときの燃費が、歯車式変速機を用いるときの燃費に比べて良好となる。
したがって、上記のようにECU800が動力伝達経路の切替を行うことにより、エンジン7の負荷およびエンジン7の回転数等の運転条件の変化に伴うエネルギー効率の低下を低減することができる。
(4)動力伝達装置の具体的構成例
図3〜図5は、第1の実施の形態に係る動力伝達装置300の具体的構成例を説明するための図である。図3にエンジン7を展開して内部構成を上方から見た場合の切り欠き断面図が示されている。また、図4にエンジン7を一側方から見た場合の透過図が示され、図5にエンジン7を他側方から見た場合の透過図が示されている。
図3に示すように、本具体例の動力伝達装置300は、エンジン7の内部に設けられる。図2の概略図とほぼ同様に、本具体例においても、クランクシャフト71に動力源ドライブギア72が設けられている。
動力源ドライブギア72のトルクを受けるように動力伝達装置300が設けられている。動力伝達経路の最も上流にアイドル機構30が設けられている。
本具体例のアイドル機構30においては、アイドル軸31の一端側にドライブギア33が設けられ、アイドル軸31の略中央部にドリブンギア32が設けられている。アイドル軸31には、軸方向に沿って複数の突条部が形成されている。
また、アイドル軸31において、ドリブンギア32とドライブギア33との間にはオイルシールOSが設けられている。さらに、アイドル軸31の他端側にトルクダンパTDが設けられている。
ここで、ドライブギア33はアイドル軸31に固定されている。それにより、ドライブギア33はアイドル軸31の回転に応じて回転する。一方、ドリブンギア32はアイドル軸31と相対的に回転可能である。
ドリブンギア32には、トルクダンパTD側に突出するようにカム形状部32jが設けられている。
トルクダンパTDの構成を説明する。トルクダンパTDは、ダンパリングd1、ばね部材SPおよび固定リングd2を備える。これらの部材は、ドリブンギア32からアイドル軸31の他端にかけて、ダンパリングd1、ばね部材SPおよび固定リングd2の順に設けられている。
ダンパリングd1は、アイドル軸31の一端に向かって突出するように形成された凹状部jを有する。また、ダンパリングd1にはアイドル軸31の突条部と嵌合可能な複数の溝が形成されている。これにより、ダンパリングd1はアイドル軸31に対して、周方向に固定されるとともに、軸方向に摺動自在に設けられている。
一方、固定リングd2はアイドル軸31の他端に固定されている。これにより、ダンパリングd1と固定リングd2との間に位置するばね部材SPはダンパリングd1をドリブンギア32に向かうように付勢する。
図3では、ダンパリングd1とドリブンギア32との接触状態を示す拡大図が示されている(点線部参照)。
拡大図に示すように、ドリブンギア32のカム形状部32jは、略半円状に形成されている。一方、ダンパリングd1の凹状部jは、内部にカム形状部32jを収容可能なV字型に形成されている。
動力源ドライブギア72が回転することによりドリブンギア32が回転する。このとき、カム形状部32jの全体が凹状部jの内部に収容される。上記のように、ドリブンギア32はアイドル軸31と相対的に回転可能である。したがって、この瞬間において、ダンパリングd1およびアイドル軸31は回転しない。
ここで、さらにドリブンギア32が回転すると、カム形状部32jが凹状部jの内面に沿って摺動する。このとき、ダンパリングd1にアイドル軸31の他端へ向かう力が発生する。それにより、ダンパリングd1は、ばね部材SPの弾性力に抗してアイドル軸31の他端側へと移動する。
その後、ばね部材SPの弾性力と、カム形状部32jが摺動することにより発生する力とが、釣り合うことによりダンパリングd1がドリブンギア32とともに回転する。その回転に伴って、アイドル軸31も回転する。
その結果、アイドル軸31の回転とともにドライブギア33にトルクが伝達される。
このように、本具体例では、動力源ドライブギア72からドリブンギア32に伝達される動力の変動(クランクシャフト71に発生するトルクの変動)が、トルクダンパTDに設けられたばね部材SPの弾性力により除去される。
アイドル機構30のドライブギア33に係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられている。変速系ドリブンギア42は動力入力軸41の一端に取り付けられている。
動力入力軸41の略中央部にCVT500が取り付けられ、動力入力軸41の他端にローディングカム機構430がナット43Nにより取り付けられている。ローディングカム機構430は、複数のローラ431および固定変速系ドライブギア43を含む。図2の概略図と同様に、固定変速系ドライブギア43はCVT500の入力ディスク510と対向するように設けられている。
固定変速系ドライブギア43および入力ディスク510のそれぞれの対向面には、円周方向に沿うように複数の溝が形成されている。これらの溝の内部に複数のローラ431が配置される。
これにより、複数のローラ431は、固定変速系ドライブギア43と入力ディスク510との間で挟持される。固定変速系ドライブギア43および入力ディスク510に形成された溝の底面は円周方向に沿って傾斜している。それにより、固定変速系ドライブギア43が動力入力軸41により回転され、トルクが伝達されると、それらの溝の内部で複数のローラ431が移動し、くさび効果が発生する。
それにより、伝達されたトルクに比例したパワーローラ530a,530bへの押し付け力が、入力ディスク510と出力ディスク520との間に発生する。その結果、固定変速系ドライブギア43、入力ディスク510,パワーローラ530a,530bおよび出力ディスク520が互いに固定され、固定変速系ドライブギア43のトルクが入力ディスク510に伝達される。
本具体例においても、動力伝達装置300に設けられるCVT500は、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTである。
図2の概略図と同様に、図3のCVT500は、入力ディスク510、出力ディスク520、一対のパワーローラ530a,530b、中空出力軸540およびCVT出力用ドライブギア541を備える。これらの各構成部材の配置も図2の概略図に示される配置と同じである。なお、本具体例では、中空出力軸540とCVT出力用ドライブギア541とが一体的に形成されている。
クランクシャフト71の回転軸、ならびにアイドル軸31および動力入力軸41と平行となるように、ドライブシャフト26が配置されている。ドライブシャフト26に設けられる構成部材およびその配置は、図2の概略図に示されるものと同じである。
図4に示すように、エンジン7内部の動力伝達装置300において、アイドル機構30のアイドル軸31はクランクシャフト71の斜め上方に設けられる。また、CVT500を支持する動力入力軸41は、アイドル軸31のさらに斜め上方に設けられる。ドライブシャフト26は動力入力軸41の下方に設けられる。
図5に示すように、エンジン7内部の動力伝達装置300において、アイドルギア62の軸心は動力入力軸41の斜め下方に設けられる。
このように、本具体例の動力伝達装置300においては、クランクシャフト71の軸心に垂直な面内で、アイドル軸31、動力入力軸41、アイドルギア62の軸心およびドライブシャフト26が一直線上に並ばない。それにより、動力伝達装置300の小型化およびコンパクト化が実現されている。
また、クランクシャフト71と動力入力軸41との間の動力伝達経路に、アイドル機構30のドライブギア33を設けることにより、動力源ドライブギア72および変速系ドリブンギア42の径を大きくする必要がない。それにより、動力伝達装置300の小型化および軽量化が実現されている。
さらに、上記のように、本具体例においては、アイドル機構30にオイルシールOSが設けられている。これにより、図3の太い一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構造で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
(5)効果
自動二輪車等の小型車両においては、エンジン7および動力伝達装置300のレイアウトが制限される。すなわち、四輪自動車のように、エンジン7のクランクシャフト71と動力伝達装置300を構成する動力伝達軸とを直列に設けることが困難である。すなわち、クランクシャフト71に動力入力軸41を直接接続することはむずかしい。
そこで、本実施の形態に係る動力伝達装置300では、エンジン7の動力をCVT500に伝達するためにアイドル機構30を設けている。
これにより、エンジン7の動力が、アイドル機構30のドリブンギア32およびドライブギア33に伝達され、変速系ドリブンギア42および動力入力軸41を介してCVT500に伝達される。
このように、エンジン7の動力をアイドル機構30のドリブンギア32およびドライブギア33を介してCVT500に伝達することにより、動力入力軸41をクランクシャフト71の周辺に並列に設けることが可能となる。それにより、CVT500を配置するスペースの自由度が増加し、動力伝達装置300のレイアウトの自由度が増加する。
また、上述のように、CVT500は一対のパワーローラ530a,530b等の構成部材を含むため占有スペースが大きくなる。そのため、アイドル機構30を設けることなくCVT500をクランクシャフト71の周辺で並列に設けるためには、CVT500の大きさを考慮して動力伝達に用いるギア(動力源ドライブギア72および変速系ドリブンギア42)の径を大きくする必要が生じる。この場合、動力伝達装置300が大型化するとともに重量も増加する。
これに対して、本実施の形態に係る動力伝達装置300においては、アイドル機構30のドリブンギア32およびドライブギア33が設けられているので、動力源ドライブギア72および変速系ドリブンギア42の径を大きくする必要がない。それにより、大きいギアおよびチェーン等の大きい構成部材を設ける必要がなく、動力伝達装置300の十分な小型化、コンパクト化および軽量化が実現されている。
本実施の形態において、動力伝達装置300には固定変速経路の構成部材として固定変速系ドライブギア43、アイドルギア62および固定変速系ドリブンギア61が設けられている。このように、固定変速経路が単純な構成により実現されているので、動力伝達装置300の大型化が十分に防止されている。
また、固定変速経路の構成を単純化することにより、複雑な構成を有する動力伝達装置に比べて強度を向上させるべき構成部材の数が低減される。それにより、小型車両に搭載されるエンジン7の回転数に応じて構成部材を強化した場合でも動力伝達装置300の大型化が抑制され、重量の増加も低減される。
上述のように、動力伝達装置300に設けられるCVT500は、シングルキャビティ型のハーフトロイダルCVTである。したがって、ダブルキャビティ型のハーフトロイダルCVTを用いる場合に比べて動力伝達装置300の小型化および軽量化が実現されている。
上述のように、CVT出力用ドライブギア541およびCVT出力用ドリブンギア53の大きさ(歯数)を予め定められた減速比に応じて決定することにより、CVT500により可変の減速比で伝達される動力が、さらに一定の減速比でドライブシャフト26に伝達される。
このように、可変変速経路において、CVT500の下流でかつ多板クラッチ52の上流に減速機構を設けることにより、多板クラッチ52に与えられる動力の回転数(多板クラッチ52への入力回転数)を低くすることができる。それにより、多板クラッチ52への入力回転数をその許容回転数まで低くすることができる。
また、入力回転数を低くすることができるので、多板クラッチ52の構成を小型化すること(例えば、クラッチ板の大きさを小さくしたり、クラッチ板の数を少なくしたりすること)が可能となる。
さらに、例えば多板クラッチ52を油圧により駆動する場合には、多板クラッチ52を油圧制御するために必要な油圧が低減される。
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る自動二輪車は、動力伝達装置300の構成を除き、第1の実施の形態に係る自動二輪車100と同じ構成を有する。以下、本実施の形態に係る自動二輪車に設けられる動力伝達装置について説明する。なお、本実施の形態に係る動力伝達装置も、エンジン7の内部に設けられる。
図6は、第2の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図6に示すように、本実施の形態においても、動力伝達装置300の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。アイドル機構30の構成は第1の実施の形態におけるアイドル機構30とほぼ同じである。
アイドル機構30のドライブギア33に係合するように、変速系ドリブンギア42および固定変速系ドリブンギア243が設けられている。
変速系ドリブンギア42は、中空入力軸420の一端に取り付けられている。中空入力軸420の他端にはCVT500の入力ディスク510が接続されている。CVT500の構成も第1の実施の形態におけるCVT500とほぼ同じである。
CVT500の出力ディスク520は中空出力軸540の一端に接続されている。中空出力軸540の他端にサンギア110が取り付けられている。これにより、CVT500により可変の減速比で伝達されるエンジン7の動力が中空出力軸540を通じてサンギア110に伝達され、サンギア110が回転する。
サンギア110を取り囲むように複数のピニオンギア120が設けられている。サンギア110および複数のピニオンギア120は互いに係合している。
複数のピニオンギア120にはプラネタリキャリア120Cが接続されている。複数のピニオンギア120およびプラネタリキャリア120Cは互いに係合している。
プラネタリキャリア120Cは固定されている。これにより、サンギア110が回転すると、複数のピニオンギア120は、プラネタリキャリア120Cにより公転しない状態で自転する。
複数のピニオンギア120を取り囲むようにリングギア121が設けられている。リングギア121は、複数のピニオンギア120と係合している。
サンギア110が回転し、複数のピニオンギア120が自転することにより、リングギア121が一定の減速比で回転する。以下、本実施の形態において、サンギア110、リングギア121、ピニオンギア120およびプラネタリキャリア120Cからなる機構を遊星減速機構と呼ぶ。
なお、この遊星減速機構においては、サンギア110に入力される動力の回転方向が、リングギア121で逆転する。
遊星減速機構のリングギア121には多板クラッチ130が設けられている。中空出力軸540と同軸上に中空連動軸140が設けられている。中空連動軸140の一端には変速系出力ドライブギア141が取り付けられている。エンジン7の作動時に多板クラッチ130が接続されると、リングギア121のトルクが中空連動軸140に伝達される。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ130が切断されると、リングギア121のトルクが中空連動軸140に伝達されない。
すなわち、多板クラッチ130が接続されているときには、CVT500により可変の減速比で伝達される動力が、遊星減速機構によりさらに一定の減速比で中空連動軸140に伝達される。これにより、変速系出力ドライブギア141が回転する。一方、多板クラッチ130が切断されているときには、CVT500から伝達される動力が中空連動軸140に伝達されない。
アイドル機構30のドライブギア33に係合する固定変速系ドリブンギア243には、多板クラッチ250が設けられている。
ここで、中空連動軸140、中空入力軸420および中空出力軸540内の中空部には、固定変速系伝達軸260がこれらの各軸に対して相対的に回転可能に挿通されている。固定変速系伝達軸260の一端には固定系出力ドライブギア261が設けられている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ250が接続されると、固定変速系ドリブンギア243のトルクが固定変速系伝達軸260に伝達される。それにより、固定系出力ドライブギア261が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ250が切断されると、固定変速系ドリブンギア243のトルクが固定変速系伝達軸260に伝達されない。
なお、固定変速系ドリブンギア243の大きさ(歯数)は、予め設定された特定の減速比に応じて決定される。それにより、アイドル機構30のドライブギア33に伝達される動力は、一定の減速比で固定変速系伝達軸260に伝達される。
変速系出力ドライブギア141および固定系出力ドライブギア261に係合するようにドリブンギア301が設けられている。ドリブンギア301は第1の軸302の一端に設けられている。第1の軸302の他端には第1のヘリカルギア303が設けられている。
さらに、第1のヘリカルギア303に係合するように、第2のヘリカルギア304が設けられている。第2のヘリカルギア304は、第2の軸305の一端に設けられている。
変速系出力ドライブギア141および固定系出力ドライブギア261のいずれか一方がエンジン7の動力により回転すると、ドリブンギア301が回転する。それにより、エンジン7の動力がドリブンギア301、第1の軸302、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および第2の軸305を通じて図1の後輪11に伝達される。
本実施の形態では、多板クラッチ130の接続時でかつ多板クラッチ250の切断時に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、中空入力軸420、CVT500、中空出力軸540、遊星減速機構、多板クラッチ130、中空連動軸140、変速系出力ドライブギア141、ドリブンギア301、第1の軸302、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および第2の軸305が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ130の切断時でかつ多板クラッチ250の接続時に、アイドル機構30、固定変速系ドリブンギア243、固定変速系伝達軸260、固定系出力ドライブギア261、ドリブンギア301、第1の軸302、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および第2の軸305が固定変速経路を構成する。
上記のように、本実施の形態では、固定変速経路を構成する固定変速系伝達軸260が、可変変速経路を構成する中空連動軸140、中空入力軸420および中空出力軸540の内部に設けられている。
また、アイドル機構30からの動力を受ける変速系ドリブンギア42および固定変速系ドリブンギア243、ならびにドリブンギア301に動力を伝達する変速系出力ドライブギア141および固定系出力ドライブギア261が同軸上に設けられている。
このように、可変変速経路において、CVT500の下流でかつ多板クラッチ130の上流に遊星減速機構を設けることにより、多板クラッチ130に与えられる回転数(多板クラッチ130への入力回転数)を低くすることができる。それにより、多板クラッチ130への入力回転数をその許容回転数まで低くすることができる。
入力回転数が過剰に高い場合には、製造誤差等に起因してギアに遠心力が発生する場合がある。また、そのような遠心力の発生に伴い、多板クラッチ130が振動する等、多板クラッチ130がアンバランスとなる場合がある。しかしながら、本実施の形態では、多板クラッチ130への入力回転数を低くすることができるので、製造誤差等に起因する遠心力の発生を十分に低減することができ、多板クラッチ130のアンバランスが防止される。
CVT500においては、中空入力軸420から入力される動力の回転方向が、逆転して中空出力軸540から出力される。ここで、上述のように、本実施の形態で用いる遊星減速機構においては、サンギア110に入力される動力の回転方向が、リングギア121で逆転する。したがって、リングギア121から出力される動力の回転方向は、中空入力軸420から入力される回転方向と同じになる。
その結果、この遊星減速機構を用いる場合には、CVT500により逆転される動力の回転方向を、さらに逆転させるためのギアが必要ない。それにより、構成の簡素化および小型化が実現される。
それにより、CVT500の軸心上で、変速系ドリブンギア42と固定変速系ドリブンギア243とをともにドライブギア33に係合させるとともに、変速系出力ドライブギア141と固定系出力ドライブギア261とをともにドリブンギア301に係合することが可能となっている。
CVT500から遊星減速機構に入力される動力は、サンギア110に与えられ、リングギア121から出力される。ここで、サンギア110およびリングギア121の軸心は、CVT500の軸心と同じである。このように、本実施の形態では、CVT500から可変の減速比で伝達される動力が、CVT500の同軸上でさらに一定の減速比で伝達される。
したがって、CVT500により伝達される動力の減速機構をCVT500と並列に設ける必要がないので、動力伝達装置300のコンパクト化が実現されている。
本実施の形態においても、動力伝達装置300における動力伝達経路の切替動作は図1のECU800により制御される。それにより、第1の実施の形態と同様に可変変速経路および固定変速経路の切替が行われる。
図6に示される動力伝達装置300においても、アイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。これにより、図6に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構造で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態に係る自動二輪車は、動力伝達装置300の構成を除き、第1の実施の形態に係る自動二輪車100と同じ構成を有する。以下、本実施の形態に係る自動二輪車に設けられる動力伝達装置について説明する。なお、本実施の形態に係る動力伝達装置も、エンジン7の内部に設けられる。
図7は、第3の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図7に示すように、本実施の形態においても、動力伝達装置300の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。アイドル機構30の構成は第1の実施の形態におけるアイドル機構30とほぼ同じである。異なる点については後述する。
アイドル機構30のドライブギア33に係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられている。
変速系ドリブンギア42は、中空入力軸420の一端に取り付けられている。中空入力軸420の他端にはCVT500の入力ディスク510が接続されている。CVT500の構成も第1の実施の形態におけるCVT500とほぼ同じである。
CVT500の出力ディスク520は中空出力軸540の一端に接続されている。中空出力軸540の他端にリングギア701が取り付けられている。これにより、CVT500により可変の減速比で伝達されるエンジン7の動力が中空出力軸540を通じてリングギア701に伝達され、リングギア701が回転する。
リングギア701の内部で、かつリングギア701と同軸にサンギア702が設けられている。リングギア701の内部には、サンギア702を取り囲むように複数のピニオンギア703が設けられている。複数のピニオンギア703には、プラネタリキャリア704が接続されている。リングギア701、サンギア702および複数のピニオンギア703は互いに係合している。
ここで、サンギア702の回転が許容された状態でリングギア701が回転すると、複数のピニオンギア703が自転し、サンギア702が回転する。このとき、複数のピニオンギア703は公転しない。
一方、サンギア702の回転が規制された状態でリングギア701が回転すると、複数のピニオンギア703が自転しつつ公転し、プラネタリキャリア704が回転する。
ここで、サンギア702には多板クラッチ710が設けられている。多板クラッチ710には回転固定部材720が取り付けられている。この回転固定部材720は、例えばエンジン7のケーシングにより構成される。
エンジン7の作動時に多板クラッチ710が接続されると、サンギア702と回転固定部材720とが接続される。この場合、回転固定部材720は、サンギア702の回転を規制する。それにより、上記のように、リングギア701の回転に応じて複数のピニオンギア703が公転し、プラネタリキャリア704が回転する。
プラネタリキャリア704の外周部には、歯が形成されている。これにより、プラネタリキャリア704はギアとして働く。プラネタリキャリア704に係合するようにドリブンギア705が設けられている。
それにより、エンジン7の作動時に多板クラッチ710が接続される場合には、リングギア701からプラネタリキャリア704に伝達されるトルクが、ドリブンギア705に伝達される。
一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ710が切断されると、サンギア702の回転は回転固定部材720により規制されない。すなわち、サンギア702の回転が許容される。それにより、上記のように、リングギア701の回転に応じて複数のピニオンギア703が自転し、サンギア702が回転する。
この場合、サンギア702は回転固定部材720と接続されていないので、空転状態となる。そのため、リングギア701のトルクは、プラネタリキャリア704に伝達されない。したがって、ドリブンギア705も回転しない。
上記のように、複数のピニオンギア703が公転することにより、プラネタリキャリア704が一定の減速比で回転する。以下、本実施の形態において、リングギア701、サンギア702、ピニオンギア703およびプラネタリキャリア704からなる機構を遊星減速機構と呼ぶ。
多板クラッチ710が接続されているときには、CVT500により可変の減速比で伝達される動力が、遊星減速機構によりさらに一定の減速比でドリブンギア705に伝達される。ドリブンギア705には第1のヘリカルギア303が一体的に設けられている。これにより、第1のヘリカルギア303が回転する。一方、多板クラッチ710が切断されているときには、CVT500から伝達される動力がドリブンギア705に伝達されない。
アイドル機構30のドライブギア33には多板クラッチ250が設けられている。ここで、本実施の形態において、アイドル機構30のアイドル軸31は中空部を有する。アイドル軸31内の中空部には、固定変速系伝達軸260がアイドル軸31に対して相対的に回転可能に挿通されている。固定変速系伝達軸260の一端には固定系出力ドライブギア262が設けられている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ250が接続されると、ドライブギア33のトルクが固定変速系伝達軸260に伝達される。それにより、固定系出力ドライブギア262が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ250が切断されると、ドライブギア33のトルクが固定変速系伝達軸260に伝達されない。
上述のドリブンギア705には、第1のヘリカルギア303とともに固定系出力ドリブンギア263も一体的に設けられている。
この固定系出力ドリブンギア263は、固定系出力ドライブギア262と係合している。なお、図7はエンジン7を展開したレイアウト図であるため、固定系出力ドライブギア262と固定系出力ドリブンギア263との係合の様子が太い点線により示されている。
これにより、固定系出力ドライブギア262が回転することにより固定系出力ドリブンギア263も回転する。
なお、固定系出力ドライブギア262および固定系出力ドリブンギア263の大きさ(直径)は、予め設定された特定の減速比に応じて決定される。それにより、アイドル機構30のドライブギア33に伝達される動力は、一定の減速比で第1のヘリカルギア303に伝達される。
さらに、第1のヘリカルギア303に係合するように、第2のヘリカルギア304が設けられている。第2のヘリカルギア304は、出力軸306の一端に設けられている。
ドリブンギア705および固定系出力ドリブンギア263のいずれか一方がエンジン7の動力により回転すると、第1のヘリカルギア303が回転する。それにより、エンジン7の動力が第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306を通じて図1の後輪11に伝達される。
本実施の形態では、多板クラッチ710の接続時でかつ多板クラッチ250の切断時に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、中空入力軸420、CVT500、中空出力軸540、遊星減速機構、ドリブンギア705、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ710の切断時でかつ多板クラッチ250の接続時に、アイドル機構30、多板クラッチ250、固定変速系伝達軸260、固定系出力ドライブギア262、固定系出力ドリブンギア263、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が固定変速経路を構成する。
本例の可変変速経路において用いられる遊星減速機構は、サンギア702の回転を規制して動力を伝達する。この遊星減速機構は、一般にソーラ型と呼ばれる。この構成を有する遊星減速機構においては、サンギア702に伝達されるトルクが小さくなる。すなわち、サンギア702の回転を規制するための負荷を、リングギア701の回転を規制するために必要な負荷に比べて非常に小さくすることができる。
したがって、多板クラッチ710の負荷トルクを小さくすることができるので、多板クラッチ710の構成を小型化すること(例えば、クラッチ板の大きさを小さくしたり、クラッチ板の数を少なくしたりすること)が可能となる。
さらに、例えば多板クラッチ710を油圧により駆動する場合には、多板クラッチ710を油圧制御するために必要な油圧が低減される。
CVT500から遊星減速機構に入力される動力は、リングギア701に与えられ、プラネタリキャリア704から出力される。ここで、リングギア701およびプラネタリキャリア704の軸心は、CVT500の軸心と同じである。このように、本実施の形態では、CVT500から可変の減速比で伝達される動力が、CVT500の同軸上でさらに一定の減速比で伝達される。
したがって、CVT500により伝達される動力の減速機構をCVT500と並列に設ける必要がないので、動力伝達装置300のコンパクト化が実現されている。
図7に示される動力伝達装置300においても、アイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。本例では、ドリブンギア32およびトルクダンパTDを挟むようにアイドル軸31に2つのオイルシールOSが設けられている。
これにより、図7に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構成で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態に係る自動二輪車は、動力伝達装置300の構成を除き、第3の実施の形態に係る自動二輪車100と同じ構成を有する。以下、本実施の形態に係る自動二輪車に設けられる動力伝達装置について説明する。なお、本実施の形態に係る動力伝達装置も、エンジン7の内部に設けられる。
図8は、第4の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図8に示すように、本実施の形態においても、動力伝達装置300の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。アイドル機構30の構成は第3の実施の形態におけるアイドル機構30とほぼ同じである。
第3の実施の形態に係る動力伝達装置300と同様に、アイドル機構30のドライブギア33に係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられている。
変速系ドリブンギア42は中空入力軸420を介してCVT500の入力ディスク510に接続されている。CVT500の出力ディスク520は中空出力軸540を介してCVT出力用ドライブギア541に接続されている。
CVT出力用ドライブギア541に係合するようにCVT出力用ドリブンギア53が設けられている。CVT出力用ドリブンギア53には多板クラッチ52が取り付けられている。多板クラッチ52にはドライブシャフト26が接続されている。ドライブシャフト26は、クランクシャフト71の回転軸およびアイドル軸31と平行に配置されている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ52が接続されると、CVT出力用ドライブギア541からCVT出力用ドリブンギア53に伝達されたトルクが、ドライブシャフト26に伝達される。
CVT出力用ドライブギア541およびCVT出力用ドリブンギア53の大きさ(歯数)は、予め定められた減速比に応じて決定される。それにより、多板クラッチ52の接続時にCVT500により可変の減速比で伝達される動力は、さらに一定の減速比でドライブシャフト26に伝達される。
ドライブシャフト26には、固定系出力ドリブンギア263および第1のヘリカルギア303が設けられている。これにより、多板クラッチ52が接続されているときには、CVT500により可変の減速比で伝達される動力がドライブシャフト26に伝達され、第1のヘリカルギア303が回転する。一方、多板クラッチ52が切断されているときには、CVT500からCVT出力用ドリブンギア53に伝達される動力がドライブシャフト26に伝達されない。
第3の実施の形態と同様に、アイドル機構30のドライブギア33には多板クラッチ250が設けられている。また、アイドル機構30のアイドル軸31は中空部を有し、その中空部には固定変速系伝達軸260が挿通されている。固定変速系伝達軸260の一端には固定系出力ドライブギア262が設けられている。
本実施の形態においても、多板クラッチ250が接続されているときにドライブギア33に伝達される動力が固定変速系伝達軸260に伝達され、固定系出力ドライブギア262が回転する。また、多板クラッチ250が切断されているときにドライブギア33に伝達される動力が固定変速系伝達軸260に伝達されず、固定系出力ドライブギア262が回転しない。
固定系出力ドリブンギア263は、固定系出力ドライブギア262と係合している。なお、図8はエンジン7を展開したレイアウト図であるため、固定系出力ドライブギア262と固定系出力ドリブンギア263との係合の様子が太い点線により示されている。
これにより、固定系出力ドライブギア262が回転することにより固定系出力ドリブンギア263も回転する。
本実施の形態においても、固定系出力ドライブギア262および固定系出力ドリブンギア263の大きさ(直径)は、予め設定された特定の減速比に応じて決定される。それにより、アイドル機構30のドライブギア33に伝達される動力は、一定の減速比で第1のヘリカルギア303に伝達される。
第1のヘリカルギア303に係合するように、第2のヘリカルギア304が設けられている。第2のヘリカルギア304は、出力軸306の一端に設けられている。
多板クラッチ52または多板クラッチ250が接続されることにより、CVT出力用ドライブギア541または固定系出力ドリブンギア263がエンジン7の動力により回転する。それにより、エンジン7の動力が第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306を通じて図1の後輪11に伝達される。
本実施の形態では、多板クラッチ52の接続時でかつ多板クラッチ250の切断時に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、中空入力軸420、CVT500、中空出力軸540、CVT出力用ドライブギア541、CVT出力用ドリブンギア53、多板クラッチ52、ドライブシャフト26、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ52の切断時でかつ多板クラッチ250の接続時に、アイドル機構30、多板クラッチ250、固定変速系伝達軸260、固定系出力ドライブギア262、固定系出力ドリブンギア263、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が固定変速経路を構成する。
図8に示される動力伝達装置300においても、アイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。本例では、ドリブンギア32およびトルクダンパTDを挟むようにアイドル軸31に2つのオイルシールOSが設けられている。
これにより、図7に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構成で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
5.第5の実施の形態
第5の実施の形態に係る自動二輪車は、動力伝達装置300の構成を除き、第1の実施の形態に係る自動二輪車100と同じ構成を有する。以下、本実施の形態に係る自動二輪車に設けられる動力伝達装置について説明する。なお、本実施の形態に係る動力伝達装置も、エンジン7の内部に設けられる。
図9は、第5の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図9に示すように、本実施の形態においても、動力伝達装置300の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。アイドル機構30の構成は第1の実施の形態におけるアイドル機構30とほぼ同じである。異なる点を説明する。
第5の実施の形態において、アイドル軸31の両端には、ドライブギア33aおよびドライブギア33bが設けられている。
アイドル機構30の第1のドライブギア33aに係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられている。
変速系ドリブンギア42は、中空入力軸420の一端に取り付けられている。中空入力軸420の他端にはCVT500の入力ディスク510が接続されている。CVT500の構成も第1の実施の形態におけるCVT500とほぼ同じである。
CVT500の出力ディスク520は中空出力軸540の一端に接続されている。中空出力軸540の他端にCVT出力用ドライブギア541が取り付けられている。これにより、CVT500により可変の減速比で伝達されるエンジン7の動力が中空出力軸540に伝達され、CVT出力用ドライブギア541が回転する。
CVT出力用ドライブギア541に係合するようにCVT出力用ドリブンギア53が設けられている。CVT出力用ドリブンシャフト926は、クランクシャフト71の回転軸およびアイドル軸31と平行に配置されている。CVT出力用ドリブンギア53は、CVT出力用ドリブンシャフト926の一端に設けられている。
CVT出力用ドリブンシャフト926は、中空軸911の中空部に回転可能に挿通されている。中空軸911の一端には多板クラッチ910が設けられている。また、中空軸911の他端には、共通ドライブギア912が設けられている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ910が接続されると、CVT500により可変の減速比でCVT出力用ドリブンシャフト926に伝達されるトルクが、中空軸911に伝達される。それにより、共通ドライブギア912が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ910が切断されると、CVT出力用ドリブンシャフト926のトルクが中空軸911に伝達されない。
なお、CVT出力用ドライブギア541およびCVT出力用ドリブンギア53の大きさ(歯数)は、予め定められた減速比に応じて決定される。それにより、多板クラッチ910の接続時にCVT500により可変の減速比で伝達される動力は、さらに一定の減速比でCVT出力用ドリブンシャフト926に伝達される。
アイドル機構30のドライブギア33bは、固定系出力ドリブンギア263と係合している。なお、図9はエンジン7を展開したレイアウト図であるため、ドライブギア33bと固定系出力ドリブンギア263との係合の様子が太い点線により示されている。
これにより、ドライブギア33bが回転することにより固定系出力ドリブンギア263も回転する。
固定系出力ドリブンギア263には、多板クラッチ920が設けられている。エンジン7の作動時に多板クラッチ920が接続されると、固定系出力ドリブンギア263のトルクが、上述の中空軸911に伝達される。それにより共通ドライブギア912が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ920が切断されると、固定系出力ドリブンギア263のトルクが中空軸911に伝達されない。
なお、ドライブギア33bおよび固定系出力ドリブンギア263の大きさ(直径)は、予め設定された特定の減速比に応じて決定される。それにより、アイドル機構30に伝達される動力は、一定の減速比で中空軸911に伝達される。
共通ドライブギア912に係合するように共通ドリブンギア930が設けられている。共通ドリブンギア930には、第1のヘリカルギア303が一体的に設けられている。
さらに、第1のヘリカルギア303に係合するように、第2のヘリカルギア304が設けられている。第2のヘリカルギア304は、出力軸306の一端に設けられている。
2つの多板クラッチ910,920のいずれか一方が接続されることにより共通ドライブギア912が回転すると、共通ドリブンギア930が回転する。それにより、エンジン7の動力が共通ドリブンギア930、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306を通じて図1の後輪11に伝達される。
本実施の形態では、多板クラッチ910の接続時でかつ多板クラッチ920の切断時に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、中空入力軸420、CVT500、中空出力軸540、CVT出力用ドライブギア541、CVT出力用ドリブンギア53、CVT出力用ドリブンシャフト926、多板クラッチ910、中空軸911、共通ドライブギア912、共通ドリブンギア930、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ910の切断時でかつ多板クラッチ920の接続時に、アイドル機構30、固定系出力ドリブンギア263、多板クラッチ920、中空軸911、共通ドライブギア912、共通ドリブンギア930、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が固定変速経路を構成する。
図9に示される動力伝達装置300においても、アイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。これにより、図9に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構成で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
6.第6の実施の形態
第6の実施の形態に係る自動二輪車は、動力伝達装置300の構成を除き、第1の実施の形態に係る自動二輪車100と同じ構成を有する。以下、本実施の形態に係る自動二輪車に設けられる動力伝達装置について説明する。なお、本実施の形態に係る動力伝達装置も、エンジン7の内部に設けられる。
図10は、第6の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
図10に示すように、本実施の形態においても、動力伝達装置300の最も上流にはアイドル機構30が設けられる。アイドル機構30の構成は第1の実施の形態におけるアイドル機構30とほぼ同じである。異なる点を説明する。
第5の実施の形態において、アイドル軸31の略中央部にドリブンギア32が設けられている。また、アイドル軸31には、ドリブンギア32の一方側に第1のドライブギア33cおよび第2のドライブギア33dが設けられている。
アイドル機構30の第1のドライブギア33cに係合するように、変速系ドリブンギア42が設けられている。
変速系ドリブンギア42は、中空入力軸420の一端に取り付けられている。中空入力軸420の他端にはCVT500の入力ディスク510が接続されている。CVT500の構成も第1の実施の形態におけるCVT500とほぼ同じである。
CVT500の出力ディスク520は中空出力軸540の一端に接続されている。中空出力軸540の他端にCVT出力用ドライブギア541が取り付けられている。これにより、CVT500により可変の減速比で伝達されるエンジン7の動力が中空出力軸540に伝達され、CVT出力用ドライブギア541が回転する。
CVT出力用ドライブギア541に係合するようにCVT出力用ドリブンギア53が設けられている。CVT出力用ドリブンシャフト926はクランクシャフト71の回転軸およびアイドル軸31と平行に配置されている。CVT出力用ドリブンギア53は、CVT出力用ドリブンシャフト926の一端に設けられている。
CVT出力用ドリブンシャフト926は、中空軸911の中空部に回転可能に挿通されている。中空軸911に一端には多板クラッチ910が設けられている。また、中空軸911の他端には、CVT出力用ドライブギア922が設けられている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ910が接続されると、CVT500により可変の減速比でCVT出力用ドリブンシャフト926に伝達されるトルクが、中空軸911に伝達される。それにより、CVT出力用ドライブギア922が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ910が切断されると、CVT出力用ドリブンシャフト926のトルクが中空軸911に伝達されない。
なお、CVT出力用ドライブギア541およびCVT出力用ドリブンギア53の大きさ(歯数)は、予め定められた減速比に応じて決定される。それにより、多板クラッチ910の接続時にCVT500により可変の減速比で伝達される動力は、さらに一定の減速比でCVT出力用ドリブンシャフト926に伝達される。
アイドル機構30の第2のドライブギア33dに係合するように、固定変速系ドリブンギア243が設けられている。
固定変速系伝達軸260は、クランクシャフト71の回転軸およびアイドル軸31と平行に配置され、中空入力軸420および中空出力軸540内の中空部に相対的に回転可能に挿通されている。固定変速系ドリブンギア243は、固定変速系伝達軸260に設けられている。
固定変速系伝達軸260の一端には固定系出力ドライブギア262が設けられ、他端には多板クラッチ250が設けられている。
エンジン7の作動時に多板クラッチ250が接続されると、第2のドライブギア33dのトルクが固定変速系伝達軸260に伝達される。それにより、固定変速系伝達軸260の一端に設けられた固定系出力ドライブギア262が回転する。一方、エンジン7の作動時に多板クラッチ250が切断されると、第2のドライブギア33dのトルクが固定変速系伝達軸260に伝達されない。
上述のCVT出力用ドライブギア922に係合するように、変速系出力ドリブンギア923が設けられている。変速系出力ドリブンギア923には、第1のヘリカルギア303とともに固定系出力ドリブンギア263も一体的に設けられている。
この固定系出力ドリブンギア263は、固定系出力ドライブギア262と係合している。なお、図8はエンジン7を展開したレイアウト図であるため、固定系出力ドライブギア262と固定系出力ドリブンギア263との係合の様子が太い点線により示されている。
これにより、固定系出力ドライブギア262が回転することにより固定系出力ドリブンギア263も回転する。
なお、第2のドライブギア33d、固定変速系ドリブンギア243、固定系出力ドライブギア262および固定系出力ドリブンギア263の大きさ(直径)は、予め設定された特定の減速比に応じて決定される。それにより、アイドル機構30の第2のドライブギア33dに伝達される動力は、一定の減速比で第1のヘリカルギア303に伝達される。
第1のヘリカルギア303に係合するように、第2のヘリカルギア304が設けられている。第2のヘリカルギア304は、出力軸306の一端に設けられている。
2つの多板クラッチ250,910のいずれか一方が接続されることにより第1のヘリカルギア303が回転する。それにより、エンジン7の動力が第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306を通じて図1の後輪11に伝達される。
本実施の形態では、多板クラッチ910の接続時でかつ多板クラッチ250の切断時に、アイドル機構30、変速系ドリブンギア42、中空入力軸420、CVT500、中空出力軸540、CVT出力用ドライブギア541、CVT出力用ドリブンギア53、CVT出力用ドリブンシャフト926、多板クラッチ910、中空軸911、CVT出力用ドライブギア922、変速系出力ドリブンギア923、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が可変変速経路を構成する。
また、多板クラッチ910の切断時でかつ多板クラッチ250の接続時に、アイドル機構30、固定変速系ドリブンギア243、多板クラッチ250、固定変速系伝達軸260、固定系出力ドライブギア262、固定系出力ドリブンギア263、第1のヘリカルギア303、第2のヘリカルギア304および出力軸306が固定変速経路を構成する。
図10に示される動力伝達装置300においても、アイドル機構30にオイルシールOSを設けることができる。これにより、図10に一点鎖線で示すように、エンジンオイルが充填されるエンジン領域AEと、トラクションオイルが充填されるトラクション領域ATとを容易に分離することができる。
その結果、エンジン7内に動力伝達装置300を設ける場合でも、エンジンオイルがトラクション領域AT内に漏れ出すことが防止され、トラクションオイルがエンジン領域AE内に漏れ出すことが防止される。したがって、簡単な構成で動力伝達装置300を容易にエンジン7内に設けることが可能となる。
7.他の構成例
第1〜第6の実施の形態に用いられるCVT500は、シングルギャビティ型のハーフトロイダルCVTであればよく、図3に示されるCVT500の構成に限定されない。
第1の実施の形態では、動力伝達装置300により伝達される動力は後輪ドライブスプロケット15により後輪11へ出力される。また、第2〜第5の実施の形態では、動力伝達装置300により伝達される動力は複数のヘリカルギアおよび軸により後輪11へ出力される。
このような動力伝達装置300から後輪11への動力伝達経路の構成は上記の例に限定されない。例えば、第1の実施の形態に係る動力伝達装置300に複数のヘリカルギアおよび軸を設けてもよいし、第2〜第5の実施の形態に係る動力伝達装置300に後輪ドライブスプロケット15を設けてもよい。
本実施の形態では、車両の例として自動二輪車について説明したが、これに限らず、動力伝達装置300はトラクター、四輪バギーおよびカート等の低排気量の小型車両ならびに小型船舶のエンジンにも設けることができる。
8.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
第1〜第6の実施の形態においては、後輪11、後輪ドリブンスプロケット12、後輪ドライブスプロケット15およびチェーン16が駆動機構に相当し、アイドル機構30が中継機構に相当し、CVT500を含む可変変速経路の構成が第1の動力伝達機構に相当し、固定変速経路の構成が第2の動力伝達機構に相当し、図1のECU800、ドグクラッチ51および多板クラッチ52,130,250,710,910,920が切替装置に相当する。
また、図2の動力入力軸41および中空出力軸540、ならびに図6〜図10の中空入力軸420および中空出力軸540が第1の動力伝達軸に相当し、図2の動力入力軸41、図6〜図8および図10の固定変速系伝達軸260、ならびに図9のアイドル軸31が第2の動力伝達軸に相当する。
さらに、図2の固定変速系ドライブギア43、アイドルギア62および固定変速系ドリブンギア61、図6の固定系出力ドライブギア261およびドリブンギア301、図7、図8および図10の固定系出力ドライブギア262および固定系出力ドリブンギア263、ならびに図9のドライブギア33bおよび固定系出力ドリブンギア263が固定変速機に相当する。
また、CVT500が無段変速機およびシングルキャビティ型のハーフトロイダル無段変速機に相当し、パワーローラ530a,530bがそれぞれ第1および第2のパワーローラに相当し、アイドル軸31が中継軸に相当し、ドリブンギア32、ドライブギア33、ドライブギア33a、ドライブギア33b、第1のドライブギア33cおよび第2のドライブギア33dが中継伝達機構に相当し、図6および図10の中空入力軸420および中空出力軸540がそれぞれ第1および第2の中空軸に相当し、図7および図8のアイドル軸31が中空軸に相当し、図7〜図9の中空入力軸420が第1の回転軸に相当し、図7〜図9の中空出力軸540が第2の回転軸に相当する。
さらに、ドリブンギア32が第1の円盤状部材に相当し、図2および図6〜図8のドライブギア33、図9のドライブギア33a、ならびに図10の第1のドライブギア33cが第2の円盤状部材に相当し、変速系ドリブンギア42が第3の円盤状部材に相当し、図6のドライブギア33および図10の第2のドライブギア33dが第4の円盤状部材に相当し、図6および図10の固定変速系ドリブンギア243が第5の円盤状部材に相当する。
また、図2および図8の多板クラッチ52、図6の多板クラッチ130、図7の多板クラッチ710、ならびに図9および図10の多板クラッチ910が第1のクラッチに相当し、図2および図8〜図10のCVT出力用ドライブギア541およびCVT出力用ドリブンギア53、ならびに図6および図7の遊星減速機構が減速装置に相当し、サンギア110,702が太陽歯車に相当し、ピニオンギア120,703が遊星歯車に相当し、リングギア121,701が内歯車に相当し、プラネタリキャリア120C,704がキャリアに相当し、回転固定部材720が固定部材に相当する。
さらに、図2のドグクラッチ51、図6〜図8および図10の多板クラッチ250ならびに図9の多板クラッチ920が第2のクラッチに相当し、エンジンオイルが第1の作動油に相当し、トラクションオイルが第2の作動油に相当し、エンジン領域AEが第1の作動油領域に相当し、トラクション領域ATが第2の作動油領域に相当し、オイルシールOSが漏洩防止部材に相当する。
また、図2の固定変速系ドライブギア43および固定変速系ドリブンギア61、ならびに図6の固定系出力ドライブギア261およびドリブンギア301が歯車機構に相当し、図2の固定変速系ドライブギア43および図6の固定系出力ドライブギア261が第1の歯車に相当し、図2の固定変速系ドリブンギア61および図6のドリブンギア301が第2の歯車に相当する。
本発明は、自動二輪車、トラクター、四輪バギーおよびカート等の低排気量の小型車両ならびに小型船舶等に利用することができる。
第1の実施の形態に係る自動二輪車の模式図である。 第1の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。 第1の実施の形態に係る動力伝達装置の具体的構成例を説明するための図である。 第1の実施の形態に係る動力伝達装置の具体的構成例を説明するための図である。 第1の実施の形態に係る動力伝達装置の具体的構成例を説明するための図である。 第2の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。 第3の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。 第4の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。 第5の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。 第6の実施の形態に係る動力伝達装置の構成およびレイアウトを示す概略図である。
符号の説明
7 エンジン
11 後輪
12 後輪ドリブンスプロケット
15 後輪ドライブスプロケット
16 チェーン
26 ドライブシャフト
30 アイドル機構
31 アイドル軸
32,301 ドリブンギア
33,33a,33b ドライブギア
33c 第1のドライブギア
33d 第2のドライブギア
41 動力入力軸
42 変速系ドリブンギア
43 固定変速系ドライブギア
51 ドグクラッチ
52,130,250,710,910,920 多板クラッチ
53 CVT出力用ドリブンギア
61,243 固定変速系ドリブンギア
62 アイドルギア
71 クランクシャフト
100 自動二輪車
110,702 サンギア
120,703 ピニオンギア
120C,704 プラネタリキャリア
121,701 リングギア
260 固定変速系伝達軸
261,262 固定系出力ドライブギア
263 固定系出力ドリブンギア
300 動力伝達装置
420 中空入力軸
500 CVT
510 入力ディスク
520 出力ディスク
530a,530b パワーローラ
540 中空出力軸
541 CVT出力用ドライブギア
720 回転固定部材
800 ECU
911 中空軸
AE エンジン領域
AT トラクション領域
OS オイルシール
TD トルクダンパ

Claims (20)

  1. クランクシャフトを備えるエンジンの動力を駆動機構に伝達する動力伝達装置であって、
    前記エンジンの動力を受ける中継機構と、
    前記中継機構から前記駆動機構へ動力を伝達する第1の動力伝達機構と、
    前記中継機構から前記駆動機構へ動力を伝達する第2の動力伝達機構と、
    前記エンジンの動力の伝達経路を、前記第1の動力伝達機構と前記第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える切替装置とを備え、
    前記第1の動力伝達機構は、
    前記クランクシャフトと並列に配置され、前記中継機構からの動力を受ける第1の動力伝達軸と、
    前記第1の動力伝達軸に設けられ、前記第1の動力伝達軸が受けた動力を可変の変速比で前記駆動機構に伝達する無段変速機とを含み、
    前記第2の動力伝達機構は、
    前記クランクシャフトと並列に配置され、前記中継機構からの動力を受ける第2の動力伝達軸と、
    前記第2の動力伝達軸に設けられ、前記第2の動力伝達軸が受けた動力を一定の変速比で前記駆動機構に伝達する固定変速機とを含むことを特徴とする動力伝達装置。
  2. 前記無段変速機は、シングルキャビティ型のハーフトロイダル無段変速機であり、
    前記シングルキャビティ型のハーフトロイダル無段変速機は、
    前記中継機構からの動力により回転可能に前記第1の動力伝達軸に設けられる入力ディスクと、
    前記入力ディスクと対向するように前記第1の動力伝達軸に設けられ、かつ前記駆動機構にトルクを出力する出力ディスクと、
    前記入力ディスクと前記出力ディスクとに接触しつつ移動可能かつ傾斜可能に設けられ、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間でトルクを伝達する第1および第2のパワーローラとを含むことを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
  3. 前記中継機構は、
    前記クランクシャフトと並列に配置された中継軸と、
    前記クランクシャフトの動力を前記中継軸に伝達するとともに、前記中継軸に伝達された動力を前記第1および第2の動力伝達機構へ伝達する中継伝達機構とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の動力伝達装置。
  4. 前記第1の動力伝達軸は、前記中継伝達機構からの動力を受けかつ前記入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、前記入力ディスクに固定されるとともに前記出力ディスクに対して相対的に回転可能であり、
    前記第2の動力伝達軸は、前記第1の動力伝達軸と一体的に設けられることを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  5. 前記第1の動力伝達軸は、前記入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、前記中継伝達機構からの動力を受けかつ前記入力ディスクに固定される第1の中空軸と、前記出力ディスクに固定される第2の中空軸とを含み、
    前記第2の動力伝達軸は、前記中継伝達機構からの動力を受けかつ前記第1および第2の中空軸内を通るように設けられたことを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  6. 前記中継軸は中空軸を含み、
    前記第1の動力伝達軸は、前記入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、前記中継伝達機構からの動力を受けかつ前記入力ディスクに固定される第1の回転軸と、前記出力ディスクに固定される第2の回転軸とを含み、
    前記第2の動力伝達軸は、前記中空軸内を通るように設けられたことを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  7. 前記第1の動力伝達軸は、前記入力ディスクおよび出力ディスクの回転中心を通るように設けられ、前記中継伝達機構からの動力を受けかつ前記入力ディスクに固定される第1の回転軸と、前記出力ディスクに固定される第2の回転軸とを含み、
    前記第2の動力伝達軸は、前記中継軸と一体的に設けられたことを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  8. 前記中継伝達機構は、
    前記クランクシャフトのトルクを受ける第1の円盤状部材と、
    前記第1の円盤状部材が受ける動力を前記第1の動力伝達機構に伝達する第2の円盤状部材とを含み、
    前記第1の動力伝達機構は、前記第1の動力伝達軸に設けられかつ前記第2の円盤状部材のトルクを前記無段変速機へ伝達する第3の円盤状部材をさらに含むことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の動力伝達装置。
  9. 前記中継伝達機構は、
    前記第1の円盤状部材が受ける動力を前記第2の動力伝達機構に伝達する第4の円盤状部材をさらに含み、
    前記第2の動力伝達機構は、前記第2の動力伝達軸に設けられかつ前記第4の円盤状部材のトルクを前記固定変速機へ伝達する第5の円盤状部材をさらに含むことを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の動力伝達装置。
  10. 前記切替装置は、前記第1の動力伝達機構における動力の伝達経路を接続および切断する第1のクラッチを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の動力伝達装置。
  11. 前記第1の動力伝達機構は、前記無段変速機から出力される動力を一定の減速比で前記第1のクラッチに伝達する減速装置をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の動力伝達装置。
  12. 前記減速装置は、遊星減速機構を含み、
    前記遊星減速機構は、
    前記無段変速機から出力される動力により回転する太陽歯車と、
    前記太陽歯車の周囲に設けられ、前記太陽歯車の回転に応じて自転および公転する複数の遊星歯車と、
    前記複数の遊星歯車に接続され、前記複数の遊星歯車の公転を規制するキャリアと、
    前記複数の遊星歯車を取り囲むように設けられ、前記複数の遊星歯車の自転に応じて回転する内歯車とを含むことを特徴とする請求項11記載の動力伝達装置。
  13. 前記減速装置は、遊星減速機構を含み、
    前記遊星減速機構は、
    前記無段変速機から出力される動力により回転する内歯車と、
    前記内歯車の内部に設けられ、前記内歯車の回転に応じて自転および公転する複数の遊星歯車と、
    前記複数の遊星歯車に接続され、前記複数の遊星歯車の公転とともに回転するキャリアと、
    前記内歯車の内部で、前記複数の遊星歯車に取り囲まれるように設けられ、かつ前記複数の遊星歯車の回転態様を規制可能に設けられた太陽歯車と、
    前記太陽歯車の回転を規制するための固定部材とを含み、
    前記第1のクラッチは、前記太陽歯車と前記固定部材との接続状態を切り替えることを特徴とする請求項11記載の動力伝達装置。
  14. 前記第1のクラッチは、多板クラッチを含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の動力伝達装置。
  15. 前記切替装置は、前記第2の動力伝達機構における動力の伝達経路を接続および切断する第2のクラッチを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の動力伝達装置。
  16. 前記第2のクラッチは、多板クラッチまたはドグクラッチを含むことを特徴とする請求項15記載の動力伝達装置。
  17. 前記中継機構は、前記クランクシャフトからの動力の回転変動を除去するトルクダンパをさらに含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の動力伝達装置。
  18. 前記クランクシャフトは、第1の作動油が充填された第1の作動油領域内に設けられ、
    前記無段変速機は、第2の作動油が充填された第2の作動油領域内に設けられ、
    前記中継機構は、前記第1の作動油領域および第2の作動油領域とを分離するための漏洩防止部材をさらに含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の動力伝達装置。
  19. 前記固定変速機は、歯車機構を有し、
    前記歯車機構は、前記第2の動力伝達軸に設けられ、前記中継機構からの動力を受ける第1の歯車と、前記第1の歯車の動力を前記駆動機構へ出力する第2の歯車とを含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の動力伝達装置。
  20. クランクシャフトを備えるエンジンと、
    駆動機構と、
    前記エンジンの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達装置とを備え、
    前記動力伝達装置は、
    前記エンジンの動力を受ける中継機構と、
    前記中継機構から前記駆動機構へ動力を伝達する第1の動力伝達機構と、
    前記中継機構から前記駆動機構へ動力を伝達する第2の動力伝達機構と、
    前記エンジンの動力の伝達経路を、前記第1の動力伝達機構と前記第2の動力伝達機構とで選択的に切り替える切替装置とを備え、
    前記第1の動力伝達機構は、
    前記クランクシャフトと並列に配置され、前記中継機構からの動力を受ける第1の動力伝達軸と、
    前記第1の動力伝達軸に設けられ、前記第1の動力伝達軸が受けた動力を可変の変速比で前記駆動機構に伝達する無段変速機とを含み、
    前記第2の動力伝達機構は、
    前記クランクシャフトと並列に配置され、前記中継機構からの動力を受ける第2の動力伝達軸と、
    前記第2の動力伝達軸に設けられ、前記第2の動力伝達軸が受けた動力を一定の変速比で前記駆動機構に伝達する固定変速機とを含むことを特徴とする車両。
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